JP3866964B2 - サイクル縫いミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、根巻き縫製を行うサイクル縫いミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、サイクル縫いミシンとして、布地上に自動的にボタン(以下、上ボタン)を縫い付け、さらに上ボタンと布地の間の縫い糸(以下、根糸という)の周りに糸を巻く根巻きボタン付けミシン(以下、単に「ミシン」という)が知られている。
図18及び図19に示すように、このミシン200は、ミシン針201の昇降経路に対し、生地Cのボタン縫着箇所を図19(b)に示すように折曲させた状態で保持するタング202及びこれに対向して設けられた支持板203と、ボタンBUを水平または垂直に保持し得るボタン挟持部材204を備えたボタン保持ユニット205等を備えており、ミシン200の駆動制御は図示しない制御手段により行われている。なお、ボタン保持ユニット205はミシン本体に回転可能に設けられた回転軸206に接続され、回転軸206は接続されたエアシリンダ207の進退動により回転する。そして、この回転軸206の回転に伴いボタン挟持部材204が90度回転するようになっている。
【0003】
そして、ボタンBUを生地Cに縫着するに際し、まずタング202及び支持板203に保持された生地Cの上方に水平な状態でボタンBUを位置させる(図19(a)、(b)参照)。そして、制御手段は図示しないミシンモータを駆動させることで縫針201を一方のボタン縫着孔Baに落下させると共に、針の上下位置に基づき、縫針201がボタン縫着孔Baから上方に位置する間にタング202、支持板203及びボタン挟持部材204を水平方向に所定距離移動させる。
【0004】
次に、制御手段は縫針201を他のボタン縫着孔Baに落下させて、縫針201がボタン縫着孔Baから上方に位置する間に再びタング1、支持板2及びボタン挟持部材3を移動させる。このような制御を繰り返すことで、図20(a)に示すように、縫針201が生地CとボタンBとの間隔を設けるいわゆるすくい縫いを行いボタン縫製工程が終了する。
次に、制御手段は、図19(c)に示すようにボタン挟持部材204を駆動してボタンBUを垂直状態にする。そして、針の上下位置に基づいてタング202、支持板203及びボタン挟持部材204を一体に所定のタイミングで水平方向へ移動させつつ、図20(b)に示すように、縫針201をボタンBUと生地Cとの間に形成された根糸Tの両側に交互に落下させて、根糸に根巻き縫いを施すことで根巻き縫製工程が終了する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、ミシン200の駆動を制御する制御手段は、針の上下位置に基づいて縫針201とボタンBUとを相対的に移動させることでボタン縫製や根巻き縫製等の各種作業を行っている。そして、近年、作業の多様化、高速化、作業性の向上等の要求に対応可能なミシンが要求されている。
【0006】
本発明の課題は、多様な縫製条件に対応可能であって、かつ、作業効率の向上を図ることができるサイクル縫いミシンを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のサイクル縫いミシンは、縫い針と当該縫い針に対向するように設けられたルーパとを備え、ボタンを水平状態にして縫製物に縫い付けるボタン縫製工程と、ボタンを垂直状態にすると共に前記ルーパとの干渉を防止するように当該ボタンを上方に移動してボタンと縫製物間に形成された根糸を根巻きする根巻き縫製工程とを行うサイクル縫いミシンであって、針の上下位置に基づいて判断されるボタンと針との相対移動の開始時期を、前記ボタン縫製工程では針先がボタン穴から抜け出る時点より後とし、前記根巻き縫製工程では針先が前記根糸から抜け出る時点より前とすることを特徴とする。
【0012】
請求項1記載のサイクル縫いミシンによれば、ボタン縫製工程では、針先がボタン穴から抜け出る時点より後を開始時期とするので、例えば、針がボタン穴から完全に抜け出る前にボタンの移動が開始されることで発生する針及びボタンの損傷等の不具合を未然に防止できる。また、根巻き縫製工程では、針先が根糸から抜け出る時点より前を開始時期とするので、開始時期を針先が根糸から抜け出る時点より後に設定する場合と比較して、ボタンの移動タイミングを早くすることができ、根巻き縫製工程の作業性を向上させることが可能となる。具体的には、ボタンや縫製物を所定位置まで速やかに移動させることができるので、針の上下動スピードを早くして根巻き縫製作業の作業スピードを向上させることが可能となる。また、針の上下動スピードを変更しない場合は、ボタンや縫製物を所定位置まで移動させる際の移動スピードを抑えることができ、位置決め精度の向上や、移動時に発生する騒音を抑えることができる。
【0013】
