JP3882181B2 - シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼ前駆体をコードする遺伝子dna - Google Patents

シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼ前駆体をコードする遺伝子dna Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のショ糖分解酵素であるインベルターゼの構造遺伝子を含むDNA、該DNAを含む組換えベクター、およびこれを用いた形質転換体に関する。
【0002】
【従来の技術】
分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ(S. pombe)は、真核生物でありながら遺伝学、分子生物学の応用がきわめて容易な単細胞生物として広く研究されている。その生育には炭素源としてブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)等の単糖が用いられている。生育する際に培地中にこれら単糖が存在しない場合、ショ糖(スクロース)をブドウ糖と果糖に分解する酵素であるインベルターゼの発現が誘導され、生育に必要な炭素源を獲得することが知られている。
【0003】
出芽酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)においても同様に、固有のインベルターゼの誘導生産現象(脱抑制)が知られている。その発現における遺伝子レベルでの制御、生合成経路、糖鎖部分の構造解析等に関する研究はすでに詳細に行われている。すなわち、出芽酵母サッカロミセス・セレビシエのインベルターゼ遺伝子は染色体上に6個重複しており、SUC1〜SUC5およびSUC7という遺伝子によってコードされている。このうちの1つでも活性なSUC遺伝子を持てばスクロースとラフィノースの資化性を示すことが知られている(Hohmann, S. and Zimmermann, F.K. Curr.Genet. 11, 217(1986))。SUC遺伝子からは、転写開始点が離れた2種のmRNAが転写される。短い方のmRNAは構成的な転写であり、細胞内インベルターゼを発現している。長い方のmRNAは分泌型インベルターゼをコードしており、その発現はカタボライト抑制を受け、その脱抑制比は200倍以上である(Carlson, M. et al. Mol.Cell.Biol. 3. 439(1983))。長い方のmRNAに対するプロモーター領域の解析がなされた結果、−650bpから−418bpの間にある特別な繰り返し配列に制御因子が結合していると考えられている(Salokin,L. and Carlson, M. Mol.Cell. Biol. 6, 2314(1986))。
【0004】
これに対し分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベでは、インベルターゼタンパク質の精製については報告されているが(Moreno, S. et al. Arch. Microbiol.
142, 370(1985))、その遺伝子に関する研究はなされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベは、出芽酵母サッカロミセス・セレビシエとは系統進化的に非常に異なる酵母であり、細胞増殖機構、染色体構造、RNAスプライシング機構、糖タンパク質糖鎖へのガラクトース残基の付加等の諸性質が複雑で、動物細胞と類似しているという利点がある。分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベにおいて、インベルターゼは細胞表層に存在しており、分子量205KDaの高分子量糖タンパク質である。その67%が糖鎖であり、等モルのマンノース残基とガラクトース残基から成り立っている。精製酵素のタンパク分子量やアミノ酸組成および抗体を用いた実験から、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ由来のインベルターゼは出芽酵母サッカロミセス・ポンベのインベルターゼとタンパク質化学的にも非常に類似していることが知られている(Moreno, S. et al. Biochem. J. 267, 697(1990))。またグルコース濃度の低下によりインベルターゼの合成抑制が解除されることも知られている(Mitchison, J. and Crenor, J. Cell Sci, 5. 373(1969))。
【0006】
しかし分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベにおいて出芽酵母サッカロミセス・セレビシエのSUC2遺伝子を発現させた場合、宿主に依存してガラクトース残基が含まれるが、カタボライト抑制を受けずに構成的な発現がなされることが知られている(Zarate, V and Belda, F. J.Applied Bacteriology. 80, 45,(1996))。このことから、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベと出芽酵母サッカロミセス・セレビシエとでは、インベルターゼのカタボライト抑制のメカニズムが異なっている可能性がある。
【0007】
