JP3873682B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波装置に関し、特に、携帯電話などにおける周波数選別フィルタ、キーレスエントリーシステムなどにおける発振器、共振子などに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
弾性表面波装置は、電気信号を表面波に変換して信号処理を行う回路素子であり、フィルタ、共振子などとして幅広く用いられている。通常、圧電性のある弾性体基板(圧電基板)上に、IDT電極と呼ばれる導電性膜からなる電極を設けることで、電気信号から表面波への変換・逆変換が行われている。
【0003】
弾性表面波装置の特性は、圧電基板を伝搬する弾性表面波の伝搬特性に依存しており、特に、弾性表面波装置の高周波化に対応するためには、弾性表面波の 伝搬速度の速い圧電基板が求められる。
また、用途によっては、温度の変化に対して安定な特性を有する弾性表面波装置が求められている。優れた温度特性を有する単結晶基板材料としては、水晶が知られている。
【0004】
弾性表面波装置に用いられる弾性表面波としては、レイリー波(Rayleigh wave)や、漏洩弾性表面波(Leaky wave)が主に用いられている。
レイリー波は、弾性体の表面を伝搬する表面波であり、そのエネルギーを圧電基板内部に放射することなく、すなわち、理論上伝搬損失なく伝搬する。レイリ一波を利用した弾性表面波装置として、伝搬速度が3150m/秒のSTカット水晶が挙げられる。
【0005】
圧電基板中には、「遅い横波」、「速い横波」、「縦波」の3種類の体積波(バルク波)が存在するが、このレイリー波は「遅い横波」よりも更に遅い位相速度で伝搬するものである。
漏洩弾性表面波は、弾性体の深さ方向にエネルギー放射しながら伝搬する弾性表面波であり、特別な切り出し角および伝搬方向では利用可能となる。例えば、位相速度が、3900m/秒のLSTカット水晶が知られている。この漏洩弾性表面波は、「遅い横波」と「速い横波」の間の位相速度で伝搬するものである。
【0006】
上記のように、水晶基板は、温度特性が良好であるという利点を有するものの、レイリー波および漏洩弾性表面波を利用した場合には、位相速度が小さく、表面波装置の高周波化には適した材料ではないと考えられていた。
しかし、表面波伝搬方向をSTカット水晶の伝搬方向と90°とすることで、水晶を用いながら、位相速度が比較的大きなSTW(Surface Transverse Wave)の利用ができることが知られている。例えば、平成7年日本学術振興会産学共同研究支援事業実施報告書132〜137頁「HighPerformance GHz Range Surface Transverse Wave Resonant Devices.Applications to Low Noise Microwave Oscillators and Communication System」には、STWの位相速度は、従来のSTカット水晶の1.6倍とされている。
【0007】
また、特開平10‐233645号公報には、STWを利用した表面波装置の電極材料としてタンタルやタングステンを用いることにより、温度特性を改善する方法が開示されている。
また、近年では、漏洩弾性表面波の理論を発展させて、基板表面での変位のほとんどが縦波成分で構成され、バルク波として2つの横波成分を圧電基板内部に放射しながら、「速い横波」と「縦波」の間の高位相速度で伝搬する疑似縦波型漏洩弾性表面波が相次いで発見されている。
【0008】
特開平6‐112763号公報では、四ほう酸リチウムにおいて、伝搬速度が5000m/秒〜7500m/秒と大きく、伝搬損失が低い疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用できることが明らかにされている。
また、水晶基板においても、1999 IEEE ULTRASONICS SYMPOSIUM 321−324頁「Study of Propagation of Quasi−longitudinal Leaky Surface Acoustic Wave Propagating on Y−Rotated Cut Quartz Substrates」(以下、文献1と称す)には、疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用し、オイラー角(0°,155.25°,42°)の2軸回転において、遅延時間温度係数TCDが0.508ppm/℃であることが明らかにされている。
【0009】
