JP3866317B2 - 金属キレート形成性ペプチド、その用途及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属キレート形成性ペプチド、その用途及びその製造方法に関する。更に詳細には、本発明は放射性診断剤又は放射性治療剤として有用な放射性金属核種で標識された生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質を得るための安定なキレート形成性ペプチドを提供するものである。この金属キレート形成性ペプチドは、病巣部位親和性ペプチドなどの生理活性物質に結合させて複合体として利用する。
【0002】
【従来の技術】
現在、放射性金属核種とキレート形成能を持つアミノ酸配列としては、Lys−Cys−Thr−Cys−Cys−Ala(Linda C. Night, J. Nucl. Med.,35 (2), 282-288, Feb. 1994)、及びCys(Acm)−Gly−Cys(Acm)(DEAN, Rechard, T,. WO92/13572 )などが知られている。
【0003】
Lys−Cys−Thr−Cys−Cys−Alaは、分子内にメルカプト基を有するCys残基を多く含むため、分子内あるいは分子間でジスルフィド結合を形成しやすく、取扱いに注意が必要であった。
又、Cys(Acm)−Gly−Cys(Acm)は、メルカプト基を有するCys残基が分子内あるいは分子間でのジスルフィド結合を形成しないよう、メルカプト基をアセトアミドメチル(Acm)基で保護する等の改善が施されているが、該保護基により、Cys残基の反応性は抑えられ、Tc−99m等の放射性金属核種等で標識する際、加熱等の処理を必要としていた。更に、放射性金属核種標識物の腎臓への非特異的な集積傾向が認められる等の問題点を有していた。
【0004】
更に、最近においては、放射性金属核種とキレート形成能を持つアミノ酸配列として、Gly−Gly−Cys(S. J. Mather et al., Eur. J. Nucl. Med. (1994) 21, Suppl. S46 )、及びCys−Gly−His、Asp−Gly−Cys、Glu−Gly−Cys、Gly−Asp−Cys、Gly−Glu−Cysなど(Dunn. T., Jeffrey, WO 94/26295)が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の状況に鑑み、加熱等の処理を行わないで容易に生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質を放射性金属核種で標識でき、該標識物がインビトロ及びインビボで安定で、それを哺乳動物に投与した時の、その体内分布に非特異的な集積を認めない標識物を得るための金属キレート形成性ペプチド、その用途及びその製造方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、放射性金属核種等の金属を配位する際に有すべきアミノ酸配列の性質について鋭意検討を行った結果、Cys残基を含む特定のアミノ酸配列が、加熱等の特別な処理を行うことなく、容易に金属を配位し、かつ安定な放射性金属核種標識物を形成することを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、アミノ酸配列がN末端側から順にX1−X2−Cysのアミノ酸3残基からなり、X1はCys残基を除く任意のアミノ酸残基、X2はCys残基及びPro残基を除く任意のアミノ酸残基であって、該金属キレート形成性ペプチドのN末端、C末端及び側鎖の官能基は、保護基等で置換されていてもよく、各アミノ酸残基は、D体又はL体のいずれでもよい金属キレート形成性ペプチドを提供することにある。
【0007】
更に、前記金属キレート形成性ペプチドに生理活性のあるペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質が結合した複合体、該金属キレート形成性ペプチド又は上記複合体に放射性金属核種が配位した放射性金属核種標識物を提供することにある。
【0008】
更に、上記金属キレート形成性ペプチド又は上記複合体にTc−99m、In−111又はGa−67のいずれかの放射性金属核種が配位した放射性金属核種標識物を活性成分として含有する放射性診断剤、該金属キレート形成性ペプチド又は上記複合体にY−90、Re−186又はRe−188のいずれかの放射性金属核種が配位した放射性金属核種標識物を活性成分として含有する放射性治療剤を提供することにある。
【0009】
又、Cys残基又はその保護誘導体に、X2のアミノ酸残基又はその保護誘導体、次いでX1のアミノ酸残基又はその保護誘導体を結合することからなる本発明の金属キレート形成性ペプチドの製造方法、該金属キレート形成性ペプチドに生理活性のあるペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質を結合することからなる複合体の製造方法、該金属キレート形成性ペプチド又は該複合体に放射性金属核種を配位させることからなる放射性金属核種標識物の製造方法、Tc−99m、In−111又はGa−67のいずれかが配位した上記放射性金属核種標識物と、薬学的に許容しうる担体とを混合することからなる放射性診断剤の製造方法、あるいはY−90、Re−186又はRe−188のいずれかが配位した上記放射性金属核種標識物と、薬学的に許容しうる担体とを混合することからなる放射性治療剤の製造方法も提供するものである。
