JP3871183B2 - 光学素子の3次元形状測定方法及び測定装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、干渉を用いて、自由曲面を持つような光学素子の3次元形状を測定できる測定方法及び測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機等の書込光学系に搭載されるfθレンズやカメラ用のレンズは、面形状及び面精度を高精度に計測する必要があり、現在、その種の測定装置もいくつか市販されている。一方、近年における非球面加工技術の発達に伴い、レンズ等の光学素子の面形状は複雑化し、被検物面が自由曲面形状であることから、この測定における要求仕様は益々高まっている。特に、fθレンズは、もともと要求精度が高く高分解能計測が必要とされる上に、測定範囲が広く傾斜角の大きい高傾斜角計測に対応するものでなければならない。
【0003】
図10に、従来の干渉方式を用いたレンズ形状の測定装置を示す。この従来例はフィゾー型干渉計を基本構成としたものである。光源1から出射された可干渉光は、ビームエクスパンダ3,5により適当な大きさに拡げられフィルタ4により不要な光がカットされる。拡大されて平行光束となった被検波は、対物レンズ20を経由して被測定面21aに達する。この対物レンズ20の最終面は半透鏡としての参照面20aとなっており、この参照面20aで反射される参照波と、被検物21へ照射される被検波とに分けられる。被検物21で反射された被検波は、参照波と同一光路を戻り光アイソレータ19により曲げられて互いに重ね合わされ結像レンズ22によって光センサ23に集光される。光センサ23では被検波と参照波の重畳による干渉縞が結像する。
【0004】
上記の干渉光学系において、被検物21が理想的な位置・形状から僅かにずれていると、この誤差が干渉縞として観測される。その干渉縞データを公知の位相シフト法などで解析することにより、被検物面21aの形状を測定することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例に代表される従来のレンズ形状測定では、参照波の波面が被検物形状に一致するように参照面20aを高精度に加工する必要があり、また、被検物21の位置誤差によって大きな影響を受ける。このため縞解析に必要とされる良好な干渉縞は得るには、かなりの熟練を要する測定作業となっている。しかも、被検物面21aが非球面等の自由曲面からなる3次元形状であると、干渉縞データの解析はさらに複雑化し、測定作業は困難を極める。以上のように、特に任意な形状を持つ被検物の測定においては、その複雑且つ面倒さから種々の問題点を抱えている。
【0006】
結局のところ、3次元形状の測定精度の向上を図るには、特開平11−211427号に示される面形状測定装置のように、被検物の6軸制御といった機械的に複雑な制御を行う必要があった。このような機械的な制御を行うためには必然的に装置が大型化・複雑化するだけでなく、測定システムとしても不安定になりがちといった問題点を有している。
【0007】
そこで、本発明は、そのような現状及び問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、球面のみならず任意の3次元形状を持つ被検物の測定も容易で、また、傾斜角の大きい被検物の全体形状の測定(高傾斜角計測)にも好適な測定方法及び測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光学素子の3次元形状測定方法は、同一光源からの可干渉光を、基準となる参照波と、被検物を透過する被検波とに分割し、該被検物を透過した被検波と参照波の干渉を用いて上記被検物形状を測定する方法であって、上記被検物の屈折率と異なるがこれに近い屈折率の試液で上記被検物の少なくとも一部を浸し、該被検物と試液の屈折率差に基づく透過波面を上記参照波に重畳させて干渉縞像を形成し、該干渉縞像に基づいて上記被検物の3次元形状を測定することを第1の特徴としている。
【0009】
