JP3871575B2 - 豆乳製造装置及び豆乳製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ご液から気泡を除去して美味かつ安全性に優れた豆乳を製造する豆乳製造装置及び豆乳製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
豆腐用の豆乳は大豆に加水して磨砕したご液を加熱し絞って製造され、又はそのご液を絞った生豆乳を加熱して製造されるが、ご液に気泡が含まれていると味が損なわれたり、酸化が促進されて品質が劣化する。そこで、現在では殆どの豆腐製造業者が化学合成品である消泡剤を使用している。
一方、昨今では消費者の健康指向が強くなり、豆乳については大豆と水、凝固剤の他は余分な添加物を使わないほうがより自然食品に近くなり、消費者は化学合成品の除去を望むようになってきた。このような時代の要請を受けて、現在では消泡剤無添加の豆乳が市場に提供されつつある。
従来公開された技術では、バッチ式の真空攪拌機などで、原料を仕込んで減圧しながら攪拌して、脱気を行う方法は多数開示されている。また特開昭52-54069号公報には、豆乳を多岐管を介して減圧タンクに供給し、脱気する方法が開示されている。特開平5-38402号公報にはプリンや卵豆腐、食用油等を対象にするような、原料を還流しながら脱気する方法が開示されている。特開2000-212214号公報には塩化ビニール樹脂の加工において、加熱装置を備えた減圧容器で生じる泡を冷却装置にて消泡する方法が開示されている。実開平5-37330号公報には水溶性液体原料を真空乳化槽で処理する際、蒸発水分の復水を回収し、当該真空乳化槽内に散布し、消泡する方法の開示がある。豆乳等の滑らかな液体原料を扱う記載は見られるが、対象が大豆を水とともに粉砕したスラリーであるご液に関する記載は見あたらない。
特開昭60-224462号公報には煮沸缶に泡取り用の蒸気パイプを設けて、減圧手段によって、当該煮沸缶内のご液に発生する泡を除去する方法が開示されているが、高温下、形成された泡は改めて減圧すると、急激に沸騰し大量の泡が除去され、その分のご液がロスになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ご液に含まれる蛋白質とサポニンには強い起泡力があり、粉砕時や加水時に無数の泡が発生し、ご液中にかなりの空気を巻き込んでしまう。また、製造用水やボイラー用水に溶解している空気が加熱中にご液に混入したり、浸漬中に大豆内側に封じ込まれることもある。
前記空気は断熱材となり、豆腐製造工程における煮沸工程で完全な煮沸の障害(ムラ煮え、吹きこぼれなど)になる。含まれる気泡を消泡するために、従来は大量の化学合成品である消泡剤が用いられている。また、消泡剤を用いない場合、吹きこぼれる泡を減圧手段によって、泡を除去することも行われているが、廃棄する分だけ、無駄を生じている。豆乳中に残留した気泡は豆腐として凝固させる際に、気泡(泡)を抱き込んだまま凝固し、この気泡により食感不良や味抜け、外観不良等の悪影響が生じていた。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は豆腐製造に供されるご液を煮沸する段階で、ご液中に含まれる気泡を確実に除去し、美味で安全な豆乳を製造し得るように構成した、消泡剤を用いない豆乳製造装置及び豆乳製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる前記課題は、下記(1)〜(6)に記載した豆乳製造装置及び豆乳製造方法によって解消される。
(1)気密構造の煮沸缶と、前記煮沸缶内の気圧を減圧する減圧手段と、減圧された前記煮沸缶内にご液を供給するご液供給手段とを備え、気泡を除去したご液を得ることを特徴とする豆乳製造装置。
(2)前記煮沸缶内に前記ご液を拡散する拡散手段を設けたことを特徴とする(1)記載の豆乳製造装置。