【0010】
尚、本明細書で用いるアミノ酸は全て一文字記号もしくは三文字記号で記し、アミノ酸は、左側をN末端側、右側をC末端側として表記し、アミノ酸に続くかっこ内は、特に断りのないかぎり側鎖の保護基を表すものである。又、本明細書において、D体のアミノ酸残基はD-アミノ酸残基と記載した。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の金属キレート形成性ペプチドは、アミノ酸配列X1−X2−Cysのアミノ酸3残基からなり、ここでX1はCys残基を除く任意のアミノ酸残基、X2はCys残基及びPro残基を除く任意のアミノ酸残基である。但し、X1はCys残基を除く任意のアミノ酸残基、X2はCys残基及びPro残基を除く任意のアミノ酸残基である。又、該金属キレート形成性ペプチドのN末端、C末端及び側鎖の官能基は、保護基等で置換されていてもよく、各アミノ酸残基はD体又はL体のいずれでもよい。
【0012】
Cys残基は、メルカプト基が分子内又は分子間でジスルフィド結合を形成するために不安定でキレート形成部位のX1又はX2のアミノ酸残基としては不適である。X2がPro残基の場合は、キレート形成能が阻害されるために、放射性金属核種でラベル化した場合の標識率が低下し好ましくない。以上の理由から、当該金属キレート形成性ペプチドのX1及びX2のアミノ酸残基としては、前記以外のL体及びD体アミノ酸残基、疏水性アミノ酸残基、極性アミノ酸残基及び荷電性アミノ酸残基(酸性、塩基性)のいずれも適用が可能である。又、該金属キレート形成性ペプチドのN末端、C末端及び側鎖の官能基は保護基等で置換されていてもよく、このような保護基としては、アミノ基、カルボキシル基、エステル基等をあげることができる。
【0013】
該金属キレート形成性ペプチド中のX1−X2のアミノ酸配列において、
X1は、Asp残基、Lys残基又はTyr残基が好ましく、かつAsp残基とGly残基、Gly残基とGly残基及びGlu残基とGly残基とは隣接しないことが好ましい。
なぜなら、カルボン酸を側鎖に含有するペプチド、例えば、Glu−Gly−Cysは、腎臓をはじめとする臓器で、速やかに分解されることが知られており、生体内において不安定であるためである。
又、Gly−Glyは、空間的自由度が大きいため、ペプチド鎖中になると、そのペプチドの折りたたまれた構造を取りやすく、その結果、金属キレートの形成能が損なわれると考えられるからである。
【0014】
該金属キレート形成性ペプチド中のX1は、α位に遊離アミノ基を有するアミノ酸残基が好ましい。X1をα位に遊離アミノ基を有するアミノ酸残基にすることにより、本発明の金属キレート形成性ペプチド及び該ペプチドを生理活性ペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質に結合して得られる複合体の金属キレート性をより高めることができる。特にX1は、α位に遊離第1級アミノ基(−NH2 )を有するアミノ酸残基とするのが好ましい態様である。
【0015】
本発明の金属キレート形成性ペプチドのX1−X2−Cysの好ましい態様として、X1とX2がそれぞれ、Asp残基とTyr残基、Asp残基とLys残基、Tyr残基とGly残基、Tyr残基とTyr残基、Tyr残基とLys残基、Lys残基とGly残基、Lys残基とTyr残基、又はLys残基とLys残基の組合せをあげることができる。
【0016】
X1あるいはX2のアミノ酸残基として、必要に応じてAla、Ile、Leu、Met、Phe、Val等の疎水性アミノ酸残基、Asn、Gln、His、Ser、Thr、Trp、Tyr等の極性アミノ酸残基、Arg、Asp、Glu、Lys等の荷電性アミノ酸残基(酸性、塩基性)を選択することにより、本発明の金属キレート形成性ペプチドを生理活性ペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質に結合して形成される複合体に放射性金属核種を配位して得られる標識物をヒトへ投与した場合に該放射性金属核種標識物の生体内投与後の、その代謝物の主要な排泄経路を腎臓あるいは消化管のいずれかに制御することができる。
【0017】
特に、X1のアミノ酸残基としてAsp残基又はLys残基を選択した場合には、最終的に得られる放射性金属核種標識物の投与後の代謝物の主要な排泄経路を腎臓に制御することができる。又、X1のアミノ酸残基としてTyr残基を選択した場合には、代謝物の主要な排泄経路を消化管に制御することができる。
このことは、目的とする診断部位に応じて、不要代謝物の排泄を速やかに行い、患者への無用な被曝を軽減するとともに、バックグランドの影響を少なくして、診断部位のイメージングを速やかに行うのに有用である。
本発明のアミノ酸3残基よりなる金属キレート形成性ペプチドは、それ自身に生理活性を持たせていないため、複合体を形成させた場合にも生理活性物質の活性を損なわずに放射性診断剤又は放射性治療剤に適した性質を有するものである。
【0018】
