JP3872868B2 - 燃料分配管 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に用いられる燃料分配管に関し、詳しくはその消音構造に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンエンジンの燃料噴射装置においては、低コスト化のために、燃料分配管からパルセーションダンパやプレッシャレギュレータ等のアクチュエータを廃止する方向にある。その廃止と併せて、低燃費化と排気ガス対策のために、インジェクタによるガソリンの噴射圧を高圧化して、噴射ガソリンを微粒化する方向にあるため、燃料分配管から放射音が発生し、新たな問題を起こしている。この放射音は、インジェクタ内の吐出弁の開閉によるガソリンの液圧変動(脈動)が燃料分配管の燃料通路に液中伝達して反射波となり、燃料分配管が共鳴管のように作用して発生する。
【0003】
もともと噴射圧が高いディーゼルエンジンにおいても、低燃費化と排気ガス対策のために、ノズルによる軽油の噴射圧の高圧化が必要となっており、しかもコモンレールシステムの採用によってさらなる高圧化が必要となっているため、燃料分配管からの放射音の低減はきわめて重要な課題となっている。
【0004】
なお、ガソリンエンジンにおける噴射圧は、一般的なインテークポート内噴射式の場合は2kg/cm2 であり、シリンダ内直接噴射式の場合は50〜200kg/cm2 である。ディーゼルエンジンにおける噴射圧は、一般的なものでは100〜200kg/cm2 であり、コモンレール式の場合は1000〜2000kg/cm2 である。
【0005】
従来、燃料分配管からの放射音を低減する方法としては、燃料分配管の燃料容積を大きくして、燃料のマスによって反射波を減少させる方法と、燃料分配管の外表面を消音材で包み込んで、放射音の大気放出を防ぐ方法とがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前者の方法では燃料分配管自体のサイズが大きくなり、後者の方法では消音材が嵩張るため、いずれもスペース面とコスト面で不利であった。また、従来の燃料噴射装置は、燃料分配管とその前の燃料ホース又はパイプに異物が侵入するのを防ぐために、燃料フィルタとしての燃料ストレーナを燃料分配管の外部に設ける必要があり、やはりスペース面とコスト面で不利であった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、サイズを大きくしなくても噴射圧の高圧化による放射音を低減することができ、スペース面とコスト面で有利な燃料分配管を提供することにある。さらには、燃料分配管に燃料フィルタ機能をもたせて、燃料ストレーナを省略することができる燃料分配管を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、管本体部にその長さ方向に延びるように形成された燃料通路と該燃料通路から分岐して噴射弁(ガソリンエンジンではインジェクタ、ディーゼルエンジンではノズル)に向かう二以上の分岐通路とを備えた燃料分配管において、各分岐通路から各分岐通路に面する燃料通路の各部位にかけて消音器が設けられ、前記消音器が、網状体又は濾紙で筒籠状に形成されて前記燃料通路を横切るように位置する濾過材と、該濾過材の端部にあって前記噴射弁に対し前記燃料通路を隔てた対向面に位置する吸音材とを有することを特徴とする。
【0010】
(1)前記吸音材は、噴射弁内の吐出弁の開閉に基づく燃料の脈動による異音を、噴射弁と対向することで直接受け止め、吸音することにより第一消音作用を果す。
【0011】
吸音材は、特に限定されないが、耐燃料性の軟質合成樹脂(例えばナイロン樹脂)、ゴム(例えばフッ素ゴム)等よりなるソリッド体、発泡体、海綿体又はポーラス組織体や、繊維よりなる綿状体等を例示できる。消音作用が大きい点で、発泡体、海綿体又はポーラス組織体が好ましい。また、吸音材の形状は、特に限定されず、例えば平板状でもよいが、吸音面積を大きくする意味で、凹凸板状に形成されることが好ましい。
【0012】
(2)前記濾過材には、分岐通路へ流れる燃料が通過する。この濾過材は、燃料の通常の流れに対しては実質的に抵抗とならないが、前記燃料の高速での脈動に対しては抵抗となることにより第二消音作用を果す。同時に、燃料フィルタとしても作用する。
【0013】
濾過材は、特に限定されないが、耐燃料性の合成樹脂(例えばナイロン樹脂)、金属(例えばステンレス鋼)等よりなる網状体、又は、繊維よりなる濾紙を例示できる。高度の燃料清浄性が必要な場合は、網状体やポーラス組織体の目を細かくしたり、濾紙を使用したりすることが好ましい。特に、噴射圧が50kg/cm2 以上である場合には、濾紙を使用することが好ましい。また、濾過材の形状は、濾過面積を大きくする意味で、筒籠状に形成されることが好ましい。
【0014】
消音器は前記吸音材と前記濾過材とを備え、上記の第一及び第二消音作用の相乗によって優れた消音作用を奏するとともに、燃料フィルタ作用も果すため、最も好ましい。
【0015】
消音器は、分岐通路と連続する噴射弁挿入穴から挿入可能に形成されることが好ましい。その場合、消音器に設けた環状フランジ部と分岐通路に設けた環状突部とが接触することにより、消音器が位置決めされるとともに、消音器の他部と分岐通路の他部とが接触しないことが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、本発明を直列4気筒ガソリンエンジンの燃料分配管に具体化した実施形態の燃料分配管1を示している。この燃料分配管1は、燃料ホース又はパイプ(図示略)が接続される管本体部2と、該管本体部2から下方へ突出してインジェクタ10が取り付けられる4つの短筒状のインジェクタ取付部3とが、アルミニウム合金で一体成形されてなるものである。
【0017】
