JP3872308B2 - 車輌の走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌の走行制御装置に係り、更に詳細にはフィードバック制御量及びフィードフォワード制御量に基づき車輌の挙動を制御する車輌の走行制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車輌の走行制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる特開平5−301573号公開公報に記載されている如く、車輌の実ヨーレートが目標ヨーレートになるようフィードフォワード制御により操舵輪の舵角を制御し、車輌の実ヨーレートが目標ヨーレートになるようフィードバック制御により各車輪に対する駆動力の配分を制御するよう構成された車輌の走行制御装置が従来より知られている。
【0003】
かかる走行制御装置によれば、車輌の実ヨーレートが目標ヨーレートになるようフィードバック制御により各車輪に対する駆動力の配分が制御されるだけでなく、車輌の実ヨーレートが目標ヨーレートになるようフィードフォワード制御により操舵輪の舵角が制御されるので、フィードバック制御のみにより車輌のヨーレートが制御される場合に比して、車輌の実ヨーレートを効果的に目標ヨーレートに制御することができ、これにより車輌の挙動を効果的に制御することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、車輌の実ヨーレートはヨーレートセンサにより検出され、目標ヨーレートは車速センサにより検出される車速等に基づいて演算されるが、センサの検出値には誤差が含まれるので、検出誤差に起因する不適切な制御を防止するためにはフィードバック制御に不感帯を設定せざるを得ず、またフィードバック制御のハンチング防止等の制御の安定性確保の必要からフィードバックゲインを高くすることができない。
【0005】
従って車輌の目標ヨーレートと実ヨーレートとの偏差がフィードバックされる上述の従来の走行制御装置に於いては、車輌の目標ヨーレートと実ヨーレートとの偏差が実際に生じてから制御が開始されること及び上記理由から、車輌の挙動に対する制御の遅れが避けられず、制御の遅れの間に車輌の挙動が好ましくないレベルにまで悪化することがあるという問題がある。
【0006】
また上述の先の提案にかかる走行制御装置の如く車輌の実ヨーレートが目標ヨーレートになるようフィードフォワード制御により操舵輪の舵角が制御される場合には、上述の制御の遅れを低減することができるが、車輌の状況によってはフィードバック制御により各車輪に対する駆動力の配分を制御しフィードフォワード制御により操舵輪の舵角を制御するだけでは車輌の走行挙動を必ずしも確実に且つ効果的に安定化させることができない場合がある。
【0007】
本発明は、車輌の実ヨーレートが目標ヨーレートになるようフィードフォワード制御により操舵輪の舵角を制御し、車輌の実ヨーレートが目標ヨーレートになるようフィードバック制御により各車輪に対する駆動力の配分を制御するよう構成された従来の走行制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、互いに異なる作用により車輌の挙動を制御する複数の挙動制御手段を有する車輌に於いて、複数の挙動制御手段に対するフィードバック制御量及びフィードフォワード制御量の振り分けを車輌の状況に応じて変更することにより、車輌の状況に拘わらず車輌の挙動を確実に且つ効果的に制御することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち互いに異なる作用により車輌の挙動を制御する第一及び第二の挙動制御手段と、所定の好ましい走行状態に対応する車輌の目標挙動指標値と車輌の実際の挙動指標値との偏差に基づくフィードバック制御量を演算する手段と、所定の好ましい走行状態に於ける車輌の運動状態量と車輌の実際の運動状態量との偏差を演算する手段と、少なくとも前記運動状態量の偏差に基づいてフィードフォワード制御量を演算する手段と、車輌の状態に応じて前記第一及び第二の挙動制御手段に対する前記フィードバック制御量及び前記フィードフォワード制御量の振り分けを制御する振り分け制御手段とを有する車輌の走行制御装置にして、前記振り分け制御手段は、前記第一及び第二の挙動制御手段による挙動制御の可否を判定する判定手段を有し、前記第一及び第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときには前記フィードバック制御量を前記第一の挙動制御手段に振り分けると共に、前記フィードフォワード制御量を前記第二の挙動制御手段に振り分け、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御に不感帯を設定することを特徴とする車輌の走行制御装置によって達成される。
【0009】
上記請求項1の構成によれば、互いに異なる作用により車輌の挙動を制御する第一及び第二の挙動制御手段が設けられ、所定の好ましい走行状態に対応する車輌の目標挙動指標値と車輌の実際の挙動指標値との偏差に基づくフィードバック制御量が演算され、所定の好ましい走行状態に於ける車輌の運動状態量と車輌の実際の運動状態量との偏差が演算されると共に、少なくとも運動状態量の偏差に基づいてフィードフォワード制御量が演算され、車輌の状態に応じて第一及び第二の挙動制御手段に対するフィードバック制御量及びフィードフォワード制御量の振り分けが制御されるので、第一及び第二の挙動制御手段により車輌の状態に応じてフィードバック制御及びフィードフォワード制御が最適に実行されるだけでなく、第一及び第二の挙動制御手段による挙動制御の可否が判定され、第一及び第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときにはフィードバック制御量が第一の挙動制御手段に振り分けられると共に、フィードフォワード制御量が第二の挙動制御手段に振り分けられ、フィードバック制御量に基づく挙動制御に不感帯が設定されるので、第一の挙動制御手段により不感帯が設定された状態にてフィードバック制御による挙動制御が実行されると共に、第二の挙動制御手段によりフィードフォワード制御による挙動制御が実行され、これによりセンサの検出誤差等に起因して不適切な制御が行われたり挙動制御が遅れたりすることなく車輌の走行挙動が確実に且つ効果的に安定化される。
