JP3875052B2 - ワイヤ放電加工シミュレーション・システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤ放電加工に関し、特にワイヤ放電加工におけるシミュレーションに関する。
【0002】
【技術的背景】
ワイヤ放電加工は、材料の硬さにかかわらず、非常に複雑な形状を高精度に加工できるため、金型などの加工に広く使用されている。図1に、ワイヤ加工の例を示す。図1において示すように、ワイヤ加工は、工作物110とワイヤ電極120との間に高電圧を加えて、加工液(一般に導電率を低下させた水を使用する)中で放電を行わせることにより、工作物110(正の電圧を印加)を加工するものである。工作物110は2軸制御が行われている加工テーブル(図示せず)上に乗せられており、上部のワイヤガイド125と加工テーブルとを制御することにより、複雑な3次元形状(タービン・ブレードなど)の加工を行うことができる。ワイヤ電極120には、上給電子123および下給電子124から負の電圧が印加されている。ワイヤ電極120は、上下にあるリール121,122により張力を得て、たるみがないように張られている。
【0003】
ワイヤ放電加工の加工精度は、工作物上下のワイヤガイド125,126の間でのワイヤの振動やたわみによって影響を受ける。つまり、放電点では、加工液の蒸発や解離に伴い、気泡が急激に膨張するため、気泡中や周辺の加工液中には大きな圧力が生じる。これによって衝撃的な力がワイヤに作用し、ワイヤの振動をもたらす。また、電圧が印加された工作物とワイヤの間には静電力が作用し、ワイヤが工作物に引きつけられることによりワイヤにたわみが生じる。このワイヤの振動やたわみが影響して、NCデータどおりに切断は行われないことが多い。例えば、図2(a)に示すように、ワイヤの振動やたわみにより切断溝はタイコ状となるので、切断面の板厚方向の真直度が低下する。また、ワイヤの送り方向には加工反力を受けるので、図2(b)に示すように、送りと反対方向にワイヤがたわむ。このように、ワイヤガイドに近い位置ではNCデータどおりに加工が行われるが、工作物の板厚の中央部ではワイヤがワイヤガイドに遅れて追随する。従って、特にコーナやエッジの加工では、中央部のワイヤは角の頂点に達する前に折り返す軌跡をたどってしまうため、大きな加工誤差が生じる。
【0004】
また、一度だけの切断では誤差が大きいため、一般には最初の荒加工(ファーストカット)の後、放電のエネルギを小さくした上で、数十μm〜数μmというオーダーの、ワイヤ径(200μm程度)と比べてもごくわずかの切り込みで何度も切断面の仕上げを繰り返す。これをセカンドカットと称している。このセカンドカットを何度も繰り返して初めて数μmという高い加工精度が実現できる。しかし、このセカンドカットの際にもワイヤの振動やたわみの問題は避けられない。セカンドカットではファーストカットと違い、ワイヤの進行方向に対し左右どちらかにしか工作物は存在せず、工作物の存在する側からのみ加工反力を受けるので、かえって真直度が低下する場合がある。また、放電ギャップもファーストカット時とは異なるので、高精度な仕上げを行うにはかなりのノウハウを必要とする。
【0005】
ワイヤの振動やギャップの変動には、多くの因子が作用している。放電エネルギの大きさによって、放電の衝撃力、ギャップが異なる。ギャップが異なると静電力も変化する。また、工作物の板厚によってワイヤ振動やたわみの程度が変化する。さらに、ワイヤの送り速度が異なると、十分加工しないうちにワイヤが通り過ぎたり、逆にワイヤの送りが遅すぎて放電が断続的になったりする。つまり、ワイヤの送り速度によって削り代が異なるのでギャップも変動する。また、放電の頻度が異なると同じ送り速度でもギャップは変化する。これらの現象はコーナやエッジ部でさらに複雑な様相を呈する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
高精度な加工を行うためには、放電エネルギ、放電頻度、ワイヤ送り速度、工作物板厚、ワイヤ径、ワイヤ張力などの諸因子が、ワイヤの振動やたわみ、ならびに放電ギャップ長に与える影響の解明が重要な課題となる。
そこで、本発明の目的は、このような課題を解決するために、ワイヤ振動を考慮した放電点探索アルゴリズムをベースにした、放電加工のシミュレーション・システムの提供である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ワイヤ放電加工シミュレーション・システムであって、工作物の側面に沿ってメッシュに分割し、ワイヤ電極とメッシュの節点との距離が狭く、最も絶縁破壊が生じやすい節点を探索することによりその節点に放電を発生させるように放電点の位置探索を行い、前記放電点における工作物の除去を行うとともに、新しい節点を配置し、放電衝撃力によるワイヤ電極への力積および工作物とワイヤ電極との静電力を計算し、力積および静電力に伴うワイヤ電極の3次元的な振動変位を解析し、その結果を、次の放電における放電点の位置探索の際に反映させることを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システムである。