本発明の、金属キレート形成性ペプチドは、生理活性のあるペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質と結合させて複合体を形成する。これら生理活性物質と結合させて複合体を形成せしめるに際し、それら生理活性物質のC末端側、N末端側に金属キレート形成性ペプチドを結合させることができ、生理活性物質のアミノ酸配列の中間部等任意の部位に挿入させることができる。
金属キレート形成性ペプチドを生理活性のあるペプチド、タンパク質又はその他の化合物に結合させるに際しては、1ないし数個のアミノ酸残基からなるスペーサーあるいは官能基又は架橋剤等を介し、通常の方法により結合させてもよい。
【0019】
生理活性のあるペプチド又はタンパク質等としては、インターフェロン、腫瘍壊死因子等のサイトカイン、各種ペプチド性ホルモン及び抗体、補体、接着分子及び酵素等をあげることができる。生理活性のあるペプチドには、抗体、接着分子等の活性中心配列ペプチドをも包含する。その他の化合物としては、ドーパミン、アセチルコリン、セロトニン等の神経伝達物質、ストレプトマイシン、セファロスポリン等の抗生物質、プロスタグランジン等をあげることができる。
【0020】
生理活性のあるペプチドとしては、腫瘍部位親和性ペプチド、炎症/感染症部位親和性ペプチド、血栓部位親和性ペプチド又は脳疾患部位親和性ペプチドなどの病巣部位親和性ペプチドも好ましいものとしてあげることができる。これらの病巣部位親和性ペプチドは公知のものをそのまま使用することができる。
例えば、腫瘍部位親和性ペプチドとしては、AREPPTRTFAYWGQGのアミノ酸配列からなるペプチドをあげることができる。当該ペプチドにおいて、特にEPPTのアミノ酸配列が腫瘍部位親和性に寄与しており、このアミノ酸配列を保持したままで他のアミノ酸配列を置換、欠失、付加したものも好ましい態様としてあげることができる。
炎症/感染症部位親和性ペプチドとしては、例えば、KTKPREQQYNSTYRVVのアミノ配列からなるペプチドをあげることができる。かかるペプチドは、特にTKPRが炎症/感染症部位親和性に寄与しており、その炎症/感染症部位親和性が損なわれない程度に他のアミノ酸配列で置換、欠失、付加したものも好ましい態様としてあげることができる。
【0021】
本発明の金属キレート形成性ペプチドX1−X2−Cysは、上記の生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物と結合した複合体として合成した後、放射性金属核種等を配位させることにより、診断剤あるいは治療剤として有効に利用される。複合体が金属キレート形成性ペプチドと生理活性を有するペプチドとが結合した複合体の場合は、アプライドバイオシステムズ社製ペプチド自動合成機等の汎用的に使用されているペプチド自動合成装置によりBoc法、あるいはFmoc法等により、一気にしかも容易に合成することができる。合成された複合体は、固相用樹脂担体に結合した状態から脱保護基と樹脂担体切り放しを同時に行い、その後、逆相系カラム等を用いた高速液体クロマトグラフ法(以下、HPLC法という)にて精製することができる。その他、ペプチド液相合成法により調製してもよく、又、動物等から採取してもよい。
【0022】
本発明のアミノ酸3残基からなる金属キレート形成性ペプチド自体も、上記した同様の方法によって合成できる。例えば、固相用樹脂担体にCys残基又はその保護誘導体を結合させ、それにX2のアミノ酸残基又はその保護誘導体、次いで、X1のアミノ酸残基又はその保護誘導体を順次結合させ、その後に樹脂担体から合成されたX1−X2−Cysのペプチドを切り放すことによって容易に合成できる。
【0023】
本発明の金属キレート形成性ペプチドと生理活性を有するタンパク質又はその他の化合物とを結合させて複合体を製造するには、金属キレート形成性ペプチドのN末端又はC末端のアミノ酸残基と、生理活性を有するタンパク質の末端アミノ酸残基、あるいはその他の化合物中の官能基とを通常の方法により結合させることによって製造することが可能である。両者を結合させるには、1ないし数個のアミノ酸残基からなるスペーサーあるいは官能基又は架橋剤等を介し、通常の方法により結合させてもよい。前記したように複合体の構成成分の一つである本発明の金属キレート形成性ペプチドを好ましくは複合体のN末端側に配置させ、かつ該金属キレート形成性ペプチドのN末端アミノ酸残基のα位のアミノ基を遊離のまま合成することによって、高いキレート形成能を有する複合体を得ることができる。
特に、該金属キレート形成性ペプチドのN末端アミノ酸残基としてα位に第1級アミノ基を有するアミノ酸残基を選択し、その第1級アミノ基を遊離のまま合成することによって、特に高いキレート形成能を有し、かつ安定な複合体を得ることが可能である。
【0024】
本発明の金属キレート形成性ペプチド、又は該金属キレート形成性ペプチドに生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物等が結合した複合体に放射性金属核種が配位した放射性金属核種標識物、特に複合体に放射性金属核種が配位した放射性金属核種標識物は、放射性診断剤や放射性治療剤として、好適に用いられる。該金属キレート形成性ペプチド又は生理活性物質が結合した該複合体は、生理食塩水又は水性緩衝液等に溶解し、放射性金属核種と反応させることで目的とする放射性金属核種標識物をインビトロで安定に調製できる。
【0025】
