JP3865054B2 - ディップ成形品用表面処理剤およびそれで処理してなるディップ成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はディップ成形品用表面処理剤およびそれで処理してなるディップ成形品に関し、さらに詳しくは、耐温水密着性および耐ブロッキング性に優れた表面処理層を有し、着脱しやすく、かつ粉落ちしにくいディップ成形品を製造し得るディップ成形品用表面処理剤およびそれで処理してなるディップ成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテックスから作られるディップ成形品としては、ゴム手袋、指サックが代表的なものとして挙げられる。これらのゴム手袋の内側表面は、粘着性を有しているために滑り難く、着脱しにくい。着脱が容易にできるように、このようなゴム手袋には、様々な工夫が施されている。即ち、一般的には、粘着性を防止するために、手袋の内面にタルク等の粉体を散布する方法や、塩素化処理することにより手袋の内表面に凸凹を設ける方法が施されている。しかし、粉体を散布する方法では、着脱時や装着中に粉体が手袋から脱落するため、この種のゴム手袋を医療用手袋(手術用手袋)に用いた場合は、脱落した粉体により手術部位が汚染されて術後感染を招くおそれがある。また、塩素化処理は、工程の制御が難しく、着脱性の改善も十分ではなく、且つ塩素を使用するので環境への負荷が大きいという問題がある。
【0003】
これらの方法に代えて、微粒子を含有するエラストマー層を手袋の内側に形成することによって、手袋の着脱性を高める工夫がなされている。
例えば、特公昭60−6655号公報には、澱粉粒子を分散させたカルボキシル化スチレン−ブタジエンラテックスを主成分とするエラストマー層を形成した医療用手袋が提案されている。
【0004】
また、特開平11−61527号公報には、手袋本体に含まれる凝固剤により凝固しない合成ゴムラテックスおよび有機充填剤を含む水性分散液によりエラストマー層を形成したゴム製手袋が提案され、合成ゴムラテックスとして、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスなどが、また、有機充填剤として、架橋メタクリル酸メチル重合体微粒子、ウレタン樹脂微粒子などが例示されている。
【0005】
さらに、特開平8−249430号公報には、熱可塑性樹脂微粒子、ゴムラテックスおよびブロックイソシアネートを主成分とするエラストマー層を形成したゴム製手袋が提案され、ゴムラテックスとして、天然ゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスなどが、また、熱可塑性樹脂微粒子として、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂微粒子、エチレン−メタクリル酸共重合体微粒子などが例示されている。
【0006】
これらの公報に記載された方法では、着脱性はある程度改善されはするものの、手袋内側が互いに貼りついて剥離し難くなる、温水で手袋内を洗浄した際に手袋本体とエラストマー層との密着性が低下し、手袋本体からエラストマー層が脱離するという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、耐温水密着性および耐ブロッキング性に優れた表面処理層を有し、着脱しやすく、かつ粉落ちしにくいディップ成形品を製造し得るディップ成形品用表面処理剤および該表面処理剤で処理してなるディップ成形品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、重合体ラテックスおよび有機重合体微粒子として、いずれも、水性媒体中、ポリビニルアルコールの存在下に単量体を重合して得られるものを使用したディップ成形品用表面処理剤を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、重合体ラテックスおよび有機重合体微粒子を含有してなるディップ成形品用表面処理剤であって、該重合体ラテックスおよび該有機重合体微粒子が、いずれも、水性媒体中、ポリビニルアルコールの存在下に単量体を重合して得られるものであることを特徴とするディップ成形品用表面処理剤が提供される。
また、本発明によれば、該ディップ成形品用表面処理剤で処理してなるディップ成形品が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
重合体ラテックス
本発明において用いる重合体ラテックスは、水性媒体中、ポリビニルアルコールの存在下に単量体を重合して得られるものである。
【0010】
水性媒体は、通常、水が用いられ、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒を含有してもよい。水性媒体の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、50〜600重量部、好ましくは100〜400重量部である。
【0011】
ポリビニルアルコールは、実質的に水溶性であって安定な重合体ラテックスが得られるものであれば、その他の条件には制限はなく、ビニルエステル単量体を主体とするビニル単量体を従来公知の方法で重合して得たビニルエステル重合体(すなわち、ビニルエステル単量体の単独重合体、2種以上のビニルエステル単量体の共重合体、およびビニルエステル単量体とその他のビニル単量体との共重合体)を常法によりけん化して得られる。また、分子の主鎖、側鎖又は末端にメルカプト基などの変性基を導入したものも使用できる。
