JP3887449B2 - 回転機械の動圧発生溝付軸受構造の加工方法。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械、ターボ圧縮機、膨張タービン等で軸受部に負荷される荷重を、高速回転する回転軸を回転によって発生せしめる動圧で支持して、軸受部で噛じること無く滑らかに回転するようにした滑り軸受の動圧発生溝付軸受構造の加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速回転するターボ圧縮機や、膨張タービン等の回転機械の軸受機構特に滑り軸受において、回転軸の径方向に負荷される荷重を支持するための軸受(ラジアル軸受)や回転軸の軸に沿って負荷される荷重を支持するための軸受(スラスト軸受)では、これらの荷重で回転軸と軸受とが相互に噛み合うことなく、滑らかに回転するように荷重が負荷される軸受部での受け面に、回転軸の回転によって動圧を発生させてこれによって回転軸の負荷荷重を支持する構造が採用されている。
【0003】
即ち、図4はラジアル軸受51の例を説明するもので、(a)はラジアル軸受51の概略説明図であり、回転軸52はラジアル軸受51で軸受されて回転する。このとき軸受部53では、これに支持される回転軸52の軸と直角方向(重力方向)に荷重Wが負荷されて、回転軸52が軸受部53の下面53Aで接触し滑らかなる回転を損なうこととなる。そこでこの回転軸52の荷重Wの負荷を支持するため、軸受部53に潤滑剤として供給した油又は気体を回転軸の回転により圧縮して、動圧Pを発生させてこの動圧Pで荷重Wを支持し回転軸52を軸受部53の面より浮かせて滑らかに回転するようにしている。
【0004】
そして前記動圧Pを効率よく発生させるために、回転軸52の周面あるいは軸受部53の周面に沿って動圧発生溝54を設けている。図4の(b)、(c)はラジアル軸受51の動圧発生溝54の典型的な模様形状を示すものである。(b)は回転軸52の周面に沿って軸方向に平行な凹部溝55A、凸部55Bよりなるステップ状溝55を複数設けたものであり、(c)は同様に回転軸の周面に沿って回転軸52の軸に対して所定の角度を有するへリングボーン状模様56に凹部溝56A、凸部56Bを複数設けたものである。
【0005】
図5は回転軸の軸に沿った方向に負荷される荷重Wを支持するスラスト軸受61を説明するもので、(a)はその軸受の構造の概略を示すものである。回転軸62はその軸を軸受部63に支持されて回転する。そしてこの場合回転軸62に沿った方向で重力方向に荷重Wが負荷され、軸受部63がこれを支持する必要がある。このため回転軸62に該回転軸62と軸心を一致して回転する円盤65の面を軸心に沿う方向に向けて配置して固定して設けて、この円盤65を軸受部63内に回転軸62とともに回転するように受け面63Aで受けて支持している。そして軸方向に負荷される荷重Wを支持して回転軸62の回転を噛むことなく滑らかに駆動するように、前記回転軸62に固定した円盤65の下面に、回転軸62の回転によって潤滑剤として供給される油や気体を圧縮して動圧Pを発生させ、この発生した動圧Pによって円盤65を下方より支持し、更に荷重Wを克服して受け面より浮上せしめて円盤65と受け面63Aとの接触を回避し滑らかな回転を可能にしている。
【0006】
そして前記動圧Pを効率よく発生させるために、回転軸に設けた円盤65の下面、あるい円盤65の下面と相対する軸受部63の受け面63Aの表面に動圧発生溝64を設けている。図5の(b)、(c)はスラスト軸受61の動圧発生溝64の典型的な模様形状を示すものである。(b)は回転軸62を中心にした螺旋状溝66を形成する凹部溝66A、凸部66Bを複数設けたものであり、(c)は同様に回転軸62を中心にして放射状溝67を形成する凹部溝67A、凸部67Bを動圧発生溝64としたものである。
【0007】
しかるに、上記動圧発生溝54及び64は回転中に作動し効果を発揮するもので、停止時及び起動時には、ラジアル軸受51では回転軸51と軸受部53とが固体接触し、またスラスト軸受61では回転軸62に設けた円盤65とこれを受けて支持する軸受部63とで固体接触する。それ故これらの接触による摩耗を防ぐために回転軸や軸受部の表面に超硬質複合材料をコーテイングするか、又はセラミックなどの硬質材料を使用している。
【0008】
