JP3865887B2 - 画像補正方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像補正方法に係わり、特に、核磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」という)において形成されたMR画像のシェーディング補正に適用される画像補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静磁場内に置かれた被検体に高周波磁場を照射することにより、被検体から生じる磁気共鳴信号を検出し、画像を構成するMRI装置においては、磁気共鳴信号を検出するRFプローブの感度の空間不均一性のため、再構成された画像に強いシェーディングが生じる場合があることが知られていた。このため、撮影画像自体から計算した感度分布画像を使って補正する自己シェーディング補正技術が提案されている(American Journal of Rentogenology, 148; 418-420, February 1987, Axel等, Intensity Correction in Surface-Coil MR Imaging.)。この原理は、得られた磁気共鳴画像(MR画像)に低周波通過フィルター(LPF)を作用させて擬似的なRFプローブの感度分布とし、原画像をこの感度分布画像で除することにより、シェーディング補正をするものである。
【0003】
一方、MRI装置による計測対象は、被検体内部の形態に限られず、血流(血管)、機能などを2次元または3次元的に撮影することができる。特に、MRI装置による血流測定はMRアンギオグラフィー(MRA)と呼ばれ、広く普及している。このようなMRAの代表的なシーケンスとして、タイムオブフライト(Time-of-Flight: TOF)法が知られている(Magnetic Resonance Imaging. Stark DD等, edited, The C.V.Mosby Company, pp108-137, 1988)。
【0004】
このTOF法の原理は以下のようなものである。即ち、被検体に高周波パルスを短時間、例えば20ms毎に連続して照射すると、照射された領域の組織に含まれるスピンは飽和状態になる。これに対し、血流に含まれるスピンは随時その領域から流出し、新たに未飽和のスピンが流入してくるため、相対的に他の組織より高信号を発生することになる。この流入効果を利用して複数のスライスについて撮影を行い、得られた画像を重ね合わせて投影処理を行えば、血流描画が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなMRAにより得られた画像に前述のシェーディング補正方法を適用し、原画像にLPFを作用させて疑似的な感度分布画像を得る場合、血流部分が他の組織に比べて突出して高信号であるため、正確な感度分布を反映した感度分布画像を得ることができないという問題があった。従ってこのような感度分布画像から得た感度分布曲線を用いて感度補正係数を求めた場合、血管等の高信号の絵素からの影響で、感度補正係数にシェーディング以外の要素が含まれており、シェーディング補正がうまくいかないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、MRA等のように高信号領域を有する画像を、適正にシェーディング補正することができる画像補正方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の画像補正方法は、濃淡画像のシェーディングを補正する画像補正方法であって、原画像の高信号領域の絵素値から所定の閾値を求めるステップと、原画像中、少なくとも閾値以上の絵素値を抑制して第2の画像を形成するステップと、第2の画像に低周波通過フィルタを作用させて第3の画像を形成するステップと、第3の画像を用いて原画像のシェーディングを補正するステップとを含むものである。
【0008】
第2の画像を形成するステップにおける絵素値の抑制は、例えば各絵素の濃淡情報を非直線的に変換することにより達成できる。好適には、閾値以下ではコントラストが高く、閾値以上ではコントラストが低くなるように濃度情報を変換して絵素値を抑制する。このような濃度変換関数は、非線形関数であってもよく、または不連続関数であってもよい。
【0009】