放射性診断剤として用いる場合には、該金属キレート形成性ペプチド又は該複合体、特に複合体にTc−99m、In−111又はGa−67などの放射性金属核種を配位させた放射性金属核種標識物が好ましい態様である。
放射性治療剤として用いる場合には、該金属キレート形成性ペプチド又は該複合体、特に複合体にY−90、Re−186又はRe−188などの放射性金属核種を配位させた放射性金属核種標識物が好まし態様である。
【0026】
Tc−99m、Re−186及びRe−188で標識する場合は、金属キレート形成性ペプチド又は該ペプチドに生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質が結合した複合体を生理食塩水及び水性緩衝液等に溶解し、適当な還元電位を有する塩化第一スズのごとき還元剤を加え、過テクネチウム酸ナトリウム溶液、又は過レニウム酸ナトリウム溶液と混合する常套の方法により標識ペプチド及び標識複合体を調製することができる。
In−111で標識された標識物の場合は、該ペプチド又は該複合体とIn−111イオンを含む弱酸性水溶性溶液とを混合することで調製できる。
Ga−67又はY−90で標識された標識物は、該ペプチド又は該複合体とGa−67イオン又はY−90イオンを含む弱酸性ないし弱アルカリ性の水溶性溶液とを混合することで調製が可能である。
【0027】
放射性金属核種標識物を放射性診断剤又は放射性治療剤として供する場合は、上述した方法によって調製される標識物を更にHPLC法による精製に付して不純物及び未反応の過テクネチウム酸イオン、過レニウム酸イオン、In−111イオン、Ga−67イオン及びY−90イオンを取り除いた後に使用してもよい。
【0028】
放射性金属核種標識物は、薬学的に許容される担体と混合することにより、放射性診断剤又は放射性治療剤に調製することができる。かかる担体としては、薬学的に許容されるアスコルビン酸、p−アミノ安息香酸等の安定化剤、水性緩衝液等のpH調整剤、D−マンニトール等の賦形剤、及び放射化学的純度を改良するのに役立つクエン酸、酒石酸、マロン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム等があげられる。又、これらの担体と共に用時調製用キットの形態でも本発明の放射性診断剤又は放射性治療剤は提供が可能である。
【0029】
本発明の望ましくは金属キレート形成性ペプチドに生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物等を結合させた複合体を放射性金属核種で標識した標識物を含有してなる放射性診断剤及び放射性治療剤は、静脈内投与等の一般的に用いられる非経口手段により投与でき、その投与量は患者の体重、年令、適当な放射線イメージング装置及び対象疾患状態等の諸条件を考慮し、イメージング及び治療が可能と考えられる放射能が決定される。
【0030】
ヒトを対象とする場合、Tc−99mで標識した標識物を用いた診断剤の投与量は、Tc−99mの放射活性として37MBq〜1110MBqの範囲であり、好ましくは185MBq〜1110MBqである。Re−186又はRe−188で標識した標識物を用いた治療剤の場合は、放射活性として37MBq〜18500MBqの範囲であり、好ましくは370MB〜7400MBqである。Y−90で標識した標識物を用いた治療剤の場合は、放射活性として37MBq〜3700MBqの範囲であり、好ましくは37MBq〜1110MBqの範囲である。
【0031】
以下に本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例1から8の実験は、キレート形成性ペプチド(KYC)のC末端に腫瘍部位親和性のあるEPPTを含むペプチド(WO 92/ 18534)が結合した複合体KYCAREPPTRTFAYWGQGを基本配列として用いた。この内、N末端側アミノ酸2残基を種々のアミノ酸残基に置換させた複合体につき、そのTc−99m標識率を求め、該キレート形成性ペプチドの金属キレート能の指標とした。
【0032】
【実施例】
(実施例1)
KYC、D-KYC、DYC又はYYCを含むペプチドの合成
アプライドバイオシステムズ社製ペプチド合成機(モデル431A)を使用し、プレロードレジンを用い、Fmoc法にてKYC、D-KYC、DYC又はYYCをN末端側に含むペプチドの合成を行った。合成されたペプチドのプレロードレジンからの切り出し及び脱保護は、トリフルオロ酢酸(以下、TFAという)9.5ml、エタンジチオール(以下、EDTという)0.5ml、チオアニソール1.0ml、フェノール0.75g、精製水1.0mlの混合液を氷冷し、合成原末0.1〜0.2gに対し、混合液10mlを加え、1.5時間室温で反応させて行った。精製は、カラム:YMC−Pack R&S−ODS−5−ST(20×150mm)、溶出速度:8ml/min、検出波長:230nm、溶出液A:0.1%TFA/精製水、溶出液B:0.1%TFA/アセトニトリル、濃度勾配:0分(10%B)→15分(10%B)→75分(50%B)の条件下、HPLC精製を行った。
【0033】
