JP3864352B2 - 減衰力調整式油圧緩衝器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両の懸架装置等に装着される減衰力調整式油圧緩衝器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両の懸架装置に装着される油圧緩衝器には、路面状況、走行状況等に応じて乗り心地や操縦安定性を向上させるために減衰力を適宜調整できるようにした減衰力調整式油圧緩衝器がある。
【0003】
減衰力調整式油圧緩衝器は、一般に、油液を封入したシリンダ内にピストンロッドを連結したピストンを摺動可能に嵌装してシリンダ内を2室に画成し、ピストン部にシリンダ内の2室を連通させる主油液通路およびバイパス通路を設け、主油液通路にはオリフィスおよびディスクバルブからなる減衰力発生機構を設け、バイパス通路にはその流路面積を調整する減衰力調整弁を設けた構成となっている。なお、シリンダ内の一方の室には、ピストンロッドの伸縮にともなうシリンダ内の容積変化をガスの圧縮、膨張によって補償するリザーバがベースバルブを介して接続されている。
【0004】
この構成により、減衰力調整弁によってバイパス通路を開いてシリンダ内の2室間の油液の流通抵抗を小さくすることによって減衰力を小さくし、また、バイパス通路を閉じて2室間の流通抵抗を大きくすることによって減衰力を大きくする。このように、減衰力調整弁の開閉により減衰力特性を適宜調整することができる。
【0005】
また、減衰力調整式油圧緩衝器には、減衰力調整弁の弁体を比例ソレノイドによって駆動することにより、コイルへの通電電流に応じて減衰力を調整可能としたものがある。この種の減衰力調整式油圧緩衝器では、一般に、小型化を図るため、減衰力調整弁の弁体は、比例ソレノイドのプランジャ(可動鉄心)を兼ねている。このため、弁体は、比透磁率の大きな磁性材料で構成され、固定鉄心によって案内されて、固定鉄心との摺動面が磁気通路を横切るようになっている。そして、弁体は、油圧緩衝器の作動油中に配置され、固定鉄心との間に摺動を可能とするためのクリアランスが設けられており、このクリアランスに作動油の油膜を形成することによって摩擦抵抗を軽減して円滑な移動を可能としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の比例ソレノイドを用いた減衰力調整式油圧緩衝器では、次のような問題がある。可動鉄心である弁体と固定鉄心との間には、比例ソレノイドの作動(通電によるコイルの励磁)によって径方向に吸引力が発生する。この吸引力は、弁体と固定鉄心とのギャップの2乗に反比例し、これらが接触したとき最大となる。したがって、弁体は、この吸引力によって固定鉄心の案内部の径方向一側に押しつけられることになり、摺動部の摩擦抵抗が増大して円滑な移動が妨げられる虞がある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、比例ソレノイドの可動鉄心を円滑に移動させるようにした減衰力調整式油圧緩衝器を提供することを目的とする。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、一端が該ピストンに連結され他端が前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって油液を流通させる油液通路と、該油液通路の油液の流通を制御して減衰力発生させるとともに前記油液通路の流路面積を変化させて減衰力を調整可能とした減衰力調整弁と、該減衰力調整弁の弁体を駆動する比例ソレノイドとを備えてなる減衰力調整式油圧緩衝器において、
前記比例ソレノイドは、前記弁体を兼ねる可動鉄心と、内部に該可動鉄心を案内すると共に前記油液通路を構成する案内ボアが形成された円筒状のガイド部材と、該ガイド部材の外周に設けられたコイルとを備え、前記案内ボアの両端内周部に前記可動鉄心に当接する凸部を設けて、前記案内部と前記可動鉄心との間に前記凸部間を通る磁気通路を横切るギャップを形成し、さらに、前記案内ボアと前記可動鉄心とで前記減衰力調整弁を構成して、これら間で前記油液通路の流路面積を変化させることを特徴とする。