前記工作物とワイヤ電極との静電力は、放電点だけではなく工作物と対向するワイヤ電極上のすべてのメッシュに対して作用するとともに、ワイヤ電極の軸方向のギャップ分布に対応して作用し、静電力を作用させるタイミングは、放電パルスの休止時間を除き、かつ絶縁破壊が生じるまでの放電遅れ時間の間だけ作用するとして計算することができる。
【0008】
また、放電点の位置探索で選ばれた節点のギャップ長が大きいほど、前記放電遅れ時間が長くなるようにして、時間の概念を取り入れることも可能になる。
前記放電点の位置探索において、ギャップ長の関数として表される放電遅れ時間に乱数を掛け合わせた値が最小である節点を放電点に選び、確率論的に放電点を決定するメカニズムを取り入れていることが可能となる。
前記放電点での工作物の除去において、ワイヤ電極の放電による除去も考慮し、さらに、放電点に熱流束を与え、ワイヤ電極に沿った温度分布の熱伝導解析を行い、ワイヤ電極の断線を予測することもできる。
実験とシミュレーションとの誤差を用いて、シミュレーションに用いるパラメータを同定して、同定したパラメータを用いて、工作物の加工面の形状をシミュレーションすることもできる。このときに、実験とシミュレーションの複数組の誤差を用いることができる。そして、パラメータの同定には、パターン探索法を用いることができる。
これらのワイヤ放電加工シミュレーション・システムをワイヤ放電加工機に搭載すると、加工中にインプロセスで検出される放電点位置を入力することにより、オンライン・シミュレーションが可能となる。
ワイヤ放電加工シミュレーション・システムを、コンピュータ・システムに実装することができるプログラムやそのプログラムを記憶した記憶媒体、ワイヤ放電加工シミュレーション・システムで実行している方法も本発明である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本発明におけるシミュレーションは、実際の放電加工現象に忠実に、図3に示すような単純なルーチンの繰り返しとして、放電加工を計算機上でモデル化するものである。
図4に示すように、まず、工作物110の側面に沿ってメッシュ分割する。図3における放電点の決定(S210)は、ワイヤ電極120とメッシュの節点の距離が絶縁破壊長さ以下であり、かつ、ワイヤ電極120との距離が最近である節点に放電を発生させる。次にその節点を中心に工作物の除去を行い(S220)、除去した工作物110に対して新しい節点の配置を行う(S230)。放電に伴う加工反力や静電力をワイヤに付与する(S240)。また、必要があればワイヤの除去も行う。そのあと電極を送り(S250)、次の放電点を探索する。
工作物とワイヤとの静電力については、放電点だけではなくすべてのメッシュに対して、ギャップの大きさに応じて変化するワイヤ軸に沿った分布力として作用させる。また、静電力を作用させるタイミングは、パルスの休止時間を除き、かつパルスがオンされてから絶縁破壊が生じるまでの放電遅れ時間の間だけとする。何故ならば、放電が生じていないときの無負荷電圧は百ボルト以上であるのに対し、放電中のギャップ電圧は約20ボルトに低下するからである。
このシミュレーション処理の各ステップについて、以下に詳しく説明する。
【0010】
<放電点の決定(S210)>
ワイヤ電極120とメッシュの節点の距離(ギャップ)が絶縁破壊長さ以下であり、かつ最もワイヤ電極120との距離(ギャップ)が接近した節点に放電を発生させる。これを計算する場合、各メッシュの節点とワイヤ中心の距離からワイヤ半径を引いた値をその節点のギャップと定義する。放電点の決定には、ギャップの最小の節点で決定論的に放電を発生させる方法と、ギャップの値に乱数をかけた値が最小の節点を探索することにより確率論的に放電点を決定する方法がある。
上述のように、単にギャップが狭い箇所を決定論的に放電点に選ぶことばかりではなく、ギャップ長の関数として表される放電遅れ時間に乱数を掛け合わせた値が最小であるメッシュを放電点に選ぶこともできる。これにより、確率論的に放電点を決定するメカニズムを取り入れることが可能である。確率論的に放電点を決定することにより、現実の絶縁破壊が本質的に確率的な現象であることを考慮に入れることができ、シミュレーション精度が向上する。
【0011】
<工作物の除去と新節点の配置(S220,S230)>
図5に示すように放電点として選ばれた節点Pi(xi,yi,zi)とその高さでのワイヤ120の中心Pw(xw,yw,zi)を結ぶ直線の方向に新節点Pi’(xi’,yi’,zi)を決定する。このとき、Pi(xi,yi,zi)と同じz座標上で隣接した2節点Pi-1(xi-1,yi-1,zi),Pi+1(xi+1,yi+1,zi)及び新節点Pi’(xi’,yi’,zi)でつくられる4辺形の面積に、z軸方向のメッシュ幅Δzをかけて得られる体積が、実験から得られる放電一回あたりの除去体積に等しくなるようにxi’,yi’を決定する。ワイヤ電極120の消耗も考慮に入れる場合は、メッシュをワイヤ120の円周上に切って、工作物と同様に節点を移動すればよい。
