JP3886935B2 - 金属材料の損傷評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料の損傷評価方法に係り、特に、火力発電プラントや原子力発電プラント等の高温耐圧金属部材を用いた各種配管として使用される低合金鋼の溶接部HAZ粗粒域に発生する脆性的なクリープ損傷等の微視損傷の進展度合いを評価し、該金属材料の寿命を診断する際に用いて好適な金属材料の損傷評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、火力発電プラントにおいては、運転時間が長時間に及ぶのに従い長時間使用による設備の劣化、頻繁な起動停止や急速な負荷変動等による熱疲労等を十分に考慮した保守管理が益々重要になってきている。
例えば、高温耐圧金属部材が用いられる大口径厚肉配管では、き裂等の損傷は、多くの場合溶接部の内部で発生しているが、この損傷は外表面の検査だけでは検出することができないために、この損傷の早期検出及び、その寸法の正確な測定によるき裂のモニタリング手法の開発が求められている。
従来、余寿命(破断するまでの時間)を推定するために、表面損傷を直接検査することで余寿命を推定するMLAS法と、内部損傷を検査するTOFD法(Time Of Flight Diffraction)とがとられている。
【0003】
MLAS法とは、配管の表面をプラスチック膜に転写して表面のレプリカを採取し、このレプリカを光学顕微鏡を用いて観察することで、クリープ損傷による空孔(クリープボイド)や析出物等の有無及びその分布状態を調べ、これらと寿命との関係の参照データと照らし合わせて寿命を診断する方法である。
【0004】
また、TOFD法は以下のような内部損傷測定原理である。図20はTOFD法の測定原理を説明するための説明図であり、超音波を発信する送信探触子1と、超音波を受信する受信探触子2とを、金属材料3の表面に、該金属材料3の内部に生じたき裂(欠陥)4を挟んで等距離に載置し、送信探触子1により金属材料3内に超音波5を発信させ、受信探触子2によりき裂4の上端及び下端からの回折波6を検出してその伝搬時間を測定し、き裂4の高さを式(1)により求めるものである。なお、図中、7は表面波、8は底面反射波である。
【0005】
Figure 0003886935
ただし、L :き裂高さ
Zb :き裂先端の深さ
Zt :き裂底の深さ
D :送信探触子1と受信探触子2との間の距離
S :D/2
V :回折波の速度
tt :き裂先端からの回折波伝播時間
tb :き裂底からの回折波伝播時間
上述したTOFD法は、欠陥からの回折波を利用して探傷するために、従来の超音波探傷法と比べて欠陥の傾きの影響を受け難く、方向性のある欠陥を見落とす可能性が減少し、欠陥の検出性能が向上するという優れた点がある。
【0006】
従来の評価では、MLAS法から余寿命を求める他に、TOFD法などで検出した内部き裂の伝播を計算し、これを基に余寿命を求める。しかしながら、き裂伝播計算では、単一のき裂が成長、進展することを前提としている。このため、例えば、複数の微視的なき裂が発生と合体を繰り返しながら成長する損傷のような場合においては、上記の方法により推定した余寿命が実際の余寿命と対応しなくなってしまうおそれがある。
経年火力プラント高温大径配管溶接部の余寿命評価においては、HAZ部(溶接熱影響部;weld heat affected zone)の板厚内部から発生および成長するクリープ損傷の定量評価が重要である。
HAZ中の溶金に近い幅約1mmの領域は粗粒域であり、母材に近い幅約5mmの領域は細粒域である。粗粒域でのクリープ損傷はTypeIII損傷、細粒域での損傷はTypeIV損傷と呼ばれる。HAZの主応力は板厚方向に分布し、一般に、主として寿命中期以降に、板厚内部の高応力部で多数の微小欠陥が発生する。微小欠陥は合体、成長を繰り返してき裂状欠陥に成長し、その大きさが高応力領域を逸脱すると、他のき裂状欠陥や微小欠陥と合体しながら低応力部を進展する。実機板厚は30mm〜100mm以上であり、進展に要する時間は数千から数万時間である場合が多い。余寿命評価のためには、微小欠陥の発生と合体、微小欠陥からき裂状欠陥への成長、および、き裂状欠陥の合体を伴う進展、の統一的な評価が必要である。
【0007】
