JP3889551B2 - 車両用スタータの保護装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用スタータの保護装置に関し、特に、車両用スタータの保護装置の機能解除に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エンジンが始動したあとのスタータの不要なオーバランを防止し、スタータの構成部品への負担を軽減するため、または不快なオーバラン音を抑制するためのスタータ自動停止を、クランキングによる電圧変動から判定する手段を有したスタータの保護装置や、スタータの連続運転または、停止インターバルの少ない複数回に及ぶスタータの断続運転において、スタータが発熱しすぎることをサーミスタや積算タイマで管理し、条件がそろえば運転者の意志に関係なくスタータを自動停止する機能を有したスタータの保護装置は、従来数多く存在している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来装置では、当該装置の利用分野が車両外部からの遠隔操作によるエンジン始動装置におけるスタータの自動停止である場合において、外部スイッチによる機能解除に関する考慮がなされている場合があるが、特に当該装置の利用分野がスタータ保護のための例えばスタータまたは、スタータのメインコンタクタに内蔵したスタータの制御装置やスタータ本体に隣接または全く別置して搭載するスタータの制御装置である場合の従来例では、機能解除に関する考慮が少なくともなされていない。
【0004】
しかも、上記「遠隔操作によるエンジン始動装置」で機能解除が考慮されているのは電圧変動の分析によるスタータの自動停止を解除するものであって、その時は他の手段によりスタータの自動停止を達成しようとする。つまり、スタータの自動停止機能自体を解除するための機能解除ではない。どちらかといえばスタータの自動停止手段の変更スイッチといえる。利用分野がスタータの保護である当該装置において、機能解除が考慮されないことで発生する問題点を以下に説明する。
【0005】
まず、スタータの駆動はエンジン始動のためだけでなく、エンジン整備上の「圧縮圧力測定」時にも必要である。つまり、エンジン圧縮圧力測定時の連続クランキングにおいて、スタータの保護装置によるスタータ停止の誤判定で連続クランキングが中断され、圧縮圧力が測定不能となってしまうことが予想される。クランキングによる電圧変動を分析してスタータを停止する従来例の「電圧の連続的上昇」に基づく判定や「電圧の波がなくなった」に基づく判定では、その状況に陥る可能性を否めないし、条件によっては回避できても、あえて考慮された結果ではない。従って、圧縮圧力測定時のクランキング時にはスタータが勝手に停止しないような手段を考慮することは整備上において重要な要素といえる。
【0006】
次に、圧縮不良などのエンジン不具合時におけるクランキングの場合を考える。通常、多気筒機関の場合、ひとつのシリンダ圧縮不良くらいではエンジンが自立運転できる。にもかかわらず、ここでも当該装置による誤判定によりスタータが勝手に停止してしまうことを否めない。当該装置さえなければ、修理工場まで自走可能であったかも知れないし、またそうであったと思うことで運転者に精神的苦痛を与えることにもなりかねない。少なくとも従来例ではこれらの状況を考慮していない。
【0007】
さらに、マニュアルトランスミッション車両の場合、本来一般的にはスタータ走行が可能である。例えば踏み切り内でのエンジン故障やその他の緊急事態で、スタータによる走行を余儀なくされた状況下で、ここでも当該装置による誤判定によりスタータが勝手に停止してしまう可能性を否めず、当然スタータの走行は不可能に陥る。この場合事態は深刻で、当該装置をスタータに適用したマニュアル車両では、メーカーは説明書等によって従来との差異を明記しない限り、本来スタータ走行できるはずだったとなれば損害賠償の請求に応じなければならない可能性がある。
【0008】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、スタータがオーバラン状態でないにも拘わらず、スタータが自動停止してしまうことを回避でき、また、スタータ停止の誤判定によって連続クランキングが自動停止によって中断され、圧縮圧力が測定不能となることを回避でき、しかも、緊急事態でスタータによる走行を余儀なくされた状態で、スタータ停止の誤判定によってスタータ走行が不能となることを回避できる車両用スタータの保護装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両用スタータの保護装置は、クランキングによる電圧変動に基づいてスタータの自動停止を行う車両用スタータの保護装置において、上記スタータの動作に関連したスイッチの動作状態を検出する検出手段と、上記スタータの連続運転または停止インターバルの少ない複数回に及ぶ上記スタータの断続運転中の上記スタータの発熱を検出する温度検出手段と、上記温度検出手段と上記検出手段の出力に基づいて上記スタータの自動停止を解除する機能解除手段とを備えたものである。
