JP3873383B2 - 内燃機関の蒸発燃料処理装置 - Google Patents

内燃機関の蒸発燃料処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は部分負荷時などに成層燃焼を行う火花点火内燃機関の蒸発燃料の処理装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
火花点火式の内燃機関として燃料を気筒内に直接的に噴射し、これを点火栓により点火燃焼させ、とくに部分負荷運転時など燃料噴射時期を圧縮行程の後半に設定することで、圧縮上死点付近において点火栓の近傍にのみ可燃混合気層を形成して成層燃焼させ、全体としては空燃比が40を越える超リーン混合気による燃焼を実現している。
【0003】
この内燃機関にあっては、燃料タンクに溜まった蒸発燃料(ガス)の吸気系への還流を、例えば特開平5−223017号公報にもあるように、成層燃焼中ではなく、均質混合気を供給してのストイキ運転中に限ることにより、リーン運転が不安定となるのを回避している。
【0004】
これはリーン運転中にストイキ運転時と同じように吸気系への蒸発燃料ガスの還流を行うと、点火栓近傍の可燃混合気の濃度が、この還流蒸発燃料の影響で大きく変動し、濃くなり過ぎても着火が不安定になるため、蒸発燃料の還流を成層燃焼時には完全に停止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、車両の運転条件によっては、例えば外気温の高い状態で蒸発燃料が多量に発生し、カーボンキャニスタの吸着能力の限界に達したときにも吸気系への還流を停止したままにすると、発生した蒸発燃料がそのまま大気中に放出されることがある。
【0006】
したがって、リーン運転中であっても蒸発燃料を吸気系に還流する必要が生じるが、上記のとおりストイキ燃焼時と同じように還流すると、燃焼の悪化が避けられない。
【0007】
一方、成層燃焼時にはNOxの排出量は相対的には少ないが、リーン混合気ではNOxを排気系の触媒で還元することが難しいため、排気還流によりNOxの発生そのものを抑制するようにしている。ところで排気還流は燃焼温度や圧力を下げる作用があり、これによりNOxの発生を抑えるのであって、燃焼そのものは排気還流しないときよりも悪化するのだが、この排気還流時に蒸発燃料を導入すれば、さらにリーン運転が不安定化してしまう。
【0008】
したがって、成層燃焼中に蒸発燃料の吸気系への導入を行うにしても、排気還流のとの関係を十分に考慮しないと、燃焼が悪化し、所定のリーン運転が不能となることもありうる。
【0009】
本発明はこのような問題に対処すべく提案されたもので、リーン混合気での成層燃焼時には蒸発燃料の導入量と排気還流量とを相関的に制御することで、燃焼の安定性を維持しつつ蒸発燃料の適確な処理を実現することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、機関の少なくとも部分負荷時に燃焼室の点火栓近傍の限られた領域に可燃混合気層を形成してリーン燃焼する一方、高負荷時には燃焼室全域に均質混合気を供給してストイキ燃焼する内燃機関において、燃料タンクに発生した蒸発燃料を吸気中に導入する蒸発燃料処理手段と、機関の運転条件に応じて排気の一部を吸気中に還流させる排気還流制御手段と、前記リーン燃焼時に吸気中に導入する蒸発燃料量に応じて排気還流量を補正する補正手段とを備え、前記補正手段はリーン燃焼時に吸気中に導入される蒸発燃料の濃度が濃くなるほど排気還流量を減少させる。
【0012】
第2の発明は、排気空燃比を検出する手段と、検出した空燃比に基づいて空燃比フィードバック補正係数を算出する手段と、同一運転領域における蒸発燃料の吸気系への導入時の空燃比フィードバック補正係数と非導入時の空燃比フィードバック補正係数とを比較して蒸発燃料の濃度を検出する手段とを備える。
【0013】
第3の発明は、前記蒸発燃料処理手段が、燃料タンクの燃料を吸着するキャニスタと、キャニスタから離脱した蒸発燃料の吸気通路への導入量を制御するパージ制御弁と、蒸発燃料の目標導入量に応じて決まるパージ制御弁の開度を吸入負圧に応じて補正する手段とを備える。
