JP3888974B2 - 蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブとそれを用いた蛋白質リン酸化・脱リン酸化の検出および定量方法 - Google Patents
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Description
この出願の発明は、蛋白質のリン酸化・脱リン酸化を検出、定量するための可視化プローブに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、2種の異なる発色団の間にリン酸化される部位を有する基質ドメインとリン酸化認識ドメインをリンカー配列を介して連結し、配置した蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブとそれを用いた蛋白質のリン酸化・脱リン酸化の検出および定量方法に関するものである。
背景技術
細胞内キナーゼによる蛋白質のリン酸化は、細胞内シグナリングにおける最も重要な反応のひとつであり、細胞の生存、増殖、分化等の過程において重要な役割を果たすことが知られている(Cell 100, 113-127(2000))。キナーゼ蛋白質は、ATPのγリン酸の転移と基質蛋白質上のセリン、トレオニンおよび/またはチロシンのヒドロキシル基のリン酸化を触媒するが、このとき、基質蛋白質はリン酸の負電荷によりコンホメーションの変化を受け、そのことが引き金となって、基質蛋白質の酵素的活性化やそれぞれの標的蛋白質との相互作用が起こる。したがって、蛋白質のリン酸化・脱リン酸化による細胞内シグナリングを増強または抑制する物質をスクリーニングすることができれば、疾病の診断が可能となるだけでなく、新規医薬品の開発等において重要な知見が得られると期待される。
従来、キナーゼ蛋白質に関わるシグナリングを解析するためには、電気泳動、免疫細胞化学およびin vitroでのキナーゼアッセイ等が使用されてきた。しかしながら、これらの従来法は、いずれも破壊的分析法によるものであり、生きた細胞における蛋白質のリン酸化・脱リン酸化のシグナルを空間的かつ経時的に解析することはできなかったのが実情である。
一方、キナーゼシグナリングとは異なり、Ca2+(Nature 388, 882-887(1997))、イノシトール1,4,5−三リン酸(Science 248, 1527-1530(1999))、ジアシルグリセロール(J.Cell Biol. 140, 485-498(1998))、サイクリックAMP(Nature 349, 694-697(1997); Nat.Cell Biol. 2, 25-29(1999))およびサイクリックGMP(Anal.Chem. 72,5918-5924(2000))のようなセカンドメッセンジャーのシグナリングは、蛍光指示薬を用いて可視化されており、そのような測定方法では、単一生細胞におけるセカンドメッセンジャーのシグナリングを、高い精度で空間的および経時的に解析できることが報告されている(Curr.Opinion Neurobiol. 10, 416-421(2000))。
近年になってセカンドメッセンジャーシグナリング可視化プローブと同様に、生細胞中でのキナーゼシグナリングを可視化するプローブが研究され、いくつかの報告がなされている(Anal.Biochem.195, 148-152(1991);NeuroReport7, 2695-2700(1996);FEBS Lett. 414, 55-60(1997); Nat. Biotechnol. 18, 313-316(2000))。しかし、これらの可視化プローブは、いずれも、リン酸化による基質ペプチドそのもののコンホメーション変化に基づくものであり、そのようなコンホメーション変化の制御が不可能であったために特定のキナーゼシグナリングに対して有用性を示すのみで、汎用性を有さないものであったのが実情である。
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの実情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、生細胞、動物体、植物体等における蛋白質のリン酸化・脱リン酸化を非破壊的にモニタリングでき、かつ空間的、経時的分析をも可能とする細胞内蛋白質リン酸化・脱リン酸化の汎用的な検出、測定方法を提供することを課題としている。
発明の開示
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、蛍光共鳴エネルギー転移を起こすドナー発色団とアクセプター発色団の間に、リン酸化される部位を有する基質ドメインとリン酸化認識ドメインがリンカー配列を介して結合している直列融合ユニットが連結されていることを特徴とする蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを提供する。
第2には、この出願の発明は、蛍光共鳴エネルギー転移を起こすドナー発色団とアクセプター発色団が各々異なる蛍光波長を有する蛍光蛋白質であること、第3には、緑色蛍光蛋白質の変異体がシアン蛍光蛋白質および黄色蛍光蛋白質であること、さらに、第4には、緑色蛍光蛋白質の変異体がシアン蛍光蛋白質および黄色蛍光蛋白質であることを上記蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの態様として提供する。
さらに、この出願の発明は、第5には、基質ドメインのリン酸化部位がチロシン、セリン、またはトレオニンのいずれかのアミノ酸を有する前記の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを提供する。