請求項2記載のサイクル縫いミシンは、ボタンを水平状態にして縫製物に縫い付けるボタン縫製工程と、ボタンを垂直状態にしてボタンと縫製物間に形成された根糸を根巻きする根巻き縫製工程とを行うサイクル縫いミシンであって、針の上下位置に基づいて判断されるボタンと針との相対移動の終了時期を、前記ボタン縫製工程と根巻き縫製工程とで変更することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載のサイクル縫いミシンによれば、ボタンと針との相対移動の終了時期をボタン縫製工程と根巻き縫製工程とで適宜変更するので、ボタン縫製工程及び根巻き縫製工程に関して、布地やボタンの形状、種類等に応じた縫製作業を行うことが可能となり、また、縫製作業の作業性や精度を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のサイクルミシンとしての根巻きボタン付けミシン1(以下、単に「ミシン」という)の概略構成を示すものである。図示はしないが、ミシン1はベッド部、ベッド部から立設する縦胴部、縦胴部からベッド部に対向するように延設するアーム部等から構成される。
【0016】
ミシン1は、図2に示すように、アーム部の先端に設けられた針棒9の先端に固定され、糸が通された縫い針(針)5と、ベッド部内に縫い針5に対向するように設けられた図示しないルーパとの協働により自動的に布地(縫製物)にボタンを縫い付けるものである。ルーパの動作などの縫い目の形成については周知の技術であるので、詳細な説明は省略する。
ミシン1は、上ボタンや布地などを独立に自在に搬送することによって、多様なボタン付け縫いが可能となっている。以下では、ボタン等を搬送する各種機構について詳細に説明する。なお、以後の説明において、いわゆる表ボタンを上ボタンB、力ボタンのように表ボタンに対して布地の裏側に取り付けられるボタンを下ボタンとして説明している。
【0017】
図2〜図4はミシン1に設けられる針上下動機構10及び針振り機構11を示す図である。
針上下動機構10は、縫い針5を上下に駆動するもので、ミシン1内部に固定された主軸モータ(ミシンモータ)14を駆動源としている。主軸モータ14の出力軸には、軸受け7aによって回転自在に支持された状態で水平方向に設けられている主軸7が接続されている。さらに該主軸7の先端には、釣合い錘18が取り付けられている。この釣合い錘18に隣接して天秤リンク16及び天秤25が設けられている。天秤リンク16の一端部と天秤25の基部は、それぞれ、釣合い錘18に対して回動自在に軸支されており、釣合い錘18の回転に従って、所定の軌跡に沿って上下動する。
天秤リンク16の他端部は、釣合い錘18の偏心位置に固定された針棒クランク19の一端部に回動自在に取り付けられ、針棒クランク19の他端部には針棒クランクロッド26の上端部が回動自在に取り付けられている。針棒クランクロッド26の下端部には、軸穴26aが形成されている。針棒クランクロッド26の後方には上下方向にガイド溝29aが形成された案内部材29が設けられており、ガイド溝29aに角駒27が摺動可能にはめ込まれている。角駒27には水平方向に軸穴27aが形成されている。
【0018】
一方、針棒クランクロッド26の前方には上下ロッド28が設けられている。上下ロッド28には上下に並ぶ2つの軸穴が形成され、上方の軸穴(図示せず)には針棒9を固定支持している針棒抱き8に固定された軸が回動自在に通されている。そして、上下ロッド28の下方の軸穴28aと、針棒クランクロッド26の軸穴26aと、角駒27の軸穴27aには、図示しない軸が通されており、これにより、針棒クランクロッド26の上下動が角駒27と上下ロッド28に伝達される。なお、図4では、説明の都合上、軸穴27a、26a、28aが見えるように便宜的に上下方向にずらした状態で示しているが、実際には水平方向に一直線上に並んでいる。
以上の構成の針上下動機構10では、主軸モータ14の回転により主軸7が回転すると、釣合い錘18が回転し、針棒クランク19の一端部が主軸7を中心に回転することで、針棒クランクロッド26が上下する。この上下動が、上下ロッド28、針棒抱き8を介して針棒9に伝達され、縫い針5が上下動するようになっている。
【0019】
針振り機構11は、縫い針5を左右(X方向)に往復揺動するもので、パルスモータである針振りモータ20を駆動源とする。針振りモータ20はミシン1の機枠に固定され、主軸モータ14と同期して回転する。その出力軸に第1リンク24が接続され、この第1リンク24に第2リンク23が、第2リンク23に第3リンク22が順に連結されている。第3リンク22に、前後方向に長く設けられている針棒揺動桿12の後端部が固定的に接続されている。針棒揺動桿12の前端部には略L字形状を有する揺動腕13が固定され、さらに揺動腕13の先端には揺動角駒15が取り付けられている。
一方、前記針棒9は、その中間部と上部において、針棒揺動台6に対して上下に摺動可能に支持されている。この針棒揺動台6は、支点ピン17を中心にX方向に揺動自在に構成されている。針棒揺動台6の下端部には上下方向に溝6aが形成され、この溝6aに揺動角駒15が上下に摺動自在にはめ込まれている。
【0020】
上記構成を有する針振り機構11においては、針振りモータ20が作動すると、その回転が第1リンク24、第2リンク23、第3リンク22を介して針棒揺動桿12に伝わり、往復揺動する。この揺動が揺動角駒15を介して針棒揺動台6に伝わり、針棒揺動台6は、支点ピン17を中心に、針棒9ごとX方向に揺動し、これにより縫い針5が左右に針振りされる。
ところで、前記上下ロッド28が、その上下の軸穴に通されている軸に対して回動自在であって、軸穴28aを中心に鉛直面内で針棒9の揺動に従って回転することができるので、針棒9は針棒抱き8によって上下に駆動されながら、針棒抱き8とともに針棒揺動台6によってX方向に揺動することができるようになっている。