【0014】
第4の発明は、排気通路にリーンNOx触媒を設置し、酸素過剰雰囲気においても排気中のNOxを還元するようにした。
【0015】
【発明の作用・効果】
第1の発明において、リーン混合気での成層燃焼時に、蒸発燃料が吸気系に導入れさると、その導入量に応じて排気還流量が調整される。例えば蒸発燃料の導入量が多くなり、成層燃焼が不安定化しやすいときは排気還流量は減少し、逆に蒸発燃料の導入量が少なく、燃焼の安定性が高まるときは、排気還流量は増大する。すなわち、導入される蒸発燃料の濃度によって点火栓近傍に形成される可燃混合気層の濃度が変動し、成層燃焼が不安定化しやすくなるが、濃度が濃くなると排気還流率を下げることで、燃焼の安定性を保つことができる。このようにして、排気還流によりNOxの発生を抑制しつつ、かつ燃焼の安定性、ひいては運転性能を損なわずに、蒸発燃料を吸気系に導入して燃焼処理することが可能となる。
【0017】
第2の発明において、排気空燃比は蒸発燃料の吸気系への導入時と非導入時とでは変化し、導入に伴い空燃比は濃くなる。ストイキ運転中における空燃比を目標値と一致させるように制御される空燃比のフィードバック補正係数は、実際の空燃比に応じて変化し、したがって、蒸発燃料の導入時と非導入時とのフィードバック補正係数を比較することにより、導入時の蒸発燃料の濃度が正確に推定できる。
【0018】
第3の発明において、吸気系に導入される蒸発燃料量はパージ制御弁の開度が同一ならば吸入負圧に応じて変動するが、例えば吸入負圧が強まるとパージ制御弁の開度を減少させるように補正を行うことで、リーン運転中に吸入負圧が変動しても、蒸発燃料の導入量は正確に目標値に維持でき、リーン燃焼の安定性を保てる。
【0019】
第4の発明において、リーン運転中に蒸発燃料の導入量に応じて排気還流率が減少したときなど、排気中にはNOxとHCが増えるが、リーンNOx触媒がHCの存在する条件下においてNOxを還元するので、NOxの排出量を減少させることができる。
【0020】
【実施の形態】
以下本発明の最良の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1において、20は機関本体であり、21は吸気通路、22は排気通路、23は排気還流通路を示す。
【0022】
排気還流通路23には排気還流制御弁10が設けられ、吸気中に還流される排気還流量を後述するコントローラ6からの信号に基づいて運転条件に応じて制御する。
【0023】
排気通路22には排気中のNOxを還元するリーンNOx触媒19aが設置され、このリーンNOx触媒19は酸素過剰雰囲気においてもNOxを還元できる触媒で、その下流には理論空燃比のときに排気中のNOxの還元と、HC,COの酸化とを行う三元触媒19bが設置される。
【0024】
機関本体20の燃焼室に直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁7が設けられ、燃料は点火栓8によって点火燃焼させられる。燃料噴射弁7からの燃料噴射量、噴射時期についても、後述するようにコントローラ6からの信号により運転状態に応じて制御される。
【0025】
吸気通路21のコレクタ14には、パージ制御弁9を介して蒸発燃料の導入通路13が接続し、キャニスタ12に吸着した燃料タンク11からの蒸発燃料を、後述するようにコントローラ6からの信号に応じて運転状態に応じて吸気系に導入する。キャニスタ12は燃料タンク11の上部空間と連通し、燃料タンク11内で発生した蒸発燃料を吸着剤16に吸着し、パージ制御弁9が開弁すると、コレクタ14の負圧により大気開放口17からの大気と共に吸着されていた燃料が離脱吸引される。
【0026】
前記燃料噴射弁7、点火栓8、パージ制御弁9並びに排気還流制御弁10の作動を制御するコントローラ6には、機関クランク角(回転数)を検出するクランク角センサ2、吸入空気量を検出する吸入空気量センサ3、スロットルバルブ開度を検出するスロットル開度センサ4、排気中の酸素濃度を検出する排気センサ5、機関冷却水温を検出する水温センサ18などからの各検出信号が入力し、これらに基づいて運転状態に応じて、後述するように燃料噴射量、噴射時期、点火時期、蒸発燃料導入量(パージ量)、排気還流量などを制御する。
