JP3888215B2 - 冷凍サイクル装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機、冷蔵庫、ショーケース等の冷凍サイクルを備える装置の製造方法、特に製造工程途上にて密栓を開放された状態の圧縮機への水分の混入を抑制する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気調和機の製造方法では、室外機本体に冷媒を注入する前に、充分な真空排気を行って真空度が充分な値に達すれば、冷凍サイクル内の水分の除去および配管漏れの確認が行われたこととなり、その後に冷媒を注入して室外機を完成していた。また真空排気を行う前に圧縮機を加温しながら十分な真空排気を実施することも提案されている。
【0003】
近年オゾン層の破壊、地球温暖化など環境に対する規制の高揚により、塩素を含まないHFC(Hydro Fluoro Carbon)を使用した空気調和機が主流となりつつある。HFC冷媒は塩素を含まないので従来の塩素を含むHCFC(Hydro Chloro Fluoro Carbon)のような潤滑性は望めない。このため、圧縮機の密閉容器に封入するオイルは、HFC冷媒と相溶性のあるものが特に要求される。密閉容器に封入されるオイルは、圧縮機構から密閉容器内に吐出されてくるHFC冷媒によって撹拌されるし、圧縮機の電動機の回転子によっても撹拌される。この時、オイルは冷媒と相溶性があることによって、密閉容器内に吐出される冷媒によく随伴し、各機械摺動部の細部にまでよく及ぶので、オイルポンプによるオイルの供給と相まって、潤滑性能が向上する。このようなオイルには特開平6−235570号公報等で知られるようにエステル系オイルあるいはエーテル系オイルと言った合成油を用いるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、上記エステル系オイルあるいはエーテル系オイルはともに作業雰囲気中の湿気を吸湿し易く、このようなオイルを使用した圧縮機に関しては、従来よりも充分な工程管理下のもとで空気調和機などの冷凍サイクル装置を製造することが要求される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の製造方法でHFC冷媒に対応する冷凍サイクル装置を製造した場合の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は組み立て工程の途中で冷凍サイクル開放部から圧縮機内に水分が混入することをできるかぎり抑制できる製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器およびその付属品を少なくとも構成要素とし、塩素を含まない弗化炭素系の冷媒と、前記冷媒と相溶性を有するオイルとを封入することによって構成される冷凍サイクルによって、基板上に圧縮機を支持し、前記圧縮機の放冷を抑制する機能を有する断熱材カバーによって前記圧縮機の少なくとも側壁を囲んだ状態で前記圧縮機の冷媒吐出管ならびに冷媒吸入管を前記冷凍サイクルに配管ロー付けして冷凍サイクルを完成した後、前記断熱材カバーを前記圧縮機から取り外す工程を経過した後前記冷媒を前記冷凍サイクル中に注入して前記抽入孔を閉塞することを特徴とする冷凍サイクル装置の製造方法である。
【0007】
上記製造方法にによって、圧縮機の側壁を断熱性能に優れた断熱材にてカバーすることで、その後に銅配管を接続する工程にてガスバーナーによって加えられた熱量がその後の工程まである程度蓄熱できる。また組み立て工程で密栓を開放する前に圧縮機を十分保温できるような保管状態にしておれば、ある程度組み立て工程での冷却速度を遅延できる。その結果、組み立て工程途上の1時間内また昼休み時間を加えると2時間以内に圧縮機内のオイルに混入する水分量を従来に比べて低減することができるので、エステル系オイルあるいはエーテル系オイルに対してもドライヤーを使用しない場合であっても十分な信頼性を保証することが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記した本発明の目的は、各請求項に記載した製造方法を実施の形態とすることにより達成できるので、以下には各請求項の製造方法にその製造方法による作用を併記し、併せて請求項記載の製造方法のうち説明を必要とする特定用語については詳細な説明を加えて、本発明の実施の形態の説明とする。