【0009】
このように構成したことにより、コイルの励磁によって、減衰力調整弁の弁体を兼ねる可動鉄心を移動させて、油液通路を構成する案内ボアとの間の流路面積を変化させて減衰力を調整する。このとき、コイルの励磁によって、可動鉄心が固定鉄心の案内部の径方向一側に吸引された場合でも、凸部によって案内部と可動鉄心との間に所定のギャップが確保されるので、可動鉄心と固定鉄心との吸着による摩擦力の増大を抑制することができる
【0010】
また、請求項2の発明の減衰力調整式油圧緩衝器は、上記請求項1の構成において、前記凸部の一方が、前記減衰力調整弁の流量制御を行うコントロールエッジ部を兼ねたことを特徴とする。
【0011】
このように構成したことにより、凸部によって可動鉄心を案内すると共に油液の流量を制御することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
第1実施形態について図1および図3を参照して説明する。図1および図3に示すように、減衰力調整式油圧緩衝器1は、シリンダ2の外側に外筒3を設けた二重筒構造となっており、シリンダ2と外筒3との間にリザーバ4が形成されている。シリンダ2内には、ピストン5が摺動可能に嵌装されており、このピストン5によってシリンダ2内がシリンダ上室2aとシリンダ下室2bの2室に画成されている。ピストン5には、ピストンロッド6の一端がナット7によって連結されており、ピストンロッド6の他端側は、シリンダ上室2aを通り、シリンダ2および外筒3の上端部に装着されたロッドガイド(図示せず)およびオイルシール(図示せず)に挿通されてシリンダ2の外部へ延出されている。シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2bとリザーバ4とを区画するベースバルブが設けられている。そして、シリンダ2内には油液が封入されており、リザーバ4内には油液およびガスが封入されている。
【0014】
ピストン5には、シリンダ上下室2a,2b間を連通させる油路8およびこの油路8のシリンダ下室2b側からシリンダ上室2a側への油液の流通のみを許容する逆止弁9が設けられている。また、ベースバルブには、シリンダ下室2bとリザーバ4とを連通させる油路(図示せず)およびこの油路のリザーバ4側からシリンダ下室2b側への油液の流通のみを許容する逆止弁(図示せず)が設けられている。
【0015】
シリンダ2には、チューブ10が外嵌されて、シリンダ2とチューブ10との間に環状通路11が形成されている。環状通路11は、シリンダ2の側壁の上端部付近に設けられた油路(図示せず)によってシリンダ上室2aに連通されている。また、チューブ10の側壁には開口部12が設けられている。
【0016】
外筒3の側面部には、減衰力発生機構13が取付けられている。減衰力発生機構13は、円筒状のケース14のフランジ部14a を有する一端開口部が外筒3の側壁に溶接されている。ケース14内には、フランジ部14a 側から順に互いに当接するように、通路部材15、バルブ部材16、円筒部材17およびガイド部材18が挿入されている。そして、ケース14の他端開口部内には、比例ソレノイド本体19が嵌合され、リテーナ20にねじ込まれて固定されており、比例ソレノイド本体19をガイド部材18に当接させることによって、通路部材15、バルブ部材16、円筒部材17およびガイド部材18が固定されている。
【0017】
通路部材15は、一端側の小径開口部15a がチューブ10の開口部12に嵌合されており、通路部材15内に形成された油室15b が環状通路11に連通されている。通路部材15および円筒部材17とケース14との間には、環状油路21が形成されており、環状油路21は、ケース14のフランジ部14a に設けられた油路22を介してリザーバ4に連通されている。円筒部材17の内側には、環状の副バルブ部材23が配置されており、副バルブ部材23は、その中央開口部にピン24が挿通されてナット25によってバルブ部材16に固定されている。
【0018】