また、所望の密度の干渉縞像が形成されるように、上記被検物と試液との間に任意の屈折率差を設けるとよい。ここにいう「任意の屈折率差」は、使用する干渉光学系や被検物の最大傾斜角等によって異なるが、主として、その僅かな屈折率差によって被検物の表面形状による光の屈折が干渉可能なレベルへ低減されることに関わり、また、達成したい測定精度によって選択されるべき数値である。すなわち、一般に被検物である光学素子との空気との間の屈折率差の下では、表面形状の屈折に起因する干渉縞が形成されないが、その光学素子の表面形状による屈折を僅かであるが適宜な屈折率差の下に行わせ、その屈折に基づく干渉を行わせるという新規な着想に基づくものである。また、このように屈折の一様な低減として定義される「任意の屈折率差」においては、屈折率差が大きいほど透過波面の密度が増し観測しうる干渉縞の本数も増え、逆に、屈折率差が小さいほど透過波面の密度が減り干渉縞の本数も減るので、所望の測定及び解析精度を考慮して、任意な屈折率差を設定すればよい。
【0010】
また、上記干渉縞像から計測される被検物の透過波面、及び上記屈折率差に基づいて、上記被検物の光軸方向の肉厚を計測するとよい。
【0011】
被検物の両面形状の測定という観点から、本発明の光学素子の3次元形状測定方法は、同一光源からの可干渉光を、基準となる参照波と、被検物を透過する被検波とに分割し、該被検物を透過した被検波と参照波の干渉を用いて上記被検物形状を測定する方法であって、上記被検物を被検波の入射側と射出側とで異なる屈折率の試液に浸し、該試液と上記被検物との屈折率差に基づく透過波面を上記参照波に重畳させて干渉縞像を形成し、該干渉縞像に基づいて上記被検物の3次元形状を測定することを第2の特徴としている。
【0012】
また、片面形状を選択的に測定する観点から、上記入射側と射出側のいずれか一方を浸す試液の屈折率を、上記被検物と同じ屈折率にするとよい。
【0013】
また、上記参照波の光路上で、被検物形状の基準となる光学素子を、上記被検物側と同じ屈折率差を与える試液に浸したり、又は、上記被検波の光路上で、被検物形状の基準となる光学素子を、上記被検物の透過波面に相殺する基準波面を形成するような屈折率差を与える試液に浸してもよい。
【0014】
さらに、上記参照波又は被検波の光路上に空間的な位相変調素子を設置し、上記参照波又は被検波の波面を制御するとしてもよい。
【0015】
また、上記被検物及び基準となる光学素子の双方の屈折率をn1とし、該基準となる光学素子を浸す試液の屈折率をn2とし、上記被検物を浸す試液の屈折率をn3としたとき、関係式;
n3=2×n1−n2
の関係に基づいて、上記基準波面を形成するとよい。
【0016】
また、上記被検物と光学素子とが同じ光路に設置される場合に、上記被検物と、上記基準となる光学素子とを、互いの試液を仕切って同一の容器内へ設置するとよい。
【0017】
さらに、上記いずれかの方法の任意な組み合わせとして実施される測定方法により計測されたデータから、上記被検物と屈折率差の無い試液に浸して計測された屈折率分布を差し引いて被検物の3次元形状を求めるとしてもよい。
【0018】
本発明の3次元形状測定装置は、可干渉光が被検波と参照波に分割されるマハツェンダ干渉計等に限られず、上記いずれかの方法の任意な組み合わせとして実施可能なシアリング干渉計であることを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の測定方法を実施可能な測定装置の全体構成を示す図である。図2は、図1の要部を示す拡大図で、測定装置の第1実施例を示している。
図1の測定装置は、マハツェンダ干渉計を基本構成としている。He−Neレーザ1からの出射光(波長:633nm)は、NDフィルタ2を通過して光量を適正に調整され、ビームエキスパンダレンズ3,5で必要な大きさに拡大される。空間フィルタ4(Spatial Filter)は、フレア光やゴースト光といった不要な光をカットする。ビームエキスパンダレンズ5からの平行な可干渉光は、ビームスプリッタBS1によって、直進して被検物Aを透過する被検波aと、直角に曲げられた参照波bとに分割される。被検物Aを透過してミラーM2で直角に曲げられた被検波aと、ミラーM3で曲げられた参照波bとは、ビームスプリッタBS2で重畳され干渉を起こすようになっている。このビームスプリッタBS2は、位相シフト法による干渉縞解析を行うために、ピエゾ素子などによる電気−変位変換素子PZTを介して支持されており、被検波aの光路長を波長オーダで可変設定になるよう光路方向に微動変位可能に配置されている。
【0020】
