JP3869615B2 - 補助電源を内蔵した空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力の負荷平準化(ピークカット)を目的として、二次電池からなる補助電源を内蔵した空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、家庭用のエアコンディショナーは室内機と室外機から構成されており、室外機に配備されたコンプレッサーから供給される高温、高圧の冷媒は、凝縮器及び膨張弁を経て、低温、低圧の冷媒となって、室内機に配備された蒸発器(熱交換器)へ送り込まれ、気化熱によって室内の空気を冷却するものである。
【0003】
ところで、この様なエアコンディショナーにおいては、消費電力が一日を周期として変動し、例えば図4に示す様に気温の上昇する正午過ぎにピークを生じることになるため、特に夏期の日中には、冷蔵庫等の消費電力の増大も重なって、電力不足の問題が生じている。
この対策として、太陽を熱源として発電を行なう太陽光発電システムや、夜間の余剰電力を二次電池に蓄え、日中の消費電力の一部を二次電池の電力によって賄う電池電力貯蔵システム等が開発されている。
【0004】
この様な状況において、補助電源として二次電池を内蔵したエアコンディショナーが提案されている(特開平6−137650号、特開平10−117448号)。該エアコンディショナーにおいては、室外機に二次電池が内蔵されており、電力ピークが発生する所定の期間には、二次電池に蓄えられた電力によって空調に必要な電力を賄い、夜間の余剰電力によって二次電池を充電する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、補助電源として二次電池を内蔵した従来のエアコンディショナーにおいては、二次電池の寿命が短く、頻繁に二次電池を交換せねばならない問題があった。
そこで、本発明者らは、二次電池の寿命が短くなる原因を究明するべく鋭気研究を行なった結果、従来のエアコンディショナーにおいては、二次電池が室外機に内蔵されていたために、室外の気温や湿度の影響を受け易く、これが電池特性に甚大な悪影響を及ぼしていることを明らかにした。
【0006】
即ち、複数本の二次電池からなる組電池によって補助電源を構成した場合、各二次電池の特性には僅かな個体差があり、電池の温度が大きく変化すると、この個体差による特性のバラツキが更に拡大する。この結果、充放電の繰り返しに伴って各電池の充放電深度が徐々にずれることになり、組電池としての所期の放電容量が得られなくなるのである。
又、二次電池が一定の温度範囲を越えて、高温若しくは低温になると、電極材料に副反応が生じ、電池特性が劣化することになる。
更に、二次電池を内蔵した室外機が風雨にさらされると、結露、埃等が原因で二次電池に絶縁破壊が発生する虞れがある。
【0007】
従来は、上記の様な問題が認識されておらず、何らの対策も施されていなかったために、二次電池の寿命が短くなっていたのである。
本発明の目的は、補助電源として二次電池を内蔵した空調装置において、二次電池の長寿命化を図ることである。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係る空調装置は、補助電源(9)となる複数本の二次電池(2)を室内機のハウジング(11)の内部に配備することにより、室内機自体が有している温度調整機能を利用して、二次電池(2)を適切な温度範囲に維持し、寿命の問題を解決したものである。
即ち、室内機のハウジング(11)の内部には、空気の流路中に、補助電源(9)となる複数本の二次電池(2)が配備され、該二次電池(2)は制御回路(7)によって充放電が制御されている。制御回路(7)は、一日の消費電力の変動においてピークを生じる期間に、空調に必要な電力の一部若しくは全部を二次電池(2)の電力によって賄い、それ以外の期間に、商用電力によって二次電池(2)を充電する様、所定の制御動作を実行するものである。
【0009】
上記本発明の空調装置においては、室内機の運転によって、室内が適正な温度範囲(例えば25℃前後)に保たれるので、この様な温度範囲の空気がハウジング(11)内の二次電池(2)に吹き付けられて、二次電池(2)は室外の気温の変化に拘わらず、適正な温度範囲に維持される。
従って、複数本の二次電池からなる組電池によって補助電源を構成した場合において、各二次電池の特性に僅かな個体差があったとしても、この個体差による特性のバラツキが拡大することはない。従って、充放電の繰り返しに伴って各電池の充放電深度が大きくずれることはなく、組電池として所期の放電容量が得られる。更に、二次電池の電極材料に副反応を生じることはなく、長期間に亘って高い電池性能が維持される。然も、室外機が風雨にさらされたとしても、室内機に内蔵されている二次電池には影響がない。
又、本発明は、単に二次電池(2)を室内機に移設するだけの簡易な構成であり、特別な温度制御装置の追加装備は不要であるので、構成が複雑となることはない。
【0010】
具体的構成において、前記複数本の二次電池(2)は、空気の流路の上流側から下流側へ向けて配列されている。
該具体的構成によれば、ハウジング(11)の内壁に沿って形成されている狭いスペースに複数本の二次電池(2)を配備することが可能であるので、装置が大形化することはない。又、二次電池(2)が空気の流れに大きな抵抗となることもない。
【0011】
又、他の具体的構成において、前記複数本の二次電池(2)は、空気の流路を交差する方向に分散して配列されている。
