JP3882075B2 - ルテニウム酸ランタンの製造方法 - Google Patents

ルテニウム酸ランタンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度・高結晶質で、比表面積が大きく、耐熱性が高いルテニウム酸塩の製造方法およびこの方法で得られたルテニウム酸塩触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
ルテニウム酸塩系化合物の中で、La3.5Ru413の合成法として下記の固相反応合成法が報告されている。
2La23+4RuO2>La3.5Ru413(反応条件、真空中、900℃で48時間加熱:J.Solid State Chem.32,151,1980)
【0003】
上記の固相反応プロセスでは、真空加熱処理を必要とするため、高価な製造装置と煩雑な操作を必要とし、また、大きな比表面積を得ることが困難である。なお、本物質の製造法に関する特許(海外を含む)はこれまで報告されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のルテニウム酸ランタンLa3.5Ru413の合成法は以下の課題を有している。
1.真空を要する製造プロセスで、高コストである。
2.得られた生成物は比表面積が小さい。
3.触媒担体またはその他の担体上に直接合成する手法が開発されていない。
4.触媒担体またはその他の担体上に一様で、かつ細密に分散させる手法が開発されていない。
5.触媒機能の評価がなされていない。
また、類似の触媒特性を持つLaRuO3は900℃以上の高温下での長時間熱安定性が不十分であり、ガソリンおよびディーゼルエンジン等への利用が耐久性において制限されている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の従来技術の課題を解決したルテニウムペロブスカイトの新規な合成法を開発し、この方法により優れた触媒特性を持つLa3.5Ru413が得られることを見いだした。
すなわち、本発明は、化学式La3.5Ru413(Laは酸素12配位ランタニウム、Ruは酸素6配位ルテニウム、Oは酸素)で示されるルテニウム酸ランタンの製造方法であって、反応容器内でLaの金属イオンを含む水溶液とRuの金属イオンを含む水溶液を沈殿形成液と反応させてLaおよびRuの水酸化物の沈殿体を作成し、加熱して結晶化することを特徴とするルテニウム酸塩の製造方法である。
【0006】
また、本発明は、上記沈殿体を触媒担体またはその他の担体(粉末および成形体など)上に沈積、接着、または塗布した後加熱して結晶化することによりLa3.5Ru413の被膜を担体上形成することを特徴とする上記のルテニウム酸塩の製造方法である。
また、本発明は、上記触媒担体またはその他の担体はアルカリ土類酸化物または希土類金属酸化物を被覆したものであることを特徴とする上記のルテニウム酸塩の製造方法である。
【0007】
また、本発明は、化学式La3.5Ru413(Laは酸素12配位ランタニウム、Ruは酸素6配位ルテニウム、Oは酸素)で示されるルテニウム酸ランタンの製造方法であって、反応容器内でLaの金属イオンを含む水溶液とRuの金属イオンを含む水溶液を混合した混合水溶液を直接加熱し、蒸発乾固した後、加熱して結晶化することを特徴とするルテニウム酸塩の製造方法である。
【0008】
また、本発明は、上記の製造方法で得られたルテニウム酸塩からなり、メタンの燃焼に対する触媒、ディーゼル排出粒状物質フィルターの再生に有効な炭素及びディーゼル排出粒状物質(すす)の酸化に対する触媒、ディーゼル排出粒状物質のオンライン酸化に対する触媒、ディーゼル車排出汚染物質(ディーゼル排出粒状物質(すす)とNOx)の除去に対する触媒、一酸化炭素の酸化反応に対する触媒、有意な一酸化炭素の発生を伴わない炭化水素の酸化反応に対する触媒、揮発性有機物質の酸化に対する触媒、または一酸化炭素または炭化水素によるNOxの還元反応に対する触媒として用いられることを特徴とするルテニウム酸塩触媒である。
本発明の触媒は、900℃以上の高温(900〜1050℃)下で、長時間安定である。
【0009】
本発明の製造方法は、概ね以下の反応式基づいてルテニウムペロブスカイトを製造するものである。
共沈法
La3++Ru3++A+L+H2O→La・Ru・O・H・A・R(共沈操作)
La・Ru・O・H・A・R→La・Ru・O・A・H2O(蒸発乾固)
La・Ru・O・A・H2O→La3.5Ru413(加熱、結晶化、粒径制御)
【0010】
直接加熱法
La3++Ru3++A+H2O→La・Ru・O・A・H2O(蒸発乾固)
