JP3880677B2 - 潜熱蓄熱材組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は潜熱蓄熱材に関するものである。更に詳しくは、住宅やビル等の空調用冷暖房用システムに適した温度域(5〜25℃)での使用に有用な空調用冷房システム用潜熱蓄熱材組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
融解と凝固の過程で、一定の温度で大量の潜熱を吸熱及び放熱する物質は、温度変化を伴わずにこの潜熱を蓄積させ、これを必要な時に温度変化を伴わずに熱を放出または吸収させて有効に利用することができるので、潜熱蓄熱材として、冷暖房、廃熱の利用、太陽熱の蓄熱、低廉な夜間電力の利用等に用いられれている。
【0003】
各種の無機系水和塩が優れた潜熱蓄熱材として知られているが、無機系水和塩は融解する際に無機塩固体とその飽和水溶液との2相に分離し、これを冷却しても水和塩が生成しなかったり(相分離)、降温させて凝固点を過ぎても固化せず放熱しない(過冷却)という現象が起こりやすい。また潜熱蓄熱材が使用されるためには、その凝固点が使用温度域(有効蓄熱温度域)内に入るよう調節する必要がある。
【0004】
潜熱蓄熱材として広く利用されている塩化カルシウム6水和物は凝固点29℃、潜熱41cal/gであり、無機系水和塩としては比較的凝固点の低い潜熱蓄熱材であるが、それでも温度域が5〜25℃である冷暖房用システムに使用するには凝固点が高すぎ、そのままでは使用に適さない。また塩化カルシウム6水和物は過冷却を起こしやすい欠点があった。
【0005】
塩化カルシウム6水和物のような無機塩水和物を凝固点を下げて低温用の潜熱蓄熱材として使用するために、グリコール類等の多価アルコール類を凝固点降下剤として添加することが知られている(例えば特開昭56−95981号公報、特公平1−40077号公報等)。しかし、このような多価アルコール添加による凝固点降下には限界があるとされていた。
【0006】
すなわちエチレングリコール添加量が比較的少量の場合は添加量に応じて凝固点降下が見られるが、添加量が多くなると発核しにくくなり、凝固しなくなる。また塩化カルシウム6水和物和物に対しエチレングリコールが10重量%を超えると、更に添加量を増やしても、凝固点の降下は緩やかとなる。また塩化カルシウム6水和物は無機系水和塩の一般的性質として、過冷却されやすいが、エチレングリコールの大量添加によってこれが更に促進される。また大量に添加することにより蓄熱密度が低下し、潜熱蓄熱材としての効果は下がる。これらの理由から添加量の範囲はせいぜい1〜10重量%とされていた。
【0007】
従って本発明の目的とするような低温で使用できる潜熱蓄熱材は、エチレングリコールの添加のみによっては達成することができず、冷暖房用システムに適した温度域において、潜熱を有効に利用できる潜熱蓄熱材は得られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、冷暖房用システムに適した温度域において使用できる塩化カルシウム6水和物を主剤とする潜熱蓄熱材について検討した結果、多価アルコール及び塩化ストロンチウム及び/または塩化バリウムを添加することにより、エチレングリコールを10重量%以上添加しても、支障なく凝固点の調整が可能なので、冷暖房用に適した温度まで降下させることができ、冷暖房用システムに使用することのできる潜熱蓄熱材が得られることを見いだした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は一般式CaCl2・nH2O(ここにnは4.5〜6.5)の組成を有する塩化カルシウム水和物100重量部に対し、多価アルコール10〜35重量部と、塩化ストロンチウム / 塩化バリウム混合比(重量)が 9/1 〜 1/9 の塩化ストロンチウムと塩化バリウムの混合物 0.1 〜 20 重量部及びセピオライトを 0.1 〜 10 重量部を混合してなる潜熱蓄熱材組成物である。
【0010】
【0011】
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の潜熱蓄熱材の主剤として用いられる塩化カルシウム水和物は、化学式CaCl2・6H2Oでで表される、いわゆる塩化カルシウム6水和物及びそれよりも結晶水の量が若干増減したものを含み、CaCl2・nH2O(ここにnは4.5〜6.5、好ましくは5.0〜5.8)の組成を有する塩化カルシウム水和物である。nは水和物の結晶水モル数に相当する数であり、n=6の場合は塩化カルシウム6水和物である。このような塩化カルシウム水和物は、塩化カルシウム無水物または塩化カルシウム2水和物に水を添加して調製することができる。
【0013】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3プロパンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等を挙げることができるが、特にエチレングリコールが凝固点を下げる効果が大きいので好ましい。
【0014】
また塩化ストロンチウムと塩化バリウムは、塩化ストロンチウム/塩化バリウム混合比(重量比)9/1〜1/9、特に3/1〜1/1の混合物として用いると、より少量の添加量で効果を挙げることができる。
【0015】
本発明において、主剤である塩化カルシウム水和物に対するエチレングリコールの添加量は塩化カルシウム水和物100重量部に対し、多価アルコール10〜35重量部である。添加量がこれよりも多いと凝固点が低過ぎ、低温の冷媒が必要となるので、実用的でない。一方添加量がこの範囲より少ないと本発明の目的とするような低凝固点の潜熱蓄熱材が得られない。上記範囲内において、その添加量は、潜熱蓄熱材を使用する温度領域により任意に選択することができる。
【0016】