また、針振りモータ20は前述のように主軸モータ14と同期して作動するが、具体的には、縫い針5がベッド部上面の針板(図示略)よりも上方に位置するときのみ針棒9が揺動するように制御される。
【0021】
図5及び図6には、チャック部90に把持された上ボタンBを、Y方向に搬送する上Y送り機構30とX方向に搬送するボタン差動機構70を示した。
上Y送り機構30は、アーム部の中央部の内部に固定されている上Y送りモータ32を駆動源としている。上Y送りモータ32は、正逆両回転可能に構成され、その出力軸にはピニオン32aが固定されている。
【0022】
アーム部の中央部には、いわゆる懐部分に突出するように上Y送りベース36が設けられている。この上Y送りベース36の上面36b上には、アーム部に固定されているアームガイド部31、31と係合するベースガイド部36a、36aが設けれている。アームガイド部31、31とベースガイド部36a、36aは、互いにY方向に直線的に摺動可能であるように係合している。
上Y送りベース36の縁部には、上面にラック33を支持するラック支持台36cが設けられ、このラック33に対して前記ピニオン32aが噛みあっている。よって、上Y送りモータ32が一方向に回転動作しピニオン32aが回転すると、ラック33を介して上Y送りベース36が前後いずれかの方向に移動するようになっている。
【0023】
なお、アーム部内部であって、ラック支持台36c近傍には、フォトインタラプタからなる位置センサ42が設けられている。一方、ラック33の側面には被センサ板33aが固定されている。ラック33が所定距離前方に移動してくると、被センサ板33aがフォトインタラプタである位置センサ42の間を通り、これによりラック33が前方における限界位置に達したことが検出され、さらに前進すると図示しないストッパに当接し、これ以上前方に移動できないようになっている。
【0024】
上Y送りベース36には、後述のチャックユニット71を上下させるボタン上下動機構40が設けられている。ボタン上下動機構40は、上Y送りベース36内部に取り付けられ、正逆両回転可能な上下駆動モータ35と、該上下駆動モータ35の出力軸に固定された上下ピニオン35aと、上Y送りベース36の側面に上下方向に沿って取り付けられた上下ラック41とからなる。上下ラック41は、チャックユニット71を支持するチャック支持腕34に対して、ラック支持板41aを介して固定されている。
よって、上下駆動モータ35が一方向に回転動作し上下ピニオン35aが回転すると、上下ラック41が上下のいずれかに移動し、これによりラック支持板41aを介してチャック支持腕34が上下するようになっている。なお、上下ピニオン35aに近接して、ラック支持板41aの上下方向の移動をガイドする上下ガイド棒43が設けられている。
【0025】
ボタン上下動機構40の近傍には、チャックユニット71を90度回転させるボタン回転機構(回転手段)46が設けられ、チャック支持腕34の上部側面に設けられた回転シリンダ37を駆動源としている。この回転シリンダ37は、2つのエア口37a、37aを備えた複動型のエアシリンダで、出力ロッド37bを前後に往復駆動可能となっている。
出力ロッド37bの先端には、ほぼ三角形に形成されている三角リンク38の1頂点が回動可能に接続されている。三角リンク38の2つ目の頂点には、チャック支持腕34に沿うように設けられている細長い主リンク39の一端部が接続されている。また三角リンク38の3つ目の頂点はチャック支持腕34に接続されている。主リンク39の他端部は、図7などに示すように、チャック支持腕34の下端部との間に設けられている回転体45に接続されている。この回転体45に、チャックユニット71全体を支持するユニット支持腕81から延出するユニット軸81aが固定されている。なお、チャック支持腕34の下端部には軸穴(図示略)が形成され、この軸穴にユニット軸81aが回動可能な状態で貫通している。
【0026】
ボタン回転機構46においては、三角リンク38、主リンク39、回転体45、チャック支持腕34により、チャック支持腕34を固定リンクとする4節リンクが構成される。そして、出力ロッド37bが前後に動くことで、回転体45が90度時計方向及び反時計方向のいずれかに回転し、これによりユニット軸81aを介してチャックユニット71が90度回転する。具体的には、出力ロッド37bが押し出された状態で、チャックユニット71は上ボタンBを水平状態に把持し(図5、図6の状態)、出力ロッド37bが引き込まれるとチャックユニット71は図6で時計方向に回転し、上ボタンBが垂直状態となるように把持する。後述する根巻き縫製はこの状態で行われる。
【0027】
次に、図7〜図9に基づいてチャックユニット71について説明する。図9は、モータユニット77を外した状態で示している。チャックユニット71は、上ボタンBをチャックするチャック部90と、チャック部90をX方向に駆動するボタン差動機構70とから構成される。
チャック部90は、左右に対向するように設けられているチャック片91a、91bを備え、これらの間で上ボタンBを挟んで把持するようになっている。チャック片91aは、L字型に形成されているチャック可動部材92の下部に設けられたチャック取付部92aに固定されている。一方、チャック片91bは、チャック可動部材92よりも短いL字型に形成されているチャック可動部材93の下部に設けられたチャック取付部93aに固定されている。
【0028】