この出願の発明は、第6には、リン酸化認識ドメインが、SH2ドメイン、ホスホチロシン結合ドメインまたはWWドメインのいずれかの内因性ドメインである蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを、また、第7には、リン酸化認識ドメインがリン酸化された基質ドメインを免疫原として調製された単鎖抗体である蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを提供する。
さらに、この出願の発明は、第8には、最末端に細胞内局在性配列を有する上記のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブをも提供する。
そして、この出願の発明は、第9には、前記第1〜第8の発明のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブと候補物質を共存させ、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質リン酸化増強・抑制物質のスクリーニング方法をも提供する。
また、第10には、この出願の発明は、前記第1〜第8の発明のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブにおいて、基質ドメインがリン酸化された蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブと候補物質を共存させ、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質脱リン酸化増強・抑制物質のスクリーニング方法を提供する。
この出願の発明は、第11には、前記のいずれかのスクリーニング方法において、蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、候補物質と共存させることを態様として提供する。
さらに、この出願の発明は、第12には、前記第1〜第8の発明のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質リン酸化物質の定量方法を提供する。
そして、第13には、第1〜第8のいずれかの発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブにおいて、基質ドメインがリン酸化されたものを細胞内に導入し、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質脱リン酸化物質の定量方法をも提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、この発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの構成と原理を表す概略摸式図である。1〜8は、次の各部位を示している。(1a:蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(リン酸化前)、1b:蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(リン酸化後)、11:直列融合ユニット、2a:基質ドメイン(リン酸化前)、2b:基質ドメイン(リン酸化後)、21a:リン酸化部位(リン酸化前)、21b:リン酸化部位(リン酸化後)、3:リン酸化認識部位、4:リンカー配列、5:ドナー発色団、5’:アクセプター発色団、6:リン酸化物質、7:脱リン酸化物質)
図2は、この発明の実施例において構築した各リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの具体的構成を示した概略摸式図である。
図3は、この発明の実施例において、図2(a)および図2(b)に示したリン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入した際のホスホチロシン抗体を用いた免疫ブロットの解析結果を表す共焦点レーザー蛍光顕微鏡写真に代わる図である。
図4Aは、図2(b)に示した蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、CFP用の発光フィルター(480nm±15nm)を使用して撮影した蛍光顕微鏡像を示した図である。
図4Bは、図2(b)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを導入した細胞をインスリンで刺激した際の、440±10nmの励起光によるCFP(480±15nm)とYFP(535±12.5nm)の蛍光強度比(以下CFP/YFPとする)の経時変化を表す擬似色画像示す図である。
図4Cは、図2(b)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを導入した細胞をインスリンで刺激した際の、細胞質と核における440±10nmの励起光によるCFP/YFPの経時変化を示す図である。
図4Dは、インスリンレセプターの阻害因子であるtyrphostinで処理した図2(b)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを導入した細胞(■)と図2(c)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを導入した細胞(□)をインスリンで刺激した際の、各々の細胞質における440±10nmの励起光によるCFP/YFPの経時変化を示した図である。
図5Aは、核外移動シグナル配列を有する図2(d)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを導入した細胞をインスリンで刺激した際の核および細胞質おける440±10nmの励起光によるCFP/YFPの経時変化を表す擬似色画像示す図である。
図5Bは、図2(d)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを導入した細胞を各濃度のインスリンで刺激した際の核および細胞質における440±10nmの励起光によるCFP/YFPの経時変化を表す図である。