得られた主ピークを凍結乾燥し、HPLC法により精製純度95%前後のピーク画分に対しアミノ酸組成分析を行い、アミノ酸組成を求めた。精製純度は、カラム:YMC−Pack ODS−A(4.6×150mm)、溶出速度:1ml/min、検出波長:215nm、溶出液:0.1%TFA/精製水、溶出液B:0.1%TFA/アセトニトリル、濃度勾配:0分(5%B)→30分(40%B)の条件下、HPLC分析を行った。アミノ酸組成分析は、ウォーターズ社製PICO/TAG−TMワークステーションを用いて行った。Trp残基は、塩酸分解を行う際にアミノ酸が分解し、又、Cys残基は、メルカプト基が反応してジスルフィド結合を形成してしまうため正確な測定が不可能であった。以下に得られたペプチドのアミノ酸組成の分析値(分子当たりの個数)を示す。丸かっこ内は、目的ペプチドのアミノ酸組成の理論値(分子当たりの個数)を示す。
【0034】
KYCAREPPTRTFAYWGQG=Glx:2.0(2)、Gly:2.4(2)、Arg:2.0(2)、Thr:2.3(2)、Ala:1.9(2)、Pro:2.2(2)、Tyr:2.1(2)、Phe:0.9(1)、Lys:0.9(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0035】
D-KYCAREPPTRTFAYWG-D- QG=Glx:2.0(2)、Gly:2.2(2)、Arg:1.9(2)、Thr:2.0(2)、Ala:2.1(2)、Pro:2.1(2)、Tyr:1.8(2)、Phe:1.1(1)、Lys:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0036】
DYCAREPPTRTFAYWGQG=Asp:1.0(1)、Glx:2.0(2)、Gly:2.1(2)、Arg:2.0(2)、Thr:1.9(2)、Ala:2.0(2)、Pro:2.0(2)、Tyr:2.1(2)、Phe:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0037】
YYCAREPPTRTFAYWGQG=Glx:2.0(2)、Gly:2.1(2)、Arg:2.0(2)、Thr:1.9(2)、Ala:2.0(2)、Pro:2.1(2)、Tyr:2.9(3)、Phe:1.1(1)、Lys:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0038】
(実施例2)
KYC、D-KYC、DYC又はYYCを含むペプチドのTc−99m標識
グルコヘプタネート40.3μmol/300μlと塩化第一スズ溶液130nmol/50μlの混合液を含有する凍結乾燥バイアル中に過テクネチウム酸ナトリウム(Tc−99m)溶液1.1〜1.5GBqを加え、全量を1.0mlとした。時折転倒撹拌しながら室温で30分間反応させ、その一部を取り、セルロースアセテート膜電気泳動法にてグルコヘプタネートのTc−99m標識率が95%以上であることを確認した。次に、種々の濃度に調節した実施例1で得た4種のペプチドを0.25〜12.5nmol/200μlの濃度に調整し、Tc−99m標識グルコヘプタネート溶液200μlを各々加え、混合攪拌し、室温で60分間反応させ、その一部を取り、次の条件のHPLC法により各Tc−99m標識率を求めた。カラム:Millipore puresil 5μmC18(4.6×150mm)、溶出速度:1ml/min、検出波長:220nm、放射能検出器:NaIシングルチャンネルアナライザー、溶出液A:0.1%TFA/精製水、溶出液B:0.1%TFA/アセトニトリル、濃度勾配:0分(10%B)→5分(10%B)→35分(50%B)→45分(75%B)。表1に本調製法により、調製した4種のTc−99m標識ペプチドの標識率を記す。表1に示した標識率の結果から25μg/mlの薄い濃度で、かつ室温にて90%以上の高いTc−99m標識が可能であることが示された。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例3)
Ac−KYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 及びKYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 の金属キレート能の評価
N末端側のアミノ酸残基リジン(K)のα位のアミノ基をアセチル化(Ac)し、且つC末端カルボキシル基をアミド化(NH2 )したAc−KYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 及びC末端のみアミド化したKYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 の2種のペプチドを用いた。本発明の金属キレート形成性ペプチドX1−X2−Cys配列が、生理活性を有するペプチドと結合して複合体を形成して、その複合体のN末端側に配置し、そのN末端のアミノ酸残基のα−アミノ基が遊離のままの場合と、アセチル化した場合の放射性金属核種との金属キレート能につき検討した。
【0041】
合成及び精製には、実施例1記載の方法におけるプレロード化レジンにかえ、アミド化レジン(Millipore社製PAL樹脂)を用い、実施例2記載の方法に従い、Tc−99m標識を行った。以下に、得られたペプチドのアミノ酸組成の分析値(分子当たりの個数)を示す。丸かっこ内は、目的ペプチドのアミノ酸組成の理論値(分子当たりの個数)を示す。
【0042】
