JP3864169B2 - 汚泥処理方法と汚泥処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、排水処理設備等から発生する有機物を含む汚泥を、微細化や可溶化することで減量化を図る汚泥処理方法と汚泥処理装置に関する。
現在我が国では、循環型社会の形成を目指して廃棄物の減量化やリサイクルを総合的に推進している。この廃棄物の中でも有機性および無機性汚泥の割合は高く、また汚泥の内の約70%が有機性汚泥である。この有機性汚泥のリサイクルや再資源化については、公共排水処理施設や大手事業所では、コンポスト化や堆肥化などが若干検討され始めているが、より小規模な施設では殆ど何も行われていない。しかし全国的に廃棄物の埋め立て地は、受け入れ余力が少なくなり新規の立地も難しいことから、汚泥処理費用も年ごとに増大してきており、汚泥が発生した原位置で簡便かつ安価に減量化できるシステムの開発が望まれている。
このような背景から多量に有機性汚泥を発生している排水処理施設において、その発生抑制技術と減量化技術の開発が行われており、その主なものは、生物群を生物的処理槽へ投入する生物法と、発生した汚泥を物理化学的方法により可溶化し、得られた溶液を再び生物的処理槽へ戻すことで分解除去する方法が挙げられる。前者の方法としては、微生物の資化作用と分泌酵素を利用した枯草菌、酵母菌や光合成菌の利用は経験的に行われてきた。また近年では、養豚場の屎尿処理から開発された微生物群による汚泥減量化法として、下記特許文献1が提案されており、また好熱性細菌による汚泥減量化システムとしては、特許文献2が提案されている。一方、物理化学的方法により汚泥中の生物の細胞を破壊して減量化を図る方法は、ミル法やオゾン法や超音波法やウオータージェット法などが提案されており、ミル法の例として特許文献3,4,5が、またオゾン法の例として特許文献6,7,8,9が、超音波法の例として特許文献10,11が、ウオータージェット法の例として特許文献12,13,14が公開されている。
特開平09−000245号公報 特開平09−234060号公報 特開平11−300393号公報 特開2000−167597号公報 特開2000−325983号公報 特開平09−234497号公報 特開平11−090496号公報 特開2001−259678号公報 特開2001−327998号公報 特開2002−361281号公報 特開2003−200198号公報 特開2001−212599号公報 特開2001−314887号公報 特開2003−010890号公報
排水処理施設内で有機性汚泥の発生抑制並びに発生した汚泥の処理を実現しようと、平成8年以降急速に多くの技術が開発されてきた。しかしいずれの技術も、汚泥発生率を従来の10〜20%にまで減量化可能としているが、ほとんど実用化には至っていないのが現実である。これは生物的処理の場合、排水処理施設内の生物的処理槽に減量化菌を添加しても、槽内の菌相はあまり変動しない、あるいは継続的に添加しても優先化しない問題があり、実際の効果が明確でないことが理由である。さらに紙などのセルロース成分に代表される固形成分(以下、SSと表記)は、生物的処理槽での分解が難しく減量化が困難である。
一方のミル法・オゾン法・超音波法等の物理化学的処理は、全般に装置が高価で、費用の面から実施が難しいという問題がある。加えてビーズと汚泥との摩砕により汚泥を可溶化するミル法は、汚泥スラリーの微細化効率は良いものの、可溶化率が低い上に装置の大型化が難しいといった問題がある。また促進酸化法の一種であるオゾン法は、簡便で汚泥のみならず難分解性物質の分解も同時に行えることから有益性は高いが、オゾン発生器が高価で、しかも排オゾンの処理装置も別途必要になる問題がある。そのほか超音波法は、汚泥の微細化率、可溶化率ともに高いが、設備が極めて高価で、さらに超音波による熱や音の対策も必要になる。最後にウオータージェット法は、汚泥スラリーを高圧状態にした後、ノズルを介して水中に吹き出し、その際の圧力差により生じるキャビテーションで破壊する方法で、汚泥スラリーを微細化する能力は高いものの、汚泥の可溶化率はキャビテーションの発生量に依存するため、効果的な汚泥の破砕には高出力のポンプを必要とする。このように各汚泥減量化技術には、一長一短があり、より画期的な技術の登場が期待されている。
