JP3884197B2 - 分極反転構造の作製方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、光通信、光情報処理、光応用計測制御分野に応用される波長変換素子の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強誘電体、特に、非線形光学結晶の分極状態を周期的に分極反転させた構造とすることによって、波長変換素子として利用することができる。即ち、この周期的に分極反転した結晶(周期的分極反転結晶)をポンプ(入力、入射)光源と組み合わせることで、擬似位相整合(Quasi−Phase−Matching:QPM)方式により、波長変換素子として用いることできる。同一非線形光学結晶においても、分極反転構造の周期を変えることにより、2倍波発生(Second Harmonic Generation:SHG)、光パラメトリック発振(Optical Parametric Oscillator:OPO)、差周波発生(Difference Frequency Generation:DFG)、和周波発生(Sum Frequency:Generation:SFG)の波長素子として用いることができ、青色の可視領域から赤外領域まで幅広い波長領域まで実現可能なため、光通信、光情報処理、ガス検知などの光応用計測分野、に応用できるため盛んに研究が行なわれている。
【0003】
このような周期的な分極反転構造を利用した波長変換素子の製造方法としては、電子ビーム照射法、プロトン交換法、電圧印加法等が報告されているが、現在、分極反転構造が結晶内部まで作製しやすい等の利点があることなどから、電圧印加法が最もよく用いられている。
【0004】
周期的な分極反転構造を有した非線形光学結晶の波長変換素子としての変換効率は、実効的な非線形光学定数:deff(今回、波長変換素子としてよく用いられるd33について説明する)で与えられ、以下の関係がある。
deff=(2d33/mπ)sin(mπD)
ここで、d33はバルク結晶としての非線形光学定数、mは次数、Dは分極反転比率(分極反転ドメイン幅/分極反転周期)をそれぞれ表す。周期的な分極反転構造を有した非線形光学結晶における理想的な最大変換効率(m=1の場合)は、Dに依存し、最も理想的な値はD=1/2、すなわち、分極反転ドメイン幅が分極反転周期のちょうど半分の時、波長変換素子として、最も変換効率が良い。よって、周期的な分極反転構造を作製する場合、最も重要なことは、分極反転ドメインを分極反転比率50%で均一に作製することである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、分極反転周期方向、即ち光が通過する方向における分極反転ドメインの分極反転比率を改良するような報告は存在する。しかしながら、分極反転ドメインの分極反転周期方向と垂直方向への均一性の影響については、特段注目されていなかった。
【0006】
波長変換素子として周期的な分極反転構造を有した非線形光学結晶を用いた場合、丸いビームのみを入射する時、分極反転領域は、最低限、基板厚さ(Z軸方向)×基板厚さと同じ長さ(グレーティング幅:分極反転周期方向と垂直方向の長さ)であればよい。しかし、このような分極反転領域のみでは、結晶がポンプ光源によりレーザー破壊された時に使用不可能となるため、分極反転領域の分極反転周期方向と垂直方向の長さ(グレーティング幅)は基板厚さの10〜20倍程度であることが多い。
【0007】
上述の通り、これまでグレーティング幅について注目し、分極反転構造の均一性について報告されたことはなかったが、波長変換素子として利用する場合、分極反転ドメインの分極反転周期方向と垂直方向への均一性も重要であることを本発明者らは認識した。即ち、グレーティング幅を結晶基板厚さの10〜20倍程度とすべく、そのような電極領域を結晶基板に設けて電圧を印加した場合に、得られた分極反転結晶を観察すると分極反転ドメイン幅にバラツキが発生してしまうことが判明した。つまり部分的に細ったドメイン等が生成されてしまい、波長変換素子として用いた場合に変換効率が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するもので、非線形光学結晶において、周期的な分極反転構造を分極反転周期方向と垂直方向にも均一に作製する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の分極反転構造の作製方法は、非線形光学結晶に電圧印加法によって分極反転構造を作製する工程において、前記結晶の分極反転部を形成する部分に電極領域を設けるにあたり、当該電極の分極反転周期方向に垂直な方向における長さを非線形光学結晶基板厚さの2倍以下とし、前記電極を分極反転周期方向に垂直な方向に相隣接するよう複数平行に並べ、これら電極にそれぞれ電圧印加して、分極反転周期方向に垂直な方向に実質的に長い分極反転構造を作製することを特徴とするものである。
