JP3875823B2 - 観察用光学機器のアイピース着脱装置 - Google Patents

観察用光学機器のアイピース着脱装置 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、観察用光学機器のアイピース着脱装置に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
望遠鏡などの観察用光学機器では、アイピースを光学機器本体に取り付けるためにコレット式の着脱装置を用いたものがある。コレット式の着脱機構は一般に、アイピースから円筒状の取付スリーブを突出させ、この取付スリーブの外周面を、機器本体側に設けた保持環で内径方向に押圧して摩擦係合させることでアイピースを固定する。
【0003】
このようなコレット式の着脱装置では、例えば、ズームタイプのアイピースを装着した状態でズームリングを周方向に回転させようとすると、その回転トルクによって、保持環と取付スリーブの間の摩擦係合に抗してアイピース全体が回転してしまう可能性があった。
【0004】
【発明の目的】
本発明はしたがって、着脱が容易で確実にアイピースを固定することのできる観察用光学機器のアイピース着脱装置を得ることを目的とする。
【0005】
【発明の概要】
本発明は、対物光学系を有する観察用光学機器の本体に接眼光学系を有するアイピースを着脱させるアイピース着脱装置において、アイピースに設けた、接眼光学系の光軸を中心とする円筒状をなしその軸線方向に沿って本体内に挿入される取付スリーブ;本体内に設けられ、該本体内に挿入された取付スリーブの外周面と摩擦係合してアイピースを保持する縮径状態と、該取付スリーブに対する摩擦係合を解除してアイピースを抜き取り可能にさせる拡径状態とに変形可能な保持環;この保持環を拡縮変形させる、外部から操作可能な操作部材;円筒状の取付スリーブに、その先端部に開放させて外周面上に形成した少なくとも一つの回転規制溝;及び、本体内に径方向内方に突出させて設けた、回転規制溝に係合可能な少なくとも一つの回転規制ピン;を備え、取付スリーブの本体内への挿入によって上記回転規制ピンが回転規制溝に対して上記先端開放部から係合し、該本体に対する取付スリーブの周方向回転を規制することを特徴としている。このアイピース着脱装置によれば、本体への装着状態では回転トルクが作用してもアイピースは回転されることがなく、簡単な構成で着脱性を損なわずにアイピースを確実に固定できる。
【0008】
本体内の回転規制ピンを、取付スリーブ側の回転規制溝に係合可能なロック位置と、このロック位置から径方向外方に退避して回転規制溝とは係合しないアンロック位置とに進退可能にし、この回転規制ピンをロック位置へ移動付勢する付勢手段を有するように構成してもよい。このように構成することで、取付スリーブに回転規制溝を設けないタイプのアイピースであっても、回転規制ピンと干渉させずに装着できる。
【0009】
本発明はまた、対物光学系を有する観察用光学機器の本体に接眼光学系を有するアイピースを着脱させるアイピース着脱装置において、アイピースに設けた、接眼光学系の光軸を中心とする円筒状をなしその軸線方向に沿って本体内に挿入される取付スリーブ;本体内に設けられ、該本体内に挿入された取付スリーブの外周面と摩擦係合してアイピースを保持する縮径状態と、該取付スリーブに対する摩擦係合を解除してアイピースを抜き取り可能にさせる拡径状態とに変形可能な保持環;この保持環を拡縮変形させる、外部から操作可能な操作部材;本体内の保持環に周方向に位置を異ならせて形成され、保持環の拡縮変形を可能にさせる複数の割り溝;及び、アイピースにおける取付スリーブまたは該取付スリーブと一体の部材に設けた、割り溝に係合可能な少なくとも一つの回転規制ピン;
を備え、取付スリーブの本体内への挿入によって回転規制ピンが割り溝と係合し、該本体に対する取付スリーブの周方向回転を規制することを特徴としている。該構成では、本来、保持環を拡縮させるために設けた割り溝を本体側の回転規制溝として利用しているため、本体側に回転規制用の機構や部材を別途設ける必要がなく、構成をより簡略化できる。
【0010】
この場合、アイピース側の回転規制ピンは、保持環の割り溝に係合可能なロック位置と、該割り溝とは係合しないアンロック位置とに進退可能であり、この回転規制ピンをロック位置へ移動付勢する付勢手段を有していることが望ましい。また回転規制ピンは、本体に対する取付スリーブの挿脱方向と平行な方向に進退可能であることが好ましい。
【0011】
