JP3870443B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車に搭載される自動変速機の制御装置、特に変速開始時に摩擦要素に対して行われる作動油のプリチャージ制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車に搭載される自動変速機は、トルクコンバータと変速歯車機構とを組み合わせ、この変速歯車機構の動力伝達経路をクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素の選択的作動により切り換えて、所定の変速段に自動的に変速するように構成したもので、この種の自動変速機には、上記摩擦要素に供給される作動圧を制御する油圧制御回路が備えられる。
【0003】
この油圧制御回路においては、オイルポンプの吐出圧を調整して所定の圧(以下、「ライン圧」と記す)を生成すると共に、このライン圧に基づいて摩擦要素に供給される作動圧を生成するようになっており、そのために、デューティソレノイドバルブ等の作動圧生成手段が備えられる。そして、この作動圧生成手段を用いて、変速開始時には、ライン圧をそのまま供給することにより摩擦要素の油圧室に至る油路に速やかに作動油を充満させるプリチャージ制御が行われる。
【0004】
つまり、変速時に油圧制御回路から摩擦要素の油圧室に作動圧を供給することにより該摩擦要素を締結しもしくは解放する場合に、変速指令の出力後、直ちに作動圧を生成して供給するようにしても、当初は油圧制御回路から摩擦要素の油圧室に至る油路内に作動油が存在していないため、摩擦要素の油圧室内では油圧が直ちに上昇せず、該摩擦要素の締結もしくは解放動作が遅れるといった問題が生じるのである。
【0005】
そこで、変速指令が出力されたときに、当該摩擦要素に対する作動圧の供給を制御するデューティソレノイドバルブ等の作動圧生成手段を所定時間だけ全開状態とし、該摩擦要素の油圧室に至る油路に作動油を速やかに充填させる制御を行うことがあり、これをプリチャージ制御と称している。そして、このプリチャージ制御が終了した後、例えばイナーシャフェーズ、即ち変速によりタービン回転数が変化する期間の間、該タービン回転数もしくはその変化率等を目標値に一致させるように、当該摩擦要素に供給される作動圧を上記作動圧制御手段によって制御するのであり、これにより、変速時における作動圧制御が応答遅れを生じることなく良好に行われることになる。
【0006】
なお、作動油のプリチャージ制御に関しては、特開平3−28571号公報に、N−D操作時等に、ライン圧生成用のデューティソレノイドバルブを全開としてDレンジで締結される摩擦要素への作動圧の供給を促進するようにしたものが開示されているが、これは、本発明が前提とするライン圧生成手段と摩擦要素との間の油路にデューティソレノイドバルブ等の作動圧生成手段を設けて、該手段により摩擦要素に供給される作動圧を生成するものとは、基本的に異なるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このプリチャージ制御を行うに際しては、その時間、即ちプリチャージ制御を終了して、フィードバック制御等によるイナーシャフェーズでの作動圧制御に移行する時期を適切に設定することが重要であり、この時間が短すぎると、作動圧供給制御の応答遅れが十分に解消されず、逆に、この時間が長すぎると、プリチャージ中に摩擦要素が締結もしくは解放されることになって、急激な締結、解放によるショックが発生することになる。
【0008】
そこで、本発明は、変速開始時に、摩擦要素に対する作動油のプリチャージ制御を行う場合に、そのプリチャージ時間を適切に設定することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。
【0010】
まず、本願の請求項1に係る発明(以下、第1発明という)は、変速歯車機構と、該変速歯車機構の動力伝達経路を切り換える複数の摩擦要素と、オイルポンプの吐出圧を調整して所定の圧を生成する圧生成手段と、この圧生成手段と摩擦要素との間の油路に設けられて、上記所定圧を用いて摩擦要素に供給する作動圧を生成するソレノイド式の作動圧生成手段とを有し、変速開始時に該作動圧生成手段により当該摩擦要素に至る油路に作動油をプリチャージするように構成された自動変速機において、上記作動圧生成手段によるプリチャージの時間を、上記圧生成手段で生成される圧に基づいて設定するプリチャージ時間設定手段と、変速によるタービン回転数の変化の開始を検出するタービン回転数変化開始検出手段と、プリチャージ時間設定手段によって設定された時間内であっても、上記検出手段によって変速によるタービン回転数の変化の開始が検出されたときに、プリチャージを中止させるプリチャージ中止手段とを設けたことを特徴とする。
【0011】
ここで、上記作動圧生成手段としては、デューティソレノイドバルブ、リニアソレノイドバルブ、ON−OFFソレノイドバルブ等が使用される。
【0012】
また、請求項2に係る発明(以下、第2発明という)は、上記第1発明において、プリチャージ時間設定手段により、圧に基づいてプリチャージ時間を設定すると共に、その時間を作動油の温度に応じて補正するように構成したことを特徴とする。
【0014】
上記のような手段を用いることにより、本発明によれば、変速開始時におけるプリチャージ制御の時間がオイルポンプの吐出圧を調整してなる所定圧に基づいて適切に設定されることになる。
【0015】
つまり、デューティソレノイドバルブ等の作動圧生成手段を全開としても、該バルブを通過する作動油の流量は上記所定圧によって変化し、該所定圧が高い場合には、当該摩擦要素に至る油路は比較的短時間で作動油で充満され、逆に、所定圧が低い場合には、当該油路を作動油で充満させるのに比較的長時間を要するのである。したがって、上記所定圧に応じてプリチャージ時間を設定することにより、油路が作動油で充満されたときに、ちょうどプリチャージを終了させることが可能となるのである。さらに、何らかの理由で変速動作が早まり、プリチャージの終了前にタービン回転数の変化が始まったときに、その時点でプリチャージが中止されることにより、変化によるタービン回転数の変化の開始後もプリチャージを続行することによる摩擦要素の急激な締結や解放が回避され、これに伴うショックの発生が防止される。