図21に、TypeIIIおよびTypeIV損傷の損傷進展の模式図を示した。それぞれ符号10,11が結晶である。TypeIII損傷(粗粒域)の場合、損傷進展に伴い、結晶粒界に微小欠陥12が発生、複数の微小欠陥12が合体して一つの結晶粒界全体が一つのき裂状欠陥13となる。寿命末期にはき裂状欠陥同士の合体が生じる。以下、便宜上粗粒結晶粒界上に微小欠陥発生単位があると考え、これをセルと表記する。
一方、TypeIV損傷(細粒域)では、微小欠陥14の大きさは結晶粒径にほぼ等しい。損傷進展により複数の微小欠陥14が発生、合体しき裂状欠陥15となり、これらがさらに発生と合体を繰り返し、複数のき裂状欠陥となる。
【0008】
特願2002−248960には細粒域のTypeIV損傷について損傷の進展を評価する技術が開示されている。
この評価方法では、高温配管の溶接部における結晶粒界モデルを作成し、図22に基づき粒界破壊抵抗分布モデルの考え方に基づく微視損傷進展シミュレーションを実施している。
この損傷進展シミュレーションでは、各粒界モデル16はそれぞれ破壊抵抗値Rを有している。各粒界モデル16には、応力σによって定められるき裂発生駆動力Fが作用しており、き裂が生じていない段階では、粒界破壊駆動力をDとすると、損傷の進行速度dR/dt=−D=−Fである。
時間が経過するにつれ損傷が進行し、粒界の破壊抵抗値Rが負(R<0)になると、粒界が破壊しき裂が発生する。このき裂に隣接する粒界では、粒界破壊駆動力Dは、き裂発生駆動力Fと、き裂伝播駆動力Kと粒界に隣接するき裂長さaとの積との和に等しい(D=F+a・K)。
時間を進めていくと、徐々にき裂数が増加したり、個々のき裂の長さが長くなったりする。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−168853号公報
【非特許文献1】
多田直哉、他2名、「材料」第45巻、第1号、1996年1月、pp.110-117
【非特許文献2】
多田直哉、他3名、「材料」第46巻、第1号、1997年1月、pp.39-46
【非特許文献3】
川島扶美子、他4名、「微視損傷進展を考慮した低合金鋼溶接部のクリープ寿命評価法の検討」、第38回高温強度シンポジウム 前刷集、2000年12月8日、p.109
【非特許文献4】
川島扶美子、他4名、「微視損傷進展を考慮した溶接継手のクリープ寿命評価法の検討」、第39回高温強度シンポジウム 前刷集、2001年12月13日、p.80
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、複数の微視損傷が発生、合体、成長を繰り返す損傷形態(多場所発生形損傷)について、図21(b)のTypeIV損傷のように、微小欠陥が粒界上に発生し、かつ粒界とほぼ同サイズの場合には、特開2002−168853号の方法などで損傷進展を評価可能である。
しかし、図21(a)TypeIII損傷のように、発生する欠陥が粒界より小さい場合については評価することができなかった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、HAZ粗粒域または欠陥が結晶粒や結晶粒界より小さい場合においても損傷進展を評価することができる金属材料の損傷評価方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の金属材料の損傷評価方法は、金属材料の結晶粒界をモデル化し、該結晶粒界のモデルを、前記金属材料の粒界に発生しうる、該粒界より小さい微小欠陥の大きさの計算単位に分割して、該計算単位ごとに損傷の進展を計算することを特徴とする。
【0013】
この発明においては、結晶粒界を微小欠陥の発生単位(セル)に分割することにより、粒界より小さい微小欠陥の発生を計算することができ、粒界上で進展する損傷の評価が可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属材料の損傷評価方法において、前記各微小欠陥の発生単位が有する破壊抵抗初期値の分布を損傷初期における微小欠陥数の試験結果から求め、該分布に基づいて前記各計算単位に破壊抵抗初期値を与えて損傷の進展を計算することを特徴とする。
【0015】