【0016】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記振り分け制御手段は、前記第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であり且つ前記第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であるときには、前記フィードバック制御量及び前記フィードフォワード制御量を前記第一の挙動制御手段に振り分けると共に、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御及び前記フィードフォワード制御量に基づく挙動制御の各々に不感帯を設定するよう構成される(請求項2の構成)。
【0017】
請求項2の構成によれば、第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であり且つ第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であるときには、フィードバック制御量及びフィードフォワード制御量が第一の挙動制御手段に振り分けられると共に、フィードバック制御量に基づく挙動制御及びフィードフォワード制御量に基づく挙動制御の各々に不感帯が設定されるので、可否判定が不可である第二の挙動制御手段による挙動制御によって車輌の挙動が却って悪化されることが確実に防止されると共に、第一の挙動制御手段により不感帯が設定された状態にてフィードバック制御量及びフィードフォワード制御量に基づいて挙動制御が実行されることにより車輌の走行挙動が確実に且つ効果的に安定化される。
【0018】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記振り分け制御手段は、前記第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であり且つ前記第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときには、前記フィードバック制御量及び前記フィードフォワード制御量を前記第二の挙動制御手段に振り分けると共に、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御及び前記フィードフォワード制御量に基づく挙動制御の何れにも不感帯を設定しないよう構成される(請求項3の構成)。
【0019】
請求項3の構成によれば、第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であり且つ第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときには、フィードバック制御量及びフィードフォワード制御量が第二の挙動制御手段に振り分けられると共に、フィードバック制御量に基づく挙動制御及びフィードフォワード制御量に基づく挙動制御の何れにも不感帯が設定されないので、可否判定が不可である第一の挙動制御手段による挙動制御によって車輌の挙動が却って悪化されることが確実に防止されると共に、第二の挙動制御手段により不感帯が設定されることなくフィードバック制御量及びフィードフォワード制御量に基づいて挙動制御が実行されることにより車輌の走行挙動が確実に且つ効果的に安定化される。
【0020】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記振り分け制御手段は、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御の不感帯に起因して前記フィードフォワード制御量に基づく挙動制御を実行することができなかったときには、前記第一の挙動制御手段による挙動制御の実行に際し前記フィードフォワード制御量を増大補正する補正手段を有するよう構成される(請求項4の構成)。
【0021】
請求項4の構成によれば、フィードバック制御量に基づく挙動制御の不感帯に起因してフィードフォワード制御量に基づく挙動制御を実行することができなかったときには、第一の挙動制御手段による挙動制御の実行に際しフィードフォワード制御量が増大補正されるので、制御の開始が遅れることにより車輌の挙動の悪化が進行しても車輌の挙動が効果的に安定化される。
【0022】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の何れかの構成に於いて、前記第一の挙動制御手段は各車輪の制動力を個別に制御することにより車輌の挙動を制御する手段であり、前記第二の挙動制御手段は車輪の舵角を制御することにより車輌の挙動を制御する手段であるよう構成される(請求項5の構成)。
【0023】
請求項5の構成によれば、第一の挙動制御手段は各車輪の制動力を個別に制御することにより車輌の挙動を制御する手段であり、第二の挙動制御手段は車輪の舵角を制御することにより車輌の挙動を制御する手段であるので、第一の挙動制御手段によれば左右の車輪の制動力差、車輌の減速、車輌前後方向の荷重移動の制御により車輌の走行挙動が安定化され、第二の挙動制御手段によれば主として操舵輪の横力の制御により車輌の走行挙動が安定化される。
【0024】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、挙動指標値は車輌のスピンの程度若しくは車輌のドリフトアウトの程度を示す指標値であるよう構成される(好ましい態様1)。
【0025】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、所定の好ましい走行状態は車輪の制駆動スリップが0の状態であるよう構成される(好ましい態様2)。
【0026】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、フィードフォワード制御量を演算するための運動状態量は少なくとも車輌のヨーモーメントを含むよう構成される(好ましい態様3)。