Ac−KYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 =Glx:2.1(2)、Gly:2.5(2)、Arg:2.0(2)、Thr:1.5(2)、Ala:1.8(2)、Pro:2.1(2)、Tyr:1.9(2)、Phe:1.2(1)、Lys:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0043】
KYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 =Glx:2.1(2)、Gly:2.2(2)、Arg:2.1(2)、Thr:1.6(2)、Ala:1.9(2)、Pro:2.1(2)、Tyr:1.7(2)、Phe:1.3(1)、Lys:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0044】
得られた標識物のHPLC分析の結果を図1及び図2に示す。アセチル化を施していない遊離α−アミノ基を持つアミノ酸残基をN末端に有するペプチドは、単一放射能ピークを示した(リテンションタイム:17.08分,図2)。これに対し、アセチル化を施したα−アミノ基を持つアミノ酸残基をN末端に有するペプチドは、2本の放射能ピークを示した(リテンションタイム:17.19分及び18.01分,図1)。両ペプチドともTc−99mの放射性金属核種との金属キレート形成能を有するが、N末端側にアセチル化を施したα−アミノ基を持つアミノ酸残基を有するペプチドは、2本の放射能ピークに割れることから標識構造の安定性や標識純度等が劣ることが考えられた。従って、単一放射能ピークを示したペプチド、つまりN末端側アミノ酸残基のα位のアミノ基が遊離第1級アミノ基であるペプチドが望ましいことが示唆された。
【0045】
(実施例4)
KGC、KPC、D-KPC又はYKCを含むペプチドの合成
実施例1記載の方法に従い、KGC、KPC、D-KPC及びYKCを含むペプチドの合成及び精製を行った。以下に得られたペプチドのアミノ酸組成の分析値(分子当たりの個数)を示す。丸かっこ内は、目的ペプチドのアミノ酸組成の理論値(分子当たりの個数)を示す。
【0046】
KGCAREPPTRTFAYWGQG=Glx:2.0(2)、Gly:3.2(3)、Arg:2.1(2)、Thr:1.8(2)、Ala:1.8(2)、Pro:2.0(2)、Tyr:1.0(1)、Phe:1.1(1):Lys:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0047】
KPCAREPPTRTFAYWGQG=Glx:2.0(2)、Gly:2.1(2)、Arg:2.0(2)、Thr:2.0(2)、Ala:1.9(2)、Pro:3.1(3)、Tyr:1.0(1)、Phe:1.0(1)、Lys:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0048】
D-KPCAREPPTRTFAYWGQG=Glx:1.9(2)、Gly:2.3(2)、Arg:1.9(2)、Thr:1.8(2)、Ala:1.9(2)、Pro:3.4(3)、Tyr:1.0(1)、Phe:1.1(1)、Lys:0.7(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0049】
YKCAREPPTRTFAYWGQG=Glx:2.0(2)、Gly:2.2(2)、Arg:2.1(2)、Thr:1.8(2)、Ala:1.8(2)、Pro:2.0(2)、Tyr:2.0(2)、Phe:1.1(1)、Lys:1.0(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0050】
(実施例5)
KGC、YKC、KPC又はD-KPCを含むペプチドのTc−99m標識
実施例4で得られた4種のペプチドを実施例2記載の方法により、Tc−99m標識を行った。表2に各標識ペプチド及び実施例2で得られたKYCを含むペプチドのTc−99m標識物の標識率を示した。100μg/mlのサンプル濃度において、X2にTyr残基、Gly残基及びLys残基を配置した場合は、標識率が98%以上であっが、Pro残基を配置した場合は、50〜70%に過ぎなかった。
【0051】
【表2】
* n=1
【0052】
(実施例6)
Tc−99m−KYCAREPPTRTFAYWGQGの安定性
実施例1及び2に従い、Tc−99m−KYCAREPPTRTFAYWGQGを調製し、モル比で1000倍等量のDTPA溶液を加え、室温で1時間反応させた。キレートの安定性は、Tc−99mのDTPAへの移行率を指標として調べた。移行率は、実施例1記載のHPLC分析により測定した。その結果、図3に示したようにTc−99m−KYC(リテンションタイム:17.08分)以外の放射能ピークはほとんど検出されず、1000倍等量のDTPAを加えてもTc−99m−KYCは安定であることが確認された。
【0053】
(実施例7)
KYC、DYC又はYYCを含むペプチドのTc−99m標識体の体内動態