【0010】
また、上記検出手段のスイッチがスタートスイッチであり、上記機能解除手段は、上記スタートスイッチによるキーシリンダのスタートポジションへの断続的な投入が所定時間当たりで所定回数以上検出されると上記スタータの自動停止を解除するものである。
また、上記所定時間は、上記スタータの前回の運転終了時点から所定時間の間は該スタータを運転しないようにするための機能に設定される所定時間を流用するものである。
また、上記所定回数が、2回または3回であるものである。
また、上記検出手段のスイッチが機能解除スイッチであり、上記機能解除手段は、上記機能解除スイッチの動作が閉成状態のときに上記スタータの自動停止を解除するものである。
また、上記機能解除スイッチは、車室内、またはエンジンルーム内、或いは保護装置本体に設置されているものである。
また、上記温度検出手段は、上記スタータの発熱を検知するサーミスタと、該サーミスタの出力に基づいて該スタータの発熱を判定する温度判定部からなるものである。
また、上記温度検出手段は、上記スタータの運転時間を監視して該スタータの温度を推定する運転時間タイマであるものである。
また、保護機能の動作回数の履歴や体験温度または自己診断結果などを記憶する記憶手段を備えたものである。
また、上記記憶手段としてフラッシュROMを用いたものである。
また、上記記憶手段として電流フューズを用いたものである。
また、上記記憶手段として電圧を印加することにより何らかの化学反応で変色し、1度反応すると色が元に戻らない素子を用いたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1を示す構成図である。
図において、1はバッテリ、2はバッテリの正電極側に接続されたスタートスイッチ、3はスタートスイッチ2に直列接続されたキャンセルスイッチである。このキャンセルスイッチ3は、図1に示すように保護装置内に設けられるが、場合によっては保護装置の外部例えば車室内またはエンジンルーム内に設けてもよい。これらのスイッチ2および3はそれぞれ入力インターフェース(I/F)4および5を介してマイクロプロセッサ6内の入力ポート(電圧監視)69および入力ポート(電圧監視)70に接続される。
【0012】
また、バッテリ1の正電極側がそれぞれ入力インターフェース7およびユニット電源インターフェース8を介してマイクロプロセッサ6内の入力ポート(A/D変換)71およびマイコン電源入力部68に接続される。なお、入力インターフェース7およびユニット電源インターフェース8の入力側は、入力インターフェース4の入力側に接続してもよい。更に、バッテリ1の正電極側が励磁スイッチ9を介してスタータ用モータ10に接続され、この励磁スイッチ9およびモータ10の接続点とグランドとの間にスタータ用励磁スイッチ9のソレノイドコイル11および12が直列接続される。
【0013】
13はソレノイドコイル11および12の接続点とマイクロプロセッサ6内の出力ポート(電圧制御)との間に設けられたドライバインターフェース、14はこのドライバインターフェース13の出力側とグランド間に接続されたフライホイールダイオードである。なお、ライホイールダイオード14は保護装置の外側に接続してもよい。この15はモータ10の発熱を検出するサーミスタであって、入力インターフェース16を介してマイクロプロセッサ6内の入力ポート(A/D変換)72に接続される。
【0014】
マイクロプロセッサ6は、ピニオン再飛び込みディレイ部61aを含む機能解除手段としてのスタータ運転可否総合判定部61と、入力ポート71の出力からオーバランを判定してその判定結果をスタータ運転可否総合判定部61に供給するオーバラン判定部62と、入力ポート69の出力から駆動信号を認識する駆動信号認識部63と、入力ポート70と駆動信号認識部63の各出力から機能解除を判定してその判定結果をスタータ運転可否総合判定部61に供給する機能解除判定部64と、入力ポート72の出力からスタータの過熱を判定してその判定結果をスタータ運転可否総合判定部61に供給する温度判定部65と、スタータ運転可否総合判定部61に接続され、保護機能の動作回数の履歴や体験温度、または自己診断結果などを記憶するための例えばフラッシュROMを用いた記憶部66とを有する。
【0015】
なお、ここでは駆動信号認識部63と機能解除判定部64は、実質的にスタータの動作に関連したスイッチ即ちスタートスイッチ2の動作状態を検出する検出手段を構成する。
