JP3871444B2 - 液体封入式防振ゴム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防振用の液体封入式防振ゴムに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に取り付けられ防振効果を発揮する液体封入式防振ゴム41には、例えば、図14に示すように、低周波振動の減衰特性を損なわずに高周波振動の動的バネ定数を低下させるものが知られている(例えば、特開平9−264369号公報等を参照)。
【0003】
上記液体封入式防振ゴム41には、図示せぬ振動体への固定取付手段を有するシャフト42と、上記シャフト42の外側に配設され、図示せぬ支持部材への取付孔43を備えた有底筒状の外筒部44と、上記シャフト42と上記外筒部44とを互いに接着するゴム弾性体45と、によって粘性流体46が充填される液室47が形成されていると共に、上記シャフト42の液室47側端部には、円板状の抵抗板48が取り付けられている。そして、上記抵抗板48の両端面には、ゴム材料からなる弾性部材49が加硫接着されており、この弾性部材49が予備圧縮された状態で上記シャフト42の液室47側端部に取り付けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような液体封入式防振ゴム41においては、抵抗板48の軸方向の振動による変位量が上記弾性部材49の予備圧縮量Sの範囲内では、抵抗板48の変位に比例した反力が得られるが、抵抗板48の振動による変位量が予備圧縮量S以上になると反力の増加が低く抑えられてしまう。
【0005】
つまり、図15に示すこの液体封入式防振ゴム41の荷重−撓み特性線図の傾きが示すように、小変位振動での動的バネ定数が、大変位振動での動的バネ定数に比べ大きいものとなり、また、小変位での減衰特性が大変位での減衰特性に比べ大きいものとなり、小変位振動での動的バネ定数を小さくして、大変位振動で大きい減衰特性が必要とされる場合においては、好ましい特性ではない。
【0006】
また、上記液体封入式防振ゴム41においては、上記抵抗板48の軸直角方向に外部から高周波、小振幅振動の入力があった場合、上記抵抗板48に液室47内の粘性流体46からの粘性抵抗が直ちに作用してしまい、この液体封入式防振ゴム41の挙動特性は初期変位から動的バネ定数が大きくなってしまうという不具合が生じている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、振動体への固定手段を有するシャフトと、上記シャフトの外側に該シャフトに対して同心状に配設された有底筒状の外側金具と、上記シャフトと上記外側金具とを連結する筒状のゴム部と、によって液体が充填される液室が形成されていると共に、上記液室内に位置する上記シャフトの一端の外周面に全周に亙って設けられた溝部に、取付用の開口部を中央に備えた円板状の抵抗板が取り付けられている液体封入式防振ゴムにおいて、上記抵抗板の上記開口部に隣接する両端面から突出して上記溝部の両側壁にそれぞれ予備圧縮されることなく接触するよう当接し、上記抵抗板の両端面を上記溝部の両側壁に対して所定間隔を空けて支持する弾性材料からなる一対の軸方向突起部と、上記開口部内周面から突出して上記溝部の底壁に予備圧縮されることなく接触するよう当接し、上記開口部内周面を上記溝部の底壁に対して所定間隔を空けて支持する弾性材料からなる軸直角方向突起部と、が上記開口部に全周に亙って環状に設けられていることを特徴としている。これによって、シャフトに対する全方向からの振動の入力に対して、小振幅の入力には動的バネ特性を低くすることができると共に、大振幅の入力には減衰特性を大きくすることができる。
【0008】
請求項2の発明は、振動体への固定手段を有するシャフトと、上記シャフトの外側に該シャフトに対して同心状に配設された有底筒状の外側金具と、上記シャフトと上記外側金具とを連結する筒状のゴム部と、によって液体が充填される液室が形成されていると共に、上記液室内に位置する上記シャフトの一端の外周面に全周に亙って設けられた溝部に、取付用の開口部を中央に備えた円板状の抵抗板が取り付けられている液体封入式防振ゴムにおいて、上記抵抗板の上記開口部から突出して上記溝部の底壁及び両側壁に予備圧縮されることなく接触するように当接し、上記抵抗板の開口部を上記溝部に対して所定間隔を空けて支持する、上記抵抗板の半径方向に沿った弾性材料からなる突起部が、上記開口部に所定の間隔で設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、上記突起部が上記抵抗板に設けられた溝に形成されていることを特徴としている。これによって、抵抗板と溝部との間隔を広くすることなく突起部の変形方向に対する高さを大きくすることで、突起部の耐久性を向上させることができると共に、より小振幅時の動的バネ定数を小さくすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明に係る液体封入式防振ゴム1の断面図を示している。