そして、チャック可動部材92、93は、図7、図8に示すように、それぞれ、チャック片91bと前記支持腕81の間に設けられた基台74の下面に形成されたガイド溝74a、74bに対して摺動可能にはめ込まれている。基台74の下面には、ネジ83により、手で操作するための手動レバー82(図8では破線で示す)がネジ83を中心に回動可能に取り付けられている。チャック可動部材92、93の下面には、下方に突出するピン92b、93bが固定され、これらは手動レバー82に形成されている所定形状を有する穴(図示せず)を貫通している。
よって、手動レバー82がネジ83を中心に図8における時計方向に回動すると、チャック可動部材92はピン92bを介して左方に押され、チャック可動部材93はピン93bを介して右方に引っ張られ、これにより両チャック片91a、91bの間隔が広げられ、上ボタンBを外せる状態になる。また、手動レバー82がネジ83を中心に図8における反時計方向に回動すると、チャック可動部材92はピン92bを介して右方に引かれ、チャック可動部材93はピン93bを介して左方に押され、これにより両チャック片91a、91bの間隔が近づき、上ボタンBを把持できる。
なお、基台74の前縁部にはネジ74cで手動レバー82のストッパー板79が固定されている。長穴79aは両チャック片91a、91bの間隔調節用の長穴である。
【0029】
ボタン差動機構70は、チャック部90を左右に駆動するもので、主に、前記ユニット支持腕81に固定された差動ベース80と、差動モータ72とストッパ部材78とから構成される。差動ベース80には、図9に示すように、中央に左右に長い長孔80aが形成され、該長孔80aのうちの2箇所がより細く形成された細孔80b、80bになっている。細孔80b、80bは、所定の幅をもって所定長さを有し、それぞれに基台74に固定された段ネジ75、75がはめ込まれている。段ネジ75、75が細孔80b、80bに沿って移動することで、差動ベース80に対して基台74が左右方向に往復移動可能になっている。
【0030】
差動ベース80上には、断面形状が略U字型に形成されたモータユニット77がネジ止めされ、該モータユニット77を構成する左右の壁部77a、77bの間にリニアモータである差動モータ72が固定支持されている。差動モータ72の出力軸72aは壁部77a、77bを貫通して、左右両側に突出している。この出力軸72aは、差動モータ72が動作すると、左右いずれかの方向に直進するようになっている。
一方、基台74の左部上面には、ストッパ部材78がネジ止めにより立設されている。ストッパ部材78と壁部77aとの間には、両者を近接する方向に付勢するバネ73、73が掛け渡されている。このバネ73、73によりストッパ部材78が出力軸72aに対して常に当接するようになっている。
【0031】
以上構成のボタン差動機構70では、差動モータ72が一方向に動作すると、出力軸72aが左方に直進する。この出力軸72aの直進により、ストッパ部材78が左方に押され、ストッパ部材78を固定支持する基台74が、差動ベース80に対して左方に摺動する。基台74にはチャック可動部材92、93が係合していることから、基台74ごとチャック部90が左方に移動する。逆に、差動モータ72の逆方向への動作により出力軸72aが右方に移動すると、バネ73、73の付勢力によりストッパ部材78も右方に移動し、したがって、基台74ごとチャック部90も右方に移動するようになっている。
【0032】
次に、図10〜図12に基づいて、ベッド部に設けられ、布地及び下ボタンをY方向に搬送する下Y送り機構50について説明する。
下Y送り機構50は、下Y送りモータ51を駆動源とし、該モータ51の出力軸にスプロケットホイール52が固定されている。さらにこのスプロケットホイール52に、前後方向に張り渡されているタイミングベルト53がかみ合うように掛けられている。また、タイミングベルト53は、回転自在な従動ローラ58にも掛けられ、下Y送りモータ51が回転すると、スプロケットホイール52を介して回転移動するようになっている。
なお、タイミングベルト53の近傍には、図示しないルーパを駆動する下軸69が設けられている。前記主軸モータ14の回転が、タイミングベルト68a、68b等を介して、下軸69に伝達され、前記ルーパが主軸7と同期して動作するようになっている。
【0033】
タイミングベルト53には、図12に示すように、固定板63a、63aを介してY送りベース54、54がネジ止めされている。そして、ベッド部内の図示しないフレームに対して、タイミングベルト53に平行するように、ガイドシャフト55a、55bが固定されている。ガイドシャフト55aは、Y送りベース54、54の基部54a、54aを貫通し、ガイドシャフト55bはY送りベース54、54の先端部54b、54bを貫通し、これらガイドシャフト55a、55bによりY送りベース54、54が支持されている。
先端部54b、54bの上面には、ネジ穴54c、54cが形成されている。これらネジ穴54c、54cに、下板56に形成されているネジ穴(図示略)を合わせ、止めネジ56c、56cで止めることにより、図10に示すように、Y送りベース54に対して下板56が固定されている。よって、下Y送りモータ51が作動し、タイミングベルト53によりY送りベース54が移動することに伴って、下板56もY方向に移動するようになっている。
【0034】
下板56は、その上面に布地や下ボタンを載置するもので、本発明の下板56は複数種類のボタン付け縫製に対応できるように、3つのボタン付けポジションA、B、Cを有する。