【0027】
とくにコントローラ6は、部分負荷時などに燃料噴射時期を圧縮行程の後半に設定し、圧縮上死点近傍で点火栓8の周辺にのみ可燃混合気層を形成し、成層燃焼により全体的にはリーン混合気を安定して燃焼させるが、このとき排気還流制御弁10を開いて排気還流を行うと同時にパージ制御弁9を開いて蒸発燃料を吸気系に導入する場合には、その導入量に応じて排気還流量を調整するようになっている。例えば蒸発燃料の導入量(濃度)が多く、点火栓近傍の混合気が濃くなり過ぎるため成層燃焼が不安定化しやすいときは排気還流量を減少させ、逆に蒸発燃料の導入量が少なく、燃焼の安定性が高まるときは排気還流量を増大し、このようにして、排気還流によりNOxの発生を抑制しつつ、かつ燃焼の安定性、運転性能を損なわずに、蒸発燃料を吸気系に導入して燃焼処理することを可能とする。
【0028】
なお、コントローラ6は高負荷時など燃料噴射時期を吸気行程の前半に設定することにより、点火までの間に噴射燃料を空気と十分に予混合し、燃焼室内の全域に均一的なストイキ混合気層を形成し、これらを均質燃焼させ、高出力を確保するが、このときに正確に理論空燃比となるように排気センサ5の出力に基づいて燃料供給量をフィードバック制御し、三元触媒19bでの浄化効率を最良に維持する。
【0029】
以下、コントローラ6で行われる制御内容について図2〜図14に基づいて詳しく説明する。
【0030】
まず、図2は燃料噴射量を制御するフローチャートであり、ステップ1では吸入空気量Qa、エンジン回転数Neを検出し、ステップ2でこれら吸入空気量Qaと回転数Neとから基本燃料噴射量Tpを、Tp=K×(Qa/Ne)として演算する。
【0031】
ステップ3では後述する図10のルーチンによって成層燃焼によるリーン運転が許可されているかどうか判断する。リーン運転が許可されていないときは、理論空燃比によるストイキ運転のため、ステップ4〜6の制御を行い、リーン運転が許可されているときは、ステップ7、8の制御に移行する。
【0032】
ステップ4ではストイキ運転での空燃比フィードバック制御のため、図8のような排気(O2)センサの出力から公知のPI制御による空燃比フィードバック補正係数αを設定し、ステップ5では、後述する図3、図4に基づいて空燃比の学習値LALPHAを求め、これらによりストイキ(理論)空燃比とするための燃料噴射量Tiを、Ti=Tp×α×LALPHAとして算出する(ステップ6)。
【0033】
これに対してリーン運転が許可されているときは、ステップ7において空燃比フィードバック制御を中止し、オープン制御を行うため、フィードバック補正係数αを基準値(1.0)にクランプし、ステップ8では、基本燃料噴射量Tpと空燃比フィードバック補正係数αと基本学習値BSとに基づいて、目標とする空燃比(例えば空燃比22)になるように、燃料噴射量Tiを次式にしたがって求める。
【0034】
Ti=(14.7/22)×Tp×α×BS
そして、ストイキ運転のときには吸入行程で、リーン運転のときには圧縮行程で燃料が噴射されるように、エンジン回転に同期して所定のタイミングで燃料噴射が行われる。
【0035】
図3、図4は空燃比補正係数の学習のためのフローチャートである。
【0036】
ステップ1では始動後に初期化したかどうか判断し、初期化したときにはステップ3に進み、初期化していないときには、ステップ2で基本学習収束フラグFBSLTD、通常学習収束フラグFLRNTD、基本学習カウンタCBSLTD、通常学習カウンタCLRNTDをそれぞれ0にリセットする。すなわち、始動後に一度だけこれらの初期化を行う。ステップ3では基本学習収束フラグFBSLTDの値に基づいて基本学習が収束した(FBSLTD=1)かどうか判定する。
【0037】
FBSLTD=0(基本学習未収束)の場合は、基本学習を行うため、ステップ4へ進んで、学習マップ、学習マップの格子(Ne格子、Tp格子)、学習収束カウンタ及び学習領域指定フラグを基本学習用のものにセットする。すなわち、基本学習マップ:TBSLM、基本学習マップNe格子:TBSLN、基本学習マップTp格子:TBSLP、基本学習収束カウンタ:CBSLTD、基本学習領域指定フラグ:FBLMADの選択を行う。