管本体部2の中心には断面丸形の燃料通路4が形成され、各インジェクタ取付部3の中心には燃料通路4から略直角に分岐してインジェクタ10の燃料取入口11に向かう断面丸形の分岐通路5が形成されている。すなわち、分岐通路5の先端部にはインジェクタ10のインレット部12が挿入されるインジェクタ挿入穴6が連続して形成されており、該インレット部12の端面に燃料取入口11が設けられている。
【0018】
13はインレット部12の途中部に形成された溝14に嵌着されて挿入穴との間をシールするOリングである。15はインレット部12の基端部に外挿されてインジェクタ取付部3の端面に当接するグロメットである。Oリング13及びグロメット15は、耐燃料性のゴムで形成されている。各分岐通路5と燃料通路4との境界には、各分岐通路5を若干縮径する環状突部7が形成されている。
【0019】
各分岐通路5から各分岐通路5に面する燃料通路4の各部位にかけては、消音器20が取り付けられている。この消音器20は、次の要素▲1▼▲2▼▲3▼からなり、インジェクタ挿入穴6から挿入可能なサイズに形成されている。
【0020】
▲1▼ 下部の環状フランジ部22と上部のキャップ部23とこれらを連結する複数本の支柱部24とが耐燃料性の合成樹脂で一体成形されてなる支持フレーム21。
【0021】
▲2▼ 耐燃料性の例えばナイロン樹脂で網状体に形成されて、支柱部24に支持された筒篭状の濾過材25。図3に示すように、濾過材25の外径は燃料通路4の内径より小さいため、濾過材25の回りには周囲通路9ができる。また、濾過材25はインジェクタ10の燃料取入口11と燃料通路4との間を通路的に完全に分離する形で配設されている。従って、図2に矢印で示すように、燃料通路4を流れる燃料Fは、周囲通路9を回り込んだり濾過材25を通過したりできるが、燃料通路4から分岐通路5へ流れる燃料Fは、必ず濾過材25を通過する。
【0022】
▲3▼ 耐燃料性の例えばフッ素ゴム発泡体により平円板状に形成されて、インジェクタ10との対向面であるキャップ部23の下面に嵌着又は接着された吸音材26。吸音材26の下面を凹凸状にして吸音面積を大きくすることもできる。
【0023】
消音器20はインジェクタ挿入穴6から挿入され、環状フランジ部22が環状突部7に接触・係止して位置決めされるため、組み付けやメンテナンスが容易である。消音器20の他部と燃料分配管1の他部とは、干渉を防ぐために接触しないようになっている。特にキャップ部23は、燃料通路4の分岐通路5とは反対側に凹設された逃がし穴8に隙間27をもって遊嵌されている。そして、キャップ部23と吸音材26が逃がし穴8に収まることで、燃料通路4の有効通過面積が減少しないようになっている。
【0024】
以上のように構成された燃料分配管1によれば、インジェクタ10による燃料の噴射圧を高圧化して、インジェクタ10内の吐出弁(図示略)の開閉に基づく燃料Fの脈動による異音が大きくなった場合でも、吸音材26が、その異音をインジェクタ10と対向することで直接受け止め、吸音することにより第一消音作用を果す。また、濾過材25は、燃料Fの通常の流れに対しては実質的に抵抗とならないが、燃料Fの高速での脈動に対しては抵抗となることにより第二消音作用を果す。この第一及び第二消音作用の相乗によって優れた消音作用を奏するため、従来のように燃料分配管の燃料容積を大きくしたり、燃料分配管の外表面を消音材で包み込んだりしなくても、放射音を効果的に軽減することができ、スペース面とコスト面で有利である。
【0025】
また、濾過材25は燃料フィルタとしても作用し、燃料分配管1とその前の燃料Fホース又はパイプ(図示略)に異物が侵入するのを防ぐため、従来のように燃料Fストレーナを燃料分配管1の外部に設ける必要がなく、やはりスペース面とコスト面で有利である。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)濾過材として濾紙を用いる場合に、濾紙を波形に折って濾過面積を大きくすること。
(2)ディーゼルエンジンにおける燃料分配管として具体化すること。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1又は2の発明に係る燃料分配管によれば、サイズを大きくしなくても噴射圧の高圧化による放射音を低減することができ、スペース面とコスト面で有利であるのに加え、燃料分配管に燃料フィルタ機能をもたせて、燃料ストレーナを省略することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る燃料分配管の正面図である。
【図2】 同燃料分配管の部分断面図である。
【図3】 図2のIII−III線断面図である。
【図4】 同燃料分配管に組み付ける消音器とインジェクタを示す分解斜視図である。

Claims (2)

  1. 管本体部(2)にその長さ方向に延びるように形成された燃料通路(4)と該燃料通路(4)から分岐して噴射弁(10)に向かう二以上の分岐通路(5)とを備えた燃料分配管において、各分岐通路(5)から各分岐通路(5)に面する燃料通路(4)の各部位にかけて消音器(20)が設けられ、前記消音器(20)が、網状体又は濾紙で筒籠状に形成されて前記燃料通路(4)を横切るように位置する濾過材(25)と、該濾過材(25)の端部にあって前記噴射弁(10)に対し前記燃料通路(4)を隔てた対向面に位置する吸音材(26)とを有することを特徴とする燃料分配管。
  2. 前記消音器(20)が、環状フランジ部(22)とキャップ部(23)とこれらを連結する複数本の支柱部(24)とが一体成形されてなる支持フレーム(21)を有し、前記濾過材(25)が前記支柱部(24)に支持され、前記吸音材(26)が前記キャップ部(23)に取着されている請求項1記載の燃料分配管。
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