バルブ部材16は、略円板状の部材で、周方向に沿って配置された複数(2つのみ図示する)の油路26が軸方向に貫通されている。バルブ部材16の一端部には、複数の油路26の内周側に環状の内側シール部27が突設され、複数の油路26の外周側に環状の弁座28が突設され、弁座28の外周側に環状溝29が形成され、さらに、環状溝29の外周側に環状の外側シール部30が突設されている。外側シール部30の外周部は、円筒部材17の内周面に当接している。また、環状溝29は、油路31によって環状油路21に連通されている。
【0019】
バルブ部材16には、内周部が内側シール部27に固定され、外周部が弁座28に着座するディスクバルブ32が設けられている。ディスクバルブ32の背面部には、環状のシールディスク33の内周部が当接され、シールディスク33の外周部が外側シール部30に当接されている。シールディスク33は、内周部がピン24に固定され複数枚積層された円板状の弁ばね34の外周部が当接されて、ディスクバルブ32とともに外側シール部30側へ押圧されている。そして、ディスクバルブ32およびシールディスク33によって、円筒部材17内にパイロット室35が形成されている。
【0020】
バルブ部材16、ディスクバルブ32、シールディスク33およびパイロット室35によってパイロット形主減衰弁A(以下、主減衰弁Aという)が構成されており、主減衰弁Aは、ディスクバルブ32が油路26からの油液の圧力を受けて開弁して、その開度に応じた減衰力を発生させ、また、パイロット室35の圧力(主減衰弁Aを閉弁させる方向に作用する)によって、その開弁圧力が調整されるようになっている。
【0021】
副バルブ部材23には、ピン24に形成された油路36および固定オリフィス37を介して、油室15b とパイロット室35とを連通させる油路38が設けられている。副バルブ部材23には、油路38の油液の圧力を受けて開弁して、その開度に応じて減衰力を発生させる常閉の副ディスクバルブ39が設けられている。また、副ディスクバルブ39には、油路38とパイロット室35とを常時連通させるオリフィス39a (切欠)が設けられている。そして、副ディスクバルブ39およびオリフィス39a によって、副減衰弁Bを構成している。
【0022】
ガイド部材18には、比例ソレノイド本体19のコイル40に対向させて、円筒状の案内部41が設けられており、案内部41内に、パイロット室35に連通する案内ボア42が形成されている。案内ボア42の内周面には、環状溝43が形成されており、環状溝43は、油路44によって環状油路21に連通されている。案内ボア42には、スプール45(弁体)が摺動可能に嵌装されている。そして、案内ボア 42 は油液通路を構成し、案内ボア42とスプール45とで可変オリフィスC(減衰力調整弁)を構成しており、スプール45を軸方向に移動させて環状溝43を開閉することによって案内ボア42と油路44との間の流路面積を調整するようになっている。
【0023】
比例ソレノイド本体19は、略有底円筒状のケース46内にコイル40が収容され、ケース46の開口部に取付けられた環状のリテーナ47によってコイル40が固定されている。リテーナ47の中央開口部には、プラグ48が取付けられ、プラグ48とケース46の底部との間に円筒状のスペーサ49が介装されている。そして、ケース46の底部の中央開口部が、ガイド部材18の案内部41を嵌合させ、プラグ48が案内ボア42に嵌装されたスプール45の一端部に対向するようになっている。
【0024】
また、スプール45の両端部とピン24およびプラグ48との間には、それぞれ圧縮ばね50,51が介装されており、圧縮ばね50,51のばね力によってスプール45がピン24側の閉弁位置へ付勢されている。スプール45には、軸方向に貫通する油路52が設けられており、その両端の油室間で油路52を介して油液を流通させることにより、スプール45が案内ボア42内を円滑に移動できるようになっている。なお、図1中、53はコイル40に通電するための導線である。
【0025】