【0012】
上記液体封入式防振ゴム1は、両端に段付きの小径部3が形成されたシャフト2と、このシャフト2の外側に上記シャフト2に同心状に配設されると共に、図1において下方側の端部に底蓋5を有した略円筒状の外側金具4と、上記シャフト2の大径部6と上記外側金具4の内周面7とを連結する略筒状のゴム部8と、によって形成された液室9を有している。そして、この液室9には粘性流体10が充填されている。
【0013】
上記シャフト2の図1において上方側の小径部3aには、図示せぬ振動体への固定手段としてネジ部11が設けられていると共に、この小径部3aの段付き部分には、中央にシャフト挿入孔12が形成された金属製の円板13が固定されている。
【0014】
そして、上記外側金具4の図1において上方側の端部の外周には、図示せぬ支持部材への取付孔14を有する円板状の締結プレート15が取り付けられている。
【0015】
上記円板13と上記締結プレート15とは、互いに平行に対向していると共に、両者の間には上記ゴム部8が張り出して上記円板13と上記締結プレート15とを連結している。
【0016】
一方、上記シャフト2の図1において下方側の小径部3bには、中央に開口部16を備え、外表面がゴム部材17によって覆われた略円板状の抵抗板18が取り付けられている。この抵抗板18は、上記シャフト2の液室9内の小径部3bの端面にボルト19によって取り付けられた上記小径部3bより外径が大径のワッシャ20によって抜け落ちないように固定されている。すなわち、上記シャフト2の段付き部分と上記小径部3bと上記ワッシャ20とによって形成された溝部21に上記抵抗板18は取り付けられている。
【0017】
上記抵抗板18の上記開口部16には、図2〜4に示すように、この開口部16近傍の両端面から上記抵抗板18の軸方向に突出する上下一対の軸方向突起部22,22と、上記開口部16内周面から上記抵抗板18の軸直角方向に突出する軸直角方向突起部23と、が上記ゴム部材17と一体に形成され、上記開口部16に全周に亙って環状に設けられている。
【0018】
上記軸方向突起部22,22は、図5に示すように、上記溝部21の両側壁をなすシャフト2の段付き部分と上記ワッシャ20の端面にそれぞれ当接し、上記抵抗板18の両端面を上記溝部21の両側壁に対して所定の隙間Aを空けて支持していると共に、上記軸直角方向突起部23は、上記溝部21の底壁となるシャフト2の小径部3b外側面に当接し、上記開口部16内周面を上記溝部21の底壁に対して所定の隙間Bを空けて支持している。
【0019】
このように構成された液体封入式防振ゴム1においては、図6に示すように、振幅がA以下の振動がシャフト2の軸方向の入力されると、上記軸方向突起部22,22が弾性変形するのみで、抵抗板18と粘性流体10との間に軸方向の相対的な変位が発生せず粘性抵抗が生じないので、動的バネ定数を小さくすることができると共に、振幅がA以上の振動がシャフト2の軸方向の入力されると、上記抵抗板18が上記液室9内を軸方向に動くため、粘性流体10との間に粘性抵抗が発生して高い減衰特性を得ることができる。
【0020】
さらに、上記液体封入式防振ゴム1においては、図7に示すように、振幅がB以下に振動がシャフト2の軸直角方向に入力されると、上記軸直角方向突起部23が弾性変形するのみで、抵抗板18と粘性流体10との間に軸直角方向の相対的な変位が発生せず粘性抵抗が生じないので、動的バネ定数を小さくすることができると共に、振幅がB以上の振動がシャフト2の軸直角方向の入力されると、上記抵抗板18が上記液室9内を軸直角方向に動くため、粘性流体10との間に粘性抵抗が発生して高い減衰特性を得ることができる。
【0021】
つまり、上記液体封入式防振ゴム1は、シャフト2に対する全方向からの振動の入力に対して、小振幅の入力には動的バネ定数を小さくすることができると共に、大振幅の入力には高い減衰特性を得ることができる。
【0022】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0023】
この第2実施例における液体封入式防振ゴムは、上記第1実施例と略同一に構成されているが、図8〜11に示すように、上記抵抗板18の上記開口部16には、この開口部16から突出して上記溝部21の底壁及び両側壁に当接し、上記抵抗板18の開口部16を上記溝部21に対して、軸方向にはA、軸直角方向にはBの隙間をそれぞれ空けて支持する、上記抵抗板18の半径方向に沿った突起部30が、上記開口部16に等角度に6カ所に設けられている。この突起部30は、ゴム部材17と一体に形成されている。