(3)前記煮沸缶内に前記ご液を加熱する加熱装置又はご液を攪拌(超音波や衝撃等による振動や揺動も含む)する攪拌装置を設けたことを特徴とする(1)又は(2)記載の豆乳製造装置。
(4)前記煮沸缶内のご液に形成される泡層に対して、破泡媒体を直接散布する散布装置、又は間接的に冷却する冷却装置、又は機械的な攪拌装置を設けることによって、ご液上面の泡を破泡することを特徴とする(3)記載の豆乳製造装置。
(5)前記ご液を前記煮沸缶(気泡分離チャンバー;加熱はあえて必要はない)に供給する経路に加熱装置を配設し、前記ご液の気泡除去を連続して行うことを特徴とする(1)又は(3)又は(4)記載の豆乳製造装置。
(6)気密構造の煮沸缶と、前記煮沸缶内の気圧を減圧する減圧手段と、減圧された前記煮沸缶内にご液を供給するご液供給手段と、前記煮沸缶内の前記ご液を加熱又は攪拌することで前記煮沸缶内の前記ご液を拡散する拡散手段と、を備え、
前記煮沸缶内を所望の減圧状態に維持するか、又は気泡レベルを一定以下に保持するか、又は減圧度を必要に応じてご液の温度に対応して変化させながらご液を煮沸させ、気泡を除去したご液を得ることを特徴とする豆乳製造方法。
【0006】
前記(1)〜(6)に記載の豆乳製造装置及び豆乳製造方法によれば、減圧した煮沸缶内にご液を供給したり、さらに煮沸缶内で減圧下でご液を攪拌するか又は加熱するか、又は微小な攪拌方法として、ご液に超音波を照射するか、加振装置によって振動や揺動を与えることにより、ご液中の気泡がご液の上面に発散する。そして、発散した気泡は自然に破泡するか、破泡手段により強制的破泡されるか、または真空ポンプにより除去され、気泡を略完全に除去されたご液は、必要に応じて残る気泡(多くは水蒸気からなる)を間接的な冷却装置によって縮小され、次の工程に供給される。ご液は大豆を挽水とともに磨砕したスラリーであり、これを加熱して豆乳を分離する煮取り法を行うのが一般的である。また、スラリーを煮沸前または煮沸途中で分離する生搾り法もあり、本願発明は、ご液の代りにこの生豆乳を用いて適することもできる。なお、加熱中に減圧と大気解放を繰り返したり、減圧度を変化させることによっても気泡の上昇と破泡を促進させることができる。特にタンパク質が熱変性しにくい80℃以下での減圧が効果的である。何故ならば、80℃以上になると熱変性によってご液の粘度や乳化性が増し気泡が抱き込まれやすくなるためである。
なお、前記気泡の除去は単一の煮沸缶によるバッチ式で行ってもよく、複数の煮沸缶(気泡分離チヤンバー兼用)を連続して配設するとともに、複数の煮沸缶の間に加熱装置、気泡分離チヤンバーを設けた連続式によって行ってもよい。いずれにしても、豆腐の凝固に先立ってご液又は生豆乳から気泡が除去されるので、製造された豆腐にスが生じにくく、美味で安全性に優れた豆乳を製造することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図1を参照して本発明に係る豆乳製造装置の第1実施形態を説明する。
図1は豆乳製造装置の構成を示す模式的構成図である。
豆乳製造装置1は、ご液または生豆乳を減圧状態で煮沸する煮沸缶(減圧)2に供給されるご液または生豆乳を貯蔵する貯蔵タンク3、煮沸缶2内を真空(減圧)にする真空ポンプ4、煮沸缶2内の環境調整、例えば蒸気を供給したり減圧するバルブ5,6,7、排出ポンプ8等を備えている。ご液を煮沸缶2に供給する手段は、定量ポンプ11(例えばロータリーポンプやギヤポンプ、チュービングポンプ、モーノポンプ、プランジャーポンプ、ベーンポンプ等)のように、気密性のあるポンプによる。また、蒸気エジェクター、油圧・水圧・エアー圧等による押し込みによる方法も利用できる。また煮沸缶内の減圧を利用して、バルブを微小に開口して吸引供給する手段も利用できる。