【0038】
なお学習マップは、図5に示すように、エンジン回転数Neと基本燃料噴射量Tpとによる機関運転状態のエリア(0〜F)毎に、学習値と学習収束カウンタとを割り当ててある。また、学習領域指定フラグは、図6に示すように、機関運転状態のエリア(0〜F)に対応して設けられ、各エリアの学習カウンタの中で学習収束判定に使用するものについて、1にセットされている。
【0039】
ステップ5では、選択された基本学習マップから現在の機関運転状態(Ne,Tp)のエリアに対応する学習値LALPHAの検索を行う。次のステップ6では、後述する図7の学習値更新ルーチン(学習値更新手段)に従って、学習値LALPHAの更新を行う。
【0040】
ここで、学習値更新について図7のフローチャートにしたがって説明する。
【0041】
ステップ1では、学習値更新条件(すなわち、空燃比フィードバック制御中で、水温Twが所定値以上など)が成立しているか否かを判定し、成立している場合のみステップ2〜5に移行する。
【0042】
ステップ2では空燃比フィードバック補正係数αの平均値Mαを次式により算出する。
【0043】
Mα=(α1+α2)/2
なお、α1はリーンからリッチに反転したときの直前の空燃比フィードバック補正係数、α2はリッチからリーンに反転したときの直前のフィードバック補正係数である(図8参照)。
【0044】
ステップ3では、空燃比フィードバック補正係数αの平均値Mαの基準値(1.0)からの偏差に基づき、次式に従って、学習値LALPHAを更新する。
【0045】
LALPHA=LALPHA+(Mα−1.0)×GAIN
なお、GAINは所定値で、0<GAIN<1である。ステップ4では更新後のLALPHAを選択中の学習マップの所定位置に格納する。ステップ5において、更新したエリアに対応する選択中の学習収束カウンタ(CBSLTDiまたはCLRNTDi)をカウントアップして、学習値更新ルーチンを終了する。
【0046】
図3〜図4のフローに戻って、ステップ7では、例えば図6に示すような基本学習領域指定フラグFBLMADによって指定された全ての領域(図9(a)参照)において、学習収束カウンタCBSLTDiが所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上ならば基本学習は収束したと判断し、ステップ8で基本学習収束フラグFBSLTD=1として、本処理を終了する。
【0047】
なお、基本学習を早く収束させるためには、図9(b)のように全運転領域を少ない数(1つでも可)の学習領域でカバーするように基本学習マップの格子を設定し、その領域だけを学習領域として指定する。精度を必要としない場合はこのようにすることでリーン運転に早く移行できる。
【0048】
ステップ3での判定でFBSLTD=1(基本学習収束)であれば、通常学習を行うためステップ9へ進む。
【0049】
ステップ9では、学習マップ、学習マップの格子(Ne格子、Tp格子)、学習収束カウンタ及び学習領域指定フラグを通常学習用のものにセットする。すなわち、通常学習マップ:TLRNM、通常学習マップNe格子:TLRNN、通常学習マップTp格子:TLRNP、通常学習収束カウンタ:CLRNTD、通常学習領域指定フラグ:FLRMADの選択を行う。
【0050】
次のステップ10では、選択された通常学習マップから現在の機関運転状態(Ne,Tp)のエリアに対応する学習値LALPHAの検索を行う。ステップ11では、前述の図7の学習値更新ルーチンに従って、学習値LALPHAの更新を行う。次のステップ12では、通常学習領域指定フラグFLRMADによって指定された全ての領域(図16(a)参照)において、学習収束カウンタCLRNTDiが所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上ならば通常学習は収束したと判断し、ステップ13で通常学習収束フラグFLRNTD=1として、本処理を終了する。
【0051】
通常学習指定領域として、例えば図9(a)に示すように指定すると、リーン運転時の空燃比精度が高くなるが、図9(b)に示すように平地定常走行領域のみを指定すると、パージ開始、リーン運転開始を早めることができる。
