JP3882330B2 - 発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、透光性材料、例えば、石英ガラスで形成されたバルブ内に希ガス,水銀及び金属乃至金属ハロゲン化物を封入してなる発光管を具備した金属蒸気放電灯、並びに石英ガラスで形成されたバルブ内に希ガス及びハロゲン化ガスを封入してなる発光管を備えたハロゲンランプにおける発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、金属蒸気放電灯は、一般の白熱灯やハロゲンランプに比べて、同じ消費電力でより明るく、又数種類の光色を持つランプが用意されており、その多様性、経済性の点から主に店舗や街路灯に用いられている。また、ハロゲンランプは、単位消費電力あたりの明るさは、金属蒸気放電灯に及ばないもののコンパクトに設計され、そして複雑な点灯回路を必要としないという点において、金属蒸気放電灯より有利なものである。
【0003】
近年、金属蒸気放電灯は、ハロゲンランプに及ばないものの小型化が進み、ハロゲンランプ同様屋内で使用される機会が増えてきている。このように、ハロゲンランプや小型の金属蒸気放電灯が屋内で使用される場合、屋内であるがゆえに当然人体に近い場所、或いは人間が作業している場所の真上に設置されることとなる。
【0004】
一方、これらのランプは、点灯中発光管内の圧力は数気圧から数十気圧になっているため、不測の事態、例えば寿命末期時、発光管の構造材の劣化或いは点灯回路の不具合からくる異常電流などにより、発光管がその圧力に耐えられず、破裂破損に至るケースが希にある。
【0005】
通常、これらランプは、器具内に取り付けられているため、万一発光管が破裂し、外球破損まで及んだ場合でも破損片は、器具内から飛び出すことはなく、人体や周辺の物品に被害を及ぼすことはないが、近年、小型化したランプの特性を活かして多様な器具がデザインされている。例えば、開放型と呼ばれている前面硝子(プロテクター)のない小型の器具などがある。これらの器具でランプが使用される場合、前面にプロテクターがないので、万一発光管が破裂した場合には、破損片が飛び散らないように、例えば外球を備えたランプでは、絶対に外球が破損してはならないような工夫を施さなければならない。
【0006】
それらの工夫の一つとして、例えば、外球表面にテフロン膜を塗布し、外球が破損した場合でもテフロン膜により破損片の飛散防止を実現する方法が知られている。また、発光管と外球との間に、発光管の少なくとも発光部よりも広い部分を覆うように配置されたガラス管(以下スリーブ)を使用することにより、発光管破裂時の破損片のエネルギーをスリーブが吸収し、外球破損に至らないようする方法が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の発光管破裂時の破損片飛散防止用のスリーブとしては、主にランプ点灯動作中の温度(70Wのランプにおいては約 530℃)における粘度が、1×1028ポアズ位の石英ガラスが利用されている。石英ガラスは硬質ガラスなどに比べれば硬く、硬さという点においてはガラスの中では優れた特質を持っている。しかし、その反面、物理的衝撃に対しては意外と簡単に砕けたり、或いは割れてしまうことがある。丁度、セラミックスが硬さや磨耗に対しては、鉄などの金属に比べて強いが、物理的衝撃を加えるとセラミックスは割れてしまうのに対して、鉄などの金属は凹んだりして変形はするが、割れてしまうなどして破損片が飛び散るようなことがないのと同じである。
【0008】
これに対して、従来、特開平6−295708号公報では 600℃以上の耐張点をもつアルミノ珪酸ガラスで形成したスリーブを用いたメラルハライドランプが提案されている。しかしながら、この公報においても、スリーブにおける柔らかさや粘度については考慮がなされていない。
【0009】
本発明は、従来の発光管破裂時の破損片飛散防止用のスリーブにおける上記問題点を解消するためになされたもので、発光管の破損片の飛散エネルギーを効率よく吸収し、飛散エネルギーを十分小さくできる最適なガラス管(スリーブ)を容易に選定できる金属蒸気放電灯及びハロゲンランプにおける発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1に係る発明は、発光管と、該発光管から離間し該発光管の発光部より広い範囲を囲むように配置した発光管破裂片飛散防止用ガラス管と、前記発光管をガラス管と共に収納した外球とを備えた金属蒸気放電灯における発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法において、前記ガラス管を、肉厚が1mm以上で且つ粘度がランプ動作中において1×1014〜1×1025ポアズとなるように設定することを特徴とするものである。また請求項2に係る発明は、発光管と、該発光管から離間し該発光管の発光部より広い範囲を囲むように配置した発光管破裂片飛散防止用ガラス管と、前記発光管をガラス管と共に収納した外球とを備えたハロゲンランプにおける発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法において、前記ガラス管を、肉厚が1mm以上で且つ粘度がランプ動作中において1×1014〜1×1025ポアズとなるように設定することを特徴とするものである。
【0011】