拡散装置12は、ご液を煮沸缶2内に供給する際に、脱気効果を高めるために設けられているものであり、ご液を薄膜状に形成するか或いは飛散させることにより、煮沸缶2の缶壁を伝わらせて底部に落下させる。フラッシュ円盤12は、本発明でいう拡散手段に相当するものであり、ご液の粘度が高い場合であっても、脱気効果を更に向上させることができる。その他、円盤型、傘型、タービン型、スクリュー羽根型、螺旋型、コイル型、細孔を多数有するスプレーボール型、薄膜状の散布を行うスリット型などの形状を用いても良く、一般的な散布用、噴霧用、タンク洗浄用等のノズルが利用できる。また、ノズルが回転するよう駆動させることも有効である。ご液のようなスラリーの場合、狭い間隙や細いノズルを通すノズルでは、大豆の切片が閉塞する恐れがある。本願発明では特に図4に示すような螺旋型またはコイル型や、大きめの穴やスリットを有するノズルが、閉塞の恐れがなく、飛散状態も広範囲で、大流量に対応し、豆腐の品質にとっても、好ましい。なお、150メッシュより粗い濾過が成された豆乳(生豆乳、オカラ入り豆乳、全粒豆乳も含む)でも、必ず細かいオカラ(ミジン)が存在し、前記スラリー状のご液と同様であり、湯葉などの閉塞物も混在することもあり、同様のノズル(図4)を構成することが好ましい。加熱手段は、直接蒸気吹込みの他、間接蒸気加熱や電気ヒーター、IH加熱、マイクロ波加熱、通電加熱、直火加熱等を利用でき、煮沸缶のご液を底から上層に向かう上昇流や熱対流を起こすことによって、ご液内部の気泡を上層に浮上させ得る。前記真空ポンプ4は、本発明でいう減圧手段に相当するが、その他水流エゼクターやエアーエゼクターや蒸気エゼクター、エアープロワー等も利用できる。また、沸騰終了後、煮沸缶内を密閉下、冷却装置15を用いて冷却することも、減圧手段の一つである。
冷却装置15は、煮沸缶体のご液上の空間に当たる側面や上面(蓋部)を2重ジャケット構造にするタイプや、煮沸缶内にパイプ(例えば蛇管、円筒状管、棒状管など)や冷却板(例えば円盤状、ひだ折状、数枚を合わせた積層型など)をご液上の空間に配設する構造など、冷媒は水(水道水、井戸水、チラー水等)やブライン(例えば塩化カルシウム水溶液、エチレングリコール等)やオイル(例えばシリコーンオイル)、空気、冷媒(フロンガス、フロロカーボン等)など、特にこだわらない。単なる放熱でも効果はあるが、急速に冷却できる冷却装置であることが好ましい。なお、冷却装置を煮沸缶下側の側面や底部のご液に接している内壁やご液中に設けても同様な効果が期待できるが、ご液の冷却装置と上記加熱手段とを兼ね備えた構成になり、ご液の微妙な温度制御が可能になり、泡層の沸き上がりや突沸を防止しながら、ムラなく均一にご液を煮沸することができる。
超音波発信器16は周波数20kHz以上、好ましくは20〜50kHzで、出力0.2W/cm2以上、100W/cm2以下、好ましくは0.5〜10W/cm2であり、ご液に接している缶壁や缶底に密着して配設するか、超音波発振子を缶体内のご液に沈める形など、特にこだわらない。
また、加振装置17も、同様に、ご液に接している缶壁や缶底に密着して配設するか、加振装置17を缶体内のご液に沈める形など特にこだわらない。また、煮沸缶全体を1軸方向あるいは2軸方向あるいは3軸方向に振動、揺動させるような形態をとることもできる。加振装置は電磁式、加振モーター、エアー圧式、油圧式等、如何なる方式のものも利用できる。加振の振動数は5〜5,000Hz、変位は10〜5,000μm、速度は1〜10,000mm/s、加速度は1〜100,000m/s2、衝撃加振力は0.5kN〜30kNであるが、好ましくは、周波数5〜400Hz、変位は20〜500μm、速度は10〜200mm/s2、加速度は20〜1,000m/s2である。
このように、例えば煮沸缶外壁をハンマーで叩くように、ご液を超音波発振器や一般的加振器や衝撃加振器によって、微振動や揺動させることによって、内部に抱き込まれている気泡をご液の上層に移動せしめる効果がある。
なお、煮沸缶2と前記各部材は配管(パイプ)により接続されているが、図1では線で図示すとともに、矢印を用いてご液などの流れ方向を示すものとして援用する。
【0008】
次に、豆乳製造方法を順次説明する。