このように、原画像から第3の画像(感度分布画像)を求める際に、シェーディング以外の要素となる高信号領域を抑制することにより、高信号の影響を受けることなく、適正なシェーディング補正をすることができる。
【0010】
本発明の画像補正方法は、通常のMR画像にも適用できるが、特に、MRAによる高信号領域を有する画像の補正に適している。このようにMR画像あるいはMRA画像に本発明を適用する場合、上記の第3の画像はRFプローブの感度を示す感度分布画像を意味する。この感度分布画像の逆数をとることにより補正係数を計算することができ、この補正係数を原画像に作用させることによりシェーディング補正した画像が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図を用いて詳細に説明する。
【0012】
図2は、本発明が適用できるMRI装置のブロック図である。このMRI装置は被検体の周囲に静磁場を発生する静磁場発生磁石201と、この空間に傾斜磁場を発生する重畳して発生させる傾斜磁場コイル202と、この領域に高周波磁場を発生させる高周波コイル(RFコイル)203と、被検体が発生する磁気共鳴信号(MR信号)を検出するRFプローブ204とを備えている。傾斜磁場コイル202はX、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場コイル202に電力を供給する傾斜磁場電源205に接続されている。また、RFコイル204は、高周波信号を変調、増幅するRF送信部206に接続されており、RFプローブは、MR信号を増幅、直交位相検波してA/D変換する信号検出部207に接続されている。信号検出部207は画像信号へと変換する信号処理部208に接続され、この信号処理部208は画像を表示する表示部209に接続される。さらに、傾斜磁場電源205、RF送信部207、及び信号処理部208はいずれもパルス発生や信号取得のタイミングを制御する制御部210に接続される。
【0013】
このようなMRI装置では、制御部210によりパルスの発生タイミングを制御されてRF送信部206から高周波パルスが発生され、これによりRFコイル203から高周波磁場が被検体に照射される。これにより静磁場中に配置された被検体からMR信号が発生し、MRプローブ204により受信され、信号検出部207によりデジタル信号へと変換される。このデジタル信号は制御部210によりタイミングを制御されて取得され、信号処理部208で画像データへと変換される。この際、制御部210によりタイミング制御され、傾斜磁場電源205を介して傾斜磁場コイル202から発生された傾斜磁場にはX、Y、Z方向の位置情報が含まれているため、2次元フーリエ変換等により画像再構成が可能となる。
【0014】
このようにして取得された画像データは表示部209でMR画像として表示される。この場合、上記のようなMRI装置においては、MR信号を検出するRFプローブの感度に空間不均一性があるため、何ら補正を施していない原画像はシェーディングを生じている。従って、一旦取得した原画像のデータを補正することが一般的であり、補正して得られた画像データが表示部209でMR画像として表示される。
【0015】
本発明の画像補正方法はこのようなMR画像のシェーディングを補正するためのものである。MRAの代表的なシーケンスであるTOF法を用いて撮影した濃淡画像について、本発明の画像補正方法を適用した実施例を図1に示すフロー図を参照して説明する。
【0016】
図3は、TOF法を用いて撮影した256×256絵素の濃淡画像(原画像)である。一般的に画像の濃度階調は約1000であり、絵素値の大きいところ、即ち高信号領域は白色で、また絵素値の小さいところ、即ち低信号領域は黒色で、そして中間的な絵素値を有するところは灰色で表される。この図では血管部分31は高信号領域として白色で、その他の組織32は中間的な領域として灰色で、また背景33は低信号領域として黒色で表わされている。
【0017】
図4は、図3における2箇所の血管部分31を含む断面AA’でのプロファイルである。図4(a)は原画像の絵素値をそのまま表したものであり、血管部分31は高い絵素値を有し、組織32は血管部分31の1/5〜1/2の絵素値を有し、背景33は組織32のさらに1/4〜1/2の絵素値を有している。
【0018】