【0027】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、第二の挙動制御手段は後輪の舵角を制御することにより車輌の挙動を制御する手段であるよう構成される(好ましい態様4)。
【0028】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、第二の挙動制御手段は前輪の舵角を制御することにより車輌の挙動を制御する手段であるよう構成される(好ましい態様5)。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は後輪操舵装置が搭載された車輌に適用された本発明による走行制御装置の一つの好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【0031】
図1に於て、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ左右の後輪を示している。左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14に対する操舵操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式の前輪用パワーステアリング装置16によりそれぞれタイロッド18L及び18Rを介して操舵され、これにより左右の前輪10FL及び10FRの舵角δfは運転者の操舵操作に応じて制御される。
【0032】
一方左右の後輪10RL及び10RRはラック・アンド・ピニオン式の後輪用パワーステアリング装置20によりそれぞれタイロッド22L及び22Rを介して操舵され、左右の後輪10RL及び10RRの舵角δrは後に詳細に説明する如く後輪操舵制御装置24により制御される。
【0033】
各車輪の制動力は制動装置26の油圧回路28によりホイールシリンダ30FL、30FR、30RL、30RRの制動圧が制御されることによって制御されるようになっている。図には示されていないが、油圧回路28はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル32に対する踏力に応じて駆動されるマスタシリンダ34により制御され、また必要に応じて後に詳細に説明する如く制動制御装置36により制御される。
【0034】
以上の説明より解る如く、制動装置26及び制動制御装置36は各車輪の制動力を個別に制御することにより車輌の挙動を制御する制動力制御式の挙動制御手段(第一の挙動制御手段)として機能し、後輪用パワーステアリング装置20及び後輪操舵制御装置24は後輪の舵角を制御することにより車輌の挙動を制御する操舵制御式の挙動制御手段(第二の挙動制御手段)として機能する。
【0035】
制動制御装置36には車速センサ38より車速(車輌の前後速度)Vxを示す信号、前後加速度センサ40より車輌の前後加速度Gxを示す信号、横加速度センサ42より車輌の横加速度Gyを示す信号、ヨーレートセンサ44より車輌のヨーレートγを示す信号が入力される。また制動制御装置36には操舵角センサ46により検出された操舵角θを示す信号が後輪操舵制御装置24を経由して入力される。
【0036】
尚図示の実施形態に於いては、前後加速度センサ40は車輌の加速方向を正として前後加速度を検出し、横加速度センサ42、ヨーレートセンサ44及び操舵角センサ46は車輌の左旋回方向の場合を正として横加速度等を検出する。また図には詳細に示されていないが、後輪操舵制御装置24及び制動制御装置36は例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを含んでいる。
【0037】
制動制御装置36は、図2に示されたフローチャートに従い、後述の如く車輌の実際の挙動指標値(スピンの程度を示す指標値)として車輌のスリップ角βとその変化率βdとの線形和を演算し、実際の挙動指標値(実際の挙動指標値と0である車輌の目標挙動指標値との偏差)に基づきフィードバック制御量Mfbを演算する。
【0038】
また制動制御装置36は、車輌前後方向の荷重移動がなく車輪の制駆動スリップが0であるときの車輌のヨーモーメントM0を車輌の目標ヨーモーメントとして演算し、車輌の実際のヨーモーメントMを演算し、車輌の実際のヨーモーメントMと車輌の目標ヨーモーメントM0との偏差ΔMに基づきフィードフォワード制御量Mffを演算する。
【0039】
また制動制御装置36は、車輪の制動力制御による挙動制御が許可されるか否か及び後輪の操舵制御による挙動制御が許可されるか否かを判定し、これらの判定結果に応じて車輪の制動力制御による挙動制御及び後輪の操舵制御による挙動制御に対するフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワード制御量Mffの振り分けを制御すると共に、フィードバック制御及びフィードフォワード制御の不感帯を制御し、これにより車輪の制動力制御による挙動制御が許可されるか否か及び後輪の操舵制御による挙動制御が許可されるか否かに応じてフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワード制御量Mffを最適に振り分け、また制御量の振り分けに応じて最適に不感帯を制御する。
【0040】
更に制動制御装置36は、振り分けられたフィードバック制御量Mfb若しくはフィードフォワード制御量Mffに基づき各車輪の目標制動力Fbti若しくは後輪の目標舵角δrtiを演算し、各車輪の制動力が目標制動力Fbtiになるよう制動装置26を制御することにより、或いは後輪の舵角が目標舵角δrtiになるよう後輪操舵制御装置24を介して後輪用パワーステアリング装置20を制御することにより、車輌の安定走行を確保するための挙動制御を実行する。
【0041】
尚一般に、舵角制御による挙動制御は制御量も小さく応答性も低くいので、後輪の舵角制御には不感帯が設定される必要がないのに対し、車輪の制動力制御による挙動制御は車輌の減速を伴うと共に舵角制御に比して応答性が高いので、車輪の制動力制御にはある程度の不感帯が設定されなければならない。
【0042】