図6は上記ラジアル軸受51やスラスト軸受61に配設した動圧発生溝54、64の従来の構造の模型断面図を示すもので、図6(a)で示す如く凹部溝71を形成する凸部72の上表面72Aに超硬質複合材料Uの皮膜をコーテイングしている。即ち凹部溝71を設ける回転軸や軸受部等の部品70をアルミ合金や銅合金、ステンレス鋼、軸受鋼等の金属材料Mを使用して形に合わせて製造し、この表面に上記した所定の模様形状の凹部溝71を、エッチング加工や放電加工により数ミクロン〜数十ミクロンの深さに削溝し、そしてこれによって形成された凸部72の上表面72Aにチタンカーバイド(TiC)やチタンナイトライド(TiN)、更にはタングステンカーバイド(WC)等の超硬質複合材料Uをイオンプレーテイングやスパッターリングによってコーテイングして表面の耐摩耗性を高めている。
【0009】
また他の構造として図6(b)に示す如く凹部溝71を設ける回転軸や軸受部等の部品70を耐摩耗性の極めて優れたセラミック材Sを用いて製造し、その表面に上記した如き所定の模様形状の凹部溝71をレーザー加工等によって深さ数ミクロン〜数十ミクロンに刻設している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図6(a)の如き凸部72の上表面72Aに超硬質複合材料Uをコーテイングするものにおいては、コーテイングされるチタンカーバイド、チタンナイトライド、そしてタングステンカーバイド等の超硬質複合材料Uの皮膜は、厚さを厚く形成するには作業が煩雑で手間がかかり、価格が高価となるため、せいぜいその厚さは3μm程度が限界であり、極めて薄く使用可能寿命が短かった。またこの超硬質複合材料Uの皮膜を上記凸部上表面72Aにコーテイングにより形成するには、密着強度を高くしてコーテイングする必要があり、このためには皮膜を形成する表面を超精密仕上げ加工することが要求されるばかりでなく、脱脂洗浄等の処理の繊細な配慮を必要とした。
【0011】
このような超硬質複合材料Uのコーテイングによる皮膜の形成の不都合を避けるため、前記図6(b)の如き回転軸又は軸受部等の部品70の材料をセラミック材Sとしてその表面に凹部溝71を加工したものが提案された。しかるに、これはセラミック材が超硬質であるという利点を利用したものであるので、その反面このセラミック材に複数の溝を加工することは極めて困難であり、レーザー加工でも溝の深さはせいぜい10〜20μm程度であって、それ以上の深さの加工は価格的に高価となる。また形成する複数の溝の深さをすべて均一にすることも極めて困難であるばかりでなく、加工に時間を要し、形状が大きいターボ圧縮機や膨張タービン用のものにおいては、その加工に長時間を要する等々の不都合があった。
本発明は、上記従来の不都合に鑑みなされたもので、動圧発生溝を形成しかつ停止時、起動時に固体接触する凸部を超硬質なセラミック材で形成して使用寿命を高めるとともに、凹部溝の加工工程を簡略化して加工を容易にして加工生産効率を高め、しかも溝の深さを深くかつ複数の溝の深さを均一に形成することを可能にし、その上該溝の深さを適宜調整可能にした製作費が安価な動圧発生溝付軸受の加工方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記従来の不都合を解決するため、請求項1に係わる発明は、回転機械の滑り軸受の回転軸または軸受の表面に、複数の動圧発生溝を加工するにあたって、動圧発生溝を形成すべき金属からなる部位を所望する模様形状に従った溝を形成した後、該溝内にセラミック材料をセラミック成膜手段により埋め込み、ついで表面を平滑に研磨した後にエッチング処理して金属部分を上記溝の底よりも浅く腐食溶解して凹部となし、セラミック材料部を凸部となして所望する模様形状の動圧発生溝を形成加工することを特徴とする回転機械の動圧発生溝付軸受構造の加工方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の加工方法によって得られた動圧発生溝を配設した軸受の構造の実施の形態について図1、図2により説明する。図1はラジアル軸受の実施の形態を示すもので、回転軸2に直角方向に負荷される荷重Wを、回転軸2の回転で軸受部3に動圧Pを発生させて、この動圧Pで支持する。そしてこのラジアル軸受1は、動圧発生溝4として図1(a)に示す如く回転軸2の周部に沿って軸方向に平行に凹部溝5Aと凸部5Bを交互に複数形成したステップ状溝5からなる構造、及び図1(b)に示す如く回転軸2に対して所定の角度αを有して複数削溝される凹部溝6Aとこれを形成する凸部6Bからなるへリングボーン状溝6の構造よりなっている。