このように、本発明のシミュレーションでは、工作物の除去だけではなく、ワイヤの除去も考慮できる。これにより、ワイヤが工作物の板厚内に入り込み、放電の繰り返しによりワイヤが消耗し、ワイヤ径が細くなって工作物の板厚内から出ていく様子がシミュレーションできる。従って、ワイヤの消耗が加工精度に及ぼす影響がシミュレーションできる。また、ワイヤ径の減少に伴うワイヤ断線の発生を予知できる。
ワイヤの断線は局所的な熱的負荷によって、もたらされることが知られている。特に、同じ点に放電が続けて生じた場合は、その点の温度が上昇しワイヤが断線する確率が高くなる。そこで、放電点に熱流束を与え、ワイヤに沿った温度分布の熱伝導解析を行い、ワイヤの断線に及ぼす加工条件の影響をシミュレーションすることもできる。ワイヤ断線を防止することは加工機の無人運転を実現するために必要である。
【0012】
<放電衝撃力と静電力の負荷(S240)>
放電衝撃力に相当する力積を放電点においてワイヤに与える。また、静電力はギャップ電圧が高い状態、つまり放電が生じていない放電遅れ時間中に作用すると考え、工作物に対向するワイヤ上のメッシュすべてに負荷する。静電力は、工作物とワイヤとの静電力は放電点だけではなく、工作物と対向するワイヤ上のすべてのメッシュに対して作用させるために、図6に示す様な静電界の有限要素法解析によって正確に求めることができる。静電力はギャップによって変化するので、ワイヤ軸に沿って静電力の大きさも方向も一定ではない。このことを厳密に考慮してシミュレーションを行えるが、計算時間がかかりすぎる場合は平均的な値と方向を使用すればよい。また、静電力を作用させるタイミングは、パルスの休止時間を除き、かつ絶縁破壊が生じるまでの放電遅れ時間の間だけとする。
これらの外力を受けたと考え、次の放電までの間のワイヤ挙動を非定常解析する。
【0013】
ワイヤ放電加工では、良い面粗さを得るために、単発の放電パワーを十分小さく設定しなければならない。このような加工では、単発の加工パワーが小さいため、ワイヤの振動の原因である放電衝撃力よりも、静電力の方が加工精度に及ぼす影響が支配的であると考えられる。従って、有限要素法などを用いて静電力を求め、静電力によるワイヤのたわみを解析し、そのたわみを考慮したシミュレーションを行うことが有効である。
【0014】
<放電遅れ時間の決定と電極の送り(S250)>
放電遅れ時間tgは、放電点として選ばれた節点でのギャップ長hgから次のように決められると仮定した。
【数1】
tg=c1・exp(c2・hg) (1)
ただし、c1,c2は正の係数である。この関数はギャップ長が長いほど放電が生じにくい事実を式で表現したものであり、この事実を正確に表現する式であれば式(1)に代えて使用することが可能である。
ワイヤの送りは、今回のシミュレーションでは定速送り方式を採用した。つまり、放電毎のワイヤの送り長さLwは放電毎に異なり、次式から求められる。
【数2】
Lw=(tg+t0+te)Vw (2)
ここで、Vwは送り速度,t0は休止時間,teは放電持続時間であり、tg以外はいずれも一定値である。
ただし、シミュレーションは定速送りの場合だけではなく、極間電圧が一定になるようにワイヤを送る方法、すなわち適応制御を用いた加工に対しても適用可能である。この場合は、式(1)の放電遅れ時間を用いて計算される極間のある時間内の平均電圧が、ある基準電圧以上であればギャップが離れすぎていると判断しワイヤを送る。逆に基準電圧以下であれば接近しすぎていると判断して、ワイヤを経路に対して逆戻りさせる。
【0015】
このように、本発明のシミュレーションは、放電点に選ばれたメッシュでのギャップ長が大きいほど放電遅れ時間が長くなるようにして、時間の概念を取り入れたシミュレーションである。例えば、定速送りの場合に削り代が小さければギャップが大きくなり、放電遅れ時間が長くなる。このことによって、単位時間あたりの放電頻度が減少する。
また、適応制御の場合には、放電頻度が一定となるように、つまり平均的な放電遅れ時間が一定となるように、実際の加工機ではワイヤの送りが制御される。従って、削り代が小さいのに送り速度が小さければ、ギャップが拡がって放電遅れ時間が長くなり、放電頻度が低下するので、送り速度が増大する制御がなされて放電頻度が一定に保たれる。
上述のように、本発明のシミュレーションでは、ギャップ長が大きいほど放電遅れ時間が長くなることを考慮に入れているので、加工機のワイヤ送りにおける実際の動作と同様にシミュレーションを行うことが可能である。
【0016】
本発明の放電加工におけるシミュレーションは、放電ごとにワイヤ軸に沿って放電点が移り変わり、それに伴って放電衝撃力の作用点もワイヤ軸に沿って移動することを考慮したシミュレーションである。