また一般に、フィードフォワード制御量は小さい値であり且つ連続的に変化するので、フィードフォワード制御には不感帯が設定されないことが好ましいのに対し、フィードバック制御量を演算するためのセンサ検出値にはセンサ自体の誤差、センサが搭載されている車輌のばね上の動きや路面の傾斜等に起因する誤差が含まれているため、フィードバック制御には不適切な制御の実行を回避すべくある程度の不感帯が設定されることが好ましい。
【0043】
従って図示の実施形態によれば、制動制御装置36は、車輪の制動力制御による挙動制御及び後輪の操舵制御による挙動制御の何れも許可される状況であるときには、不感帯を設定してフィードバック制御量を車輪の制動力制御に振り分けると共に、不感帯を設定することなくフィードフォワード制御量を後輪の操舵制御に振り分ける。
【0044】
次に図2及び図3に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於ける走行制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0045】
まずステップ10に於いては車速センサにより検出された車速Vxを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては横加速度Gyと車速Vx及びヨーレートγの積Vx・γとの偏差Gy−Vx・γとして横加速度の偏差、即ち車輌の横すべり加速度Vydが演算され、横すべり加速度Vydが積分されることにより車輌の横すべり速度Vyが演算され、更に車輌の前後速度(=車速Vx)に対する車輌の横すべり速度Vyの比Vy/Vxとして車輌のスリップ角βが演算される。
【0046】
ステップ30に於いては車輌のスリップ角βの微分値βdが演算されると共に、Ka及びKbをそれぞれ正の定数として下記の式1に従って車輌のスピンの程度を示す値としてフィードバック制御量Mfbが演算される。
【0047】
Mfb=Ka・β+Kb・βd ……(1)
ステップ40に於いては図3に示されたルーチンに従って車輌の好ましい走行状態に於ける車輌のヨーモーメントM0と車輌の実際のヨーモーメントMとの偏差ΔMが演算されると共に、ヨーモーメントの偏差ΔMに基づきフィードフォワード制御量Mffが演算される。尚車輌の好ましい走行状態に於ける車輌のヨーモーメントM0は、例えば車速Vx及び操舵角θに基づいて演算されてよい。
【0048】
ステップ60に於いては車輪の制動力制御による挙動制御が許可される状況であるか否かの判定が行われる。尚この場合例えば下記の(1)〜(4)の全ての条件が成立する場合に車輪の制動力制御による挙動制御が許可されると判定されてよい。
【0049】
(1)車輌の走行状態の判定に使用される全てのセンサが正常であること
(2)制動装置26及び制動制御装置36が正常であること
(3)制動力の制御に必要な全ての通信が正常であること
(4)車速Vx、前輪の舵角δf、後輪の舵角δrに基づき演算される車輌の目標ヨーレートγtと車輌の実際のヨーレートγとの偏差の大きさが基準値以上であること(尚前輪の舵角δfは操舵角θに基づいて演算され、後輪の舵角δfは前回の後輪の目標舵角であってよい)
【0050】
ステップ70に於いては後輪の操舵制御による挙動制御が許可される状況であるか否かの判定が行われる。尚この場合例えば下記の(1)〜(3)の全ての条件が成立する場合に後輪の操舵制御による挙動制御が許可されると判定されてよい。
(1)車輌の走行状態の推定に使用される全てのセンサが正常であること
(2)後輪用パワーステアリング装置20及び後輪操舵制御装置24が正常であること
(3)後輪の操舵制御に必要な全ての通信が正常であること
【0051】
ステップ80に於いてはステップ60に於ける後輪の操舵制御による挙動制御の許可判定が許可であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ100へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ90へ進む。
【0052】
ステップ90に於いてはステップ70に於ける後輪の操舵制御による挙動制御の許可判定が許可であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ110へ進み、否定判別が行われたときにはステップ140へ進む。
【0053】
ステップ100に於いてはステップ90の場合と同様、ステップ70に於ける後輪の操舵制御による挙動制御の許可判定が許可であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ170へ進み、否定判別が行われたときにはそのままステップ10へ戻る。
【0054】
ステップ110に於いては不感帯が設定された状態にてフィードバック制御量Mfbが制動力制御に振り分けられると共に、不感帯が設定されることなくフィードフォワード制御量Mffが操舵制御に振り分けられ、ステップ120に於いてはフィードバック制御量Mfbに基づき例えば図には示されていないマップより車輌のスリップ角β及びその変化率βdを低減して車輌の挙動を安定化させるための各車輪の目標制動力Fbti(=fl、fr、rl、rr)が演算され、またフィードフォワード制御量Mffに基づき例えば図には示されていないマップより車輌のヨーモーメントの偏差ΔMを低減して車輌挙動の不安定化を防止するための後輪の目標舵角δrtが演算される。
【0055】
ステップ130に於いては制動装置26及び制動制御装置36により各車輪の制動力がそれぞれ対応する目標制動力Fbtiになるよう制御されることによって車輌挙動のフィードバック制御が実行されると共に、後輪用パワーステアリング装置20及び後輪操舵制御装置24により後輪の舵角が目標舵角δrtになるよう制御されることによって車輌挙動の不安定化を防止するためのフィードフォワード制御が実行され、しかる後ステップ10へ戻る。
【0056】
この場合、フィードバック制御には不感帯が設定されるので、フィードバック制御量Mfbの大きさが不感帯の閾値Mfb1(正の定数)以下である範囲に於いては、フィードバック制御量Mfbに基づく制動力制御による挙動制御は実行されない。
【0057】