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、一般排水処理施設や中小事業所の排水処理装置に増設可能な単純な構造で、汚泥の減量化効率が高く、低コストで設置可能な汚泥処理方法と汚泥処理装置の提供を目的としている。
前記の課題を解決する請求項1記載の発明は、汚泥スラリーをポンプで加圧してノズル内に送り込み、該ノズル先端の噴射口に対向して配置された衝撃板に向けて汚泥スラリーを噴射して、該衝撃板との衝突により汚泥スラリーを微細化する第一工程と、該微細化して飛散する汚泥スラリーに向けて酸化剤を噴霧して粒子状になった汚泥スラリーを酸化剤で取り囲み分解を促進する第二工程と、の両工程を密閉されたリアクタ中で連続的に実施することを特徴とする汚泥処理方法である。
ここでポンプは、入口側から泥水状の汚泥スラリーを吸い込んで加圧をして、出口側から吐き出す構造である。またポンプから出た汚泥スラリーはノズルの中に送られるが、このノズルは一般のものと同様、下流に向かうに連れ内部の断面積が小さくなっており、流体が加速される。そして衝撃板は、ノズルから噴射された汚泥スラリーを衝突させるためのもので、ノズルからの噴射に対して直交していることが望ましく、また衝突による摩耗を減らすため硬質の素材を使用する。
このような第一工程によって、汚泥スラリーがノズルから噴射された際、周囲の圧力が大気圧まで下がり、急激な膨張が引き起こされキャビテーションが発生して、この衝撃により汚泥スラリーの微細化が始まる。さらにノズルから噴射された後、所定の距離を飛ぶと衝撃板に叩きつけられ、この際の衝撃でも物理的に破壊され、微細化が一層促進されるため減量化も実現する。また微細化によって可溶化も促進される。
本発明は第一工程だけではなく、この第一工程によって微細化して飛散する汚泥スラリーに向けて酸化剤を噴霧する第二工程を加えており、しかも両工程は密閉空間であるリアクタの中で行われることが特徴である。ノズルから噴射された汚泥スラリーは、前記のように次第に微細化と拡散が進んで行くが、この際、飛散している汚泥スラリーに目がけて、ガス状または霧状の酸化剤を噴霧する。このように構成することで、粒子状の汚泥スラリーが酸化剤に取り囲まれて、細胞の破壊など様々な化学的作用が発生して微細化が進む。なお酸化剤の例としては、過酸化水素や次亜塩素酸やオゾンなどが挙げられる。ただしオゾンを使用する場合も、従来のオゾン法とは異なり使用量を大幅に削減できる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明を実現するためのもので、汚泥スラリーを吸入して加圧するためのポンプと、前記ポンプによって加圧された汚泥スラリーを噴射するためのノズルと、前記ノズル先端の噴射口に対向するように配置された衝撃板と、前記ノズルと前記衝撃板を収納して且つ内部の汚泥スラリーを抜き取るための排出口を備えた密閉容器であるリアクタと、前記ノズルから噴射され前記衝撃板との衝突によって微細化して飛散する汚泥スラリーに向けて酸化剤を噴霧する添加ノズルと、前記添加ノズルに酸化剤を供給する注入手段と、から構成されていることを特徴とする汚泥処理装置である。リアクタは中空の箱形で水密構造になっており、内部にはノズルと衝撃板が所定の位置に配置できる構造になっている。なお処理された汚泥スラリーを抜き出すため、リアクタの内外を貫通している排出口を備えている。
添加ノズルは、その先端がリアクタ内に差し込まれており、衝撃板との衝突によって微細化して飛散する汚泥スラリーに向けて酸化剤を噴霧する。また注入手段は、規定量の酸化剤を正確に送り込むため計量器や加圧装置などから構成されており、オゾンを使用する場合はオゾン発生装置もこれに含まれる。このように構成することで、化学反応を利用して汚泥スラリーの更なる削減が可能になる。