【0016】
機能解除判定部64は、実質的に運転者のスタートスイッチ2の操作によるキーシリンダのスタートポジションへの断続的な投入に基づく駆動信号の有無、或いは運転者のキャンセルスイッチ3の操作による開閉状態に基づいて、保護装置が有する自動停止機能を解除するか否かを判定する。キャンセルスイッチ3は、スタートスイッチ2のようなスイッチによってキーシリンダがスタートポジションにあるときのみ電圧が印加される電源線に接続される。
【0017】
なお、スタートスイッチ2とバッテリ1の間に図示しないイモビライザやエンジンコントロルユニット等の外部ユニットが介在する場合もあるし、スタートスイッチ2自体がそれらの外部ユニットに含まれる場合もある。また、スタートスイッチ2とキャンセルスイッチ3は、ここでは機械リレー的な表示になっているが、場合によっては電磁リレーまたは半導体リレーを用いてもよい。
【0018】
また、 ピニオン再飛び込みディレイ部61aは、スタータの前回の運転終了時点から所定時間の間はスタータを運転しないようにするためのものである。
また、記憶部66としてフラッシュROMの代わりに、電流フューズや、電圧を印加することにより何らかの化学反応で変色し、1度反応すると色が元に戻らない素子を用いてもよい。
【0019】
次に、動作について説明する。
先ず、図1の動作を概略説明する。
キャンセルスイッチ3がOFFの状態でスタートスイッチ2をONするとバッテリ1からのバッテリ電圧がスタータの運転命令である駆動信号としてマイクロプロセッサ6に入力される。この駆動信号がマイクロプロセッサ6の駆動信号認識部63で認識されると、オーバラン判定部62による結果(オーバラン無しの状態)と、温度判定部65による結果(スタータが過熱されていない状態)と、ピニオン再飛び込みディレイ部61aが動作中でなければスタータの運転を開始する。
【0020】
さて、スタータが運転を開始したとして、運転中に駆動信号があるにも拘わらず、オーバラン判定部62よるオーバラン有りの判定か温度判定部65による過熱有りの判定かがなされてしまったとする。すると、スタータは強制停止され、所定時間の間ピニオン再飛び込みディレイ部61aが動作する。ところが、実は運転者はどうしてもエンジンを始動したい、あるいはスタータを始動したい等の状況、つまり、例えばエンジン不具合やエンジン整備上の連続クランキング、または車両のスタータ走行などの特異な状況が考えられる。
【0021】
このような状況下では、スタータが自動停止しないようにするピニオン再飛び込みディレイ部61aが動作している所定時間の間に、スタートスイッチ2によりキーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の操作を所定回数例えば2回または3回実施すれば、機能解除判定部64がこれを機能解除として判定し、その時点で保護装置が判定している結果(強制停止)はクリアされ、スタータの運転が可能となる。
【0022】
さらに、それらのキーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の操作による機能解除が判定された後1回目のスタータ運転に限っては、保護装置の自動停止機能を作動しないようにしてある。また、スタータのヒートプロテクション作動後の冷却待ちによる運転禁止判定中のような状況下では、ピニオン再飛び込みディレイ部61aが動作している所定時間の間でなくとも、時間当たりでキーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の操作が所定回数例えば2回または3回であれば同様に運転可能にしてあるか、あるいはエンジンが少なくとも始動できうるスタータの運転時間例えば3秒の間だけは運転可能にしてある。
【0023】
なお、上述はスタートスイッチ2によりキーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の操作の場合であるが、キャンセルスイッチ3の開閉操作の場合も同様に考えられる。また、キーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の回数は、上述に限定されることなく、任意の複数の所定回数であってもよい。
【0024】
次に、駆動信号に基づく機能解除動作、即ち上述のスタートスイッチ2によりキーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の操作による機能解除動作を、図2〜図4を参照して詳細に説明する。
先ず、図2に示す通常のスタータの停止動作について説明する。