発光管破裂時の破損片飛散防止用のガラス管の目的は、破裂片飛散防止であり、破裂片の飛散を防止するためには、必ずしも硬さという特性が有利であるとは言えない。むしろ、鉄など金属の特性のように、変形はしてしまうが、簡単に割れてしまわないような粘性に富んだ特性の方が、破裂片の飛散エネルギーを効率よく吸収し、自らは変形或いは割れてしまっても、飛散エネルギーを十分小さくし、外球破損に至らせないようなガラス管が理想といえる。
【0012】
そこで、本発明は、石英ガラスに比べれば、柔らかく弾性や粘性のあるガラス、いわゆる硬質ガラスやアルミナシリケートガラスの弾性や粘性特性に着目し、上記のように肉厚が1mm以上で且つ粘度がランプ動作中において1×1014〜1×1025ポアズとなるように設定されたガラス管を選定するもので、これにより従来の石英ガラスより安価な硬質ガラスやアルミナシリケートガラスを用いガラス管を選択することができ、発光管破裂片飛散防止効果の高い最適なガラス管を容易に選定可能な金属蒸気放電灯あるいはハロゲンランプにおける発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法を実現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る金属蒸気放電灯における発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法の実施の形態を説明するためのメタルハライドランプの構成を示す正面図である。図1において、1は70Wのメタルハライドランプの石英ガラス製発光管、2はランプ外球、3は発光管破裂時の破裂片飛散防止用のスリーブで、肉厚 1.1mmで、ランプ動作中の温度( 530℃)において1×1014ポアズの粘度を有する硬質ガラスにより形成されている。スリーブ3は上下両端部をC型保持環4,4により支持線5に保持されている。また、6はゲッターで、7は絶縁碍子である。
【0014】
そして、発光管1は両端に電極を備え、内容積は 1.1cc,最大外径は14mmで、水銀とスカンジウムとナトリウムが封入されており、発光管外表面の両端部には保温膜が設けられている。発光管外表面とスリーブ3とは 3.0mm離間して配置されている。
【0015】
本発明に係る金属蒸気放電灯における発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法は、発光管破裂時の破裂片飛散防止用ガラス管(スリーブ)として、肉厚が1mm以上で且つ動作中の粘度が1×1014〜1×1025ポアズの範囲となるガラス管を選定するものであるが、次に、その設定に際して行った実験について説明する。
【0016】
まず、上記図1に示したメタルハライドランプと同サイズで、ガラス管(スリーブ)として各種肉厚でアルミナシリケートガラス及び硬質ガラス(硼珪酸ガラス)で形成したもの、並びに従来と同様に石英ガラスで形成したものを用いた試料ランプを作成した。そして、図2に示すようなランプ点灯回路を用いて試料ランプを15分点灯させた後、別途充電しておいたコンデンサをランプ点灯回路に接続し、コンデンサの充電エネルギーを一気にランプに流すことにより、強制的に発光管を破裂させ、各試料ランプのガラス管(スリーブ)の破裂片飛散防止効果を確認するという手法で実験を行った。その実験結果を表1に示す。なお、図2において、11はAC電源、12は安定器、13は試料ランプ、14−1,14−2は放電用スイッチ、15−1,15−2は充電用スイッチ、16はコンデンサ、17はDC電源を示しており、試料ランプ13の発光管を破裂させるためにコンデンサ16からランプ13へ放電させたエネルギーは48Jである。
【0017】
【表1】
Figure 0003882330
【0018】
なお、表1において、分数の表記は、「外球破損した試料の数」/「破裂試験を行った試料の数」を表しており、温度は定格ランプ電力(70W)で点灯中のガラス管(スリーブ)の表面温度である。
【0019】
上記表1から明らかなように、石英ガラススリーブを使用した試料では、ガラス管肉厚の厚いもの( 2.0mm又は2.5mm )では、外球破損まで至る試料は少なかったが、肉厚が薄くなるに従い、外球破損してしまう試料が発生した。一方、アルミナシリケートガラス及び硬質ガラスで形成したスリーブを用いた試料では、石英ガラススリーブを用いた試料では全て外球破損を起こしたものと同じ肉厚(1.0mm )であっても、外球破損が生ぜず、更に薄いもの(0.8mm )でも外球破損の比率は、かなり低いことが判明した。また、アルミナシリケートガラスを用いた試料でも、ほぼ1×1025ポアズを超えると、外球破損が起こし始めることが判った。
【0020】
したがって、上記実験結果から、ランプ動作中の温度における粘度が1×1025ポアズ以下であり、且つ肉厚が 1.0mm以上のガラススリーブを用いた場合に、外球破損すなわち発光管破裂飛散防止効果が得られることが判明した。なお、粘度の下限値は、粘度が低く余りにも柔らかくなると、ガラス自身が変形を起こしてしまい、破裂飛散防止の機能を失う。この破裂飛散防止機能を維持する粘度の下限値は、硬質ガラスは同一動作温度でも最も粘度が低いので、硬質ガラスでその下限値を求めたところ、歪点(1×1014.5ポアズ)より若干低めである1×1014ポアズであることが、上記実験において確認された。
【0021】