以上の各態様のアイピース着脱装置は特に、取付スリーブと一体の固定環と、該固定環に対して相対回転可能に支持され、外部から回転操作可能な回転操作環とをアイピースが有している場合に好適である。つまり、アイピースの装着状態では、回転操作環を操作して回転トルクが加わっても、固定環や取付スリーブは本体に対して回転されないので、良好な操作性が得られる。アイピースの回転操作環は例えば、その回転に応じてアイピース内に支持された可動変倍レンズ群を光軸方向に進退させるズーム操作環とすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用する観察用光学機器の一例としてのスポッティングスコープ(地上用望遠鏡)10の外観を示している。スポッティングスコープ10は、図示しない対物光学系を内蔵したスコープ本体11と、このスコープ本体11に対して着脱可能で接眼光学系を内蔵したアイピース12とから構成されている。スコープ本体11とアイピース12の間にはアイピース着脱装置13が設けられている。以下、このアイピース着脱装置13の具体的構成を図2以下を参照して説明する。
【0013】
図2ないし図5は本発明によるアイピース着脱装置の第一の実施形態を示している。この着脱装置は、ズームタイプのアイピース12Zと、固定焦点タイプのアイピース12Nのいずれもスコープ本体11に着脱させることが可能である。まず、スコープ本体11側の着脱機構について説明する。
【0014】
本体ハウジング20の後端付近の内方には固定筒21が設けられており、この固定筒21には保持環22がねじ結合されている。図2ないし図5には表れていないが、保持環22には光軸と平行な割り溝が複数形成されており(後述する別実施形態の図8を参照)、この複数の割り溝を設けたことにより、保持環22は径方向に拡縮することが可能となっている。保持環22に対し、進退ねじ23を介して操作環(操作部材)24が支持されている。操作環24は、回転させることによって、保持環22に対して進退ねじ23に従って光軸と平行な方向に移動される。
【0015】
操作環24は、光軸に対して傾斜する押圧面24aを、同様に傾斜された保持環22の被押圧面22aに係合させており、操作環24が回転に伴って保持環22に対して光軸方向に移動されると、被押圧面22aに対する押圧面24aの押圧状態が変化して保持環22に上述の拡縮動作を行わせることができる。具体的には、光軸前方に移動するように操作環24を締め込むと、押圧面24aが被押圧面22aを押圧して保持環22が縮径し、光軸後方に移動されるように操作環24を回転させると、被押圧面22aに対する押圧が解消されて保持環22が拡径する。保持環22は、このような拡縮変形が可能なように金属材料で形成されている。図に符号25で示す部材は、この金属製の保持環22の縮径時にアイピース側の取付スリーブを保護するための樹脂製の保護部材である。
【0016】
固定筒21の前端部付近には、回転規制ピン26が内径方向に向けて突設されている。回転規制ピン26は、固定筒21の周方向における所望の位置に一つ設けられている。詳細は後述するが、この回転規制ピン26によって、スコープ本体11に装着した状態のアイピース12Zの回転を規制することができる。
【0017】
続いて、スコープ本体11に着脱されるズームタイプのアイピース12Zの構成を説明する。アイピース12Zは、互いに相対的な回転は可能で光軸方向には相対移動しないように結合された、内側の固定環30と外側の回転環(回転操作環、ズーム操作環)31を有している。回転環31の一部は、アイピース12Zの外面に露出するズーム操作部31aとなっている。
【0018】
固定環30の内部には、対物側からそれぞれ第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、および第3レンズ群L3が支持されており、この各レンズ群L1〜L3がアイピース12Zにおける接眼光学系を構成している。第3レンズ群L3は、固定環30の後端付近に固定されており、光軸方向へは移動しない。第1レンズ群L1と第2レンズ群L2はそれぞれ光軸に沿って移動可能な可動変倍レンズ群であり、各レンズ群の支持枠からは、径方向外方へ向けてガイド突起32、33が突設されている。ガイド突起32とガイド突起33はそれぞれ、固定環30に形成した光軸と平行なガイド溝34に移動可能に嵌まっている。このガイド溝34に対するガイド突起32及び33の係合関係によって、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2は、固定環30に対しては光軸方向にのみ移動可能に直進案内される。なお、ガイド突起32及び33、ガイド溝34はそれぞれ周方向に位置を異ならせて複数が設けられているが、図では一つのみが示されている。
【0019】
