JP3889257B2 - 乗客コンベア - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エスカレータ等の乗客コンベアに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のエスカレータ等の乗客コンベアのステップは、ステップチェーンにより無端状に連結されて移動する複数のステップを有し、このステップは例えば特開昭61−271号公報に開示されているようにその表面側と裏面側に多数の凸条部と凹溝部を有するステンレス鋼等の波板成型体になる踏面クリートと、この踏面クリートに連なり、その前後端部に配置される通常合成樹脂成型の端部クリートを備えている。この場合、踏面クリートには破損の少ない金属材が、端部クリートには黄色など注意換起のための着色性に優れ、弾力性もある合成樹脂材が採用されるのが普通である。
【0003】
そして、通常ステップの踏面クリートの表面側凸条部は、乗降口床の先端に配置された一般に合成樹脂製であるコーム(くし板)と噛合うようになっている。しかし、前記コームと前記踏面クリートとの噛合い部に、小石などの異物が侵入した場合、踏面クリートの表面側凸条部に倒れやつぶれという圧縮変形が生じるという問題があった。
【0004】
この問題解決のため、同一出願人より特公昭57―59193号として端部クリートに係合片を設け、この係合片を踏面クリートの表面側凸条部に嵌合するものが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記提案されたものでは、端部クリートに設けられる係合片の精度が、湯流れ等により維持することが困難で、表面側凸条部との嵌合が難しいこと、端部クリートを浮き上がらないように固定するため、この端部クリートを支持するブラケットに係合部を設け、この係合部に横方向から挿入しその後ビス止めするという固定方式が採用されたことなどから、この案を採用することはできなかった。
【0006】
本発明の目的とするところは、端部クリートに特殊加工を施すことなく、ステップとコームとの噛合い部に異物が侵入した時、踏面クリートの表面側凸条部に変形を生じることのない乗客コンベアを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、ステップチェーンにより無端状に連結されて移動する複数のステップを有し、このステップの表面側と裏面側に多数の凸条部と凹溝部を有する波板体で構成される踏面クリートと、この踏面クリートの前後部に着色された端部クリートを備えた乗客コンベアにおいて、前記踏面クリートの前後端部の裏面側凹溝部内に、この端部裏面側凹溝部を閉塞する変形阻止体を個別に備え、かつ、この変形阻止体を、前記踏面クリートの裏面側に固設される底辺部と、前記踏面クリートの裏面側凹溝部毎にほぼこの凹溝部に密着する形の立上り辺とから構成した。
【0008】
これにより、表面側凸条部の上面及び側面に異物による外力が作用しても表面側凸条部が倒れたり、つぶれたりする圧縮変形を阻止できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基いて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態になる乗客コンベアの一種であるエスカレータの上部付近の概念的側面図、図2は図1に用いているステップの背面図、図3は図2のイ−イ線に沿う断面図、図4は図3の要部拡大図、図5は図4のロ−ロ線に沿う断面図、図6は本発明の他の実施形態を示す図5相当の断面図、図7は更に他の実施形態を示す図5相当の断面図である。
【0011】
図1〜図5において、エスカレータ1は、下階床(図示省略)から上階床Fにかけて設置され、無端状のステップチェーン2に連結されて移動する複数のステップ3と、このステップ3と同期移動するハンドレール4の両移動体を持って乗客輸送を行うシステムとなっている。また、両移動体は、機械室Kに設けられた制御装置5の電気指令により回転するモータ6と減速機7で構成される駆動機8から駆動チェーン9を介して駆動車10の回転により駆動され、各々案内レール11及び欄干12に案内されて移動する仕組みである。
【0012】
そして、ステップ3は、少なくとも多数の表面側凸条部31A、裏面側凸条部31AAと表面側凹溝部31B、裏面側凹溝部31BBを交互に有する踏面クリート31と、この踏面クリート31の前端部に連なり、多数の凸条部32Aと凹溝部32Bを交互に有する幅W1の端部クリート32と、同様に踏面クリート31の後端部に連なり、多数の凸条部33Aと凹溝部33Bを交互に有する幅W2の端部クリート33と、踏面クリート31の両側部の幅W3の側部クリート34,35を備えてステップ踏面を形成している。
【0013】
また、この端部クリート32,33及び側部クリート34,35には、ステップ3の周縁に存在する隙間に靴先が接近して挟まれるのを防止する目的から、黄色などの注意喚起のための着色性がよく、しかも、万一靴先が挟まれた場合にそれを引き抜き易くするための弾力性を有するポリカーボネート樹脂などの合成樹脂材を採用し、これらを小径ねじ(図示せず)によって踏面クリート31に着脱自在に固定している。
【0014】
また、ステップ3は、踏面クリート31の後端部31Cと一端が連結され、曲率半径Rの凸曲面部36Aを有して下方に延びる後面ライザー36と、踏面クリート31と後面ライザー36とをこれらの幅方向両端部で支える左右一対に略三角状の支持ブラケット37を備えている。さらに踏面クリート31の前端部31Dと後面ライザー36の下端部36B側、すなわち支持ブラケット37の前端部37Aと下端部37B部分に、各々が主軸38Aと主軸39Aに軸支される前輪38と後輪39を備え、この前輪38と後輪39が案内レール11に沿って移動し、乗降床13の下側で方向転換する構造である。