特に本発明のシミュレーションでは、ワイヤ軸に垂直な平面内で、ワイヤの周上にも放電点は分布するので、衝撃力のベクトルの方向がワイヤ軸に垂直な平面内で放電ごとに変動すること、および、静電力についてはワイヤ軸に沿って工作物と対向した部分全体に作用するが、ワイヤ軸に垂直な平面内での静電力のベクトルの方向は、加工中の工作物面形状と、工作物とワイヤの位置的関係に依存して変動することを考慮して、3次元的なワイヤ振動やたわみを計算し放電点の決定に反映させている。
【0017】
<定性的なシミュレーション結果>
(ワイヤに垂直な平面内のギャップ分布)
さて、まずワイヤの振動を考慮せずにシミュレーションを行った。図7(a)は、絶縁破壊長さ以下のギャップ長を持つ節点の中から、決定論的に最小ギャップを探し、放電点として選んだ場合の結果である。図7(b)は、絶縁破壊長さ以下のギャップ長を持つ節点について、式(3)のように放電遅れ時間に乱数を掛けて評価関数とし、その評価関数の最小値である節点を放電点として選んだ場合のシミュレーション結果である。
【数3】
g=random・{c1・exp(c2・hg)} (3)
決定論的に選んだ場合は、図7(a)に示すように、ギャップ分布がワイヤの周上で均一である。それに対して、確率的に放電点を決定する方法では、図7(b)に示すように、ワイヤの進行方向のギャップが側面ギャップより小さいことがわかる。これは、例えば、「形彫り放電加工における工作物形状シミュレーション」(電気加工学会誌,Vol.28,No.59,p21(1994))に示されるように理論的にも妥当であり、実際に測定されたギャップ分布の傾向とも一致する。よって、放電点の決定は、確率論的に選ぶことがよい。
【0018】
<ワイヤ振動解析を組み込んだ3次元シミュレーション>
ワイヤは3次元的に振動することを考慮してシミュレーションを行った。モデルを図8に示す。ワイヤガイド125,126間のワイヤ120も、z軸方向に等メッシュで分割し、各節点に位置座標(x,y,z)を与える。ワイヤの振動を弦振動と仮定したときのワイヤ電極変位y(z,t),x(z,t)の波動方程式は次式となる。
【数4】
ただし、Tは張力、cは粘性による減衰係数、ρは弦の線密度である。
ワイヤ電極の上下ガイドが固定端であると仮定したときの境界条件は、以下の通りである。
【数5】
x(0,t)=0, y(0,t)=0 (6)
x(L,t)=0, y(L,t)=0 (7)
また、fx(z,t),fy(z,t)は加工反力のx,y成分である。加工反力としては前述の放電衝撃力と静電力を考慮した。加工反力の作用線は、ワイヤの中心軸を通り、反力のz方向成分は0と仮定した。また、放電衝撃力は0.005Nのピーク値で10μsの間、パルス状に作用すると仮定した。
【0019】
<3次元シミュレーション結果>
工作物板厚40mm、ガイド間距離60mm、休止時間20μs、放電持続時間2μs、切り込み量0μmの条件でシミュレーションを行った。図9に、定速送り速度が20mm/minと、1mm/minの場合のシミュレーション結果を示す。図9で横軸0の位置は加工前の工作物面を表す。図9に示すように、送り速度が速い時の加工形状は凸、遅い時の加工形状は凹となる結果が得られた。これは実際の加工と定性的に一致し、シミュレーション方法が妥当と考えられる。
図10は、加工中のワイヤ挙動のシミュレーション結果である。放電衝撃力の方向とその作用点の位置が放電ごとに変動するので、複雑な振動をしていることが分かる。図11は、図10において、放電点に選ばれたメッシュを含み、ワイヤ軸に垂直な断面を表示したものである。放電点に選ばれたメッシュにアーク柱が表示されている。また、この断面以外のワイヤ軸に沿ったすべてのワイヤ中心の座標をプロットしてある。
【0020】
<定量的なシミュレーション>
上述のワイヤ放電加工のシミュレーションは、加工反力,放電遅れ時間,加工液の粘性係数,加工液の誘電率などを仮定して行っているために,定性的なシミュレーションである。定量的にシミュレーションを行うには、これらのパラメータを同定する必要がある。
パラメータの中の加工反力については、逆問題法で単発放電の加工反力を求めることが提案されている(例えば 山田ら,精密工学会誌,63,11,1548 (1997)参照)。しかし、連続放電加工の場合には気泡が極間の中に多数存在するので、連続放電中の加工反力は、単発の加工反力と違うと考えられる。また、静電力の計算に必要な誘電率も、極間の気泡の存在によって単純に加工液の誘電率と等しいとは言えないと報告されている(小原ら,電気加工学会誌,Vol. 34, No.75, 30 (2000)参照)。ギャップと放電遅れ時間の関係について,単発放電によって実験からギャップ長と無負荷電圧をパラメータにとった関係式を求めることができる(小原ら,電気加工学会誌,Vol. 29, No. 62, 40 (1995)参照)。しかし、この式も、連続放電の場合には気泡や加工屑などの存在によって変わってくると考えられる。さらに加工液の粘性係数についても、加工液中でワイヤを振動させワイヤの変位を測定して、逆問題法で粘性係数を求めることができる(小原ら,電気加工学会誌,Vol. 29, No. 62, 40 (1995)参照)。しかし、同じく極間の気泡の存在により、連続放電の場合は粘性係数も通常の加工液の粘性係数と変わってくると考えられる。従って、定量的にシミュレーションをするには、連続放電中のパラメータの正しい値を同定しなければならない。そこで以下に、連続放電に対して逆問題法を適用し、多数パラメータを同時に同定する方法を説明する。