ポジションAは、すくい縫製、根巻き縫製、あるいはその両方の縫製を行う箇所である。下板56には、略L字型の大きな開口56aが形成されている。一方、下板56の最前部には、左右に並んでいる2つのバネ挟持部60a、60aからなり、布地をタング57ごと挟持する布挟持部60が設けられている。各バネ挟持部60aは、上下に対向する細い板バネから構成されている。布挟持部60の後縁部には開口56aに臨むように針穴60bが設けられている。
【0035】
ここで、布地を布挟持部60にセットするためのタング57について説明する。前記Y送りベース54、54の下部にタング57を駆動するタングシリンダ66を支持するシリンダベース65が固定されている。タングシリンダ66の出力ロッド66aは、タングリンク67に接続されている。一方、タング57は円弧状に形成されたタング支持部59の先端にネジ止めされている。タング支持部59の基端部と、タングリンク67に対して、タング軸59aが挿通しており、タングリンク67とタング支持部59はタング軸59aとともに一体に回動可能となっている。
また、シリンダベース65の下部には下板上下動用シリンダ100(図11を参照)が配設されている。詳しい説明は後述するが、下板上下動用シリンダ100の可動部100aはシリンダベース65の下面に当接しており、可動部100aを上昇させることでシリンダベース65及びY送りベース54を介して下板56を上昇させることができる。なお、図10及び図12には、下板上下動用シリンダ100の図示を省略している。
【0036】
作業者は、タング57先端部をくるむように布地をセットし、その状態で下板56に近づけるように手動でタング57の手押し部57aを押して動かす。下板56の近傍には、図示しないタングセンサが設けられており、タング57が近づいてくるとタング検出信号をCPU102に出力する。これを受けてCPU102の制御の下でタングシリンダ66がON状態になり、出力ロッド66aが引き込み、これによりタング57が布挟持部60に前進し、終には、布地を折り曲げた状態のまま、左右のバネ挟持部60a、60aに挟まれるようになっている。このとき、タング57先端に形成された針穴57bは、上下方向から見ると前記針穴60bに対してほぼ一致するようになっている。このようにセットされた布地に対して、前記チャック部90にチャックされた上ボタンBは、図10の点線で示すように、針穴60bがそのほぼ中央に位置するように下板56上方にセットされる。このように布地と上ボタンBをセットすることで、図17に示すようなすくい縫い(ボタン縫製)が可能となる。
【0037】
ボタン縫製の後に、根巻き縫製を行う場合には、前述のように上ボタンBを回転シリンダ37により図10における時計方向に90度回転させる。このように回転させることで、上ボタンBは開口56a内に落ち込んだ垂直状態となり、上ボタンBと布との間の根糸Tが前後方向に向いて、根巻き縫製が可能となる。なお、詳しい説明は後述するが、上ボタンBが開口56a内に落ち込んだ状態では、開口56aの下方に配設されているルーパー等の各種装置の駆動時に上ボタンBが干渉してしまうことから、ボタン上下動機構40及び下板上下動用シリンダ100を駆動して、上ボタンBを上方に移動させた状態で根巻き縫製が行われる。
なお、タングシリンダ66は、縫製が終了すれば自動的にOFFになり、タング57は元の待機位置に戻る。
【0038】
開口56aの後方には、ポジションB、Cを構成する針板61がその基部において固定されている。針板61の前縁部には凹部61aが形成され、中央部には針穴61bが形成されている。下板56において、凹部61a及び針穴61bに対応する箇所には、針穴となる長穴56bが形成されている。
凹部61aがポジションBであり、凹部61aと下板56との間に下ボタンをセットし、その上に布地を載置し、さらにその上にチャック部90によって把持された上ボタンBをセットし、下ボタン付け縫いを行うことができる。
また、針穴61bがポジションCであり、この針穴61b上に布を載置し、その上方にチャック部90に把持された上ボタンBをセットし、下ボタンなしのべた付け縫いによりボタン付けを行うことができる。
なお、ポジションB、Cにおける縫いの場合、布地は図示しない布押えにより押えられるようになっており、該布押えは、布押えシリンダ107(図1を参照)により駆動されるようになっている。
このように、下板56は3種類のボタン付け縫いのポジションを有し、下Y送り機構50によりポジションA、B、Cのそれぞれが縫い針5の下方に位置するように下板56が駆動される。ポジションA、B、Cそれぞれに基準位置(原点)や初期位置が設定されている。
【0039】
次に、ミシン1の制御回路について図1に基づいて説明する。ミシン1には、本発明の制御手段であるCPU(Central Processing Unit)102を備える電装ボックス101が設けられ、この電装ボックス101に各部が接続されている。
例えば、電装ボックス101には、操作パネル103、操作ペダル104等が接続されている。
操作パネル103は作業者が根巻き縫いなしのすくい縫い、すくい根巻き縫い、下ボタン付け縫い、べた付け縫いなどからボタン付けの種類を選択したり、選択したボタン付け縫製の縫製条件などを入力したり、あるいは設定されている縫製条件や縫製状況などを表示するものである。
【0040】