【0012】
ビニルエステル単量体は、ラジカル重合可能なものであればいずれも使用でき、その具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどを挙げることができる。なかでも工業的に製造され安価な酢酸ビニルが一般的である。
【0013】
また、ビニルエステル単量体およびこれと共重合可能なその他の単量体を共重合することも可能である。その他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン単量体;アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸単量体またはその酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、フマール酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル単量体;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム基含有単量体;などを挙げることができる。
【0014】
ポリビニルアルコールのけん化度は、水への溶解性などの観点から、40〜100モル%であることが好ましく、50〜99モル%がより好ましく、70〜98モル%がさらに好ましい。けん化度が低すぎると、水への溶解性が低下して、重合安定性が悪くなる傾向にある。
【0015】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、通常、50〜8,000、好ましくは100〜6,000、より好ましくは100〜5,000である。この重合度が低すぎると重合安定性が不十分であり、逆に高すぎるとラテックスの粘度が非常に高くなり、ラテックス製造時の除熱が困難になるなどの問題がある。
【0016】
ポリビニルアルコールの使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.5〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。この使用量が少なすぎると、重合安定性が悪く、重合時に凝集物が多量に発生する、得られる重合体ラテックスの機械的安定性や化学的安定性が低下するなどの問題があり、逆に多すぎると、重合系の粘度上昇による反応熱除去が困難になる、得られる重合体ラテックスの粘度が高くなりすぎ、取り扱いが困難となるといった問題が起きる。
【0017】
重合体ラテックスを得るために使用する単量体としては、例えば、共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などが挙げられる。
【0018】
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。この中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。
共役ジエン系単量体の使用量は、全単量体に対して、通常、0〜90重量%、好ましくは0〜80重量%である。この量が多すぎると耐ブロッキング性が悪くなる傾向にある。
【0019】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどが挙げられる。
【0020】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等が挙げられる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量は、全単量体に対して、通常、0〜50重量%、好ましくは0〜40重量%である。この量が多すぎると粉落ちしやすくなる傾向にある。
【0021】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸エステル;が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の使用量には、特に制限が無い。
【0022】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物などが挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、全単量体に対して、通常、0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%である。この量が多すぎると耐温水密着性が悪くなる傾向にある。
【0023】
エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体の使用量は、全単量体に対して、通常、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%の範囲で使用される。この量が多すぎると粉落ちしやすくなる傾向にある。
【0024】
重合体ラテックスを構成する重合体は、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体などを使用できる。なかでも、耐ブロッキング性と粉落ち性のバランスに優れる点で、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体および(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体がより好ましい。