【0010】
上記で設定した電極領域が、さらに分極反転周期方向においても分割するようにしても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明において採用する電圧印加法によって、非線形光学結晶に周期的分極反転構造を形成する工程を示す図である。図1(a)に示す例では、反転させるべき分極方向がZ軸の方向であり、該Z軸方向に対して垂直な2面(+Z面、−Z面)を基板面として有する誘電体結晶の基板1を用いている。該基板1は、当該結晶に単分極化処理を施したものであり、片側の面には全面にわたって同じ分極が現れている。
【0013】
上記のような非線形光学結晶の基板1に対して、該基板1の片面(+Z面)中の分極反転すべき領域に、プラス側(高電位側)の液体電極2を対向させる。そして、+Z面の特定領域だけに液体電極2からの電界を作用させるために、部分的に絶縁膜4を形成してマスクしている。つまり、分極反転部を形成する部分に所定のグレーティング幅をもって電極領域を形成する。また、分極反転させるべき領域に電界が作用するように裏面(−Z面)にマイナス側(グランド側)の液体電極3を対向させる。
この状態から、両方の液体電極2,3を介して該基板1に分極反転電圧を印加することによって、分極反転することが可能となり、図1(b)に示すように、周期的分極反転構造を有する非線形光学結晶が得られるものである。
【0014】
以上が電圧印加法による分極反転構造の形成方法なのであるが、本発明にあっては、電極領域を形成するに際してそのグレーティング幅の設定手法について特徴を有する。即ち、当該電極のグレーティング幅を、非線形光学結晶基板厚さの2倍以下にするすることを特徴とするものである。
【0015】
一般に分極反転のための電極の一単位(分極反転の一単位)の形状は、所定のグレーティング幅を備える細長い長方形を呈している。本発明者らの実験によれば、このような細長い長方形電極にて電圧を印加した場合、当該電極の中央部分においては分極反転ドメイン幅にバラツキが生じてしまうものの、電極のコーナー部分(エッジ部)に相当する部分においては比較的均一な分極反転構造が形成されていることを見出した。
かかる現象が生じる要因は必ずしも明らかでないが、鋭角的部分であるコーナー部が存在する電極エッジ部には電界集中が生じ、他方電極の中央部分にはシャープに電界が加わらない結果ではないかと本発明者らは考えている。つまり、電極エッジ部分においては比較的均一な電界が印加される結果、良好な分極反転が行われるのに対し、電極中央部分にあっては電界の均一性を担保できないことが原因であろうと考えている。
【0016】
このような知見に基づいて、電極のグレーティング幅をエッジ部による電界集中効果が支配的となる幅について種々検討した結果、換言すると電界を可及的に均一に印加し得る電極形状について検討した結果、図2に示すように、電極Eのグレーティング幅をW、結晶基板の厚さをtとするとき、グレーティング幅Wを基板厚さtの2倍以下とすれば、優位なエッジ効果を得ることができることを知見した。この場合、当該結晶基板の使用時にはレーザー光を入射させることに鑑み、基板厚さ分を有効に使用することを考慮すると、グレーティング幅Wを基板厚さと同等以上とすることが望ましい。なお、分極反転周期sは変換する波長によって適宜決定されるが、概ね10μm〜40μmの範囲から選択される。
【0017】
上記の方法で、均一な分極反転ドメインは得ることができる。しかし、長いグレーティング幅のものは得られない。この欠点を補うなため、長いグレーティング幅が必要な場合は、短いグレーティング幅で同じ分極反転周期のものを並列に並べる(マルチグレーティング)方法により、長いグレーティング幅と同等の性能を与えることができる。即ち、図3に示すように、長いグレーティング幅の電極領域Eを作製するにあたり、これを短いグレーティング幅の電極領域E1、E2、E3、E4に分割して順次(若しくは同時に)電圧印加法にて分極反転構造を作製することで、結果的に長いグレーティング幅の分極反転領域を形成するものである。
【0018】
この場合、平行に並べた隣同士の分極反転ドメインを接合させることにより、長いグレーティング幅としても良いし、隣同士の分極反転ドメインが厳密に接合していなくてもよい。さらに、これらの電極領域は、分極反転周期方向におても、分割されていてもよい(井桁形状、または、ドット状の集合形状)。この場合、分極反転周期方向の分極反転ドメイン同士は接合し、最終的には、分極反転周期の1/2程度にする。また以上において、電極領域の形状は特に限定されない。