【0009】
上記課題の解決するための第1の発明の実施の形態は、圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器およびその付属品を少なくとも構成要素とし、塩素を含まない弗化炭素系冷媒と、前記冷媒と相溶性を有するオイルとを封入することによって構成される冷凍サイクルにおいて、基板上に前記圧縮機を支持し、前記圧縮機の放冷を抑制する機能を有する断熱材カバーによって前記圧縮機の少なくとも側壁を囲んだ状態で前記圧縮機の冷媒吐出管ならびに冷媒吸入管を前記冷凍サイクルに配管ロー付けして冷凍サイクルを完成した後、前記断熱材カバーを前記圧縮機から取り外す工程を経過した後、前記冷媒を前記冷凍サイクル中に注入して前記注入孔を閉塞することを特徴とする冷凍サイクル装置の製造方法である。
【0010】
従って、圧縮機をカバーした断熱材カバーで配管ロー付けにする熱量を蓄熱して冷凍サイクルを完成した後断熱カバーを取り外して冷媒を注入して密閉するので、オイルに水が混入することを低減することができる。
【0011】
第2の発明の実施の形態は、オイルをエステル系オイルまたはエーテル系オイルとしたもので、それぞれ塩素を含まない弗化炭素系冷媒と相溶性がある有効な潤滑性にすぐれたオイルである。
【0012】
第3の発明の実施の形態は冷凍サイクル装置として空気調和機に特定したものである。
【0013】
第4の発明の実施の形態は、断熱材カバーは、円筒形を少なくとも縦2分割したものであるため、圧縮機の外側壁に着脱が容易にできる。
【0014】
第5の発明の実施の形態は、圧縮機と基板との間に断熱材カバーとは別の断熱材を配設したものである。従って、圧縮機の底面からの熱損失を防止し、水分混入量を一層抑制することができる。
【0015】
第6の発明の実施の形態は、圧縮機を予め昇温させておくもので組み立て作業工程において断熱材カバーで保温することによって、内部への水分混入量をより一層抑制することができる。
【0016】
第7の発明の実施の形態は、圧縮機の三相モータ中のいずれかの相を欠相として通電することにより圧縮機の予備加熱が水分混入抑制に効果的な場所において簡単に行うことができる。
【0017】
第8の発明の実施の形態は、圧縮機を縦型に特定したもので、縦型圧縮機では圧縮メカ機構部が上方に、駆動用モータ部が下方に位置しているため、駆動用モータ部とオイルは近接した場所に位置することになるので、加温された駆動用モータ部の熱量はオイルの水分混入を効果的に防止できる。
【0018】
第9の発明の実施の形態は、圧縮機のメカ機構をスクロール構造に特定したもので、スクロール構造とすることで騒音特性が良好で防音材が圧縮機の外周に存在しないため、本発明の特徴である断熱材カバーの着脱が容易である。
【0019】
第10の発明の実施の形態は、断熱材の熱伝導率を20℃において0.03w/m・k以下の特性としたもので圧縮機に対して十分な断熱性能を得ることができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
図1は、本実施例におけるセパレート型空気調和機の室外機の製造工程における冷媒注入までを示す概略工程図である。室外機は、まずA工程での組み立て作業台への基板セットから始まり、B工程で防振ゴムを基板の固定ピンに挿入しC工程で縦型圧縮機の基板上への載置、D工程で縦型圧縮機の周囲に断熱材カバーが配置され、E工程にて縦型圧縮機の吐出管と吸入管がロー付けされる前にゴム製の密栓をはじめて開放させる。この時圧縮機内部には保管中における密栓部からの水分混入を防止する目的で窒素ガスが0.5kg/cm2程度の陽圧状態で充填されているのが一般的である。
【0022】
F工程でその他のサイクル部品を取り付け、その後、G工程にて冷凍サイクルが完成して配管開放部がほぼなくなってから、H工程にて断熱材カバーが縦型圧縮機から外される。その後I工程で真空ポンプにて冷凍サイクル内部の真空排気を行った後、J工程でしばらく真空度の状態を観察して配管接続部等からの気体漏れがないことを確認した上で、K工程で冷媒R410Aが所定重量注入される。最後にL工程で注入に使用した配管ポートを封印する。そして、それ以降には冷凍サイクル内へ水分が進入することはない。