各ガイド突起32、33からはさらに径方向外方に向けカムピン35、36が突設されており、各カムピン35、36はそれぞれ、回転環31の内周面に形成した有底の1群用カム溝37と2群用カム溝38に嵌まっている。1群用カム溝37と2群用カム溝38は互いに異なる軌跡のカム溝である。この1群用カム溝37と2群用カム溝38は、カムピン35、36に対応させてそれぞれ複数形成されているが、図には一つのみが示されている。
【0020】
以上の構成から、ズーム操作部31aを把持して回転環31を回転させると、1群用カム溝37と2群用カム溝38の軌跡に従って、固定環30に直進案内された第1レンズ群L1と第2レンズ群L2が互いに光軸方向へ異なる移動軌跡で進退する。この第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の光軸方向での相対移動によって、アイピース12Zにおける接眼光学系の焦点距離が変化し、アイピース12Zをスコープ本体11に装着した状態ではスポッティングスコープ10の観察倍率を変えることができる。なお、アイピース12Zにおけるズーム機構の構成は以上の構成に限定されるものではない。
【0021】
アイピース12Zの前面には、固定環30の一部として挿入規制面39が形成されている。挿入規制面39は光軸と直交する平面であり、この挿入規制面39から前方(スコープ本体11側)へ向けて、光軸を中心とする円筒状の取付スリーブ40が形成されている。取付スリーブ40は固定環30と一体の部材である。
【0022】
図2ないし4に示すように、取付スリーブ40の先端部には、外周面の一部を切り欠いて8つの回転規制溝41が形成されている。各回転規制溝41は取付スリーブ40の前端面に連通(開放)しており、スコープ本体11側に設けた上述の回転規制ピン26が、光軸前方から該回転規制溝41に係合することが可能となっている。光軸前方への取付スリーブ40の突出量は、アイピース12Zをスコープ本体11に装着したときに、この回転規制溝41の光軸方向位置が回転規制ピン26に対応するように設定されている。
【0023】
以上の構成のアイピース12Zは、次のようにスコープ本体11に対して着脱される。図3は、アイピース12Zをスコープ本体11から取り外した状態を示しており、装着するときにはアイピース12Zを同図の矢印A方向、すなわち取付スリーブ40の軸線方向に移動させる。するとスコープ本体11の保持環22及び固定筒21の内側に取付スリーブ40が挿入され、取付スリーブ40が一定量挿入されると、その先端部に形成した回転規制溝41に対して回転規制ピン26が係合する(図2)。回転規制ピン26と回転規制溝41が係合した時点で、アイピース12Z側の挿入規制面39は保持環22の後端部に当接してそれ以上の挿入が規制される。回転規制ピン26は本体ハウジング20に対する固定部材であり、回転規制溝41は固定環30と一体の取付スリーブ40に形成されているため、回転規制ピン26と回転規制溝41が係合すると、スコープ本体11に対してアイピース12Z全体(固定環30)が周方向に回転しないように規制される。なお、取付スリーブ40の挿入時に回転規制溝41と回転規制ピン26の周方向位置が対応していない場合には、回転規制ピン26が取付スリーブ40の前端面に当接して途中で挿入規制されるが、本実施形態では取付スリーブ40には周方向に等間隔で8つの回転規制溝41が形成されているため、該挿入規制状態においてアイピース12Zの回転位相を最大でも45度弱ずらせば、いずれかの回転規制溝41を回転規制ピン26と係合させることができる。
【0024】
回転規制ピン26と回転規制溝41が係合するまで取付スリーブ40が挿入されると、操作環24を締付方向に回転させる。上述したように、操作環24の締付方向の回転に応じて保持環22が縮径され、該保持環22(及び保護部材25)の内周面が取付スリーブ40の外周面に押し付けられて摩擦係合する。この摩擦係合により、アイピース12Zはスコープ本体11から脱落しないように保持され、装着が完了する。スコープ本体11からアイピース12Zを取り外すときには、締付方向とは逆方向に操作環24を回転させて保持環22による取付スリーブ40の保持を解除させた後、アイピース12Zを後方へ引き抜けばよい。
【0025】