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体が好ましい。
【0025】
スチレン−アクリル酸ブチル共重合体の場合、全単量体に対する各単量体の使用量は、通常、スチレンが10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、アクリル酸ブチルが40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、およびその他の単量体が0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%である。
【0026】
メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体の場合、全単量体に対する各単量体の使用量は、通常、メタクリル酸メチルが10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、アクリル酸ブチルが40〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、およびその他の単量体が0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%である。
【0027】
本発明における重合体ラテックスは、水性媒体中、ポリビニルアルコールの存在下に単量体を重合して製造する。
【0028】
ポリビニルアルコールの使用方法は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールを予め重合反応器に添加したり、ポリビニルアルコールの一部を重合反応器に添加して、重合反応を開始した後、残部を重合反応器に添加したり、重合反応の開始と同時にポリビニルアルコールを連続的または断続的に重合反応器に添加することができる。
【0029】
単量体の添加方法は、特に限定されないが、単量体を予め重合反応器に添加したり、単量体の一部を重合反応器に添加して、重合反応を開始した後、残部を重合反応器に添加したり、重合反応の開始と同時に単量体を連続的または断続的に重合反応器に添加することができる。なかでも、重合反応の開始と同時に単量体を連続的に重合反応器に添加する方法が好ましい。
【0030】
単量体とポリビニルアルコールの添加方法は、特に限定されないが、それぞれ別々に添加したり、単量体、ポリビニルアルコールおよび水を混合して得られる単量体乳化物の形態で添加することができる。なかでも、単量体、ポリビニルアルコールおよび水を混合して得られる単量体乳化物の形態で、連続的に重合反応器に添加する方法が好ましい。
単量体とポリビニルアルコールとを別々に添加する場合は、両者の添加をほぼ同時に開始するのが好ましく、また、両者の添加をほぼ同時に終了させることが好ましい。
【0031】
単量体を連続的に添加する場合の添加速度は、特に制限はないが、反応中の重合転化率が10重量%以上を保つように制御するのが好ましい。反応途中の好ましい重合転化率は20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。単量体の添加速度が速すぎると重合転化率が低くなり、粗大粒子が発生しやすくなる。
【0032】
前記の単量体を重合させる際に使用する重合開始剤は、乳化重合において通常使用されるものが使用できる。
重合開始剤の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの水溶性過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの油溶性過酸化物;過酸化物と重亜硫酸水素ナトリウムなどの各種還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤などを挙げることができる。なかでも水溶性過酸化物が好ましく、過硫酸塩がより好ましい。
重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0033】
重合開始剤の添加方法は、特に限定されないが、重合開始前の重合反応器に全量を添加したり、重合開始前の重合反応器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に添加したり、重合開始前に重合反応器に一部を投入して重合を開始した後、残部を連続的または断続的に重合反応系に添加することができる。
【0034】
上記の重合体ラテックスの製造方法において、重合をアルコールの存在下に行うことが好ましい。
【0035】
本発明において使用し得るアルコールは、特に限定されないが、1価または多価の水溶性のアルコールが好ましい。このようなアルコールの具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。なかでも、エタノールが好ましい。
アルコールの使用量は、単量体100重量部に対して、通常、1〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。
【0036】