多価アルコールの添加量を増すことにより、凝固点はほぼ直線的に降下するが、本発明においては、塩化ストロンチウムと塩化バリウムの混合物を添加したことによって、このような多量のエチレングリコールを添加することができ、これにより凝固点を所望の温度に調節することができる。例えば、塩化ストロンチウム1.5量部、塩化バリウム1.1重量部(いずれも主剤100重量部に対し)添加の場合、エチレングリコールを30重量%添加することにより、凝固点を5℃以下に下げることができるので、空調用冷暖房用システムに充分使用が可能である。
【0017】
上記多価アルコールの添加による凝固点の降下は、使用する塩化カルシウム水和物中の結晶水の量により影響を受ける。純粋な塩化カルシウム6水和物よりも、むしろ結晶水の少ない水和物を用いる方が、凝固点をより下げることができ、また同じ凝固点を得るための多価アルコールの添加量を少なくすることができる。したがって本発明で用いられる塩化カルシウム水和物は6水和物に限定されず、一般式CaCl2・nH2O(ここにnは4.5〜6.5、好ましくは5.0〜5.8)の組成を有する塩化カルシウム水和物が用いられる。このような塩化カルシウム水和物は塩化カルシウム2水和物に対する水の添加量を調節することにより、任意のものを調製することができる。
【0018】
塩化ストロンチウムと塩化バリウムの添加量は塩化カルシウム水和物100重量部に対し両者合計で0.1〜20重量部好ましくは1〜10重量部である。この範囲より少量の添加量では、エチレングリコールを多量に添加した時に凝固しにくくなるので、低凝固点の潜熱蓄熱材が得られない。また添加量がこれよりも多いと、蓄熱密度が低下し、潜熱蓄熱材としての効果が低くなり、また経済的にも不利である。
【0019】
前記したとおり、本発明においては塩化ストロンチウムと塩化バリウムとの混合物として使用するが、例えば塩化ストロンチウム0.7〜7重量部及び塩化バリウム0.3〜3重量部の混合物を添加することにより、両者の合計添加量を比較的少量にしても、充分に凝固点を下げる効果が得られる。
【0020】
また本発明の上記潜熱蓄熱材組成物は無機系水和塩であるため融解する際に相分離現象が起こりやすく、融解と凝固を繰り返すことにより、蓄熱効果が低下する傾向がある。そのため本発明においては、更に相分離防止剤としてセピオライトを0.1〜10重量部添加する。すなわち本発明は、主剤である塩化カルシウム水和物100重量部に対し、多価アルコール10〜30重量部と、塩化ストロンチウムと塩化バリウムの混合物0.1〜20重量部及びセピオライトを0.1〜10重量部を混合してなる潜熱蓄熱材組成物である。
【0021】
ここにセピオライトとは、海泡石とも呼ばれ、2MgO・3SiO2・nH2O の構造式を有する水和マグネシウムシリケート系のセラミックスである。その結晶構造はきわめて細い繊維結晶物であり、微小孔径のトンネル状細孔が繊維の間に無数に存在する。このトンネルによる特異な吸着効果が結晶水の分離を防止し、相分離防止剤として作用する。
【0022】
セピオライトは繊維状物のままで、又はこれを粉砕した粉末状のものあるいはこれらの混合物として使用することができる。またセピオライトの他に更にグラスファイバー等のフィラーを添加することができる。
【0023】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
塩化カルシウム2水和物に水を添加し、式CaCl2 ・5.6H2 Oの組成を有する塩化カルシウム水和物を調製した。
塩化カルシウム水和物:100重量部
塩化ストロンチウム: 1.5重量部
塩化バリウム: 1.1重量部
の混合物に対し、エチレングリコールを表1記載の各添加量で添加して潜熱蓄熱材組成物を調製し、これを8時間、20℃に保った後、4℃まで降温し、6時間保持してその凝固点を測定した。結果を表1に示す。エチレングリコールを最大28重量部まで大量に添加しても順調に相変化がおこり、凝固点を5℃にまで下げることができた。
【0024】
【表1】
単位:重量部
【0025】
[比較例1]
塩化ストロンチウムも塩化バリウムも添加せず、塩化カルシウム水和物100重量部に対し、エチレングリコールを24重量部添加して潜熱蓄熱材組成物を調製し、実施例1と同様にして凝固点測定を試みたが、凝固しなかった。
【0026】
[実施例2]
実施例1で用いたと同じ塩化カルシウム水和物を用い、
塩化カルシウム水和物:100重量部
塩化ストロンチウム: 1.5重量部
塩化バリウム: 1.1重量部
エチレングリコール: 24重量部
セピオライト 5重量部
を混合攪拌して得られた潜熱蓄熱材を、−25℃〜+125℃までプログラム設定のできる低温恒温槽中で加熱昇温し、次いで4℃に冷却し凝固させた。このようにして融解、凝固の過程を300回繰り替えし実施したが、蓄熱、放熱のサイクル機能には変化はなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の潜熱蓄熱材は塩化カルシウム水和物に多価アルコールと、塩化ストロンチウム及び/または塩化バリウムを混合したことにより、多価アルコールを多量に添加することができ、これによって凝固点を5℃程度までに下げることができるので、比較的低温度域での蓄熱材、特に冷暖房システム用の蓄熱材として有用である。
Claims (1)
- 一般式 CaCl 2 ・ nH 2 O (ここにnは 4.5 〜 6.5 )の組成を有する塩化カルシウム水和物 100 重量部に対し、多価アルコール 10 〜 35 重量部と、塩化ストロンチウム / 塩化バリウム混合比(重量)が 9/1 〜 1/9 の塩化ストロンチウムと塩化バリウムの混合物 0.1 〜 20 重量部及びセピオライトを 0.1 〜 10 重量部を混合してなる潜熱蓄熱材組成物。
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