図6Aは、図2(b)と図2(e)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを各々導入した細胞をインスリンで刺激した際の細胞質における440±10nmの励起光によるCFP/YFPの経時変化を比較する図である。
図6Bは、図2(e)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを各々導入した細胞をインスリンで刺激した際の(e)とインスリンレセプターの同時局在を確認するための共焦点走査型レーザー顕微鏡写真を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
前記のとおり、細胞内キナーゼによる蛋白質のリン酸化は、細胞内のシグナリングにおいて最も重要なステップのひとつであり、細胞の生存、増殖、分化等の過程に深く関わっている。したがって、蛋白質のリン酸化や脱リン酸化は、多くの疾患において原因あるいは症状の一環として観察される現象である。すなわち、特定蛋白質のリン酸化を検出あるいは定量できれば、様々な疾患の早期診断が可能となるのである。また、蛋白質のリン酸化や脱リン酸化を増強または阻害する因子や物質をスクリーニングできれば、これらの疾患に関与する物質や、新規治療薬の発見に大きく貢献できる。
この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブは、リン酸化物質による蛋白質のリン酸化を可視化し、検出、定量するためのプローブである。図1にこのような蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの構成と原理を表す概略摸式図を示した。
この発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1a)は、具体的には、リン酸化部位(21a)を有する基質ドメイン(2a)とリン酸化認識ドメイン(3)がリンカー配列(4)を介して結合している直列融合ユニット(11)を有し、この直列融合ユニット(11)が蛍光共鳴エネルギー転移を起こすドナー発色団(5)とアクセプター発色団(5’)の間に連結されていることを特徴とするものである。
この発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1a)では、例えばリン酸化物質(6)により基質ドメイン(2a)のリン酸化部位(21a)がリン酸化されると、隣接したリン酸化認識ドメイン(3)がこれを認識し、リン酸化した基質ドメイン(21b)と特異的に相互作用する。そのような相互作用の生じた蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1b)では、ドナー発色団(5)とアクセプター発色団(5’)が接近するため、外部光を照射すると、ドナー発色団(5)の励起とアクセプター発色団へのエネルギー転移が起こり、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)効率の変化が見られる。したがって、このようなFRETの変化を検出することにより、基質ドメイン(2a)のリン酸化(2b)が確認される。
同様にして、リン酸化された基質ドメイン(21b)を有する蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1b)が脱リン酸化物質(7)と共存し、基質ドメイン(2b)のリン酸化された部位(21b)が脱リン酸化(21a)されれば、リン酸化認識ドメイン(3)と基質ドメイン(2b)の相互作用が消失し、ドナー発色団(5)とアクセプター発色団(5’)が再び離れる。このとき、外部光を照射すると、ドナー発色団(5)の励起のみが起こり、アクセプター発色団へのエネルギー転移は起こらなくなる。したがって、FRET効率に生じる変化から、蛍光分析により基質ドメイン(2b)の脱リン酸化を検出できる。
この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブにおける各構成部位をより具体的に説明する。まず、直列融合ユニット(11)は、前述のとおり、基質ドメイン(2a)、リン酸化認識ドメイン(3)およびそれらを結合するリンカー配列(4)からなるものであるが、基質ドメイン(2a)は、リン酸化が起こる部位(21a)を有するものであればよく、その配列、構造等はとくに限定されない。リン酸化部位(21a)となりうる部位としては、基本的には−OH基を有していればよく、チロシン(Tyr)、セリン(Ser)およびトレオニン(Thr)等の天然アミノ酸や、化学修飾によりOH基を導入したペプチドが例示される。
次に、リン酸化認識ドメインは、基質ドメイン(2a)のリン酸化を認識し、リン酸化した基質ドメイン(2b)と特異的に相互作用できるものである。この条件を満たしているものであればこれはどのようなものであってもよく、例えば、SH2ドメイン、ホスホチロシン結合ドメイン、WWドメイン等、従来よりリン酸化した特定の基質を認識することが知られている内因性ドメインが挙げられる。また、相互作用するリン酸化認識ドメイン(3)が知られていない基質ドメイン(2b)について検出および定量を行いたい場合には、リン酸化した目的基質ドメイン(2b)を免疫原として単鎖抗体を調製し、リン酸化認識ドメイン(3)とすることができる。このような、抗体を用いれば、所望のリン酸化基質ドメイン(2b)について特異的に相互作用するリン酸化認識ドメイン(3)を得ることが可能となり、蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの汎用性も高まる。リン酸化を確認したい基質ドメイン(2b)を免疫原とする単鎖抗体は、一般的な免疫学的手法により作成できるものである。