ケース46、リテーナ47、プラグ48およびガイド部材18の案内部41は、比透磁率の大きな磁性材料からなり、これらによって固定鉄心が形成されている。スペーサ49は、非磁性体である。また、スプール45は、比透磁率の大きな磁性材料からなり、可動鉄心を兼ねており、ソレノイド本体19、ガイド部材18およびスプール45によって比例ソレノイドが構成されている。そして、これら固定鉄心および可動鉄心によって磁気通路Lが形成されており、コイル40への通電によって磁気通路Lに沿って磁束が発生し、固定鉄心を構成するプラグ48と可動鉄心であるスプール45との間に、吸引力が発生して、スプール45をばね50,51のばね力に抗して開弁方向すなわちプラグ48側へ移動させることにより、コイル40への通電電流に応じて可変オリフィスCの流路面積を調整できるようになっている。
【0026】
ガイド部材18の案内部41内に形成された案内ボア42の両端部には、SUS304またはオーステナイト等の非磁性材料(固定鉄心および可動鉄心よりも比透磁率の小さい材料)からなる環状のライナ54,55が嵌合、圧入されている。ライナ54,55は、スプール45に当接する凸部を形成し、その内周部によって、スプール45を摺動可能に案内している。案内ボア42の内径は、ライナ54,55の内径よりも50μm 程度大きくしてあり、スプール45との間に所定のギャップGが形成されている。また、ライナ54によって環状溝43の一端部が形成されている。そして、案内ボア42の環状溝43とライナ55との間隔Dにわたって形成されたギャップGが磁気通路Lすなわちコイル40の励磁による磁束を横切るようになっている。
【0027】
以上のように構成した第1実施形態の作用について次に説明する。
【0028】
ピストンロッド6の伸び行程時には、ピストン5の移動にともない、ピストン5の逆止弁が閉じ、シリンダ上室2a内の油液が加圧されて、環状通路11および小径開口部15a を通って減衰力発生機構13の油室15b へ流れ、さらに、油路36、固定オリフィス37、油路38、副減衰弁B、パイロット室35、案内ボア42、環状溝43、油路44、環状油路21および油路22を通ってリザーバ4へ流れる。このとき、シリンダ上室2a側の圧力が主減衰弁Aの開弁圧力に達すると、主減衰弁Aが開いて油液が油室15b から油路26、環状溝29および油路31を通って環状油路21へ流れる。一方、ピストン3が移動した分の油液がリザーバ4からベースバルブの逆止弁を開いてシリンダ下室2bへ流れる。
【0029】
ピストン速度が小さく、主減衰弁Aの開弁前は、副減衰弁Bおよび可変オリフィスCの流路面積によって減衰力が発生する。このとき、副減衰弁Bでは、ディスクバルブ39の開弁前においては、オリフィス39a によってオリフィス特性の減衰力を発生させ、ディスクバルブ39の開弁後は、その開度に応じて流路面積を調整してバルブ特性の減衰力を発生させる。このようにして、ピストン速度の低速域から中速域にかけて適切な減衰力を得ることができる。
【0030】
ピストン速度が大きくなり、シリンダ上室2a内の圧力が上昇して主減衰弁Aが開弁すると、その開度に応じた減衰力が発生する。このとき、可変オリフィスCの流路面積が小さいほど、圧力損失が大きく、その上流側のパイロット室35内の圧力が高くなるので、主減衰弁Aのパイロット圧力が高くなり、このパイロット圧力は、ディスクバルブ32を閉弁させる方向に作用するので、主減衰弁Aの開弁圧力が高くなる。よって、コイル40への通電電流によって可変オリフィスCの流路面積を変化させることにより、直接オリフィス特性を調整するとともに、パイロット室35の圧力(パイロット圧力)を変化させ、主減衰弁Aの開弁圧力を変化させて、バルブ特性を調整することができる。これにより、ピストン速度の低速域から高速域にわたって減衰力特性を調整することができ、減衰力特性の調整範囲を広くすることができる。
【0031】
また、ピストンロッド6の縮み行程時には、ピストン5の移動にともない、ベースバルブの逆止弁が閉じ、シリンダ下室2bの油液がピストン5の逆止弁9を開いてシリンダ上室2aに流入して、ピストンロッド6がシリンダ2内に侵入した分の油液が、シリンダ上室2a側から、上記伸び行程時と同様の流路を通って、リザーバ4側へ流れる。
【0032】