結像レンズ14は、被検物Aと拡散板15(diffuser)とが幾何光学的に共役関係になる位置へ設置されており、ビームスプリッタBS2で重畳された参照波bと被検波aとはミラーM4で曲げられた後、拡散板15上に結像してズームレンズ16側へ干渉縞像が投影される。一旦拡散板15に投影されることによって干渉縞はインコヒーレント光に変換され、これにより拡散板15以降にあるレンズ系1,17や2次元CCD18aの前面にある保護ガラス等での多重反射を原因とする干渉縞ノイズが低減される。
【0021】
また、拡散板15の位置と、干渉縞検出器18の2次元CCD面18aとは、ズームレンズ16と結像レンズ14とによって共役関係となっており、拡散板15に生じた干渉縞が2次元CCD18aなどを用いたイメージセンサ上に結像する。2次元CCD18aは、アライメント用のモニターとしても使用でき、2次元CCD18a上に結像した干渉縞像の大きさは、上記ズームレンズ16によって可変となっている。干渉縞像は、干渉縞検出器18を介して光電変換されて電気的な画像信号となり、図示しない演算手段であるコンピュータに入力される。コンピュータは、位相シフト法などによる干渉縞像の解析によって透過波面を計測したり、後述の位相変調素子を制御するなど、必要な制御演算のためのプログラムを格納している。
【0022】
図2で拡大して示されるように、被検波aの光路の途中には被検物Aを収容する容器状のセル6が配置されている。セル6内には、測定対象の光学素子たる被検物Aを固定状態にセットするとともに、セル6は、その光路を横切る両端面に入射窓7と出射窓8とを有し、これら入射窓7と出射窓8の各々面精度が高いオプチカルフラットによって液密にシールドされている。なお、図面では、被検物A、試液B及び後述の基準光学素子A′の屈折率は、それぞれの符号に付した括弧書きに示している。
【0023】
上記セル6内には、被検物Aの屈折率と同じではないがこれに近い屈折率の試液Bが満たされており、被検物Aは試液B中に完全に浸されている。なお、セル内に充填した試液Bは屈折率の基準となるので均質でなければならない。僅かでも温度分布が有ると屈折率が変化するため不均質となってしまい、測定精度が低下する。このため、試液Bの屈折率を制御するためには温度分布を高精度に制御する必要がある。温度制御手段として試液Bを充填したセル6を水で覆い、サーキュレータで水を循環させ、水温を一定に制御するとしてもよい。このことは、後述の実施例で使用する各セル6,6′も同様である。
【0024】
上記測定方法は、次の通りである。被検物Aの屈折率をn1とし、試液Bの屈折率をn2とする。ここで試液Bの屈折率n2が被検物Aの屈折率n1と一致しないが近い値であると、傾斜角の大きい被検物Aであっても空気内で測定する場合と比較して屈折角の大きさが極めて小さくなる。すなわち、本干渉計において適宜な屈折率差(n1−n2)を設定することによって、図中の波線で示すように被検物Aの光軸方向の肉厚d(x)に比例した透過波面w(x)が形成され、これが、基準となる参照波bと相互に重ね合わされ干渉縞像となる。干渉縞解析方法としては、上記電気−変位変換素子PZTにより光路差をπ/2間隔でステップ状に駆動し、5回前後干渉縞を取り込んで解析する公知の位相シフト法を用いることができる。もちろんこれに限られず、フーリエ変換法など他の公知の縞解析方法を使用してもよい。
【0025】
被検物Aを通過した後の透過波面w(x)は、次の関係式;
w(x)=(n2−n1)×d(x)
で表される。したがって、n1、n2は既知であるから、干渉縞像解析で求めた透過波面データを基に肉厚d(x)を求めることができ、各位置の肉厚d(x)から3次元の面形状が特定される。図示の被検物Aでは、その両面の曲面形状の屈折による透過波面w(x)が計測され、また、両面間における肉厚d(x)からその両面形状の偏心を測定することができる。
【0026】
因みに本例の干渉計において干渉縞密度の設定例を示すと、上記屈折率差(n2−n1)を0.01としたとき、被検物の肉厚差が2mmのところでは、レーザ波長が633nmであるから、縞本数として31.6λが観測されるといった具合である。ただし、必要な屈折率差は、被検物Aの傾斜角や干渉計の構成等によって異なるため、本発明に関わる屈折率差は上記の例に限定されるものではない。また、上記干渉計において、従来の干渉を用いた形状測定で必要とされていた参照面の作製が不要となり、特に大きな被検物や高傾斜角な被検物の測定に対応できる。さらには、球面に限らず共軸球面や非共軸非球面、さらにこれらの連続面や非連続面までを含む、いわゆる自由曲面形状の測定に適用可能である。