以上のように、アルミナシリケートガラスや硬質ガラスは同じ動作中温度において石英ガラスより粘度が低く、その柔らかさによって石英ガラス以上に、破裂防止効果があることが確認された。したがって、硬質ガラスやアルミナシリケートガラスは石英ガラスより安価であるので、硬質ガラスやアルミナシリケートガラスでガラス管(スリーブ)を作製した場合には、ガラス管(スリーブ)のコストを低減することができ、更に石英ガラススリーブと同程度の破裂飛散防止効果をもつだけで構わない場合には、ガラス管(スリーブ)肉厚を石英ガラスよりも薄くできるので、更にコストの低減を図ることができる。
【0022】
但し、石英ガラススリーブの破裂飛散防止効果が硬質ガラスやアルミナシリケートガラスより劣るということではない。すなわち、上記実験に供した70Wのメタルハライドランプでは、通常ランプ動作中のスリーブの温度は 530℃である。図3の温度と粘度の関係図における特性aに示すように、この温度のときの石英ガラスの粘度は1×1028ポアズ位である。この温度の場合、硬質ガラスに比べれば、粘度は高く硬い状態になっているが、スリーブ表面温度は、発光管からの距離、ランプ電力によって様々で、場合によっては、 900℃にも達するランプもある。 900℃のときの石英ガラスの粘度は、約3×1016ポアズである。この温度のときの石英ガラスの粘度は、450 ℃時の硬質ガラスと同等の粘度であり、破裂飛散防止効果も同等と見込める。なお、図3において、特性bは96%シリカ、特性cはアルミナシリケートガラス、特性dは硬質ガラスの温度と粘度との関係を示しており、また、Vは本発明において設定されたランプ動作中のガラス管の粘度の範囲を示しており、Tはランプ動作中のガラス管(スリーブ)表面温度の範囲を示している。
【0023】
上記実施の形態の説明は、本発明に係る金属蒸気放電灯における発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法の実施の形態について説明したが、ガラス管(スリーブ)におけるガラス粘性による発光管破裂片飛散防止効果は、ランプ動作時の温度における粘度に依存しているので、熱源となっている発光管の種類には依存しない。したがって、同様に破裂の可能性のある外球付ハロゲンランプにおけるガラス管(スリーブ)にも、上記金属蒸気放電灯において設定したガラス管(スリーブ)の設定条件を同様に適用することができる。図4は本発明に係る外球付ハロゲンランプにおける発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法の実施の形態を説明するためのハロゲンランプの構成を示す図である。図4において、11はハロゲンランプ発光管(電球バルブ)、12は発光管11を囲むように離間して配置されたガラス管(スリーブ)、13は外球、14はステム、15は口金である。そして、ガラス管(スリーブ)12は、肉厚 1.5mm,ランプ動作中2×1016ポアズの粘度を有する硬質ガラス製のもので構成されている。このように構成したハロゲンランプにおいても、メタルハライドランプと同様の発光管破裂飛散防止効果が得られる。
【0024】
【発明の効果】
以上実施の形態に基づいて説明したように、本発明によれば発光管破裂時の破裂片の飛散エネルギーを効率よく吸収し、飛散エネルギーを十分小さくして外球の破損を防止できる最適な破裂片飛散防止用ガラス管を容易に選定可能な金属蒸気放電灯及びハロゲンランプにおける発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る金属蒸気放電灯における発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法の実施の形態を説明するためのメタルハライドランプの構成を示す図である。
【図2】 図1に示したメタルハライドランプの点灯装置及び発光管破裂試験回路を示す図である。
【図3】 各種ガラスの温度と粘度との関係を示す図である。
【図4】 本発明に係るハロゲンランプにおける発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法の実施の形態を説明するためのハロゲンランプの構成を示す図である。
【符号の説明】
1 発光管
2 ランプ外球
3 スリーブ
4 C型保持環
5 支持線
6 ゲッター
7 絶縁碍子
11 AC電源
12 安定器
13 試料ランプ
14−1,14−2 放電用スイッチ
15−1,15−2 充電用スイッチ
16 コンデンサ
17 DC電源
21 発光管
22 スリーブ
23 外球
24 ステム
25 口金

Claims (2)

  1. 発光管と、該発光管から離間し該発光管の発光部より広い範囲を囲むように配置した発光管破裂片飛散防止用ガラス管と、前記発光管をガラス管と共に収納した外球とを備えた金属蒸気放電灯において、前記ガラス管は、肉厚が1mm以上で且つ粘度がランプ動作中において1×1014〜1×1025ポアズとなるように設定することを特徴とする発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法
  2. 発光管と、該発光管から離間し該発光管の発光部より広い範囲を囲むように配置した発光管破裂片飛散防止用ガラス管と、前記発光管をガラス管と共に収納した外球とを備えたハロゲンランプにおいて、前記ガラス管は、肉厚が1mm以上で且つ粘度がランプ動作中において1×1014〜1×1025ポアズとなるように設定することを特徴とする発光管破裂片飛散防止用ガラス管の選定方法
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