本発明は分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼ遺伝子の塩基配列を明らかにし、さらにカタボライト抑制に関与している遺伝子領域を明らかにしようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、従来その遺伝子レベルでの実体が不明であった分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼ遺伝子の塩基配列を決定し、糖鎖付加部分を決定した。また遺伝子破壊法によりインベルターゼ遺伝子が1種ですべての活性を担っていることを明らかにした。本発明の遺伝子およびポリペプチドは、タンパク質の細胞内輸送経路解析や糖鎖修飾機構の解明などのためのマーカーとしての重要な物質であり、応用面においても重要性が高い。
【0009】
すなわち本発明は、配列表の配列番号1に示す塩基配列で表される、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼ前駆体をコードする遺伝子を含むDNAに関する。
【0010】
さらに本発明は、この遺伝子を含む組換えベクター、およびそれにより形質転換された分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベまたは大腸菌に関する。
【0011】
本発明者らは、具体的には以下に示す方法で分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼの前駆体遺伝子を見出し、その構造を決定した。
【0012】
(1)分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのcDNAライブラリーをテンプレートとして、他生物種起源のインベルターゼ遺伝子に良く保存されたアミノ酸配列から作製したプライマー用いてPCR反応を行う。
【0013】
(2)得られたPCR産物をプローブとして分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのゲノムライブラリーからプラークハイブリダイゼーション法によりポジティブクローンを選別する。
【0014】
(3)ポジティブクローンを制限酵素で消化して電気泳動パターンを確認する。
【0015】
(4)確認されたポジティブクローンからサザンハイブリダイゼーション法を用いて特定長のフラグメントを選別し、全塩基配列を決定する。
【0016】
(5)遺伝子破壊法を用いてインベルターゼ活性の有無を調べる。
【0017】
【実施例】
以下に本発明を具体的な実施例によりさらに詳細に説明する。
【0018】
[実施例1]
PCR法によるインベルターゼ遺伝子の単離
分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのcDNAライブラリーをテンプレートとして、他生物種起源のインベルターゼ遺伝子間で良く保存されたINV−11、INV−12、INV−13、INV−15、INV−20、INV−HD1、INV−HD2の各配列をプライマーに用いてPCR反応を行った(図1)。なお図1中、INV−15、INV−20はSpeIサイトに変異させるためのプライマーを示す。その結果、400bp、300bpの近傍にPCR反応により増幅されたバンドが得られた。
【0019】
それぞれのPCR産物をEASY TRAP(宝酒造(株)製)を用いて回収した。pMOSBlueTベクターキットを用いて得られたPCR産物をベクターに組み込み、塩基配列の決定を行った。
【0020】
その結果、400bpのPCR産物をアミノ酸に変換した部分アミノ酸配列は出芽酵母サッカロミセス・セレビシエのSUC2遺伝子と高い相同性を示した(図2)。図2は、上記PCRフラグメントと、出芽酵母サッカロミセス・セレビシエのSUC2遺伝子のアミノ酸配列との比較を示す。同図中、2つの塩基間の星印は同一アミノ酸を示す。本遺伝子(400bpのPCRフラグメント)にコードされているインベルターゼホモログ遺伝子をinv1+と命名した。
【0021】
[実施例2]
分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのゲノムDNAライブラリーからの全インベルターゼ遺伝子の取得
実施例1で得られた400bpのPCRフラグメントをプローブとして、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのゲノムDNAライブラリーからプラークハイブリダイゼーション法により全インベルターゼ遺伝子を含むポジティブクローンの取得を試みた。その結果、約8000のプラークのうち15個のポジティブクローンが取得された。
【0022】
このポジティブクローンの2次スクリーニングを行うため、再びハイブリダイゼーションを行った。その結果、感光したプラークが4個得られ、このDNAをプレートから単離した。プラークハイブリダイゼーションの結果、単離されたポジティブクローンのファージDNAを少量抽出し、種々の制限酵素で処理して切断パターンを比較したところすべて同一であった。よって、取得されたポジティブクローンは1種類であることがわかった。
【0023】
[実施例3]
サザンハイブリダイゼーションによるインベルターゼ遺伝子の検索
実施例2で得られたポジティブクローンから1つを選び、ファージDNAの大量抽出を行った。
【0024】