【0016】
また、第2発明によれば、所定圧に基づいて設定されるプリチャージ時間が作動油の温度に応じて補正されるので、例えば温度が低く、従って作動油の粘度が高いため該作動油の流動性が悪い場合には、それだけプリチャージ時間が長く設定されることになって、このような場合にも、油路が作動油で充満されたときに、ちょうどプリチャージを終了させることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
まず、図1の骨子図により本実施の形態に係る自動変速機10の全体の概略構成を説明する。
【0020】
この自動変速機10は、主たる構成要素として、トルクコンバータ20と、該コンバータ20の出力により駆動される変速歯車機構として隣接配置された第1、第2遊星歯車機構30,40と、これらの遊星歯車機構30,40でなる動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56とを有し、これらによりDレンジにおける1〜4速、Sレンジにおける1〜3速及びLレンジにおける1〜2速と、Rレンジにおける後退速とが得られるようになっている。
【0021】
上記トルクコンバータ20は、エンジン出力軸1に連結されたケース21内に固設されたポンプ22と、該ポンプ22に対向状に配置されて該ポンプ22により作動油を介して駆動されるタービン23と、該ポンプ22とタービン23との間に介設され、かつ、変速機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ25と、上記ケース21とタービン23との間に設けられ、該ケース21を介してエンジン出力軸1とタービン23とを直結するロックアップクラッチ26とで構成されている。そして、上記タービン23の回転がタービンシャフト27を介して遊星歯車機構30,40側に出力されるようになっている。
【0022】
ここで、このトルクコンバータ20の反エンジン側には、該トルクコンバータ20のケース21を介してエンジン出力軸1に駆動されるオイルポンプ12が配置されている。
【0023】
一方、上記第1、第2遊星歯車機構30,40は、いずれも、サンギヤ31,41と、このサンギヤ31,41に噛み合った複数のピニオン32…32,42…42と、これらのピニオン32…32,42…42を支持するピニオンキャリヤ33,43と、ピニオン32…32,42…42に噛み合ったリングギヤ34,44とで構成されている。
【0024】
そして、上記タービンシャフト27と第1遊星歯車機構30のサンギヤ31との間にフォワードクラッチ51が、同じくタービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のサンギヤ41との間にリバースクラッチ52が、また、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43との間に3−4クラッチ53がそれぞれ介設されていると共に、第2遊星歯車機構40のサンギヤ41を固定する2−4ブレーキ54が備えられている。
【0025】
さらに、第1遊星歯車機構30のリングギヤ34と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43とが連結されて、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ55とワンウエイクラッチ56とが並列に配置されていると共に、第1遊星歯車機構30のピニオンキャリヤ33と第2遊星歯車機構40のリングギヤ44とが連結されて、これらに出力ギヤ13が接続されている。
【0026】
そして、この出力ギヤ13が、中間伝動機構60を構成するアイドルシャフト61上の第1中間ギヤ62に噛み合わされていると共に、該アイドルシャフト61上の第2中間ギヤ63と差動装置70の入力ギヤ71とが噛み合わされて、上記出力ギヤ13の回転が差動装置70のデフケース72に入力され、該差動装置70を介して左右の車軸73,74が駆動されるようになっている。
【0027】
ここで、上記各クラッチやブレーキ等の摩擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56の作動状態と変速段との関係をまとめると、次の表1に示すようになる。
【0028】
【表1】
なお、上記の骨子図に示す自動変速機10の変速歯車機構の部分は、具体的には図2に示すように構成されているが、この図に示すように、変速機ケース11には後述する制御で用いられるタービン回転センサ305が取り付けられている。このセンサ305は、先端部がタービンシャフト27と一体的に回転するフォワードクラッチ51のドラム51aの外周面に対向するように取り付けられ、該ドラム外周面に設けられたスプラインによって生じる磁場の周期的変化を検知することにより、上記タービンシャフト27の回転数を検出するようになっている。
【0029】
次に、図1、図2に示す各摩擦要素51〜55に設けられた油圧室に対して作動圧を給排する油圧制御回路について説明する。
【0030】
なお、上記各摩擦要素のうち、バンドブレーキでなる2−4ブレーキ54は、作動圧が供給される油圧室として締結室54aと解放室54bとを有し、締結室54aのみに作動圧が供給されているときに当該2−4ブレーキ54が締結され、解放室54bのみに作動圧が供給されているとき、両室54a,54bとも作動圧が供給されていないとき、及び両室54a,54bとも作動圧が供給されているときに、2−4ブレーキ54が解放されるようになっている。
【0031】
また、その他の摩擦要素51〜53,55は単一の油圧室を有し、該油圧室に作動圧が供給されているときに当該摩擦要素が締結される。
【0032】