【0052】
図10はリーン運転許可判定のフローチャートであり、ステップ1では、機関回転数Ne、基本燃料噴射量Tp及び水温Tw等に基づいて予め定めたリーン運転条件か否かを判定し、リーン運転条件のときはステップ2へ進む。
【0053】
ステップ2では、基本学習収束フラグFBSLTD=1か否かを判定し、YESの場合にステップ3へ進む。ステップ3では通常学習収束フラグFLRNTD=1か否かを判定し、フラグ=1のときにはステップ4へ進む。
【0054】
ステップ4では、図11の累積パージ量算出ルーチンにより算出される始動後の累積パージ量PRGQが所定値以上か否かを判定し、所定値以上の場合にステップ5へ進む。ステップ5ではリーン運転を許可する(リーン運転許可フラグセット)。ステップ1〜4での判定のいずれかでもNOの場合は、ステップ6へ進んでリーン運転を不許可とする(リーン運転許可フラグリセット)。
【0055】
始動後の累積パージ量PRGQが所定値以上のときのみリーン運転を許可するのは、パージガス濃度が非常に濃いままリーン運転に移行して成層燃焼が不安定化するのを防止するためである。
【0056】
図11は蒸発燃料の累積パージ量を求めるフローチャートである。
【0057】
このフローは0.1秒ごとに繰り返され、0.1秒ごとの目標パージ流量Qfを積算することにより、累積パージ量PRGQを次のように求める。
【0058】
PRGQ=PRGQ+Qf/600
なお、累積パージ量は機関の始動毎にクリアされる。目標パージ流量Qfは、パージ制御弁開度を算出する図12のキャニスタパージ制御ルーチンにおいて算出される。
【0059】
図12はキャニスタパージ制御のフローチャートで、ステップ1では冷却水温、空燃比フィードバック制御(λコントロール)、燃料カット状態などに基づいて所定のキャニスタパージ条件かどうかを判定し、所定の条件を満たしているときはステップ2において基本学習フラグFBSLTD=1かどうか判断する。基本学習が収束(FBSLTD=1)しているときは、ステップ3で吸入空気量Qa、スロットル開度TVO、エンジン回転数Neを検出する。そして、ステップ4でこれらに基づいて目標パージ量Qeを次式により算出する。
【0060】
Qe=Qa×β×(14.7/目標空燃比)
なお、βは運転条件により定まる定数であり、目標空燃比もそのときの運転条件により決まる。
【0061】
ステップ5ではスロットル開口面積ATVOを、ATVO=ATH×(1−cosTVO)として算出する。なお、ATHはスロットル径である。
【0062】
ステップ6では機関回転数Neとスロットル開口面積ATVOとから、マップを参照して吸入負圧Boostを算出し、さらにステップ7において、この吸入負圧Boostと目標パージ量Qeに共づいてマップからパージ制御弁開度を算出する。この場合、同一の目標パージ量について、吸入負圧Boostが強いときはパージ制御弁開度が相対的に小さくなる。
【0063】
なお、上記したステップ1、2においていずれも条件を満たしていないときは、ステップ8に進み、目標パージ量Qe=0として、蒸発燃料の吸気系への導入(パージ)は中止する。
【0064】
次に、図13は吸気系にパージされる蒸発燃料の濃度を推定するフローチャートである。
【0065】
まず、ステップ1では燃料噴射量Tp、エンジン回転数Neを検出し、ステップ2で機関運転状態で区切った格子エリア内で空燃比フィードバック補正係数αが2回反転したかどうか検出する。2回反転していないときは、パージガス濃度判定不可能のため、本ルーチンを終了する。なお、同一領域内で2回の反転があるときとは、空燃比がフィードバック制御されているストイキ運転時である。
【0066】
2回反転したときは、パージガス濃度が判定可能なので、ステップ3において、空燃比フィードバック補正係数平均値Mαを、Mα=(α1+α2)/2として算出し、これを非パージ時に求めた同じ運転領域(TpとNeに基づく)での空燃比フィードバック補正係数の基本学習値BSと比較し、次のようにして蒸発燃料濃度Deを算出する。
【0067】
De=(Mα−BS)×k
ただし、kは定数である。
【0068】