【0015】
そしてこれらの動圧発生溝4の凹部溝5A(ステップ状溝5の)、6A(へリングボーン状溝6の)とこれを形成している凸部5B(ステップ状溝5の)、6B(へリングボーン状溝6の)は図1(c)に図示した如き構造となっている。即ち図1(c)は上記ラジアル軸受1の回転軸2の径方向に沿って切断した断面図であり、回転軸2の周に沿って軸方向に走る動圧発生溝4の凹部溝5Aや6Aは凸部5Bの狭間や凸部6Bの狭間によって形成されている。そしてこの凸部5B、6Bは超硬質であるセラミック材Sでなり、これを上記図1(a)のステップ状溝5及び図1(b)のへリングボーン状溝6等の所望の模様形状になるように回転軸2に埋め込んで固設したものである。この結果動圧発生溝4の凹部溝5A及び6Aの底部は回転軸2を構成している金属材料Mよりなっている。そしてこの金属材料Mとしては、アルミ合金や銅合金、ステンレス鋼、軸受鋼等の一般に使用されている材料が用いられる。また凸部5B、及び6Bを構成するセラミック材Sとしては、アルミナ(Al2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、炭化珪素(SiC)及び窒化珪素(Si3N4)等が好適に使用される。
なお上記の実施の形態では動圧発生溝4を回転軸2の周面に設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、回転軸2を受ける軸受部3の周壁に沿って設けても良いことは勿論である。
【0016】
つぎに別の実施に形態として回転軸2に沿った方向に負荷される荷重Wを支持するスラスト軸受11の場合について図2により説明する。図2(a)は上記スラスト軸受11の概略を説明するもので、回転軸12には該回転軸12と軸心を一致して回転軸12とともに回転する円盤15を盤面が軸心に沿う方向に向けて固定されている。そしてこの円盤15を含む回転軸12は、軸受部13で回転可能でかつ前記円盤15の盤面を受け面13Aで受けて支持されている。そこで回転軸12に沿って負荷される荷重Wを、軸受部13で回転軸12とともに回転する円盤15と軸受部13の受け面13Aとの間に動圧Pを発生させて、この動圧Pで前記荷重Wを支持している。そしてこの動圧Pを効果的に発生させるために、軸受部13の円盤15の受け面13Aや、あるいはこの受け面13Aに対面する円盤15の下面に凹部溝と凸部を交互に配した動圧発生溝4を設けている。
【0017】
そしてその動圧発生溝4は動圧Pの効果的な発生を意図して図2(b)に図示する回転軸を中心にした螺旋状の凹部溝16Aと凸部16Bとからなる螺旋状溝16および図2(c)に図示する如く回転軸を中心に放射状に凹部溝17Aと凸部17B交互に配した放射状溝17からなるものである。このような模様形状の本発明の動圧発生溝4の凹部溝16A、又は17Aは、図2(d)の断面図に図示する如く、交互に配された凸部16B、又は17Bの狭間で形成され、そしてこれらの凸部16B、又は17Bは前記ラジアル軸受1と同様にセラミック材Sで構成されている。即ち、該セラミック材Sの凸部16B、又は17Bが軸受部13の受け面13A、あるいは円盤15の下面の金属材料Mに所定の模様形状に従って埋め込まれて固定している。なお、これら軸受部13や円盤15に使用される金属材料Mはアルミ合金や銅合金、ステンレス鋼、軸受鋼等であり、セラミック材料Sとしてはアルミナ、酸化クロム、炭化珪素、及び窒化珪素等が使用される。
【0018】
このように、これらの実施形態の回転機の動圧発生溝付軸受構造では、種々模様形状の動圧発生溝である凹部溝を形成せしめる両側の凸部を超硬質のセラミック材で形成したので、回転の停止時や起動時の固体接触による摩耗が低減され、しかも凸部全体をこの材料で構成しているので長期にわたって使用可能となり、作業効果か向上する。また該セラミック材よりなる凸部は従来より使用されている軸受部の金属材に埋め込んで配設したので、安価でかつその溝深さを適宜調整することができる等の効果を奏する。
【0019】
つぎに本発明の動圧発生溝付軸受構造の加工方法の実施の形態について図3により説明する。なお、図3で前記図1及び図2と共通する部分は同一符号を付し詳細な説明は省略する。
