JP3862866B2 - 冷蔵装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた抗菌性および消臭性を有する冷蔵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の清潔、衛生思考に伴い、衣類、文房具、台所用品などに抗菌性を付与したものが増えている。また、化粧品や石鹸、整髪料などは無臭、もしくは好みの香りを使用することが一般的になってきている。この傾向は住空間にも当てはまる。エアコンや空気清浄機には、部屋の空気を脱臭する機能、カビやホコリを除去する機能を、さらにそれらを除去するフィルタには抗菌性を付与している。そのほかにも暖房機には脱臭機能、電気カーペットや掃除機、洗濯機には抗菌機能が付与されている。台所で使用する電子レンジでは脱臭機能、調理関連小物商品では抗菌機能、冷蔵庫では抗菌と脱臭の両機能が付与されている。
【0003】
冷蔵庫に抗菌機能を付与するには、銀系抗菌剤などを冷蔵庫の部材に練り込む方法が一般的である。しかし、これでは部材自身が抗菌性を帯びるだけであり、冷蔵庫内雰囲気を抗菌性にするわけではない。また、この銀系抗菌剤は菌と直接接触しないと効果を発揮しないという欠点がある。以前調査したところ、冷蔵庫内の細菌はほとんどが、部材ばかりでなく食品にも付着しているという結果であった。すなわち、銀系抗菌剤による抗菌方法では、部材に対して効果があったとしても、食品に付着している細菌には効果がないということになる。つまり、食品の表面では細菌が繁殖し、食品劣化を促進することとなる。
【0004】
また、銀系抗菌剤は細菌に対して効果はあるが、カビに対してはほとんど効果がない。一般に、通常の雰囲気では、細菌が浮遊していることはほとんどなく、浮遊しているのはカビの胞子が多いと言われている。つまり、冷蔵庫の扉を開閉した際に庫内に進入するのは細菌よりカビの方が多いということである。このような場合、銀系抗菌剤では庫内に進入したカビの繁殖を阻止することは不可能である。
【0005】
こうした銀系抗菌剤ではなく、有機系の抗菌剤を用いることも考えられる。これらを冷蔵庫に搭載するには塗料化して部材に塗布する、部材に練り込む、もしくは別容器に入れて庫内へ設置する等の方法が考えられる。塗料化及び部材練込み方法は製造行程での薬剤のロスが大きく、完成品の添加量にバラツキが生じる。ロス分を見越して多量に添加すると製造装置へ影響が生じたり、作業環境の悪化等の問題がある。また、別容器に収納して庫内へ設置する方法では庫内容積が減少する、新たに容器用の部品、取り付けのための構造変更などが必要となるなどの問題が生じる。さらに、これらは常に成分を放出するため、そのまま搭載すると寿命が短いという欠点もある。
【0006】
これらの対策として、マイクロカプセルなどで薬剤を内包して使用する方法もあるが、従来のマイクロカプセルは有機膜で薬剤を完全に内包し、何らかの手段でその膜を破壊して中心の成分を徐放するものである。しかしこれらは、カプセル形成膜が有機物なので熱に弱く、強度が低いため塗料化や練り込み成形では膜が破壊されて成分が放出する恐れがある。一方、このマイクロカプセル入り薬剤を別容器に入れて庫内へ設置した場合にはカプセル形成膜の破壊がうまく実施されにくく、効果を発揮しにくい。
【0007】
また、マイクロカプセルではなく、容器の一部をガス透過膜で覆った容器内に有機系薬剤を封入して庫内へ設置した例もあるが、ガス透過膜は薄いフィルムのため、破れやすい欠点がある。その結果、薬剤の寿命が短くなる、薬剤と食品が直接接触するなどの不具合が生じる。
【0008】
そのほか、冷蔵庫の抗菌機能としては、オゾンや紫外線ランプを搭載する方法も考えられるが、コストが高くなる、設置場所によっては容積の減少や構造設計の変更が伴う、部材に与える影響が大きいため材料変更の必要がある、食品への影響が大きい、扉開閉時のユーザーへの安全性対策が必要である等々の問題点が多いため得策ではない。
【0009】