アルコールの添加方法は、特に限定されないが、重合開始前の重合反応器に全量を添加したり、重合開始前の重合反応器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に添加したり、重合開始前に重合反応器に一部を投入して重合を開始した後、残部を連続的または断続的に重合反応系に添加することができる。なかでも、重合開始前の重合反応器に全量を添加する方法が好ましい。
【0037】
上記の重合体ラテックスの製造方法において、乳化重合において通常使用される界面活性剤を、本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
このような界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールスルホン酸塩、ポリリン酸塩などのアニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステルまたはアルキルフェニルエーテルなどのノニオン性界面活性剤;脂肪族アミン塩またはその4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤;カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体などの両性界面活性剤;が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの界面活性剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.05重量部以下である。この使用量が多すぎると耐温水密着性や耐ブロッキング性が悪くなる傾向にある。
【0038】
重合に際しては、必須ではないが、連鎖移動剤を使用してもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのメルカプタン類;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのメルカプト基を有する化合物;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンなどのα−メチルスチレンダイマー類;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタンなどが挙げられる。
【0039】
連鎖移動剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部である。
連鎖移動剤の添加方法は、特に限定されず、一括添加しても、断続的または連続的に重合反応系に添加してもよい。
【0040】
重合温度は、特に制限はないが、通常、0〜100℃、好ましくは50〜95℃である。
【0041】
所定の重合転化率に到達した後、重合を停止する。重合の停止は、重合停止剤を添加するかまたは単に重合反応系を冷却することによって行うことができる。
重合を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0042】
重合を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去してもよい。
【0043】
本発明で使用する重合体ラテックスには、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、防腐剤、可塑剤、消泡剤などの助剤を重合時または重合後に併用してもよい。
【0044】
重合体ラテックスを構成する重合体のガラス転移温度は、特に限定されないが、通常、−40〜30℃、好ましくは−20〜20℃である。ガラス転移温度が低すぎると耐ブロッキング性が低下する傾向にあり、逆に高すぎると、ディップ成形品を伸張した際に表面処理層にひび割れを生じ、表面処理層がディップ成形品本体からはがれ落ちる場合がある。
【0045】
重合体ラテックスの体積平均粒子径は、通常、0.01〜2μm、好ましくは0.05〜1μmである。粒子径が小さすぎると、重合中に増粘しやすくなり、取り扱いが困難になり、逆に大きくすぎると均一な表面処理層が得られ難くなる。
【0046】
有機重合体微粒子
本発明で用いる有機重合体微粒子は、水性媒体中、ポリビニルアルコールの存在下、単量体を重合して得られるものである。
【0047】
水性媒体として、前記したものが使用できる。なかでも、水のみを使用するのが好ましい。水性媒体の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、100〜1000重量部、好ましくは200〜500重量部である。
【0048】
ポリビニルアルコールは、前記したものが使用できる。なかでも、けん化度が80〜98モル%、かつ平均重合度が100〜3000のものが好ましく、けん化度が85〜90モル%、かつ平均重合度が300〜1500のものがより好ましい。
ポリビニルアルコールの使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0049】
単量体は、前記の重合体ラテックスの製造において列記したものが使用できる。前記の単量体以外に、さらに架橋性単量体を使用することが好ましい。
【0050】
架橋性単量体は、少なくとも2個の、好ましくは2〜4個の、ラジカル重合し得る炭素−炭素2重結合を持つ化合物である。