本実施形態のアイピース着脱機構では、アイピース装着状態においてズーム操作を行っても、アイピース12Z全体が回転するおそれがない。すなわち、回転規制ピン26と回転規制溝41の係合によって取付スリーブ40の回転は規制されており、この取付スリーブ40は固定環30と一体に形成または固定されているので該固定環30も回転規制され、アイピース12Zではスコープ本体11に対して回転環31のみが回転可能となる。よってズーム操作のために回転環31を回転させても固定環30が回転せず、良好な操作感が得られる。なお、本実施形態では取付スリーブ40に8つの回転規制溝41を形成して、アイピースの装着性が損なわれないようにしているが、少なくとも一つの回転規制溝41があれば、回転規制ピン26と係合させて回転規制させることは可能である。
【0026】
このように、本実施形態のアイピース着脱機構によれば、簡単な構成で着脱性を損なわずに、装着状態のアイピース12Zの不要な回転を規制することができるが、さらに図5に示すように、天体望遠鏡などと共用される従来タイプのアイピース12Nを装着することも可能である。同図に示すアイピース12Nは非ズームタイプであり、固定の接眼レンズ(接眼光学系)FLを内部に有するアイピース本体45と、このアイピース本体45から前方へ突出された取付スリーブ46を有している。
【0027】
取付スリーブ46の軸方向長さは、上述したアイピース12Zの取付スリーブ40の軸方向長さよりも短く、挿入規制面47がスコープ本体11の後端部に当接してスコープ本体11に対するアイピース12Nの挿入が規制された状態では、取付スリーブ46の前端部はスコープ本体11内に設けた回転規制ピン26よりも光軸後方に位置している。別言すれば、アイピース12Nを最大に挿入しても回転規制ピン26と取付スリーブ46はオーバーラップしない位置関係にある。よって、スコープ本体11に回転規制ピン26が設けられていても、アイピース12Nの装着時には回転規制ピン26と取付スリーブ46は干渉せず、アイピース12Nの挿入が規制された状態で操作環24を締付方向に回転させれば保持環22が取付スリーブ46と摩擦係合し、アイピース12Nを支障なく装着することができる。アイピース12Nはズーム用の回転操作部を有しておらず、通常の使用状態では周方向の回転トルクが作用しないため、回転規制ピン26で回転規制せずとも保持環22と取付スリーブ46の摩擦係合によりアイピース12Nを十分に保持できる。アイピース12Nを取り外すときには、操作環24を締付方向とは逆方向に回転させて取付スリーブ46に対する摩擦係合を解除させてからアイピース12Nを後方へ抜き取ればよい。
【0028】
図6ないし図8は本発明によるアイピース着脱装置の第二の実施形態である。同図では第一実施形態と対応する部材に関しては同符号で示す。図8に示すように、保持環22には径方向への拡縮を可能にさせる8つの割り溝(回転規制溝)50が、周方向に等間隔で形成されている。各割り溝50は、その開口部をスコープ本体11の後端側に臨ませている。一方、アイピース12Z側には、取付スリーブ40の根本付近に、径方向外方へ突出する回転規制ピン51が一つ設けられている。この回転規制ピン51は、各割り溝50に対して進入可能なサイズに形成されている。
【0029】
図7に示すアイピースの取り外し状態からアイピース12Zを矢印A方向に移動させると、保持環22及び固定筒21の内側に取付スリーブ40が挿入される。取付スリーブ40が一定量挿入されると、その根本付近に形成した回転規制ピン51が、保持環22側の割り溝50に係合する(図6)。回転規制ピン51と割り溝50が係合した時点で、アイピース12Z側の挿入規制面39が保持環22の後端部に当接してそれ以上の挿入が規制されている。保持環22は固定筒21を介して本体ハウジング20に固定され、回転規制ピン51は取付スリーブ40及び固定環30に対して固定されているため、回転規制ピン51と割り溝50が係合すると、スコープ本体11に対してアイピース12Z(固定環30)が周方向に回転しないように規制される。なお、取付スリーブ40の挿入時に割り溝50と回転規制ピン51の周方向位置が合っていない場合には、回転規制ピン51が保持環22の後部に当接して途中で挿入規制されるが、本実施形態では保持環22には周方向に等間隔で8つの割り溝50が形成されているため、該挿入規制状態においてアイピース12Zの回転位相を最大でも45度弱ずらせば、回転規制ピン51をいずれかの割り溝50に進入させることができる。
【0030】
回転規制ピン51が割り溝50に係合するまで取付スリーブ40が挿入されると、操作環24を締付方向に回転させる。すると保持環22が縮径され、該保持環22及び25の内周面が取付スリーブ40の外周面に押し付けられて摩擦係合し、アイピース12Zの装着が完了する。割り溝50は8つ設けられているため、一つの割り溝50内に回転規制ピン51が係合していても、他の7つの割り溝50によって保持環22は十分に縮径することができる。スコープ本体11からアイピース12Zを取り外すときには、締付方向とは逆方向に操作環24を回転させて保持環22による取付スリーブ40の保持を解除させた後、アイピース12Zを後方へ引き抜けばよい。