一方、冷蔵庫の脱臭機能は触媒を内箱裏側のダクト内に設置する方法が一般的である。この方法は臭気を冷気吸い込み口より引き入れ、触媒で吸着、分解し、無臭の冷気を吹き出し口から庫内へ放出するものである。しかし、触媒層を1回通過させるだけで冷蔵庫内全体の臭気を脱臭するのは困難で、かなりの循環回数を必要とする。さらに、庫内では臭気が常時発生しているため、完全に脱臭することは不可能である。そのほかオゾン脱臭方式もあるが、これにも上述したような欠点があるため、現実的ではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の問題を解決するためになされたものであり、安全性が高く、装置の容積減少や大幅な構造設計を変更することなしに、長寿命の抗菌、消臭などの機能を付与することが可能な冷蔵装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の冷蔵装置は、無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を冷気吹き出し口付近に設けた冷蔵装置であって、中空粒子内には揮発性の薬剤が充填されており、かつ、無機成分からなる多孔質壁が銀化合物で形成されていることを特徴としている。また、本発明の冷蔵装置は、無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を冷気吹き出し口付近に設けた冷蔵装置であって、揮発性の薬剤が充填された中空粒子が冷蔵装置の部材に練り込まれ、あるいは、塗布されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の冷蔵装置の冷気吹き出し口付近に設けられた中空粒子において、薬剤を覆う多孔質壁が無機成分であるため、摩擦や衝撃により薬剤が露出しにくく、薬剤が食品と直接接触する恐れがなく安全である。さらに薬剤成分が吹き出し口から出る冷気にのって短時間で庫内に行き渡る。また、薬剤が徐放されるため、長期にわたってその効果が得られる。しかも、冷気吹き出し口は最低温部であるため過剰に薬剤が揮発して放出されることを防ぐ。
【0013】
本発明の冷蔵装置において、揮発性の薬剤は抗菌性および/または消臭性を有している。この冷蔵装置によれば、庫内が衛生的となり、食品の保存期間を長くすることができる。また、庫内の臭気が低減される。
【0014】
本発明の冷蔵装置において、揮発性の薬剤はシソ科植物抽出成分である。この冷蔵装置によれば、抗菌および/または消臭を天然成分であるシソ科植物抽出成分で行うため安全性が高い。
【0015】
中空粒子内に内包される薬剤は抗菌および/または消臭機能を有するものであれば基本的には何でも良い。しかし、冷蔵庫に適用することを考慮すると合成成分よりも天然抽出成分の方が好ましく、食品であるスパイス類は安全性が高い。具体的には、ユーカリ、タイム、ローズマリー、クローブ、シナモン、ヒノキ、オレガノ、セージ、バジル等のシソ科ハーブが例示される。中でも石炭酸係数の高いタイムが最適である。石炭酸係数とは、消毒などによく使用される石炭酸の殺菌力を1とした場合の係数である。これらハーブに含有される抗菌性を有する精油成分としてはチモール、カルバクロール、ペリルアルデヒド、イソボルネオール、オイゲノール、バニリン、シンナムアルデヒド等が挙げられる。この他、食品であるお茶の抽出成分も好ましい。
【0016】
本発明の冷蔵装置において、揮発性の薬剤は快適臭気を放出する。この冷蔵装置によれば、扉を開けたときの庫内の臭気が低減されると共に、快適な臭いがするため、アロマテラピーの効果が得られる。このように、好みの臭気を発する薬剤を用いた場合は、冷蔵庫扉を解放するたびに好ましい香りの空気が流れでることとなる。この場合の内包される薬剤も何でも良いが、やはり天然抽出成分の方が適すると考える。冷蔵庫に適用することから、レモンやオレンジなどの柑橘系の臭気やミント系の臭気が好ましい。これらの臭気は、アロマテラピーの分野ではリラックス効果と同時に活力を与える効果があると言われており、使用者に良い影響を与える効果もある。
【0017】
本発明の冷蔵装置において、無機成分からなる多孔質壁はアルカリ土類金属塩、金属酸化物で形成されている。このような材料で形成された中空粒子を添加すると、成形部品の強度向上につながる。
【0018】
本発明の冷蔵装置において、無機成分からなる多孔質壁は銀化合物で形成されている。中空粒子の外壁の無機成分としては安全性の高い銀、銅、亜鉛のような金属及びその酸化物等が適しており、中でも安全性を考慮すると銀が最も好ましい。
【0019】
本発明の冷蔵装置の一態様において、中空粒子を冷蔵装置の部材に練り込む。中空粒子を部材に練り込むことにより、庫内容積の有効利用が可能となるばかりでなく、練り込んだ部材の強度を向上させることができる。部材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等のプラスチック類が例示されるがこれに限られるものではない。
【0020】
中空粒子を冷蔵装置の部材に塗り込む場合には、中空粒子の内部壁面孔径は1μm以下、より好ましくは0.1μm〜1μmとする。この大きさであると、中空粒子に内包される薬剤の寿命を長くすることができ、薬剤の放出速度を最適化することができる。
