JP3875161B2 - 金属探知機用センサーと金属探知機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強磁性体の金属物を検知する金属探知機用センサーと金属探知機に関する。更に詳しくは、アルミニウム蒸着、又はアルミニウム箔等で作られた包装容器、袋内のミリサイズの微少な金属物でも良好な感度で探知できる金属探知機用センサーと金属探知機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からは、金属物を探知または検知するセンサーは多数の方式のものが提案されている。鉄心に銅線を巻いた構造のセンサーコイルにより磁界を発生させ、金属物がこの磁界を通過するときの磁界への影響を検知して金属物を検知するセンサーコイルはよく利用されている。詳しくは、磁界を発生させるための磁界発生コイルと、この磁界を受信するための磁界受信コイルから構成され、この磁界発生コイルと磁界受信コイルを対向にするように配置し、その間に被検出物を通過させて金属異物を検知するものである。
【0003】
磁界受信コイルは、金属物中に流れる渦電流による磁界を受信する。受信コイルにとっては、大きな磁界が受信しやすい。図7は、受信コイルを構成する鉄心の磁気履歴曲線(磁化の強さ−磁化力)である(残留磁束密度対磁界)B−H特性図を示す。前述した磁界発生コイルによる異物の検知には、この磁気履歴曲線の線形領域P2または緩和領域P3を使うのが一般的である。
【0004】
強い磁界により、大きな磁束が発生させられ、被検出物に含まれる金属物中に大きな渦電流が流れる。よって、この渦電流により大きな磁界を発生させて磁界受信コイルがこれを受信する。前述の磁界発生コイルは、被検出物に対して1MHz〜333KHz程度の周波数帯の電磁波を送信して、被検出物の反対側に設置されている磁界受信コイルがこれを検出して、金属異物を特定している。
【0005】
電磁波は、被検出物を透過する成分、反射する成分、吸収される成分からなる。被検出物が小さくなるとできるだけ強力な電磁波を発生させて、検出感度を上げている。そのためには、電磁波の周波数を上げることがあり、周波数が高くなるにつれて反射成分の割合が大きくなり、逆に受信感度が落ちることがある。
【0006】
食料品・医薬品等は製造工程でパッケージ処理されて出荷されることが多く、パッケージは、紙、アルミニウム等をはじめとする様々な素材で作られている。しかし、従来のセンサーコイルを用いて、アルミニウム蒸着、又は箔等の導電性材料で作られた包装袋、又は容器内の食品中の金属異物を検知することは難しかった。電磁波の強度(電力、周波数)が強くなると、容器には渦電流が流れて容器内の金属異物を検知しにくくなるためである。
【0007】
このために、包装袋、容器内の金属異物の検知にはX線装置を用いることがある。X線装置でX線を被検出物に照射し、その反対側に投影のためのフィルム又は検出器をおいて、被検出物を透過したX線を受信している。受信した影像を処理して金属異物を判定している。即ち、強いX線を導電性材料で作られた包装袋を透過させてこれを受信し、受信したX線による画像データを画像処理して金属異物を検知・特定している。
【0008】
この方法は、検出精度が悪い(例えば、直径6mm、8mm程度のボルト、ナットが検知できる程度である)。そして、このX線装置を操作しているオペレーターが被爆する恐れがある。また、X線装置が大型になり、維持費がかかるなど多くの欠点がある。また、食品などが入っている包装袋等の端の部分と中心部分との厚みが違っており、X線をその厚さによって吸収したり、透過性が違ったりし、包装袋の端の部分と中心部分とに同じ強度のX線を照射しても透過したX線の強度が違うため検出精度が悪い。
【0009】
また、センサーコイルを用いて、金属の種類を特定することが可能である。特公平3−18143号公報に開示されているセンサ装置では、共振回路を用いて、センサーコイルの近辺を通過する金属物を特定できる。共振回路から出力される電圧が、銅、アルミ、鉄などの金属によって変化するため金属物の判定ができる。また、特開2000−329858号公報には、共振回路からなる磁気センサーをもって金属物の検出を行っている。
【0010】
従来のセンサーコイルは、センサーの検出表面から距離が離れるにしたがって、検出感度が著しく低下する(距離の二乗に反比例して低下する)欠点を持っている。発生の磁界が距離の二乗に反比例して低下するからである。食料品・医薬品等の検知対象物の製造工程等において、検知対象物の中に金属破片等をはじめとする異物が混入されることがある。検知対象物の安全性を保証するためには、これらの金属異物を検知し、金属異物が混入した検知対象物を排除する必要があり、よって、金属異物を検知することが不可欠である。