得られたファージDNAを制限酵素AccI、BamHI、BglII、ClaI、EcoRI、HindIII、KpnI、PstI、SalI、XhoIを用いて消化後、アガロースゲル電気泳動を行い、400bpのPCRフラグメントをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。結果を図3(a)、(b)に示す。図3(a)はアガロースゲル電気泳動の結果を示し、図3(b)はサザンハイブリダイゼーションの結果を示す。図3(a)、(b)中、符号1は分子量マーカー(λ−HindIII消化)、符号2はポジティブクローンをACCIで消化、符号3はポジティブクローンをBamHIで消化、符号4はポジティブクローンをClaIで消化、符号5はポジティブクローンをEcoRIIで消化、符号6はポジティブクローンをHindIIIで消化、符号7はポジティブクローンをPstIで消化、符号8はポジティブクローンをSalIで消化した場合を示す。図3(a)、(b)から明らかなように、ポジティブクローンから制限酵素処理により生じたDNAフラグメントのいずれかにハイブリッドの形成が確認された。
【0025】
[実施例4]
inv1+遺伝子の取得と確認
インベルターゼ遺伝子の全長を取得するためにハイブリッドを形成し、HindIII処理(実施例2の図3(a)、(b)中、符号6)した約3.0kbフラグメントを抽出し、プラスミドpBluescript II SK(-)(東洋紡(株)製)に組み込んだ。この組換えプラスミドをテンプレートとして、図1に示す他生物種起源のインベルターゼ遺伝子に良く保存されたプライマーを用いてPCR反応により約400bpのバンドの増幅を確認し、PCRフラグメントのシークエンスを行って目的のインベルターゼ遺伝子が含まれていることを確認した。
【0026】
[実施例5]
inv1+遺伝子の塩基配列の決定
種々の制限酵素でinv1+遺伝子を消化し、BamHI、SalIの制限酵素部位が確認された。そして、これらの制限酵素を用いてサブクローニングを行い、加えて、ディレーションを併用して塩基配列の決定を行った。
【0027】
その結果、HindIII消化のDNAフラグメントにはinv1+遺伝子のORF(オープンリーディングフレーム)をすべて含むことがわかった。しかし、inv1+遺伝子の発現に関与すると思われる上流領域は約200bpしか含まないことが明らかとなった。そのため、ハイブリッドを形成したBamHI消化(実施例2の図3(a)、(b)中、符号3)3.5kbフラグメントからHindIII消化により2.6kbのinv1+遺伝子の上流領域を含むフラグメントを単離し、プラスミドpBluescript II SK(-)に組み込み、サブクローニングとディレーションにより塩基配列を決定した。inv1+遺伝子の制限酵素地図および塩基配列を決定した部位を図4に示す。inv1+の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号1および図5に示す。なお、図5では最上流側の塩基配列は省略されている。
【0028】
なお、図4において、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベinv1+の制限酵素地図は、配列解析のために使われた制限酵素切断サイトを示し、他のサイトは示していない。他の塩基配列はデリーションのあるプラスミドの配列解析によって決定された。図4中、矢印は塩基配列の方向と範囲を示す。符号Bは制限酵素BamHI切断部位を、符号Scは制限酵素SacI切断部位を、符号HはHindIII切断部位を、符号SlはSalI切断部位を、それぞれ示す。
【0029】
図5において、推定TATAボックスは2重線を付した(塩基番号第2657番〜第2660番)。N−グリコシリレーションの可能性のある配列は箱印(□)で囲んだ。7塩基繰り返し配列[(A/C)(A/G)GAAAT]は点線下線で示した(塩基番号第1888番〜第1894番、第2189番〜第2195番、第2492番〜第2498番の3箇所)。翻訳終止コドンは4箇所存在する(塩基番号第1553番〜第4555番、第4572番〜第4574番、第4619番〜第4621番、第4629番〜第4631番)。
【0030】
この結果、inv1+遺伝子にはアスパラギン結合型糖鎖付加部位が16箇所存在していることがわかった。
【0031】
図6に、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのinv1+のアミノ酸配列とinv0+のアミノ酸配列、シュワニノミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)のインベルターゼのアミノ酸配列、出芽酵母サッカロミセス・セレビシエのSUC2のアミノ酸配列の各N末端部を示す。各配列の左端にアミノ酸番号を示した。またinv1+と同一アミノ酸を箱印(□)で囲んで示した。同図から明らかなように、inv1+遺伝子は他生物種起源インベルターゼであるシュワニノミセス・オキシデンタリス インベルターゼや出芽酵母サッカロミセス・セレビシエ SUC2との高い相同性を示した。また、他生物種起源のインベルターゼとinv1+遺伝子はそれぞれN末端側で高いホモロジーを示すことがわかった。
【0032】
[実施例6]
inv1+遺伝子の破壊