【0023】
図2は本実施例において使用した圧縮メカ機構部がスクロール構造を有する縦型圧縮機の断面構成図である。スクロール構造とは、冷媒の圧縮機構部が定ハネ部1と動ハネ部2とで構成され、圧縮機3の吸入部4から吸入された冷媒は動ハネ部2の旋回スクロール運動によって定ハネ部1と動ハネ部2との隙間で徐々に圧縮され、最後に旋回中央部に配置された吐出ポート5から吐出され、この圧縮された高圧ガス冷媒が圧縮機3の吐出部6から冷凍サイクルへと吐出される圧縮機である。
【0024】
充填されるオイルとしては粘度グレードISO VG68のエステル系オイルを使用した。また図3は基板、防振ゴム、縦型圧縮機と断熱材カバーの外観図を示したものである。7が縦型圧縮機、8が基板、9が防振ゴム、10が断熱材カバーである。本実施例では圧縮機の吸入部にアキュームレータが配設されない仕様のものを使った。
【0025】
ここで断熱材カバーとしては、ドイツのWacker Chemie GmbH社製のWacker WDS 厚さが10mmのものを使用した。これは微細なヒュームドシリカを主体とした材料で構成されており、見かけ気孔率は約90%、嵩密度約0.3g/cm3であり、20℃における熱伝導率は0.02W/m・Kの性能特性を有していた。
【0026】
縦型圧縮機7の吐出管部と吸入管部が開放されてから、冷凍サイクルが完成するまでの組み立て作業工程時間はほぼ1時間である。しかし組み立て作業工程中に昼休みとなった場合には製品は仕掛かり状態となり、約2時間配管部を大気開放させることとなる。縦型圧縮機7の吐出管部と吸入管部を銅配管とロー付け接続する時にはガスバーナートーチによって加熱される。この時縦型圧縮機7単体が受ける熱量によって、縦型圧縮機の吐出部付近と吸入部付近はかなりな高温状態となる。ここで受けた熱量を縦型圧縮機内部への水分混入防止に有効活用するためには、ある程度断熱性能に優れた断熱材カバー10によって縦型圧縮機7の側壁外周部をカバーすることが効果的であった。
【0027】
具体的には冬場を想定して外気温5℃条件で、組み立て製造工場の外部に保管されていた縦型圧縮機を組み立て製造工場内へと搬送し、作業環境を20℃、相対湿度90%の条件に設定して上記室外機本体の製造工程を実施し、縦型圧縮機の吐出管部と吸入管部の開放時間を2時間と想定した作業条件にて組み立て工程を実施することによって、製造工程での縦型圧縮機本体への水分混入量は約80mgであった。この水分混入量は冷凍サイクル完成後、冷媒注入を実施することなく、縦型圧縮機部分だけを再度切り離して、カールフィッシャー法で配管開放部から乾燥窒素ガスを導入することによる水分追い出しを十分に行った結果得られたデータによるものであり、初期に縦型圧縮機単体が有している水分量は差し引いて測定した。
【0028】
(実施例2)
図4は、本実施例におけるセパレート型空気調和機の室外機の製造工程を示す概略工程図である。本実施例では縦型圧縮機を80℃の恒温室に予め保管した後に室外機組み立て工程へと搬送した。その後の室外機本体の組み立て工程は実施例1と同様である。また使用した縦型圧縮機および断熱材カバーも実施例1と同様なものを使用した。室外機は、B工程で組み立て作業台に基板がセットされ、C工程で実施例1と同様に防振ゴムを固定ピンに挿入しD工程で縦型圧縮機の基板上への載置、E工程で縦型圧縮機の周囲に断熱材カバーが配置され、F工程にて縦型圧縮機の吐出管と吸入管がロー付けされる前に密栓をはじめて開放させる。
【0029】
その後、H工程にて冷凍サイクルが完成して開放部がほぼなくなってから、I工程にて断熱材カバーが縦型圧縮機から外される。この時縦型圧縮機の側面温度は約60℃であった。その後J工程で真空ポンプにて冷凍サイクル内部の真空排気を行った後、K工程でしばらく真空度の状態を観察して配管接続部等からの気体漏れがないことを確認した上で、L工程で冷媒R410Aが所定重量注入される。最後にM工程で注入に使用した配管ポートを封印する。そして、それ以降に冷凍サイクル内へ水分が進入することはない。
【0030】
組み立て作業環境は20℃、相対湿度90%の条件に設定して、縦型圧縮機の吐出管部と吸入管部の開放時間を2時間と想定した作業条件にて組み立て工程を実施することによって、製造工程での縦型圧縮機本体への水分混入量は約50mgであった。本実施例では恒温室に縦型圧縮機を予め保管してから使用したが、このような縦型圧縮機を組み立て工程中に断熱材でカバーすることによって縦型圧縮機への水分の混入をさらに抑制することができた。縦型圧縮機の予熱方法としてはバンドヒータのようなものを縦型圧縮機の周囲に配置して80℃に加温した場合にも同様な水分混入量の結果が得られた。