前記のSS(セルロース成分に代表される固形成分)は、分解が難しく余剰汚泥の成分となる割合が高い。請求項3記載の発明はこれに対応するもので、ポンプには、汚泥貯槽に蓄積された汚泥スラリーを取り入れるための吸入管が接続され、またリアクタの排出口には、処理後の汚泥スラリーを汚泥貯槽に戻すための排出管が接続されている汚泥処理装置である。
ここで汚泥貯槽とは、前記のリアクタとは別に設置されるもので、水密性が確保されており汚泥スラリーを蓄積できる容器である。また吸入管は、汚泥貯槽とポンプを結んでいる配管類で、これを通って汚泥スラリーはポンプに送られ、加圧された汚泥スラリーはリアクタ内に噴射される。そして排出管は、リアクタの排出口と汚泥貯槽を結んでいる配管類で、リアクタ内の汚泥スラリーは、ここを通って元の汚泥貯槽に戻される。このように構成することで、汚泥スラリーを循環的にリアクタの中を通過させることが可能で、一度の処理では微細化が進みにくいSS成分なども、段階的に微細化が実現する。
請求項4記載の発明は、汚泥スラリーの処理能力を一層高めるもので、汚泥貯槽には、生物的処理槽の下流側に設置されている沈降分離槽で沈殿した汚泥スラリーを取り入れるための抽出管が接続され、また前記リアクタもしくは排出管には、処理された汚泥スラリーを生物的処理槽に戻すための戻し管が接続されている汚泥処理装置である。ここで生物的処理槽と沈降分離槽とは、従来から排水処理設備として使用されているもので、微生物の作用を利用して分解を行う生物的処理槽を通過した汚泥スラリーは、沈降分離槽に送られる。そして沈降分離槽の底に堆積した沈殿物は処理途中の状態であり、再び生物的処理槽に戻される。本発明記載の抽出管は、この戻される汚泥スラリーの一部を請求項3に記載した汚泥貯槽に送るもので、また戻し管は、リアクタから排出された汚泥スラリーを生物貯槽に戻すものである。このように構成することで、リアクタを通過した糖類やタンパク質などが微細化され、生物的処理に適した状態になり、生物的処理槽での処理能力が拡大する。
請求項1記載の発明の第一工程のように、汚泥スラリーをノズルから噴射して衝撃板に衝突させることで、まず噴射時の急激な膨張によって生じるキャビテーションにより汚泥スラリーの粒子成分が破壊されて微細化する上、さらに衝撃板への衝突による衝撃でも微細化が進み、減量化が推進される。また第二工程のように、ノズルから噴射された汚泥スラリーに酸化剤を混合することで、各種成分の分解や汚泥スラリーに含まれる微生物の細胞や細胞内成分を破壊できる。しかも本発明は、第一工程と第二工程とを巧みに組み合わせて、汚泥スラリーが衝突によって微細化している極めて限られた状態を狙って酸化剤を噴霧することによって、粒子状になった汚泥スラリーを酸化剤で確実に取り囲むことができるので、酸化作用による細胞の破壊など各種の化学変化が効率よく発生して、微細化や可溶化が一段と促進される。
請求項2記載の発明のような装置を用いることで、請求項1記載の発明が実現する。これによる装置は、リアクタやノズルなどの大きさや配置などに制約が少なく、装置設計の自由度が高いため既存の排水処理設備へ導入することが容易で、しかも特殊な部品や機器を使用しないため、導入時や維持管理に要する費用も抑制できる。またオゾンなどの酸化剤についても、汚泥スラリーの微細化により処理効率が向上するため、その使用量を削減できコストを抑えやすい。
請求項3記載の発明のように、リアクタと汚泥貯槽との間で汚泥スラリーを循環させることで、SS成分など、これまで分解が難しかった成分も、繰り返してリアクタを通過することで微細化が促進され、一層の汚泥の減量化が実現する。
請求項4記載の発明のように、生物的処理槽の下流にある沈降分離槽の沈殿物の一部をリアクタに導入することで、汚泥スラリーに含まれる糖類や蛋白質などが微細化や可溶化によって再基質化され、これが生物的処理槽に戻ることで微生物によって処理されるようになり、生物的処理槽での処理能力が向上して、汚泥の減量化が実現する。