La・Ru・O・A・H2O→La3.5Ru413(加熱、結晶化、粒径制御)
A:ランタンまたはルテニウムの水溶性原料の陰イオン成分、L:アンモニアや尿素等の沈殿形成剤、R:沈殿形成剤の残留成分
【0011】
本発明のルテニウム酸塩の合成法は従来法と比較して以下の特徴を有している。
1.低コストである。
2.触媒等への利用に必要な大きな比表面積を持ちかつ高純度な結晶が得られる。
3.触媒担体またはその他の担体上に直接合成することができる。
4.触媒担体またはその他の担体上に一様で、かつ細密に分散した材料を合成できる。
5.大気または排ガス中のCOまたはHCの酸化触媒反応、排ガス中のHCまたはCOによるNOxの還元触媒反応に対する優れた触媒特性を持ち、かつ高温耐熱性(1050℃程度)を有するLa3.5Ru413を合成できる。
【0012】
本発明の製造方法で得られたルテニウム酸塩は、例えば、下記の用途に好適である。
1.環境に過度の影響を与えないメタンの燃焼によるエネルギー製造。
2.LaRuO3ペロブスカイトが利用できないような高温域の触媒利用。
3.ディーゼル排出粒子フィルターの再生用触媒、ディーゼル排出ガス中のオンラインすす酸化処理、および、NOx−すすの同時除去。
4.すす等に含まれる蒸発性有機物の効率的酸化処理。
5.酸化条件下におけるCOの効率的酸化処理およびCOの生成を伴わないHCの効率的酸化処理、および化学量論条件下におけるCO+NOxおよびHC+NOxの酸化還元同時処理。
6.化学量論条件下におけるHC+CO+NOxの酸化還元同時処理。
7.厚膜レジスターやプリント回路技術における利用。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のLa3.5Ru413の製造方法の工程を以下に説明する。塩化物等のLa3+とRu3+の水溶性化合物(前駆体)を水に溶解し、混合する。混合溶液を定速度で撹拌しながら沈殿形成液(アンモニア、尿素等)を滴下して、共沈させる。沈殿が落ち着いてから濾過・洗浄を行う。
沈殿体をオーブンで60〜150℃程度に加熱乾燥してから、窒素雰囲気ないし大気中で、400℃、2〜8時間の条件で予備加熱する。得られた乾燥体を粉砕し、950〜1000℃、2〜8時間の条件で再加熱して結晶化する。このように二段階で加熱するのは、粒子の異常結晶成長を抑制し、結晶の均一化を図るために必要とされる。得られた生成物の比表面積はBET法により2.0〜6.0m2/gの値を示す。
上記法に代えて、混合溶液を蒸発乾固した後、加熱して結晶化してもよい。
【0014】
コーディエライト担体またはアルミナ粉末担体に沈殿体を被覆する工程を以下に説明する。La3+とRu3+の前駆体を水に溶解し、混合する。混合溶液にコーディエライト担体またはアルミナ粉末担体(これらはアルカリ土類酸化物あるいは希土類酸化物を事前に被覆しておくことが望ましい)を浸して、次に、窒素雰囲気あるいは大気中で乾燥する。これらのプロセスを繰り返し、所定の装填量になったら大気中、300〜400℃、1〜8時間の条件で予備加熱する。次に、600〜1050℃、1〜12時間の条件で再加熱して結晶化する。この方法によって、担体上に分散し、固着したLa3.5Ru413を得ることができる。得られた生成物の比表面積はBET法により13〜64m2/gの値を示す。
【0015】
上記の方法の代わりに、共沈法で沈殿体を得る前のスラリーにコーディエライト担体またはアルミナ粉末担体(これらはアルカリ土類酸化物あるいは希土類酸化物を事前に被覆しておくことが望ましい)を浸漬し、次に、窒素雰囲気あるいは大気中で乾燥してもよい。
【0016】
【実施例】
実施例1
4.4257gのLaを含む3塩化ランタン溶液200mlと3.68098gのRuを含む3塩化ルテニウム溶液200mlおよび脱イオン水100mlを混合して溶液500mlを作製した。混合溶液を毎分100回転の定速度で撹拝しながら沈殿形成液として2規定のアンモニア水800mlを毎分100mlの割合で滴下して、共沈により沈殿させた(毎分100回転の定速度で撹拝しているアンモニア水に混合溶液を毎分100mlの割合で滴下することによっても共沈体を得ることができた)。
【0017】
沈殿体を2時間静置し、脱イオン水でろ過、洗浄した。次に、70℃で5時間乾燥した後、400℃で4時間窒素雰囲気で予備加熱した。得られた乾燥物を90%が6μ以下の粒径になるように粉砕し、950〜1000℃で4時間、大気中で再加熱して結晶化し、最終生成物を作成した。上記の方法で得られた生成物をXRD、BET、TG−DTAで分析した。図1は、得られた生成物の粉末X繰回折データのグラフである。図1に示すように、La3.5Ru413固有の粉末X繰回折図形を示した。また、比較的大きな比表面積4.0m2/gを持ち、1050℃の高温下でも長時間安定であった。