【0021】
<パラメータの同定>
さて、逆問題法により多数のパラメータを同定するには、実験から得た形状結果とシミュレーションから得た形状結果の誤差を最小になるように、各パラメータについて最適値を探索していく。しかし、この方法は次の二つの大きな問題点が挙げられる。ひとつはパラメータに関するモデルの正確さ、もう一つは最適パラメータの探索法の効率である。
同定するパラメータは、放電遅れ時間,加工反力,加工液の粘性係数,加工液の誘電率に関するパラメータであり、それぞれのモデルは次のように仮定した。放電遅れ時間については、先ず板厚40mmの工作物の表面で単発放電を行い、測定した放電遅れ時間とギャップの関係を図12のように求めた。図12から放電遅れ時間td[μs]とギャップ長hg[μm]の近似式を次のように求めた。
【数6】
この単発放電から得た特性式の係数を未知パラメータと考え,連続放電時の放電遅れ時間のモデルを次式で与えた.
【数7】
加工反力については、加工液で満たされた円盤隙間内の気泡の解析を行ったことが報告されている(安達ら,電気加工学会誌,Vol. 31, No. 67, 23 (1997)参照)。得られた加工反力とギャップ長の関係を図13に示す。図13により、加工反力f[N]とギャップhg[μm]の近似式が次式で与えられる。
【数8】
そこで、加工反力のモデルは式(10)の係数を未知パラメータとし、次のように仮定した。
【数9】
加工液の粘性係数と誘電率については,未知の常数と仮定し、それぞれパラメータc5,c6とした。
以上から、同定するパラメータはc1〜c6である。
【0022】
(パラメータの探索法)
パラメータを探索する方法として、この実施形態では、パターン探索法(例えば、 ディクソン,非線形最適化計算法,培風館 (1974)を参照)を用いた。この探索法は直接的に効率よく最適なパラメータを探索する方法であり、探索移動とパターン移動の二つの段階からなっている。探索移動はそれぞれのパラメータを順次探索し,現在の点の近くの目的関数の様子を探って"谷"或いは"峰"の方向にあたりをつけ、パターン移動でその方向に移動するという手続きを反復する。この探索法を、図14のフローチャートを用いて、以下に詳しく説明する。
図14において、探索するパラメータを、ベクトルx=(x1,x2,・・・,xn)とする。nは探索するパラメータの数である。n個の互いに直交する単位ベクトルの組e(i)を探索する座標軸に平行に選ぶ。探索の繰り返しを開始するために、最初のステップk(1)とベクトルx(0)を指定する。ベクトルx(0)を基点と呼ぶ(S302)。探索の繰り返しは、ベクトルx(1)からスタートする。ベクトルx(1)を探索移動のスタート点と呼ぶ。ここでは、探索の繰り返しを開始する時、探索移動のスタート点は、基点と同じベクトルに設定した。つまり、ベクトルx(1)=ベクトルx(0)とした。
また、Simulation(x)はシミュレーション形状結果と実験から得た形状結果の誤差であり、ここでは、この誤差は次のように定義している。
【数10】
ここで,zs(j)はシミュレーションから得られた形状の工作物高さ方向の形状寸法,zm(j)は実験から得られた形状の工作物高さ方向の形状寸法,mは誤差評価するために工作物高さ方向の分割点数である。
上述の誤差を求める式12においては、シミュレーションと実験とは1組の場合を示している。しかしながら、条件の大きく異なる2つのシミュレーションと実験との組を用いて、誤差を求めることも可能である。この場合の誤差を求める式は、次のようになる。
【数11】
また、この誤差は、上述と同様に、3つ以上の条件によるシミュレーションと実験との組により求めることも可能である。
【0023】
次に探索移動とパターン移動をそれぞれ説明する。
(i) 探索移動
点x(1)より、まず、1つのパラメータi(最初はi=1)の方向に対して、ステップki分移動する(S304)。そして、次に示す比較計算を行う(S306)。
【数12】
Simulation(x(i)+ke(i))<Simulation(x(i)) (14)
この比較計算が成立すれば(即ち、誤差が小さく(谷方向)なれば)、探索移動は成功(S306でyes)で、探索点を移動するために、x(i+1) =x(i)+ke(i)とする(S332)。式(14)の比較が成立しない場合(S306でno)、前と逆の方向に移動するとともに移動方向を逆にして(S308)、式(14)と同じ比較計算を行う(S310)。再度比較が成立しない場合は、次のパラメータに移るために、x(i+1) = x(i)とする(S312)。このようにして、すべてのパラメータに関して探索移動を行う(S314でyes)。
(ii) パターン移動