本発明を実現する装置は、基本的に図1に示すような構成である。前工程で発生した生汚泥・返送汚泥・余剰汚泥などから構成される泥水状の汚泥スラリーSは、ダイヤフラム式・プランジャー式・ルーツ式などによる汎用的なスラリーポンプ(以下、ポンプ1)によって吸い上げられてノズル2の中に圧送されるが、この際、所定の反応が発生するよう0.2〜10MPaに加圧できる性能が必要である。ノズル2はリアクタ5の内外を貫通しており、基端部が外側に突出しており、ここから汚泥スラリーSが内部に注入され、反対側の先端部には汚泥スラリーSを外部に放出する噴射口3が形成され、この噴射口3付近は増速のため先細り形状になっている。なおノズル2は、加圧された汚泥スラリーSとの激しい摩擦に備えて、ステンレス鋼や超硬合金や硬質セラミックスの使用が望ましく、理想的な噴射口3の直径は0.1〜10mmだが、SS成分を多く含む一般生活排水の場合は3〜5mmが最適であり、またSS成分の含有が少ない場合は1〜3mmが最適である。そのほかノズル2については、単に流体を加速させる以外に、キャビテーションの発生や空気との混合など、様々な機能を備えた機種が商品化されており、本発明でもこれらを使用可能である。一例としてスタティックミキサーをノズル2として使用できる。
ノズル2先端の噴射口3の延長線上には、汚泥スラリーSを衝突させるため衝撃板4が設置されている。この衝撃板4は、衝突時の衝撃を極力大きくするため、汚泥スラリーSの噴射方向に対して直角に配置されており、激しい流れに対抗するため、SUS304などのステンレス鋼やセラミックスやチタン合金など、摩耗の少ない硬質の素材を使用しており、摩耗を考慮して10mm程度の厚さが確保されている。また汚泥スラリーSが直接ぶつかる衝撃板4の表面は平面で問題ないが、複雑な反射を引き起こしたい場合、ヤスリなどで微細な傷を付けたり、起伏を付けてもよい。なおノズル2の噴射口3と衝撃板4の距離は、0.5mm〜10cmが望ましく、最も汚泥の破砕効果が顕著なのは5mmと実験より判明している。ノズル2から噴射された汚泥スラリーSは、急速な膨張によるキャビテーションと、衝撃板4にぶつかった際の衝撃力により、微細化と可溶化が促進される。
そのほかリアクタ5は、内部にノズル2と衝撃板4が収納され、一連の処理を行なうための容器であり、気密性や耐久性を考慮してステンレス鋼を使用しており、ノズル2を保持する取付具や、反応後の汚泥スラリーSを外部に放出するため壁面に孔を開けて形成した排出口6を備えている。また図中に示すように、リアクタ5内の温度を高めて処理能力を向上するため、ヒータ21等による温度調整器を取り付け、温度センサ22によるフィードバックを行い、定温を維持することも可能である。
さらに添加ノズル7がリアクタ5の内外を貫通しており、この先端からオゾンなどの酸化剤9をリアクタ5内部に放出できる機能を備えている。この添加ノズルに7には、酸化剤9の発生や放出量の管理など各種機能を備えた注入手段8が接続されており、自動的に規定量の酸化剤を所定の圧力でリアクタ5に送ることができる。なお酸化剤9は、過酸化水素水や次亜塩素酸やオゾンが一般に用いられており、その添加量については、リアクタ5の容量が5リットル(リットルは以下、Lと表記)で30wt%の過酸化水素水の場合、毎時0.1〜3gが望ましく、また5wt%の次亜塩素酸水溶液の場合、毎時0.3〜30gが望ましい。またオゾンガスを用いる場合、過剰供給による未反応オゾンの残留を防止するため、リアクタ5の容量が5Lでオゾン封入量は毎分0〜1.5L、オゾン発生量は毎時0.10〜1.0g、オゾン発生濃度は0.5〜1.50wt%程度でよい。リアクタ5内で微細化して飛散する汚泥スラリーSは、酸化剤9に取り囲まれて、酸化作用による細胞膜の破壊など各種の化学変化が発生して、微細化や可溶化が促進される。