装置の初期化を行い(ステップS1)、駆動信号の監視を開始し(ステップS2)、次いで、駆動信号認識部63で駆動信号あるか否かを判定し(ステップS3)、駆動信号があればマイクロプロセッサ6内の電源遮断タイマ(図示せず)を所定時間例えば3秒にセットする(ステップS4)。そして、後述のモード2でセットした駆動信号無し判定要求フラグがONか否かを判定し(ステップS5)、ONでなければ、ステップS6において、処理モードを後述するモード1またはモード2に分岐して当該モードを実行する。
【0025】
一方、ステップS3で駆動信号がなければ、後述のモード1で開始したオーバラン監視を終了し(ステップS7)、処理モードをモード1に更新し(ステップS8)、後述のモード2でセットした駆動信号無し判定要求フラグをクリアし(ステップS9)、同じく後述のモード1でセットした機能解除フラグをクリアする(ステップS10)。
【0026】
次いで、マイクロプロセッサ6内の後述のモード1でセットしたピニオン再飛び込みディレイ部61aに関連する再飛び込み防止タイマ(図示せず)をカウントダウンし(ステップS11)、電源遮断タイマをカウントダウンし(ステップS12)、ドライバインターフェース13からの出力によるソレノイドコイル11および12の励磁をOFFし、励磁スイッチ9を開放してモータ10の駆動を止めてスタータを自動停止する(ステップS13)。
【0027】
そして、再飛び込み防止タイマおよび電源遮断タイマの値が0か否かを判定し(ステップS14)、0でなければステップS3に戻って、上述の動作を繰り返し、0であればユニット電源を遮断する(ステップS15)。
また、ステップS5において、駆動信号無し判定要求フラグがONであれば再飛び込み防止タイマをカウントダウンし(ステップS16)、ステップS3に戻って、上述の動作を繰り返す。
【0028】
次に、実質的に機能解除動作前のモード1の動作を、図3を参照して説明する。
図2のステップS6でモード1に入ると、再飛び込み防止タイマをカウントダウンし(ステップS21)、再飛び込み防止タイマの値が0より大きいか否かを判定し(ステップS22)、0より大きくなければ、サーミスタ15で検出したスタータの温度が所定温度を超過したか否かを温度判定部65で判定し(ステップS23)、超過してなければスタータ運転可否総合判定部61からの出力ポート67およびドライバインターフェース13を介した出力によりソレノイドコイル11および12を励磁して励磁スイッチ9をONにしてモータ10を駆動し、スタータを始動する(ステップS24)。
【0029】
そして、再飛び込み防止タイマを所定時間例えば2秒にセットし(ステップS25)、処理モードをモード1からモード2へ更新し(ステップS26)、オーバラン監視を開始し(ステップS27)、ステップS3に戻って、上述の動作を繰り返す。
【0030】
一方、ステップS22で再飛び込み防止タイマの値が0より大きければ、再飛び込み防止タイマの動作中に、例えば3回以上駆動信号の断続的入力があるかどうか、即ち3回以上スタートスイッチ2によりキーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の操作があるかどうかを機能解除判定部64で判定し(ステップS28)、その断続的入力があれば機能解除フラグをセットし(ステップS29)、その後は上述同様にステップS24でスタータを始動し、ステップS25で再飛び込み防止タイマを2秒にセットし、ステップS26で処理モードをモード1からモード2へ更新し、ステップS27でオーバラン監視を開始し、ステップS3に戻る動作を繰り返す。また、ステップS28で、断続的入力がなければ、ステップS3に戻って、上述の動作を繰り返す。
【0031】
また、ステップS23で、スタータの温度が所定温度を超過していれば、所定時間当たり所定回数例えば3回以上駆動信号の断続的入力があるかどうかを判定し(ステップS30)、断続的入力があれば機能解除フラグをセットし(ステップS31)、その後は上述同様にステップS24でスタータを始動し、ステップS25で再飛び込み防止タイマを2秒にセットし、ステップS26で処理モードをモード1からモード2へ更新し、ステップS27でオーバラン監視を開始し、ステップS3に戻る動作を繰り返す。
【0032】
また、ステップS30で、断続的入力がなければ、スタータの運転時間を所定時間例えば5秒に制限する設定を行い(ステップS32)、その後は上述同様にステップS24〜ステップS27の動作を経た後、ステップS3に戻って、上述の動作を繰り返す。
【0033】
次に、スタータ運転中のモード2の動作を、図4を参照して説明する。