その具体例として、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル芳香族化合物; アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリルなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の不飽和エステル化合物;フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリルなどの多価カルボン酸の不飽和エステル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートなどの多価アルコールの不飽和エステル化合物;1、2ーポリブタジエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフォン、N,N’−m−フェニレンマレイミドなどが挙げられる。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAなどの脂肪族または芳香族ジオール; 2〜20の、好ましくは2〜8のオキシエチレン単位を持つポリエチレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのポリオール;などの多価アルコールと、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和多価カルボン酸とから製造される不飽和ポリエステル化合物が挙げられる。これらのなかでも、ジビニルベンゼンが好ましい。ジビニルベンゼンには、オルト体、メタ体およびパラ体があるが、単独で使用しても、これらの混合物を使用してもよい。
【0051】
架橋性単量体の使用量は、全単量体に対して、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%である。
【0052】
有機重合体微粒子を構成する重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体などを使用できる。なかでも、耐ブロッキング性と耐粉落ち性のバランスに優れる点で、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体および(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が好ましい。
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体が好ましい。
【0053】
スチレン−アクリル酸ブチル共重合体の場合、全単量体に対する各単量体の使用量は、通常、スチレンが60〜95重量%、好ましくは65〜90重量%、アクリル酸ブチルが5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、およびその他の単量体が0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%である。
【0054】
メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体の場合、全単量体に対する各単量体の使用量は、通常、メタクリル酸メチルが60〜98重量%、好ましくは65〜95重量%、アクリル酸ブチルが2〜40重量%、好ましくは5〜35重量%、およびその他の単量体が0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%である。
【0055】
本発明における有機重合体微粒子は、水性媒体中、ポリビニルアルコールの存在下に単量体を重合、好ましくは懸濁重合して製造する。
【0056】
ポリビニルアルコールの使用方法は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールを予め重合反応器に添加したり、ポリビニルアルコールの一部を重合反応器に添加して、重合反応を開始した後、残部を重合反応器に添加することができる。
【0057】
単量体の添加方法は、特に限定されないが、単量体を予め重合反応器に添加したり、単量体の一部を重合反応器に添加して、重合反応を開始した後、残部を重合反応器に添加することができる。
【0058】
前記の単量体を重合させる際に使用する重合開始剤は、懸濁重合において通常使用されるものが使用できる。
重合開始剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの油溶性過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどの油溶性アゾ化合物;などが挙げられる。なかでも油溶性過酸化物が好ましい。
重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部である。
【0059】
重合開始剤の添加方法は、特に限定されないが、重合開始前の重合反応器に全量を添加したり、重合開始前の重合反応器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に添加したり、重合開始前に重合反応器に一部を投入して重合を開始した後、残部を連続的または断続的に重合反応系に添加することができる。
【0060】