さらに、2000FCS,Kansas MO USA June7−9,2000「ANALYSIS OF VELOCITY PSEUDO−SURFACE ACOUSTIC WAVES(HVPSAW) IN QUARTZPERIODIC STRUCTURES WITH ELECTRODEFINGERS」(以下、文献2と称す)には、疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用し、1軸回転において、IDT電極の規格化膜厚h/λ=0.0125とした時に、周波数による温度変化が3次曲線を示すことが明らかにされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、レイリー波を用いたSTカット水晶や、漏洩弾性表面波を用いたLSTカット水晶は、優れた温度特性を有するが、位相速度は、高々4000m/秒であり、更なる高周波化には適していない。
仮に、この程度の位相速度で、1GHz以上の信号周波数を対象とするためには、1μm以下の電極幅および電極間隔が必要となる。また、IDT電極膜厚hに関しても、1GHz以上の信号周波数を対象とすると、STカット水晶では、信学技報 TECHNICALREPORT OF IEICE.US99−20(1999−06)37〜42頁「有限要素法を用いた弾性表面波の周波数−温度特性解析」にあるように、頂点温度が室温付近となるIDT規格化電極膜厚h/λは0.03程度であるので、IDT電極膜厚hを945Å以下とする必要がある。
【0011】
また、LSTカット水晶においては、特開平2−194714号公報に記載されているように、IDT規格化電極膜厚h/λ=0.005±0.001とする必要あるので、ST以上にIDT電極膜厚hを薄く形成する必要がある。
このため、レイリー波や漏洩弾性表面波を用いる方法では、1GHz以上の信号周波数を対象とすると、IDT電極の製造歩留まりが低下し、弾性表面波装置の製造が困難になるという問題がある。
【0012】
STWを利用する方法では、STカット水晶やLSTカット水晶に比べ位相速度が大きくなるが、温度範囲が‐30℃〜60℃において、周波数変化は130ppmとなり、STカット水晶やLSTカット水晶に比べ、周波数温度特性が悪化するという問題がある。
ここで、特開平10‐233645号公報に記載された方法では、アルミニウムに比べ密度の大きいタンタルやタングステンを電極材料として用いることにより、周波数温度特性を改善することができるが、電気抵抗損が大きくなり、位相速度も大きく減少するという問題がある。
【0013】
基板材料に四ほう酸リチウムを用いて、疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用する方法は、大きな位相速度を利用することができるが、水晶と比較して、温度安定性に劣るという問題がある。
例えば、特開平8‐125488号公報には、温度範囲が‐20℃〜80℃における周波数変化は600ppm程度とあり、STカット水晶やLSTカット水晶に比べ非常に悪い。
【0014】
また、四ほう酸リチウムは、水晶と比較して、高価で安定性が悪いという問題もある。
また、疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用する場合、文献1の方法では、2軸回転カット角を用いるため、弾性表面波の伝搬する位相速度の方向と、群速度の方向の違いを表す角度であるパワーフロー角を考慮する必要があり、高い回転角精度が要求されるという問題がある。
【0015】
また、文献2の方法では、水晶の1軸回転カット角とIDT電極の規格化膜厚h/λとの関係を特定することにより、周波数の温度変化が3次曲線を示すとしている。
しかし、文献2の方法では、IDT電極の規格化膜厚h/λが0.0125と薄いため、仮に1GHz以上の高周波数を対象とするためには、電極幅および電極間隔を小さくする必要があることに加え、位相速度を5730m/秒とすると、IDT電極膜厚を716Åと非常に薄く形成しなければならない。このため、電気抵抗損が大きくなり、Q値が低下するという問題がある。
【0016】
また、反射器1本あたりの反射率が小さくなるため、反射器の対数を多くとる必要があり、装置のサイズが大きくなるという問題がある。
さらに、製造プロセス上では、ワイヤボンダの際に、電極が剥離するなどして製造歩留まりが低下するという問題がある。
そこで、本発明の目的は、温度特性に優れ、h/λを小さくすることなく、動作周波数を大きくすることが可能な弾性表面波装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本願発明は、オイラー角が(0,θ=100〜150,0)の範囲で切り出された水晶基板と、前記水晶基板の主表面上に疑似縦波型漏洩弾性表面波を励振するIDT電極を備え、前記IDT電極膜厚をh、前記疑似縦波型漏洩弾性表面波の波長をλで表したIDT規格化電極膜厚h/λと前記θが、前記θ=142.4°、かつ、h/λ=0.0275、または、前記θ=143.5°、かつ、h/λ=0.03、または、前記θ=144.1°、かつ、h/λ=0.0425であることを特徴とする。