ステップ140に於いてはフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワード制御量Mffが何れも制動力制御に振り分けられ、何れの制御についても不感帯が設定され、ステップ150に於いてはフィードバック制御量Mfbに基づき例えば図には示されていないマップより車輌のスリップ角β及びその変化率βdを低減して車輌の挙動を安定化させるための各車輪の目標制動力Fbt1iが演算され、またフィードフォワード制御量Mffに基づき例えば図には示されていないマップより車輌のヨーモーメントの偏差ΔMを低減して車輌挙動の不安定化を防止するための各車輪の目標制動力Fbt2iが演算され、目標制動力Fbt1iと目標制動力Fbt2iとの和として各車輪の目標制動力Fbtiが演算される。
【0058】
ステップ160に於いては制動装置26及び制動制御装置36によって各車輪の制動力がそれぞれ対応する目標制動力Fbtiになるよう制御されることにより、車輌挙動のフィードバック制御及び車輌挙動の不安定化防止のためのフィードフォワード制御が実行され、しかる後ステップ10へ戻る。
【0059】
この場合、フィードバック制御及びフィードフォワード制御の何れについても不感帯が設定されるので、フィードバック制御量Mfbの大きさが不感帯の閾値Mfb2(正の定数)よりも大きく且つフィードフォワード制御量Mffの大きさが不感帯の閾値Mff2(正の定数)よりも大きくならない限り、制動力制御による挙動制御は実行されない。
【0060】
尚一般に、フィードフォワード制御の不感帯の閾値Mff2は小さい値であってよいので、車輌の挙動が悪化すると、例えば図4に示されている如く、まずフィードフォワード制御量Mffの大きさが閾値Mff2よりも大きくなり、しかる後フィードバック制御量Mfbの大きさが閾値Mfb2よりも大きくなり、その時点に於いて制動力制御による挙動制御が開始される。
【0061】
特に図示の実施形態に於いては、図4に示されている如く、フィードバック制御の不感帯に起因して制動力制御を開始することができない期間Δt1中にフィードフォワード制御量Mffがあるときには、制動力制御の開始後の所定の時間Δt2に亘りフィードフォワード制御量Mffが増大補正される。この場合、所定の時間Δt2は一定であってもよいが、フィードバック制御の不感帯に起因してフィードフォワード制御量Mffに基づく制動力の制御を実行することができなかった時間Δt1に比例する時間として可変設定されることが好ましい。
【0062】
またフィードフォワード制御量Mffは図4に示されている如く制御開始後のフィードフォワード制御量Mffが所定の時間Δt2に亘り一定の比率にて増大されることにより補正されてもよいが、その場合には制動力制御による挙動制御量が制動力制御の開始時に0より急激に高い値になると共に所定の時間Δt2が経過する時点に於いて急激に減少するので、例えば図5に示されている如く、制動力制御の開始後に増大補正率が徐々に増大され、所定の時間Δt2が経過する前に増大補正率が徐々に低減されることが好ましい。
【0063】
ステップ170に於いては不感帯が設定されることなくフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワード制御量Mffが操舵制御に振り分けられ、ステップ180に於いてはフィードバック制御量Mfbに基づき例えば図には示されていないマップより車輌のスリップ角β及びその変化率βdを低減して車輌の挙動を安定化させるための後輪の目標舵角δt1iが演算され、またフィードフォワード制御量Mffに基づき例えば図には示されていないマップより車輌のヨーモーメントの偏差ΔMを低減して車輌挙動の不安定化を防止するための後輪の目標舵角δt2iが演算され、目標舵角δt1iと目標舵角δt2iとの和として後輪の目標舵角δtiが演算される。
【0064】
ステップ190に於いては後輪用パワーステアリング装置20及び後輪操舵制御装置24によって後輪の舵角が目標舵角δtiになるよう制御されることにより、車輌挙動のフィードバック制御及び車輌挙動の不安定化防止のためのフィードフォワード制御が実行され、しかる後ステップ10へ戻る。
【0065】
また図3に示されたフィードフォワード制御量Mff演算ルーチンのステップ42に於いては、車輌の質量をMvとし、車輌の重心高さをHgとし、前輪のロール剛性配分をRfとし、前輪及び後輪のトレッドをそれぞれTdf及びTdrとし、車輌の静止状態に於ける左右前輪及び左右後輪の垂直荷重をそれぞれFzf0及びFzr0として、それぞれ下記の式2〜5に従って車輌前後方向の荷重移動がないと仮定した場合の各車輪の垂直荷重Fzi0(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
【0066】
Fzfl0=Fzf0+Mv(−Gy・Hg・Rf/Tdf) ……(2)
Fzfr0=Fzf0+Mv(Gy・Hg・Rf/Tdf) ……(3)
Fzrl0=Fzr0+Mv{−Gy・Hg(1−Rf)/Tdr} ……(4)
Fzrr0=Fzr0+Mv{Gy・Hg(1−Rf)/Tdr} ……(5)
【0067】
尚車輌が静止状態にあるときの左右前輪及び左右後輪の垂直荷重Fzf0及びFzr0は、Lfを車輌の重心と前輪車軸との間の車輌前後方向の距離とし、Lrを車輌の中心と後輪車軸との間の車輌前後方向の距離として、それぞれ下記の式6及び7により求められる。
Fzf0=Mv・Lr/(Lf+Lr) ……(6)
Fzr0=Mv・Lf/(Lf+Lr) ……(7)
【0068】
ステップ44に於いては当技術分野に於いて公知の要領にて左右前輪の推定スリップ角βwf及び左右後輪の推定スリップ角βwrが演算され、ステップ42に於いて演算された各車輪の垂直荷重Fzi0、前後輪の推定スリップ角βwf及びβwrに基づきタイヤモデルより各車輪の推定横力Fyi(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、下記の式8〜11に従って各車輪の制駆動スリップが0であるときに各車輪が発生するヨーモーメントMi0(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
【0069】
【0070】
ステップ46に於いては車輌前後方向の荷重移動がなく且つ制駆動スリップが0であるときの車輌のヨーモーメントM0がヨーモーメントMfi0の和として下記の式12に従って演算される。
M0=Mfl0+Mfr0+Mrl0+Mrr0 ……(12)