次に、この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブにおいて、リンカー配列(4)は、適度な柔軟性を有し、かつ、リン酸化される部位を有さないものであればよく、その配列や鎖長はとくに限定されない。リンカー配列(4)がリン酸化する部位(21a)を有する場合には、リン酸化物質(6)によりリン酸化される可能性が高く、蛋白質リン酸化の正確な検出と定量が不可能となり、好ましくない。リンカー配列(4)としては、基質ドメイン(2a)のリン酸化(2b)により、リン酸化認識部位(3)と基質ドメイン(2b)が相互作用でき、ドナー発色団(5)とアクセプター発色団(5’)の接近を可能とする程度の鎖長を有するポリペプチドまたはオリゴペプチドとすることが好ましい。
この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブは、以上のとおりの構成よりなる直列融合ユニット(11)が、蛍光共鳴エネルギー転移を起こすドナー発色団(5)とアクセプター発色団(5’)の間に連結されているものであり、基質ドメイン(2a)がリン酸化された場合、前記の機構によりFRETの変化を示すものである。このようなドナー発色団(5)とアクセプター発色団(5’)としては、様々な蛍光物質、とくに蛍光蛋白質が考慮される。両者は、外部光の照射により異なる波長に蛍光を示す物質であればよく、緑色蛍光蛋白質(GFP)の変異体であるシアン蛍光蛋白質(CFP)や黄色蛍光蛋白質(YFP)が好ましく例示される。中でもCFPとYFPが好ましく、これらの営光蛋白質に、さらに用途に応じた変異を施し、ドナーおよび/またはアクセプター発色団として用いてもよい。
以上のとおりの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブにおいて、ドナー発色団に隣接するドメインが基質ドメイン(2a)であるかリン酸化認識ドメイン(3)であるかは、とくに限定されない。これらのドメインとリンカー配列(4)の構造や立体障害によってより適当な連結順序が異なるため、基質ドメイン(2a)とリン酸化認識ドメイン(3)の組み合せに応じて適宜選択することが好ましい。
さらに、この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブは、さらに、末端に種々の局在性配列を有するものであってもよい。このような局在性配列は、特定細胞や細胞内の特定領域、あるいは特定の組織を認識し、蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを局在化させることができるものである。具体的には、核外輸送シグナル配列や、プレクストリン相同性(PH)ドメイン等の細胞膜結合配列を連結し、局在性配列とすることができる。
この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブは、以上のとおりのものであるが、その製造方法は、とくに限定されない。全合成により構築してもよいが、好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の一般的な遺伝子工学的手法により各ドメインを連結する方法が挙げられる。このとき、各種の制限サイト等を導入してもよい。
この出願の発明では、以上のとおりの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを用いて、蛋白質のリン酸化を増強あるいは抑制する物質をスクリーニングする方法をも提供する。すなわち、この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブと候補物質を共存させたときに、蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1a)の基質ドメイン(2a)がリン酸化されれば、前記のとおりの機構によりFRETの変化より蛋白質のリン酸化を検出し、基質ドメイン(2a)をリン酸化する物質をスクリーニングできるのである。このような候補物質は、直接プロテインキナーゼとして作用し、蛋白質をリン酸化させるものであってもよいし、細胞内シグナリングの初期で作用する、すなわちプロテインキナーゼ活性化物質として作用する物質であってもよい。
一方、候補物質による脱リン酸化の増強や抑制を確認し、脱リン酸化増強または抑制物質をスクリーニングする場合には、予め蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1a)の基質ドメイン(2a)をリン酸化し(2b)、リン酸化後の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1b)と候補物質を共存させたときに生じるFRET変化を測定すればよい。
以上のとおりのリン酸化および脱リン酸化の増強・抑制物質のスクリーニング方法では、蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ(1a)は、例えばpH、塩濃度等を調整した溶液中で候補物質と共存させてもよいし、一般的な遺伝子工学的手法により細胞内に導入して、候補物質と接触させてもよい。このとき候補物質は、細胞外に存在していても、細胞に取込まれてもよく、さらには予め細胞に遺伝子工学的手法により導入されていてもよい。また、候補物質は、細胞中に既存の酵素やレセプター等であってもよい。
さらに、この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを用いれば蛋白質リン酸化物質を定量することもできる。つまり、前記の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、蛍光波長の変化を測定することにより蛋白質リン酸化物質を定量できるのである。例えばある蛋白質aをリン酸化することが知られる物質Aについて、予め各濃度のリン酸化物質Aと接触させた際の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブにおけるFRET変化をin vitroで経時的に測定し、各FRET値がすべて飽和に達する時間を調べておく。この時間における物質A濃度とFRET値の関係について検量線を作成しておけば、細胞内に物質Aによってリン酸化される蛋白質aを基質ドメインとして有するリン酸化・脱リン酸化可視化プローブを調製し、細胞内に導入してFRETを測定すれば、この細胞における物質Aを定量できる。同様の定量は脱リン酸化物質についても可能である。