本発明では、対象として、通常通り浸漬された大豆を粉砕機で加水しながら挽いたご液や大豆粉を水に分散したスラリー、オカラ分散液、豆乳(150メッシュ以下、特に100〜30メッシュの粗い濾材で濾過された豆乳は、ミジンを含み、スラリー状液体である。)、生ご(加熱されていない生のご液)、など、大豆の粒子を含むスラリーであるが、総称して「ご液」という。ご液中の大豆固形分濃度は一般に25%wt以下で、本発明によれば8〜25%wtの濃厚なご液に対しても効果を発揮する。8%wt以下のご液は粘性も低く、本発明によって十分な効果が得られる。当該ご液には、消泡剤などを多少にかかわらず含んでいても良いが、本発明の目的から、グリセリン脂肪酸エステル、シリコーン等のいわゆる化学合成品である消泡剤を全く添加されていないか、極微量の添加であることが好ましい。
ただし、原料大豆の品質変動などのために製造上必要なことから、品質安定の目的でやむを得ず使われる炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸等のpH調整剤、レシチンや食用油などの食感改良材などは、添加されていてもよい。なお、上記添加される原材料は、有機農産物または有機農産加工食品に関する日本農林規格に該当することが好ましい。
豆乳製造に先立って、真空ポンプ4によって煮沸缶2内の気圧を減圧する。この減圧は、後述する貯蔵タンク3から供給されるご液を脱気するために行うものである。ご液が大気圧下で供給され、ご液温度が沸点以下である場合、減圧度は、大気圧以下であれば足りるが、通常は0.0008〜0.09MPaの範囲で用い、ご液温度の飽和蒸気圧近傍かそれ以下に減圧することが好ましい。また、供給されるご液の温度の飽和蒸気圧が大気圧を超える場合(一般に100℃以上)、減圧度は、そのご液温度の飽和蒸気圧の近傍か下回る気圧にすることが好ましい。ただし、供給されるご液の系が機械的に加圧されて、沸騰が抑制されている状態や、ご液に含まれる気泡がその内圧によって圧縮された状態であれば、煮沸缶内の減圧度はその内圧未満であることが好ましく、その差圧によって圧縮された気泡を一気に膨張させることによって、効果的に破泡を行うこともできる。また、上記減圧度がご液温度の飽和蒸気圧に達しない場合でも、ご液に含まれる気泡の大半を破泡、除去することができる。なお、加熱はご液が煮沸缶に入った後に行ってもよい。
次に、貯蔵タンク3から煮沸缶2内にご液を供給するのであるが、煮沸缶2において安定した脱気を図るとともに脱気効果を上げるため、定量ポンプ11によって一定流量(例えば1〜100L/分)で煮沸缶2内に送り込むようにする。このとき煮沸缶2内は上記のように0.0008〜0.09MPaと一定の減圧度に保たれている。定量ポンプ11は、本発明でいうご液供給手段に相当する。なお、ご液は矢印aに示すように配管内を流れるのであるが、その先端にノズル(図示省略)が設けられ、このノズルとしては例えば模式的に示したフラッシュ円盤12などが設けられている。
【0009】
そして、煮沸缶2内に所定量のご液Gが貯留すると、煮沸缶2内に配設した攪拌機13を駆動し、ご液Gに残留した気泡や後述する蒸気による加熱時にご液G内に発生する気泡を浮き上がらせるようにする。攪拌については、煮沸缶の任意の位置に取り付けた回転攪拌(正転、逆転を組み合わせたパターン、又は正逆転の往復攪拌を含み、回転数の加速・減速調節などを行ってもよい)や往復攪拌(上下方向や水平方向、回転方向)など気泡の上昇を妨げない方法が採用され、攪拌羽根がご液中または上層の泡の層中にその一部または全部が没する形で攪拌が行われる。また、前記のように微小な攪拌揺動方法として、超音波発振器や衝撃加振器を利用したり、煮沸缶自体を振動させる構造を設けることも効果的である。