パターン移動は、探索移動が最終的に成功であるかどうかを判断することから始まる。探索移動が最終的に成功であるとき,すなわち Simulation(x(n+1))<Simulation(x(0)) の場合(S316でyes)には パターン移動、つまり次の探索移動のスタート点をx(1) =x(n+1)+(x(n+1)−x(0))とし,新しい基点をベクトルx(0)=ベクトルx(n+1)におく。
探索移動が最終的に成功ではないとき(S316でno)、 パターン移動が失敗であるので、x(1)とx(0)とが等しくないとき(S336でno)、探索移動のスタート点をx(1) = x(0)として(S320)、探索移動に戻る。
x(1)とx(0)とが等しいとき(S336でyes)は、ステップの大きさk(i)を縮小して、k(i) = k(i)/2として探索移動に入る(S322)。
ステップの大きさk(i)が、あらかじめ決めた値より小さくなったときに、探索停止する(S324)。
【0024】
以上に説明した探索法を理解するために、パラメータを2個、即ち、x=(x1,x2)にしたときの探索例を、図15に示す。図の中に四角は基点と意味し、丸は探索失敗とする。矢印は探索の成功と、パターン移動を示す。
図15において、点1はパラメータx1を表し、最初の基点、すなわち、探索移動のスタート点である。探索移動は最初、点1(パラメータx1)からスタートする。点1からx1の正方向へ移動した点2は探索失敗であり、方向を変えて、点3に探索する。点3で探索成功し、次にパラメータx2を探索する,点3からx2の正方向に移動して点4に探索し、探索が成功したので、点4で探索移動が終了し、探索移動が最終的に成功したかどうかを、点4と基点1とを比較することにより判断する。点4が基点1より低いので、探索移動が成功したとする。次にパターン移動を行う。点4からのパターン移動は、探索移動が最終的に成功した点4のベクトルから基点1のベクトルを引いて得たベクトルR1を、点4のベクトルに足すことにより行い、点5に移動する。点4を新しい基点とする。次の探索移動は点5からスタートする。つまり、点5は次の探索移動のスタート点になる。点5からx1の負方向への点6の探索移動は失敗し、反対方向の点7に探索移動する。点7で探索移動が成功し、次にx2の正方向の点8に探索移動する。点8で探索移動が成功し、ここで、2回目の探索移動が終了し、探索移動が最終的に成功した点8と基点4と比較し、探索移動は成功したので、2回目のパターン移動を行う。パターン移動は、探索移動が最終的に成功した点8のベクトルから基点4のベクトルを引いて得たベクトルR2を、点8のベクトルと足して点9に移動する。また、点8を新しい基点とし、次の探索は点9からスタートする。以上のことを繰り返して探索を行い、点16まで到達することができる。次に、点16から点17はパターン移動である。点16を新しい基点とする。点17から点20は探索移動である。探索移動が最終的に成功した点20と基点16と比較を行い、その結果、二つの点が同じ等高線にあるので、探索移動は最終的に失敗と判断する。この場合は、パターン移動を行わず、次の探索移動のスタート点を点16に戻す。
点16から順次に点21,22,23,24に探索移動するが、全部失敗したので、この場合は、探索のステップの長さを半分にして、点16から再度探索移動する。点25,26,27への探索移動は失敗するが,点28への探索移動は、成功する。
このように探索し,ステップの長さが予め決めた値より小さければ,探索が停止する。
【0025】
<パラメータの同定の結果>
実験から工作物の加工形状を得るための実験条件を表1に示す。
【表1】
実験において、加工は定速送りで行った。送り速度2.5mm/minの時に得られた加工形状の測定結果は、図16に◆で示している。図17は、パラメータ(c1〜c6)の探索の過程を示す。図17において、太い線はシミュレーション形状結果と実験形状結果の誤差を示している。各パラメータの初期値は適当に与えた。探索順番1〜11までには探索移動、12でパターン移動を行い、13からまた探索移動に入った様子が示されている。ただし、今回の探索では最初の10回目の探索移動で実験結果とシミュレーション結果との誤差が0.5μm以下となったために、パターン移動の効果が現われなかった。また,パラメータの同定が完了した後の形状シミュレーションの結果を図16の△で示している。
<放電加工の定量的シミュレーションの結果>
上述の探索の結果、同定することができたパラメータを用いて、表1の実験条件の中の送り速度を5.0mm/minに変え、シミュレーションを行った。得られたシミュレーション形状結果と実験によって得られた加工形状の比較を図18に示す。形状は両方とも凸であり、平均誤差は約1.5μmである。ただし、シミュレーションの形状結果は工作物の上面と下面の付近で実験結果と約3μmの差が生じている。
【0026】
実際のワイヤ放電加工機の加工条件は、メーカ側からユーザに提供されている。加工条件はワーク材料、板厚、要求する精度、面粗さなどによって膨大なデータベースになっている。一つの要求に対する加工条件を得るため、何回ものテスト加工が必要である。従って、ワイヤ放電加工機メーカは、加工条件表を作るために多くの人手と長い時間を掛けている。そこで、振動やたわみによる真直度の低下、コーナやエッジの切断精度の低下などを、本発明のシミュレーションを用いることにより、実加工の前にオフラインで加工条件を自動決定することが可能となり、工程設計の効率化、加工精度、表面性状の向上に利用できる。その上、本発明のシミュレーションを用いることにより、加工現象の時間変化や、加工時間の見積もりなどを行える。