混合気の空燃比は蒸発燃料の導入量が一定だとすると、その濃度に依存して変化し、排気センサ5の出力は空燃比に応じて変化する。したがって、蒸発燃料濃度が薄ければ、空燃比フィードバック補正係数平均値Mαは非パージ時の学習値であるBSに近くなり、濃ければその差が大きくなる。したがってこれらの差に所定の定数をかけることにより、濃度Deを算出することができる。そして、この濃度Deを用いて次にリーン運転時に移行したときの排気還流率を修正するのである。
【0069】
さらに図14は排気還流量を制御するフローチャートであり、ここでは吸気系に導入される蒸発燃料(パージガス)の濃度との関係に基づいて排気還流量が修正される。
【0070】
ステップ1で燃料噴射量Tpとエンジン回転数Neとを検出し、ステップ2において、これらに基づいてマップを参照して排気還流制御弁(EGR弁)開度EVOを算出する。なお、EVOは低負荷、低回転域で大きくなるにように設定される。
【0071】
ステップ3では現在、成層運転中かどうか判断し、成層運転中でなければ補正が必要でないので本ルーチンを終了するが、成層運転中ならば排気還流量の補正が必要なためステップ4に進む。ステップ4ではマップを参照し、そのときの設定空燃比と最新の蒸発燃料濃度Deとに基づいてEGR弁補正係数EGRHOSを算出する。補正係数は、1≧EGRHOS>0であり、Deが大きいときほど補正係数は小さくなる。なお、空燃比については、薄くなるほどEGR弁の補正量を少なくする。
【0072】
そして、ステップ5においてEGR弁開度EVOを次のようにして補正する。
EVO=EVO×EGRHOS
したがって、排気還流制御弁開度としては、吸気系に導入される蒸発燃料の濃度が濃いほど、開度が減少方向に補正され、排気還流量を減少させる。
【0073】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0074】
リーン運転時に蒸発燃料の吸気系への導入条件、つまりパージ条件が成立すると、パージ制御弁9を開いて蒸発燃料のパージを行う。
【0075】
成層運転中は、導入された蒸発燃料により、点火栓8の近傍にのみ形成される可燃混合気層の濃度に影響が出て、例えば濃すぎても成層燃焼が不安定となるため、そこでパージ量はリーン運転を損なわないように目標値が決められ、これにより成層燃焼の安定性は保たれる。
【0076】
なお、パージ制御弁9の開度はパージ量の目標値によって決まり、またそのときの吸入負圧を推定し、吸入負圧に応じて開度を修正するので、常に精度よくパージ量を目標値に維持できる。
【0077】
一方、成層運転時には排気還流制御弁10を開いて排気の一部を吸気中に還流し、これによりNOxの発生量を抑制する。
【0078】
排気還流は燃焼の最高温度、圧力を下げ、燃焼を抑制することで、NOxの発生量を減少させる。したがって、排気還流中は排気還流しないときに比較して燃焼条件は悪くなる。このような排気還流中に上記したパージ条件が成立すると、とくに燃焼が不安定になりやすい。
【0079】
上記のように導入される蒸発燃料量を正確に目標値に維持しても、パージガスの濃度が濃いと、主として点火栓近傍に形成される混合気層が可燃範囲よりも過濃となり、燃焼が不安定化しやすく、パージガス濃度が薄いときは混合気が可燃域にあり、安定性が維持される。
【0080】
そこで、排気還流量をパージガス濃度に応じて補正するのであり、パージガス濃度が濃くなるほど、目標値よりも排気還流率を下げ、逆に濃度が薄いときには排気還流率を目標値に近づけている。
【0081】
このようにして、リーン運転中に吸気系に導入される蒸発燃料、つまりパージガスの濃度に応じて排気還流率を修正するので、良好な成層燃焼を保ちつつ、NOxを低減し、かつ蒸発燃料の処理を行って未燃HCなどがそのまま外部に放出されるのを防止することができる。
【0082】
ところで、吸気系に導入される蒸発燃料、すなわちパージガスの濃度が濃いときは、成層燃焼の悪化を回避するために排気還流率を下げるが、これに伴ってNOxの発生量は多くなり、同時に濃いパージガスのためHCの発生量も増えてくる。
【0083】