【0031】
(実施例3)
図5は、本実施例におけるセパレート型空気調和機の室外機の製造工程を示す概略工程図である。本実施例では以下の操作によって縦型圧縮機のモータ部を110℃に予備加熱した。図6は縦型圧縮機の上面方向からの外観図である。11が圧縮機3相モータの入力ターミナル部であり、ここには3個の入力端子入A,B,Cがあり、それらの2個、たとえば入力端子Aと入力端子Bとを利用して通電させるとモータコイルは抵抗線となって容易に温度上昇する。その時縦型圧縮機の側面モータ付近を温度検出することによって110℃に達した時点にて入力ターミナル部11への通電を停止した。
【0032】
その後の室外機本体の組み立て工程は実施例1と同様である。また使用した縦型圧縮機および断熱材カバーも実施例1と同様なものを使用した。室外機は、B工程で組み立て作業台に基板がセットされ、C工程を経てD工程で縦型圧縮機の基板上への載置、E工程で縦型圧縮機の周囲に断熱材カバーが配置され、F工程にて縦型圧縮機の吐出管と吸入管がロー付けされる前に密栓をはじめて開放させる。
【0033】
G工程でその他サイクル部品を取り付けた後、H工程にて冷凍サイクルが完成して開放部がほぼなくなってから、I工程にて断熱材カバーが縦型圧縮機から外される。この時縦型圧縮機の側面温度は約70℃であった。その後J工程で真空ポンプにて冷凍サイクル内部の真空排気を行った後、K工程でしばらく真空度の状態を観察して配管接続部等からの気密漏れがないことを確認した上で、L工程で冷媒R410Aが所定重量注入される。最後にM工程で注入に使用した配管ポートを封印する。そして、それ以降に冷凍サイクル内へ水分が進入することはない。
【0034】
組み立て作業環境は20℃、相対湿度90%の条件に設定して縦型圧縮機の吐出管部と吸入管部の開放時間を2時間と想定した作業条件にて組み立て工程を実施することによって、製造工程での縦型圧縮機本体への水分混入量は約30mgであった。
【0035】
本実施例では縦型圧縮機の圧縮メカ機構部が上方にあるため、駆動用モータ部は下方に位置している。そのため駆動用モータ部と充填されたオイルは近接した場所に位置し、加温された駆動用モータ部の熱量はオイルへの水分混入防止効果に有効に作用している。したがって、駆動用モータ部へと欠相通電加熱を行う場合には圧縮メカ機構部が上方にあるほうが好ましい。
【0036】
(実施例4)
図7は、本実施例におけるセパレート型空気調和機の室外機の製造工程を示す概略工程図である。本実施例では実施例2と同様に縦型圧縮機を80℃の恒温室に予め保管した後に室外機組み立て工程へと搬送した。その後の室外機本体の組み立て工程は実施例1とほぼ同様である。また使用した縦型圧縮機および断熱材カバーも実施例1と同様なものを使用した。
【0037】
室外機は、B工程で組み立て作業台に基板がセットされ、C工程を経てD工程で断熱材が基板上に配置された後、E工程で縦型圧縮機の基板上への載置、F工程で縦型圧縮機周囲に断熱材カバーが配置され、G工程にて縦型圧縮機の吐出管と吸入管がロー付けされる前に密栓をはじめて開放させる。その後、H工程でその他サイクル部品の取り付けを行いI工程にて冷凍サイクルが完成して開放部がほぼなくなってから、J工程にて断熱材カバーが縦型圧縮機から外される。
【0038】
この時縦型圧縮機の側面温度は約70℃であった。その後K工程で真空ポンプにて冷凍サイクル内部の真空排気を行った後、L工程でしばらく真空度の状態を観察して配管接続部等からの気体漏れがないことを確認した上で、M工程で冷媒R410Aが所定重量注入される。最後にN工程で注入に使用した配管ポートを封印する。そして、それ以降に冷凍サイクル内へ水分が進入することはない。
【0039】
組み立て作業環境は20℃、相対湿度90%の条件に設定して縦型圧縮機の吐出管部と吸入管部の開放時間を2時間と想定した作業条件にて組み立て工程を実施することによって、製造工程での縦型圧縮機本体への水分混入量は約40mgであった。
【0040】
(実施例5)