【0011】
耐食性に優れているステンレス製品は、主に厨房器具、建材、家電用機器、自動車用部品、酪農・醸造タンク、化学機器、低温装置などの分野に幅広く利用されている。特に、食品容器、食品製造ライン、食品製造機械等をはじめとする食品関係のあらゆる機械及び容器がステンレス製のものが多い。ステンレスは、ステンレス鋼の通称で、耐食性にすぐれた合金鋼である。ステンレスは、オーステナイト(austenite)系ステンレス、マルテンサイト(martensite)系ステンレス、フェライト(ferrite)系ステンレスと大別される。
【0012】
検知対象物の製造工程で、製造機械、及び容器等の構成材料であるステンレス鋼の破片等の金属異物が、食品等の検知対象物に混入することがあり、これらの金属異物を検知し、排除することが重要である。本出願人は、金属物をセンサーコイルで検知するときに、金属物を磁石ブースター用いて磁化させてセンサーコイルで検知するものを提案した(特願2001−289928号、特願2001−289924号)がある。この提案では、磁石ブースターは、強い磁界を発生し、磁性体の被検出物を磁化するためのもので、永久磁石などを有する構造になっている。磁石ブースターの近辺を通過する被検出物が磁化されることよってセンサーコイルで検知するときに検知感度が向上する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、提案したセンサーコイルを用いた金属異物検知では、金属異物である金属破片が数ミリ程度に小さくなると検知感度が悪くなり、効率よく検知できない。また、アルミニウム等の導電性材料で作られた包装袋、容器内の金属異物の検知が困難である。導電性材料で作られた包装袋、容器による信号が金属異物による信号と比べ大きくなり区別できないためである。
【0014】
本発明は、以上のような技術背景で発明されたものであり、次のような目的を達成するものである。
本発明の目的は、金属異物を探知する高感度のセンサーコイルを用いた金属探知機用センサーと金属探知機を提供することにある。
本発明の他の目的は、導電性材料で作られた包装袋、容器中の金属異物を磁界により検知する金属探知機用センサーと金属探知機を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、アルミニウム等の導電性材料で作られた包装袋、容器中の小サイズの金属異物を高感度で検知できる金属探知機用センサーと金属探知機を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、上記小サイズの金属異物を高感度で検出するためには、微少磁界を有効に検出できる検知回路又は信号処理回路を備えた金属探知機用センサーと金属探知機を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために次のような手段を採る。
本発明の金属探知機用センサーは、被検出物中の金属物を探知するための金属探知機用センサーであって、交番磁界を発生させるために電流を流して磁界を発生させるための導線のコイルが金属のコアに巻かれたセンサーコイルと、前記センサーコイルにより発生される磁界の及ぶ範囲で、かつ、前記コアに接触して配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化するための磁石とからなる。
【0016】
前記磁石は、複数個から構成されたものであっても良い。前記磁石は永久石でも良い。また、前記磁石は、静磁場による磁力線を発生させる直流電流による電磁石でも良い。前記磁石の配置は、可能な限り被検出物に近い位置に配置した方が精度の良いセンシングが可能となる。
【0017】
本発明の金属探知機は、被検出物を搬送する搬送路を有する搬送手段と、前記搬送路の途中に設けられ、電流を流して磁界を発生させるための導線のコイルが金属のコアに巻かれたセンサーコイルとからなる金属探知機において、前記センサーコイルにより発生される磁界の及ぶ範囲に配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化する磁石とからなり、前記電流は交番磁界を発生させるための交流電流であり、前記磁石は前記コアに接触して配置されている磁石であることを特徴とする。
【0018】
前記磁石は、複数個から構成されたものであっても良い。前記磁石は直流電流による電磁石でも良い。前記磁石は、永久磁石でも良い。更に、前記磁石は三角、四角等の多角形又は環状の形状を構成する複数の磁石要素からなり、その中央にセンサーコイルが位置するものであっても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属物の探知原理を説明する。コイル(検出コイル)に電流を流すと、その周辺に磁場が発生する。コイルに流れる電流が交流電流の場合は、交流磁場が発生し、この交流磁場に置かれている透磁率の大きい金属物の影響でこの交流磁場が変化しコイルに流れる電流が変化する。コイルを含む検知回路が、通常の状態であるときの所定の周波数が、金属異物の影響があると変化する。この変化を電圧又は電流の信号として出力する。