【0021】
中空粒子を冷蔵装置の部材に塗り込む場合には、中空粒子の外径は10μm以下、より好ましくは2〜8μmとする。また、中空粒子を冷蔵装置の部材に塗り込む場合の練り込み量は30%以下、より好ましくは5〜30%とする。これらの値であると、成形性が良好であり、部材への影響がない。
【0022】
本発明の冷蔵装置の一態様において、中空粒子を冷蔵装置の部材に塗布する。すなわち、中空粒子を塗料化して、部材に塗布してもよい。この部材は、練り込む場合と同様に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック類が例示されるがこれに限られるものではない。
【0023】
この方法によれば、成形条件や装置等を従来通り変更なく用いることができる。また、練り込み成形に比べ、表面にのみ中空粒子を存在させることができるため、中空粒子のロスが少なくなる。
【0024】
中空粒子を塗料化する場合には、中空粒子の外径が5μm以下、より好ましくは2〜3μmとする。また、中空粒子を塗料化する場合の中空粒子の塗料添加量は50%以下、より好ましくは5〜30%とする。これらの値であると、塗料化が容易であり、塗料の安定性が良好である。
【0025】
以上のように、本発明の冷蔵装置によれば、抗菌および/または消臭機能を有する揮発性薬剤を練り込んだり、塗料化するため、庫内容積を有効に利用できる上に、大幅な構造設計の変更をする必要がない。
【0026】
本発明の冷蔵装置において、中空粒子を練り込み、または塗布した冷蔵装置部材は着脱可能である。この冷蔵装置によれば、薬剤の効果が低下した場合に容易に交換することができる。
【0027】
本発明の冷蔵装置において、扉開閉後は冷気の吹き出し風量が増加する。冷蔵装置の扉を開けると、揮発性薬剤の庫内濃度が下がるため、扉を閉めたら冷気の吹き出し風量を増加させることによって、揮発性薬剤の庫内濃度を上げて元に戻すことにより薬剤の効果を効率よく発現させることができる。
【0028】
本発明の冷蔵装置の一態様によれば、無機成分からなる多孔質壁の中空粒子内に天然抽出成分からなる抗菌性、消臭性等を有する揮発性薬剤を充填し、冷蔵庫部材に練り込んで成形する。冷蔵庫部材の中でも、着脱可能な冷気吹き出し口部品に練り込むと、薬剤の効果が低下した場合には交換することができる。
【0029】
練り込み成形の際、本発明に用いられる中空粒子は外壁が無機成分であるため、従来のマイクロカプセルのように、成形時の温度や圧力によって破壊されて内部の薬剤が放出することがない。
【0030】
本発明に用いられる粒子は練り込んだ部材表面に点在している。しかしながら、薬剤は粒子の中心にあるため、食品に直接触れる恐れがなく安全性が高い。また、粒子の表面は硬い無機成分で形成されているため、摩擦に強くて破壊されにくく、中から薬剤が一気に放出されることはない。
【0031】
薬剤は、多孔質壁の孔から徐々に放出されて、冷蔵庫内の冷気の循環に伴って庫内に広がり、庫内全体が抗菌および/または消臭されて、部材や食品に付着した細菌の繁殖を抑制したり、庫内の悪臭を包み込んで和らげる。薬剤は徐放されるため、その効き目が長期にわたって得られる。
【0032】
本発明に用いられる多孔質中空粒子を形成する無機成分としてはアルカリ土類金属の炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硫酸塩や金属酸化物、金属水酸化物、その他の金属が炭酸塩や珪酸塩が使用可能である。具体的には炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸バリウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウムなどである。樹脂への添加剤としてはいずれも可能であり、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
さらに冷蔵庫内で紫外線照射が可能な場合は、光触媒である酸化チタンで多孔質中空粒子外壁を形成すれば、同時に脱臭、抗菌、汚れ防止効果がある。
【0034】
本発明に用いられる多孔質中空粒子の製造方法について説明する。上述した無機成分の物水溶液と有機溶剤、界面活性剤でエマルションを作り、これに他の溶液を添加すると外殻が形成される。その後界面活性剤や副生成物を除去すると多孔質で中空の粒子となる。続いて減圧下で中空粒子に目的の薬剤を注入し、薬剤を内包した無機成分からなる多孔質外壁を有する中空粒子が完成する。
