JP3882864B2 - 便座クリーナー用薬剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、洋式トイレの便座表面に直接噴霧したり、ティッシュペーパー等に噴霧して便座表面を清拭したり、あるいはあらかじめ紙、清浄綿、ガーゼ、不織布等の繊維素材に含浸させておいて便座表面を清拭したりするための便座クリーナーに用いられる薬剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、人体皮膚の汚れを拭い清める用品として、清浄綿、ウェットティッシュ等が知られている。清浄綿は、クロルヘキシジングルコネートや塩化ベンゼトニウム等の殺菌作用を有する薬剤を局方精製水に溶解し、該溶液を脱脂綿に含浸したものである。ウェットティッシュは、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールや、パラオキシ安息香酸、クロルヘキシジングルコネートなどの薬剤の水、あるいはアルコール溶液などを紙、ガーゼ、不織布など繊維素材に含浸したものである。
【0003】
これらの清浄綿やウェットティッシュは、使用した直後は清拭したその部分に対して汚れを落とすとともに殺菌乃至静菌効果を付与するが、その効果の持続性は強いものではない。人体皮膚を対象とする場合は、再汚染の機会は少ないので、上記機能で充分目的を達すると思われるが、洋式トイレの便座等の固体表面においては、殺菌効果が持続することが望まれていた。そして、便座用クリーナーに関しては例えば以下の技術が知られている。
【0004】
特開昭63−40555号公報には、カチオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤などの殺菌剤を溶解させたアルコール類等の有機溶剤を、水解紙に含浸させた便座用ティッシュペーパーが、また特開昭63−40558号公報には、カチオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤などの殺菌剤を溶解させたアルコール類等の有機溶剤を、噴霧容器に収納した便座用殺菌スプレーが、それぞれ記載されており、カチオン界面活性剤としてアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩等の四級アンモニウム塩が挙げられ、具体的には塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムが例示されている。
【0005】
特開昭63−275311号公報には、100重量部の含水アルコールに対し、殺菌作用を有する低分子第4級アンモニウム塩0.01〜1重量部と、ポリアクリル酸等のアニオン性高分子の4級アンモニウム塩0.02〜0.5重量部とを溶解した薬液を紙等に含浸させた清拭紙が記載されており、低分子第4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが、またアニオン性高分子の4級アンモニウム塩として繊維素グリコール酸、アルギン酸、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸が例示されている。
【0006】
特開昭62−236516号公報には、外用殺菌剤、硫酸アルミニウム、アルコール及び水を含む組成物を繊維素材に吸収含浸させてなる脱臭作用を有する清浄用製品が記載されており、外用殺菌剤として塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルへキシジン、クロルヘキシジングルコネート、アルキルアミノエチルグリシン、アクリノールなどが、また、アルコールとしてエチルアルコール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールが例示されている。
【0007】
特開昭60−100968号公報には、植物変性粉粒体ないしその水抽出物からなる消臭成分を、逆性石鹸成分と共に不織布に存在させてなる消臭剤が記載されており、逆性石鹸成分として塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムが例示されている。
【0008】
他方、特開昭64−25821号公報には、アルコール類を含浸させた従来の濡れティッシュは用時刺激臭があり、持続的な殺菌効果も劣り、また塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤はかぶれや痒みなどの皮膚に対する刺激性や経口毒性の点で安全性の上で問題があるとし、これら従来の濡れティッシュの問題を解決するため、キトサン又は四級化キトサンの無機酸塩若しくは有機酸塩の水溶液が紙又は不織布に含浸されている濡れティッシュを提供する旨記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
洋式トイレの便座等に使用される便座クリーナー用薬剤組成物を含浸した清拭紙等により便座を清拭後、速やかに快適に便座を使用することが望まれているが、上記従来の便座クリーナー用薬剤組成物を含浸した清拭紙等により便座を清拭した場合、便座クリーナー用薬剤組成物の乾燥が遅く、緊急を要する用便時において速やかに快適に便座を使用することができないという問題があった。またこれとは別に、殺菌乃至静菌効果の持続する便座クリーナー用薬剤も必要とされていた。
【0010】
本発明の課題は、洋式トイレの便座等に適用した場合、その乾燥が速く、速やかに快適に便座を使用することができ、かつ殺菌乃至静菌効果の持続しうる便座クリーナー用薬剤組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、その乾燥速度が速く、洋式トイレの便座等に適用した場合に速やかに快適に便座を使用することができる便座クリーナー用薬剤組成物について鋭意研究している過程で、偶然にもキトサンと第四級アンモニウム塩とを含有する薬剤組成物が、通常の便座クリーナーに用いられるエタノール等のアルコール系溶媒及び水の乾燥速度を速めるばかりでなく、殺菌乃至静菌効果の持続性にも優れていることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、キトサンおよび塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩とを含有することを特徴とする便座クリーナー用薬剤組成物に関する。また、本発明はキトサンおよび塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩とがアルコール系溶媒に溶解されていることを特徴とする便座クリーナー用薬剤組成物に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の便座クリーナー用薬剤組成物の有効成分であるキトサンは、カニ、エビ等の甲殻、昆虫類の外皮その他のキチン質源を細粉し、希塩酸で処理して炭酸カルシウムを除き、アルカリ濃溶液で処理してタンパク質その他の夾雑物を除いて得られるキチンを、高温下、高濃度アルカリにより脱アセチル化して得られる白色無定形粉末の、グルコサミンからなる塩基性多糖類である。キトサンは、それ自体生体高分子であるため、全く経口毒性を示さず、且つ皮膚を刺激する恐れがない。