【0020】
また、本実施の形態では、検出コイルに流れる電流を微少にしている。つまり、図7に図示したように、検出コイルを構成する鉄心のB−H特性のP1の領域である。このP1領域は、非線形であり、磁界H、磁束密度Bがともに微少である。この領域を使うことによって、被検出物中の金属異物が小さいときでも、良好な感度の検出が可能である。
【0021】
一定の温度で、被検出物がコイル近辺を一定の通過速度で通過する場合を考える。このとき、検出コイルの電流が変化する要因としては、被検出物の渦電流、透磁率、誘電率、そして、検出コイルの近辺を通過する速度などが代表的であり、その中で金属異物の透磁率が一番の影響を与えていると推定される。金属異物が高い透磁率の材料でできている場合、上記のような微少電流を検出コイルに供給しているときは、金属異物を構成する材料の透磁率を無視できない程度になるためである。
【0022】
表1に示すように、金属物でもその種類によって、比透磁率が大きくことなる。鉄、ステンレス、ニッケル、コバルトなどの金属の比透磁率は、数百から数万になっている。また、アルミニウム等の比透磁率の小さい金属に渦電流が発生しない程度の微弱な磁界を与えると、アルミニウムなどに包まれている比透磁率の大きい金属の反応が大きく、元の磁界に影響を与える程度になる。
【0023】
【表1】
【0024】
本実施の形態では、検出コイルに流れる電流変化を計測して金属物を検知しているが、その代わりに検出コイルに印加されている電圧又はインピーダンスを測定して金属物を検知することが可能である。以下は、検出コイルに流れる電流変化を検出信号とする発明の実施の形態を説明する。
【0025】
[発明の実施の形態]
図1は、金属探知機1の概要を図示している。金属探知機1は、被検出物中の金属物、特に食品を包む容器であるアルミニウム包装袋内の食品に混入した金属異物を検知、又は探知して通知するためのものである。金属探知機1は、ベルトコンベヤ2、駆動用モータ3、センサー格納部4、制御部5等から構成される。ベルトコンベヤ2は、脚つきのフレームに搭載されたベルトコンベアであり、被検出物8を搬送するためのものである。
【0026】
ベルトコンベヤ2は、その片方に設けられた駆動用モータ3によってエンドレスのベルト9を回転駆動し、このベルト9の上に被検出物8を載せて搬送する。被検出物8が搬送される搬送路中、ベルト9の長さ方向中央あたりにセンサー格納部4が配置されている。センサー格納部4内には、被検出物中の金属異物を検知するための第1センサーコイル10、第2センサーコイル11、光センサー7等が内蔵されている。
【0027】
センサー格納部4からの出力信号は、制御部5に送られる。第1センサーコイル10と第2センサーコイル11は同一構造のものである(詳細な説明は後述する)。制御部5は、センサー格納部4からの信号を解析して、被検出物中に金属異物があるか否かの判定を行い、その旨を通知(警告音、表示等)するものである。図1に示すように、制御部5がセンサー格納部4の上に設置されている。
【0028】
光センサー7は、第1センサーコイル10の手前側(被検出物8の搬送方向で見ると搬送方向の手前側)に設置されており、被検出物8が搬送されて第1センサーコイル10に入るタイミングを検知し、この検知を制御部5へ送信するためのものである。駆動用モータ3を起動させてベルトコンベヤ2のベルト9を回転駆動させる。そのとき、被検出物8は、ベルト9の一方である搭載側に載せられ、他方の方へ搬送される。
【0029】
そして、光センサー7が被検出物8を検出し、第1センサーコイル10へ被検出物8が入るタイミングを制御部5に通知する。制御部5は、光センサー7からの通知を受けて、被検出物8が第1センサーコイル10と第2センサーコイル11を通過する際の各センサーコイルの信号を解析し、被検出物8に金属異物が含まれているかを特定する。金属異物が含まれている場合は、その旨の出力信号を出力する。この出力信号は金属探知機1に設けられている、又は接続されている電動アーム等の他の装置へ送られ、金属異物を含む被検出物を取り除くなどの必要な処理が行われる。
【0030】
制御部5は、必ずしもセンサー格納部4の上に設置される必要はなく、センサー格納部4からの信号を受け取り、処理できる環境であればどこでも設置してもかまわない。また、駆動されているベルト9の速度を把握するためには、駆動用モータ3の回転速度等の信号を制御部5が受信できる必要がある。光センサー7は被検出物が第1センサーコイル10に入るときのタイミングを検出できるものであれば、どんな形状・方式のものであってもかまわない。