図2のステップS6でモード2に入ると、サーミスタ15で検出したスタータの温度が所定温度を超過したか否かを温度判定部65で判定し(ステップS41)、超過していれば、ヒートプロテクション動作履歴として記憶部66に記憶し(ステップS42)、スタータ運転時間が所定の制限時間、つまりこの場合モード1のステップ32で設定した5秒内か否かを判定し(ステップS43)、制限時間内でなければ機能解除フラグがONか否かを判定し(ステップS44)、機能解除フラグがセットされていなければ、スタータ運転可否総合判定部61からの出力ポート67およびドライバインターフェース13を介した出力によりソレノイドコイル11および12の励磁をOFFし、励磁スイッチ9を開放してモータ10の駆動を止めてスタータを強制的に停止する(ステップS45)。
【0034】
そして、オーバラン監視を終了し(ステップS46)、処理モードをモード2よりモード1に更新し(ステップS47)、駆動信号無し判定要求フラグをセットし(ステップS48)、ステップS3に戻って、上述の動作を繰り返す。一方、ステップS44で機能解除フラグがセットされていれば機能解除を実行し、ステップS3に戻って、上述の動作を繰り返す。
【0035】
ステップS41でスタータの温度が所定温度を超過していないか、またはステップS43でスタータ運転時間が所定の制限時間内であれば、ステップS49でオーバラン判定部62によりオーバランがあるか否かを見て、無ければステップS3に戻って、上述の動作を繰り返し、オーバランが有ればステップS44で上述同様に機能解除フラグがONか否かを判定し、機能解除フラグがセットされていなければステップ45以降の動作を繰り返し、セットされていれば機能解除を行い、ステップS3に戻って、上述の動作を繰り返す。
【0036】
なお、上述では、スタートスイッチ2によりキーシリンダのスタートポジションへの断続的投入の操作を行い、そのときの駆動信号を識別して機能解除動作を行う場合であるが、機能解除スイッチとしてのキャンセルスイッチ3の開閉状態に基づいて機能解除を行う場合も、その開閉状態を機能解除判定部64で判定することにより同様に行うことができる。
【0037】
このように本実施の形態では、クランキングによる電圧変動からスタータの停止判定を実施するタイプの車両用スタータの保護装置において、圧縮不良などによるエンジン不具合に伴う、クランキング時の電圧変動の挙動変化によって、保護装置によるスタータ停止が誤判定されてエンジンが自立運転を開始できていない、つまりスタータがオーバラン状態でないにも拘わらず、スタータが自動停止してしまうことを回避できる。
【0038】
また、整備上で実施されることが予想されるエンジンの圧縮圧力測定時の連続クランキングにおいて、車両用スタータの保護装置によるスタータ停止の誤判定によって連続クランキングが自動停止によって中断され、圧縮圧力が測定不能となることを回避できる。
【0039】
また、例えば踏み切り内でのエンジン故障やその他の緊急事態で、スタータによる走行を余儀なくされた状態で、車両用スタータの保護装置によるスタータ停止の誤判定によってスタータ走行が不能となることを回避できる。
【0040】
また、運転者は、キーシリンダの操作のみで任意にスタータ自動停止の機能を解除したクランキングを実施できる。車両用スタータの保護装置のスタートスイッチを利用することにより、本来、車両にはない特別なスイッチを追加する必要も操作する必要もない。
【0041】
また、スタータがヒートプロテクションで運転禁止となって、次回運転が可能となるのが長い時間(例えばスタータの冷却が必要であるような場合)を要することになった場合に、もしかしてそこでエンジンが始動不能であるような場合であっても(特に、例えば救急車などにこのシステムを適用するような場合)スタータの運転禁止を解除できる。
【0042】
また、スタータ故障の原因や使用環境が、スタータを取り外した後で推定しやすくなり、例えば、生涯の始動回数が記録されていれば、販売地域別の始動回数分布が推定できるし、アイドリングストップ機能をそなえた車両においては始動回数が保証回数以内か以上かがわかるので故障時の原因を明確にすることもできる。
【0043】
また、例えば生涯の体験温度が記録されていれば、装着車両別の体験温度分布がわかるし、ヒートプロテクションの作動履歴が記憶されていれば故障時の原因を明確にすることができる。また、車両整備時にその記憶内容を抽出できるような手段を有していれば、スタータの交換要否を判断しやすくなる。
また、記憶手段として電流フューズや、電圧を印加することにより何らかの化学反応で変色し、1度反応すると色が元に戻らない素子を用いることで、記憶のための電力消費が必要なくなる。