このように蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入する方法としては、一般的な遺伝子工学的手法が適用できる。具体的には、蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを組み込んだ発現ベクターを電気穿孔法、リン酸化カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の公知の方法により細胞に導入できる。このように蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、リン酸化(あるいは脱リン酸化)物質と共存させることにより、細胞を破壊することなく、蛋白質のリン酸化(または脱リン酸化)を検出および定量するin vivo法が可能となる。
この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブは、単一生体細胞におけるキナーゼシグナル伝達を高い空間的および時間的分解能で画像化できるだけでなく、リン酸化物質または脱リン酸化物質を調節する物質のハイスループットスクリーニングを目的とした多細胞分析においても有益である(Science 279, 84-88(1998); Drug Discovery Today 4, 363-369(1999))。
さらに、この出願の発明の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブは、これを発現するためのポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することによりこの動物または子孫動物の全細胞において蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブとリン酸化(または脱リン酸化)物質と共存させることもできる。このようないわゆるトランスジェニック非ヒト動物は、公知の作成法(例えばProc.Natl.Acad.Sci.USA 77, 7348-,(1980))に従って作成することができる。このようなトランスジェニック非ヒト動物は、すべての体細胞に蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを保有しているため、細胞や組織におけるリン酸化(または脱リン酸化)物質の濃度を測定したり、その体内に医薬品や毒物などのリン酸化(または脱リン酸化)物質、リン酸化(または脱リン酸化)増強物質、リン酸化(または脱リン酸化)阻害物質等の候補物質を導入し、細胞や組織において効果を示す物質のスクリーニングを行うこともできる。
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
実施例
種々のリン酸化物質の中でも、非レセプターチロシンキナーゼやセリン/トレオニンキナーゼはシグナル伝達カスケード全体を通して機能するものである。一方、インスリンレセプターやホルモンレセプターのようなチロシンキナーゼレセプターは、多くのシグナル伝達カスケードの開始時に機能する。
以下の実施例においては、プロテインキナーゼでもあるインスリンレセプターによる蛋白質のリン酸化を検出、定量するために、インスリンシグナル伝達蛋白質を用いた蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブについて検討した。
<準備>
以下の実施例において、各試料および試薬は、次のとおりのものとした。
ヒトインスリンはPeptide institute Inc.(Osaka, Japan)製のものを用いた。
Ham′s F-12培地、ウシ胎児血清、Hank′s平衡塩類溶液およびLipofectAMINE 2000試薬は、Life Technologies(Rockville, MD)より入手した。
Tyrphostin 25はSigma Chemical Co.(St.Louis, MO)製のものを用いた。
抗ホスホチロシン抗体(PY20)およびヒトインスリンレセプター抗体の抗βサブユニットは、Santa Cruz Biotechnology, Inc.(Santa Cruz, CA)製のものを用いた。
抗GFP抗体はClontech(Palo Alto, CA)製のものを用いた。
Cy5で標識した抗ウサギIgG抗体はJacson ImmunoResearch Lab., Inc.(Pennsylvanla, PA)より入手した。
他の化学薬品は、すべて分析試薬グレードのものを使用した。
<実施例1> インスリンレセプターによる蛋白質リン酸化検出用可視化プローブの作成
▲1▼プラスミドの形成
図2に、作成した各蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの具体的構成を表す摸式図を示した。
可視化プローブは、図2に示されるように、2つの緑色蛍光蛋白質の変異体の間に、リン酸化される部位を有する基質ドメインとリン酸化認識ドメインがリンカー配列を介して結合した直列融合ユニットを連結したものとした。
まず、蛍光蛋白質としては、Aequorea victoria由来の緑色蛍光蛋白質(GFP)の色の異なる変異体であって、シアン蛍光蛋白質(CFP)と黄色蛍光蛋白質(YFP)を用いた。さらには、CFPには、F64L/S65T/Y66W/N146I/M153T/V163A/N212Kの変異を、YFPには、S65G/V68L/Q69K/S72A/T203Yの変異を施した。