図2は、汚泥貯槽10と図1に示す汚泥処理装置を組み合わせた処理装置の構成を示す。汚泥貯槽10は、生汚泥や余剰汚泥や濃縮汚泥などが混ざり合った汚泥スラリーSを蓄積する槽で、ここに汚泥スラリーSを抜き取るための吸入管13と、汚泥スラリーSを投入するための排出管14が接続されている。吸入管13は、一端が汚泥貯槽10の底部付近に差し込まれており、他端がポンプ1に接続しており、ポンプ1を作動させると汚泥貯槽10の汚泥スラリーSを吸い込んでリアクタ5内に噴射して、所定の反応が発生する。また排出管14は、汚泥貯槽10の上部とリアクタ5の排出口6を結んでおり、リアクタ5内で処理された汚泥スラリーSは、再び汚泥貯槽10に戻される。したがってポンプ1を作動し続けると、汚泥スラリーSは何度もリアクタ5を通過することになり、都度微細化が行なわれるため、汚泥容量を軽減でき固体成分の割合を低減できる。
図3は、図2に示す汚泥貯槽10を用いた汚泥処理装置の処理能力を実験した際の結果を示すグラフである。この実験では実汚泥を濃縮してMLSS(汚泥濃度)11000mg/Lの汚泥スラリーを使用しており、またノズル2先端の噴射口3の直径1.0mm、ノズル2先端と衝撃板4の距離5mm、ポンプ1からの吹出圧力3.5MPa、ノズル2からの吹出速度91m/sとして、添加ノズル7から放出する酸化剤9にはオゾンガスを用いており、この封入量を0〜1.5L/minの範囲で変化させている。
図3(A)は、オゾンガスの封入量だけを変化させた場合、汚泥スラリーSのMLSSがどのように変化するかを示すグラフであり、横軸が処理を開始してからの経過時間で、縦軸がMLSSである。この実験に先立ち所定の汚泥スラリーSを汚泥貯槽10に投入して、ポンプ1の作動に合わせてオゾンガスを規定量だけリアクタ5に封入している。処理開始時から10分が経過するまでは、いずれの条件でもMLSSは速やかに約9000まで減少しているが、オゾンガスを封入していない場合、その減少は停止して汚泥の減量化はそれ以上進行しない。一方、オゾンガスを封入した場合、図のように封入量に比例してMLSSは順調に減少していき、オゾンガスを1.5L/min封入した場合、120minでMLSSが半減、つまり汚泥量が半減した。
また図3(B)は、汚泥内容物の溶出の指標である処理汚泥スラリーSの溶液側のTOC(全有機炭素)の変化を示すグラフであり、横軸が処理を開始してからの経過時間で、縦軸がTOCである。グラフのようにTOCは、オゾンガスの封入量による違いはあるが、処理時間の経過に伴って増加していることが判明し、汚泥スラリーSの可溶化が進行していることが確認できる。したがって本発明のような、酸化剤9の微量供給を組み合わせた汚泥処理装置によって、一層の汚泥の減量化が実現でき、しかも汚泥内容物の溶出も増加したことが実証された。
図4は、生物的処理槽11と図2に示す汚泥処理装置を組み合わせた処理装置の構成を示す。生物的処理槽11で汚泥スラリーSは微生物によって分解され、ここを通過した汚泥スラリーSは沈降分離槽12に流れ込む。ここでは流れ込んだ汚泥スラリーSを、上澄み液と沈殿物に分離して、上澄み液は次の工程に送られていき、一方の沈殿物は循環管15を通って再び生物的処理槽11に送られ、再度の処理が行われる。以上は従来から実施されている方法だが、本発明では、循環管15を通過する沈殿物(以下、汚泥スラリーSと表記)の一部をリアクタ5に導入して処理を行っている点が特徴である。循環管15の途中から新たな配管である抽出管16が分岐しており、これによって汚泥スラリーSは汚泥貯槽10に送られる。なお抽出管16の途中にはバルブ18を備えており、汚泥貯槽10に送られる流量を調整できる。
汚泥貯槽10から先のポンプ1やリアクタ5は、図2などと同様だが、処理後の汚泥スラリーSを汚泥貯槽10に戻すための排出管14の途中から、新たな配管である戻し管17が分岐しており、この戻し管17の末端は循環管15に合流している。したがって処理後の汚泥スラリーSは、戻し管17から循環管15を経て生物的処理槽11に戻る。なお排出管14と戻し管17の分岐点の下流側には、排出管14側にバルブ19を、戻し管17側にバルブ20を備えており、双方のバルブ19,20の開度を管理することで、汚泥スラリーSの処理回数を調整できる。