CPU102には、メモリ102aとしてのROM及びRAMが設けられ、該メモリ102aに各種プログラムが記憶されている。特に、メモリ102aには、連続して異なる種類のボタン付けを行うサイクル縫いのプログラムが記憶され、該プログラムを呼び出すことで下板56を下Y送り機構50で駆動しながら、縫い針5の下方にポジションA、B、Cを移動させるようになっている。
【0041】
また、電装ボックス101には、主軸モータ14の回転角度を検出するエンコーダ14aが接続され、また、モータ駆動回路14b、20a、32a、35a、72aを介して主軸モータ14、針振りモータ20、上Y送りモータ32、上下駆動モータ35、差動モータ72、下Y送りモータ51が接続されている。また、電装ボックス101には電磁弁108が接続され、この電磁弁108を介して回転シリンダ37、タングシリンダ66、布押えシリンダ107が接続されている。さらに、ミシン1には、図示しない糸切り機構が設けられ、縫製途中や縫製後に所定のタイミングで糸が切断されるようになっており、その駆動源として糸切りモータや糸切りシリンダが設けられている。
【0042】
以上の構成を有するミシン1は、上ボタンBに関してはボタン差動機構70及び上Y送り機構30により、X方向及びY方向に移動させることができる。また、下ボタン及び布地に関しては下Y送り機構50によりY方向に移動させることができる。加えて、X方向に移動可能な針振り機構11を利用することで、下ボタン及び布地を上ボタンBに対して相対的にX方向に移動させることができる。さらに、上ボタンBについては、ボタン上下動機構40により上下動自在であり、回転シリンダ37により90度向きを変えることができる。
【0043】
次に、布地へのボタンの縫い付け作業について図13〜図16を用いて説明する。
図13(A)に示すように、まず、ステップS1において、ボタン縫製(ボタン付け縫製処理)が行われる。なお、ボタン縫製を行う際には、上述のように上ボタンBはチャックユニット71により水平状態に把持され、下Y送り機構50のポジションAに対応する位置にセットされている。
ボタン縫製は、まずミシンの各駆動部を原点に復帰させ、ボタン縫製処理に必要な各種データ(縫製データ)が入力される。縫製データとしては、例えば、後述する上ボタンBと針との相対移動の開始時期や、縫製スピード、根糸Tの長さ、上ボタンB穴の径、ボタン穴の芯間距離等である。
【0044】
そして、図13(B)に示すように、ステップS10において、主軸モータ14(ミシンモータ)を駆動させて針棒の駆動を開始する。
ステップS11では、エンコーダ14aから出力されるミシンモータ14の回転角度を検出することで針5の上下位置を検出し、上ボタンBと針5との相対移動の開始時期になるまで待機状態となる。ここで、上ボタンBと針5との相対移動の開始時期とは、針5に対する上ボタンBの相対的な移動を開始する時期を指し、本実施の形態においては、一旦ボタン穴に落下した針5がこのボタン穴から抜け出る時点に設定している。つまり、図14(A)に示すように、針5が最上死点に位置する時のミシンモータ14の回転角度(以下、単に「回転角度」という)を0度として、図14(B)に示すように水平状態にある上ボタンBのボタン穴に落下した針5が、上ボタンBの上面から抜け出ることになる回転角度−85度(275度)を開始時期に設定している。
【0045】
また、本実施の形態においては、上ボタンBと針5との相対移動の終了時期、つまり、針5に対する上ボタンBの相対的な移動を終了する時期を、針5がボタン穴内に落下する時点である回転角度85度に設定している。
つまり、針5がボタン穴内に位置することになる回転角度85度から275度の間は、上ボタンBの針5に対する相対的な移動を行わない。
そして、ステップS11でYES、即ち回転角度が−85度になるとステップS12に移行する。
【0046】
ステップS12〜ステップS14では、上ボタンBを針5に対して相対的に所定距離移動させ、また、必要に応じて針振り機構11を駆動して針5を揺動させる。ここで、図14(C)に示す略台形状のグラフは、針5がボタン穴の外部に位置することになる回転角度−85度から85度の間に実行される下板56の移動の速度制御に用いられるグラフである。
グラフの縦軸は下板56の速度、横軸は時間を示しており、回転角度が−85度となった時点から下板56は所定方向への移動を開始する。ステップS13では下板56の速度を検出しており、ステップS14では、下板56の速度をグラフに従って制御し、その後、回転角度が85度となった時点で下板56を停止させる。
ステップS15では針数を測定しており、所定針数実行された時点でステップS16に移行して針5の上下動を終了させる。
これで一連のボタン縫製工程が終了し、ステップS2に移行する。
【0047】
ステップS2では、ボタン回転機構46によりチャックユニット71を90度回転させて、上ボタンBを垂直状態にする。
ここで、上述のようにチャックユニット71はボタン回転機構46の回転体45に固定されており、回転体45は主リンク39の他端部に接続している。そして、チャックユニット71はこの回転体45と主リンク39との接続部分を回転中心として90度回転する。従って、チャックユニット71に把持されている上ボタンBは水平状態から90度回転することで、下板56の開口56aの下方に落ち込んだ状態となる。ここで、開口56aの下方には、例えば、図示しないルーパー等の各種装置が配設されているため、上ボタンBを90度回転させたままの状態では、これら各種装置の駆動時に上ボタンBが干渉してしまうことから、ステップS3において、ボタン上下動機構40及び下板上下動用シリンダ100を駆動させて、上ボタンBを上方に移動させる。