重合に際しては、必須ではないが、連鎖移動剤を使用してもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのメルカプタン類;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのメルカプト基を有する化合物;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンなどのα−メチルスチレンダイマー類;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタンなどが挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部である。
【0061】
連鎖移動剤の添加方法は、特に限定されず、一括添加しても、断続的または連続的に重合反応系に添加してもよい。
【0062】
本発明における有機重合体微粒子を製造する好ましい方法は、単量体、重合開始剤および所望により連鎖移動剤を混合した溶液と、ポリビニルアルコールの水溶液とを混合した後、その混合物を分散機を用いて微細分散液とし、次いで、その微細分散液を重合反応容器に全量添加した後、所望の温度で重合を開始する方法である。
【0063】
分散機としては、例えば、ホモディスパー、超音波分散機、ダイノミル、リングミルなどが挙げられる。
【0064】
重合温度は特に制限はないが通常、0〜150℃、好ましくは50〜100℃である。
【0065】
所定の重合転化率に達した後、重合を停止する。重合の停止は、重合停止剤を添加するかまたは単に重合反応系を冷却することによって行うことができる。重合を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0066】
重合を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去してもよい。
【0067】
本発明で使用する有機重合体微粒子には、必要に応じて、キレート剤、分散助剤、pH調整剤、防腐剤、可塑剤、消泡剤などの助剤を重合時または重合後に併用してもよい。
【0068】
上記の方法で得られた有機重合体微粒子が水性媒体中に分散している水性分散体は、濾過や遠心分離などを行ない水性媒体を除去し、さらに乾燥して有機重合体微粒子のみを取り出してもよい。
【0069】
本発明で使用する有機重合体微粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、通常、40〜120℃、好ましくは50〜100℃、特に好ましくは55〜95℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあると、耐ブロッキング性と耐粉落ち性とのバランスに優れる。
【0070】
有機重合体微粒子の体積平均粒子径は、通常、1〜50μm、好ましくは2〜30μm、より好ましくは3〜20μmである。
【0071】
有機重合体微粒子の形状は、特に限定されず、不定形状、異形状、球状などの有機重合体微粒子が使用できるが、球状のものが好ましい。
【0072】
表面処理剤
本発明のディップ成形品用表面処理剤は、前記の重合体ラテックスおよび前記の有機重合体微粒子を含有してなる。重合体ラテックスと有機重合体微粒子の配合比率は、重合体ラテックス固形分100重量部に対して、有機重合体微粒子が、固形分として、通常、20〜300重量部、好ましくは30〜200重量部、より好ましくは40〜150重量部である。配合比率がこの範囲にあると、耐ブロッキング性、脱着性および耐粉落ち性のバランスに優れる。
【0073】
ディップ成形用表面処理剤は、重合体ラテックスと有機重合体微粒子とを混合して製造する。混合の方法は、特に限定されないが、重合体ラテックスに予め分離乾燥して得た有機重合体微粒子を分散させてもよいし、重合体ラテックスと重合により得られた有機重合体微粒子の水性分散体とを混合してもよい。なかでも、より耐粉落ち性に優れる点で、重合体ラテックスと重合により得られた有機重合体微粒子の水性分散体とを混合する方法が好ましい。
【0074】
ディップ成形品用表面処理剤は、所望により、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤、老化防止剤などを配合できる。また、アルコール類、セルソルブ類、グリコール類、グリセリンなどの水親和性溶媒を、乾燥性や成膜性の向上などの目的に応じて、適宜配合してもよい。
【0075】
ディップ成形品用表面処理剤の固形分濃度は、通常、1〜15重量%、好ましくは1〜12重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0076】
ディップ成形品
本発明のディップ成形品は、ディップ成形物を前記表面処理剤で表面処理してなる。表面処理量は、特に限定されないが、単位表面積に対する固形分量で、好ましくは0.1〜2g/m2、より好ましくは0.15〜1.5g/m2である。
【0077】
ディップ成形物としては、特に限定されないが、常法の直接浸漬法、凝着浸漬法、感熱浸漬法などにより得られる手袋、指サックなどが挙げられる。また、ディップ成形物は、特に限定されないが、天然ゴムラテックスや合成ゴムラテックスからなるものが使用できる。合成ゴムラテックスとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスなどが挙げられる。
これらのなかでも、本発明の表面処理剤は、特に、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを用いて、凝着浸漬法により得られた手袋に好適に使用できる。
【0078】