損傷の進展を評価するため、各計算単位に対して破壊抵抗初期値を与える。破壊抵抗初期値の分布形として、例えば正規分布など、ある分布の種類を仮定すると、実際の損傷を観察することにより、分布を推定することができる。例えば、分布の種類として正規分布を仮定した場合を考える。正規分布においては平均と標準偏差が分布形を決定する。粒界破壊抵抗値の平均と試験条件における変数Fとの比を、例えば0.5とおく。試験から得られた微小欠陥個数密度の時刻歴をこれに基づき整理することで、標準偏差が求まり、分布を推定することができる。
このようにして定まった破壊抵抗初期値の分布形に基づき、各計算単位に対してランダムに破壊抵抗初期値を与え、損傷進行の計算に用いる。
なお、微小欠陥個数密度の時刻歴は、実際の試験体から損傷初期での1mm2中に発生しうる微小欠陥の個数を観察して出す。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の金属材料の損傷評価方法において、あらかじめ試験体を観察することにより、結晶粒径の分布と、結晶粒界上に発生しうる微小欠陥の径の分布とを求め、これらのデータに基づいて前記結晶粒界モデルの作成と前記計算単位の分割を行うことを特徴とする。
【0017】
この発明では、実際の試験体の粒径分布に基づいて結晶粒界モデルを作成するため、損傷の進展をより正確に推定することができる。
【0018】
請求項4に記載の金属材料の損傷評価方法は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の金属材料の損傷評価方法において、金属材料の結晶粒界モデルを用いて金属材料の損傷の進展を計算する金属材料の損傷評価方法において、前記結晶粒界モデル中の微小欠陥の長さの合計から該結晶粒界モデルの有効断面積を算出し、該有効断面積と前記結晶粒界モデルに作用する荷重から該結晶粒界モデルに作用する有効応力を算出することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、結晶粒界モデルを用いて損傷の進展を計算する際に有効応力に基づいた計算を行うことができる。すなわち、結晶粒界モデルに微小欠陥が生じると、その部分は応力を支持しなくなり、微小欠陥となっていない他の部位(有効断面積)が応力を支持するようになる。この部位に作用する応力(有効応力)の増加を評価することにより、余寿命を推定することが可能である。
なお、本発明の有効応力に基づく余寿命診断方法は、微小欠陥が粒界より小さい場合(一つの粒界モデルを複数の計算単位に分割する場合)に限らず、既存の細粒域(微小欠陥が粒界モデルとほぼ同程度の場合)や、その他の損傷評価法においても適用することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の金属材料の損傷評価方法において、結晶粒界モデルに作用する有効応力とクリープ破断曲線とによって金属材料の余寿命を推定することを特徴とする。
【0021】
クリープ破断曲線は、有効応力と余寿命との関係を表す曲線であり、試験体によるクリープ破断試験から推定することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態においては、粗粒結晶について損傷解析を可能にすべく、以下の手順に従い、粒界破壊抵抗分布モデルにより解析を行う。
粒界破壊抵抗分布モデルによる解析に必要なHAZ粗粒域の材料特性は、結晶粒径[L]、微小欠陥のセル径[l]、粒界破壊抵抗の初期値[R]、微小欠陥の発生駆動力Fおよび成長駆動力係数Kである。これらを以下のようにして決定する。なお、[x]はxの集合を表す。
【0023】
(1)[L],[l]の推定
まず、HAZ粗粒域と同じ結晶粒を再現した試験体を用意する。光学顕微鏡により、試験体中の粗粒の実体組織を観察し、結晶粒径[L]およびセル径[l]を決定する。粗粒の結晶粒径[L]およびセル径[l]は、光学顕微鏡により実体組織を観察し、これにより[L]、[l]の分布形を得る。
【0024】
(2)F、[R]の推定
次に、試験体の微小欠陥個数密度の時刻履歴から[R]の分布形およびFを推定する。Fは温度・応力に依存し、これらの条件が一定なクリープ試験においてはFは一定である。図1に示したように、あるセルに微小欠陥が隣接しない場合、このセルの粒界破壊抵抗Rの減少はFのみに依存する。この微小欠陥に隣接しないセルが微小欠陥になる時刻をtとおくと、このセルのR0は次式で表すことができる。