該具体的構成によれば、各二次電池(2)が空気の流れと交差して配備されることになるので、各二次電池(2)と空気の間の熱交換が効率的に行なわれ、二次電池(2)が空気と同じ温度に維持される。
【0012】
【発明の効果】
本発明に係る補助電源を内蔵した空気調和装置によれば、簡易な構成により、補助電源として内蔵された二次電池の長寿命化を図ることが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を家庭用のエアコンディショナーに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
尚、和室6〜9畳用のインバータ制御方式のエアコンディショナーにおいては、例えば、冷房能力は定格で2.2kWで、気温の変化に応じて0.9kW〜3.0kWの範囲で変動する。この場合の消費電力は最小85W、最大1130Wとなる。
【0014】
本発明に係るエアコンディショナーは、図1或いは図2に示す室内機(1)と、図示省略する室外機とから構成されている。
図1に示す室内機(1)は、ハウジング(11)の内部に、エアフィルター(12)、熱交換器(13)、及びファン(14)を配備して構成されている。又、ハウジング(11)の内部には、天井壁に沿って空気流路の上流側から下流側へ、複数本の円筒型リチウムイオン二次電池(2)が配列され、補助電源を構成している。
【0015】
ファン(14)の運転によって、室内の空気がハウジング(11)前面に開設された空気取り入れ口(15)からハウジング(11)内へ吸い込まれ(矢印A)、該空気は熱交換器(13)を通過して(矢印B)、25℃前後に冷却された後、ハウジング(11)前面に開設された放出口(16)から室内へ噴出される(矢印C)。
この様にして温度調節された空気の循環によって、室内の温度が25℃前後の一定温度に保たれることになる。又、この様にして温度調節された空気と複数本の二次電池(2)との間で熱交換が行なわれ、各二次電池(2)は、室外の温度変化に拘わらず、25℃前後の一定の温度範囲に保たれることになる。
【0016】
又、図2に示す室内機(1)は、ハウジング(11)の内部に、エアフィルター(12)、熱交換器(13)、及びファン(14)を配備して構成されている点で図1の室内機と同じであるが、補助電源を構成すべき複数本の円筒型リチウムイオン二次電池(2)が、熱交換器(13)の前方位置に、空気流路と交差する方向(図2では上下方向)に分散して配列されている。
【0017】
ファン(14)の運転によって、室内の空気が空気取り入れ口(15)からハウジング(11)内へ吸い込まれ(矢印A)、該空気は二次電池(2)の間を通過し、更に熱交換器(13)を通過して(矢印B)、25℃前後に冷却された後、ハウジング(11)前面に開設された放出口(16)から室内へ噴出される(矢印C)。
この様にして温度調節された空気の循環によって、室内の温度が25℃前後の一定温度に保たれることになる。又、この様にして温度調節された空気と複数本の二次電池(2)との間で熱交換が行なわれ、各二次電池(2)は、室外の温度変化に拘わらず、25℃前後の一定の温度範囲に保たれることになる。
【0018】
図3は、本発明のエアコンディショナーの回路構成を表わしている。図示の如く、商用電力系統からの電力線を接続すべき一対の電源端子が設けられており、該電源端子から入力された交流100Vの電力は、整流部(3)を経て直流280Vの電力に変換された後、三相インバータ部(4)へ入力されて、コンプレッサー駆動用のモータ(5)へ供給すべき三相交流電力に変換される。
又、整流部(3)の出力端には、電源回路(6)とDC/DCコンバータ(8)とが接続されており、複数本の二次電池(2)から構成される補助電源(9)の充電時には、電源回路(6)から補助電源(9)へ充電電流が供給される。一方、補助電源(9)の放電時には、補助電源(9)が発生する直流電圧(例えば20V〜30V)がDC/DCコンバータ(8)を経て所定電圧(例えば280V)に昇圧された後、三相インバータ部(4)へ供給される。
三相インバータ部(4)は、マイクロコンピュータからなる制御回路(7)から供給されるPWM制御信号によって制御されている。又、補助電源(9)の充放電状態が制御回路(7)によって監視されており、これに応じてDC/DCコンバータ(8)へ制御信号が供給される。
【0019】
上記エアコンディショナーにおいては、夜間の停止状態にて、商用電力系統から供給される安価な夜間電力によって、補助電源(9)が充電される。
その後、エアコンディショナーの運転が開始され、例えば図4に示す如く、午前9時〜午後1時の期間T1、及び午後5時〜午後11時の期間T3では、運転に必要な電力が商用電力系統からの電力によって賄われ、午後1時〜午後5時の期間T2では、運転に必要な電力は、補助電源(9)が発生する電力のみ、若しくは補助電源(9)と商用電力系統の両方の電力によって賄われる。
【0020】
尚、上述の如き電極供給源の切り換えは、制御回路(7)によるタイマー設定によって行なうことが出来、補助電源(9)の放電期間は、季節等に応じて任意に変えることが出来る。
又、商用電力系統に停電が発生した場合、これを制御回路(7)によって検知し、空調運転に必要な電力の全てを補助電源(9)から供給することとする制御も採用可能である。
【0021】
【実施例】