図8は、本実施例におけるセパレート型空気調和機の室外機の製造工程を示す概略工程図である。本実施例では実施例3と同様な操作によって縦型圧縮機のモータ部を110℃に予備加熱した。その後の室外機本体の組み立て工程は実施例4と同様である。また使用した縦型圧縮機および断熱材カバーは実施例1と同様なものを使用した。
【0041】
室外機は、B工程で組み立て作業台に基板がセットされ、C工程を経て、D工程で断熱材が基板上に配置された後、E工程で縦型圧縮機の基板上への載置、F工程で縦型圧縮機の周囲に断熱材カバーが配置され、G工程にて縦型圧縮機の吐出管と吸入管がロー付けされる前に密栓をはじめて開放させる。
【0042】
その後、H工程でその他サイクル部品の取り付けをしI工程にて冷凍サイクルを完成して開放部がほぼなくなってから、J工程にて断熱材カバーが縦型圧縮機から外される。この時縦型圧縮機の側面温度は約80℃であった。その後K工程で真空ポンプにて冷凍サイクル内部の真空排気を行った後、L工程でしばらく真空度の状態を観察して配管接続部等からの気体漏れがないことを確認した上で、M工程で冷媒R410Aが所定重量注入される。最後にN工程で注入に使用した配管ポートを封印する。そして、それ以降に冷凍サイクル内へ水分が進入することはない。
【0043】
組み立て作業環境は20℃、相対湿度90%の条件に設定して圧縮機の吐出管部と吸入管部の開放時間を2時間と想定した作業条件にて組み立て工程を実施することによって、製造工程での圧縮機本体への水分混入量は約20mgであった。
【0044】
(比較例1)
図9は、室外機の製造工程を示す概略工程図である。室外機は、A工程の組み立て作業台への基板セットから始まり、B工程の防振ゴムを固定ピンに挿入した後C工程で縦型圧縮機の基板上への載置、D工程にて縦型圧縮機の吐出管と吸入管がロー付けされる前にゴム製の密栓を開放させる。E工程でその他サイクル部品の取り付けを行った後、F工程にて冷凍サイクルが完成して配管開放部がほぼなくなる。
【0045】
その後G工程で真空ポンプにて冷凍サイクル内部の真空排気を行った後、H工程でしばらく真空度の状態を観察して配管接続部等からの気体漏れがないことを確認した上で、I工程で冷媒R410Aが所定重量注入される。最後にJ工程で注入に使用した配管ポートを封印する。そして、それ以降に冷凍サイクル内へ水分が進入することはない。
【0046】
具体的には外気温5℃条件で、組み立て製造工場の外部に保管されていた縦型圧縮機を組み立て製造工場内へ搬送し、作業環境を20℃、相対湿度90%の条件に設定して上記室外機本体の製造工程を実施し、圧縮機の吐出管部と吸入管部の開放時間を2時間と想定した作業条件にて組み立て工程を実施することによって、製造工程での圧縮機本体への水分混入量は約150mgであった。
【0047】
実施例1〜5および比較例1から明らかなように、縦型圧縮機の周囲に断熱材カバーを配置することによって、縦型圧縮機が作業工程中に受けた熱量をその後の工程まである程度蓄熱でき、縦型圧縮機単体の冷却を抑制できた。その結果縦型圧縮機が開放状態にある時間中に作業環境雰囲気から混入する水分量を極力少なくすることができた。また、特に比較例1からわかるように冬場、縦型圧縮機が外に放置されており、その状態からある程度暖房された組み立て工程へと搬送された時が、結露等によって一番水分混入条件として厳しかった。
【0048】
さらに縦型圧縮機と基板との間に断熱材を配設するとより縦型圧縮機の冷却速度を遅延できた。また、ここに配設される断熱材は冷凍サイクル完成後に断熱材カバーと一緒に脱離してもよいし、そのまま配設して製品の状態としてもよい。すなわち縦型圧縮機の底面に断熱材をそのまま配設した場合でも、冷房過負荷条件にて放熱妨害になることの影響は軽微であった。
【0049】
実施例では縦型圧縮機のメカ構造がスクロール構造のものを使用したが、スクロール構造には下記のような利点がある。スクロール構造はロータリー構造に比べて騒音特性が優れているため、最近では防音材を全く使用しないで製品化されつつある。従来のように圧縮機周囲に防音材を配置しなくなりつつあるため、組み立て作業環境雰囲気の影響を受け易くなっていて、これに起因した水分混入量の増大も大きな課題となる。
【0050】
