JP3884270B2 - スリット型砂防堰堤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スリット型砂防堰堤の技術分野に属する。更に云えば、砂防堰堤のスリットが捕捉した巨石や流木を除去する作業が容易な構成のスリット型砂防堰堤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスリット型砂防堰堤は、スリットを河川の横断方向に河川底近傍の深さまで到達させ、平面的に見て上流側のスリット幅と下流側のスリット幅がほぼ同一(平行)に形成された一又は複数のスリットを設けて成る砂防堰堤が公知に属する。
【0003】
この砂防堰堤は、通常は土砂を下流に流出させて河岸等の侵食を防止し、洪水時には縮流効果による堰上げ効果によって砂防堰堤の上流側に冠水域を作り、土砂を貯留させて流出調整が図られる。そして、減水時になると土砂を下流に流出させて、土砂の堆積による機能低下を防ぐ構成とされている。また、スリットを魚道として機能させ、生態系と調和した構成ともされている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の砂防堰堤のスリット形状では、捕捉した巨石や流木がスリット内部に食い込んで詰まってしまう問題がある。
【0005】
通常、砂防堰堤は、起伏が激しい急斜面の山間部に設置されることが多く、重機を持ち込むことは難しい。従って、スリット内部に詰まった巨石や流木を除去してスリットを開通させる作業は、ほとんど人力に頼るしかなく、大変な重労働である。仮に重機を持ち込んだとしても、狭いスリット内部に食い込んで詰まった巨石等を取り除く作業は困難を極め、場合によってはその状態で放置される。
【0006】
また、洪水時に貯留された土砂が、減水時に急激にスリットから流出するため、流出土砂の圧力によってスリット、ひいては砂防堰堤が損傷する虞がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、砂防堰堤のスリットが捕捉した巨石や流木を除去してスリットを開通させる作業が容易で、流出土砂によって砂防堰堤のスリットが損傷しにくい構成のスリット型砂防堰堤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るスリット型砂防堰堤は、
河川の横断方向に河川底近傍の深さまで到達する一又は複数のスリットを設けて成るスリット型砂防堰堤であって、
前記スリットは、平面的に見て上流側の幅が狭く、下流側の幅が広く形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したスリット型砂防堰堤において、
スリット型砂防堰堤は、その上流及び下流側の外壁材が千鳥状配置に組み上げられた鋼矢板から成り、スリットを形成する側壁面の外壁材は鋼板から成ること、
前記外壁材の内部にコンクリート等の中詰材が充填され、堰堤の天端を保護するコンクリートが打設されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載したスリット型砂防堰堤において、
スリット型砂防堰堤は、コンクリートで構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載したスリット型砂防堰堤において、
スリットを形成する側壁面の上流側角部に、R加工が施されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載したスリット型砂防堰堤において、
スリットを形成する少なくとも一方の側壁面が平面的に見て上流側から下流側に向かってスリット幅が拡大する片傾斜形状とされていることを特徴とする。
【0014】
【本発明の実施の形態、及び実施例】
以下に、請求項1、2及び請求項6に記載した発明に係るスリット型砂防堰堤の実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0015】
図1のスリット型砂防堰堤1は河川の横断方向に構築されている。この砂防堰堤1の上部中央付近に堰2が設けられ、前記堰2の略中央部に河川底近傍の深さまで到達する一個のスリット3を設けている。特に本発明の場合、前記スリット3は、図2の概略平面図に示すように、平面的に見ると上流側から下流側に向かって直線的に幅寸が拡大するハの字形状とされている。即ち、上流側の幅寸Lが最少幅で、下流側の幅寸L’が最大幅となるように形成されている。一例として、このスリット3の上流側の幅寸Lは、洪水時に到達することが予想される最大礫の径(概ね1m程度)のほぼ1.5倍を目処に2m程度に形成されている。
【0016】
スリット底面が河川底近傍にあることは、砂防堰堤上下流における流れの連続性を保ち、魚類をはじめとする生物の上下流への行き来をスムーズにする。
【0017】
上記構造のスリット型砂防堰堤1は、その上流側及び下流側の外壁材を、千鳥状配置に組上げた複数枚の鋼矢板4…で構成している。スリット3を形成する各側壁面3aの外壁材は鋼板5で構成し、前記鋼矢板4及び鋼板5を型枠代用として中詰材であるコンクリート6を打設して構築されている(請求項2記載の発明)。なお、本実施形態では中詰材としてコンクリート6を用いるが、LUC材又はソイルセメントでも同様に実施できる。
【0018】
前記鋼矢板4と鋼板5は、予め工場等で人力により持ち運びができる大きさ、重量に加工して現場に搬入される。
【0019】
鋼矢板4…は、腹起こし材及びタイロッド(図示を省略)を利用して千鳥状配置に強固に組み上げられ、スリット3を形成すべく平面的に見てハの字形状に組み上げられた鋼板5と連結部材及び溶接等の手段を用いて強固に接合され、型枠代用とするにあたり、必要十分な強度を発現させる(図示を省略)。
【0020】
前記鋼矢板4及び鋼板5の内部にコンクリート6が充填され、強度が発現した後に、同コンクリート6の上部に砂防堰堤1の天端を保護するコンクリート7が更に打設され、砂防堰堤1が完成されている。
【0021】