【0018】
得られた生成物について、流通式触媒反応装置を用いて触媒実験をした。反応系と生成系のガスはガスクロマトグラフィーによって分析した。図2は、得られたLa3.5Ru413上のメタンの酸化による転化率、図3は、同じく、一酸化炭素および炭化水素の酸化による転化率(いずれも酸化雰囲気条件)、図4は、同じく、一酸化炭素および炭化水素の酸化とNOの還元による転化率(いずれも化学量論条件)、図5は、同じく、炭化水素または一酸化炭素によるNOの還元による転化率、図6は、同じく、炭素(すす)の酸化による転化率、である。
【0019】
得られた生成物は、図2に示すように、メタンの酸化に対して優れた触媒特性を示した。図3および図4に示すように、酸化雰囲気条件と化学量論条件の両方の条件下において、炭化水素およびCOの酸化反応に対して優れた触媒特性を示した。また、この物質は、図5に示すように、NOの還元反応、および、炭化水素および一酸化炭素によるNOの還元反応に対して優れた触媒特性を示した。更に、図6に示すように、NOの共存の有無にかかわらず、ディーゼルエンジン排出炭素(すす)の酸化に対して優れた触媒特性を示した。
【0020】
実施例2
実施例1と同じ混合溶液を60℃の加熱によって蒸発乾固して、得られた固体を窒素雰囲気中、500℃、3時間の条件で予備加熱した。得られた固体を90%以上が6μ以下の大きさになるまで粉砕し、950〜1000℃、12時間の条件で再加熱して結晶化した。この方法によって、実施例1と同じく、比表面積が大きく、優れた触媒特性を持つ生成物を得た。
【0021】
実施例3
実施例1と同じ沈殿体を作成し、25%以上が固形分になるように水を加えて250mlのスラリーを作製した。チャンネル密度200cpsiのコーディエライト製ハニカム(約25重量%のランタン酸化物を事前に被覆したもので55gの重量)をスラリーに浸した後、チャンネル内の過剰なスラリーを圧縮空気で除去した。
【0022】
得られた生成物を大気中70℃で2時間加熱して乾燥した。スラリーへの浸漬・乾燥操作を5ないし10回繰り返すことによって、ハニカムに対して25重量%の乾燥沈殿体の装填量を得た。次に、大気中、950〜1000℃、12時間の条件で加熱して結晶化した。この方法によって、担体上に均一に分散、固着し、2.4m2/gの比表面積を持つLa3.5Ru413を得た。
【0023】
実施例4
実施例1と同じスラリーに50gのアルミナ粉末担体(アルミナ粉末の約25重量%のランタン酸化物を事前に被覆したもの)を浸漬し、大気中70℃、ないしは真空乾燥した。浸漬・乾燥操作を5〜10回繰り返すことによって、アルミナ担体に対して25重量%の乾燥沈殿体の装填量を得た。
【0024】
得られた生成物を次に、大気中、950〜1000℃、12時間の条件で加熱して結晶化した。この方法によって、担体上に均一に分散、固着し、61m2/gの比表面積を持つLa3.5Ru413を得た。
【0025】
実施例5
実施例1と同じ混合溶液を500mlの純水で希釈した。この溶液を200gのアルミナ粉末担体(アルミナ粉末の約25重量%のランタン酸化物を事前に被覆したもの)に染み込ませ、大気中70℃、ないしは真空乾燥した。染み込み・乾燥操作を10回繰り返した。この操作によって、乾燥沈殿体のアルミナ粉末担体への被覆量が混合溶液前駆体の15重量%になった。
【0026】
得られた生成物を窒素雰囲気中、500℃、4時間の条件で予備加熱した。さらに、950〜1000℃、12時間の条件で再加熱して結晶化した。この方法によって、担体上に緻密に分散、固着し、64m2/gの比表面積を持つLa3.5Ru413を得た。
【0027】
実施例6
実施例5におけるアルミナ粉末担体の代わりに、アルミナで洗滌被覆(wash coat)した体積400cc、チャンネル密度400cpsiのコーデライトハニカム(アルミナ被覆量は20重量%で、その上にセリアまたはランタン酸化物を20重量%ほど被覆したもの)を用いて、実施例5と同じ操作をした。この方法によって、担体上に緻密に分散、固着し、13m2/gの比表面積を持つLa3.5Ru413を得た。
【0028】
実施例7