▲1▼先ず動圧発生溝4を加工すべき回転軸2や12及び軸受部3や13等の部品20、即ちラジアル軸受1では回転軸2又は軸受部3(図1参照)、またスラスト軸受11では回転軸12に固設される円盤15又はこの円盤15を受ける軸受部13の受け面13A(図2参照)をそれぞれの機能に適合した形状に軸受鋼、アルミ合金や銅合金、ステンレス鋼等の金属材料Mで形成する[図3(a)]。
▲2▼ついで前記回転軸2や12及び軸受部3や13等の部品20のそれぞれ何れかに、動圧発生溝4としてラジアル軸受1ではステップ状溝5あるいはへリングボーン状溝6の模様形状の溝、またスラスト軸受11では螺旋状溝16あるいは放射状溝17の模様形状の溝等を適宜所望する模様形状に合わせて前記金属材料Mをエッチング加工又は放電加工により溝21を削溝する。なお、この溝21の深さは最終的に溝となる所望する深さより深く形成する[図3(b)]。
【0020】
次に前記溝21にアルミナ、酸化クロム、炭化珪素、及び窒化珪素等のセラミック材Sを溶射加工等によって埋め込む。この際埋め込んだセラミック材Sは回転軸2や12及び軸受部3や13等の部品20を形成する金属材料Mの上表面を被覆する程度にまで溶射加工すると、後工程での加工作業で均一な面加工ができる[図3(c)]。
ついで回転軸2や12及び軸受部3や13等の部品20を形成する金属材料Mの上表面を研削加工して前工程で上表面に被覆されたセラミック材Sを剥離するとともに、複数の溝21に埋め込んだセラミック材Sの上表面を均一な平滑面に仕上げる[図3(d)]。
次に前記溝21に埋め込んだセラミック材Sの平滑加工した上表面を、該上表面に残る気孔を塞ぐため、エポキシ系、フェノール系、あるいはアクリル系等の樹脂でエッチング液に腐食されないシーリング樹脂Rで被覆する。なおこの工程は必要に応じてなされるものであって、適宜これを省略することもできる。
そして最後にエッチング液Eによりエッチング処理してセラミック材Sに挟まれた金属材料M部を腐食して除去する[図3(e)]。この際、金属材料M部の腐食深さは、先に形成した溝の底よりも浅くされ、セラミックス材Sの下部が金属材料M部に埋め込まれた状態とする。
そして前記被覆に使用したシーリング樹脂Rをサンドペーパー等の剥離手段により取り除き、図3(f)に図示する如く、セラミック材Sで形成された凸部Bの狭間に、底部が金属材料Mである所望模様形状の凹部溝Aよりなる動圧発生溝4を有する所望の軸受構造の回転軸2や12及び軸受部3や13等の部品20を得る。
なお、上記溶射手段に代えて、スパッタリング、CVD、及びレーザ蒸着等の成膜手段を用いてセラミック層を形成しても良い。
【0021】
【実施例】
次に本発明の動圧発生溝付軸受構造の加工方法の実施例を説明する。
[実施例1]:この実施例1では図1(b)に図示したラジアル軸受1のヘリングボーン状溝6の動圧発生溝4を回転軸2に設けた軸受を加工した。回転軸の外径:40mm、軸受部の軸の長さ:40mm、回転軸の金属材料:ステンレス鋼、このような回転軸2の周面に沿って回転軸2の軸受部の両端にそれぞれ軸線と45度と135度の左右対称角度を有するヘリングボーン状溝を24本を軸受部の両端からそれぞれ中心に向けて12mmにわたって、深さ28μmの凹部溝6Aをセラミック材Sよりなる凸部6Bの狭間にして形成した。その加工工程は前記図3に従って行い、図3(b)でのセラミック材Sを埋め込む溝21の幅は2.6mmとし、深さは40μmとして放電加工により行った。また図3(c)の工程での溝21に埋め込むセラミック材Sは酸化クロムを用いた。また図3(e)のエッチング液Eは硝酸水溶液(約15容量%)を使用し、浸漬方法で行い約14分浸し、深さ28μm、幅2.6mmの酸化クロムのセラミック材Sよりなる凸部Bで挟まれた凹部溝Aを有する、前記所望するヘリングボーン状溝6でなる動圧発生溝付ラジアル軸受1を精密に加工し得た。
【0022】
[実施例2]:この実施例2では図2(b)に図示したスラスト軸受11の螺旋状溝16を動圧発生溝4として回転軸12の軸受部に固設した円盤15の下面の面に設けた軸受構造を、前記図3に図示した製法により以下の通り加工した。
回転軸12の諸元:外径40mm、金属材料Mとして軸受鋼を使用。
円盤15の諸元:直径100mm、厚さ14mm、金属材料Mとして銅合金を使用。