=Ft
したがって、時刻tには、R<Ftであるセルが破損している。すなわち、時刻tにおける微小欠陥個数密度はR<Ftであるセルの個数をあらわす。つまり、微小欠陥個数密度の時刻歴は、集合[R]の累積分布をあらわす。図2にRの分布を示したが、時刻tにおいて斜線の部分は微小欠陥となっているセルであり、微小欠陥の数Nは、R<Ftであるセルの個数である。時刻がtとなると、さらにRが大きなセルも欠損となる。このように微小欠陥個数密度の時刻歴をとっていけば集合[R]の累積分布が得られる。
しかしながら、「微小欠陥個数密度の時刻歴は、集合[R]の累積分布をあらわす」ということは、上記のように微小欠陥同士が隣接していない状態においてのみ成り立ち、隣接する微小欠陥を有するセルのRの減少にはKとFが影響するため、微小欠陥個数密度の時刻歴のみから直接[R]の分布形を出すことは出来ない。そこで、Rの平均値とFの比を任意の値(ここでは0.5)に決めてしまう。RとFとは相対的な関係にあるので問題は生じない。また、[R]の分布形を、例えば正規分布のように、ある分布形に仮定すると、Rの平均と標準偏差がわかればRの分布形を得ることができる。単位面積あたりに生じうる微小欠陥の総数が既知であれば、損傷初期における微小欠陥個数密度(単位面積あたりに生じた微小欠陥の個数)の時刻歴から平均値との比として標準偏差を求めることができる。Rの分布形が分かれば、ある一つの時刻における微小欠陥個数密度からFを求めることができる。微小欠陥個数密度は、実際の試験体から損傷初期(損傷が大きく進む前の段階)での1mm2中に発生しうる微小欠陥の個数を観察して出す。
1mm2中に生じうる微小欠陥の総数は、組織観察から求めることが望ましいが、これが困難な場合には組織を単純化したモデルなどから推定する。
以上のようにして、[R]の分布形と、Fが決まる。
【0025】
(3)Kの推定
微小欠陥の発生を発生破壊駆動力Fで表し、微小欠陥の成長を、微小欠陥成長駆動力Kaで与えることとする(aは微小欠陥の長さ)。
長さaの微小欠陥に隣接したセルが、微小時間dt後に微小欠陥になった場合、このセルの粒界破壊抵抗Rは(2)式で与えられる。
R=dt(F+Ka) …(2)
このセルの長さをlとすると、lは微小時間dtでの微小欠陥成長量であり、成長速度は(3)式で表される。
【0026】
【数1】
Figure 0003886935
【0027】
(2)式と(3)式とを用いることで、(4)式が得られる。
【0028】
【数2】
Figure 0003886935
【0029】
l、Rとしては、集合[l]、[R]の平均値を用い、また、Fとしては上記のように推定した値を用いた。成長速度としては、無限体中の単一き裂に対するCパラメータ、および成長速度とCパラメータの線形関係を仮定したき裂進展速度式を用いた。Cは応力と材料のクリープ特性に依存する破壊力学パラメータである。
【0030】
(4)余寿命の予測
以上のように決定されたデータを用いて、余寿命の予測を行う。
実機高温配管の板厚方向応力分布は、内圧による応力、溶金−HAZ−母材の材料不連続による拘束、および、ビードの凹凸に起因する局所的な応力集中が重畳し決定される。
また、クリープにより微小欠陥が発生すると、有効断面積が減少し、有効応力が増大すると考えられる。
本例におけるクリープ損傷と余寿命予測法は、FEM弾性クリープ応力解析、粒界破壊抵抗分布モデルによる損傷解析、有効応力とクリープ破断曲線を用いた余寿命予測とを組み合わせている。予測手順を図3に示した。
【0031】
○ステップ1
FEM弾性クリープ解析を行い、構造的定常状態でのHAZの応力分布を求める。クリープ材料特性の差及びビード形状のため、粗粒域と細粒域の応力分布は異なる。応力分布はベースの応力分布及びビード形状から求められる。ビード形状は損傷分布(実機の非破壊検査)、データベースから得る。
また、応力を管外面から管内面まで積分し、溶接線方向単位板厚あたりの荷重を求める。
【0032】
○ステップ2