【0031】
図2には、センサー格納部4の概要を図示している。センサー格納部4は、第1センサーコイル10と第2センサーコイル11から構成されている。第1センサーコイル10は、ベルト9を挟んで上下に配置されたセンサーコイル10aとセンサーコイル10bから構成され、同様に第2センサーコイル11は、センサーコイル11aとセンサーコイル11bから構成されている。
【0032】
第1センサーコイル10と第2センサーコイル11は、ベルト9に沿って距離L離れて設置されている。図3(a)はセンサーコイル10aの正面図、図3(b)は図3(a)の平面図、及び図3(c)は図3(a)のA−A線の切断断面図である。各センサーコイル10a、10b、11a、及び11bは、図3(a)に示すように細長い棒状の形をした基本的に同一のものであり、ベルト9の搬送方向に直角するようにベルト9の面と平行に設けられている。
【0033】
第1センサーコイル10の手前に設置されている光センサー7は、被検出物8が第1センサーコイル10に入力されるタイミングを特定するのに必要である。第2センサーコイル11に被検出物が入力されるタイミングは、第1センサーコイル10に入力されたタイム、距離L、そして、ベルト9の搬送速度をもって計算できる。ベルト9の搬送速度は、駆動用モータ3の回転速度から計算できる。この計算は、周知の技術でかつ本発明の要旨ではないのでその説明は略する
センサーコイル10a、11aは、ベルト9上を流れている被検出物8の上の部分を検出するためのものであり、被検出物8が通過するためにベルト9の上に一定の隙間を置いて設置されている。センサーコイル10b、11bは、被検出物8の下部を検出するためのものであり、ベルト9の下に設置されている。
【0034】
図3には、センサーコイルの構造を図示している。センサーコイル10a,10b,11a及び11bは、実質的に同一構造であるので、センサーコイル10aだけを例示して説明する。センサーコイル10aは、細長い棒状の形状をし、断面構造がE形である導電性材料の鉄心12の溝部に沿ってコイル13を巻き付けた構成である。鉄心12の鉄心表面の中央に永久磁石14が組み込んで取りつけられている。
【0035】
永久磁石14は、複数の磁石要素から構成されており、その磁石要素は鉄心12の表面に磁極を交互に向けて配置されている。つまり、1つの磁石要素が鉄心12へN極を向けて配置されると、それと隣り合う磁石要素はS極を鉄心12へ向けて配置されている。センサーコイル10aに数KHzの交流電流を流すと、センサーコイル10aに交番磁界が発生する。また、同じに永久磁石14による静磁界も同時に存在する。よって、図4に図示したように、互いに独立した2つの種類の磁界がベクトル空間内に存在し、各々の持つ磁界の特徴を生かすことが出来る。永久磁石14は鉄心12と一体化しているためコイルとは相対速度を持たず、振動などの影響はない。
【0036】
センサーコイル10aの近傍に微小な金属破片が接近したとき、例えばオーステナイト系のステンレス(SUS304など)が、破断、潰れ、曲がり、欠けなどの塑性変形により、マルテンサイト誘起変態を起こして弱い磁性をもった部分が静磁界の働きにより磁化し磁極を生じさせる。この磁極の変化がセンサーコイル10aの交番磁界へ影響を与え、これを検知回路で検知する。
【0037】
特に、センサーコイル10aの極近傍でこの効果が大きく現れるので、センサーコイル10aで微小破片を確実に検出することが可能である。強磁性体、例えば鉄、ニッケル、コバルトの混入物、及びこれらの合金、マルテンサイト系ステンレス、についても同様で、検出感度が従来より著しく向上する。永久磁石14にネオジム磁石等を用いることで、永久磁石の磁界が微小金属片に影響を及ぼす範囲を大きく拡大でき、センサー検出距離を大幅に伸ばすことが可能となる。
【0038】
永久磁石14の静磁界の働きにより金属物を磁化し磁極を生じさせて、この磁極の変化をセンサーコイル10aの交番磁界へ影響を与え、これを検知回路で検知する。従って、永久磁石14の配置は、センサーコイル10aに交流電流を流したときに発生する交番磁界の及ぶ範囲に配置する。鉄心12は珪素鋼板やアモルファスなどの板を積層して構成される。あるいは、フェライトコア、永久磁石などを使っても良い。また、永久磁石14はネオジム磁石、ネオジム磁石からできている複数の磁石要素から構成されても良い。
【0039】