よって、上記伸び行程時と同様、ピストン速度が小さく主減衰弁Aの開弁前は、副減衰弁Bおよび可変オリフィスCの流路面積によってオリフィス特性の減衰力が発生し、ピストン速度が大きくなり、シリンダ上室2a側の圧力が上昇して主減衰弁Aが開弁すると、その開度に応じてバルブ特性の減衰力が発生する。
【0033】
そして、コイル40への通電電流によって可変オリフィスCの流路面積を変化させることにより、直接オリフィス特性を調整するとともに、パイロット室35の圧力を変化させてバルブ特性を調整することができ、ピストン速度の低速域から高速域にわたって減衰力特性を調整することができる。なお、縮み行程時は、上記伸び行程時に対してピストンロッドの受圧面積が小さいので、その分だけ上記伸び行程時よりも減衰力が小さくなる。
【0034】
このように、副減衰弁Bによってピストン速度の低速域から中速域にかけて適切な減衰力を得ることができ、可変オリフィスCの流路面積を調整することによって、伸び側および縮み側のオリフィス特性およびバルブ特性を調整することができるので、ピストン速度の低速域から高速域まで全域にわたって適切な減衰力を得ることができる。また、主減衰弁Aと副減衰弁Bとを並列に配置しているので、主減衰弁Aの開弁点とは独立して副減衰弁Bの特性を設定できるので、減衰力特性の設定の自由度を高めることができる。
【0035】
比例ソレノイドは、ガイド部材18の案内ボア42に、非磁性体からなるライナ54,55を圧入し、ライナ54,55によって可動鉄心であるスプール45を摺動可能に案内して、案内ボア42とスプール45との間にギャップGを形成しているので、コイル40の励磁による案内ボア42とスプール45との吸着を防止して、これらの間にギャップGを確保することができる。その結果、案内ボア42とスプール45との間で生じる径方向の吸引力の増大を抑制することができ、スプール45の移動を円滑にして、安定した減衰力制御を行うことができる。このとき、非磁性体であるライナ54,55は、磁気通路L(磁束)を横切るギャップGの間隔Dの外側に配置されているので、磁束への影響が小さく、比例ソレノイドの出力をほとんど低下させることがない。
【0036】
また、ライナ54,55を非磁性体としたことにより、ライナ54,55の摺動面に作動油中の鉄粉等が吸着することがなく、鉄粉等の吸着による摺動部の摩耗および作動不良を防止することができる。さらに、ライナ54が環状溝43の一端部を形成しており、可変オリフィスCの流量制御を行うコントロールエッジ部を兼ねているので、ガイド部材18とは別体のライナ54を加工することにより、高精度が要求されるコントロールエッジ部を容易に加工することができる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態について図2および図4を参照して説明する。なお、第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、ガイド部材の案内部の構造が異なる以外は同様の構造であるから、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0038】
図2および図4に示すように、第2実施形態に係る減衰力調整式油圧緩衝器56では、上記第1実施形態のライナ54,55の代わりに、ガイド部材38の案内部41の案内ボア42の両端部に、小径の摺動部57,58が一体に形成されている。摺動部57,58は、スプール45に当接する凸部を形成しており、その内周部によって、スプール45を摺動可能に案内している。案内ボア42の内径は、摺動部57,58の内径よりも50μm 程度大きくしてあり、スプール45との間に所定のギャップGが形成されている。また、摺動部57によって環状溝43の一端部が形成されている。そして、案内ボア42の環状溝43と摺動部58との間隔Dにわたって形成されたギャップGが磁気通路Lすなわちコイル40の励磁による磁束を横切るようになっている。
【0039】