上記構造のスリット型砂防堰堤1の場合、スリット3で捕捉されるべき巨石は、上流側の入口ですべて捕捉される。上流側の入口を通過し得る巨石は、途中でスリット3の内部に食い込んで詰まることがほとんどなく、通過していく。万一スリット3の内部に詰まった場合でも、従来のスリット内部と比較して作業空間が広いので、巨石の除去を容易に行うことができる。一方、入口で捕捉された巨石は、入口を通過できる大きさに解砕加工すれば、そのまま容易に除去することができ、スリット3を再生する作業が容易である。
【0022】
また、上記スリット3の場合は、縮流効果による堰上げ効果が低減し、洪水時でも適度に土砂が下流へ流出する。そのため、減水時の急激な土砂の流出を防ぎ、スリット3が損傷する虞を低減することができる。スリット3の内部が下流に向かうにつれて拡幅していることから流水の側壁面3aに作用するせん断力が低減され、摩耗に対する損傷が低減される。
【0023】
下流側のスリット幅が広がることで上流側から見通せる視界が広がり景観性が向上することは勿論、魚類など生物の通過にも支障がない。
【0024】
図3及び図4のスリット型砂防堰堤11は、基本的に図1及び図2のスリット型砂防堰堤1と略同様の構成であるが、スリット3を形成する各側壁面3aの上流側角部3bにR加工が施された構成を特徴としている(請求項4記載の発明)。R加工が施されることにより、スリット3の内部に流入する水を速やかに下流側へ排出させることができ、且つ下流側の河川底の侵食を防止または低減させることができる。
【0025】
上記スリット型砂防堰堤11は、スリット3の上流側の角部3bの強度を確保した構造となっており、捕捉される巨石が角部3bに衝突しても、角部3bが欠けて損傷することが少ない。
【0026】
図5及び図6のスリット型砂防堰堤21も、基本的に図1及び図2のスリット型砂防堰堤1と略同様の構成であるが、スリット3の形状が少し異なる。 即ち、スリット3を形成する側面壁3a,3aのうち一方の側壁面3aのみが平面的に見て上流側から下流側に向かってスリット幅が拡大する片傾斜形状とされ、他方の側壁面3aは水流とほぼ平行な面に形成されている(請求項5記載の発明)。
【0027】
図7に示す実施形態は、河川の横断方向に二個のスリット3、3が併設されたスリット型砂防堰堤31を示している。この場合、図8の概略平面図に示すように、各スリット3の河岸側に位置する側壁面3aが平面的に見て上流側から下流側に向かって拡大する片傾斜形状とされ、河川中央部近傍に位置する側壁面3aは水流とほぼ平行な面に形成されている。スリット3、3の間の堰堤片31aの強度が増し、しかもコンクリート打設の際の型枠施工が容易となる。なお、スリット3の個数は、砂防堰堤が構築される現場に応じて適宜変更される。また、スリット3の形状は、図2に示したスリット形状とされていても同様に実施できる。
【0028】
なお、上記実施形態では、外壁材として鋼矢板4と鋼板5を用い、その内部にコンクリート6が充填された構成であるが、コンクリート砂防堰堤として構成されていても良い(請求項3記載の発明)。
【0029】
【本発明の奏する効果】
請求項1〜6に記載した発明に係るスリット型砂防堰堤は、スリットが平面的に見て上流側の幅寸が狭く、下流側の幅寸が広く形成されているため、スリットで捕捉される巨石は、上流側の入口ですべて捕捉され、一旦上流側の入口を通過した巨石は、途中でスリット内部に食い込んで詰まることがほとんどなく、通過していく。万一スリット内部に詰まった場合でも、従来のスリット内部と比較して作業空間が広いので、巨石の除去を容易に行うことができる。一方、入口で捕捉された巨石は、入口を通過できる大きさに解砕加工すれば、そのまま容易に除去することができ、スリットを再生する作業が容易である。
【0030】
また、上記スリットの形状の場合、縮流効果による堰上げ効果が低減し、洪水時でも適度に土砂が下流へ流出する。そのため、減水時の急激な土砂の流出を防ぎ、スリットが損傷する虞を低減することができる。スリット内部が下流に向かうにつれて拡幅していることから流水の側壁面に作用するせん断力が低減され、摩耗に対する損傷が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスリッド型砂防堰堤の実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1の概略平面図である。
【図3】スリットの上流側角部にR加工が施されたスリット型砂防堰堤の実施形態を示した斜視図である。
【図4】図3の概略平面図である。
【図5】スリットの形状が異なるスリット型砂防堰堤の実施形態を示した斜視図である。
【図6】図5の概略平面図である。
【図7】二個のスリットを設けたスリット型砂防堰堤の実施形態を示した斜視図である。
【図8】図7の概略平面図である。
【符号の説明】
1、11、21、31、 スリット型砂防堰堤
3 スリット
3a 側壁面
3b 角部
4 鋼矢板
5 鋼板
6、7 コンクリート

Claims (5)

  1. 河川の横断方向に河川底近傍の深さまで到達する一又は複数のスリットを設けて成るスリット型砂防堰堤であって、
    前記スリットは、平面的に見て上流側の幅が狭く、下流側の幅が広く形成されていることを特徴とする、スリット型砂防堰堤。
  2. スリット型砂防堰堤は、その上流及び下流側の外壁材が千鳥状配置に組み上げられた鋼矢板から成り、スリットを形成する側壁面の外壁材は鋼板から成ること、
    前記外壁材の内部にコンクリート等の中詰材が充填され、堰堤の天端を保護するコンクリートが打設されていることを特徴とする、請求項1に記載したスリット型砂防堰堤。
  3. スリット型砂防堰堤は、コンクリートで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載したスリット型砂防堰堤。
  4. スリットを形成する側壁面の上流側角部に、R加工が施されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載したスリット型砂防堰堤。
  5. スリットを形成する少なくとも一方の側壁面が平面的に見て上流側から下流側に向かってスリット幅が拡大する片傾斜形状とされていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したスリット型砂防堰堤。
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