本発明の画像補正方法では、このような原画像から感度分布画像を求めるに先立って、まず図1のフロー図に示すように、入力された原画像の絵素値から閾値を求める(ステップ11)。この閾値は、閾値以上の絵素値を抑制するために設定するもので、例えば原画像中の最大絵素値51を求め、その一定の割合と定義して得ることができる。この割合は、MRA画像の場合、血流信号がおよそその範囲(閾値から最大絵素値の範囲)に入るように決めることが好ましく、通常30〜40%とすることができる。
【0019】
次にこの閾値に基づき、原画像の中の高信号の絵素の絵素値を抑制し、それにより第2の画像を得る(ステップ12)。抑制の方法として、例えば、閾値(xt)より小さい絵素値の場合には、そのままの絵素値を用い(式(1))、一方、閾値(xt)以上の絵素値の場合には式(2)の関係により抑制した絵素値を求めて用いることができる。
【0020】
y=x (x<xt) (1)
y=xt+(x−xt)×α (x≧xt) (2)
尚、上記式において、xは入力された絵素値、yは出力された絵素値、xtは閾値、αは、0<α<1.0、を満たす係数を示す。α=1の場合、入力絵素値xの大きさによらず式(1)で表される直線となり、高信号の抑制効果がないので、αの値は1未満とする。またα=0の場合、入力絵素値xが閾値xt以上のときは出力絵素値yは一定値(=xt)となるためフラットとなり、式(1)及び式(2)を示す2つの直線のなす角度が最も急な角度となり、滑らかな感度分布曲線を得ることができない。従って、できるだけ滑らかな感度分布曲線を得るという観点から、α=0は除外することが好ましい。
【0021】
図5は、式(2)においてα=0.1とした場合の絵素値の抑制を、入力絵素値と出力絵素値との関係として、示したものである。この変換関数は、閾値61の前後で傾きの異なる直線で表され、入力絵素値が閾値61より小さい場合には傾きが大きく、閾値61以上の場合には傾きが小さい。この場合、直線の傾きはコントラストを表し、閾値61以下ではコントラストが高く、閾値61以上ではコントラストが低いことを示す。
【0022】
上記の関係により、図4(a)に示す原画像のプロファイルを変換したものを図4(b)に示す。血管部分31の高い絵素値が抑制されていることがわかる。図3に示す画像の各絵素値について同様な変換を施すことにより第2の画像を得る。
【0023】
次に、上記のようにして得られた第2の画像を用いてシェーディング補正する(ステップ13)。この段階は以下に示すように、更にいくつかのステップからなる。まず、図1に示すように第2の画像を入力として、低周波通過空間フィルタ(LPF)処理を施して第3の画像形成する(ステップ14)。第3の画像は、RFプローブのおよその感度分布を反映した画像と考えることができ、これを用いて原画像の補正をする。
【0024】
このLPF処理後の感度分布画像の断面AA’におけるプロファイルを図4(c)に示す。この図中、実線は本実施例によるものであり、点線は従来のシェーディング補正によるものを併せて示したものである。図示したように、従来、血管部分では突出していた値が、高信号の絵素値の抑制を施した本実施例では突出が抑えられ、全体として滑らかなプロファイルが得られる。
【0025】
次にこの感度分布画像に対して、例えば絵素値の逆数を求める演算を施し、これにより補正係数を計算する(ステップ15)。更に、この補正係数を用いて原画像を補正する(ステップ16)。即ち、感度分布画像(第3の画像)の各絵素の絵素値をIh、原画像の各絵素の絵素値をIとすると、補正後の各絵素の絵素値I'は、
I'=I/Ih
で与えられ、このような演算を各絵素について行う。
【0026】
ここで、背景33の絵素値は本来的に小さいため、感度分布画像においても非常に小さい値となり、その逆数を取った場合に補正後の画像は背景が大きな値となってしまう。これを防止するために、背景については補正0となるようにマスクを作成しておくこともできる。
【0027】
このように高信号の影響を除去した適正な感度分布画像を用いて補正することにより、補正前はシェーディングに埋もれていて明確に描出することができなかった画像端部の血管像等も、補正後のMR画像において明確な描出することができる。
【0028】
尚、上記の実施例では、高信号の絵素の抑制方法として、式(1)及び(2)の関係により、不連続的に原画像の絵素値を抑制したものを示したが、抑制方法はこれに限定されるものではなく、例えば式(3)のような非線形的関数により抑制することもできる。
【0029】
y={xmk−(xm−x)k}×(xt/xmk) (3)