【0024】
このように構成された第2実施例の液体封入式防振ゴムにおいても、第1実施例と同様に、シャフト2に対する全方向からの振動の入力に対して、小振幅の入力には動的バネ定数を小さくすることができると共に、大振幅の入力には高い減衰特性を得ることができる。
【0025】
尚、上記突起部30の個数および配置間隔は、用途に合わせて適宜変更可能である。
【0026】
また、図12及び図13に示す第3実施例は、上記第2実施例においての突起部30が、上記抵抗板18の開口部16に形成させれた溝31内に位置するように設けられており、抵抗板18と上記溝部21との間隔を広くすることなく上記突起部30の変形方向に対する高さを大きくすることで、この突起部30の弾性変形率を減少させ耐久性を向上させることができると共に、この突起部30の動的バネ定数を小さくすることができる。
【0027】
【発明の効果】
請求項1〜3の発明によれば、シャフトに対する全方向からの振動の入力に対して、小振幅の入力には動的バネ特性を低くすることができると共に、大振幅の入力には高い減衰特性を得ることができる。
【0028】
さらに、請求項3の発明によれば、突起部の弾性変形率を減少させ耐久性を向上させることができると共に、突起部の動的バネ定数を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体封入式防振ゴムの要部断面図。
【図2】本発明に係る液体封入式防振ゴムを構成する抵抗板の上面図。
【図3】図2におけるC−C線に沿った断面図。
【図4】図3の一点鎖線Dで囲まれた部分の拡大図。
【図5】図1の一点鎖線Eで囲まれた部分の拡大図。
【図6】図1に示す液体封入式防振ゴムのシャフトの軸方向入力に対する荷重−撓み線図。
【図7】図1に示す液体封入式防振ゴムのシャフトの軸直角方向入力に対する荷重−撓み線図。
【図8】本発明の第2実施例に係る液体封入式防振ゴムを構成する抵抗板の上面図。
【図9】図8のF−F線に沿った断面図。
【図10】図8のG−G線に沿った断面図。
【図11】図8の一点鎖線Hで囲まれた部分の拡大図。
【図12】本発明の第3実施例における抵抗板のG−G線に沿った断面図。
【図13】本発明の第3実施例における図8の一点鎖線Hで囲まれた部分の拡大図。
【図14】従来の液体封入式防振ゴムの断面図。
【図15】従来の液体封入式防振ゴムの荷重−撓み線図。
【符号の説明】
2…シャフト
3…小径部
18…抵抗板
21…溝部
22…軸方向突起部
23…軸直角方向突起部
Claims (3)
- 振動体への固定手段を有するシャフトと、上記シャフトの外側に該シャフトに対して同心状に配設された有底筒状の外側金具と、上記シャフトと上記外側金具とを連結する筒状のゴム部と、によって液体が充填される液室が形成されていると共に、上記液室内に位置する上記シャフトの一端の外周面に全周に亙って設けられた溝部に、取付用の開口部を中央に備えた円板状の抵抗板が取り付けられている液体封入式防振ゴムにおいて、上記抵抗板の上記開口部に隣接する両端面から突出して上記溝部の両側壁にそれぞれ予備圧縮されることなく接触するよう当接し、上記抵抗板の両端面を上記溝部の両側壁に対して所定間隔を空けて支持する弾性材料からなる一対の軸方向突起部と、上記開口部内周面から突出して上記溝部の底壁に予備圧縮されることなく接触するよう当接し、上記開口部内周面を上記溝部の底壁に対して所定間隔を空けて支持する弾性材料からなる軸直角方向突起部と、が上記開口部に全周に亙って環状に設けられていることを特徴とする液体封入式防振ゴム。
- 振動体への固定手段を有するシャフトと、上記シャフトの外側に該シャフトに対して同心状に配設された有底筒状の外側金具と、上記シャフトと上記外側金具とを連結する筒状のゴム部と、によって液体が充填される液室が形成されていると共に、上記液室内に位置する上記シャフトの一端の外周面に全周に亙って設けられた溝部に、取付用の開口部を中央に備えた円板状の抵抗板が取り付けられている液体封入式防振ゴムにおいて、上記抵抗板の上記開口部から突出して上記溝部の底壁及び両側壁に予備圧縮されることなく接触するように当接し、上記抵抗板の開口部を上記溝部に対して所定間隔を空けて支持する、上記抵抗板の半径方向に沿った弾性材料からなる突起部が、上記開口部に所定の間隔で設けられていることを特徴とする液体封入式防振ゴム。
- 上記突起部が上記抵抗板に設けられた溝に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体封入式防振ゴム。
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