JP3888412B2 - 電動式パワーステアリングの制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
自動車のパワーステアリング機構は、ステアリングの切り込み時や戻し時にアシストトルクを発生させ、ステアリング操作を容易にさせるものである。
本発明は、ステアリング操作を電動モータで支援するときの、ステアリング回し始め等の操作を滑らかにするための電動式パワーステアリングの制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車に装備する電動式のパワーステアリング機構には、ステアリングトルクセンサが設けられており、ステアリングトルクセンサは操舵トルク及び操舵トルクの増加方向を検知し、これに応じた電圧値に変換する機能を持ち、コントローラに出力するように配線されている。
また、車速センサを設置して車速を測定し、高車速時にアシスト量を小さくして操舵トルクを大きくさせることにより操縦安定性を良くしようとすることが提案されている。
【0003】
また、一般的に、電動式のパワーステアリング機構では、切り込み操舵時と戻し操舵時で操舵トルクに対するアシスト量は同じになるが、切り込み時の操舵トルクに対して戻し時にはセルフアライニングトルクが作用してステアリング戻し時の操舵力が軽くなる。
【0004】
ところで、油圧式のパワーステアリング機構では、静摩擦係数と動摩擦係数の差が少なく、電動モータのような慣性物がないため、しっとりとした滑らかなフィーリングに仕上げ易い。逆に、電動式のものではモータが慣性感(ステアリング初動時に静止状態から動作状態に移る瞬間的に感じる抵抗感覚)の原因となり、モータ各部及び減速機構部の摺動抵抗がステアリングの回し始めの張り付き感となり、フィーリングを悪化させる。特に、このフィーリングは、ステアリングの回し始めや、操舵方向の反転時によく感じられる。
現在、この対策として、電動式のものでは、操舵トルクの増加量に対応してアシスト電流を流す制御機構が提案されている(特開平10−157636号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の制御機構では、モータの慣性感低減、フリクションの低減に効果を発揮するが、ステアリングインフォメーション及び、すわり感、収斂性が希薄になるといった別の現象が出てくる。このため、相反関係にある両者の妥協点を見つける必要がある。
また、理想的には、慣性感が少なく、回し始めと回している時のフリクション感が同じか、回している時の方が、フリクション感が大きく、しかも、ステアリングインフォメーションがしっかりあり、適度なすわり感があるのが良い。
【0006】
本発明は、ステアリングの回し初めや、操舵方向の反転時等の、モータが止まっている時及び回転数が低いときには、十分微分制御が働き、モータの回転数が高くなると微分制御の効きめを下げるようにした電動式パワーステアリングの制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1の発明は、車両に装備したステアリングの操舵トルク値と車速センサーの検出値とを演算して、操舵を補助する電動モータの基本電流を求め、操舵速度を検出する操舵速度検出手段を設け、該操舵速度検出手段からの検出値の低い領域においてゲインの高くなる特性を持つ第1の変換回路により、この特性にしたがった第1のゲインを決定すると共に、車両の高車速時にゲインの低くなる特性を持つ第2の変換回路によりこの特性にしたがった第2のゲインを決定し、前記操舵トルク値を増幅すると共に微分し、かつ積分フィルタにより減算した出力を、求めた第1及び第2のゲインと乗算演算して微分電流を求め、該微分電流と前記基本電流を演算して求めたアシスト電流によりモータ駆動させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ステアリングの回転を支援する前記電動モータの回転数検出手段により、操舵速度を検出することを特徴とする。
【0009】
上記構成の制御はモータの回転数感応式とした微分制御である。慣性感はステアリングが止まっている状態から動く瞬間及び、ステアリングの回転方向が反転する時に生じ、共に、ステアリングの回転速度が遅い場合に生じる。このとき、微分制御が他への干渉を少なくして、効率よく働くようにする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態に係る電動式パワーステアリングの制御方法は、図1に示す制御回路の工程にしたがって行われる。図1に示すように、該制御方法に必要な入力装置としてステアリングトルクセンサ1と車速センサ2及びモータ角速度センサ(操舵速度検出手段)3が設置される。ステアリングトルクセンサ1で検出したトルク値は、ステアリングの回転を支援する電動モータの駆動時のトルク値と位相がずれるので、ステアリングトルクセンサ1の出力端に位相補償回路4を設けている。また、位相補償回路4の出力と車速センサ2の出力を入力する基本電流演算回路5と、位相補償回路4の出力と車速センサ2の出力及びモータ角速度センサ3の出力を入力する微分電流演算回路6を設けている。
なお、モータ角速度センサ3は電動モータにすでに取り付けてある回転数検出手段を利用することもできる。
【0011】
基本電流演算回路5には図4に示す車速に応じた操舵トルクに対する基本電流特性のマップ1が収納され、マップ1は操舵トルクからその時の車速に応じた基本電流を算出するのに利用される。
【0012】
次に、微分電流演算回路6を図2及び図5を参照して説明する。
微分電流演算回路6は車速センサ2の出力と位相補償回路4の出力及びモータ角速度センサ3の出力を入力する。位相補償回路4の出力は増幅・減少量微分回路7に入力され増幅されると共に操舵トルク値が微分される。また、車速センサ2の出力は図5(a)に示す特性を有するマップ2を収納した第1利得変換回路8に入力され、モータ角速度センサ3の出力は図5(b)に示す特性を有するマップ3を収納した第2利得変換回路9に入力される。
【0013】
