JP3874702B2 - 口唇用化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、口唇の乾燥を伴う口唇炎を発症することなく、滑らかな使用感を付与し、外観のつやを向上させ、発汗現象を抑制し、良好な製品の保存安定性を示す口唇用化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
口唇用化粧料としては、口唇を保護するリップクリームや、化粧効果を高める口紅等が古くから使用されている。前者は油性基剤と抗炎症効果,保湿効果等を有する成分とから成り、後者は油性基剤と着色料とから成るが、いずれにしても油性基剤は口唇用化粧料の処方中かなりの部分を占め、口唇用化粧料の性状等に及ぼす影響は大きい。
【0003】
油性基剤は一般に、ミツロウ,カルナウバロウ,キャンデリラロウ,セレシン,マイクロクリスタリンワックス,鯨ロウ,ラノリン,流動パラフィン等の油脂・ロウ類、ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプロピル,セバシン酸ジエチル等のエステル油類から構成される。また、リップクリームには、ポリオキシエチレンオレイルエーテル,脂肪酸ジエタノールアミド,ポリオキシプロピレンオレイルエーテル等の界面活性剤が配合されることもある。
【0004】
これらの油性基剤の中で、液状油としては、近年水酸基を持たない低粘度のエステル油類が幅広く使用されてきている。低粘度のエステル油は、口唇用化粧料に滑らかな使用感を付与し、外観のつやを向上させ、しかも表面に水滴状の液体が滲み出る、いわゆる発汗と呼ばれる現象を有効に予防できる油性基剤として、多量に配合されている。しかしながら低粘度のエステル油を単独で多量に配合すると、低粘度のエステル油により角質層が膨潤し、継続して使用していると口唇の乾燥症状を伴った口唇炎が発症する場合があった。このような口唇炎は、処方中の成分に対し特に感作性を示さない者においても見受けられ、特に空気が乾燥し、通常の状態においても口唇の角質層の乱れが認められる冬季において顕著にみられる。
【0005】
かかる口唇炎の治療及び防止を目的として、口唇皮膚との親和性が高く且つ口唇皮膚を乾燥から有効に保護し得る口唇用化粧料の検討が行われ、ヒマシ油を配合し、油性基剤の水酸基価を80以上とした口唇用化粧料も提案されている(特開平4−360810)。しかし、ヒマシ油は特有の味と臭いを有し、酸化安定性の面でも問題があり、皮膚感作性も報告されていて、多量を配合することは好ましくなかった。
【0006】
また、皮膚に対し安全で親和性の高い油剤として、多価アルコール,ポリカルボン酸及びモノカルボン酸の重縮合物を用いることが提案され(特開昭52−66637)、さらに安定で相溶性の良い油性基剤として、グリセリン,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,グリセリン縮合物,ソルビトール,トリメチロールエタンの1種又は2種以上と、炭素数8〜22の脂肪酸及び前記多価アルコールの1/2〜4/5倍モルの炭素数12〜20の二塩基酸とのエステル化生成物や、ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸及び炭素数12〜20の長鎖二塩基酸とのエステル化生成物を配合した化粧料が開示されている(特公昭61−7403,同61−7168)。また、口唇の保護効果に優れる口唇用化粧料用油剤として、ジグリセリンと分岐鎖を有する炭素数16〜18のモノカルボン酸とのエステルと、炭素数6〜10のジカルボン酸との縮合生成物であって、水酸基価が80〜160の範囲である油剤を配合して成る口唇用化粧料が開示されている(特開平7−223925)。
【0007】
しかし、上記の油剤は二塩基酸とのエステル化生成物であるため、粘度の低い液状油の形態として得ることは困難であり、化粧料の剤型によっては、所望の性状を与えることは困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明においては、口唇の乾燥を伴う口唇炎を発症することなく、滑らかな使用感を付与し、外観のつやを向上させ、発汗現象を抑制し、良好な製品の保存安定性を示す口唇用化粧料を得ることを目的とした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するべく、低粘度のエステル油の種類,配合量,配合量比を詳細に検討したところ、25℃における粘度が60mPaS以下のエステル油を2種以上含有し、かつそれぞれのエステル油の単独での配合量を8%以下に設定することにより、口唇の乾燥を伴う口唇炎を有効に予防し、滑らかな使用感を付与し、外観のつやを向上させ、発汗現象を抑制し、良好な製品の保存安定性を示す口唇用化粧料を得ることができた。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する低粘度のエステル油としては、25℃における粘度が60PaS(B型粘度計,ローターNo.4,60rpm)のエステル油であれば特に限定されない。かかる低粘度のエステル油としては、2-エチルヘキサン酸セチル,トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル,ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール,パルミチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソステアリル,パルミチン酸-2-エチルヘキシル,イソステアリン酸-2-エチルヘキシルデシルから選択される2種以上を用いることが発汗現象の抑制の効果から、特に好ましい。
【0011】
本発明において、低粘度のエステル油から2種以上を組み合わせて用いる。またそれぞれの低粘度のエステル油は、口唇用化粧料全量に対して8重量%を上限として配合する。8重量%を超えて配合すると、乾燥を伴う口唇炎を発症し易くなる。
【0012】
本発明の口唇用化粧料においては、本発明の目的を損なわない質的及び量的範囲内で、上記成分以外で、油性成分、粉体成分、香料、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、薬剤、保湿剤、増粘剤、美容成分、抗炎症剤、血行促進剤、水などを配合することができる。本発明の口唇用化粧料に配合される油性成分としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オレンジラフィー油、ミンク油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ等のロウ類、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレスレロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0013】