前記のようにご液Gを攪拌すると、ご液Gの上層に泡が集まり、一部は破泡するが、残りの泡を効果的に破泡するため、煮沸缶2内に配設した破泡羽根14を回転駆動(破泡羽根はタービン型、バッフル型、スクリュー型、櫛形など破泡効果の高い形状であり、回転加速・減速調節すると効果的である)する。その他、ご液Gの上面に対して、破泡媒体を供給ポンプ19とノズル18を介して噴霧又は飛散供給するか、又は煮沸缶2から抜き出したご液Gを破泡媒体として、定量ポンプ11と拡散手段12を介して飛散供給(ご液供給方向b及びa)するような循環を行うことによっても、破泡を更に促進することができる。また冷たい媒体を直接ご液に散布する場合も、泡の凝縮や収縮に効果的である。
なお、破泡媒体としては、冷水、温水、熱水、水蒸気、冷気(冷風)、熱気(熱風)、ご液自身(循環脱気中)、オカラの微粒子スラリー、大豆やきな粉等の粉末やそのスラリー、他食品素材(デンプン、食用油、タンパク質等)、食品添加物(例えばレシチン、醸造用エタノールなどの天然型)が適用される。勿論、食品添加物でも化学合成品である消泡剤も適用できるが、本発明の目的を充分満足することにはならない。
上記の破泡媒体は予め加温または冷却または加圧または減圧手段等によって、高温または低温または液化、霧状または気体状であってもよい。さらに、煮沸缶内部のご液を循環し、破泡媒体として使用する場合、その循環配管上に加熱または冷却を行う温度調節手段を設けることも有効である。
【0010】
前記のように、煮沸缶2内に所定量のご液Gが貯留すると、攪拌等を行うとともに煮沸バルブ5を調整して十分な蒸気を煮沸缶2内に供給し、ご液Gの攪拌を補助する。なお、煮沸バルブ5が、本発明でいう蒸気供給手段に相当する。
ご液Gは低温では粘度が高く、流動性が悪いが、攪拌機13による機械的攪拌に蒸気供給を併用することにより、均一かつ急速な熱伝達が行われ、粘度低下と気泡の上昇が促進される。
因みに、減圧下において水やご液Gの沸点は低下し、水の場合は例えば約0,05MPaであれば約80℃程度で沸騰し、この沸騰付近ではご液Gに含まれている気泡が液面に浮上しやすくなり、気泡の上昇が促進される。
【0011】
また、蒸気供給による煮沸途中において、開放バルブ6を一時的に開いて減圧度を下げ、再び閉じて減圧度を調整する。この減圧調整か、或いは減圧調整を繰り返すことや、それに加えて、前記のように、攪拌機13や煮沸缶壁に配設された超音波発振器16や加振装置17を用いてご液に微小な振動や揺動を与えることによって、相乗的にご液Gに含まれている気泡が浮き上がり、破泡しやすくなる。そして、最終的に開放バルブ6を全開にして大気圧に戻すことによって、煮沸缶2内の気泡は殆ど消失する。なお、ご液温度が80℃以下であれば、大豆タンパク質の熱変性(例えば粘度、乳化力の上昇)があまり起きていないため、ご液中の気泡は浮上および破泡しやすく、前記実施形態による効果が一層期待できる。前記以外に、80℃以降真空状態を持続させ、真空ポンプ4で気泡の吸い出しを行ってもよい。ただしロスが少なくないので余り好ましくない。
前記動作に続いて、煮沸バルブ7を開いて大気圧下沸騰するまで、或いは沸騰を続けながら液面上の気泡を圧抜きバルブ9で排出してもよい。煮沸バルブ7は、ご液温度を大気圧下沸騰温度以上に上げたい場合に使用するものであり、煮沸缶2を密閉することにより缶内温度を上げて、有圧下残存する泡層の膨張を抑え、その泡層への伝熱が充分に可能になりムラ煮えを防止できる。また、冷却装置15によって立ち上がった泡層(ほぼ水蒸気からなる)を凝縮又は収縮させることによっても同様にムラ煮えを防止できる。また破泡媒体の散布によっても、立ち上がった泡層を破泡または縮小させることができ、同様にムラ煮を防止できる。そして、煮沸終了後に排出ポンプ8を駆動し、ご液Gが泡立ちしないように煮沸缶2内から排出し、次工程に供給する。
【0012】
以上のように、本実施形態における豆乳製造装置1は、煮沸缶2内を減圧した状態でご液Gを攪拌し、且つ蒸気により加熱する等の方法により、ご液Gに含まれる気泡を確実に発散させることができる。従って、前記豆乳を原料とした豆腐は、酸素による酸化を抑えることができ、化学合成食品添加物の消泡剤を用いることなく美味で安全な豆乳を生産することができる。