【0044】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2を示す構成図である。図5において、図1と対応する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、上記実施の形態1よりキャンセルスイッチ3とこれに関連する入力インターフェース5および入力ポート70の部分と、サーミスタ15とこれに関連する入力インターフェース16および入力ポート72の部分とが搭載されてない保護装置に適用した場合である。
【0045】
従って、本実施の形態に於けるマイクロプロセッサ6Aは、上述の入力ポート70および72が削除され、機能解除判定部64の代わりに駆動信号認識部63の出力のみが入力される機能解除判定部64Aを用い、温度判定部65の代わりに積算タイマとしての運転時間タイマ73が用いられる以外は図1のマイクロプロセッサ6と同様である。この運転時間タイマ73は、スタータ温度をマイクロコンピュータ内部でカウントするタイマで、実質的にスタータ運転時間を監視してスタータ温度を推定している。
【0046】
なお、ここでは、機能解除判定部64Aは、実質的にスタータの動作に関連したスイッチ即ちキャンセルスイッチ3の動作状態(開閉状態)を検出する検出手段を構成する。
【0047】
かくして、本実施の形態でも、上記実施の形態1と同様の効果が得られ、特に本実施の形態ではスタータが発熱し過ぎることを運転時間タイマのような積算タイマを用いて管理するので、構成の簡略化、コストの低廉化が図れる。
勿論、本実施の形態でも、キャンセルスイッチを用いてもよく、また、温度検出手段として運転時間タイマの代わりにサーミスタと温度判定部を用いてもよい。
【0048】
【発明の効果】
この発明によれば、クランキングによる電圧変動に基づいてスタータの自動停止を行う車両用スタータの保護装置において、上記スタータの動作に関連したスイッチの動作状態を検出する検出手段と、車両の特異な状況下では上記検出手段の出力に基づいて上記スタータの自動停止を解除する機能解除手段とを備えたので、スタータがオーバラン状態でないにも拘わらず、スタータが自動停止してしまうことを回避でき、また、保護装置によるスタータ停止の誤判定によって連続クランキングが自動停止によって中断され、圧縮圧力が測定不能となることを回避でき、あるいは、踏み切り内でのエンジン故障やその他の緊急事態で、スタータによる走行を余儀なくされた状態で、スタータ保護装置によるスタータ停止の誤判定によってスタータ走行が不能となることを回避できるという効果がある。
また、上記スタータの連続運転または停止インターバルの少ない複数回に及ぶ上記スタータの断続運転中の該スタータの発熱を検出する温度検出手段を備え、上記機能解除手段は該温度検出手段と上記検出手段の出力に基づいて上記スタータの自動停止を解除するので、スタータがヒートプロテクションで運転禁止となっても、必要に応じて即座にスタータの運転禁止を解除できるという効果がある。
【0049】
また、上記検出手段のスイッチがスタートスイッチであり、上記機能解除手段は、上記スタートスイッチによるキーシリンダのスタートポジションへの断続的な投入が所定時間当たりで所定回数以上検出されると上記スタータの自動停止を解除するので、特別なスイッチの追加や操作を要することなく、キーシリンダの操作のみで任意にスタータ自動停止の機能を解除できるという効果がある。
また、上記所定時間は、上記スタータの前回の運転終了時点から所定時間の間は該スタータを運転しないようにするための機能に設定される所定時間を流用するので、前回の運転終了時の惰性回転の衝撃を緩和できるという効果がある。
また、上記所定回数が、2回または3回であるので、短時間に確実に機能解除を行うことができるという効果がある。
また、上記検出手段のスイッチが機能解除スイッチであり、上記機能解除手段は、上記機能解除スイッチの動作が閉成状態のときに上記スタータの自動停止を解除するので、簡単な構成で機能解除を行うことができるという効果がある。
また、上記機能解除スイッチは、車室内、またはエンジンルーム内、或いは保護装置本体に設置されているので、機能解除の際のスイッチの操作を確実に行うことができるという効果がある。
また、上記温度検出手段は、上記スタータの発熱を検知するサーミスタと、該サーミスタの出力に基づいて上記スタータの発熱を判定する温度判定部からなるので、スタータのヒートプロテクションによる運転禁止を確実に解除できるという効果がある。
また、上記温度検出手段は、上記スタータの運転時間を監視して該スタータの温度を推定する運転時間タイマであるので、実質的にソフトウエアでスタータのヒートプロテクションによる運転禁止を解除でき、構成の簡略化に寄与できるという効果がある。
また、保護機能の動作回数の履歴や体験温度または自己診断結果などを記憶する記憶手段を備えたので、スタータ故障の原因や使用環境が、スタータを取り外した後で推定しやすくなり、また、装着車両別の体験温度分布がわかり、さらに、故障時の原因を明確にすることができ、しかも、スタータの交換要否を判断しやすくなるという効果がある。