【0031】
以上の第二の実施形態によっても、アイピース装着状態では割り溝50と回転規制ピン51が係合しているため、ズーム操作を行ってもアイピース12Z全体(固定環30)が回転するおそれがなく良好な操作感が得られる。特に、本実施形態では、本来、保持環22を拡縮させるために設けた割り溝50をスコープ本体11側の回転規制溝として利用しているため、スコープ本体11には回転規制用の特別な機構や部材を設ける必要がなく、構成をより簡略化できる。また、本実施形態において、図5のような、回転操作部を備えないアイピース12Nを装着する場合には、このアイピース12Nとスコープ本体11のいずれにも特別な回転規制用の部材が設けられていないので、従来のコレット式着脱装置と同様の操作でアイピース12Nを着脱させることができる。
【0032】
図9ないし図11は本発明によるアイピース着脱装置の第三の実施形態である。この実施形態は、スコープ本体11に設けた回転規制ピン55が径方向に進退可能である点が第一の実施形態と異なる。すなわち、回転規制ピン55は、固定筒21に径方向に貫通させて形成した進退孔56に、その軸部を移動可能に挿通させており、弾性板ばね57によって径方向内方に向けて付勢されている。回転規制ピン55は、ピンヘッド55aが固定筒21の外周面に係合する位置で径方向内方への移動が規制され、このときピンヘッド55aとは反対側の軸部の先端が固定筒21の内周面から突出する(図9、図10)。この突出状態で回転規制ピン55はアイピース12Zの回転を規制するため、回転規制ピン55の当該付勢位置をロック位置と呼ぶ。そして、回転規制ピン55は、弾性板ばね57を弾性変形させることによって固定筒21の内方へ突出しないアンロック位置(図11に実線で示す)へ移動することが可能である。
【0033】
図10に示すアイピースの取り外し状態では、回転規制ピン55は弾性板ばね57によってロック位置に保持されている。ここで同図の矢印A方向にアイピース12Zを移動させると、保持環22及び固定筒21の内側に取付スリーブ40が挿入され、取付スリーブ40が一定量挿入されるとその先端部に形成した回転規制溝41が、固定筒21から内径方向に突出された回転規制ピン55と係合する(図9)。回転規制溝41が回転規制ピン55とが係合した時点で、アイピース12Z側の挿入規制面39が保持環22の後端部に当接してそれ以上の挿入が規制されるので、操作環24を締付方向に回転させてアイピース12Zを固定する。この固定状態では回転規制ピン55と回転規制溝41が係合して固定環30を回転規制しているため、回転環31を回転させてズーミングを行っても、アイピース12Z全体が回転してしまうことがない。
【0034】
なお、取付スリーブ40の挿入時に回転規制溝41と回転規制ピン55の周方向位置が合っていない場合には、回転規制ピン55が取付スリーブ40の前端部に当接して途中で挿入規制されるが、上述のように取付スリーブ40には周方向に等間隔で8つの回転規制溝41が形成されているため、アイピース12Zの回転位相を若干ずらせば、回転規制ピン55をいずれかの回転規制溝41に進入させることができる。アイピース12Zを取り外すときには、操作環24を締付方向とは逆方向に回転させて取付スリーブ40に対する摩擦係合を解除させてからアイピース12Zを後方へ抜き取ればよい。アイピース12Zを取り外した後も回転規制ピン55はロック位置に保持される。
【0035】
図11は、本実施形態において非ズームタイプのアイピース12Nを装着した状態を示している。このアイピース12Nは、取付スリーブ58の軸方向長さがズームタイプのアイピース12Zの取付スリーブ40の軸方向長さとほぼ同じであり、取付スリーブ58前端部の外周面には、前方へ向かうほど内径側に傾斜するピン押圧面59が形成されている。このアイピース12Nをスコープ本体11に装着する際には、取付スリーブ58が保持環22及び固定筒21の内側に挿入されると、ロック位置に保持されている回転規制ピン55に対してピン押圧面59が接触する。ここで、回転規制ピン55は径方向に移動可能に支持されているため、取付スリーブ58の挿入動作に伴ってピン押圧面59との接触位置が変化すると、弾性板ばね57を弾性変形させながらアンロック方向へ移動される。図11に示す位置まで取付スリーブ58を挿入した後、操作環24を締付方向に回転させれば、アイピース12Nを固定することができる。
【0036】