和室6〜9畳用のインバータ制御方式のエアコンディショナーにおいて、リチウムイオン二次電池(2)を8本、直列に接続して、補助電源(9)を構成した。そして、該エアコンディショナーを実際に運転して、補助電源(9)の性能を調べた。尚、該エアコンディショナーの冷房能力は定格2.2kWで、気温の変化に応じて0.9kW〜3.0kWの範囲で変動する。この場合の室内機の消費電力は約30〜300Wとなる。
【0022】
実施例1
電力容量250Whのリチウムイオン二次電池(2)を8本、図1に示す如く室内機(1)のハウジング(11)上壁に沿って配備し、2kWhの補助電源(9)を構成した。そして、図4に示す如く、午後1時から補助電源(9)のみによる運転に切り換えたところ、午後5時頃まで約4時間の電力供給が可能であった。
従って、該エアコンディショナーによれば、電力需要にピークが発生する期間に補助電源(9)の電力を利用することによって、ピークカットに大きな効果を得ることが出来る。
【0023】
実施例2
電力容量250Whのリチウムイオン二次電池(2)を8本、図2に示す如く室内機(1)のエアフィルター(12)の前方位置に配備し、2kWhの補助電源(9)を構成した。そして、午後1時から補助電源(9)のみによる運転に切り換えたところ、午後5時半頃まで約4.5時間の電力供給が可能であった。
この様に実施例1よりも長時間に亘って補助電源(9)による運転が可能となったのは、実施例2の方が、室内機(1)に吸い込まれた空気と8本の二次電池(2)の間の熱交換が効率的に行なわれて、各二次電池(2)の表面温度がより均一となったためであると考えられる。
【0024】
実施例3
電力容量100Whのリチウムイオン二次電池(2)を8本、図2に示す如く室内機(1)のエアフィルター(12)の前方位置に配備して、800Whの補助電源(9)を構成し、該エアコンディショナーの室内機のみに補助電源(9)の電力を供給することが可能とした。そして、午後1時から補助電源(9)による運転に切り換えたところ、午後5時頃まで約4時間、室内機への電力供給が可能であった。
従って、該エアコンディショナーによれば、電力需要にピークが発生する期間に補助電源(9)の電力を利用することによって、ピークカットに大きな効果を得ることが出来る。
【0025】
上述の如く、本発明に係るエアコンディショナーによれば、主に夏期の日中に発生する電力需要のピーク時に、補助電源(9)から必要な電力を供給することが出来るので、ピークカットに寄与することが可能である。又、実施例1及び実施例2の構成においては、商用電力系統に停電が発生した時にも、補助電源(9)から必要な電力を供給することが出来るので、快適なエアコンディションを継続して得ることが出来る。
【0026】
更に、補助電源(9)を構成する複数本の二次電池(2)が室内機(1)のハウジング(11)内に配備されているので、室外の天候や季節の違いによって受ける温度変化の影響が小さく、従来の如く室外機に二次電池を配備した場合に比べて、長い寿命を得ることが出来る。然も、二次電池を収納するケースに、断熱、防塵、防滴等の特別な対策を施す必要がないため、コストの低減を図ることが可能である。
【0027】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、ハウジング(11)内に配備すべき複数本の二次電池(2)の位置は、図1や図2に示す例に限らず、空気流路中であれば任意の位置でよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエアコンディショナーを構成する室内機の断面図である。
【図2】本発明に係る室内機の他の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係るエアコンディショナーの回路構成を示すブロック図である。
【図4】エアコンディショナーにおける一日の消費電力の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
(1) 室内機
(11) ハウジング
(12) エアフィルター
(13) 熱交換器
(14) ファン
(2) 二次電池
(3) 整流部
(4) 三相インバータ部
(5) コンプレッサー用モータ
(6) 電源回路
(7) 制御回路
(8) DC/DCコンバータ
(9) 補助電源
Claims (5)
- 室内に設置されるべきハウジング(11)の内部に、熱交換器(13)とファン(14)を設置して、室内の空気を取り入れると共に、取り入れた空気を冷却して室内へ噴出する空調装置において、ハウジング(11)の内部には、取り入れた空気の流路中に、補助電源(9)となる複数本の二次電池(2)が配備され、該二次電池(2)は制御回路(7)によって充放電が制御され、該制御回路(7)は、一日の消費電力の変動においてピークを生じる期間に、空調に必要な電力の一部若しくは全部を二次電池(2)の電力によって賄い、それ以外の期間に、商用電力によって二次電池(2)を充電するための制御手段を具えていることを特徴とする空調装置。
- 前記複数本の二次電池(2)は、空気の流路の上流側から下流側へ向けて配列されている請求項1に記載の空調装置。
- 前記複数本の二次電池(2)は、ハウジング(11)の内壁に沿って配列されている請求項2に記載の空調装置。
- 前記複数本の二次電池(2)は、空気の流路を交差する方向に分散して配列されている請求項1に記載の空調装置。
- 前記複数本の二次電池(2)は、熱交換器(13)の前方位置に配列されている請求項4に記載の空調装置。
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