【0027】
また、本発明のシミュレーションとワイヤ放電加工機の制御系のモデルと組み合わせることにより、加工全体のシミュレータを構築することができる。これにより放電加工機の送り制御、加工電源、機械構造などの設計ツールとしての使用が可能である。
本発明のシミュレーションを放電加工機に組み込むことにより、加工中にインプロセスで検出される放電点位置を入力することで、加工現象のオンライン・シミュレーションも行える。このオンライン・シミュレーションにより、放電点分布、ワイヤの振動、ワーク表面の温度分布、加工形状などの加工現象を可視化できるようになり、適応制御の効果の確認、加工現象の解明に大きな方便を与える。
上記のオンライン・シミュレーションの成果を踏まえ、シミュレーションから獲得した放電位置、加工形状、ワイヤの振動などの情報をフィードバック情報として利用し、放電点位置の制御も可能になる。放電点位置制御は、高速のスイッチング素子を用いて、ナノ秒オーダの立ち上がり速さの高圧パルスをワイヤ電極の上下の給電子にそれぞれ印加する。その瞬間、極間のワイヤ電極に存在するインダクタンス成分により、過渡的に電位の不均一分布が生じる。この現象を利用してギャップ中で最も高電界になる、高電圧重畳個所近傍における放電発生確率を増大させることより放電位置を制御する。こうして、今までに放電位置制御ができないという常識をうち破り、最も高精度な加工も可能になる。
【0028】
本発明は、スタンド・アローンのコンピュータ・システムばかりではなく、複数のシステムから構成される例えばクライアント・サーバ・システム等に適用してもよい。
本発明に関するプログラムを格納した記憶媒体から、プログラムをシステムで読み出して実行することにより、本発明の構成を実現することができる。この記録媒体には、フロッピー・ディスク、CD−ROM、磁気テープ、ROMカセット等がある。
【0029】
【発明の効果】
放電加工は加工結果に影響する因子が多く、しかも、それらがお互いに複雑に影響し合うので、従来は加工条件と加工結果との相関が取りにくく、加工条件の決定には経験データを利用するしかなかった。
一方、本シミュレーションは、ごく簡単なルーチンの繰り返しにも関わらず、放電加工現象そのものが忠実にコンピュータ上で再現でき、振動やたわみによる真直度の低下、コーナやエッジの切断精度の低下などがシミュレーションできる。
シミュレーションに使用するパラメータを同定することにより、定量的なシミュレーションも可能である。
また、実加工の前にオフラインで加工条件を自動決定することが可能となり、工程設計の効率化、加工精度、表面性状の向上にも大きな効果が期待できる。
シミュレーションは、時間軸を考慮した非定常解析であるので、加工現象の時間変化や、加工時間の見積もりなどが可能である。
ワイヤ放電加工機の制御系のモデルと組み合わせることにより、加工全体のシミュレータが完成し、放電加工機の送り制御、加工電源、機械構造などの設計支援ツールとしての使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ放電加工を説明するための図である。
【図2】ワイヤの振れやたわみを示す図である。
【図3】本発明のシミュレーション処理を示すフローチャートである。
【図4】メッシュに分割した例を示す図である。
【図5】放電点における工作物の除去を説明するための図である。
【図6】ワイヤに対する静電力の有限要素法による解析を示す図である。
【図7】ギャップの分布を示す図である。
【図8】ワイヤの3次元振動解析モデルを示す図である。
【図9】工作物形状のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】ワイヤの動きに対するシミュレーション結果を示す図である。
【図11】ワイヤ軸に垂直な断面で見た工作物の形状と放電点を示す図である。
【図12】単発放電の放電遅れ時間特性を示す図である。
【図13】加工反力とギャップの関係を示す図である。
【図14】パラメータの探索処理を示すフローチャートである。
【図15】探索処理を説明する図である。
【図16】実験とシミュレーションとの差を示す図である。
【図17】パラメータの探索過程を示す図である。
【図18】前の実験とは異なる条件によるシミュレーションと実験との差を示す図である。
【符号の説明】
110 工作物
120 ワイヤ電極
121,122 リール
123 上給電子
124 下給電子
125,126 ワイヤガイド
Claims (13)
- ワイヤ放電加工シミュレーション・システムであって、
工作物の側面に沿ってメッシュに分割し、
ワイヤ電極とメッシュの節点との距離が狭く、最も絶縁破壊が生じやすい節点を探索することによりその節点に放電を発生させるように放電点の位置探索を行い、