【0027】
また、上記構成の干渉計において、被検物Aを同一の屈折率の試液に含浸して屈折率分布を測定する方法が知られている(例えば、特開平8−122210号)。したがって、正確な形状測定という観点からは、被検物Aと同じ屈折率の試液を用いて予め被検物Aの屈折率分布を測定しておき、上記透過波面データなどから屈折率分布の成分を差し引いて、正味の3次元形状を求めるとしてもよい。このことは、後述の実施例においても同様である。
【0028】
図3は、本発明の第2実施例の要部を示す構成図である。セル6内の中央に被検物Aを含むように仕切9が設けられ、この仕切9及び被検物Aで仕切られた入射側と出射側とで異なる屈折率の試液B′,B″がそれぞれ充填されている。ここでは、被検物Aの屈折率n1に対して、被検波aの入射側に充填された試液B′の屈折率をn2とし、その出射側に充填された試液B″の屈折率をn3とする。そして、被検物Aの入射側の肉厚をd2(x)とし、出射側の表面形状をd3(x)とすると、透過波面w(x)は、被検物Aの両面形状の重ね合わせとなり、次の関係式;
w(x)=(n2−n1)×d2(x)+(n3−n1)×d3(x)
で表される。
ここで、入射側に充填された試液Bの屈折率を被検物と同じ屈折率とし、入射側の試液Bと被検物Aの間にマッチングをとった場合、
(n2−n1)=0 なので、
w(x)=(n3−n1)×d3(x)の関係となる。
(n3−n1)が既知であるから、計測された透過波面w(x)から出射側の肉厚d3(x)、すなわち出射側の表面形状が求まる。
【0029】
上記第2実施例で明らかなように、屈折率差を被検物Aとの間に部分的に与えることで目的とする範囲の形状のみを測定できる。図示の被検物Aのように、両側が曲面形状であっても片側の試液の屈折率を変えるだけで両面を測定でき、また、両面の偏心測定もできる。特に被検物Aのセッティング方向を変えることなく、測定目的の表面形状を浸す試液を被検物Aと異なる屈折率のものに交換するだけで済み、この点で有利な構成である。
【0030】
また、上記屈折率差の設定は、被検物面による屈折角を一様に低減し干渉可能な透過波面w(x)を形成する意味があり、上記の関係式でも明らかなように、所望の透過波面w(x)に対して屈折率差と肉厚差d(x)とが反比例の関係にある。したがって、良好な感度を維持する観点からは、その肉厚差d(x)が小さいときは試液との屈折率差を大きくしてもよい。さらに、肉厚差d(x)が非常に小さい低傾斜角面を測定するには屈折率差を与える媒体として気体を用いてもよい。例えば、射出側又は入射側のいずれかに空気のみを入れ大きな屈折率差を与え、その反対側に試液とのマッチングをとれば、肉厚差d(x)の非常に小さな片面で干渉縞を形成でき、干渉を用いた非球面形状の測定を容易に行うことができる。
【0031】
図4は、本発明の第3実施例の要部を示す構成図である。第3実施例では、参照波bとなる光路側に、基準となる光学素子(以下、基準光学素子A′と称する)を設置している。基準光学素子A′としては被検物形状の基準となるマスターレンズなどを用い、被検物A位置との関係では、拡散板15から光学的に等距離の位置に設置することが望ましい。また、参照波bの光路上では、上記被検物A側と同じタイプのセル6を用い、基準光学素子A′を被検物A側と同じ屈折率n2の試液Bに浸して、被検波a側と同じ屈折率差(n2−n1)を与えている。したがって、被検物Aが基準光学素子A′の形状と一致するような理想的な形状に加工されていれば、被検波aと参照波bの互いの透過波面は等価となり干渉縞はヌルとなる。形状誤差成分があれば、そのまま干渉縞として現れるので、感度が高く、また、検査工程などの良否判定をするのに特に適した干渉計を構成することができる。
【0032】