図3に示すように、この油圧制御回路100には、主たる構成要素として、ライン圧を生成するレギュレータバルブ101と、手動操作によってレンジの切り換えを行うためのマニュアルバルブ102と、変速時に作動して各摩擦要素51〜55に通じる油路を切り換えるローリバースバルブ103、バイパスバルブ104、3−4シフトバルブ105及びロックアップコントロールバルブ106と、これらのバルブ103〜106を作動させるための第1、第2ON−OFFソレノイドバルブ(以下、「第1、第2SV」と記す)111,112と、第1SV111からの作動圧の供給先を切り換えるソレノイドリレーバルブ(以下、「リレーバルブ」と記す)107と、各摩擦要素51〜55の油圧室に供給される作動圧の生成、調整、排出等の制御を行う第1〜第3デューティソレノイドバルブ(以下、「第1〜第3DSV」と記す)121,122,123等が備えられている。
【0033】
ここで、上記第1、第2SV111,112及び第1〜第3DSV121〜123はいずれも3方弁であって、上、下流側の油路を連通させた状態と、下流側の油路をドレンさせた状態とが得られるようになっている。そして、後者の場合、上流側の油路が遮断されるので、ドレン状態で上流側からの作動油を徒に排出することがなく、オイルポンプ12の駆動ロスが低減される。
【0034】
なお、第1、第2SV111,112はONのときに上、下流側の油路を連通させる。また、第1〜第3DSV121〜123はOFFのとき、即ちデューティ率(1ON−OFF周期におけるON時間の比率)が0%のときに全開となって、上、下流側の油路を完全に連通させ、ONのとき、即ちデューティ率が100%のときに、上流側の油路を遮断して下流側の油路をドレン状態とすると共に、その中間のデューティ率では、上流側の油圧を元圧として、下流側にそのデューティ率に応じた値に調整した油圧を生成するようになっている。
【0035】
上記レギュレータバルブ101は、オイルポンプ12から吐出された作動油の圧力を所定のライン圧に調整する。そして、このライン圧は、メインライン200を介して上記マニュアルバルブ102に供給されると共に、ソレノイドレデューシングバルブ(以下、「レデューシングバルブ」と記す)108と3−4シフトバルブ105とに供給される。
【0036】
このレデューシングバルブ108に供給されたライン圧は、該バルブ108によって減圧されて一定圧とされた上で、ライン201,202を介して第1、第2SV111,112に供給される。
【0037】
そして、この一定圧は、第1SV111がONのときには、ライン203を介して上記リレーバルブ107に供給されると共に、該リレーバルブ107のスプールが図面上(以下同様)右側に位置するときは、さらにライン204を介してバイパスバルブ104の一端の制御ポートにパイロット圧として供給されて、該バイパスバルブ104のスプールを左側に付勢する。また、リレーバルブ107のスプールが左側に位置するときは、ライン205を介して3−4シフトバルブ105の一端の制御ポートにパイロット圧として供給されて、該3−4シフトバルブ105のスプールを右側に付勢する。
【0038】
また、第2SV112がONのときには、上記レデューシングバルブ108からの一定圧は、ライン206を介してバイパスバルブ104に供給されると共に、該バイパスバルブ104のスプールが右側に位置するときは、さらにライン207を介してロックアップコントロールバルブ106の一端の制御ポートにパイロット圧として供給されて、該コントロールバルブ106のスプールを左側に付勢する。また、バイパスバルブ104のスプールが左側に位置するときは、ライン208を介してローリバースバルブ103の一端の制御ポートにパイロット圧として供給されて、該ローリバースバルブ103のスプールを左側に付勢する。
【0039】
さらに、レデューシングバルブ108からの一定圧は、ライン209を介して上記レギュレータバルブ101の制御ポート101aにも供給される。その場合に、この一定圧は、上記ライン209に備えられたリニアソレノイドバルブ131により例えばエンジンのスロットル開度等に応じて調整され、したがって、レギュレータバルブ101により、ライン圧が上記スロットル開度等に応じて調整されることになる。
【0040】
なお、上記3−4シフトバルブ105に導かれたメインライン200は、該バルブ105のスプールが右側に位置するときに、ライン210を介して第1アキュムレータ141に通じ、該アキュムレータ141にライン圧を導入する。
【0041】
一方、上記メインライン200からマニュアルバルブ102に供給されたライン圧は、D,S,Lの各前進レンジでは第1出力ライン211及び第2出力ライン212に、Rレンジでは第1出力ライン211及び第3出力ライン213に、また、Nレンジでは第3出力ライン213にそれぞれ導入される。
【0042】
そして、上記第1出力ライン211は第1DSV121に導かれて、該第1DSV121に制御元圧としてライン圧を供給する。この第1DSV121の下流側は、ライン214を介してローリバースバルブ103に導かれ、該バルブ103のスプールが右側に位置するときには、さらにライン(サーボアプライライン)215を介して2−4ブレーキ54の締結室54aに導かれ、また、上記ローリバースバルブ103のスプールが左側に位置するときには、さらにライン(ローリバースブレーキライン)216を介してローリバースブレーキ55の油圧室に導かれる。
【0043】
ここで、上記ライン214からはライン217が分岐されて、第2アキュムレータ142に導かれている。
【0044】
また、上記第2出力ライン212は、第2DSV122及び第3DSV123に導かれて、これらのDSV122,123に制御元圧としてライン圧をそれぞれ供給すると共に、3−4シフトバルブ105にも導かれている。
【0045】
この3−4シフトバルブ105に導かれたライン212は、該バルブ105のスプールが左側に位置するときに、ライン218を介してロックアップコントロールバルブ106に導かれ、該バルブ106のスプールが左側に位置するときに、さらにライン(フォワードクラッチライン)219を介してフォワードクラッチ51の油圧室に導かれる。
【0046】
ここで、上記フォワードクラッチライン219から分岐されたライン220は3−4シフトバルブ105に導かれ、該バルブ105のスプールが左側に位置するときに、前述のライン210を介して第1アキュムレータ141に通じると共に、該バルブ105のスプールが右側に位置するときには、ライン(サーボリリースライン)221を介して2−4ブレーキ54の解放室54bに通じる。