0.4426gのLaを含む3塩化ランタン溶液100mlと0.3681gのRuを含む3塩化ルテニウム溶液100mlを混合した。25重量%のランタン酸化物で被覆した10gのアルミナ粉末を混合溶液に分散させた後、15gの尿素を加え、90℃まで徐々に加熱し、毎分50回転で、3時間撹拌した。LaとRuの水和物が徐々にアルミナ上に沈積した。溶液を除去した後、脱イオン水で洗浄し、150℃で3時間乾燥した。次に、大気中、960〜1000℃で10時間加熱して結晶化た。この方法によって、担体上に緻密に分散、固着し、65m2/gの比表面積を持つLa3.5Ru413を得た。この際、XRDからは不純物の生成も若干認められた。なお、アルミナの代わりに、ランタン酸化物を被覆したコーディエライトおよびアルミナを洗浄被覆したコーディエライトを用いても同様な結果が得られた。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、環境汚染物質として対策が急がれているNOx、一酸化炭素、または炭化水素の比較的低温での高効率除去、ディーゼル排出炭素(すす)とNOxの同時除去および蒸発性有機物の高効率酸化除去が可能な触媒、低公害エネルギー製造につながるメタンの燃焼触媒を提供することが出来る。また、本発明のルテニウム酸塩は厚膜レジスターやプリント回路技術に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で合成したLa3.5Ru413の粉末X線回折データのグラフである。
【図2】図2は、実施例1で合成したLa3.5Ru413による、メタンの酸化による転化率を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例1で合成したLa3.5Ru413による、すすの酸化(NO共存無し及び共存)による転化率を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1で合成したLa3.5Ru413による、酸化条件下での一酸化炭素の酸化および炭化水素の酸化による転化率を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1で合成したLa3.5Ru413による、化学量論条件下での一酸化炭素―炭化水素―NOの酸化還元による転化率を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1で合成したLa3.5Ru413による、化学量論条件下での一酸化炭素−NO、および炭化水素−NOの酸化還元による転化率を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 化学式La3.5Ru413(Laは、酸素12配位ランタン、Ruは、酸素6配位ルテニウム、Oは酸素)で示されるぺロブスカイト型のルテニウム酸ランタン結晶の製造方法であって、反応容器内でLaの金属イオンを含む水溶液とRuの金属イオンを含む水溶液を沈殿形成液と反応させてLaおよびRuの水酸化物を作成し、この沈殿体を加熱して結晶化することを特徴とするルテニウム酸塩の製造方法。
  2. 上記沈殿体を触媒担体またはその他の担体に沈積、接着または塗布した後加熱して結晶化することによりLa3.5Ru413の被膜を担体上に形成することを特徴とする請求項1記載のルテニウム酸塩の製造方法。
  3. 化学式La3.5Ru413(Laは、酸素12配位ランタン、Ruは、酸素6配位ルテニウム、Oは酸素)で示されるぺロブスカイト型のルテニウム酸ランタン結晶の製造方法であって、反応容器内でLaの金属イオンを含む水溶液とRuの金属イオンを含む水溶液を混合した混合水溶液を直接加熱し、蒸発乾固した後、加熱して結晶化することを特徴とするルテニウム酸塩の製造方法。
  4. 上記混合水溶液を触媒担体またはその他の担体に含浸させ、加熱して結晶
    化することによりLa3.5Ru413の被膜を担体上に形成することを特徴とする請求項3
    記載のルテニウム酸塩の製造方法。
  5. 上記触媒担体またはその他の担体は、アルカリ土類酸化物あるいは希土類金属酸化物を被覆したものであることを特徴とする請求項2または4記載のルテニウム酸塩の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載された製造方法で得られたルテニウム酸塩からなり、メタンの燃焼に対する触媒、ディーゼル排出粒状物質フィルターの再生に有効な炭素及びディーゼル排出粒状物質(すす)の酸化に対する触媒、ディーゼル排出粒状物質のオンライン酸化に対する触媒、ディーゼル車排出汚染物質(ディーゼル排出粒状物質(すす)とNOx)の除去に対する触媒、一酸化炭素(CO)の酸化反応に対する触媒、有意な一酸化炭素の発生を伴わない炭化水素(HC)の酸化反応に対する触媒、揮発性有機物質の酸化に対する触媒、または一酸化炭素または炭化水素によるNOxの還元反応に対する触媒として用いられることを特徴とするルテニウム酸塩触媒。
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