【0071】
ステップ48に於いては車輌前後方向の荷重移動を考慮した場合の各車輪の垂直荷重Fzi(i=fl、fr、rl、rr)が上記式2〜5に対応する下記の式13〜16に従って演算される。
【0072】
【0073】
ステップ50に於いては各車輪のスリップ率Si(i=fl、fr、rl、rr)が演算されると共に、ステップ48に於いて演算された各車輪の垂直荷重Fzi、ステップ44に於いて演算された前後輪の推定スリップ角βwf及びβwr、各車輪のスリップ率Siに基づきタイヤモデルより各車輪の前後力Fxi(i=fl、fr、rl、rr)及び各車輪の横力Fyiが推定され、更に推定された各車輪の前後力及び横力に基づき各車輪が実際に発生しているヨーモーメントMi(i=fl、fr、rl、rr)が下記の式17〜20に従って演算される。
【0074】
【0075】
ステップ52に於いては車輌の実際のヨーモーメントMがヨーモーメントMiの和として下記の式21に従って演算される。
M=Mfl+Mfr+Mrl+Mrr ……(21)
【0076】
ステップ54に於いてはヨーモーメントのアンバランス、即ち車輌の実際のヨーモーメントMと車輌前後方向の荷重移動がなく且つ制駆動スリップが0であるときの車輌のヨーモーメントM0との偏差ΔMが下記の式22に従ってフィードフォワード制御量Mffとして演算される。
【0077】
かくして図示の実施形態によれば、ステップ20及び30に於いて車輌のスリップ角β及びその微分値βdの線形和として車輌挙動のフィードバック制御量Mfbが演算され、ステップ40に於いて車輌の好ましい走行状態に於ける車輌のヨーモーメントM0と車輌の実際のヨーモーメントMとの偏差ΔMが演算されると共に、ヨーモーメントの偏差ΔMに基づき車輌挙動の不安定化防止のためのフィードフォワード制御量Mffが演算される。
【0078】
またステップ60に於いて車輪の制動力制御による挙動制御が許可される状況であるか否かの判定が行われ、ステップ70に於いて後輪の操舵制御による挙動制御が許可される状況であるか否かの判定が行われる。
【0079】
車輪の制動力制御による挙動制御及び後輪の操舵制御による挙動制御の何れも許可される状況であるときには、ステップ80及び90に於いて肯定判別が行われ、ステップ110に於いて不感帯が設定された状態にてフィードバック制御量Mfbが制動力制御に振り分けられると共に、不感帯が設定されることなくフィードフォワード制御量Mffが操舵制御に振り分けられる。
【0080】
そしてステップ120に於いてフィードバック制御量Mfbに基づき車輌のスピンを低減して車輌の挙動を安定化させるための各車輪の目標制動力Fbtiが演算され、またフィードフォワード制御量Mffに基づき車輌のヨーモーメントの偏差ΔMを低減して車輌挙動の不安定化を防止するための後輪の目標舵角δrtが演算され、ステップ130に於いて各車輪の制動力がそれぞれ対応する目標制動力Fbtiになるよう制御されることによって車輌挙動のフィードバック制御が実行されると共に、左右後輪の舵角が目標舵角δrtになるよう制御されることによって車輌挙動の不安定化を防止するためのフィードフォワード制御が実行される。
【0081】
従ってこの場合には不感帯が設定された状態にて車輪の制動力制御によって車輌挙動のフィードバック制御が実行されるので、センサの検出値に誤差が含まれること等に起因して不要な挙動制御が実行される虞れを低減することができ、また不感帯が設定されることなく後輪の舵角制御によって車輌挙動の不安定化防止のフィードフォワード制御が実行されるので、挙動制御の開始が遅れることを防止することができ、これにより車輌の走行挙動を確実に且つ効果的に安定化させることができる。
【0082】
また車輪の制動力の制御による挙動制御は許可されるが後輪の操舵制御による挙動制御は許可されない状況であるときには、ステップ80に於いて肯定判別が行われるが、ステップ90に於いて否定判別が行われ、ステップ140に於いて不感帯が設定された状態にてフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワード制御量Mffが制動力制御に振り分けられる。
【0083】
そしてステップ150に於いて車輌のスピンを低減して車輌の挙動を安定化させるためのフィードバック制御量Mfbに基づく各車輪の目標制動力Fbt1iと、車輌のヨーモーメントの偏差ΔMを低減して車輌挙動の不安定化を防止するためのフィードフォワード制御量Mffに基づく各車輪の目標制動力Fbt2iとの和として各車輪の目標制動力Fbtiが演算され、ステップ160に於いて各車輪の制動力がそれぞれ対応する目標制動力Fbtiになるよう制御される。
【0084】
従ってこの場合には不感帯が設定された状態にてフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワード制御量Mffに基づく制動力制御による挙動制御が実行されるので、センサの検出値に誤差が含まれること等に起因して不要な挙動制御が実行される虞れを低減することができると共に、許可されない後輪の舵角制御が実行されることにより却って車輌の挙動が悪化されることを確実に防止することができる。
【0085】
またフィードバック制御及びフィードフォワード制御の何れにも不感帯が設定されるので、上記ステップ110〜130の場合に比して挙動制御の開始が遅れる虞れが高いが、フィードバック制御の不感帯に起因して挙動制御を開始することができない期間Δt1中にフィードフォワード制御Mffがあるときには、挙動制御の開始後の所定の時間Δt2に亘りフィードフォワード制御量Mffが増大補正されるので、増大補正されたフィードフォワード制御量に基づく制動力制御によって車輌の走行挙動を確実に安定化させることができる。
【0086】
特にフィードバック制御の不感帯に起因して挙動制御を開始することができない期間Δt1に比例して所定の時間Δt2が可変設定される場合には、所定の時間Δt2が過大であることに起因してフィードフォワード制御量Mffの増大補正時間が長くなり過ぎることを防止しつつ、上記期間中に悪化した車輌の挙動を確実に安定化させることができる。
【0087】