したがって防音材を使用しなくなったという作業工程上の傾向を逆に利用するためには、本発明のように一旦断熱材を配置して、冷凍サイクル完成後に再度断熱材を外すという操作が水分混入の抑制に有効であることがわかった。また近年アキュームレータを圧縮機の吸入部横側に配設しなくなったことも圧縮機側面外周に断熱材カバーを配置することを容易にしている。
【0051】
このような目的に適した断熱材の性能としては20℃における熱伝導率が0.03W/m・K以下のものが好ましかった。熱伝導率が小さすぎて本発明の目的に合致しないということはないが、一般的に考えると0.003〜0.03W/m・Kが実用特性の範囲と考えられる。また断熱材カバーの構造は円筒形を縦2分割にしたものが組み立て作業工程中に簡単に圧縮機の側面外周部へ配置したり、外したりするのに適していた。実施例では専らヒュームドシリカを主体とした断熱材を使用したが本発明に使用できる断熱材はこの限りではない。この他にフェノール樹脂を多孔質化した断熱材も使用可能であり、旭化成製ネオマフォームが20℃における熱伝導率0.02W/m・Kとして市販されている。
【0052】
またヒュームドシリカあるいは針状シリカをアルミニウム真空包装した断熱材は0.003W/m・K程度という高性能特性が得られることがわかっている。なお、発泡スチレンでは20℃における熱伝導率が0.025〜0.04W/m・Kであるがロー付け時に熱を受けると収縮が大きく使用に適しない、またグラスウールでは20℃における熱伝導率0.05W/m・Kであり特性的に不十分であった。したがって100℃程度までの繰り返し耐熱特性は要求された。また実施例では断熱材の厚さ10mmを使用したが、作業性を考慮すると5〜10mmが望ましいと考えられる。
【0053】
実施例1〜5では、エステル系オイルが注入された縦型圧縮機を使用して行ったが、エーテル系のオイルを使用した場合にも同様な傾向が得られた。
【0054】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、請求項1または2記載の発明は、縦型圧縮機を断熱性能に優れた断熱材にてカバーすることで、その後に銅配管を接続する工程などにてガスバーナーによって加えられた熱量がその後の工程まである程度蓄熱できる。また組み立て工程で密栓を開放する前に縦型圧縮機を十分保温できるような保管状態にしておれば、ある程度組み立て工程での冷却速度を遅延できる。その結果、組み立て工程途上の1時間内また昼休み時間を加えると2時間以内に圧縮機内のオイルに混入する水分量を従来に比べて低減することができるので、エステル系オイルあるいはエーテル系オイルに対してもドライヤーを使用しない場合であっても十分な信頼性を保証することが可能となる。
【0055】
また、請求項4記載の発明は、断熱材カバーが円筒形縦2分割構造とすることにより、圧縮機の外周部に着脱することの作業も容易にできるので圧縮機の十分な保温効果を組み立て工程の途上で得ながら、内部への水分混入量を抑制することができた。
【0056】
また、請求項5記載の発明は、圧縮機とそれを支持する基板との間に十分な断熱性能を有する断熱材を配設することによって圧縮機の底面部からの熱損失を防止でき、圧縮機単体の保温性能をさらに向上させ、内部への水分混入量をさらに抑制することができた。
【0057】
また、請求項6記載の発明は、室外機の縦型圧縮機を所定の温度以上、たとえば80℃に予め加熱した後、組み立て作業工程において断熱材で保温させることによって冷凍サイクル完了時点での圧縮機本体の単体温度を上昇させることができ、内部への水分混入量をさらに抑制することができた。
【0058】
また、請求項7記載の発明は、圧縮機を予備加熱する手段として、三相モータのいずれかを欠相させて通電させることで水分混入抑制に効果的な場所へ必要な熱量を供給することができた。たとえばモータ部が圧縮機の下部に配設される構造の場合、モータ部とオイル溜り部とが近接した場所となり、モータ部への熱量が水分混入量の抑制に有効に作用し、内部への水分混入量をさらに抑制することができた。
【0059】
また、請求項8記載の発明は、圧縮機を縦型に特定したもので、圧縮メカ機構部が上方に、駆動用モータ部が下方に位置しているため、駆動用モータ部とオイルは近接位置し駆動用モータ部の熱量がオイルへの水分混入を効果的に防止する。
【0060】