上記式において、xは入力された絵素値、yは出力された絵素値、xmは原画像の最大絵素値51、xtは閾値、kは、k>1.0を満たす係数である。この関数は、出力絵素値の最大値が閾値となるように原画像の絵素値を変換し、kが大きいほど低信号領域の傾きが大きくなる。
【0030】
k=2の場合について、入力絵素値と出力絵素値との関係を示したものを図5に示す。入力絵素値の小さい低信号領域では、傾きが大きくコントラストが高いが、高信号領域にいくに従って傾きが小さくなり、コントラストが低くなる。このような関数により補正した場合にも、図5の場合と同様、適正なシェーディング補正が行える。
【0031】
図5及び図6に示した変換関数の傾きは、濃淡画像のコントラストに相当しているため、両者とも、低信号領域ではコントラストが比較的大きく、高信号領域ではコントラストが比較的小さい点を共通の特徴としている。このような特徴の結果、組織部分では低濃度情報が保存されるが、高信号の血管部分では濃度情報が圧縮されることになる。このため、高信号の影響を排除した感度分布を求めることができ、適正なシェーディング補正が可能となる。従って、図5及び図6と同様な特徴を有する関係であれば、上記2例以外の関係で絵素値を抑制してもよい。
【0032】
尚、以上の実施例では2次元の画像について説明したが、本発明の画像補正方法は、対象となる画像が3次元の場合にも適用できる。この場合、スライス毎に上述したステップ11〜16までの補正処理を行い、補正した2次元のデータを積み重ねた3次元データを作成する。補正後の3次元データをもとに、最大値投影法等の公知の技術により2次元投影図(血管像)を得ることができる。
【0033】
また、以上の実施例では、感度分布を求めた後、ステップ15で補正係数として感度分布画像の絵素値の逆数を求めているが、差分(I'=I−Ih)を求めて補正することも可能である。更に本発明の画像補正方法には、従来のシェーディング補正で使用されている技術も適用することができる。例えば、背景領域について補正0のマスクを用いる代りに、変換関数として極低信号領域では増加関数となるような関数を用いることも可能である。
【0034】
また、上記実施例は、血流計測についてのMRAを用いて説明したが、灌流のイメージング、拡散係数画像など、特定の高感度領域を有する画像が得られるMRイメージング方法にも同様に適用できる。
【0035】
さらに、本発明の画像補正方法は、上記実施例で説明したMR画像への適用に限られず、装置に起因してシェーディングを有する画像の補正について一般的に適用できる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の画像補正方法によれば、原画像の高信号の絵素値を抑制して第2の画像を形成し、これに基づいてシェーディング補正をすることにより、MRA画像のように特定の高信号領域を含むような画像においても、高信号絵素により影響を受けることなく感度補正係数を計算し、シェーディング補正を行うことができる。このため、MRA等において、シェーディングに埋もれている画像端部の血管像も明確に描出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すフロー図。
【図2】本発明を適用するMRI装置の全体ブロック図。
【図3】MRAによる原画像を模式的に示す図。
【図4】本発明による処理を説明する図で、(a)は図3の画像のAA'断面のプロファイル、(b)はその補正後のプロファイル、(c)は更にLPF処理後のプロファイル。
【図5】本発明における絵素値の抑制方法の一実施例に採用される変換関数を示すグラフ。
【図6】本発明における絵素値の抑制方法の他の実施例に採用される変換関数を示すグラフ。
【符号の説明】
31・・・・・・血管部分(高信号領域)
61・・・・・・閾値
Claims (1)
- 濃淡画像のシェーディングを補正する画像補正方法において、
原画像の高信号領域の絵素値から所定の閾値を求めるステップと、
前記原画像中、少なくとも前記閾値以上の絵素値を抑制して第2の画像を形成するステップと、
前記第2の画像に低周波通過フィルタを作用させて第3の画像を形成するステップと、
前記第3の画像を用いて前記原画像のシェーディングを補正するステップとを含むことを特徴とする画像補正方法。
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