ディップ成形物を表面処理剤で表面処理する方法としては、例えば、ディップ成形物を表面処理剤に浸漬する方法、ディップ成形物に表面処理剤を塗布する方法などが挙げられる。なかでも、均一な表面処理層が得られやすい点で、ディップ成形物を表面処理剤に浸漬する方法が好ましい。
【0079】
表面処理の操作は、ディップ成形物の製造工程中でディップ成形に引き続いて行ってもよく、また、できあがったディップ成形物に対して、後から行ってもよい。いずれの場合も、表面処理した後、乾燥してディップ成形品が得られる。また、表面処理は、ディップ成形物の片面だけに行っても、両面に行ってもよく、全面に行っても、部分的に行ってもよい。
【0080】
本発明のディップ成形品は、厚みが約0.1〜約3ミリのものが製造でき、特に厚みが約0.1〜約0.3ミリの薄手のものに好適に使用できる。具体的には、哺乳瓶用乳首、スポイト、導管、水枕などの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具や運動具;加圧成形用バッグ、ガス貯蔵用バッグなどの工業用品;手術用、家庭用、農業用、漁業用および工業用の手袋;指サックなどが挙げられる。特に、薄手の手袋、なかでも医療用手袋として好適である。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0082】
(重合体ラテックスおよび有機重合体微粒子の評価)
(1)体積平均粒子径(μm)
コールターLS230(コールター社製粒子径測定機)で測定した。
(2)ガラス転移温度(℃)
重合体ラテックスの場合、重合体ラテックスを枠付きガラス板に流延し、温度20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に48時間放置してフィルムを得、これを試料とした。
有機重合体微粒子の場合、有機重合体微粒子の水分散体を枠付きガラス板に流延し、温度20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に48時間放置して、乾燥したものを試料とした。
上記試料のガラス転移温度を、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製:SSC5200)を用いて、開始温度−100℃、昇温速度5℃/分の条件で測定した。
【0083】
(手袋物性)
(3)表面処理層の耐温水密着性
内側に表面処理層を有する手袋内に、40℃の温水を満たし、5秒間経過後に内部の水を排出した。その直後、内側の表面処理層を爪で強くこすり、表面処理層の脱落の程度を観察し、以下の基準で評価した。
(4)着脱性
内面が乾燥した状態で、手袋を装着し、その後脱着する時の難易度を、以下の基準で評価した。
【0084】
(5)耐ブロッキング性
表面処理層が内側になるようにした手袋に、外側から9.8KPaの荷重をかけて重ね合わせた。温度40℃、湿度95%の恒温恒湿オーブン内に、24時間放置後、手袋を取り出して、重ね合わされた部分を両手で剥離した際の剥離の容易さを以下の基準で評価した。
(6)耐粉落ち性
ASTM D6124−97に従い、脱離樹脂量(mg)を測定した。この量が少ないほど、耐粉落ち性に優れる。
【0085】
(重合体ラテックスの製造)
(製造例1−1)
攪拌機付きの耐圧容器に、脱イオン水90部、アクリル酸ブチル55部、メタクリル酸メチル45部、及びポリビニルアルコール(PVA−224E、クラレ社製、平均重合度2400、けん化度88モル%)4部を添加し、撹拌して、単量体乳化物を得た。
別途、攪拌機付きの耐圧反応容器に、脱イオン水57部及びエタノール8部を装入して温度を80℃に昇温し、80℃を維持した状態で、過硫酸アンモニウム0.5部を脱イオン水10部に溶解した開始剤溶液を添加した。2分後に反応容器に前記単量体乳化物の添加を開始し、4時間かけて添加を終了した。添加終了後、さらに2時間撹拌を継続した後、冷却して反応を終了させた。この時の重合転化率は98%であった。未反応単量体を除去した後、ラテックスを調整して、固形分濃度40%の重合体ラテックスAを得た。得られた重合体ラテックスの体積平均粒子径は0.34μm、ガラス転移温度は6℃であった。
【0086】
(製造例1−2)
ポリビニルアルコールに代えて、ラウリル硫酸ナトリウム3部を使用し、耐圧反応容器にエタノールを添加しない以外は、製造例1と同様に行ない、重合体ラテックスBを得た。得られた重合体ラテックスの体積平均粒子径は0.28μm、ガラス転移温度は5℃であった。
【0087】
(有機重合体微粒子の製造)
(製造例2−1)
脱イオン水200部に平均重合度500、けん化度88モル%のポリビニルアルコール2部を溶解し、さらに、スチレン80部、アクリル酸ブチル19.7部、ジビニルベンゼン0.3部、t−ドデシルメルカプタン0.8部及びベンゾイルパーオキサイド(BPO)5部を混合した溶液を添加した後、ホモジナイザー処理を行い、微細分散液を調製した。
これを温度制御ができる攪拌機付きの反応容器に移し、窒素置換を行った後90℃に昇温して重合を開始した。6時間後、冷却して反応を終了させた。この時の重合転化率は97%であった。未反応単量体を除去した後、固形分濃度30%の有機重合体微粒子水性分散液Aを得た。
この有機重合体微粒子の体積平均粒子径は4.8μm、ガラス転移温度は59℃であった。
【0088】
(製造例2−2)
単量体として、メタクリル酸メチル80部、アクリル酸ブチル19.7部およびジビニルベンゼン0.3部を使用し、ベンゾイルパーオキサイドの量を5部から1部に変更する以外は、製造例2−1と同様に行ない、有機重合体微粒子水性分散液Bを得た。