また、請求項9記載の発明は、圧縮機の圧縮機構部のメカ構造をスクロール構造とすることで騒音特性が良好となり、その結果圧縮機の防音材を省略し、外周部には何も装着しないものが製品化されている。そのような圧縮機に対して、本発明のような組み立て作業工程途上において断熱材を一旦配置して、再度断熱材を外すということが可能となり、圧縮機内部への水分混入量を抑制することができた。
【0061】
また、請求項10記載の発明は、断熱材の熱伝導率として20℃において0.03W/m・K以下の特性を有するもの使用することで圧縮機に対して十分な断熱性能を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で行われる空気調和機の室外機製造工程における冷媒注入までを示す概略工程図
【図2】本発明の実施例1で使用される縦型圧縮機の断面構成図
【図3】本発明の実施例1で使用される基板、防振ゴム、縦型圧縮機および断熱材カバーの分解斜視図
【図4】本発明の実施例2で行われる空気調和機の室外機製造工程における冷媒注入までを示す概略工程図
【図5】本発明の実施例3で行われる空気調和機の室外機製造工程における冷媒注入までを示す概略工程図
【図6】本発明の実施例3で使用される縦型圧縮機の上面方向からの外観図
【図7】本発明の実施例4で行われる空気調和機の室外機製造工程における冷媒注入までを示す概略工程図
【図8】本発明の実施例5で行われる空気調和機の室外機製造工程における冷媒注入までを示す概略工程図
【図9】本発明の比較例1で行われる空気調和機の室外機製造工程における冷媒注入までを示す概略工程図
【符号の説明】
1 定ハネ部
2 動ハネ部
3 縦型圧縮機
4 吸入部
5 吐出ポート
6 吐出部
7 縦型圧縮機
8 基板
9 防振ゴム
10 断熱材カバー

Claims (10)

  1. 圧縮機、凝縮器、膨張機構、蒸発器およびその付属品を少なくとも構成要素とし、塩素を含まない弗化炭素系冷媒と、前記冷媒と相溶性を有するオイルとを封入することによって構成される冷凍サイクルにおいて、基板上に前記圧縮機を支持し、前記圧縮機の放冷を抑制する機能を有する断熱材カバーによって前記圧縮機の少なくとも側壁を囲んだ状態で前記圧縮機の冷媒吐出管ならびに冷媒吸入管を前記冷凍サイクルに配管ロー付けして冷凍サイクルを完成した後、前記断熱材カバーを前記圧縮機から取り外す工程を経過した後、前記冷媒を前記冷凍サイクル中に注入して前記注入孔を閉塞することを特徴とする冷凍サイクル装置の製造方法。
  2. 前記オイルはエステル系オイルまたはエーテル系オイルとしたことを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  3. 前記冷凍サイクル装置は空気調和機としたことを特徴とする請求項1または2記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  4. 前記断熱材カバーは円筒形を少なくとも縦2分割した部材で構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  5. 前記圧縮機と前記基板との間に断熱材を配設することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  6. 前記圧縮機を前記基板上に載置する前に、前記圧縮機を所定の温度以上に予備加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  7. 前記圧縮機を予備加熱する手段として、圧縮機の三相モータのいずれかの相を欠相させて通電することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  8. 前記圧縮機は縦型圧縮機としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  9. 前記圧縮機のメカ構造がスクロール構造であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
  10. 前記断熱材はその熱伝導率が20℃において0.03W/m・K以下の特性を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の冷凍サイクル装置の製造方法。
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