【0048】
そして、ステップS4において根巻き縫製が実行される。図13(C)に示すように、まず、ステップS40においてミシンモータ14を駆動させて針5の上下動を開始する。
そして、ステップS41で回転角度を検出しながら上ボタンBと針5との相対移動の開始時期になるまで待機状態となる。
図15(A)及び(B)に示すように、根巻き縫製工程における開始時期は、針5が上ボタンBの中心点から水平方向に伸びる根糸Tから上方に抜け出る時点である回転角度−70度に設定されており、終了時期は、上死点から下降する針5が根糸Tに至る時点である回転角度70度に設定されている。そして、針5が根糸Tより下方に位置する回転角度70度から290度(−70度)の範囲では、針5に対する上ボタンBの相対的な移動を行わず、針5が根糸Tより上方に位置することになる回転角度−70度から70度の間で上ボタンBを針5に対して相対的に移動させる。なお、図15(B)に点線で示す図形はボタン縫製工程において水平状態にあった上ボタンBの位置を示している。
【0049】
そして、ステップS41でYES、即ち回転角度が−70度になるとステップS42に移行する。
ステップS42〜ステップS44では、上ボタンBを針5に対して相対的に所定距離移動させ、また、必要に応じて針振り機構11を駆動して針5を揺動させる。ここで、図15(C)に示す略台形状のグラフは、回転角度−70度から70度の間に実行される下板56の移動の速度制御に用いられるグラフである。
グラフの縦軸は下板の速度、横軸は時間を示しており、回転角度が−70度となった時点から下板56は所定方向への移動を開始する。ステップS43では下板56の移動速度を検出しており、ステップS44では下板56の速度をグラフに従って制御し、その後、回転角度が70度となった時点で下板56を停止させる。
ステップS45では針数を測定しており、所定針数実行された時点でステップS46に移行して針5の上下動を終了させる。
これで一連の根巻き縫製工程が終了し、布地への上ボタンBの縫い付け作業が終了する。
【0050】
なお、根巻き縫製工程の開始時期を、針先が上ボタンBの根糸Tから抜け出る前、即ち、針先が根糸Tより下方に位置する時点に設定しても良く、例えば、図16(A)及び(B)は、開始時期を回転角度200度(−160度)に設定した場合を示している。なお、終了時期は上死点から下降する針が根糸Tに至る時点である回転角度70度に設定されている。
このように、根巻き縫製工程における開始時期を針先が上ボタンBの根糸Tから抜け出る前の200度に設定することで、図16(C)に示す下板56の移動の速度制御に用いられるグラフからも分かるように、開始時期を290度(−70度)に設定した場合と比較して、下板56の移動時期をミシンモータ14が200度から290度まで回転するのに要する時間の分だけ早くすることができ、根巻き縫製工程の作業性を向上させることが可能となる。
なお、この場合、針先が根糸Tから抜け出る前に下板56(布地)が移動することになるが、上ボタンBと布地とに掛け渡される根糸Tはある程度の弾力性及び可撓性を有しており、針の移動による衝撃を吸収するため、根糸Tや針5が損傷することは無い。
【0051】
本実施の形態に示したミシン1によれば、上ボタンBと針5との相対移動の開始時期及び終了時期をボタン縫製工程と根巻き縫製工程とで適宜変更するので、ボタン縫製工程及び根巻き縫製工程に関して、布地や上ボタンBの形状、種類等に応じた縫製作業を行うことが可能となり、縫製作業の作業性や精度を向上させることができる。
また、ボタン縫製工程では、針先がボタン穴から抜け出る時点を開始時期とするので、例えば、針5がボタン穴から完全に抜け出る前に上ボタンBの移動が開始されることで発生する針5及び上ボタンBの損傷等の不具合を防止できる。
【0052】
また、根巻き縫製工程では、針先が根糸Tから抜け出る前の時点を開始時期とするので、開始時期を針先が根糸Tから抜け出る時点に設定する場合と比較して、上ボタンBの移動タイミングを早くすることができ、根巻き縫製工程の作業性を向上させることが可能となる。具体的には、下板56を所定位置まで速やかに移動させることができるので、針5の上下動スピードを早くして根巻き縫製作業の作業スピードを向上させることが可能となる。また、針5の上下動スピードを変更しない場合は、下板56を所定位置まで移動させる際の移動スピードを抑えることができ、下板56の位置決め精度の向上や、移動時に発生する騒音を抑えることが出来る。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、具体的な形状・構造等について適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上ボタンBと針5との相対移動の開始時期及び終了時期は適宜変更可能である。すなわち、ボタン縫製工程においては、針先が上ボタンBのボタン穴から抜け出る時点より後で開始し、針先がボタン穴に入る時点より前で終了すればよく、根巻き縫製工程においては、針先が根糸から抜け出る時点より前で開始し、針先が根糸に入る時点より前で終了すればよい。
また、本発明では、針5と上ボタンBとの相対位置の変更が、針振りモータ20による針5のX方向への揺動、上Y送りモータ32による上ボタンBのY方向への移動、差動モータ72による上ボタンBのX方向への移動及び下Y送りモータ51による縫製物のY方向への移動によって行われていたが、針5を定位置固定とし、上ボタンBのみをX−Y方向に移動して上ボタンBを針5に対して相対移動するようにしてもよく、すなわち、針5と上ボタンBの相対位置関係が変更できればよい。