この有機重合体微粒子の体積平均粒子径は5.2μm、ガラス転移温度は58℃であった。
【0089】
(製造例2−3)
ポリビニルアルコールの代わりに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ90SH−100:信越化学工業(株)製)0.3部およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プロノン208:日本油脂(株)製)0.3部を用いた以外は、製造例2−1と同様に行ない、有機重合体微粒子水性分散液Cを得た。
この有機重合体微粒子の体積平均粒子径は4.9μm、ガラス転移温度は58℃であった。
【0090】
(実施例1)
重合体ラテックスA100部(固形分換算)と有機重合体微粒子水性分散液A100部(固形分換算)とを混合し、全体の固形分濃度を脱イオン水により8%に調整し、表面処理剤Aを得た。
【0091】
硫黄10部、酸化亜鉛15部、酸化チタン7部及び水酸化カリウム0.3部、水32部の割合で混合して調製した固形分濃度50.2%の加硫剤分散液7部を、
固形分濃度30%のディップ成形用のカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス333部に混合して、固形分濃度が30.4%のディップ成形用配合液を得た。
【0092】
一方、硝酸カルシウム20部、非イオン性乳化剤のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.05部及び脱イオン水80部の割合で混合して調製した固形分濃度20.4%の凝固剤溶液に手袋型を1分間浸漬し、引き上げた後3分間50℃で乾燥して、凝固剤を手袋型に付着させた。
【0093】
次に、凝固剤の付着した手袋型を上記のディップ成形用配合液に10秒間浸漬し、引き上げて、60℃で5分間乾燥し、50℃温水中に5分間浸漬した後、さらに、60℃で5分間乾燥させた。
【0094】
次いで、その手袋型を前記表面処理剤に10秒間浸漬し、引き上げた後、70℃で10分間乾燥機で乾燥し、さらに、120℃で25分間加硫処理して、手袋型の表面に固形皮膜物を得た。最後に、この固形皮膜物を型から反転させながら剥ぎ取り、内側に表面処理層を有するゴム手袋を得た。このゴム手袋の厚みは0.15mmで、表面処理量は1g/m2であった。この手袋の特性を評価し、その結果を表1に示す。
【0095】
(実施例2)
有機重合体微粒子水性分散液Aに代えて有機重合体微粒子水性分散液Bを使用する以外は、実施例1と同様に行なった。その結果を表1に示す。
【0096】
(比較例1)
重合体ラテックスAに代えて重合体ラテックスBを使用する以外は、実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例2)
有機重合体微粒子水分散液Aに代えて有機重合体微粒子水分散液Cを使用する以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1から以下のようなことがわかる。
通常使用される界面活性剤の存在下に、単量体を重合して得た重合体ラテックスBを用いた比較例1の表面処理剤Cで表面処理した手袋は、表面処理層の耐水密着性に劣り、着脱性、耐ブロッキング性および耐粉落ち性に劣る。
ポリビニルアルコール以外の分散剤の存在下に、単量体を重合して得た有機重合体微粒子水分散液Cを用いた比較例2の表面処理剤Dで表面処理した手袋は、着脱性および耐ブロッキング性に優れるものの、表面処理層の耐水密着性が不十分であり、かつ、耐粉落ち性に劣る。
【0100】
これらに比べて、本発明で規定する範囲内にある表面処理剤で表面処理した手袋は、いずれも、耐温水密着性および耐ブロッキング性に優れた表面処理層を有し、着脱性と耐粉落ち性とに優れている(実施例1および2)。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、耐温水密着性および耐ブロッキング性に優れた表面処理層を有し、着脱しやすく、かつ粉落ちしにくいディップ成形品を製造し得るディップ成形品用表面処理剤および該表面処理剤で処理してなるディップ成形品が提供される。
Claims (6)
- 重合体ラテックスおよび有機重合体微粒子を含有してなるディップ成形品用表面処理剤であって、該重合体ラテックスおよび該有機重合体微粒子が、いずれも、水性媒体中、ポリビニルアルコールの存在下に単量体を重合して得られるものであることを特徴とするディップ成形品用表面処理剤。
- 有機重合体微粒子が懸濁重合により得られるものである請求項1記載のディップ成形品用表面処理剤。
- 有機重合体微粒子が、有機重合体微粒子の水性分散体である請求項1に記載のディップ成形品用表面処理剤。
- 有機重合体微粒子の水性分散体が重合により得られるものである請求項3に記載のディップ成形品用表面処理剤。
- 重合体ラテックス固形分100重量部に対して、有機重合体微粒子の固形分が20〜300重量部、重合体ラテックスを構成する重合体のガラス転移温度が−40〜30℃、かつ有機重合体微粒子を構成する重合体のガラス転移温度が40〜120℃である請求項1に記載のディップ成形品用表面処理剤。
- 請求項1に記載のディップ成形用表面処理剤で表面処理してなるディップ成形品。
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