JP3879104B2 - 放射デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子ポリマーによる圧電素子を用いた放射デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は、表面に突状の振動面を形成した圧電フィルムから構成された従来の放射デバイスの断面図である。図6において、発泡材からなるエミッタ形状をした複数のこぶ184を有する支持プレート183の表面に、圧電材料製のフラットシート180を合わせ、上から力Fを加えることで、こぶ184の形状に合わせてフィルムシート180を変形させて行く。このようなフィルムシート180に電圧を印加すると、エミッタ部分が振動して超音波を放射する。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】
特表2002−526004号公報(第17図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、上記のようにフィルムシート180に形成されたエミッタ部が発泡材からなるこぶ184と接触するため、フィルムシート180に電圧を印加したとき、そのエミッタ部がこぶ184に接触して不要に振動を抑制し、所定の周波数の超音波が得られなくなるという問題点があった。
【0005】
また、複数のエミッタ部は自由な動きをするため、振動の繰り返しによってエミッタ部が変形を起しやすく、放射すべき周波数が変動してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、目的とする周波数を確実に得ることができて周波数変動の生じない振動面を有する圧電膜の放射デバイスを得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る放射デバイスは、両表面に一対の電極が設けられ、一方の表面側を突出変形することにより1ないしは複数の断面円弧状の振動面を形成した圧電膜と、この圧電膜の両表面に前記電極の上から重ね合わせた保持体とを備え、この保持体の少なくとも前記振動面と対向する部分を切り欠いて該振動面が露出するようにした放射デバイスであって、振動面の軸方向に沿う基部両端部に平面部を連接して形成し、この平面部および振動面の両端縁部における両表面に前記保持体を重ね合わせたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における、例えば断面が円弧形状に突出するよう形成された振動面を複数個持つ圧電膜の外観斜視図(振動面、保持材等の厚みを省略)を、図2は前記図1の平面図を、図3は前記図2のA−A´における断面図を、図4は前記図2のB−B´における断面図を、図5は前記図2のA−A´断面の一部拡大図をそれぞれ示す。
尚、上記図1〜5において同一符号は同一または相当部分を示す。
図1〜5において、10は例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの高分子ポリマーの圧電膜であり、この圧電膜10は、両表面にプラス(+)電極11とマイナス(−)電極12との一対の電極が設けられている。尚、前記一対の電極11、12は、例えば前記圧電膜10の両表面にシルク印刷、吹き付け塗装、蒸着などによって形成される。また、前記一対の電極11、12は、金や銀、アルミなどの金属系材料による金属電極で構成され、例えば酸化インジウムにアンチモンを配合した場合、透明電極として構成することができる。
【0009】
前記圧電膜10の前記高分子ポリマーのPVDF素材そのものは、数十ミクロンの薄膜の透明素材で、もともと平らな面構成をしたものであり、この素材の或る方向に力(例えば、素材の両端を強力に引張る)を加えて、かつ、この状態に強電圧を加えることで、次に述べる圧電効果を持つ圧電材料を構成することができる。
この圧電効果は、前述のように例えば素材の両端を強力に引張った圧電材料に対して、或る電圧を印加すると、力を加えた方向に伸縮動作を行うものであり、この伸縮動作を振動子として利用することで、該圧電材料を電気−音響変換素子として利用することが可能になる。したがって、前記圧電膜10を、例えば湾曲形状などに成型することで、更に前記伸縮作用が発生させやすくなる。
【0010】
13は圧電膜10の一方の表面にその全幅に跨って断面形状が円弧状に突出するよう形成された振動面で、この振動面は圧電膜10の表面に1ないしは複数が並列に形成されており、各振動面13の基部に連接して平面部が形成されている。
【0011】
本実施の形態の例として、上記図5の断面の拡大図に示すように、前記振動面13において、Aは該振動面13の振動面開口部直径であり、Bは前記振動面開口部直径Aの中心から振動面13の頂上点までの半径を示す。Tは表面(図5では電極12側)の電極12を含む前記振動面13の基部である。