【0015】
さらに、ステップ3は、その踏面を構成する多数の表面側凸条部31A,凸条部32A、33Aと多数の表面側凹溝部31B、凹溝部32B、33B、それに側部クリート34、35が、乗降床13の先端部に固設されたコーム14の多数の歯先14Aと噛合う構成になっており、この噛合い隙間を最小として乗客の靴先や転倒者の指先が侵入しないように配慮されている。そして、このコーム14も端部クリート32などの材質選定目的と同様、着色性がよく、弾力性のある合成樹脂材を採用し、小径ねじ(図示せず)によって乗降床13に着脱自在に固定されている。
【0016】
ここで、本発明の主体であるステップ3は、踏面クリート31の裏面側に、踏面クリート31とコーム14との間の異物侵入に対し、次に述べる踏面クリート31の保護策が講じられている。
【0017】
すなわち、図3、図4及び図5に示すように、ステンレス鋼等の波板成型体である踏面クリート31は、板厚t1(通常0.5〜1mm)で多数の表面側凸条部31A、裏面側凸条部31AA、表面側凹溝部31B、裏面側凹溝部31BBを交互に有する波板体であり、この踏段クリート31の長手方向の後端部31C、前端部31Dには、踏面クリート31の底部に溶接等により接合(接合点S)される底辺部40Aを有し、裏面側凹溝部31BBごとにそれを閉塞する形状の板厚t2(数mm程度)で、幅Wの立上り辺40Bを持つ変形阻止体40が固設され、配置されている。
【0018】
ここで、変形阻止体40は、裏面側凹溝部31BBの形状に沿って、ほぼそれに密着する形の立上り辺40Bで形成される櫛歯状で、これが各裏面側凹溝部31BBを閉塞している。そして、矢印M方向にステップ3と一緒に進行してコーム14の歯先14Aを通過せんとする異物Xが表面側凸条部31Aとコーム14の隙間σ1に侵入(図4)し、この異物Xが表面側凸状部31Aを圧縮した場合(図5)には、立上り辺40Bの頂部40Cで圧縮力に抗して表面側凸条部31Aの圧縮変形(つぶれ)を阻止する仕組みである。
【0019】
一方、矢印M方向にステップ3と一緒に進行してコーム14の歯先14Aを通過せんとする異物Yが表面側凹溝部31Bとコーム14の隙間σ2に侵入し、この異物Yが表面側凹溝部31Bを圧縮した場合(図5)には、立上り辺40Bの側部40Dで圧縮力に抗して表面側凸条部31Aの圧縮変形(つぶれ)を阻止する仕組みである。
【0020】
なお、異物X及びYの大きさや硬さがコーム14を破壊するほどのものであれば、コーム14を消耗品扱いとして交換することになるが、この場合でも金属製である踏面クリート31の変形は免れることになる。
【0021】
また、図6に示すような本発明の他の実施形態においても踏面クリート41(上記踏面クリート31相当)の変形を阻止することができる。図6において、この形態では踏面クリート41の裏面側凹溝部41A内の、図4に符号Lで示す長さ範囲に、硬質樹脂材等の凝固材42を充填し、上記変形阻止体40と同等の変形阻止機能を具備させたものである。
【0023】
なお、本発明になる上記ステップ3の構成は、エスカレータ1と類似した動く歩道用ステップの場合にもそのまま応用することができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、端部クリートに特殊加工を施すことなく、ステップとコームとの噛合い部に異物が侵入した場合でも、踏面クリートの表面側凸条部に変形を生じることのない乗客コンベアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態になる乗客コンベアの一種であるエスカレータの上部付近の概念的側面図である。
【図2】図1に用いているステップの背面図である。
【図3】図2のイ−イ線に沿う断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図4のロ−ロ線に沿う断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す図5相当の断面図である。
【符号の説明】
1 乗客コンベア(エスカレータ)
2 ステップチェーン
3 ステップ
31,41 踏面クリート
32,33 端部クリート
31A 表面側凸条部
31AA 裏面側凸条部
32A,33A 端部クリートの凸条部
31B 表面側凹溝部
31BB,41A 裏面側凹溝部
32B,33B 凹溝部
40 変形阻止体
41 凝固材(変形阻止体)

Claims (2)

  1. ステップチェーンにより無端状に連結されて移動する複数のステップを有し、このステップの表面側と裏面側に多数の凸条部と凹溝部を有する波板体で構成される踏面クリートと、この踏面クリートの前後部に着色された端部クリートを備えた乗客コンベアにおいて、
    前記踏面クリートの前後端部の裏面側凹溝部内に、この端部裏面側凹溝部を閉塞する変形阻止体を個別に備え、かつ、この変形阻止体を、前記踏面クリートの裏面側に固設される底辺部と、前記踏面クリートの裏面側凹溝部毎にほぼこの凹溝部に密着する形の立上り辺とから構成したことを特徴とする乗客コンベア。
  2. ステップチェーンにより無端状に連結されて移動する複数のステップを有し、このステップの表面側と裏面側に多数の凸条部と凹溝部を有する波板体で構成される踏面クリートと、この踏面クリートの前後部に着色された端部クリートを備えた乗客コンベアにおいて、
    前記踏面クリートの前後端部の裏面側凹溝部内に、この端部裏面側凹溝部を閉塞する変形阻止体を個別に備え、かつ、この変形阻止体を、前記踏面クリートの裏面側凹溝部を閉塞する硬質樹脂材等からなる凝固材で構成されていることを特徴とする乗客コンベア。
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