【0047】
また、第2出力ライン212から制御元圧が供給される第2DSV122の下流側は、ライン222を介して上記リレーバルブ107の一端の制御ポートに導かれて該ポートにパイロット圧を供給し、該リレーバルブ107のスプールを左側に付勢する。また、上記ライン222から分岐されたライン223はローリバースバルブ103に導かれ、該バルブ103のスプールが右側に位置するときに、さらにライン224に通じる。
【0048】
このライン224からは、オリフィス151を介してライン225が分岐されていると共に、この分岐されたライン225は3−4シフトバルブ105に導かれ、該3−4シフトバルブ105のスプールが左側に位置するときに、前述のサーボリリースライン221を介して2−4ブレーキ54の解放室54bに導かれる。
【0049】
また、上記ライン224からオリフィス151を介して分岐されたライン225からは、さらにライン226が分岐されていると共に、このライン226はバイパスバルブ104に導かれ、該バルブ104のスプールが右側に位置するときに、ライン(3−4クラッチライン)227を介して3−4クラッチ53の油圧室に導かれる。
【0050】
さらに、上記ライン224は直接バイパスバルブ104に導かれ、該バルブ104のスプールが左側に位置するときに、上記ライン226を介してライン225に通じる。つまり、ライン224とライン225とが上記オリフィス151をバイパスして通じることになる。
【0051】
また、第2出力ライン212から制御元圧が供給される第3DSV123の下流側は、ライン228を介してロックアップコントロールバルブ106に導かれ、該バルブ106のスプールが右側に位置するときに、上記フォワードクラッチライン219に連通する。また、該ロックアップコントロールバルブ106のスプールが左側に位置するときには、ライン229を介してロックアップクラッチ26のフロント室26aに通じる。
【0052】
さらに、マニュアルバルブ102からの第3出力ライン213は、ローリバースバルブ103に導かれて、該バルブ103にライン圧を供給する。そして、該バルブ103のスプールが左側に位置するときに、ライン(リバースクラッチライン)230を介してリバースクラッチ52の油圧室に導かれる。
【0053】
また、第3出力ライン213から分岐されたライン231はバイパスバルブ104に導かれ、該バルブ104のスプールが右側に位置するときに、前述のライン208を介してローリバースバルブ103の制御ポートにパイロット圧としてライン圧を供給し、該ローリバースバルブ103のスプールを左側に付勢する。
【0054】
以上の構成に加えて、この油圧制御回路100には、コンバータリリーフバルブ109が備えられている。このバルブ109は、レギュレータバルブ101からライン232を介して供給される作動圧を一定圧に調圧した上で、この一定圧をライン233を介してロックアップコントロールバルブ106に供給する。そして、この一定圧は、ロックアップコントロールバルブ106のスプールが右側に位置するときには、前述のライン229を介してロックアップクラッチ26のフロント室26aに供給され、また、該バルブ106のスプールが左側に位置するときには、一定圧がライン234を介してリヤ室26bに供給されるようになっている。
【0055】
このロックアップクラッチ26は、フロント室26aに上記一定圧が供給されたときに解放されると共に、上記ロックアップコントロールバルブ106のスプールが左側に位置して、第3DSV123で生成された作動圧がフロント室26aに供給されたときには、その作動圧に応じたスリップ状態に制御されるようになっている。
【0056】
また、上記マニュアルバルブ102からは、D,S,L,Nの各レンジでメインライン200に通じるライン235が導かれて、レギュレータバルブ101の減圧ポート101bに接続されており、上記の各レンジで該減圧ポート101bにライン圧が導入されるようになっている。
【0057】
ここで、上記レギュレータバルブ101を中心とするライン圧生成部の構成を詳しく説明すると、図4に示すように、このレギュレータバルブ101においては、スプール101cの一端側に、前述のリニアソレノイドバルブ131からの制御圧が導入されて、該スプール101cを増圧側に付勢する制御ポート101aが、他端側に、メインライン200からライン圧が導入されて、該スプール101cを減圧側に付勢するフィードバックポート101dがそれぞれ設けられていると共に、このフィードバックポート101dに隣接させて、該フィードバックポート101dと同様に減圧側にスプール101cを付勢する減圧ポート101bが設けられている。そして、上記のように、この減圧ポート101bに、マニュアルバルブ102においてD,S,L,Nの各レンジでメインライン200に通じるライン235が接続されている。
【0058】
したがって、このレギュレータバルブ101によれば、D,S,L,Nの各レンジでは、メインライン200からマニュアルバルブ102及びライン235を介して該レギュレータバルブ101の減圧ポート101bにライン圧が導入され、このライン圧と、メインライン200からフィードバックポート101dに直接導入されるライン圧とが、制御ポート101aに導入されているリニアソレノイドバルブ131からの制御圧に対抗することになるから、該レギュレータバルブ101で調整されるライン圧の圧力値は、減圧ポート101bにライン圧が導入された分だけ低くなる。
【0059】
これに対して、Rレンジでは、マニュアルバルブ102からレギュレータバルブ101の減圧ポート101bへのライン圧の導入がなく、したがって、フィードバックポート101dに直接導入されるライン圧のみが制御ポート101aに導入されているリニアソレノイドバルブ131からの制御圧に対抗することになる。したがって、上記のようなライン圧の減圧作用がなく、Dレンジ等よりも高いライン圧が得られる。
【0060】