プラスミドpBluescript II SK(-)の制限酵素ClaIサイトに分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ由来のura4+を組み込んだプラスミドを制限酵素HindIIIで消化して平滑末端化の後、セルフライゲーションを行い、HindIIIサイトを破壊した。このプラスミドを制限酵素XbaI、HincIIで二重消化してura4+フラグメントを取得した。プラスミドpBluescript II SK(-)を制限酵素SpeIで消化して平滑末端化し、さらに、制限酵素XbaIで消化したベクターに、上述のura4+フラグメントを組み込み、BamHIサイトをura4+の両側に配置したプラスミドを作製した。
【0033】
プラスミドpBluescript II SK(-)のBamHIサイトも上述のように制限酵素処理、平滑末端化、セルフライゲーションにより破壊し、HindIII部位にインベルターゼ遺伝子を含む3.0kbのフラグメントを挿入した。このプラスミドを制限酵素BamHIで消化して、挿入フラグメント中の1.4kbのフラグメント(inv1+ORFのC末端側領域を含む)を除き、両側にBamHIサイトを持つura4+遺伝子を組み込んだ。このプラスミドをHindIII消化して両端にinv1+遺伝子の近傍の領域を含むDNAフラグメントを取得した。このDNAフラグメントを分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベの野生株(WT)に形質転換してウラシル無添加の培地に生育してきたコロニーを得た。オーバーレイアッセイによりインベルターゼ活性について検討したが、活性の消失した株は28株中7株存在していた。得られたura4+コロニーの中でインベルターゼ活性の消失した株は25%であった。
【0034】
染色体上のinv1+遺伝子の破壊の確認をサザンハイブリダイゼーションにより行った。inv1+遺伝子からのHindIII−SalI消化フラグメント(約2kb)をプローブとしてインベルターゼ活性の消失した株からゲノムDNAを抽出し、制限酵素HindIII、SalIで消化してサザンハイブリダイゼーション法により確認を行った。
【0035】
結果を図7(a)、(b)に示す。図7(a)はinv1+遺伝子の制限酵素地図を示し、オープンリーディングフレーム(ORF)を矢印で表した。ORFを含んだinv1+の1.4Kb BamHI−BamHIフラグメントは、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ ura4+遺伝子に置き換えられていることにより、破壊株ができた。ハイブリダイゼーションに使用されたプローブは2kbのHindIII−SalIフラグメントである。ゲノムDNAは単離消化され、制限酵素HindIII、SalIで消化された。
【0036】
図7(b)に示すようにインベルターゼ活性の消失した株の染色体DNAはura4+遺伝子に置換されていることをSalI消化により3kbのハイブリッドが形成されたことから確認した。
【0037】
以上の結果から、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベにおいて発現しているインベルターゼ遺伝子はinv1+遺伝子ただ1つであることが証明された。
【0038】
[実施例7]
inv1+遺伝子によるインベルターゼ活性の回復
分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ発現用ベクターpAL−KS、pAU−SK(大阪市立大学理学部下田親博士より供与)にインベルターゼ遺伝子inv1+を含むHindIII 3.0kbフラグメントを組み込んで、インベルターゼ欠損株に形質転換してインベルターゼ活性の有無をオーバーレイアッセイにより調べた。さらに、インベルターゼ遺伝子の上流領域を含むBamHI−HindIII 2.6kbフラグメントをインベルターゼ遺伝子のORFを含むHindIII−SalI 2.0kbのフラグメントと連結させたBamHI−SalI 4.6kbフラグメントをベクターpAL−KS、pAU−SKに組み込み、このプラスミドもインベルターゼ欠損株に形質転換してインベルターゼ活性の有無をオーバーレイアッセイにより調べた。
【0039】
その結果、いずれのプラスミドを形質転換した株においてもそのほとんどが青く染色しており、インベルターゼを発現していることが確認された。加えて、上流領域を付加した場合、染色度が強くインベルターゼが高発現していることが示唆された(図8(a)、(b))。図8(a)はゲルオーバーレイアッセイ写真、図8(b)は図8(a)の染色部分を説明する模式図を示す。
【0040】
また、YP−スクロース培地(アンチマイシン10μg/ml)における生育度を調べた結果、インベルターゼ欠損株(inv1Δ)はほとんど生育を示さなかったが、野生株(WT)と形質転換株(inv1Δ/pAU::inv1+)は、インベルターゼ活性が存在するためにスクロースをグルコースとフルクトースに分解することを30℃、5日間の培養で確認した(図9(a)、(b))。図9(a)はコロニーの形態を示す写真、図9(b)は図9(a)を説明する模式図を示す。
【0041】
以上の結果よりinv1+遺伝子がインベルターゼを発現して細胞表層にインベルターゼを生産していることが証明された。
【0042】
[実施例8]
inv1+遺伝子のグルコース抑制に関する解析
分裂酵母シゾサッカロミセズ・ポンベにおいて、インベルターゼ遺伝子のグルコース抑制に必要なグルコース量ははっきりとわかっていなかった。そのため、野生株TP4−1D(h-、leu1、ura4、ade6−M216、his2;Imperial Cancer Research Foundationの登田隆博士より供与)およびインベルターゼ欠損株にinv1+遺伝子を含むプラスミド(pAU−SK::inv1+ BamHI−SalI)を形質転換した株をそれぞれ各種グルコース濃度(2%、4%、8%、16%)に調製したMM液体培地5mlに接種した後、対数増殖期中期になるまで30℃、振盪培養した。菌体を集菌し、インベルターゼの酵素活性を測定した。結果を図10に示す。