結晶粒を図4のように長方形でモデル化し、1次元結晶粒モデルを作成する。細粒域については各結晶粒を損傷進展の計算単位とするが、粗粒域については結晶粒界を分割してセルを損傷進展の計算単位とする。各結晶粒、各セルの大きさは、[L]、[l]の平均と標準偏差を考慮して設定する。図4において、符号20は細粒結晶粒界モデル、21は粗粒結晶粒界モデル、22は細粒の粒界、23は粗粒の粒界、24はセルである。一列の結晶粒界モデルを、厚さ方向外面から内面に渡って、複数の有限要素にまたがって設定する。さらに、図5に示した方向に30列の並行な粒界モデルを作成し、溶接線方向(図4の紙面垂直方向)に存在する複数の粒界の列を再現する。図5において、符号26は溶金、27は母材、28はHAZである。列間の間隔は、結晶粒径[L]の平均と標準偏差に従って定める。粗粒域の各セル24、及び、細粒域の各粒界22には、それぞれ異なる粒界破壊抵抗Rの初期値Rを与える。[R]の分布形は前記したように決定されているから、正規乱数を用いて各セル(粒界)にRを与える。
【0033】
○ステップ3
微小時間dtにおける損傷進展を、粗粒各セル24および細粒各粒界22の破壊抵抗RをdR/dt=-(F+Ka)ずつ減少させることでシミュレーションする。微小欠陥発生駆動力Fおよび微小欠陥成長駆動力係数Kは温度と応力に依存し、ステップ1で求めた各FEM要素の応力に基づいて定める。クリープ損傷の温度応力依存性は、FおよびKの温度応力依存性により表現される。aは、セル24または粒界22に隣接する欠陥の長さである。図6に時間とともに粒界破壊抵抗Rが減少する状態を示した。粒界破壊抵抗Rがゼロになったセル24または粒界22(図では細粒結晶粒界モデル20の粒界22)は微小欠陥30になると考える。単位面積あたりの微小欠陥の数(微小欠陥個数密度)を、その時刻でのクリープ損傷の指標とする。この方法により、ステップ1の応力分布の下での微小欠陥個数密度の時間変化、すなわち損傷の時間変化が得られる。
【0034】
○ステップ4
所定時間経過後は図7のように微小欠陥30が複数生ずる。一列の結晶粒界において微小欠陥30の長さを合計し、これを溶接幅方向30列で平均したものを合計欠陥長さの平均値と定義する。合計欠陥長さの平均値を板厚tから引くことで、微小欠陥を除いた単位板厚あたりの有効断面積が求まる。単位板厚あたりの荷重と有効断面積から有効応力を求め、有効応力とクリープ破断曲線から、その時点での余寿命を求める。クリープ破断曲線を図8に示した。このクリープ破断曲線は別途実施した試験体によるクリープ破断試験から推定した。
【0035】
以下、上記の損傷評価方法を用いた実施例について説明する。
図9〜図13は本実施形態の評価法により、大型溶接継手について粗粒域、細粒域の損傷進展と余寿命を評価したものである。まず、FEM弾性クリープ解析により、HAZの最大主応力分布を求めた。図9のように、HAZを粗粒域2層、細粒域5層にモデル化し、溶金に近い層から、Coarse1,Coarse2,Fine1〜5と番号をつけた。図10にCoarse1とFine5の応力分布を示す。
各層の応力分布を用いて、クリープ損傷および余寿命を評価した。合計欠陥長さを図11に、有効応力を図12に示す。さらに、有効応力とクリープ破断曲線から判断した余寿命を図13に示す。HAZ細粒域の余寿命は6400時間以後では粗粒より短く、約8400時間でほぼゼロとなり破断すると予測され、試験結果(8345時間)とほぼ一致している。
【0036】
図14〜図19は他の試験体として再熱蒸気管エルボにおける評価結果である。まず、上記の実施例と同様に、FEM弾性クリープ解析により、HAZの最大主応力分布を求めた。FEMではHAZを粗粒域2層、細粒域5層にモデル化した。図15にCoarse1とFine5の応力分布を示す。また図16は推定された外表面の微小欠陥個数密度と試験結果との比較である。また、図17、図18、図19は合計欠陥長さの平均値、有効応力、および余寿命評価結果である。余寿命評価の結果、2500時間〜3000時間でHAZ粗粒域から破断すると予測され、試験結果(2947.5時間)とほぼ一致している。
【0037】
以上のように、本実施形態の金属材料の損傷評価方法によれば、粗粒をセル単位に分割してモデル化することにより、粗粒の損傷進展を評価することができる。また、粗粒域に限らず、複数の欠陥が発生、合体、成長を繰り返す損傷形態の評価が可能であり、粒界モデルに作用する有効応力とクリープ破断曲線とにより、多場所発生型の損傷形態において余寿命を評価することができる。