また、本発明の口唇用化粧料には、着色や使用性等の目的で粉体を配合することができる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成雲母、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄処理雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。尚、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0014】
本発明の口唇用化粧料は、通常の方法に従って製造することができ、口紅、リップグロス、リップフィクサー、リップクリーム、リップライナー等の用途に応用することができる。
【0015】
【実施例】
さらに、本発明の特徴について、実施例により詳細に説明する。
【0016】
表1に示した組成で、本発明の実施例1,実施例2、及び比較例1〜比較例4にかかる口紅を調製した。口紅の調製は、全成分を80℃に加熱して溶解,混合した後、モールドに流し込み成形したものを、容器に装填することにより行った。
【0017】
【表1】
【0018】
上記の実施例1,実施例2、及び比較例1〜比較例4について、ヒトによる使用試験を行った。20〜40才代の女性20名を一群とし、冬季に実施例若しくは比較例をブラインドにて1週間,1日2回使用させ、口唇の状態を観察した。口唇の状態は、口唇皮膚の乾燥,亀裂,落屑,縦じわ,紅斑,腫脹の発生の状況を目視で判断し、表2に示す判定基準に従い点数化し、平均点を算出し、平均点が「2以上の場合を×」、「1以上2未満の場合を△」、「1未満の場合を○」として評価し、結果を表3に示した。
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
表3に示したとおり、本発明の実施例使用群においては、落屑などの口唇炎症状は殆ど認められなかった。しかしながら、1種類の低粘度のエステル油を8重量%以上含有する比較例1〜比較例4使用群においては、口唇の乾燥が著しく、落屑等の口唇炎の症状が顕著に認められていた。
【0022】
上述の使用試験と同時に、使用感の評価を行った。評価は、使用時の滑らかさ及び外観のつやについて、20名のパネラーによる官能評価を行った。以下に示した基準により点数化して平均値を算出し、平均点が「2以上の場合を○」、「1以上2未満の場合を△」、「1未満の場合を×」として評価し、結果を表4に示した。
【0023】
使用時の滑らさ
非常に滑らかである;3点
やや滑らかである;2点
あまり滑らかではない;1点
ざらつく;0点
【0024】
外観のつや
ある;3点
ややある;2点
ややない;1点
ない;0点
【0025】
【表4】
【0026】
表4に示したとおり、本発明の実施例1,実施例2、及び比較例1〜比較例4の口紅は全て塗布時の滑らかさ、外観のつやともに良好な結果が得られた。
【0027】
本発明の実施例1,実施例2、及び比較例1〜比較例4を40℃恒温槽にて1ヶ月間保管したところ、全ての試料において、発汗等の経時変化は認められず、保存安定性は良好であった。
【0028】
本発明の他の実施例を示す。
【0029】
[実施例3〜実施例6] 油性口紅
(1)二酸化チタン 5.0(重量%)
(2)赤色201号 0.6
(3)赤色202号 1.0
(4)赤色223号 0.2
(5)キャンデリラロウ 9.0
(6)固形パラフィン 8.0
(7)ミツロウ 5.0
(8)カルナウバロウ 5.0
(9)吸着精製ラノリン 10.0
(10)重質流動イソパラフィン 全量を100とする量
(11)表5に示す低粘度のエステル油 表5に示す量
(12)d-δ-トコフェロール 0.1
(13)香料 0.1
製法:(1)〜(3)を(10)の一部に加えローラーで処理する(顔料相)。(4)を(10)の一部に溶解する(染料相)。他の成分を混合し、加熱融解した後、顔料相,染料相を加え、ディスパーで均一に分散する。分散後、型に流し込み急冷し、スティック状とする。
【0030】
【表5】
【0031】
[実施例7] リップクリーム
(1)セレシンワックス 7.0(重量%)
(2)キャンデリラワックス 10.0
(3)マイクロクリスタリンワックス 4.0
(4)水素添加ポリブテン 26.8
(5)2-エチルヘキサン酸セチル 7.0
(6)ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 7.0
(7)パルミチン酸イソステアリル 7.0
(8)パルミチン酸-2-エチルヘキシル 7.0
(9)トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 8.0
(10)パルミチン酸イソプロピル 8.0
(11)イソステアリン酸-2-エチルヘキシルデシル 8.0
(12)dl-α-トコフェロール 0.1
(13)アラントイン 0.1
製法:(1)〜(13)の成分を溶融,混合した後、金皿に流し込む。
【0032】
本発明の実施例3〜実施例7について、使用試験を行ったところ、乾燥及び口唇炎症状を呈する被験者は、認められなかった。また使用感評価を行ったところ、全ての実施例において塗布時の滑り及びつやが良好であるとの評価が得られた。さらに、40℃恒温槽保存試験においても、発汗は全く認められなかった。
【0033】
本発明の実施例1〜実施例7について、48時間閉塞貼付試験を行ったところ、皮膚刺激性及び皮膚感作性は認められなかった。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、口唇の乾燥を伴う口唇炎を発症することなく、滑らかな使用感を付与し、外観のつやを向上させ、発汗現象を抑制し、良好な製品の保存安定性を示す口唇用化粧料を得ることができた。
Claims (1)
- 25℃における粘度が60mPaS以下である、2−エチルヘキサン酸セチル,ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール,パルミチン酸イソステアリル,イソステアリン酸−2−エチルヘキシルデシルから選ばれるエステル油を2種以上含有し、かつそれぞれのエステル油の単独での配合量が8%以下であることを特徴とする、口唇用化粧料。
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