実施例2で得たTc−99m−KYCAREPPTRTFAYWGQG、Tc−99m−DYCAREPPTRTFAYWGQG及びTc−99m−YYCAREPPTRTFAYWGQGの3種のTc−99m標識体を、予めチオペントバルビタール酸ナトリウムで麻酔を施したSD系ラット(Sprague−Dawley)140〜200gに、尾静脈から3.0〜3.7MBq投与し、5、30、60及び180分後に屠殺し、各臓器の放射能分布をNaIシングルチャンネルアナライザーにて測定した。表3、表4及び表5にその結果を記す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
表3、表4及び表5に示した結果から、各Tc−99m標識ペプチドの正常ラット体内分布は、X1のアミノ酸残基一つの違いで大きく分布が異なることが認められた。特にX1にAsp残基又はLys残基を置換した時は、腎臓からの放射能の排泄が非常に速く、投与後60分で82%の放射能が尿中に排泄された。対照的にX1にTyr残基を置換した時は、小腸に投与後60分で37%が集積し、その後大腸を経て糞中に排泄される経路をとった。
【0058】
(実施例8)
Tc−99m−KYCAREPPTRTNAYWGQGを用いた腫瘍イメージング
実施例1記載の方法に従いKYCをN末端側に含むペプチドKYCAREPPTRTNAYWGQGを合成及び精製し、実施例2記載の方法に従いTc−99m標識を行いHPLC分析を行った。以下に、得られたKYCAREPPTRTNAYWGQGペプチドのアミノ酸組成の分析値(分子当たりの個数)を示す。丸かっこ内は、目的ペプチドのアミノ酸組成の理論値(分子当たりの個数)。
【0059】
KYCAREPPTRTNAYWGQG=Asn:1.1(1)、Glx:2.0(2)、Gly:2.1(2)、Arg:1.9(2)、Thr:2.0(2)、Ala:1.9(2)、Pro:2.1(2)、Tyr:2.0(2)、Lys:0.9(1)、Cys:−(1)、Trp:−(1)。
【0060】
次いで、腫瘍細胞HEp2(Human Epidermoid Carcinoma; ATCC No. CCL 23 )の5×106 cellを1.0mlの培養液(Minimum essential medium(Eagle's ) with Earle's BSS, 90%; fetal bovine serum, 10% )に懸濁させ、その内の100μlをBALB/C系ヌードマウス(6週令)の体側部に皮下注射し、2週間後、腫瘍が0.3g前後に成長したヌードマウスにラボナール麻酔を施し、上記で得られたTc−99m−標識ペプチドの35〜40MBqを尾静脈内投与し、5分及び20分後にガンマカメラにてイメージを撮像した。その結果を図4及び図5に示した。その後、直ちに屠殺し各臓器の放射能分布をNaIシングルチャンネルアナライザーにて測定し、[腫瘍]/[筋肉]比([T]/[B]比)を求めた。投与後20分の[T]/[B]比は、4.50±0.71(n=3,平均値±標準偏差)を示し、明らかに病巣部位が描出され、本発明のキレート形成性ペプチドであるKYCが、腫瘍部位親和性ペプチドAREPPTRTNAYWGQGの薬理活性を保持したまま、安定に該腫瘍部位親和性ペプチドをTc−99m標識するのに有用であることが示された。
【0061】
(実施例9)
Tc−99m−KYCGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2 の調製実施例1記載の方法において、プレロード化レジンに代えてアミド化レジン(MIllipore社製PAL樹脂)を用いて、ペプチドKYCGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2 を合成及び精製し、実施例2記載の方法に従いTc−99m標識し、HPLC分析を行った。以下に得られたペプチドのアミノ酸組成の分析値(分子当たりの個数)を示す。丸かっこ内は、目的ペプチドのアミノ酸組成の理論値(分子当たりの個数)。
【0062】
KYCGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2 =Asp:1.1(1)、Glx:3.0(3)、Ser:0.9(1)、Gly:2.1(2)、Arg:2.0(2)、Thr:2.2(2)、Pro:1.0(1)、Tyr:3.2(3)、Val:1.5(2)、Lys:3.0(3)、Cys:−(1)。
【0063】
次いで、グルコヘプタネート40.3μmol/300μlと塩化第一スズ溶液130nmol/50μlの混合液の凍結乾燥バイアル中に過テクネチウム酸ナトリウム(Tc−99m)溶液1.5〜1.8GBqを加え、全量を1mlとした。時折転倒撹拌しながら室温で30分間反応させ、その一部を取り、セルロースアセテート膜電気泳動法にてグルコヘプタネートのTc−99m標識率が95%以上であることを確認した後、ペプチド40nmol/500μlとテクネチウム−99m標識グルコヘプトネート溶液500μlを混合し、沸騰水浴中20分間反応させ、放冷後その一部を取り、TLC法(TLCプレ−ト:ODS,展開溶媒:0.1%TFA/60%アセトニトリル/精製水)にて標識率を求めた。その結果ペプチドの標識率は90%であった。
【0064】
(実施例10)
Tc−99m−KYCGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2 を用いた炎症イメージング