一方、当該自動変速機10には、図5に示すように、油圧制御回路100における上記第1、第2SV111,112、第1〜第3DSV121〜123及びリニアソレノイドバルブ131を制御するコントローラ300が備えられていると共に、このコントローラ300には、当該車両の車速を検出する車速センサ301、エンジンのスロットル開度を検出するスロットル開度センサ302、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ303、運転者によって選択されたシフト位置(レンジ)を検出するシフト位置センサ304、トルクコンバータ20におけるタービン23の回転数を検出するタービン回転センサ305、作動油の油温を検出する油温センサ306等からの信号が入力され、これらのセンサ301〜306からの信号が示す当該車両ないしエンジンの運転状態等に応じて、上記第1、第2SV111,112、第1〜第3DSV121〜123、及びリニアソレノイドバルブ131の作動を制御するようになっている。
【0061】
ここで、第1、第2SV111,112及び第1〜第3DSV121〜123の作動状態を各変速段ごとにまとめると、次の表2に示すようになる。この表2中、(○)は、第1、第2SV111,112についてはON、第1〜第3DSV121〜123についてはOFFであって、いずれも、上流側の油路を下流側の油路に連通させて元圧をそのまま下流側に供給する状態を示す。また、(×)は、第1、第2SV111,112についてはOFF、第1〜第3DSV121〜123についてはONであって、いずれも、上流側の油路を遮断して、下流側の油路をドレンさせた状態を示す。
【0062】
【表2】
次に、上記コントローラ300による変速制御の具体的動作、特に予測ライン圧に基づくプリチャージ制御を含むトルクディマンドの4−3変速時を例に取って説明する。
【0063】
まず、4速の状態では、図6に示すように、第1DSV121で生成された作動圧がライン214、ローリバースバルブ103及びサーボアプライライン215を介して2−4ブレーキ54の締結室54aに供給され、また、第2DSV122で生成された作動圧がライン222,223、上記ローリバースバルブ103、ライン224〜226、バイパスバルブ104及び3−4クラッチライン227を介して3−4クラッチ53の油圧室に供給される。
【0064】
一方、上記第2DSV122からの作動圧がリレーバルブ107のスプールを図面上、左側に位置させており、かつ、第1SV111がONとなることにより、、該第1SV111からのパイロット圧が3−4シフトバルブ105の制御ポート105aに供給されて、該バルブ105によりサーボリリースライン221とフォワードクラッチライン219とが連通された状態にある。そして、この状態で第3DSV123がドレン状態となることにより、ライン220、ロックアップコントロールバルブ106及びライン228を介して、2−4ブレーキ54の解放室54bとフォワードクラッチ51の油圧室の作動圧がドレンされる。したがって、この4速では、3−4クラッチ53と2−4ブレーキ54とが締結され、フォワードクラッチ51が解放されることになる。
【0065】
そして、この状態から、第3DSV123が作動油の供給を開始して、2−4ブレーキ54の解放室54b及びフォワードクラッチ51の油圧室にそれぞれサーボリリース圧及びフォワードクラッチ圧を供給することにより、2−4ブレーキ54が解放され、かつ、フォワードクラッチ51が締結されて、3速に変速することになるが、このとき、第3DSV123によるフォワードクラッチ51を速やかに締結するためのプリチャージ制御が行われ、また、第1DSV121によるサーボアプライ圧のフィードバック制御が行われて、サーボリリース圧の供給による2−4ブレーキ54の解放に伴うタービン回転数の上昇が制御される。
【0066】
なお、3速への変速動作の終了後は、図7に示すように、第1SV111がOFFとなって、3−4シフトバルブ105のスプールが移動することにより、サーボリリースライン221がフォワードクラッチライン219に連通した状態から、3−4クラッチライン227に連通した状態に切り換わる。
【0067】
次に、この4−3変速時における上記第1DSV121及び第3DSV23の具体的動作を説明する。
【0068】
まず、第1DSV121によるサーボアプライ圧のフィードバック制御は図8に示すプログラムに従って行われ、まず、ステップS1,S2でベース油圧Pb、及びフィードバック油圧Pfbをそれぞれのプログラムに従って算出すると共に、ステップS3でこれらを加算して算出油圧Psを求める。
【0069】
ここで、上記ベース油圧Pbは、変速中の目標タービン回転変化率に対応する油圧と、変速中の目標タービントルクに応じた油圧とを加算することにより設定される(図10の符号ア参照)。
【0070】
また、フィードバック油圧Pfbは、変速動作中のタービン回転数を各制御サイクルごとの目標値と比較し、その目標値に対する偏差に応じた油圧をマップから求めることにより設定される。なお、このフィードバック油圧Pfbは、イナーシャフェーズ、即ち変速によりタービン回転数が変化する状態の開始によりタービン回転変化率が所定値より大きくなった時点から算出される(図10の符号イ参照)。
【0071】
次に、ステップS4で、変速指令の出力後、所定の遅延時間T1(図10参照)が経過したか否かを判定し、この遅延時間T1が経過するまでは、ステップS5で、第1DSV121のデューティ率を0%の状態に保持する。これは、トルクディマンドの変速の場合、スロットル開度の増大に伴ってライン圧が急上昇するから、その安定を待って以下の制御を行うためである。
【0072】
そして、この遅延時間T1が経過すれば、ステップS6で、タービン回転数Ntが変速後の回転数Nt0からごく小さな所定回転数ΔNtだけ低い回転数(以下、「変速終了直前回転数」と記す)まで上昇した後、所定時間T2が経過したか否かを判定し、その経過前までは、ステップS7で、上記のようにして求めた算出油圧Psに対応するデューティ率の信号を第1DSV121に出力し、サーボアプライ圧を制御する。また、上記所定時間T2が経過すれば、ステップS8,S9で、デューティ率が0%になるまで、該デューティ率を一定割合で減算しながら出力する。
【0073】