ここで、マップ2の特性は、一例として、自動車走行状態の低車速時でゲインを高くし、中速時でゲインを下げ始め、高速時になるにつれゲインを下げ、その後、ほぼ一定の低ゲインになる特性を持ち、そのときの車速からマップ2によりゲインK1を求めることができる。マップ3の特性は、一例として、モータ回転数がゼロからほぼ100rpm位の間のモータ初動時にゲインを高くし、その後、低ゲインになる特性を持ち、そのときのモータ回転数からマップ3によりゲインK2を求めることができる。
【0014】
微分電流演算回路6の出力は、増幅・減少量微分回路7の出力を積分フィルタ(遅れフィルタ)10により減算演算し(微分成分をなくし増幅成分を抽出する)、さらに第1利得変換回路8及び第2利得変換回路9のそれぞれの出力値とを乗算演算して微分電流を得るようにしたものである。
【0015】
次に、電動式パワーステアリング機構の制御システムを図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、制御システムがスタートすると、ステアリングトルクセンサ1によるトルク値T0(s1)、車速センサ2による車速V0(s2)、モータ角速度センサ3によるモータ角速度dθ0(s3)が入力される。また、モータ角速度dθ0からモータ回転数を算出する(s4)。
次に、図4に示すマップ1に基づいてトルク値T0と車速V0から演算して基本電流を決定する(s5)。
【0016】
次に、トルク値T0を微分して操舵トルクの変化量dT0/dt(図2において増幅・減少量微分回路7からの出力を、遅れフィルタ10により減算演算したもの)を算出する(s6)。また、マップ2により車速V0の値からゲインK1が求められ(s7)、マップ3によりモータ回転数からゲインK2が求められる(s8)。そして、操舵トルクの変化量の絶対値|dT0/dt|とゲインK1とゲインK2を乗算演算することにより微分電流を決定する(s9)。この微分電流と基本電流を加算演算してアシスト電流(s10)を算出し、このアシスト電流によりモータを駆動する(s11)。
【0017】
ステアリング操作の初動時は第2利得変換回路9のマップ3において、モータ回転数の低回転領域でゲインK2が求められる。ここでは高いゲインK2が求められ、このゲインK2によりモータ駆動させるので、ステアリング操作の初動において操舵フィーリングの張付き感が減少され、油圧式の操舵フィーリングに近づかせることができる。
【0018】
また、車両の高車速時にはゲインK1が低くなり、アシスト電流が小さくなって操舵トルクが大きくなるため、ステアリング操作時のすわり感が向上して操縦安定性が良好になる。また、高車速時であってもステアリング操作の初動においてはアシスト電流が過大となる場合があるが、モータ回転数が低回転領域よりも高回転側の領域となることで第2利得変換回路9のマップ3より求められるゲインK2が低くなり、アシスト電流が小さくなって操舵トルクが大きくなるので、ステアリング操作時のすわり感が向上する。
このように、微分電流演算回路6の微分電流出力を車両の運転状況に合わせた値に増減させ、最適な操舵特性にすることが可能となる。
【0019】
【発明の効果】
本発明は以上述べた通りであり、請求項1に記載の発明では、ステアリングを作動させる電動モータを、基本電流と微分電流とを加えたアシスト電流によりモータ駆動させるようにしたものであり、操舵開始時において微分電流を高くしたので、ステアリングの回し始めや操舵方向が反転するときの低回転時の電動モータのアシスト電流、すなわちアシストトルク量が大きくなり、操舵フィーリングの張付き感が減少され、油圧式の操舵フィーリングに近くさせることができる。
また、モータ回転数が高いときには電動モータのアシスト電流、すなわちアシストトルク量を小さくしたのでステアリングのすわり感が向上して操舵特性及び操縦安定性が良好になる。
さらに、車速のゲインを高車速時に低くなるようにして微分電流を演算したので、高車速時に電動モータのアシスト電流、すなわちアシストトルク量が小さくなり、操舵速度が小さくなる高車速時においても、ステアリング操作の操舵力抜け感が改善され、すわり感を良くすることができる。
請求項2に記載の発明では、電動モータにすでに取り付けてある回転数検出手段を操舵速度検出手段に利用することができ、設置作業を簡易にし、コストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による実施の形態のパワーステアリング機構の制御回路を示すブロック図である。
【図2】 図1に示す微分電流演算回路を示すブロック図である。
【図3】 本発明による実施の形態の電動式パワーステアリング機構の制御システムのフローチャートである。
【図4】 図1の基本電流演算回路に収容されたマップ1のグラフである。
【図5】 図1の微分電流演算回路に収容された(a)マップ2、(b)マップ3を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ステアリングトルクセンサ
2 車速センサ
3 モータ角速度センサ(操舵速度検出手段)
5 基本電流演算回路
6 微分電流演算回路
7 増幅・減少量微分回路
8 第1利得変換回路
9 第2利得変換回路
10 積分フィルタ(遅れフィルタ)
Claims (2)
- 車両に装備したステアリングの操舵トルク値と車速センサーの検出値とを演算して、操舵を補助する電動モータの基本電流を求め、
操舵速度を検出する操舵速度検出手段を設け、該操舵速度検出手段からの検出値の低い領域においてゲインの高くなる特性を持つ第1の変換回路により、この特性にしたがった第1のゲインを決定すると共に、車両の高車速時にゲインの低くなる特性を持つ第2の変換回路によりこの特性にしたがった第2のゲインを決定し、前記操舵トルク値を増幅すると共に微分し、かつ積分フィルタにより減算した出力を、求めた第1及び第2のゲインと乗算演算して微分電流を求め、該微分電流と前記基本電流を演算して求めたアシスト電流によりモータ駆動させるようにしたことを特徴とする電動式パワーステアリングの制御方法。 - 前記ステアリングの回転を支援する前記電動モータの回転数検出手段により、操舵速度を検出することを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリングの制御方法。
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