図5には、制御部5の概要を図示している。制御部5は、発振回路21、ブリッジ回路22、アルミ信号消去回路23、増幅/位相変換回路24、増幅/位相反転回路25、波形処理部26、デジタルコンピュータ処理部27、信号出力部28などから構成されている。発振回路21は、制御部5、第1センサーコイル10、及び第2センサーコイル11への交流電流を供給するための回路である。これは、トランスを介して交流電流の供給を行う。トランスを用いることによって、電源回路と、センサーコイル10,11、ブリッジ回路22を含む測定部分が独立の回路と見なせる利点がある。ブリッジ回路22は、第1センサーコイル10、及び第2センサーコイル11からの信号を受信する回路である。
【0040】
ブリッジ回路22からの信号に含まれる導電材料である包装体からの信号をアルミ信号消去回路23で消去する。このとき、増幅/位相反転回路25の信号を用いて次のように行われる。増幅/位相反転回路25は、発振回路21の電流から取り出して増幅し、位相反転させる。アルミ信号消去回路23は、ブリッジ回路22からの信号(検出電流)と増幅/位相反転回路25からの位相反転電流との和をとり、交流電源の信号(元の電流)を消去する。
【0041】
そして、一定のしきい値以上の信号だけを取り出して、雑音信号と分離する。アルミ信号消去回路23から出力される信号を増幅/位相変換回路24で増幅して、位相変換調整処理を行って波形処理部26へ出力する。波形処理部26では、入力された信号の波形整形をし、ディジタル信号に変換して、受信感度の調整を行って、デジタルコンピュータ処理部27へ出力する。アルミ信号消去回路23で設けているしきい値処理は、波形処理部26の中で行っても良い。このときは、ディジタル信号に変換された信号のしきい値処理となる。
【0042】
デジタルコンピュータ処理部27は、メモリ回路、演算回路、振幅比較/信号抽出回路、ベルト速度タイミング回路等から構成されている。デジタルコンピュータ処理部27は、駆動用モータ3からモータの回転速度の情報を受取り、ベルト9の流れる速度を計算する。また、光センサー7から被検出物の信号を受け取り、被検出物がセンサーコイル10,11を通過する情報を得る。
【0043】
よって、デジタルコンピュータ処理部27は、波形処理部26からのディジタル信号を受信し、上記のベルト速度、被検出物通過信号などと合わせて、被検出物中に含まれる金属異物を検知する。デジタルコンピュータ処理部27では、金属異物が検知されたと判断された場合は、信号出力部28に金属異物の信号を出力する。
【0044】
図6は、デジタルコンピュータ処理部27が金属異物を検知するときのフローチャートである。デジタルコンピュータ処理部27では、常に金属異物の判定が光センサー7のセンシング信号により、判定が行われる。デジタルコンピュータ処理部27は、一定時間の間待機し経過したら(S1)、光センサー7からの信号があるかを否かを確認する(S2)。被検出物が、光センサー7を通過する際に(図2参照)、被検出物が通過中の信号を制御部5へ出力する。この信号をデジタルコンピュータ処理部27が受信する。
【0045】
被検出物が通過中の判定が出ると(S2、Yes)、駆動用モータ3の回転速度を受信する(S3)。この回転速度を用いて、ベルト9の搬送速度を計算する(S4)。その後、波形処理部26からの第1センサーコイル10のディジタル信号を受信し(S5)、メモリ領域に格納する(S6)。そして、同様に、第2センサーコイル11のディジタル信号を受信し(S7)、メモリ領域に格納する(S8)。
【0046】
メモリ領域に格納されている、第1センサーコイル10と第2センサーコイル11のディジタル信号を比較計算し(S9)、被検出物中に金属異物があるか否かを判定する(S10)。判定の結果、金属異物が無いと判断された場合は(S10,No)、所定時間待機する(S1)。判定の結果、金属異物ありと判断された場合は(S10,Yes)は、その旨の信号を出力する(S11)。よって、一連の金属異物の判定がなされる。
【0047】
(金属探知機用センサーの他の実施の形態)
図8(a),(b)及び(c)には、金属探知機用センサーの他の実施の形態を図示している。図8(a)には、円形のコイル13、図8(b)には四角形のコイル13、図8(c)には長方形のコイル13の平面図、及び断面図をそれぞれ図示している。これらの実施の形態では、コイル13の略中心位置に永久磁石14を配置した構造である。
【0048】
E型の鉄心12にコイル13を巻いて、このコイル13の中心でかつ鉄心12の表面に永久磁石14を組み込まれている。鉄心12は珪素鋼板やアモルファスなどの板を積層して用いるか、フェライトコアなどを使っても良い。これらのコイル13の働き、そして、金属異物の探知回路の働きは実施の形態1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0049】