アイピース12Nの装着に際して、回転規制ピン55は径方向外方のアンロック位置に移動されるため、装着が妨げられることはない。アイピース12Nを取り外すときには、操作環24を締付方向とは逆方向に回転させて取付スリーブ58に対する摩擦係合を解除させてからアイピース12Nを後方へ抜き取ればよい。取付スリーブ58が後方へ退避すれば、アンロック位置に押し込まれていた回転規制ピン55が、弾性板ばね57の力によってロック位置に復帰する。
【0037】
以上の第三の実施形態によっても、アイピース装着状態では回転規制溝41と回転規制ピン55が係合しているため、ズーム操作を行ってもアイピース12Z全体(固定環30)が回転するおそれがなく良好な操作感が得られる。そして本実施形態では、スコープ本体11側に設けた回転規制ピン55をロック位置とアンロック位置に進退可能にしたので、回転規制溝41を備えないタイプのアイピース12Nであっても取付スリーブの軸方向長さに関わらず装着することができ、より多くの種類のアイピースが取付可能となる。
【0038】
なお、本実施形態では、アイピース12Zの取付スリーブ40の前端部に、回転規制溝41に加えてピン押圧面59と同様の傾斜面を設けてもよい。該構成によれば、アイピース12Zの回転位相に関わらず、スコープ本体11に対して取付スリーブ40を最奥まで挿入させることができる。取付スリーブ40を最奥まで挿入したときに、回転規制ピン55といずれかの回転規制溝41の周方向位置が一致していれば、そのまま両者が係合しているのでアイピース12Zの回転が規制される。一方、取付スリーブ40を最奥まで挿入したときに、回転規制ピン55と回転規制溝41の周方向位置が一致していなければ、取付スリーブ40に形成したピン押圧面59と同様の傾斜面によって回転規制ピン55がアンロック位置に移動されている。ここでアイピース12Zを若干回転させれば、回転規制ピン55といずれかの回転規制溝41との周方向位置が一致して弾性板ばね57の付勢力で回転規制ピン55がロック位置に進出し、アイピース12Zの回転が規制される。
【0039】
図12及び図13は本発明によるアイピース着脱装置の第四の実施形態である。この実施形態は、ロック位置とアンロック位置に移動可能な回転規制ピン60をアイピース12Z側に設けた点が第三の実施形態と異なる。スコープ本体11側のアイピース着脱部の構成は、第二の実施形態と同じである。
【0040】
アイピース12Zを構成する固定環30には、光軸方向に位置を異ならせて前壁部61と内方フランジ62が設けられており、前壁部61を貫通して光軸方向へ進退孔63が形成されている。回転規制ピン60は、この進退孔63に軸部を挿通することで光軸方向に移動可能に支持されており、前壁部61と内方フランジ62の間にピンヘッド60aを位置させている。ピンヘッド60aが前壁部61に係合する状態が回転規制ピン60のロック位置であり、該ロック位置では回転規制ピン60の軸部の先端が挿入規制面39から前方に突出している(図13参照)。ピンヘッド60aと内方フランジ62の間には圧縮ばね64が配されており、回転規制ピン60はロック位置へ付勢されている。回転規制ピン60は、この圧縮ばね64を縮ませることにより、図に鎖線で示すアンロック位置に移動可能である。アンロック位置では、回転規制ピン60の軸部は前壁部61内に収納され、挿入規制面39からは突出しない。
【0041】
図13に示すアイピースの取り外し状態では、回転規制ピン60は圧縮ばね64によってロック位置に保持されている。ここで同図の矢印A方向にアイピース12Zを移動させると、保持環22及び固定筒21の内側に取付スリーブ40が挿入され、取付スリーブ40が一定量挿入されると、挿入規制面39から突出された回転規制ピン60の軸部が、保持環22側の割り溝50内に進入して係合する(図12)。回転規制ピン60と割り溝50が係合した時点で、アイピース12Z側の挿入規制面39が保持環22の後端部に当接してそれ以上の挿入が規制されるので、操作環24を締付方向に回転させてアイピース12Zを固定する。この固定状態では、回転規制ピン60と割り溝50が係合して固定環30を回転規制しているため、回転環31を回転させてズーミングを行っても、アイピース12Z全体が回転してしまうことがない。アイピース12Zを取り外すときには、操作環24を締付方向とは逆方向に回転させて取付スリーブ40に対する摩擦係合を解除させてからアイピース12Zを後方へ抜き取ればよい。アイピース12Zを取り外した後も回転規制ピン55はロック位置に保持される。
【0042】