次に、基質ドメインとしては、インスリンレセプター基質−1(IRS−1)から誘導したチロシンリン酸化ドメイン(Y941:配列番号1)を使用した。このドメインにおいて、インスリンレセプターはインスリン依存的にチロシン残基941をリン酸化する(Mol.Cell Biol. 13, 7418-7428(1993))。
次に、リン酸化認識ドメインとしては、IRS−1蛋白質内のリン酸化基質ドメインに結合することが報告されている(J.Biol.Chem.267 25958-25966)ウシホスファチジルイノシトール3−キナーゼのp85調節サブユニットのN末端SH2ドメイン(SH2n:p85380-429)を選択した。
リンカー配列(Ln)としては、配列番号2に示したオリゴペプチドを用いた。
CFP、YFP、基質ドメイン、およびリン酸化認識ドメインのcDNAに図2に示した制限サイトを標準的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により導入した。クローニング酵素はすべてTakara Biomedical(Tokyo, Japan)製のものを使用した。PCRフラグメントの配列は、ABI310遺伝子分析器により決定した。
また、各蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブをコードしたcDNAは、哺乳動物発現ベクター、pcDNA3.1(+)(Invitrogen Co., Carlsbad, CA)のHind IIIおよびXba Iサイトにおいてサブクローニングした。
▲2▼蛋白質リン酸化可視化プローブの構成の最適化
図2に示した(a)〜(e)の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブにおいて、プローブ(a)とプローブ(b)では直列融合ユニットにおけるSH2nとY941の結合順序が逆になっている。
本試験において、プローブ(a)、プローブ(b)のどちらの直列融合ユニットがインスリンレセプターによって効率的にリン酸化されるかを確認するために、プローブ(a)を発現するCHO−IR細胞とプローブ(b)を発現する同細胞をインスリン100nMで刺激した後、ホスホチロシン抗体を用いて免疫ブロット分析を実施した。
まず、6ウェルプレートにてIR細胞を培養し、プローブ(a)およびプローブ(b)の各cDNAを含むプラスミド2μgを形質移入した。ヒトインスリンレセプターを過剰発現したCHO−HIR細胞を、10%ウシ胎児血清を加えたHam′s F-12培地において5%CO2中37℃で培養した。細胞をLipofectAMINE 2000試薬で形質移入し、12〜24時間後、細胞をガラス底皿、カバーガラスあるいはプラスチック製培養皿に塗布した。
次に、プローブ(a)およびプローブ(b)を発現するCHO−IR細胞をインスリン100nMにより25℃で20分間刺激した。
まず、細胞を氷冷溶解緩衝液(Tris-HCl 50mM、pH7.4、NaCl 100mM、EDTA 1mM、0.1% Triton X-100、NaF 10mM、オルトバナジン酸ナトリウム2mM、PMSF1mM、10μg/mLペプスタチン、10μg/mLロイペプチン、10μg/mLアプロチニン)で溶解し、抗GFP抗体により4℃で2時間、CHO−IR細胞の溶解産物全体から蛋白質リン酸化可視化プローブを免夜沈降させた。
蛋白質G−セファロース4FFビーズを使用して免疫沈降物を吸着し、その後氷冷洗浄緩衝液(Tris-HCl 50mM、pH7.4、NaCl 100mM、EDTA 1mM、0.1% Triton X-100、NaF 10mM、オルトバナジン酸ナトリウム2mM、PMSF 1mM、10μg/mLペプスタチン、10μg/mLロイペプチン、10μg/mLアプロチニン)で4回洗浄した。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって試料を分離し、抗ホスホチロシン抗体(PY20 1:500希釈)を用いた免疫ブロット法により解析した。
免疫ブロットの結果を図3に示した。
図3より、プローブ(b)はインスリンレセプターによって良好にリン酸化されたが、プローブ(a)はリン酸化が非常に確認され難いことが示された。これより、本試験においては、図2(b)に示した順序で結合された直列融合ユニットが図2(a)の順序で結合された直列融合ユニットよりも蛋白質リン酸化プローブとして有効であることが示唆された。
IRS−1から誘導された基質ペプチドとの複合体におけるインスリンレセプターのX線結晶構造を考慮すると、プローブ(a)とプローブ(b)のこのようなリン酸化効率の差は、それぞれの立体効果の相違によるものと考えられる。
以下の実施例において、インスリンレセプターによるリン酸化の検出はプローブ(b)を用いて行った。
<実施例2> 蛋白質リン酸化プローブによるリン酸化の検出
インスリンレセプターによってプローブ(b)がリン酸化された後FRETの効率が上昇するかどうかを検討した。
実施例1と同様の方法で、哺乳類の発現ベクターに挿入したプローブ(b)をコードするcDNAを用いてCHO−IR細胞の形質移入を行った。
無血清培地で血清飢餓させた後、培地をHank′s平衡塩類溶液に置換した。形質移入から3〜5日後、公知の方法(Anal.Chem. 72, 5918-5924(1999))により、MetaFluor(Universal Imaging, West Chester, PA)で制御される冷却CCDカメラMicroMAXを備えたCarl Zeiss Axiovert 135顕微鏡(Roper Scientific Inc., Tucson, AZ)を用いて細胞を室温で観察したした。
440±10nm励起での露光時間は100ミリ秒とした。40倍の油浸レンズ(Carl Zeiss, Jena, Germany)を使用し、480±15nmおよび535±12.5nmフィルターを通して蛍光顕微鏡像を得た。
図4Aに、CFP用の発光フィルター(480±15nm)を使用して撮影したプローブ(b)発現細胞の蛍光顕微鏡像を示した。