【0013】
次に、図2を参照して前記豆乳製造装置1の具体例を説明する。なお、図1に示した部材と同様の作用をなす部材については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
貯蔵タンク3には、大豆を粉砕機21により粉砕したもの、或いは粉大豆を混練機22により混練りしたものが供給され、これが貯蔵タンク3に貯蔵されてご液Gになる。ご液Gは、前記同様に定量ポンプ11により矢印aに示すように煮沸缶2に供給される。この際、真空ポンプ2による減圧が前記同様に行われるが、真空ポンプ2に関連して真空計25、真空調整弁26、真空破壊弁、飛沫を分離するトラップやコ─ルドトラップ等が設けられている。
【0014】
煮沸缶2内に設けられたフラッシュ円盤12はモータMにより回転駆動され、図示を省略したノズルから供給されるご液を前記同様に拡散する。煮沸缶2内に貯留したご液Gは、煮沸バルブ5を開いて供給される蒸気により加熱され、その際の温度は温度計23によって検出される。そして、ご液G内から上昇した気泡は、前記同様、機械的破泡攪拌や破泡媒体の散布などによって表面で破泡するか、又は温度計23や泡レベルセンサー28によって煮沸バルブ5及び圧力調整弁26及び冷却装置15を制御して、泡が急激に立ち上がらないよう煮沸を行なう。
そして、煮沸終了後のご液Gは、排出バルブ27を開くことにより絞り機等の次工程に供給される。なお、泡レベルセンサーは長さの異なる電極棒の数本からなる電極式の他、差圧式、超音波式、磁歪式、音叉式のレベルセンサーや、煮沸缶2の側面に温度センサーや電気伝導度センサーを各レベルに設けたシステムや、煮沸缶2側面に覗き窓を設けて外側から目視又は光学的、画像解析などの測定手段を用いて泡のレベルを検知するセンサーシステム等を用いることができる。
【0015】
次に、図3を参照して本発明の第2実施形態を説明する。なお、前記第1実施形態はバッチ式と呼ばれる構成であるが、本実施形態の豆乳製造装置は連続式に構成されている。そこで、前記第1実施形態と同様の作用をなす部材には同一の符号を付し、説明の重複を省略する。なお、図3は連続式豆乳製造装置の構成図である。
【0016】
本実施形態では、定量ポンプ11と煮沸缶(気液分離チャンバー兼用)2との間に連続(直接または水蒸気加熱や熱水・熱媒等による間接加熱)加熱装置31が設けられ、しかも最初の豆乳製造装置1、言い換えれば煮沸缶2から得られるご液を定量ポンプ11によって次段の豆乳製造装置1に供給するようになっている。煮沸缶2(気液分離チャンバー兼用)は、各段の豆乳製造装置1にそれぞれ設けられているが、各段の減圧度は一定である。しかし、ご液が沸騰するように、各段毎において減圧度を変化させて行くように構成されている。
なお、ご液の上記連続加熱装置への供給は、各真空ポンプ4の真空力による吸引により行うように構成してもよい。この構成にあっては、コスト低減を図ることができる。なお、連続加熱手段は直接蒸気吹込、間接蒸気・熱水加熱、IH加熱、マイクロ波加熱、ジュール(通電)加熱、電気ヒーター、直火加熱などを利用できる。
【0017】
以上の如く、本第2実施形態における豆乳製造装置1は、煮沸缶(気液分離チャンバー兼用)2の前後の両方あるいはその何れか一方に上記加熱装置31を配設する。第1段の煮沸缶(気液分離チャンバー兼用)2により、換言すれば豆乳製造装置により気泡を除去したご液について更に気泡を分離して次の豆乳製造装置、連続加熱装置や煮沸缶(気泡分離チヤンバー兼用)の両方あるいはどちらか一方に供給する。この豆乳製造装置を複数個連結してもよい。従って、ご液に含まれる気泡は、数次にわたって気泡除去されることになり、より一層美味で食感に優れた豆腐を製造することができる。