【0018】
これにより、1軸回転カットの水晶基板を用いて疑似縦波型漏洩弾性表面波を発生させることが可能となることから、製造上の管理が容易で、安定性のよい弾性表面波装置を安価に提供することができる。
また、位相速度の大きな疑似縦波型漏洩弾性表面波を用いるため、レイリー波やリーキー波を用いた場合に比べて、電極幅および電極間隔を大きくすることが可能となる。このため、IDT規格化電極膜厚h/λの大きさに制約がある場合においても、レイリー波やリーキー波を用いた場合に比べて、IDT電極膜厚hに余裕を持たせることができ、電気抵抗損の増大を抑制して、Q値の低下を防止することが可能となるとともに、ワイヤーボンドの際の電極剥離を防止することができ、高周波動作への対応を容易化することができる。
と同時に、θとIDT規格化電極膜厚h/λとを特定の値に設定するだけで、周波数温度偏差を小さくすることができ、製造工程を複雑化することなく、温度特性の良好な弾性表面波装置を容易に提供することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波装置について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る弾性表面波装置の概略構成を示す斜視図、図1(b)は図1(a)のA−A線で切断した断面図である。
【0024】
図1において、水晶基板1の主表面上には、IDT電極2および反射器電極3a、3bが形成されている。なお、PはIDT電極2のピッチ、λはIDT波長、hはIDT電極2の厚みであり、IDT波長λは、IDT電極2のピッチPの2倍となる。
ここで、この水晶基板1は、その表面の切り出し角および伝搬方向が、オイラー角(0,θ=100〜150,0)の範囲になるように設定される。すなわち、
1軸回転Y板カットにおいて、θが100〜150°の範囲になるように設定する。
【0025】
IDT電極2は、水晶基板1上に、+X軸と平行に伝搬する疑似縦波型漏洩弾性表面波を励振するもので、IDT規格化電極膜厚h/λは0.02以上に設定される。なお、IDT規格化電極膜厚h/λは、IDT電極膜厚hをIDT波長λで規格化したものである。
反射器電極3a、3bは、水晶基板1の表面上で発生した疑似縦波型漏洩弾性表面波を反射させ、共振させる。
【0026】
これにより、水晶を用いながらも、位相速度が5700m/秒以上と高速な疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用することができ、更なる高周波化に向けても、電極形成を有利に行うことができる。
また、安価、高安定で温度特性に優れた水晶を基板材料として用いることが可能となるとともに、回転Y板上をx軸方向に伝搬する疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用するため、製造上の管理を容易化できるとともに、安定して動作する弾性表面波装置を安価で提供することができる。
【0027】
また、IDT規格化電極膜厚h/λが0.02以上となるように設定されるので、IDT電極膜厚hを大きくすることができ、電気抵抗損を小さくすることが可能となるなるとともに、Q値を大きくすることが可能となる。
また、IDT規格化電極膜厚h/λが十分厚いので、仮に、1GHzの信号周波数を対象とした場合、疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用すると、IDT電極膜厚hを1140Åとすることができ、製造プロセスを有利に行うことができる。
【0028】
さらに、反射器の反射率を大きくすることができ、反射器の対数を減らすことが可能となるため、装置を小型化できる。
また、ワイヤボンダの際、IDT電極膜厚hが薄いことによる電極剥離などの製造歩留まりの低下を抑えることができ、製造プロセスを容易化することができる。
【0029】
図2は、本発明の第1実施形態に係る弾性表面波装置の水晶基板の切り出し方位を示す図である。
図2において、Z軸を中心に、反時計方向を正として回転した第一回転角φと、X軸を中心に、反時計方向を正として回転した第二回転角θで切断面Mを表示し、回転後のZ軸を中心に、反時計方向を正として回転した第三回転角Ψを基板面内の表面伝搬方向とした場合に、オイラー角表示で(φ,θ,Ψ)と表す。
【0030】