ここで、タービン回転数Ntが変速終了直前回転数(Nt0−ΔNt)まで上昇した後、所定時間T2が経過するまで、サーボアプライ圧のフィードバック制御を行うのは、この制御を変速終了時、即ちフォワードクラッチ51が完全に締結されるまで、必ず実行させるためである。
【0074】
一方、4−3変速時における第3DSV123によるフォワードクラッチ圧及びサーボリリース圧の供給制御は図9に示すプログラムに従って行われ、まずステップS11で、算出油圧Psを求める一方、別途設定されたプログラムに従って判定されるプリチャージ時間中(Fp=1)は、ステップS12,S13に従って、該第3DSV123のデューティ率を0%として、フォワードクラッチ51の油圧室及び2−4ブレーキ54の解放室54bに通じる油路に作動油を速やかに充満させるプリチャージ制御を実行する。
【0075】
そして、このプリチャージ時間が終了すれば(Fp=0)、ステップS14で、タービン回転数Ntが変速終了直前回転数(Nt0−ΔNt)まで上昇したか否かを判定し、この回転数まで上昇するまでの間、ステップS15で、算出油圧Psに対応するデューティ率の信号を第3DSV123に出力する。その場合に、この算出油圧Psは、フォワードクラッチ51におけるスプリングに相当する油圧であって、この油圧がフォワードクラッチ51の油圧室に供給された状態では、該クラッチ51のピストンが締結直前の状態に保持される。
【0076】
その後、タービン回転数Ntが上記変速終了直前回転数(Nt0−ΔNt)まで上昇した時点で、ステップS16,17に従って、デューティ率を一定割合で0%まで減少させる。
【0077】
これにより、フォワードクラッチ圧は、図10に符号ウで示すように、2−4ブレーキ54の解放動作中、フォワードクラッチ51を締結直前の状態とする油圧に保持されると共に、上記サーボアプライ圧のフィードバック制御による2−4ブレーキ54のスリップにより、タービン回転数Ntが変速後の回転数Nt0に近い値まで上昇した時点で、該フォワードクラッチ圧は所定値まで上昇され、フォワードクラッチ51を締結させる。その場合、該フォワードクラッチ圧は予め締結直前の圧力まで上昇されているから、フォワードクラッチ51は、応答遅れを生ずることなく、速やかに締結される。
【0078】
次に、図9のプログラムのステップS12で値が判定されるプリチャージフラグFpの設定、即ちプリチャージ時間の設定制御について説明する。
【0079】
この制御は図11に示すプログラムに従って行われるが、このプログラムは変速指令が出力されたときに図9のプログラムと並行して実行されるものであり、まず、ステップS21で、イニシャライズとしてトータル流量Qtを0とする。次いで、ステップS22で、図12に示すように設定されたマップに基づいて、その時点のライン圧から第3DSV123を全開(デューティ率0%)としたときの該DSV123を通過するベース流量Qを求める。
【0080】
その場合に、上記マップには、ライン圧が高いほどベース流量Qが多くなるように設定されているが、これは、第3DSV123が全開であっても、これを通過する作動油の流量Qはそのときのライン圧によって変化し、ライン圧が高いほど該流量Qも多くなるからである。
【0081】
なお、このベース流量Qを正確に求めるため、上記ライン圧としては、後述する制御で求められる予測ライン圧が用いられる。
【0082】
次に、ステップS23で、図13に示すように設定されたマップから油温補正係数C1を読み取る。この油温補正係数のマップでは、作動油の温度が低くなるに従って補正係数C1が1より小さくなるように設定されている。そして、ステップS24で、上記ベース流量Qに油温補正係数C1を掛けることにより、流量の補正値Q′(=Q×C1)を求める。
【0083】
これにより、作動油の温度が低く、従って粘度が高いために、同じライン圧であってもバルブ通過流量が標準的な状態よりも減少する場合に、その実情に合せて算出される流量も減少され、常に実際の流量に適合したベース流量Q(補正流量Q′)が算出されることになる。
【0084】
さらに、ステップS25で、この補正流量Q′を次式1に従って積算し、制御開始時から現時点までのトータル流量Qtを算出する。ここで、Qt(i−1)は、前回の制御サイクルで求めたトータル流量である。
【0085】
【式1】
そして、ステップS26で、このトータル流量Qtが所定値C2を超えたか否かを判定し、この所定値C2を超えるまでは、ステップS27でプリチャージフラグFpを1にセットすると共に、所定値C2を超えた時点で、ステップS28で、該フラグFpを0にセットする。
【0086】
つまり、上記所定値C2は、油圧制御回路100における当該バルブから当該摩擦要素の油圧室に至る油路(4−3変速時にあっては、第3DSV123からフォワードクラッチ51の油圧室と2−4ブレーキ54の解放室54bに至る油路)の容積に対応した値に設定されたものであり、したがって、Qt>C2となった時点で上記油路が作動油で充満されたことになる。そして、この時点でプリチャージ制御を終了させるために、上記フラグFpを0にセットするのである。
【0087】
このようにして設定されたプリチャージフラグFpの値が前述の第3DSV123によるフォワードクラッチ圧及びサーボリリース圧の供給制御に用いられ、Fp=1の間、即ちプリチャージ時間の間、図9のプログラムのステップS13で、第3DSV123のデューティ率を0%にする制御が行われることになる。これにより、フォワードクラッチ51の油圧室及び2−4ブレーキ54の解放室54bに至る油路が作動油で速やかに充満されることになる。
【0088】
その場合に、このプリチャージ時間の算出の基礎となるベース流量Qは、前述のように、その時点のライン圧に基づいて設定されるから、例えばライン圧が高いため一定量の作動油が比較的短時間で供給される場合や、これとは逆に、ライン圧が低いため、一定量の作動油が供給されるのに要する時間が長くなる場合のいずれにおいても、常に、実際に油路が作動油で充満された時期にプリチャージ制御が終了することになる。
【0089】
また、油温が低いため標準的な場合よりも作動油の供給に時間がかかる場合にも、それに応じた補正が行われるので、この場合も、プリチャージ制御の終了時期が、実際に油路に作動油が充満された時期に精度よく対応することになる。