【0012】
例えば前記振動面13の円弧形状からの音響放射のための周波数fは以下の関係で成り立つ。
C=f×λ
ここで、C:空中の音速、f:音放射したい周波数、λ:波長
上式から波長λを求め、前記円弧形状の振動面開口部直径Aの開口寸法を決定する。
【0013】
上式の放射周波数値fは、前記振動面13の基部と該振動面13の形状の変形で変化するため、前記基部と円弧形状の確実な固定が電気−音響変換素子の振動子として利用する圧電膜10の必要な条件となる。
【0014】
14は前記圧電膜10の両表面に電極11、12の上から重ね合わせた硬質の非導電材からなる保持材で、これは圧電膜10の前記振動面13の軸方向に沿う振動面13の基部両端部の平面部にその両面から重ね合わせる平面部16と、振動面13の両端縁部にその両面から重ね合わせる円弧部17とを有する。そして、この保持材14は、圧電膜10の振動面13に対向した部分は予め所定形状に切り欠かれており、圧電膜10の両面に重ね合わせた状態で圧電膜の振動面13を含む周縁部の形状を保持し、振動面13の大部分を外部に直接露出させている。
【0015】
上記のような振動面13が形成された圧電膜10の両表面に重ね合せた保持材14により圧電膜10の振動面13を含む周縁部の形状を保持し、振動面の大部分を外部に直接露出させる構造の製造過程の一例を示すと、
▲1▼両表面に一対の電極が設けられた一枚のシート状の圧電膜に、前述のC=f×λで求められた例えば前記円弧形状の振動面開口部直径Aの開口寸法となる振動面を成形する。
▲2▼板状の非導電材からなる保持材に、前記▲1▼の振動面の両端縁部の円弧を保持する円弧部を成形し、また振動面に対向して該振動面の大部分を外部に露出させる切り欠きを形成する。
▲3▼前記▲1▼の振動面を成形した圧電膜の両表面に、前記▲2▼の保持材を接着等で重ね合せる。
上記製造過程で、前記▲1▼の圧電膜に振動面を成形する過程と▲2▼の保持材に前記円弧部と切り欠きを成形する過程を別々にすることにより、前記圧電膜に成形する振動面の厚みを均一にすることができる。
【0016】
以上のように圧電膜10の前記振動面13の大部分を露出させて、保持材14の前記平面部16と円弧部17とにより両表面から圧電膜10を固定保持するようにしたので、圧電膜10に形成された前記振動面13の形状が確実に保持される。
【0017】
したがって、圧電膜10の各振動面13は、保持材14の平面部16及び円弧部17とで確実に重合状態で固定保持されるので、振動面13の形状が変形することがなく、常に初期設計状態で設定した周波数を放射することが可能となる。また、各振動面13の基部両端部の平面部は、保持材14の平面部16で両表面から確実に重合状態で固定保持されるので、振動することはない。
【0018】
そして、圧電膜10の各振動面13は、一対の共通の電極11、12で形成されているので、該電極11、12への信号線は、電極11、12の各々の任意の位置に一本ずづ設けるだけで、全ての振動面を駆動することができる。例えば上記図3に示す増幅器30により信号線を介して、圧電膜10の両表面に設けられた前記電極11、12に交流電圧を印加することで、圧電膜10に形成された振動子としての各振動面13の伸縮動作を起させ振動面13での音響放射が可能となる。
【0019】
以上のように、本実施の形態においては、両表面に一対の電極が設けられ、一方の表面側を突出変形することにより例えば断面が円弧形状の振動面を複数形成した圧電膜と、この圧電膜の両表面に前記電極の上から重ね合せた保持材とを備え、この両表面に重ね合せた保持材の少なくとも前記各振動面と対向する部分を切り欠いて該振動面が露出するようにして、前記保持材に形成した前記各振動面の軸方向に沿う振動面基部両端部の平面部及び基部を保持する平面部と、振動面の両端縁部の円弧形状を保持する円弧部とにより両表面から圧電膜を固定保持するようにしたので、圧電膜の各振動面基部両端部の平面部は、前記保持材の平面部で両表面から確実に重合状態で固定保持されるので、振動面基部両端部の平面部での振動を防ぐことができ、また、圧電膜の各振動面基部と振動面形状は、前記保持材の平面部及び円弧部とで両表面から確実に重合状態で固定保持されるので、振動面形状の変形を確実に防ぐことができ、振動面から常に初期設計状態で設定した周波数の音響放射が可能となる。
【0020】
尚、本実施の形態においては、図1、3、4に示すように圧電膜10の例えば表面となる各振動面13が形成された面とは反対側の裏面には開口部15の有る形態を示したが、該開口部15を塞ぐよう、圧電膜10の裏面側全体に裏面側の平面部16に重合状態に固着させる一枚の板状の、例えばゴム材等の放射エネルギーの抑制部材(図示せず)を設けるようにしてもよい。この場合は、圧電膜10の表面となる前記振動面13側からのみ放射が行われ、裏面側からの放射を防ぐことができる。