【0014】
本発明に用いられるキトサンは、その分子量が数千〜数十万のものであるが、殺菌効果からすると低分子量の方が望ましい。また、脱アセチル化度に関しては50%以上、水溶性及び静菌効果を考慮すると80%以上が好ましい。
【0015】
そして、遊離のキトサン自体は水に溶けないことから、無機酸又は有機酸で処理して水に可溶であるキトサン塩として用いてもよいし、また塩酸、リン酸などの無機酸や酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸等の有機酸などに溶解して用いてもよい。
【0016】
本発明の便座クリーナー用薬剤組成物の有効成分である第四級アンモニウム塩は、一般に、グラム陽性細菌等に対し強い静菌作用を有し、水溶性で腐食性がなく、通常の濃度では無色無臭であり、その毒性が低いことが知られている。本発明に用いられる第四級アンモニウム塩としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジメチルアンモニウム、塩化テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム等を例示することができるが、塩化ベンザルコニウムが乾燥効果の点で特に望ましい。
【0017】
本発明のキトサンと第四級アンモニウム塩とを含有する便座クリーナー用薬剤組成物はアルコール系溶媒に溶解して用いることが望ましい。本発明の便座クリーナー用薬剤組成物をアルコール系溶媒に溶解して用いると、その乾燥速度が速くなるばかりか、静菌効果の持続性においても優れていることが確認されている。そして、上記アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、八アセチル化蔗糖変性エタノール等を例示することができる。
【0018】
また、必要に応じて、グリセリン、プロピレングリコール、プチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒマシ油、ヒアルロン酸ナトリウム、ピコリドンカルボン酸ナトリウム、アラビアガムなどの植物ガム等の保水剤、界面活性剤、芳香剤、消臭剤、pH調整剤、その他の添加剤を併用することができる。
【0019】
本発明の便座クリーナー用薬剤組成物におけるキトサン又はキトサン塩の適用濃度は、キトサンとして0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%であり、塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩の適用濃度は、0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%である。また、アルコール系溶媒の適用量は、局方精製水に対して0.5〜2容量部である。
【0020】
本発明の便座クリーナー用薬剤組成物は、紙、ガーゼ、脱脂綿又は不織布等の繊維素材からなる担体に対し、該担体の乾燥重量の5倍を超えない限度で含浸させて、ポリ袋又は缶などの容器中に収めて便座クリーナー用ウェットティッシュとして、またアルコール等の有機溶媒と共に噴霧容器に収容して、洋式トイレの便座表面に直接噴霧したり、ティッシュペーパー等に噴霧して便座表面を清拭したりする便座クリーナー用殺菌スプレー等として用いることができる。なお、本発明の便座クリーナー用薬剤組成物は、便座クリーナー用の他、手拭き用濡れティッシュ等にも使用することができる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(1)各種便座クリーナー用薬剤の調製
実施例1(本発明の便座クリーナー用薬剤の調製)
フラスコに局方精製水40重量部、氷酢酸(和光純薬製試薬特級)0.13重量部及びキトサン(共和テクノス製フローナックC:4B503、0.5%/0.5%酢酸水溶液濃度での粘度7〜9c.p.s.)0.25重量部、塩化ベンザルコニウム0.1重量部、グリセリン1.0重量部を入れ、撹拌しながら完全に溶解させた後、エタノール47.4重量部(60ml)を入れ、均一に混合し薬剤を調製した。
【0022】
比較例1
フラスコに局方精製水40重量部及びエタノール47.4重量部(60ml)を入れ、均一に混合し薬剤を調製した。
比較例2
フラスコに局方精製水40重量部及び塩化ベンザルコニウム0.1重量部を入れて溶解させた後、エタノール47.4重量部(60ml)を入れ、均一に混合し薬剤を調製した。
【0023】
(2)基本性能試験
基本性能として以下の方法で乾燥性、付着性、透明性を観察した。
トイレットペーパー(9×11cm)を8つ折にし、試験液1mlをマイクロシリンジで採取し、トイレットペーパーに含浸させアクリル板(10×10cm)の上に塗りつけ、乾燥速度をタイムウォッチで測定し、乾燥後の付着性は指のべたつきによる触感で観察した。また、透明性はアクリル板で透かして判断した。
【0024】
(3)実便座による除菌試験
当研究所の洋式便座の便座を使用し、クリーンスタンプ(ニッスイ製)の一般生菌数測定用SCD寒天培地、一般生菌数測定用不活性剤含有SCDLP寒天培地を用いて上記基本性能評価試験と同様な方法で便座に薬剤を塗布し処理前と処理後の除菌の状態を観察した。また、実便座による除菌試験においては、何ら薬剤の塗布をしないものをブランクとした。
【0025】
各種便座クリーナー用薬剤を用いた場合の基本性能試験及び実便座による除菌試験の結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003882864
【0027】
表1から、本発明のキトサンと第四級アンモニウム塩とを含有する便座クリーナー用薬剤組成物は、乾燥速度がきわめて速く、また殺菌・静菌作用に優れているばかりでなく、透明性に優れ清潔感があり、またべたつきも無いことがわかる。
【0028】
【発明の効果】
上記の実施例及び比較例から明らかなように、本発明の便座クリーナー用薬剤は透明性に優れ、乾燥速度がきわめて速く、緊急を要する用便時においても速やかに快適に便座を使用することができ、また除菌効果の持続性の点においても優れている。

Claims (3)

  1. キトサンと第四級アンモニウム塩とを含有することを特徴とする便座クリーナー用薬剤組成物。
  2. キトサンおよび第四級アンモニウム塩がアルコール系溶媒に溶解されていることを特徴とする請求項1記載の便座クリーナー用薬剤組成物。
  3. 第四級アンモニウム塩が塩化ベンザルコニウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の便座クリーナー用薬剤組成物。
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