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明における豆乳製造装置及び豆乳製造方法は、減圧手段により予め減圧した煮沸缶内にご液供給手段によって、必要に応じて拡散手段を介して、ご液を供給して、煮沸缶内に設けた加熱装置によって加熱するか、又は攪拌手段によって振動・揺動することによって、ご液内部の気泡をご液上面に浮上させる。その立ち上がった泡層に破泡媒体を飛散させるか、機械的に攪拌羽根と衝突させることによって破泡させるか、又は真空ポンプなどの減圧手段を利用して気泡を除去するか、又はご液上の冷却装置によって水蒸気性の気泡を凝縮させるか、泡レベルセンサーやご液温度に応じて減圧度、加熱手段、冷却手段を制御することによって、脱気および均一に煮沸されたご液を次の工程に供給するものである。
なお、前記気泡の除去は単一の煮沸缶によるバッチ式で行ってもよく、複数の煮沸缶(気泡分離チヤンバー兼用)を連続して配設するとともに、複数の煮沸缶の間に加熱装置を設けた連続式によって行ってもよい。
いずれにしても、豆乳の凝固に先立ってご液から気泡が除去されるので、製造された豆乳にスが生じにくく、消泡剤などの化学合成品を敢えて使用する必要もなくなるので、美味で安全性に優れた豆腐を製造することができる。
【0019】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である豆乳製造装置を示す模式的構成図である。
【図2】豆乳製造装置の具体例を示す模式的構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態である豆乳製造装置を示す模式的構成図である。
【図4】本発明装置において煮沸缶にご液を供給するための拡散装置の例としての螺旋型ノズルを示す図である。
【符号の説明】
1 豆乳製造装置
2 煮沸缶
3 貯蔵タンク
4 真空ポンプ
5,7 煮沸バルブ
6 開放バルブ
8 排出ポンプ
9 圧抜きバルブ
11 定量ポンプ
12 拡散装置(例えばノズル)
13 攪拌機
14 破泡羽根
15 冷却装置
16 超音波発振器
17 加熱装置
18 破泡媒体用ノズル
19 破泡媒体用ポンプ
21 粉砕機
22 混練機
23 温度計
24 パイプ
25 真空計
26 圧力調整弁
27 排出バルブ
28 泡レベルセンサー
31 連続加熱装置
a ご液の供給方向
b 破泡媒体用ご液の供給方向

Claims (6)

  1. 気密構造の煮沸缶と、前記煮沸缶内の気圧を減圧する減圧手段と、減圧された前記煮沸缶内にご液を供給するご液供給手段とを備え、気泡を除去したご液を得ることを特徴とする豆乳製造装置。
  2. 前記煮沸缶内に前記ご液を拡散する拡散手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の豆乳製造装置。
  3. 前記煮沸缶内に前記ご液を加熱する加熱装置又はご液を攪拌する攪拌装置を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の豆乳製造装置。
  4. 前記煮沸缶内のご液に形成される泡層に対して、破泡媒体を直接散布する散布装置、又は間接的に冷却する冷却装置、又は機械的な攪拌装置を設けることによって、ご液上面の泡を破泡することを特徴とする請求項3記載の豆乳製造装置。
  5. 前記ご液を前記煮沸缶に供給する経路に加熱装置を配設し、前記ご液の気泡除去を連続して行うことを特徴とする請求項1又は請求項3又は請求項4記載の豆乳製造装置。
  6. 気密構造の煮沸缶と、前記煮沸缶内の気圧を減圧する減圧手段と、減圧された前記煮沸缶内にご液を供給するご液供給手段と、前記煮沸缶内の前記ご液を加熱又は攪拌することで前記煮沸缶内の前記ご液を拡散する拡散手段と、を備え、
    前記煮沸缶内を所望の減圧状態に維持するか、又は気泡レベルを一定以下に保持するか、又は減圧度を必要に応じてご液の温度に対応して変化させながらご液を煮沸させ、気泡を除去したご液を得ることを特徴とする豆乳製造方法。
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