図5は、本発明の第4実施例の要部を示す構成図である。この第4実施例は、上記第2実施例と第3実施例を組み合わせた形態である。すなわち、被検物Aのセル6は入射側と出射側とで異なる屈折率の試液B′,B″を充填し、参照波bの光路上には、基準光学素子A′のセル6を設置している。例えば、射出側の表面形状を測定する場合、図5に示すように、被検物Aのセル6では入射側の試液B′の屈折率を被検物Aと同じ屈折率n1とし、また、射出側の試液B″の屈折率をn3として、射出側のみに被検物Aとの屈折率差(n3−n1)を形成している。そして、参照波bの光路上には被検物A側と同じタイプのセル6を用いて、基準光学素子A′の入射側を屈折率n1の試液B′に、また、射出側を屈折率n3の試液B″に浸している。これにより双方のセル6,6の出射側のみに同じ屈折率差(n3−n1)を与えている。入射側の表面形状を測定する場合は、上記入射側に上記屈折率差を設けて出射側でマッチングをとればよい。この構成により、両面に形状を有する被検物Aの測定に対応し、かつ形状誤差成分のみを検出するヌルテスト干渉計を提供できる。
【0033】
図6は、本発明の第5実施例の要部を示す構成図である。第5実施例は、上記第3実施例の基準光学素子A′の代わりに、空間的な位相変調素子を設置している。この種の位相変調素子としては液晶板10などを用いることができる。液晶板10に位相変調をかけて、これを透過する参照波bの2次元的な位相分布を制御する。これにより参照波bに、被検物Aを透過する波面と等価な基準波面を形成し干渉でヌル干渉縞を形成する。ここで、液晶板10を介してヌルとするのに必要とされた位相変調量を、液晶板10の制御手段である図示しないコンピュータにストアすれば、被検物Aの形状情報が記憶されたことになる。この形状情報を解析することで、被検物Aの形状をコンピュータ上で再構成することができる。なお、液晶板10等の位相変調素子は、上記基準光学素子A′と併用して、光学素子を基準としたヌルテストにおける波面補正等に使用してもよい。
【0034】
図7は、本発明の第6実施例の要部を示す構成図である。第6実施例は、被検波aとなる光路側に基準光学素子A′とそのセル6を設置している。この場合、被検物Aと基準光学素子A′の双方の屈折率は共にn1で、基準光学素子A′を浸す試液Bの屈折率をn2、被検物Aを浸す試液B′の屈折率をn3としたとき、ヌル干渉縞を形成するためには、次の関係式;
n3=2×n1−n2
の関係を満たすことが望ましい。この関係が満たされるとき、被検物Aの屈折率差に対して基準光学素子A′側の屈折率差が正負で逆転され、被検物Aで形成される透過波面と、基準光学素子A′で形成される基準波面とが凹凸の逆転した波面に生成される。したがって、被検物Aが基準光学素子A′と全く同じ形状である場合は、透過波面が相殺されヌルの干渉縞を生じる。
【0035】
図8は、本発明の第7実施例の要部を示す構成図である。第7実施例は、基準光学素子A′を被検波a側に設置する場合において、構成の簡素化及び取扱いの容易性といった観点から、被検物Aを収容するセルと、基準光学素子A′を収容するセルとが一体化された一体型セル6′を使用している。この一体型セル6′は、2つのセル間の側壁を共有する同一の容器で、中央にオプティカルフラットな窓11を設けて互いの試液を完全に仕切り、第1のセルに基準光学素子A′を、第2のセルに被検物Aを収容する構成である。基準光学素子A′を収容する第1のセルには屈折率n2の試液Bを充填し、被検物Aを収容する第2のセルには屈折率n3の試液B′を充填している。これにより上記第6実施例と同様に、互いに相殺し合う波面を形成可能な屈折率差が設けられている。なお、基準光学素子A′と被検物Aの配置は入れ替えても構わない。このことは上記第6実施例でも同様である。
【0036】
図9は、本発明の第8実施例の要部を示す構成図である。以上説明した第1乃至第7実施例はマハツェンダ干渉計に本発明を適用したものであるが、本発明の構成はマハツェンダ干渉計に限定されるものではない。本発明を適用可能なものに、少なくともシアリング干渉計、トワイマン・グリーン干渉計、フィゾー型干渉計などが挙げられる。図9は、シアリング干渉計を用いた第8実施例である。
【0037】
図9に示した第8実施例では、被検波aを折り曲げる上記ミラーM2の位置に、透光性のある2枚の反射面を互いに近接させた2枚のミラー12,13を使用している。第1のミラー12の裏側反射面と、第2のミラー13の表側反射面とで横ずらしさせたシアリング干渉が生じる。また、第1のミラー12と、第2のミラー12との間隔(反射面間距離)を調整することにより干渉縞の密度を変えることができ、特に、被検物Aとの屈折率差が大きい場合や被検物Aの肉厚差が大きい場合、あるいは透過波面量が大きくなった場合に干渉縞の密度を減少させるといった調整において有利な構成である。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、第1の特徴として、被検物の屈折率と異なるがこれに近い屈折率の試液で上記被検物の少なくとも一部を浸し、該被検物と試液の屈折率差に基づく透過波面を参照波に重畳させて干渉縞像を形成し、該干渉縞像に基づいて被検物の3次元形状を測定する本発明によれば、特殊な参照面を用いずに任意の形状が測定可能であり、また、傾斜角等の大きい被検物の形状全体の測定(高傾斜角計測)にも好適な測定方法を提案できる。