また、第1センサーコイル10、及び第2センサーコイル11は、鉄心12に導線コイルを巻いてその周りに永久磁石14を設けた構造であっても良い。この場合は、環状磁石は複数の磁石要素から構成され、各磁石要素は実施の形態に示すように、被検出物が永久磁石から生じる磁束を通過するように配置される。従って、永久磁石は、可能な限り被検出物の近くに配置したものが良い。
【0050】
前述した実施の形態は、磁石要素として永久磁石14を用いたものであったが、前述した説明から明かなように、静磁場による磁力線を発生するものであれば、直流電流による電磁石であっても良い。また、コイル13に流される電流は、交流電流によって交番磁界を発生させて検知するものであったが、直流電流を流して静止磁場により検知するものであっても良い。
【0051】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明の金属探知機は、非金属物である被検出物内の金属物を感度よく検知できる。特にアルミニウム等の導電性材料で包装された包装袋・容器中の金属異物を検知できるという効果がある。また、本発明の金属探知機用センサーは、コアの近傍に磁石を有する構造にすることによって、従来の金属探知機に必要であった磁石ブースターを用いなくても高感度で検知できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、金属探知機1の概要図である。
【図2】図2は、センサー格納部4の構成例を示す図である。
【図3】図3(a)はセンサーコイル10aの正面図、図3(b)は図3(a)の平面図、及び図3(c)は図3(a)のA−A線の切断断面図である。
【図4】図4は、センサーコイル10aの磁界を説明する図である。
【図5】図5は、金属探知機1の制御部5の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6】図6は、制御部5のデジタルコンピュータ処理部27の動作例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、B−H特性を示す図である。
【図8】図8(a),(b)及び(c)は、金属探知機用センサーの他の実施の形態を示す図であり、図8(a)は円形のコイルセンサーを示す図であり、図8(b)は四角形のコイルセンサーを示す図であり、図8(c)は長方形のコイルセンサーの平面図、及び断面図である。
【符号の説明】
1…金属物検知装置
2…ベルトコンベヤ
3…駆動用モータ
4…センサー格納部
5…制御部
7…光センサー
8…被検出物
9…ベルト
10…第1センサーコイル
11…第2センサーコイル
12…鉄心
13…コイル
14…永久磁石
21…発振回路
22…ブリッジ回路
23…アルミ信号消去回路
24…増幅/位相変換回路
25…増幅/位相反転回路
26…波形処理部
27…デジタルコンピュータ処理部
28…信号出力部
Claims (8)
- 被検出物中の金属物を探知するための金属探知機用センサーであって、
交番磁界を発生させるために電流を流して磁界を発生させるための導線のコイルが金属のコアに巻かれたセンサーコイルと、
前記センサーコイルにより発生される磁界の及ぶ範囲で、かつ、前記コアに接触して配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化するための磁石と
からなる金属探知機用センサー。 - 請求項1に記載の金属探知機用センサーにおいて、
前記磁石は、複数個からなる
ことを特徴とする金属探知機用センサー。 - 請求項1又は2に記載の金属探知機用センサーにおいて、
前記磁石は、永久磁石である
ことを特徴とする金属探知機用センサー。 - 請求項1又は2に記載の金属探知機用センサーにおいて、
前記磁石は、直流電流による電磁石である
ことを特徴とする金属探知機用センサー。 - 被検出物を搬送する搬送路を有する搬送手段と、
前記搬送路の途中に設けられ、電流を流して磁界を発生させるための導線のコイルが金属のコアに巻かれたセンサーコイルと
からなる金属探知機において、
前記センサーコイルにより発生される磁界の及ぶ範囲に配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化する磁石と
からなり、
前記電流は交番磁界を発生させるための交流電流であり、
前記磁石は前記コアに接触して配置されている磁石である
ことを特徴とする金属探知機。 - 請求項5に記載の金属探知機において、
前記磁石は、複数個からなる
ことを特徴とする金属探知機用センサー。 - 請求項5又は6に記載の金属探知機において、
前記磁石は、永久磁石である
ことを特徴とする金属探知機。 - 請求項5又は6に記載の金属探知機において、
前記磁石は、直流電流による電磁石である
ことを特徴とする金属探知機。
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