螺旋状溝16の諸元:溝の深さ60μm、溝の幅外周側を6.5mm、内周側を4.3mmの凹部溝16Aを24本外周より内側に17.5mmの位置まで、24本のアルミナよりなるセラミック材Sの凸部16Bの狭間に形成。
なお、図3における製法での工程(b)のセラミック材の埋め込み溝21はエッチングで形成し、その深さを75μmとした。またこの工程(b)及び(e)で使用したエッチング液Eは硝酸水溶液(約18容量%)で、エッチング時間として約17分費やした。
以上のようにして螺旋状溝16の動圧発生溝4を設けたスラスト軸受11用円盤15が得られこれを回転軸12に固設して使用した結果、極めて効果的に活用し得、特に凹部溝16Aを形成する凸部16全体がセラミック材で形成されているので、固体接触での耐摩耗性において従来のセラミック材の成膜によるものよるものより数倍の寿命が得られた。しかもその製造加工も極めて容易で、従来より深い60μmの深さの溝が短時間で形成し得た。
【0023】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明にあっては、回転機械の動圧発生溝付軸受構造の動圧発生溝を形成する凸部全体を耐摩耗性に優れたセラミック材料としたので、固体接触による摩耗が低減し、かつ摩耗による使用寿命が従来の該種軸受に較べて長期にわたって延命し、軸受構造として極めて優れた性能を発揮する。また摩耗して溝の深さが浅くなって動圧発生が減じても、凸部全体がセラミック材料であるので溝部の底部の金属材料をエッチング処理して深くしたり、また深さが深くなり過ぎた場合には凸部のセラミック材表面を研削加工する等、深さの調整が極めて容易である。
【0024】
しかもその製造にあたっても凸部を形成するセラミック材を軸受部を構成する金属材料に溶射等により埋め込む方法であり、従来の皮膜形成の如く皮膜厚さの均一性保持のための配慮と精巧な加工処理や、皮膜形成する金属材料との密着強度を高めるための超精密仕上げ等の煩雑な作業を必要とせず、形成した凸部表面を研削加工仕上げすることで充分所望の溝を極めて容易に加工し得る。その上本発明では凹部溝を軸受金属材料に溶射により埋め込んだセラミック材の凸部の狭間に形成したので、その深さは凹部溝の底部の軸受金属材料をエッチング処理や放電加工により削除すれば良く極めて容易に調整し得る。それ故従来セラミック皮膜の形成による方法での皮膜厚さの限界やセラミック材そのものに溝加工する深さの限界があったが、本発明では極めて容易に数十〜数百μmの深さの深い溝を短時間で加工することができる。従って、耐摩耗性のセラミック材料の凸部の狭間に適宜所望する深さに調整し得るの凹部溝よりなる動圧発生溝を有する軸受構造を生産効率よく極めて安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における動圧発生溝付軸受構造の一例のラジアル軸受の説明図である。
【図2】 本発明における動圧発生溝付軸受構造の別の例のスラスト軸受の説明図である。
【図3】 本発明の動圧発生溝付軸受構造の加工方法の工程図である。
【図4】 動圧発生溝付ラジアル軸受を説明する図面である。
【図5】 動圧発生溝付スラスト軸受を説明する図面である。
【図6】 従来の動圧発生溝の構造の模型断面図である。
【符号の説明】
2、12、52、62 回転軸、 3、13、53、63 軸受部、4、54、64 動圧発生溝、 5、55 ステップ状溝、6、56 ヘリングボーン状溝、 13A、63A 軸受の円盤受け面 15、65 回転円盤、 16、66 螺旋状溝、 17、67 放射状溝 20、70 回転軸や軸受部等の部品、 21 溝、 A、71 凹部溝、B、72 凸部、 W 荷重、 P 動圧、 M 金属材料、S セラミック材、 U 超硬質複合材料、 E エッチング液
Claims (1)
- 回転機械の滑り軸受の回転軸または軸受の表面に、複数の動圧発生溝を加工するにあたって、動圧発生溝を形成すべき金属からなる部位を所望する模様形状に従った溝を形成した後、該溝内にセラミック材料をセラミック成膜手段により埋め込み、ついで表面を平滑に研磨した後にエッチング処理して金属部分を上記溝の底よりも浅く腐食溶解して凹部とし、セラミック材料部を凸部として所望する模様形状の動圧発生溝を形成加工することを特徴とする回転機械の動圧発生溝付軸受構造の加工方法。
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