しかし、排気通路22にはリーンNOx触媒19aが設けられ、このリーンNOx触媒19aはストイキ混合気のときだけでなく、リーン混合気による酸素過剰雰囲気にあってもNOxを還元でき、しかもこのリーンNOx触媒19aは図15にもあるとおり、HC/NOx比が高いほどNOx転換率が高まる。このため、パージガス濃度が濃く、排気還流率を下げたことにより増えるNOxの排出量をリーンNOx触媒19aによって処理することが可能となり、この結果、リーン運転時に良好な成層燃焼と排気性能を両立できる。
【0084】
なお、リーンNOx触媒19aaはストイキ混合気による運転時にも、NOxの還元を行うタイプのものでもよく、この場合には三元触媒19bを省いてもストイキ運転中においてNOxを低減できる。
【0085】
上記実施形態において、排気還流量をパージガス濃度に応じて補正したが、目標とするパージガス流量が変化するときは、このパージガス流量に応じて排気還流率を補正してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】燃料噴射量を算出するフローチャートである。
【図3】空燃比補正係数の学習を示すフローチャートである。
【図4】同じくフローチャートである。
【図5】学習領域を示す説明図である。
【図6】学習領域指定フラグを示す説明図である。
【図7】学習値の更新を示すフローチャートである。
【図8】排気センサの出力と空燃比フィードバック補正係数の関係を示す説明図である。
【図9】学習収束判定領域を示す説明図である。
【図10】リーン運転条件の判定を示すフローチャートである。
【図11】累積パージ量の算出を示すフローチャートである。
【図12】パージ制御弁の開度の算出を示すフローチャートである。
【図13】パージガス濃度の算出を示すフローチャートである。
【図14】排気還流制御弁の開度の算出を示すフローチャートである。
【図15】触媒のNOx転換率を示す特性図である。
【符号の説明】
2 クランク角センサ
3 吸入空気量センサ
4 スロットル開度センサ
5 排気センサ
6 コントローラ
7 燃料噴射弁
8 点火栓
9 パージ制御弁
10 排気還流制御弁
11 燃料タンク
12 キャニスタ
13 導入通路
19a リーンNOx触媒
20 機関本体
21 吸気通路
22 排気通路
23 排気還流通路

Claims (4)

  1. 機関の少なくとも部分負荷時に燃焼室の点火栓近傍の限られた領域に可燃混合気層を形成してリーン燃焼する一方、高負荷時には燃焼室全域に均質混合気を供給してストイキ燃焼する内燃機関において、燃料タンクに発生した蒸発燃料を吸気中に導入する蒸発燃料処理手段と、機関の運転条件に応じて排気の一部を吸気中に還流させる排気還流制御手段と、前記リーン燃焼時に吸気中に導入する蒸発燃料量に応じて排気還流量を補正する補正手段とを備え、前記補正手段はリーン燃焼時に吸気中に導入される蒸発燃料の濃度が濃くなるほど排気還流量を減少させることを特徴とする内燃機関の蒸発燃料処理装置。
  2. 排気空燃比を検出する手段と、検出した空燃比に基づいて空燃比フィードバック補正係数を算出する手段と、同一運転領域における蒸発燃料の吸気系への導入時の空燃比フィードバック補正係数と非導入時の空燃比フィードバック補正係数とを比較して蒸発燃料の濃度を検出する手段とを備える請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
  3. 前記蒸発燃料処理手段が、燃料タンクの燃料を吸着するキャニスタと、キャニスタから離脱した蒸発燃料の吸気通路への導入量を制御するパージ制御弁と、蒸発燃料の目標導入量に応じて決まるパージ制御弁の開度を吸入負圧に応じて補正する手段とを備える請求項1または2に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
  4. 排気通路にリーンNOx触媒を設置し、酸素過剰雰囲気においても排気中のNOxを還元するようにした請求項1〜3のいずれか一つに記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
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