【0021】
また、本実施の形態においては、圧電膜10としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた例として説明したが、これに限られるものではなく、フィルム状の圧電材料であれば同等の効果を発揮するものである。
【0022】
また、前述したように前記圧電膜10の前記高分子ポリマーのPVDF素材そのものは透明素材であり、前述したような一対の透明電極で構成した場合には、例えば映像を映し出すCRT画面や液晶画面に直接固着することができるので、画面そのものから音が放射しているかのように創造することが可能になる。
【0023】
また、本実施の形態においては、圧電膜10の前記振動面13を図1〜4に示すような規則正しい配列として示したが、不規則な配列でも構わない。
【0024】
また、本実施の形態においては、圧電膜10の前記振動面13を断面が円弧形状の例として説明したが、これに限られるものではなく、前述のC=f×λで求められる振動面開口部の開口寸法にすれば、例えば断面が湾曲や弓形形状等の振動面13としても構わないもので、同等の効果を発揮するものである。
【0025】
また、本実施の形態においては、音放射用のデバイスとして説明したが、これに限られるものではなく、例えば空気中に浮遊するゴミやチリを振動加振して、ゴミやチリの間で発生する静電気によるすいつきでゴミやチリを大きくする電気集塵用音響信号発生用のデバイスとして適用することも可能である。
【0026】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように、両表面に一対の電極が設けられ、一方の表面側を突出変形することにより1ないしは複数の断面円弧状の振動面を形成した圧電膜と、この圧電膜の両表面に前記電極の上から重ね合わせた保持体とを備え、この保持体の少なくとも前記振動面と対向する部分を切り欠いて該振動面が露出するようにし、更に、振動面の軸方向に沿う基部両端部に平面部を連接して形成し、この平面部および振動面の両端縁部における両表面に前記保持体を重ね合わせたので、振動面以外の部分及び振動面の基部が両表面から確実に重合状態で固定保持されるので、圧電膜の振動面以外の部分の振動を防ぐことができ、また、振動面の形状の変形を確実に防ぐことができ、振動面から常に初期設計状態で設定した周波数の音響放射が可能となる放射デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1における例えば断面が円弧形状に突出するよう形成された振動面を複数個持つ圧電膜の外観斜視図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係る上記図1の平面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1に係る上記図2のA−A´における断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態1に係る上記図2のB−B´における断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態1に係る上記図2のA−A´断面の一部拡大図である。
【図6】 従来の振動面を形成した圧電フィルムの断面図である。
【符号の説明】
10 圧電膜、 11 プラス(+)電極、 12 マイナス(−)電極、 13 振動面、 14 保持材、 15 開口部、 16 平面部、 17 円弧部、 30 増幅器。
Claims (2)
- 両表面に一対の電極が設けられ、一方の表面側を突出変形することにより1ないしは複数の断面円弧状の振動面を形成した圧電膜と、この圧電膜の両表面に前記電極の上から重ね合わせた保持体とを備え、この保持体の少なくとも前記振動面と対向する部分を切り欠いて該振動面が露出するようにした放射デバイスであって、
前記振動面の軸方向に沿う基部両端部に平面部を連接して形成し、この平面部および前記振動面の両端縁部における両表面に前記保持体を重ね合わせたことを特徴とする放射デバイス。 - 両表面に一対の電極が設けられ、一方の表面側を突出変形することにより1ないしは複数の断面円弧状の振動面を形成した圧電膜と、この圧電膜の両表面に前記電極の上から重ね合わせた保持体とを備え、この保持体の少なくとも前記振動面と対向する部分を切り欠いて該振動面が露出するようにした放射デバイスであって、
前記振動面を複数並列して形成するとともに各振動面の軸方向に沿う基部両端部に平面部を連接して形成し、この平面部および前記振動面の両端縁部における両表面に前記保持体を重ね合わせたことを特徴とする放射デバイス。
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