これよりプローブ(b)が細胞質画分と核の両方に一様に分布することが示された。
次に、リン酸化に対するプローブ(b)の応答性を評価するために、プローブ(b)を発現するCHO−IR細胞を実施例1と同様の方法によりインスリン100nMで刺激した。
図4Bに、440±10nmで励起したときの、CFPについての480±15nm対YFPについての535±12.5nmの蛍光強度比の疑似色画像の経時変化を示した。
また、図4Cに、細胞質と核における蛍光強度比の経時的変化を示した。インスリンの投与は、プローブ(b)発現細胞に関して細胞質の蛍光強度比の速やかで明確な低下を生じさせたが、核における蛍光強度比の変化はみられなかった(図4Bおよび4C)。
さらに、インスリンレセプターの阻害因子であるtyrphostin 500μMで細胞を前処理したところ、インスリンによる細胞質での蛍光強度比の変化は完全に抑制された。陰性対照として、基質ドメイン内のホスホアクセプター部位のチロシンがアラニンに置換されたプローブ(c)を発現するCHO−IR細胞をインスリンで刺激したが、細胞質蛍光強度比の変化は見られなかった(図4D)。
以上の結果より、細胞質画分におけるプローブ(b)内でのY941のリン酸化およびそれに続くリン酸化Y941と隣接するリン酸化認識ドメインSH2nの結合により、CFPからYFPへのFRETが上昇することが確認された。したがって、プローブ(b)が単一生体細胞でのインスリンレセプターによる蛋白質リン酸化の可視化プローブとして有効に作用することが示された。
しかし、核においてFRET効率の変化が見られなかったことから、リン酸化されないプローブ(b)では、リンカー配列の存在により立体配座が緩いが、チロシンがリン酸化されたプローブ(b)では、立体配座がより密に充填されて核孔を通じた転移をしにくくなり、細胞質画分に留まるものと考えられる。
<実施例3> 核外転移シグナル配列を有する蛋白質リン酸化プローブ
実施例2においてFRETがインスリン刺激によって変化しなかった核に蛋白質リン酸化プローブが転移することを防ぐために、核外転移シグナル配列を有する(d)の蛋白質リン酸化可視化プローブを作成した。核外転移シグナル配列としては、ヒト免疫不全ウイルス由来の蛋白質、Rev(EMBO J. 16, 5573-5581)から誘導される核外転移シグナル配列(nes:配列番号3)を蛋白質リン酸化プローブの末端に結合した。
プラスミドの形成、形質移入は、実施例1と同様の方法で行った。
プローブ(d)を発現した細胞の核からは蛍光は認められず、プローブ(d)の蛋白質リン酸化可視化プローブが核から除去されたことが確認された(図5A)。
また、実施例2と同様の方法でプローブ(d)を発現する細胞をインスリン100nMで刺激したとき、細胞質蛍光強度比の顕著な低下が確認された(図5A)。しかし、プローブ(d)による応答の経時変化は、プローブ(b)による応答の経時変化(図4B)と比較しても明確な差異が認められなかった。
図5Bに、CHO−IR細胞における種々の濃度のインスリンに対するプローブ(d)の応答性を示した。インスリンレセプターによってリン酸化されたプローブ(d)の蓄積率は、インスリン濃度の上昇に従って増加した。インスリン0.1nMでは、リン酸化されたプローブ(d)の蓄積は認められなかった。
プローブ(d)の蛍光強度比とインスリン濃度の関係は、当該細胞における天然IRS−1蛋白質のチロシンリン酸化に関するオートラジオグラフィーによる測定結果(EMBO J. 16, 5573-5581(1997))と同様であった。
以上より、プローブ(d)は、細胞質と核のプローブ蛋白質を区別することができない蛍光多穴プレートリーダーによる多細胞分析用の可視化プローブとして適していることが示唆された。
したがって、プローブ(d)を利用すれば、膨大な種類の候補化学物質の中から、インスリンレセプターのキナーゼ活性を直接刺激することが報告されているL-783,281(Nature318, 183-186(1985);Science 284, 974-977(1999))のような抗糖尿病性小分子をハイスループットでスクリーニングできると期待される。
<実施例4> 生細胞膜結合配列配列を有する蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ
キナーゼ、ホスファターゼおよびそれらの基質のようなシグナル伝達蛋白質は多くの場合細胞中に局在しており、細胞外刺激によってシグナル伝達ドメインを構築する。このような機序は、細胞におけるシグナル伝達の効率と特異性を決定する重要な因子であると考えられている。
インスリンレセプターの内因性基質蛋白質であるIRS−1は、そのN末端にプレクストリン相同性(PH)ドメインおよびホスホチロシン結合(PTB)ドメインを有することが知られている(Diabetologia 40, S2-S17(1997))。
PHおよびPTBドメインはそれぞれ、細胞膜のホスホイノシチド、およびインスリン刺激によってチロシンリン酸化されるインスリンレセプターの膜近傍ドメインと結合する(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96, 8378-8383)。従って、インスリン刺激を受けることにより、形質膜近傍のインスリンレセプター周囲でIRS−1の濃度が上昇し、それがインスリンレセプターによるIRS−1の効率的で選択的なリン酸化の基礎となるのである(J.Biol.Chem. 270, 11715-11718(1995))。
そこで、プローブ(b)に、IRS−1蛋白質から誘導したPH−PTBドメインを融合し、図2(e)を構築した。
プローブ(e)を発現するCHO−IR細胞をインスリン100nMにより25℃で7分間刺激した。細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.2% Triton X-100を含むリン酸緩衝塩類溶液で10分間透過性を高めた。ヒトインスリンレセプター抗体のウサギ抗βサブユニット(1:100希釈)と共に45分間インキュベーションした後、0.2%魚皮ゼラチンを含むリン酸緩衝塩類溶液で細胞を洗浄し、Cy5で標識した抗ウサギIgG抗体(1:500希釈)と共に30分間インキュベートした。