【0039】
また、上記被検物と試液との間に任意の屈折率差を設けることで、任意の形状を持つ被検物の形状を所望の精度で測定することができる。
【0040】
また、上記干渉縞像から計測される被検物の透過波面、及び上記屈折率差に基づいて、上記被検物の光軸方向の肉厚を計測することで、任意の形状を持つ被検物の肉厚を容易に計測でき、また、両面の偏心測定もできる。
【0041】
第2の特徴として、同一光源からの可干渉光を、基準となる参照波と、被検物を透過する被検波とに分割し、該被検物を透過した被検波と参照波の干渉を用いて上記被検物形状を測定する方法であって、上記被検物を被検波の入射側と射出側とで異なる屈折率の試液に浸し、該試液と上記被検物との屈折率差に基づく透過波面を上記参照波に重畳させて干渉縞像を形成し、該干渉縞像に基づいて上記被検物の3次元形状を測定する本発明によれば、任意の形状を持つ被検物のセッティングを変えずに、双方が曲面の被検物の両面形状や相対位置を計測でき、また、両面の偏心測定もできる。
【0042】
また、上記入射側と射出側のいずれか一方を浸す試液の屈折率を、上記被検物と同じ屈折率にすれば、被検物の屈折率と異なる試液に浸された側の表面形状のみを選択的に計測することができる。
【0043】
また、上記参照波の光路上で、被検物形状の基準となる光学素子を、上記被検物側と同じ屈折率差を与える試液に浸したり、上記被検波の光路上で、被検物形状の基準となる光学素子を、上記被検物の透過波面に相殺する基準波面を形成するような屈折率差を与える試液に浸す方法によれば、ヌルテスト干渉計を形成することができ、被検物の形状誤差を目視でも確認することができ、良否判定や問題解析などに好適となり、また、被検物の着脱が容易で操作性の向上につながる。特に、基準となる光学素子を設ける方法と、上記入射側と射出側のいずれか一方のみに屈折率差を設ける方法と併用することで、極めて良好な干渉計を形成することができる。
【0044】
また、上記参照波又は被検波の光路上に空間的な位相変調素子を設置し、上記参照波又は被検波の波面を制御する方法によれば、基準レンズとなる光学素子を用いることなく、ヌルテスト干渉計を形成することができ、被検物の形状誤差を目視でも確認することができ、良否判定や問題解析などに好適となり、また、ヌルとなる位相変調量の制御に基づいて被検物形状をコンピュータ上で再構成することも可能である。
【0045】
また、上記被検物及び基準となる光学素子の双方の屈折率をn1とし、該基準となる光学素子を浸す試液の屈折率をn2とし、上記被検物を浸す試液の屈折率をn3としたとき、関係式;
n3=2×n1−n2
の関係に基づいて、上記基準波面を形成すれば、ヌルテストにさらに好適となる。
【0046】
また、上記被検物と、上記基準となる光学素子とを、互いの試液を仕切って同一の容器内へ設置すれば、装置構成が簡素化され、また、取扱いが容易となり、測定の操作性が向上する。
【0047】
また、上記いずれかの測定方法により計測されたデータから、上記被検物と屈折率差の無い試液に浸して計測された屈折率分布を差し引いて被検物の3次元形状を求める方法によれば、被検物自体の屈折率分布の影響を排して正味の形状データを得ることができる。
【0048】
また、上記いずれかにの測定方法を実施可能な3次元形状測定装置によれば、少なくとも上記測定方法と同様の効果を奏する測定装置を提供できるとともに、特に、シアリング干渉計として構成された測定装置によれば、干渉縞の密度の調整に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定方法を実施可能な測定装置の全体構成図である。
【図2】図1の測定装置の第1実施例を示す要部構成図である。
【図3】第2実施例の要部構成図である。
【図4】第3実施例の要部構成図である。
【図5】第4実施例の要部構成図である。
【図6】第5実施例の要部構成図である。