また後輪の操舵制御による挙動制御は許可されるが車輪の制動力の制御による挙動制御は許可されない状況であるときには、ステップ80に於いて否定判別が行われると共に、ステップ90に於いて肯定判別が行われ、ステップ170に於いて不感帯が設定されることなくフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワードMffが操舵制御に振り分けられる。
【0088】
そしてステップ180に於いて車輌のスピンを低減して車輌の挙動を安定化させるためのフィードバック制御量Mfbに基づく後輪の目標舵角δt1iと、車輌のヨーモーメントの偏差ΔMを低減して車輌挙動の不安定化を防止するためのフィードフォワード制御量Mffに基づく後輪の目標舵角δt2iとの和として後輪の目標舵角δtiが演算され、ステップ190に於いて後輪の舵角が目標舵角δtiになるよう制御される。
【0089】
従ってこの場合には不感帯が設定されることなくフィードバック制御量Mfb及びフィードフォワード制御量Mffに基づいて後輪の舵角制御による挙動制御が実行されるので、車輌の走行挙動の悪化を確実に且つ効果的に防止することができ、また許可されない制動力制御が実行されることにより却って車輌の挙動が悪化されることを確実に防止することができ、更には挙動制御に伴う不必要な車輌の減速を確実に防止することができる。
【0090】
尚車輪の制動力制御による挙動制御及び後輪の操舵制御による挙動制御の何れも許可されない状況であるときには、ステップ80及び100に於いて否定判別が行われ、これにより各車輪の制動力制御及び後輪の舵角制御の何れも実行されないので、許可されないこれらの制御の実行により却って車輌の挙動が悪化されることを確実に防止することができる。
【0091】
特に図示の実施形態によれば、第二の挙動制御手段は後輪の操舵角を制御することにより車輌の挙動を制御するようになっており、後輪の舵角は後輪操舵装置20により制御されるようになっているので、後輪操舵用の特別の装置を追加することなく後輪操舵装置20を備えた車輌に対し本発明の走行制御装置を容易に適用することができる。
【0092】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0093】
例えば上述の実施形態に於いては、フィードバック制御量Mfbは車輌のスピンの程度を示す車輌のスリップ角β及びその変化率βdの線形和として演算されるようになっているが、フィードバック制御量は車輌の目標挙動指標値と車輌の実際の挙動指標値との偏差に基づいて演算される限り、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて演算されてよく、例えば車輌のスリップ角β及びその変化率βdの線形和と、車輌のドリフトアウトの程度を示す車輌の目標ヨーレートと車輌の実際のヨーレートとの偏差とに基づいて演算されてもよい。
【0094】
また上述の実施形態に於いては、フィードフォワード制御量を演算するための車輌の運動状態量は車輌のヨーモーメントであるが、フィードフォワード制御量を演算するための車輌の運動状態量は車輌の前後力とヨーモーメントとの組合せ、車輌の横力とヨーモーメントとの組合せ、車輌の前後力と横力とヨーモーメントとの組合せであってもよい。
【0095】
また上述の実施形態に於いては、車輌は後輪操舵装置20を有し、車輪の舵角制御は後輪の舵角が制御されることにより実行されるようになっているが、例えばアッパステアリングシャフトとロアステアリングシャフトとの間に両者の相対回転を制御することにより前輪の舵角を制御するアクチュエータが設けられ、車輪の舵角制御が前輪の舵角を制御することにより実行されるよう修正されてもよく、また前輪及び後輪の舵角を制御することにより実行されるよう修正されてもよい。
【0096】
特に車輪の舵角制御が前輪の舵角を制御することにより実行される場合には、各車輪の制駆動スリップが0であるときに各車輪が発生するヨーモーメントMi0は上述の式8〜11に対応する下記の式23〜26に従って演算される。
【0097】
【0098】
同様に、各車輪の前後力及び横力に基づき各車輪が実際に発生しているヨーモーメントMiは上記の式17〜20に対応する下記の式27〜30に従って演算される。
【0099】
【0100】
また図示の実施形態に於いては、後輪は挙動制御以外の目的では操舵されないようになっているが、例えば車速感応式の後輪操舵装置を備えた車輌の如く、車輪が挙動制御以外の目的によっても操舵される車輌に対し本発明の走行制御装置が適用されてもよく、その場合には挙動制御以外の目的で操舵される車輪の舵角に対する補正量として本発明の舵角制御量が演算されてよい。
【0101】
更に図示の実施形態に於いては、第一の挙動制御手段は各車輪の制動力を個別に制御することにより車輌の挙動を制御する手段であるが、各車輪の制駆動力を個別に制御することにより車輌の挙動を制御する手段であってもよい。
【0102】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、請求項1の構成によれば、第一及び第二の挙動制御手段により車輌の状態に応じてフィードバック制御及びフィードフォワード制御を最適に実行することができ、これにより従来に比して車輌の走行挙動を確実に且つ効果的に安定化させることができるだけでなく、第一及び第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときには、第一の挙動制御手段により不感帯が設定された状態にてフィードバック制御による挙動制御が実行されると共に、第二の挙動制御手段によりフィードフォワード制御による挙動制御が実行されるので、センサの検出誤差等に起因して不適切な制御が行われたり挙動制御が遅れたりすることを防止しつつ車輌の走行挙動を確実に且つ効果的に安定化させることができる。
【0105】
また請求項2の構成によれば、第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であり且つ第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であるときには、可否判定が不可である第二の挙動制御手段による挙動制御によって車輌の挙動が却って悪化されることを確実に防止することができると共に、第一の挙動制御手段により不感帯が設定された状態にてフィードバック制御量及びフィードフォワード制御量に基づいて挙動制御が実行されるので、車輌の走行挙動を確実に且つ効果的に安定化させることができる。