このように構成したことにより、コイル40の励磁によって、スプール45が摺動部57,58に吸着された場合でも、案内ボア42とスプール45との間にギャップGが確保されるので、案内ボア42とスプール45との間で生じる径方向の吸引力の増大を抑制して、スプール45の移動を円滑にすることができる。このとき、摺動部57,58は、磁性体であるガイド部材18と一体に形成されているが、磁気通路L(磁束)を横切るギャップGの間隔Dの外側に配置されているので、摺動部57,58とスプール45との間で生じる吸引力を充分小さくすることができる。また、摺動部57,58の摺動面に作動油中の鉄粉等が吸着しにくく、鉄粉等の吸着による摺動部の摩耗および作動不良を防止することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明に係る減衰力調整式油圧緩衝器は、比例ソレノイドの可動鉄心を案内する固定鉄心の案内部に、可動鉄心に当接する凸部を設け、案内部と可動鉄心との間に磁気通路を横切るギャップを形成したことにより、比例ソレノイドの励磁によって、可動鉄心が固定鉄心の案内部の径方向一側に吸引された場合でも、凸部によって案内部と可動鉄心との間に所定のギャップが確保されるので、可動鉄心と固定鉄心との吸着による摩擦力の増大を抑制することができる。その結果、可動鉄心の移動を円滑にして、安定した減衰力制御を行うことができる。
【0041】
また、請求項2の発明に係る減衰力調整式油圧緩衝器は、上記請求項1の構成に加えて、凸部を非磁性材料からなるライナによって形成したことにより、凸部の可動鉄心との摺動面に作動油中の鉄粉等が吸着することがないので、鉄粉等の吸着による摺動部の摩耗および作動不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の減衰力調整式油圧緩衝器の要部の縦断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の減衰力調整式油圧緩衝器の要部の縦断面図である。
【図3】図1の装置の比例ソレノイドの可動鉄心を案内する固定鉄心の案内部を拡大して示す図である。
【図4】図2の装置の比例ソレノイドの可動鉄心を案内する固定鉄心の案内部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
1 減衰力調整式油圧緩衝器
2 シリンダ
5 ピストン
6 ピストンロッド
19 比例ソレノイド本体(比例ソレノイド)
41 案内部(固定鉄心、比例ソレノイド)
45 スプール(弁体、可動鉄心、比例ソレノイド)
46 ケース(固定鉄心)
47 リテーナ(固定鉄心)
48 プラグ(固定鉄心)
54,55 ライナ(凸部)
56 減衰力調整式油圧緩衝器
57,58 摺動部(凸部)
C 可変オリフィス(減衰力調整弁)
G ギャップ
L 磁気通路
Claims (2)
- 油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、一端が該ピストンに連結され他端が前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって油液を流通させる油液通路と、該油液通路の油液の流通を制御して減衰力発生させるとともに前記油液通路の流路面積を変化させて減衰力を調整可能とした減衰力調整弁と、該減衰力調整弁の弁体を駆動する比例ソレノイドとを備えてなる減衰力調整式油圧緩衝器において、
前記比例ソレノイドは、前記弁体を兼ねる可動鉄心と、内部に該可動鉄心を案内すると共に前記油液通路を構成する案内ボアが形成された円筒状のガイド部材と、該ガイド部材の外周に設けられたコイルとを備え、前記案内ボアの両端内周部に前記可動鉄心に当接する凸部を設けて、前記案内部と前記可動鉄心との間に前記凸部間を通る磁気通路を横切るギャップを形成し、さらに、前記案内ボアと前記可動鉄心とで前記減衰力調整弁を構成して、これら間で前記油液通路の流路面積を変化させることを特徴とする減衰力調整式油圧緩衝器。 - 前記凸部の一方が、前記減衰力調整弁の流量制御を行うコントロールエッジ部を兼ねたことを特徴とする請求項1に記載の減衰力調整式油圧緩衝器。
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