【0090】
その結果、プリチャージ時間が短すぎたため、作動圧供給制御の応答遅れが十分に解消されず、或は該時間が長すぎたため、摩擦要素が急激に締結されてショックが発生するといった不具合が防止される。
【0091】
なお、図11のプログラムによって設定されたプリチャージ時間の終了前にイナーシャフェーズが始まって、タービン回転変化率が所定値より大きくなったときには、図10に符号エで示すように、その時点でプリチャージ制御を終了し、図9のプログラムのステップS11で算出した算出油圧Psに対応するデューティ率の出力制御に移行する。これにより、変速動作の開始後もプリチャージ制御を続行することによる摩擦要素の急激な締結や解放が回避されることになる。
【0092】
ところで、上記のプリチャージ制御において、その時間を実際に油路に作動油が充満されるまでの時間に精度よく一致させるためには、その時間の算出の基礎となるライン圧を正しく把握しておく必要がある。また、デューティソレノイドバルブ等を用い、変速中に摩擦要素に供給される作動圧をフィードバック制御等により緻密に制御すしようとする場合にも、該作動圧はデューティ率等の制御量にだけではなく、元圧としてのライン圧にも依存するので、そのときのライン圧を正しく把握していなければ目標とする作動圧が得られないことになる。
【0093】
そこで、この実施の形態に係るコントローラ300においては、リニアソレノイドバルブ131によるエンジンスロットル開度等に応じたライン圧を生成するための制御で設定される目標値(出力値)P0から実際のライン圧Pを予測し、その予測ライン圧を用いて上記のプリチャージ時間の設定制御におけるベース流量Qの算出や、作動圧のフィードバック制御における制御量の算出に用いるようになっている。
【0094】
このライン圧の予測は、次式2に従って行われる。
【0095】
【式2】
ここで、C3nは係数C3のnサイクル前の制御時における値であり、また、P0(i−n)は同じくnサイクル前のライン圧の目標値である。
【0096】
つまり、各制御サイクルにおいて、ライン圧の目標値P0が出力されても、実際のライン圧Pに反映されるまでに応答遅れがあるから、各サイクルで出力した目標値P0に係数C3nによってそれぞれの重みをつけた上で、複数サイクルの出力値を加重平均するのである。
【0097】
これにより、ライン圧の変化時に、その応答遅れを考慮した実際のライン圧に近い値のライン圧が予測ライン圧Pとして得られることになる。その場合に、上記係数C3nの値は、例えば応答性や安定性等の要求度合いに応じて、この例の場合、5つの値が一組となって設定される。
【0098】
なお、上記の式2は、所謂伝達関数の近似式に相当するものであるが、この式に代え、次式3で示す伝達関数をそのまま用いることもできる。
【0099】
【式3】
ここで、C4nは係数C4のnサイクル前の制御時における値であり、また、P(i−n)は同じくnサイクル前の制御時に当該式3で求めたライン圧の予測値である。
【0100】
また、次式4に示すように、伝達関数をさらに簡素化したものを用いることもできる。
【0101】
【式4】
ここで、C5は1より小さな所定値であり、この式は、今回の制御サイクルにおける目標値P0と前回の制御サイクルに当該式4で得られた予測値P(i−1)とを所定の比率で配分したもので、所謂なまし処理に相当するものである。
【0102】
これらの式2,3,4のうち、式3は最も計算量は多くなるが、予測の精度が高く、逆に式4は予測の精度は劣るが、計算量は最も少なくてすみ、式3がそれらの中間に位置する。したがって、精度の要求と計算量とを考慮して、これらの式のいずれかを選択することができる。
【0103】
以上のようなライン圧の予測制御は、スロットル開度の増大に伴うトルクディマンドのダウンシフト変速時、つまりスロットル開度に応じてライン圧が大幅に変化する場合に特に必要とされ、この種の変速時に行うことにより、ライン圧に基づくプリチャージ制御や作動圧のフィードバック制御等の精度を向上させる効果が得られる。
【0104】
また、バックアウトのアップシフト変速時にも、スロットル開度の変化に伴ってライン圧が変化するので、このライン圧の予測制御が行われる。その場合に、このライン圧の予測制御をさらに精度よく行うため、ライン圧が上昇するトルクディマンド変速時と、ライン圧が低下するバックアウト変速時とで上記の予測式における係数を異ならせる制御が行われる。これは、主としてライン圧の上昇時と低下時とでデューティソレノイドバルブや油圧制御回路の動作特性が異なることに対処するものである。
【0105】
この制御は図14に示すプログラムに従って行われ、次に、このプログラムについて説明する。なお、このプログラムは前述の式2を用いる場合のものであり、係数C3nの値を決定する。
【0106】
まず、ステップS31で、変速の種類を示すシフトフラグFsの値を判定する。このフラグFsは、ステップS33,S36に示すように、トルクディマンドのダウンシフト変速時に1となり、バックアウトのアップシフト変速時に0となる。
【0107】
そして、今、Fs=0、即ち前回の変速がライン圧を低下させる例えばバックアウトのアップシフト変速であって、ステップS37により係数C3nが値Bにセットされているものとすれば、次にステップS32を実行して、スロットル開度等に応じて設定される目標ライン圧P0が前回の制御サイクル時における値P0(i−1)に不感帯幅としての所定値αを加えた値よりも大きくなったか否かを判定することになるが、トルクディマンドのダウンシフト変速が行われるまでは、P0≦P0(i−1)+αであるので、ステップS31、S32を繰り返すだけで、係数C3nをそのまま値Bに保持する。
【0108】
そして、次に、トルクディマンドのダウンシフト変速が行われ、スロットル開度の増大等に伴って目標ライン圧P0が上昇し、P0>P0(i−1)+αとなれば、ステップS31,S32からステップS33を実行し、上記シフトフラグFsを1にセットすると共に、ステップS34で一組の係数C3nを油圧上昇用の値Aに設定する。
【0109】