【図7】第6実施例の要部構成図である。
【図8】第7実施例の要部構成図である。
【図9】シアリング干渉を行う第8実施例の要部構成図である。
【図10】従来の光学素子形状を測定する干渉計の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 He−Neレーザ(同一光源)
6′ 一体型セル(同一の容器)
10 液晶板(位相変調素子)
a 被検波
b 参照波
A 被検物
A′ 基準となる光学素子
B,B,B′ 試液
n1 被検物の屈折率
n2,n3 試液の屈折率
d(x),d2(x),d3(x) 被検物の光軸方向の肉厚
w(x) 被検波の透過波面
Claims (13)
- 同一光源からの可干渉光を、基準となる参照波と、被検物を透過する被検波とに分割し、該被検物を透過した被検波と参照波の干渉を用いて上記被検物形状を測定する方法であって、
上記被検物の屈折率と異なるがこれに近い屈折率の試液で上記被検物の少なくとも一部を浸し、該被検物と試液の屈折率差に基づく透過波面を上記参照波に重畳させて干渉縞像を形成し、該干渉縞像に基づいて上記被検物の3次元形状を測定することを特徴とする光学素子の3次元形状測定方法。 - 所望の密度の干渉縞像が形成されるように、上記被検物と試液との間に任意の屈折率差を設けることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の3次元形状測定方法。
- 上記干渉縞像から計測される被検物の透過波面、及び上記屈折率差に基づいて、上記被検物の光軸方向の肉厚を計測することを特徴とする請求項1又は2に記載の3次元形状の測定方法。
- 同一光源からの可干渉光を、基準となる参照波と、被検物を透過する被検波とに分割し、該被検物を透過した被検波と参照波の干渉を用いて上記被検物形状を測定する方法であって、
上記被検物を被検波の入射側と射出側とで異なる屈折率の試液に浸し、該試液と上記被検物との屈折率差に基づく透過波面を上記参照波に重畳させて干渉縞像を形成し、該干渉縞像に基づいて上記被検物の3次元形状を測定することを特徴とする光学素子の3次元形状測定方法。 - 上記入射側と射出側のいずれか一方を浸す試液の屈折率を、上記被検物と同じ屈折率にすることを特徴とする請求項4に記載の光学素子の3次元形状測定方法。
- 上記参照波の光路上で、被検物形状の基準となる光学素子を、上記被検物側と同じ屈折率差を与える試液に浸すことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光学素子の3次元形状測定方法。
- 上記被検波の光路上で、被検物形状の基準となる光学素子を、上記被検物の透過波面を相殺する基準波面が形成されるような屈折率差を与える試液に浸すことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光学素子の3次元形状測定方法。
- 上記参照波又は被検波の光路上に空間的な位相変調素子を設置し、上記参照波又は被検波の波面を制御することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光学素子の3次元形状測定方法。
- 上記被検物及び基準となる光学素子の双方の屈折率をn1とし、該基準となる光学素子を浸す試液の屈折率をn2とし、上記被検物を浸す試液の屈折率をn3としたとき、関係式;
n3=2×n1−n2
の関係に基づいて、上記基準波面を形成することを特徴とする請求項7に記載の光学素子の3次元形状測定方法。 - 上記被検物と、上記基準となる光学素子とを、互いの試液を仕切って同一の容器内へ設置することを特徴とする請求項8又は9に記載の光学素子の3次元形状測定方法。
- 上記請求項1から10のいずれかに記載の測定方法により計測されたデータから、上記被検物と屈折率差の無い試液に浸して計測された屈折率分布を差し引いて被検物の3次元形状を求めることを特徴とする光学素子の3次元形状測定方法。
- 上記請求項1から11のいずれかに記載の測定方法を実施可能であることを特徴とする光学素子の3次元形状測定装置。
- 上記請求項1から11のいずれかに記載の測定方法を実施可能なシアリング干渉計として構成されたことを特徴とする光学素子の3次元形状測定装置。
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