【0019】
【実施例】
+Z板(+c板)0.5mm基板厚のLiNbO3結晶を用い、以下の工程により、波長変換素子としての周期的な分極反転構造を作製した。
(1)LiNbO3結晶を所定のサイズに切り出す。
(2)LiNbO3結晶の+Z面上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法により29.8μmの周期ごとにレジスト抜き部分(分極が反転する部分)を作製する。この周期は、SHG、OPO、SFG、DFGで異なり、また、入力波長、結晶温度、出力波長によって、一義的に決定されるものである。ここで、グレーティングの幅(周期に垂直方向の幅)を0.5mm(基板厚さと同じ長さ)、0.5mm、1mm、及び10mmとした。なお、この場合の分極反転構造部分の長さは30mmとした。
(3)スパッタによりレジストがある部分、およびレジストが抜けた部分上に金属膜(膜厚数1000オングストローム程度)を形成する。
(4)+側は、金属膜に液体電解質を接触させ、−側は、液体電解質が直接、基板の−Z面に直接、接している。
(5)電圧を印加することにより、分極を反転する。
【0020】
分極反転後、エッチングを行ない(HF:HNO3=1:2、60℃、5〜10分)、±Z表面の分極反転ドメイン幅を0.2mmおきに全長30mmにおいて測定し、分極反転ドメイン幅の均一性を評価した。分極反転ドメイン幅の測定場所を図4に示す。それぞれのグレーティングの幅における分極反転ドメインの平均分極反転比率と標準偏差を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1より、グレーティング幅が0.5、1mmの場合に比べて、グレーティング幅が10mmの場合、明らかに、分極反転ドメインの幅が場所によってバラツキがあることが分かる。したがって、分極反転ドメインを均一に反転させるには、グレーティング幅が基板厚の2倍以下がよいことが判明した。また、グレーティング幅が10mmの場合において、分極反転ドメインの場所による比較を行なった場合、分極反転ドメイン幅のバラツキは電極端近傍が最も小さいことが分かる。これは、分極反転時において、始めに分極反転が開始するためであると思われる。始めに開始する要因としては、分極反転時の電圧印加における電界エッジ効果によるものであると考えられる。よって、グレーティング幅が小さいほど、有効であるため、ドメイン幅のバラツキが小さく、均一な分極反転ドメインが作製できる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明した通りの本発明の分極反転構造の作製方法によれば、分極反転ドメイン幅にバラツキのない分極反転結晶を得ることができる。従って、当該結晶を波長変換素子として用いた場合に、変換効率が低下するといった問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電圧印加法による分極反転方法の説明図である。
【図2】本発明の分極反転構造の作製方法を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す平面図である。
【図4】本発明で得られた分極反転結晶の評価方法を示す平面図である。
【符号の説明】
1 非線形光学結晶の基板
2,3 液体電極
4 絶縁膜
5 分極反転部
E 電極領域
W グレーティング幅
t 基板厚さ
Claims (2)
- 非線形光学結晶に電圧印加法によって分極反転構造を作製する工程において、前記結晶の分極反転部を形成する部分に電極領域を設けるにあたり、当該電極の分極反転周期方向に垂直な方向における長さを非線形光学結晶基板厚さの2倍以下とし、前記電極を分極反転周期方向に垂直な方向に相隣接するよう複数平行に並べ、これら電極にそれぞれ電圧印加して、分極反転周期方向に垂直な方向に実質的に長い分極反転構造を作製することを特徴とする分極反転構造の作製方法。
- 上記電極領域が、さらに分極反転周期方向において分割されていることを特徴とする請求項1記載の分極反転構造の作製方法。
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JP28511099A JP3884197B2 (ja) | 1999-10-06 | 1999-10-06 | 分極反転構造の作製方法 |
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