図5は、図4に示す汚泥処理装置を用いて汚泥スラリーSを処理した際の実験結果で、生物的処理槽11の容量50Lとしたベンチスケールで二週間以上馴化した汚泥スラリーSのうち、10Lを毎日一回リアクタ5に通して処理した時の生物的処理槽11内のMLSSを、継続的に測定した。この際の測定結果を図中の「Test」に示す。なお比較としてリアクタ5を通さない場合を「Control」とした。また初期のMLSSは2800mg/Lとして、その他の条件は図3と同様である。リアクタ5を通さない場合、MLSSは次第に増加して、処理開始後25日目に4200mg/Lに達した。一方でリアクタ5を通した場合、MLSSに大きな増加は認められず、処理開始後25日目の値は処理開始時とほぼ等しく、汚泥の蓄積は全く確認できない。このように図4のような汚泥微細化装置を用いることで、汚泥の発生量を軽減できることを実証した。
本発明による汚泥処理装置の基本原理と構成を示す図である。 汚泥貯槽と図1に示す汚泥処理装置を組み合わせた処理装置の構成を示す図である。 図2のような汚泥処理装置による処理能力を実験した際の結果を示すもので、(A)は、オゾンガスの封入量だけを変化させた場合、汚泥スラリーのMLSSがどのように変化するかを示すグラフであり、横軸が処理を開始してからの経過時間で、縦軸がMLSSである。また(B)は、汚泥内容物の溶出の指標である処理汚泥スラリーの溶液側のTOCの変化を示すグラフであり、横軸が処理を開始してからの経過時間で、縦軸がTOCである。 生物的処理槽と図2に示す汚泥処理装置を組み合わせた処理装置の構成を示す図である。 図4の処理装置を用いて汚泥スラリーを処理した実験結果を示すグラフであり、横軸が処理を開始してからの日数で、縦軸がMLSSである。
符号の説明
1 ポンプ
2 ノズル
3 噴射口
4 衝撃板
5 リアクタ
6 排出口
7 添加ノズル
8 注入手段
9 酸化剤
10 汚泥貯槽
11 生物的処理槽
12 沈降分離槽
13 吸入管
14 排出管
15 循環管
16 抽出管
17 戻し管
18 バルブ(抽出管の途中)
19 バルブ(排出管の途中)
20 バルブ(戻し管の途中)
21 ヒータ
22 温度センサ
S 汚泥スラリー


Claims (4)

  1. 汚泥スラリー(S)をポンプ(1)で加圧してノズル(2)内に送り込み、該ノズル(2)先端の噴射口(3)に対向して配置された衝撃板(4)に向けて汚泥スラリー(S)を噴射して、該衝撃板(4)との衝突により汚泥スラリー(S)を微細化する第一工程と、該微細化して飛散する汚泥スラリー(S)に向けて酸化剤(9)を噴霧して粒子状になった汚泥スラリー(S)を酸化剤(9)で取り囲み分解を促進する第二工程と、の両工程を密閉されたリアクタ(5)中で連続的に実施することを特徴とする汚泥処理方法。
  2. 汚泥スラリー(S)を吸入して加圧するためのポンプ(1)と、前記ポンプ(1)によって加圧された汚泥スラリー(S)を噴射するためのノズル(2)と、前記ノズル(2)先端の噴射口(3)に対向するように配置された衝撃板(4)と、前記ノズル(2)と前記衝撃板(4)を収納して且つ内部の汚泥スラリー(S)を抜き取るための排出口(6)を備えた密閉容器であるリアクタ(5)と、前記ノズル(2)から噴射され前記衝撃板(4)との衝突によって微細化して飛散する汚泥スラリー(S)に向けて酸化剤(9)を噴霧する添加ノズル(7)と、前記添加ノズル(7)に酸化剤(9)を供給する注入手段(8)と、から構成されていることを特徴とする汚泥処理装置。
  3. 前記ポンプ(1)には、汚泥貯槽(10)に蓄積された汚泥スラリー(S)を取り入れるための吸入管(13)が接続され、また前記リアクタ(5)の排出口(6)には、処理後の汚泥スラリー(S)を汚泥貯槽(10)に戻すための排出管(14)が接続されていることを特徴とする請求項2記載の汚泥処理装置。
  4. 前記汚泥貯槽(10)には、生物的処理槽(11)の下流側に設置されている沈降分離槽(12)で沈殿した汚泥スラリー(S)を取り入れるための抽出管(16)が接続され、また前記リアクタ(5)もしくは排出管(14)には、処理された汚泥スラリー(S)を生物的処理槽(11)に戻すための戻し管(17)が接続されていることを特徴とする請求項3記載の汚泥処理装置。
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