なお、上記の実施形態においては粒界モデルをセルに分割した例としてHAZ粗粒域に本発明を適用したものを示したが、HAZ粗粒域以外に欠陥が結晶粒や結晶粒界より小さい場合にも適用することができるのはいうまでもない。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の金属材料の損傷評価方法によれば、結晶粒界を微小欠陥の発生単位毎に分割してモデル化することにより、結晶の損傷進展を評価することができる。(請求項1〜3)
また、本発明によれば、粒界モデルに作用する有効応力を計算することにより、複数の欠陥が発生、合体、成長を繰り返す損傷形態の評価が可能である。(請求項4)
さらに、有効応力とクリープ破断曲線とを用いることにより、金属材料の余寿命を推定することができる。(請求項5)
【図面の簡単な説明】
【図1】 粒界破壊抵抗の時間変化を示した図である。
【図2】 粒界破壊抵抗初期値Rの分布を示した図である。
【図3】 本実施形態における余寿命評価の手順である。
【図4】 結晶粒をモデル化した粒界モデルである。
【図5】 粒界モデルを複数列作成する方向について説明した図である。
【図6】 時間経過による微小欠陥の発生について説明した図である。
【図7】 微小欠陥を有する結晶粒界における有効断面積を求める方法について説明した図である。
【図8】 有効応力により破断を判定するクリープ破断曲線について示した図である。
【図9】 FEM解析によるHAZの状態を示した図である。
【図10】 本実施形態の評価法により得られた粗粒と細粒の応力分布である。
【図11】 合計欠陥長さの時間変化を示した図である。
【図12】 有効応力の時間変化を示した図である。
【図13】 有効応力とクリープ破断曲線から判断した余寿命を示した図である。
【図14】 FEM解析によるHAZの状態を示した図である。
【図15】 本実施形態の評価法により得られた粗粒と細粒の応力分布である。
【図16】 外表面の微小欠陥個数密度と試験結果とを比較した図である。
【図17】 合計欠陥長さの時間変化を示した図である。
【図18】 有効応力の時間変化を示した図である。
【図19】 有効応力とクリープ破断曲線から判断した余寿命を示した図である。
【図20】 TOFD法の測定原理を説明するための説明図である。
【図21】 (a)TypeIIIおよび(b)TypeIV損傷の損傷進展の模式図である。
【図22】 微視損傷進展シミュレーションに使用される解析モデルについて時間変化を示した図である。
【符号の説明】
20 細粒結晶粒界モデル
21 粗粒結晶粒界モデル
22 粒界(計算単位)
23 粒界
24 セル(計算単位)
25 FEM要素
26 溶金
27 母材
28 HAZ
30 微小欠陥

Claims (5)

  1. 金属材料の結晶粒界をモデル化し、該結晶粒界のモデルを、前記金属材料の粒界に発生しうる、該粒界より小さい微小欠陥の大きさの計算単位に分割して、該計算単位ごとに損傷の進展を計算することを特徴とする金属材料の損傷評価方法。
  2. 請求項1に記載の金属材料の損傷評価方法において、
    前記微小欠陥の発生単位が有する破壊抵抗初期値の分布を損傷初期における微小欠陥数の試験結果から求め、該分布に基づいて前記各計算単位に破壊抵抗初期値を与えて損傷の進展を計算することを特徴とする金属材料の損傷評価方法。
  3. 請求項1または2に記載の金属材料の損傷評価方法において、
    あらかじめ試験体を観察することにより、結晶粒径の分布と、結晶粒界上に発生しうる微小欠陥の径の分布とを求め、これらのデータに基づいて前記結晶粒界モデルの作成と前記計算単位の分割を行うことを特徴とする金属材料の損傷評価方法。
  4. 請求項1乃至3の何れか一項に記載の金属材料の損傷評価方法において、
    前記結晶粒界モデル中の微小欠陥の長さの合計から該結晶粒界モデルの有効断面積を算出し、該有効断面積と前記結晶粒界モデルに作用する荷重から該結晶粒界モデルに作用する有効応力を算出することを特徴とする金属材料の損傷評価方法。
  5. 請求項4に記載の金属材料の損傷評価方法において、
    前記結晶粒界モデルに作用する有効応力とクリープ破断曲線とによって金属材料の余寿命を推定することを特徴とする金属材料の損傷評価方法。
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