【0043】
また、18時間培養後の培地中のグルコース量の変化もフェノール硫酸法によって調べた(図11)。同図から18時間培養後のMM培地中のグルコースの減少がわかる。
【0044】
以上の結果から、インベルターゼ活性は8%の濃度がグルコースの減少度も少なく、グルコース抑制にも十分であることがわかった。
【0045】
インベルターゼの誘導生産を行うために最も効果のあるグルコース濃度を決定するため、野生株TP4−1Dをそれぞれグルコース0%、0.01%、0.05%、0.1%、0.25%、0.5%、1.0%、2.0%の濃度で含有するMM培地に対数増殖期中期になるまで生育させた野生株と形質転換株(インベルターゼ欠損株)を移して27℃、3時間で振盪培養してインベルターゼ活性を測定した(図12)。インベルターゼ合成の脱抑制におけるグルコースの効果対数増殖期まで2%グルコースが含まれた培地で生育した抑制菌体を、グルコース濃度を変化させた最小培地にて培養することによって脱抑制させた。各点における菌体のインベルターゼ活性を180分に30℃で測定した。インベルターゼの1unitは30℃、pH4.0のもとに1分間にショ糖を1nmolのグルコースに変化させる酵素の量を示す。
【0046】
その結果、野生株では誘導に最適なグルコース濃度は0.1%であり、形質転換株では0.05%であることがわかった。また野生株では、抑制解除時のインベルターゼ活性は40倍の値を示した。このような結果から分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベにおいてカタボライト抑制が存在していることが明示された。図13は、インベルターゼ合成の時間変化を示す。分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ WT TP4−1D菌体を2%グルコースを含んだ最少培地で中間対数増殖期まで生育させた後、30℃、0.1%グルコースを含んだ最小培地で脱抑制させた。横軸に示す時間でのインベルターゼ活性を測定した。
【0047】
【発明の効果】
従来その実体が不明であった分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベのインベルターゼの分子的実体を明らかにするとともに、特定の栄養源の有無によりこのインベルターゼ遺伝子の発現が制御される制御遺伝子領域の取得に成功した。
【0048】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】inv1+(PCRフラグメント)取得に用いたPCRプライマーを示す図である。
【図2】inv1+と出芽酵母のSUC2のアミノ配列(部分)の比較を示す図である。
【図3】図3(a)はアガロース電気泳動写真である。図3(b)はinv1+をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析の結果を示す観察図(電気泳動写真)である。
【図4】inv1+の制限酵素地図を示す図である。
【図5】inv1+の塩基配列とそれに対応するアミノ酸配列を示す図である。
【図6】inv0+とinv1+のアミノ酸配列比較を示す図である。
【図7】図7(a)はinv1+遺伝子の制限酵素地図を示す。図7(b)はinv1+遺伝子破壊を示す電気泳動図である。
【図8】図8(a)はゲルオーバーレイアッセイによるインベルターゼ活性を示すコロニーの図面代用写真(生物の形態)である。図8(b)は図8(a)に示すインベルターゼ活性の解析を示す模式図である。
【図9】図9(a)はコロニーの形態を示す図面代用写真(生物の形態)である。図9(b)は図9(a)に示すインベルターゼ活性の解析を示す模式図である。
【図10】インベルターゼ活性とグルコース濃度の関係を示すグラフである。
【図11】18時間培養後のMM培地中のグルコースの減少を示すグラフである。
【図12】インベルターゼ活性とMM培地中のグルコース濃度の関係を示すグラフである。
【図13】インベルターゼ合成の時間変化を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 配列表の配列番号1に示す塩基配列で表される、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のインベルターゼ前駆体をコードする遺伝子を含むDNA。
  2. 配列表の配列番号1の塩基番号第2810番〜第4555番の塩基配列で表される、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ(S. pombe)のインベルターゼ前駆体をコードする遺伝子DNA。
  3. 請求項1または2記載のDNAを含む組換えベクター。
  4. 請求項記載の組換えベクターで形質転換された分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ(S. pombe)または大腸菌(Escherichia coli)からなる形質転換体。
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