【0054】
また、本発明では、針5の上下位置を、ミシンモータ14の回転角度をエンコーダ14aで検出することにより検出するようにしているが、主軸7にエンコーダを取り付け、主軸7の回転角度を検出することにより検出してもよい。
また、上ボタンBと針5との相対移動の終了時期のみを前記ボタン縫製工程と根巻き縫製工程とで変更するものとしても良い。
また、ミシン1としては、ボタン回転機構46のような上ボタンBを90度回転させる機構を備えた周知の根巻きボタン付けミシンであれば良い。
また、本実施の形態で示したミシン1が備える上Y送り機構30、ボタン差動機構70、及び下Y送り機構50などの具体的な構造は上記実施例に限定されない。例えば、下Y送り機構50はベルト駆動を用いていたが、ラックとピニオンのようなギア機構で構成してもよい。逆に上Y送り機構30やボタン差動機構70をベルト駆動で構成してもよいし、上記実施例とは異なるギア構造でもよい。
【0057】
【発明の効果】
請求項1記載のサイクル縫いミシンによれば、ボタン縫製工程では、針先がボタン穴から抜け出る時点より後を開始時期とするので、例えば、針がボタン穴から完全に抜け出る前にボタンの移動が開始されることで発生する針及びボタンの損傷等の不具合を未然に防止できる。また、根巻き縫製工程では、針先が根糸から抜け出る時点より前を開始時期とするので、開始時期を針先が根糸から抜け出る時点より後に設定する場合と比較して、ボタンの移動タイミングを早くすることができ、根巻き縫製工程の作業性を向上させることが可能となる。具体的には、ボタンや縫製物を所定位置まで速やかに移動させることができるので、針の上下動スピードを早くして根巻き縫製作業の作業スピードを向上させることが可能となる。また、針の上下動スピードを変更しない場合は、ボタンや縫製物を所定位置まで移動させる際の移動スピードを抑えることができ、位置決め精度の向上や、移動時に発生する騒音を抑えることができる。
【0058】
請求項2記載のサイクル縫いミシンによれば、ボタンと針との相対移動の終了時期をボタン縫製工程と根巻き縫製工程とで適宜変更するので、ボタン縫製工程及び根巻き縫製工程に関して、布地やボタンの形状、種類等に応じた縫製作業を行うことが可能となり、また、縫製作業の作業性や精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサイクル縫いミシンの構成を示すブロック図でである。
【図2】針上下動機構と針振り機構とを示す斜視図である。
【図3】図2の針上下動機構と針振り機構それぞれの駆動モータを示す斜視図である。
【図4】図2の針上下動機構と針振り機構の要部を示す斜視図である。
【図5】上Y送り機構とチャックユニットとを主に示す斜視図である。
【図6】上Y送り機構とチャックユニットとを主に示す斜視図である。
【図7】チャックユニットを示す斜視図である。
【図8】チャックユニットの底面側を示す斜視図である。
【図9】チャックユニットをモータユニットが外れた状態で示す斜視図である。
【図10】下板と下Y送り機構を示す斜視図である。
【図11】下Y送り機構を下板を外した状態で示す斜視図である。
【図12】下Y送り機構の底面側を示す斜視図である。
【図13】布地へのボタンの縫い付け作業を示すフローチャート(A)〜(C)である。
【図14】ボタン縫製工程における制御方法を示す図面(A)〜(C)である。
【図15】根巻き縫製工程における制御方法を示す図面(A)〜(C)である。
【図16】根巻き縫製工程における制御方法を示す図面(A)〜(C)である。
【図17】すくい縫いを示す図面である。
【図18】一般的な根巻きボタン付けミシンの要部斜視図である。
【図19】一般的な根巻きボタン付けミシンによるボタン縫いの方法を示す図であり、ボタン縫製時(根糸縫い付け時)の状態を示す平面図(a)、(a)の側面図(b)、根巻き縫製時の状態を示す平面図(c)である。
【図20】一般的な根巻きボタン付けミシンによるボタンの縫い付け状態を示す図であり、ボタン縫製時の状態を示す側面図(a)及び根巻き縫製時の状態を示す側面図(b)である。
【符号の説明】
B ボタン
T 根糸
1 ミシン(サイクル縫いミシン)
5 針
14 ミシンモータ(主軸モータ)

Claims (2)

  1. 縫い針と当該縫い針に対向するように設けられたルーパとを備え、
    ボタンを水平状態にして縫製物に縫い付けるボタン縫製工程と、ボタンを垂直状態にすると共に前記ルーパとの干渉を防止するように当該ボタンを上方に移動してボタンと縫製物間に形成された根糸を根巻きする根巻き縫製工程とを行うサイクル縫いミシンであって、
    針の上下位置に基づいて判断されるボタンと針との相対移動の開始時期を、前記ボタン縫製工程では針先がボタン穴から抜け出る時点より後とし、前記根巻き縫製工程では針先が前記根糸から抜け出る時点より前とすることを特徴とするサイクル縫いミシン。
  2. 針の上下位置に基づいて判断されるボタンと針との相対移動の終了時期を、前記ボタン縫製工程と根巻き縫製工程とで変更することを特徴とする請求項1記載のサイクル縫いミシン。
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