本実施形態では、アイピース12Zの進退方向に回転規制ピン60が移動可能であるため、取付スリーブ40の挿入時に割り溝50と回転規制ピン60の周方向位置が合っていない場合には、回転規制ピン60の先端部が保持環22の後部に当接すると回転規制ピン60はアンロック方向に移動し、取付スリーブ40を最奥まで挿入させることができる。ここでアイピース12Zを若干回転させれば、回転規制ピン60といずれかの割り溝50との周方向位置が一致した時点で圧縮ばね64の付勢力で回転規制ピン60がロック位置に進出し、アイピース12Zの回転が規制される。
【0043】
以上の第四の実施形態によっても、アイピース装着状態では割り溝50と回転規制ピン60が係合しているため、ズーム操作を行ってもアイピース12Z全体(固定環30)が回転するおそれがなく良好な操作感が得られる。第二の実施形態と同様に、本実施形態は保持環22を拡縮させるために設けた割り溝50をスコープ本体11側の回転規制溝として利用しているため、スコープ本体11には回転規制用の特別な機構や部材を設ける必要がなく、構成をより簡略化できる。また、本実施形態において、図5及び図11のようなアイピース12Nを装着する場合には、このアイピース12Nとスコープ本体11のいずれにも特別な回転規制用の部材が設けられていないので、従来のコレット式着脱装置と同様の操作でアイピース12Nを着脱させることができる。
【0044】
なお、アイピース12Z側にロック位置とアンロック位置に進退可能な回転規制ピンを設けるという観点からは、第二の実施形態における回転規制ピン55を径方向に移動可能とすることも理論的には可能である。しかし、保持環22よりも内側に位置する取付スリーブ40において回転規制ピン55を径方向に移動させると、該回転規制ピン55が光路内に進出して観察用光束に悪影響を及す可能性を考慮しなくてはならず、これを避けるために、取付スリーブ40及びその周囲を大径化する必要が生じる。これに対し、本実施形態のように回転規制ピン60を光軸と平行な方向に進退移動させる構成では、観察用光束に悪影響が及びにくく、径の大型化を最小限に抑えることができる。
【0045】
以上の各実施形態の説明から明らかなように、本発明のアイピース着脱装置では、円筒状の取付スリーブに対して径方向に拡縮可能な保持環を摩擦係合させるいわゆるコレット式の着脱機構に加えて、アイピース(12Z)の装着に応じて互いに係合する回転規制機構を該アイピースとスコープ本体とに設けたので、ズーム操作のような回転トルクが作用してもアイピースは回転されることがなく、操作性がよい。また、いずれの実施形態においても、回転規制機構を備えない従来タイプのアイピース(12N)が取付可能であり、汎用性が高い。
【0046】
但し、本発明は図示した実施形態に限定されない。例えば、本発明の着脱機構における回転規制機構は、以上の各実施形態のように回転操作部を有するアイピース(12Z)の装着時に機能することが望ましいが、回転操作部を備えないタイプのアイピース(12N)を装着状態で回転規制させてもよい。積極的な回転操作を行わないアイピースであっても、使用中に不用意に回転しない方が使用感が良い。また、アイピースに設けられた回転操作部は、ズーム操作用の回転環以外のもの、例えば視度調整用のリングなどであってもよい。また、回転規制機構を構成する回転規制ピンや回転規制溝(割り溝)の数や周方向の位置は任意である。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、着脱が容易で確実にアイピースを固定することが可能な観察用光学機器のアイピース着脱装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した観察用光学機器の一例であるスポッティングスコープを側方から見た外観図である。
【図2】本発明によるアイピース着脱装置の第一の実施形態を示す、ズームタイプのアイピース装着状態の上半側断面図である。
【図3】図2の装着状態からアイピースを取り外した状態を示す上半断面図である。
【図4】図2及び図3のアイピースを正面から見た図である。
【図5】第一の実施形態のアイピース着脱装置で、非ズームタイプのアイピースを装着した状態の上半断面図である。
【図6】本発明によるアイピース着脱装置の第二の実施形態を示す、ズームタイプのアイピース装着状態の上半側断面図である。
【図7】図6の装着状態からアイピースを取り外した状態を示す上半断面図である。
【図8】図6の断面線VIII-VIIIに沿う断面図である。
【図9】本発明によるアイピース着脱装置の第三の実施形態を示す、ズームタイプのアイピース装着状態の上半側断面図である。
【図10】図9の装着状態からアイピースを取り外した状態を示す上半断面図である。
【図11】第三の実施形態のアイピース着脱装置で、非ズームタイプのアイピースを装着した状態の上半断面図である。