図3は、本発明の第1実施形態に係る弾性表面波装置の電気機械結合係数とオイラー角θとの関係を示す図である。なお、この第1実施形態では、水晶の弾性定数、圧電定数、誘電率、密度および線膨張係数を考慮し、オイラー角が(0,θ,0)の回転Y板カットにおける疑似縦波型漏洩弾性表面波の位相速度を、Campbell等の定式化に基づくSAW特性シミュレーションにより解析した。そして、このSAW特性シミュレーションで求められた位相速度に基づいて、以下の(1)式を用いることにより、電気機械結合係数k^2を算出した。
【0031】
K^2=2・(Vpo−Vps)/Vpo ・・・(1)
ただし、Vpo、Vpsは、それぞれ基板表面が電気的開放、電気的短絡の位相速度である。
図3において、θが100度から150度の範囲で、電気機械結合係数k^2が0以上となることがわかる。従って、θを100度から150度の範囲とすることにより、位相速度の大きい疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用した弾性表面波装置を構成できる。
【0032】
また、この水晶基板は、回転Y板カットであり、水晶基板面は、X軸に平行でX軸の回りに1軸回転切断して作ることができるので、製造上の管理が容易である。
このように、上述した第1実施形態によれば、水晶基板の表面の切り出し角および伝搬方向が、オイラー角(0,100〜150,0)で特定され、位相速度が5700m/秒以上の疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用することができる。
【0033】
このため、弾性表面波装置を高周波動作させた場合においても、電極形成の上で有利である。例えば、1GHzの信号周波数を対象とした場合、レイリー波を用いたSTカット水晶や、漏洩弾性表面波を用いたLSTカット水晶では、1μm以下の電極幅および電極間隔が必要となるが、疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用した場合には、電極幅、電極間隔は1.425μmとなる。
【0034】
また、基板材料として水晶を用いているので、安価、高安定で温度特性に優れており、回転Y板上をX軸方向に伝搬する疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用するため、製造上の管理が容易となる。
また、IDT規格化電極膜厚h/λを0.02以上に設定しているので、IDT電極膜厚hを大きくすることができる。例えば、1GHzの信号周波数を対象とした場合、IDT電極の規格化膜厚h/λ=0.0125の場合には、IDT電極膜厚が716Åと非常に薄くなるのに対し、IDT電極の規格化膜厚h/λ=0.02の場合には、IDT電極膜厚hを1140Åとすることができる。
【0035】
このため、電気抵抗損を低減し、Q値を大きくすることが可能となるとともに、反射器1本あたりの反射率を大きくして、装置を小型化することができる。また、ワイヤボンダの際、薄い電極膜厚に起因する電極剥離などの製造歩留まりの低下を抑え、製造プロセスを容易にすることができる。
図4、5、6は、本発明の第2実施形態に係る弾性表面波装置における周波数温度偏差の温度依存性を示す図である。
【0036】
なお、図4、5、6は、オイラー角が(0,135〜150,0)における疑似縦波型漏洩弾性表面波の周波数温度特性を有限要素法により解析した結果を示すもので、さらに、上述した各種定数にIDT電極膜厚を考慮して解析されたものである。ここで、θとIDT規格化膜厚h/λとの組み合わせで、温度25℃の時の周波数を中心周波数とした場合の周波数温度特性の一例を示した。
【0037】
すなわち、図4(a)は、θ=142.4°、かつ、h/λ=0.0275に設定した場合(P1)、図4(b)は、θ=142.4°、かつ、h/λ=0.0425に設定した場合(P2)、図5(a)はθ=143.5°、かつ、h/λ=0.03に設定した場合(P3)、図5(b)はθ=143°、かつ、h/λ=0.015に設定した場合(P4)、図6(a)はθ=144.1°、かつ、h/λ=0.0425に設定した場合(P5)、図6(b)は、θ=144.1°、かつ、h/λ=0.0225に設定した場合(P6)を示す。
【0038】
図4(a)のP1、図5(a)のP3、図6(a)のP5は、動作温度範囲である‐40℃から90℃に渡って3次温度特性を示し、周波数偏差は小さい。
一方、図4(b)のP2、図5(b)のP4、図6(b)のP6は、動作温度範囲である‐40℃から90℃で、周波数偏差は非常に大きな値となる。
図7は、本発明の第2実施形態に係る弾性表面波装置におけるh/λとオイラー角θとの関係を示す図である。
【0039】