カバーガラスをスライドにかぶせ、共焦点走査型レーザー顕微鏡(LSM 510、Carl Zeiss)により、細胞を観察した。
図6Aは、インスリン100nMで刺激したときのCHO−IR細胞におけるプローブ(e)とプローブ(b)についての細胞質蛍光強度比の変化の比較を示す。プローブ(e)に関する細胞質蛍光強度比の変化の速度はプローブ(b)を用いた場合よりも迅速であったが、飽和に達したときの両者の蛍光強度比に大きな差は見られなかった。
これより、IRS−1中に内因性標的ドメインを導入することにより、活性化インスリンレセプターによるプローブ(e)のリン酸化速度が上昇し、蛋白質リン酸化可視化プローブを用いた生体細胞における局在キナーゼシグナル伝達を有効に可視化できることが示された。
共焦点走査型レーザー顕微鏡で撮影した蛍光画像より、形質膜におけるインスリン刺激されたプローブ(e)とインスリンレセプターの同時局在が確認された(図6B)。プローブ(e)のこのような膜局在はインスリン刺激前には認められなかった。他方で、プローブ(b)を用いた場合には、インスリン刺激による局在は、形質膜を含めた細胞下のどこでも見られなかった(図4B)。
以上より、PH−PTBドメインは、インスリンによるプローブ(e)の膜インスリンレセプターへのターゲッティングに寄与することが示された。
さらに、蛋白質リン酸化可視化プローブ内のSH2nは、インスリン刺激により、内因性IRS蛋白質のような他の局在リン蛋白質との分子間結合ではなく、分子内結合により隣接するリン酸化Y941と結合すると考えられる(J.Biol.Chem. 273, 29686-29692(1998); Mol.Endocrinol. 14, 823-836(2000))。
産業上の利用可能性
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、生体細胞における蛋白質リン酸化に基づくシグナル伝達を可視化するための方法が提供される。この発明により、単一生体細胞におけるキナーゼシグナル伝達を高い空間的および時間的分解能で可視化できるだけでなく、種々のリン酸化物質・脱リン酸化物質の活性を調節する物質のハイスループットスクリーニングも可能となる。さらにこの出願の発明の蛋白質リン酸化プローブを用いて、トランスジェニック動植物を作成すれば、対象組織および器官における蛋白質のリン酸化に基づくシグナル伝達の事象を非破壊的かつ継続的にモニタリングすることも可能となる。
Claims (10)
- 蛍光共鳴エネルギー転移を起こすドナー発色団とアクセプター発色団との間に、リン酸化される部位を有する基質ドメインの C 末端とリン酸化認識ドメインの N 末端がリンカー配列を介して連結された直列融合ユニットが配置されており、2つの発色団が、 F64L/S65T/Y66W/N146I/M153T/V163A/N212K の変異を有するシアン蛍光蛋白質( CFP )と、 S65G/V68L/Q69K/S72A/T203Y の変異を有する黄色蛍光蛋白質( YFP )との組合せであることを特徴とする蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ。
- 基質ドメインのリン酸化部位がチロシン、セリン、またはトレオニンのいずれかのアミノ酸残基を有する請求項1の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ。
- リン酸化認識ドメインが、SH2ドメイン、ホスホチロシン結合ドメインまたはWWドメインのいずれかの内因性ドメインである請求項1の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ。
- リン酸化認識ドメインがリン酸化された基質ドメインを免疫原として調製された単鎖抗体である請求項1の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ。
- 末端に局在性配列を有する請求項1の蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブ。
- 請求項1ないし5のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブと候補物質を共存させ、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質リン酸化増強・抑制物質のスクリーニング方法。
- 請求項1ないし5のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの基質ドメインがリン酸化された蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブと候補物質を共存させ、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質脱リン酸化増強・抑制物質のスクリーニング方法。
- 請求項1ないし5のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、候補物質と共存させる請求項6または7のいずれかのスクリーニング方法。
- 請求項1ないし5のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質リン酸化物質の定量方法。
- 請求項1ないし5のいずれかの蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブの基質ドメインがリン酸化された蛋白質リン酸化・脱リン酸化可視化プローブを細胞内に導入し、蛍光波長変化を測定することを特徴とする蛋白質脱リン酸化物質の定量方法。
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