前記放電点における工作物の除去を行うとともに、新しい節点を配置し、
放電衝撃力によるワイヤ電極への力積および工作物とワイヤ電極との静電力を計算し、
力積および静電力に伴うワイヤ電極の3次元的な振動変位を解析し、
その結果を、次の放電における放電点の位置探索の際に反映させることを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項1記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
前記工作物とワイヤ電極との静電力は、放電点だけではなく工作物と対向するワイヤ電極上のすべてのメッシュに対して作用するとともに、ワイヤ電極の軸方向のギャップ分布に対応して作用し、
静電力を作用させるタイミングは、放電パルスの休止時間を除き、かつ絶縁破壊が生じるまでの放電遅れ時間の間だけ作用する
として計算することを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項2記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
放電点の位置探索で選ばれた節点のギャップ長が大きいほど、前記放電遅れ時間が長くなるようにして、
時間の概念を取り入れることを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
前記放電点の位置探索において、ギャップ長の関数として表される放電遅れ時間に乱数を掛け合わせた値が最小である節点を放電点に選び、
確率論的に放電点を決定することを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
前記放電点での工作物の除去において、ワイヤ電極の放電による除去も考慮する
ことを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項5に記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
さらに、放電点に熱流束を与え、ワイヤ電極に沿った温度分布の熱伝導解析を行い、
ワイヤ電極の断線を予測することを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項1〜5のいずれかに記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
実験とシミュレーションとの誤差を用いて、シミュレーションに用いるパラメータを同定し、
同定したパラメータを用いて、工作物の加工面の形状をシミュレーションすることを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項7に記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
前記実験とシミュレーションとの誤差を用いるときに、実験とシミュレーションの複数組の誤差を用いることを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項7又は8に記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムにおいて、
パラメータの同定には、パターン探索法を用いることを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション・システム。 - 請求項1〜9のいずれかに記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムを搭載し、加工中にインプロセスで検出される放電点位置を入力することにより、オンライン・シミュレーションが可能なワイヤ放電加工機。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムを、コンピュータ・システムに実装することができるプログラムを記憶した記憶媒体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のワイヤ放電加工シミュレーション・システムを、コンピュータ・システムに実装することができるプログラム。
- ワイヤ放電加工シミュレーション方法であって、
工作物の側面に沿ってメッシュに分割し、
ワイヤ電極とメッシュの節点との距離が狭く、最も絶縁破壊が生じやすい節点を探索することによりその節点に放電を発生させるように放電点の位置探索を行い、
前記放電点の工作物の除去を行うとともに、新しい節点を配置し、
放電衝撃力によるワイヤ電極への力積および工作物とワイヤ電極との静電力を計算し、
力積および静電力に伴うワイヤ電極の3次元的な振動変位を解析し、
その結果を、次の放電における放電点の位置探索の際に反映させることを特徴とするワイヤ放電加工シミュレーション方法。
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