また、上記記憶手段としてフラッシュROMを用いたので、保護機能の動作回数の履歴や体験温度または自己診断結果などを確実に記憶できるという効果がある。
また、上記記憶手段として電流フューズを用いたので、記憶のための電力消費が不要になるという効果がある。
また、上記記憶手段として電圧を印加することにより何らかの化学反応で変色し、1度反応すると色が元に戻らない素子を用いたので、記憶のための電力消費が不要になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1の動作説明に供するためのフローチャ−トである。
【図3】 この発明の実施の形態1の動作説明に供するためのフローチャ−トである。
【図4】 この発明の実施の形態1の動作説明に供するためのフローチャ−トである。
【図5】 この発明の実施の形態2を示す構成図である。
【符号の説明】
2 スタートスイッチ、 3 キャンセルスイッチ、6,6A マイクロプロセッサ、 10 スタータ用モータ、 15 サーミスタ、 61 スタータ運転可否総合判定部、 61a ピニオン再飛び込みディレイ部、 62 オーバラン判定部、 63 駆動信号認識部、 64,64A 機能解除判定部、 65 温度判定部、 66 記憶部、 73 運転時間タイマ。
Claims (12)
- クランキングによる電圧変動に基づいてスタータの自動停止を行う車両用スタータの保護装置において、
上記スタータの動作に関連したスイッチの動作状態を検出する検出手段と、
上記スタータの連続運転または停止インターバルの少ない複数回に及ぶ上記スタータの断続運転中の該スタータの発熱を検出する温度検出手段と、
上記温度検出手段と上記検出手段の出力に基づいて上記スタータの自動停止を解除する機能解除手段と
を備えたことを特徴とする車両用スタータの保護装置。 - 上記検出手段のスイッチがスタートスイッチであり、上記機能解除手段は、上記スタートスイッチによるキーシリンダのスタートポジションへの断続的な投入が所定時間当たりで所定回数以上検出されると上記スタータの自動停止を解除することを特徴とする請求項1記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記所定時間は、上記スタータの前回の運転終了時点から所定時間の間は該スタータを運転しないようにするための機能に設定される所定時間を流用することを特徴とする請求項2記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記所定回数が、2回または3回であることを特徴とする請求項2記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記検出手段のスイッチが機能解除スイッチであり、上記機能解除手段は、上記機能解除スイッチの動作が閉成状態のときに上記スタータの自動停止を解除することを特徴とする請求項1記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記機能解除スイッチは、車室内、またはエンジンルーム内、或いは保護装置本体に設置されていることを特徴とする請求項5記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記温度検出手段は、上記スタータの発熱を検知するサーミスタと、該サーミスタの出力に基づいて上記スタータの発熱を判定する温度判定部からなることを特徴とする請求項1記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記温度検出手段は、上記スタータの運転時間を監視して該スタータの温度を推定する運転時間タイマであることを特徴とする請求項1記載の車両用スタータの保護装置。
- 保護機能の動作回数の履歴や体験温度または自己診断結果などを記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記記憶手段としてフラッシュROMを用いたことを特徴とする請求項9記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記記憶手段として電流フューズを用いたことを特徴とする請求項9記載の車両用スタータの保護装置。
- 上記記憶手段として電圧を印加することにより何らかの化学反応で変色し、1度反応すると色が元に戻らない素子を用いたことを特徴とする請求項9記載の車両用スタータの保護装置。
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