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の108 個の生菌を生理食塩水1mlに懸濁させ、その内の100μlをSD系ラット220g前後の右ふくらはぎに筋肉内投与し、24時間経過後、明らかに炎症が認められたモデルラットにラボナール麻酔を施し、実施例9で得られたテクネチウム−99m−KYCGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2 の37〜74MBqを尾静脈内投与し、30分及び120分後にガンマカメラにてイメージを撮像した。得られた結果は、図6及び図7に示した通りである。イメージ上に関心領域を設定し〔炎症〕/〔正常〕比([T]/[B]比)を求めた結果、投与後2時間の[T]/[B]比(平均値±標準誤差)は3.26±0.18(n=6)を示し、明らかに病巣部位が描出され、Tc−99m−KYCが、炎症親和性ペプチドGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2 の活性を保持し、且つ安定に該炎症親和性ペプチドをTc−99m標識するのに有用であることが示された。
【0065】
【発明の効果】
N末端側から順にX1−X2−Cysのアミノ酸3残基からなる本発明の金属キレート形成性ペプチドは、従来問題であった分子内及び分子間のジスルフィド結合を特に考慮する必要がなく、取扱いが容易で、生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物等の生理活性物質と複合体を形成した場合にも、Tc−99m等の放射性金属核種とインビトロ及びインビボにおいて安定に結合し、その生理活性物質の活性を損なわず、その体内分布に非特異的な集積を認めない排泄経路を好ましく方向付け可能な金属キレート形成性ペプチド、該金属キレート形成性ペプチドに生理活性を有するペプチド、タンパク質又はその他の化合物等が結合した複合体、該金属キレート形成性ペプチド及び該複合体に放射性金属核種が配位した放射性診断剤及び放射性治療剤、及びその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Tc−99m標識したAc−KYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 のHPLCのプロファイルを示す図である。
【図2】 Tc−99m標識したKYCAREPPTRTFAYWGQG−NH2 のHPLCのプロファイルを示す図である。
【図3】 1000倍等量のDTPAを添加したTc−99m−KYCAREPPTRTFAYWGQGのHPLCのプロファイルを示す図である。
【図4】 腫瘍モデルマウスを用いたTc−99m−KYCAREPPTRTNAYWGQGの投与後5分の全身シンチグラムを示す写真(生物の形態)である。
【図5】 腫瘍モデルマウスを用いたTc−99m−KYCAREPPTRTNAYWGQGの投与後20分の全身シンチグラムを示す写真(生物の形態)である。
【図6】 炎症モデルラットを用いたTc−99m−KYCGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2の投与後30分の全身シンチグラムを示す写真(生物の形態)である。
【図7】 炎症モデルラットを用いたTc−99m−KYCGGKTKPREQQYNSTYRVV−NH2の投与後120分の全身シンチグラムを示す写真(生物の形態)である。
Claims (8)
- 金属キレートを形成するためのペプチドと、前記ペプチドに結合している病巣部位親和性ペプチドとの複合体であって、
金属キレートを形成するためのペプチドは、N末端から順に、X1−X2−Cysのアミノ酸3残基からなり;
X1−X2−Cysが、
Asp−Tyr−Cys、
Asp−Lys−Cys、
Tyr−Gly−Cys、
Tyr−Tyr−Cys、
Tyr−Lys−Cys、
Lys−Tyr−Cys、又は、
Lys−Lys−Cys
であり、
ここで、X1は、α位に遊離第1級アミノ基(−NH2)を有するアミノ酸残基であり、
該金属キレートを形成するためのペプチドの側鎖の官能基は、保護基で置換されていてもよく、
各アミノ酸残基はD体またはL体のいずれでもよく、
金属キレートを形成するためのペプチドは、Tc−99mに配位することができ、また、X1のアミノ酸残基のα位の遊離第1級アミノ基(−NH2)が、Tc−99mに配位することができる、
複合体。 - 病巣部位親和性ペプチドが、腫瘍部位親和性ペプチド、炎症/感染症部位親和性ペプチド、血栓部位親和性ペプチドまたは脳疾患部位親和性ペプチドである請求項1に記載の複合体。
- X1はLys残基であり、X2はTyr残基である請求項1又は2に記載の複合体。
- 請求項1〜3の何れかに記載の複合体にTc−99mが配位した放射性金属核種標識物。
- 請求項1〜3の何れかに記載の複合体にTc−99mが配位した放射性金属核種標識物を活性成分として含有する放射性診断剤。
- 水溶液中で、室温にて、請求項1〜3の何れかに記載の複合体に、Tc−99mを配位させることからなる請求項4に記載の放射性金属核種標識物の製造方法。
- 過テクネチウム酸塩及び還元剤を用いる請求項6に記載の製造方法。
- 室温にて、請求項4に記載の放射性金属核種標識物と、薬学的に許容しうる担体とを混合することからなる請求項5に記載の放射性診断剤の製造方法。
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