図7において、θが140≦θ≦150 及びIDT規格化膜厚h/λが0.02以上の範囲にあり、かつ、θとIDT規格化膜厚h/λが以下の(2)式を満たす範囲において、温度特性の良好な疑似縦波型漏洩弾性表面波を利用できることが確認された。
θ=128十444×(h/λ)±4 ・・・(2)
ここで、図4(a)のP1、図5(a)のP3、図6(a)のP5は、この範囲内にあり、図4(b)のP2、図5(b)のP4、図6(b)のP6は、この範囲外にある。
【0040】
このように、上述した第2実施形態によれば、オイラー角が(0,θ=140〜150,0)の範囲で切り出された水晶基板を用い、θと組み合わせた場合、周波数の温度変化が3次曲線を示すように、IDT規格化電極膜厚h/λを特定する。このため、周波数温度偏差を小さな値に設定することが可能となるとともに、IDT規格化電極膜厚h/λを容易に大きくすることが可能となり、1GHz以上で安定して動作可能な弾性表面波装置を安価に提供することができる。
【0041】
ここで、IDT規格化電極膜厚h/λが0.02以上で、IDT規格化電極膜厚h/λとθとの組み合わせを、(2)式のように特定することが好ましく、さらには、θ=142.4°、かつ、h/λ=0.0275、または、θ=143.5°、かつ、h/λ=0.03、または、θ=144.1°、かつ、h/λ=0.042に設定することが好ましい。ただし、θは±15分の範囲、IDT電極膜厚hは±100Åの範囲は、誤差範囲として含まれるものとする。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、1軸回転カットの水晶基板を用いて疑似縦波型漏洩弾性表面波を発生させることが可能となることから、製造上の管理が容易で、安価で安定性のよい弾性表面波装置を提供することができる。
また、位相速度の大きな疑似縦波型漏洩弾性表面波を用いるため、レイリー波やリーキー波を用いた場合に比べて、電極幅および電極間隔を大きくすることが可能となる。このため、IDT規格化電極膜厚h/λの大きさに制約がある場合においても、レイリー波やリーキー波を用いた場合に比べて、IDT電極膜厚hに余裕を持たせることができ、電気抵抗損の増大を抑制して、Q値の低下を防止することが可能となるとともに、ワイヤーボンドの際の電極剥離を防止することができ、高周波動作への対応を容易化することができる。
【0043】
さらに、IDT規格化電極膜厚h/λを0.02以上に設定しているので、高周波動作させた場合においても、IDT電極膜厚hを大きくすることができ、反射器1本あたりの反射率を大きくして、装置を小型化することが可能となるとともに、電極剥離を防止して、製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る弾性表面波装置の概略構成を示す斜視図、図1(b)は図1(a)のA−A線で切断した断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る弾性表面波装置の水晶基板の切り出し方位を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る弾性表面波装置の電気機械結合係数とオイラー角θとの関係を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る弾性表面波装置における周波数温度偏差の温度依存性を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る弾性表面波装置における周波数温度偏差の温度依存性を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る弾性表面波装置における周波数温度偏差の温度依存性を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る弾性表面波装置におけるh/λとオイラー角θとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 水晶基板
2 IDT電極
3a、3b 反射器電極
Claims (1)
- オイラー角が(0,θ=100〜150,0)の範囲で切り出された水晶基板と、
前記水晶基板の主表面上に疑似縦波型漏洩弾性表面波を励振するIDT電極を備え、
前記IDT電極膜厚をh、前記疑似縦波型漏洩弾性表面波の波長をλで表したIDT規格化電極膜厚h/λと前記θが、
前記θ=142.4°、かつ、h/λ=0.0275、または、前記θ=143.5°、かつ、h/λ=0.03、または、前記θ=144.1°、かつ、h/λ=0.0425であることを特徴とする弾性表面波装置。
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