【0106】
また請求項3の構成によれば、第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であり且つ第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときには、可否判定が不可である第一の挙動制御手段による挙動制御によって車輌の挙動が却って悪化されることを確実に防止することができると共に、第二の挙動制御手段により不感帯が設定されることなくフィードバック制御量及びフィードフォワード制御量に基づいて挙動制御が実行されるので、車輌の走行挙動を確実に且つ効果的に安定化することができる。
【0107】
また請求項4の構成によれば、フィードバック制御量に基づく挙動制御の不感帯に起因してフィードフォワード制御量に基づく挙動制御を実行することができなかったときには、第一の挙動制御手段による挙動制御の実行に際しフィードフォワード制御量が増大補正されるので、制御の開始が遅れることにより車輌の挙動の悪化が進行しても車輌の挙動を効果的に安定化させることができる。
【0108】
更に請求項5の構成によれば、第一の挙動制御手段による左右の車輪の制動力差、車輌の減速、車輌前後方向の荷重移動の制御により車輌の走行挙動を安定化させ、第二の挙動制御手段による主として車輪の横力の制御により車輌の走行挙動を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】後輪操舵装置が搭載された車輌に適用された本発明による走行制御装置の一つの好ましい実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図示の実施形態の走行制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図示の実施形態に於けるフィードフォワード制御量Mff演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】フィードバック制御の不感帯に起因して制動力制御を開始することができない期間中にフィードフォワード制御量Mffがある状況及びその場合の補正後のフィードフォワード制御量Mffを示すグラフである。
【図5】補正後のフィードフォワード制御量Mffの他の例を示すグラフである。
【符号の説明】
10FL〜10RR…車輪
16…前輪用パワーステアリング装置
20…後輪用パワーステアリング装置
24…後輪操舵制御装置
26…制動装置
36…制動制御装置
38…車速センサ
40…前後加速度センサ
42…横加速度センサ
44…ヨーレートセンサ
46…操舵角センサ
Claims (5)
- 互いに異なる作用により車輌の挙動を制御する第一及び第二の挙動制御手段と、所定の好ましい走行状態に対応する車輌の目標挙動指標値と車輌の実際の挙動指標値との偏差に基づくフィードバック制御量を演算する手段と、所定の好ましい走行状態に於ける車輌の運動状態量と車輌の実際の運動状態量との偏差を演算する手段と、少なくとも前記運動状態量の偏差に基づいてフィードフォワード制御量を演算する手段と、車輌の状態に応じて前記第一及び第二の挙動制御手段に対する前記フィードバック制御量及び前記フィードフォワード制御量の振り分けを制御する振り分け制御手段とを有する車輌の走行制御装置にして、前記振り分け制御手段は、前記第一及び第二の挙動制御手段による挙動制御の可否を判定する判定手段を有し、前記第一及び第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときには前記フィードバック制御量を前記第一の挙動制御手段に振り分けると共に、前記フィードフォワード制御量を前記第二の挙動制御手段に振り分け、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御に不感帯を設定することを特徴とする車輌の走行制御装置。
- 前記振り分け制御手段は、前記第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であり且つ前記第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であるときには、前記フィードバック制御量及び前記フィードフォワード制御量を前記第一の挙動制御手段に振り分けると共に、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御及び前記フィードフォワード制御量に基づく挙動制御の各々に不感帯を設定することを特徴とする請求項1に記載の車輌の走行制御装置。
- 前記振り分け制御手段は、前記第一の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が不可であり且つ前記第二の挙動制御手段による挙動制御の可否判定が可であるときには、前記フィードバック制御量及び前記フィードフォワード制御量を前記第二の挙動制御手段に振り分けると共に、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御及び前記フィードフォワード制御量に基づく挙動制御の何れにも不感帯を設定しないことを特徴とする請求項1に記載の車輌の走行制御装置。
- 前記振り分け制御手段は、前記フィードバック制御量に基づく挙動制御の不感帯に起因して前記フィードフォワード制御量に基づく挙動制御を実行することができなかったときには、前記第一の挙動制御手段による挙動制御の実行に際し前記フィードフォワード制御量を増大補正する補正手段を有することを特徴とする請求項2に記載の車輌の走行制御装置。
- 前記第一の挙動制御手段は各車輪の制動力を個別に制御することにより車輌の挙動を制御する手段であり、前記第二の挙動制御手段は車輪の舵角を制御することにより車輌の挙動を制御する手段であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車輌の走行制御装置。
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