【図12】本発明によるアイピース着脱装置の第四の実施形態を示す、ズームタイプのアイピース装着状態の上半側断面図である。
【図13】図12の装着状態からアイピースを取り外した状態を示す上半断面図である。
【符号の説明】
10 スポッティングスコープ(地上用望遠鏡、観察用光学機器)
11 スコープ本体
12 12N 12Z アイピース
13 アイピース着脱装置
20 本体ハウジング
21 固定筒
22 保持環
24 操作環(操作部材)
26 51 55 60 回転規制ピン
30 固定環
31 回転環(回転操作環、ズーム操作環)
39 47 挿入規制面
40 46 58 取付スリーブ
41 回転規制溝
50 割り溝(回転規制溝)
56 63 進退孔
57 弾性板ばね(付勢手段)
59 ピン押圧面
61 前壁部
62 内方フランジ
64 圧縮ばね(付勢手段)

Claims (7)

  1. 対物光学系を有する観察用光学機器の本体に接眼光学系を有するアイピースを着脱させるアイピース着脱装置において、
    アイピースに設けた、接眼光学系の光軸を中心とする円筒状をなしその軸線方向に沿って上記本体内に挿入される取付スリーブ;
    本体内に設けられ、該本体内に挿入された取付スリーブの外周面と摩擦係合してアイピースを保持する縮径状態と、該取付スリーブに対する摩擦係合を解除してアイピースを抜き取り可能にさせる拡径状態とに変形可能な保持環;
    この保持環を拡縮変形させる、外部から操作可能な操作部材;
    上記円筒状の取付スリーブに、その先端部に開放させて外周面上に形成した少なくとも一つの回転規制溝;及び
    上記本体内に径方向内方に突出させて設けた、上記回転規制溝に係合可能な少なくとも一つの回転規制ピン;
    を備え、
    上記取付スリーブの本体内への挿入によって上記回転規制ピンが回転規制溝に対して上記先端開放部から係合し、該本体に対する取付スリーブの周方向回転を規制することを特徴とする観察用光学機器のアイピース着脱装置。
  2. 請求項1記載のアイピース着脱装置において、
    上記本体内の回転規制ピンは、上記取付スリーブ側の回転規制溝に係合可能なロック位置と、このロック位置から径方向外方に退避して回転規制溝とは係合しないアンロック位置とに進退可能であり、
    この回転規制ピンをロック位置へ移動付勢する付勢手段を有している観察用光学機器のアイピース着脱装置。
  3. 対物光学系を有する観察用光学機器の本体に接眼光学系を有するアイピースを着脱させるアイピース着脱装置において、
    アイピースに設けた、接眼光学系の光軸を中心とする円筒状をなしその軸線方向に沿って上記本体内に挿入される取付スリーブ;
    本体内に設けられ、該本体内に挿入された取付スリーブの外周面と摩擦係合してアイピースを保持する縮径状態と、該取付スリーブに対する摩擦係合を解除してアイピースを抜き取り可能にさせる拡径状態とに変形可能な保持環;
    この保持環を拡縮変形させる、外部から操作可能な操作部材;
    上記本体内の保持環に周方向に位置を異ならせて形成され、保持環の上記拡縮変形を可能にさせる複数の割り溝;及び
    上記アイピースにおける取付スリーブまたは該取付スリーブと一体の部材に設けた、上記割り溝に係合可能な少なくとも一つの回転規制ピン;
    を備え、
    上記取付スリーブの本体内への挿入によって上記回転規制ピンが割り溝と係合し、該本体に対する取付スリーブの周方向回転を規制することを特徴とする観察用光学機器のアイピース着脱装置。
  4. 請求項記載のアイピース着脱装置において、
    上記アイピース側の回転規制ピンは、上記保持環の割り溝に係合可能なロック位置と、該割り溝とは係合しないアンロック位置とに進退可能であり、
    この回転規制ピンをロック位置へ移動付勢する付勢手段を有している観察用光学機器のアイピース着脱装置。
  5. 請求項記載のアイピース着脱装置において、上記回転規制ピンは、本体に対する取付スリーブの挿脱方向と平行な方向に進退可能である観察用光学機器のアイピース着脱装置。
  6. 請求項1からいずれか1項記載のアイピース着脱装置において、上記アイピースは、上記取付スリーブと一体の固定環と、該固定環に対して相対回転可能に支持され、外部から回転操作可能な回転操作環とを有している観察用光学機器のアイピース着脱装置。
  7. 請求項記載のアイピース着脱装置において、上記回転操作環は、その回転に応じてアイピース内に支持された可動変倍レンズ群を光軸方向に進退させるズーム操作環である観察用光学機器のアイピース着脱装置。
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