また、上記ステップS33でシフトフラグFsを1にセットすると、次はステップS31からステップS35を実行し、目標ライン圧P0が前回の制御サイクル時における値P0(i−1)から不感帯幅としての所定値βを減算した値よりも小さくなったか否かを判定することになるが、次にバックアウトのアップシフト変速が行われるまでは、P0≧P0(i−1)−βであるので、ステップS31,S35を繰り返し、係数C3nを上記値Aに保持する。
【0110】
そして、バックアウトのアップシフト変速が行われ、スロットル開度の減少等に伴って目標ライン圧P0が低下して、P0<P0(i−1)−βとなれば、ステップS31,S35からステップS36を実行して、上記シフトフラグFsを0にセットすると共に、ステップS37で一組の係数C3nを油圧低下用の値Bに設定する。そして、その後、トルクディマンドのダウンシフト変速が行われるまで、ステップS31,S32を繰り返し、上記のように係数C3nを値Bに保持する。
【0111】
ここで、油圧上昇用の値Aとは、図15に示すように、実線で示す実際のライン圧に対して、鎖線aで示すように低めの予測値が得られる係数C3nの値をいう。したがって、トルクディマンドのダウンシフト変速時に、この値Aの係数C3nを用いることにより、例えば解放側摩擦要素の作動圧をデューティソレノイドバルブで制御する場合に、低めに予測されたライン圧に基づいて所定の作動圧を生成するためにデューティ率が小さめ(開放側)に設定されて、作動圧が高めに制御されることになり、したがって、作動圧が低いため解放側摩擦要素の解放動作が急速に行われてエンジン回転数が吹き上がるという事態が防止されることになる。
【0112】
また、トルクディマンドのダウンシフト変速時におけるプリチャージ制御においては、実際の値よりも低く見積もられたライン圧に基づいてデューティソレノイドバルブを通過するベース流量Qが求められることになって、これに基づいて決定されるプリチャージ時間が長くなり、その結果、当該摩擦要素の締結が促進されて、急加速時等における応答遅れが回避されることになる。
【0113】
なお、バックアウトのアップシフト変速時には、ライン圧の予測値を必要以上に低く見積もったり、高く見積もったりする必要がないから、油圧低下用の値Bとしては、図16に示すように、目標ライン圧の低下によく追随する方、即ち破線bで示す方の予測値が得られる係数C3nの値が採用されるのである。
【0114】
このようにして、ライン圧の予測制御がトルクディマンド変速時とバックアウト変速時とで、それぞれの要求に応じて異なる計算式で行われ、いずれの場合にもライン圧の予測が適切に行われることになる。
【0115】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、変速開始時におけるプリチャージ制御の時間がオイルポンプの吐出圧を調整してなる所定圧に基づいて適切に設定されることになる。これにより、上記時間が短すぎて、プリチャージ制御の目的である作動圧供給制御の応答遅れの解消が十分に達成されず、或は上記時間が長すぎて、プリチャージ状態で摩擦要素が急激に締結されたり解放されたりして大きなショックが発生する、といった事態が回避され、プリチャージ制御が行われる変速が常に良好に行われることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る自動変速機の機械的構成を示す骨子図である。
【図2】 同自動変速機の変速歯車機構部の構成を示す断面図である。
【図3】 油圧制御回路の回路図である。
【図4】 同油圧制御回路におけるレギュレータバルブ周辺の構成を示す要部回路図である。
【図5】 図3の油圧制御回路における各ソレノイドバルブに対する制御システム図である。
【図6】 同油圧制御回路の4速の状態を示す要部回路図である。
【図7】 同じく3速の状態を示す要部回路図である。
【図8】 4−3変速時の第1DSVの動作を示すフローチャートである。
【図9】 同じく第3DSVの動作を示すフローチャートである。
【図10】 4−3変速時の各データの変化を示すタイムチャートである。
【図11】 プリチャージ制御の動作を示すフローチャートである。
【図12】 同制御で用いられるライン圧に対する流量のマップである。
【図13】 同じく油温に対する補正係数のマップである。
【図14】 ライン圧予測制御の動作を示すフローチャートである。
【図15】 同制御で用いられる油圧上昇時の係数の説明図である。
【図16】 同じく油圧低下時の係数の説明図である。
【符号の説明】
10 自動変速機
12 オイルポンプ
30,40 変速歯車機構
51〜55 摩擦要素
101,131 圧生成手段(レギュレータバルブ、リニアソレノイドバルブ)
121〜123 作動圧生成手段(デューティソレノイドバルブ)
300 プリチャージ時間設定手段(コントローラ)
Claims (2)
- 変速歯車機構と、該変速歯車機構の動力伝達経路を切り換える複数の摩擦要素と、オイルポンプの吐出圧を調整して所定の圧を生成する圧生成手段と、この圧生成手段と摩擦要素との間の油路に設けられて、上記所定圧を用いて摩擦要素に供給する作動圧を生成するソレノイド式の作動圧生成手段とを有し、変速開始時に該作動圧生成手段により当該摩擦要素に至る油路に作動油をプリチャージするように構成された自動変速機の制御装置であって、上記作動圧生成手段によるプリチャージの時間を、上記圧生成手段で生成される所定圧に基づいて設定するプリチャージ時間設定手段と、変速によるタービン回転数の変化の開始を検出するタービン回転数変化開始検出手段と、プリチャージ時間設定手段によって設定された時間内であっても、上記検出手段によって変速によるタービン回転数の変化の開始が検出されたときに、プリチャージを中止させるプリチャージ中止手段とが設けられていることを特徴とする自動変速機の制御装置。
- プリチャージ時間設定手段は、所定圧に基づいて設定した時間を作動油の温度に応じて補正することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
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