【0035】
また、本発明に用いられる塗料は熱や圧力に強いため、スプレー方式、ディッピング方式、各種ローラーコーター方式やスクリーン印刷など、一般にプラスチックに塗布する方法であればいずれの方式でも塗布することが可能である。
【0036】
尚、本発明の冷蔵装置には、冷凍室や製氷室、低温冷蔵室等が設置されていてもよい。また、冷蔵装置の材質や形状、大きさ等は特に制限されない。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、家庭用冷蔵庫に応用する場合を想定して本発明を具体的に説明する。
【0038】
まず、本発明に用いられる無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を部材に練り込んだものと、マイクロカプセルを部材に練り込んだものとを比較する。
【0039】
参考例1]
図1に示すような孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをポリプロピレン(PP)に10%練り込み、冷気吹き出し口部品と平板を成形した。この平板から30mm角のプレートを切り出し試験片とした。
【0040】
参考
図9に示すようなタイム抽出成分を内包し外壁がゼラチンからなるマイクロカプセルを参考例1と同様にPPに10%練り込み、冷気吹き出し口部品と平板を形成した。この平板から30mm角のプレートを切り出し試験片とした。
【0041】
<抗菌性試験>
参考例1および参考の試験片と大腸菌10個/mlを塗布した50mm角のプレートを1000リットルの容器にいれ、24時間後に菌数を確認した。1週間後、新たに大腸菌10個/mlを塗布した50mm角のプレー卜をいれ、24時間後に菌数を測定した。この操作を3ヶ月繰り返した。消滅した菌数を%で表わした。結果を表1に記す。
【0042】
【表1】
Figure 0003862866
表1の結果から明らかな通り、参考例1では成形時の熱や圧力によって中空粒子の外壁が破壊されることがなく、長期にわたって高い効果が維持された。一方、参考では粒子の外壁が有機物であるため、成形時にすでに、温度や圧力の影響で破壊されて、作業場にかなりタイムの臭気が出ていた。従って、徐放薬剤の寿命が短かった。
【0043】
<部品強度試験>
次に、参考例1および参考の冷気吹き出し口部品について、ASTM D−790に従い、曲げ弾性率の測定を実施した。結果を表2に記す。
【0044】
【表2】
Figure 0003862866
表2の結果から明らかな通り、参考例1では炭酸カルシウムからなる粒子を添加するため、材料の曲げ弾性率が向上した。これは炭酸カルシウムが樹脂の強度向上効果を有するためである。これに対し、参考ではゼラチンマイクロカプセルが破壊されて薬剤が放出されたために成型品の強度は低下した。
【0045】
<薬剤放出濃度試験>
次に参考例1および参考の試験片をそれぞれ1.0kg/cmの力で1往復こすり、その後1000リットル容器にいれ、タイム主成分のチモールの放出濃度をガスクロマトグラフで測定した。結果を図4に記す。
【0046】
図4から明らかな通り、参考例1の試験片はブランク(摩擦なし)と同等の結果であり、摩擦力に強いとわかる。これに対して、参考では摩擦によってカプセルが破壊されたため、早期に成分が放出してしまい、寿命が短いことが予想された。すなわち、参考例1の部材を冷蔵庫に搭載すれば、食品の出し入れなどの摩擦によって外壁が破壊されることがなく、徐放機能を維持でき、薬剤の寿命も長くなる。
【0047】
次に、本発明に用いられる無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を塗料に添加したものと、マイクロカプセルを塗料に添加したものとを比較する。
【0048】
参考
図1に示すような孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものを全体の20%となるように樹脂、溶剤、分散剤などと混ぜ合わせ、塗料を作成した。この塗料を30mm角のPPのプレートに塗布し試験片とした。
【0049】
参考
図9に示すようなゼラチンマイクロカプセルでも塗料を作成し、参考と同様にプレートに塗布した。この時、ゼラチンマイクロカプセルの塗料はカプセルが破壊され、タイムの臭気が作業場に広がった。
【0050】
<抗菌性試験>
参考および参考の試験片と大腸菌10個/mlを塗布した50mm角のプレートを1000リットルの容器にいれ、24時間後に菌数を確認した。1週間後、新たに大腸菌10個/mlを塗布した50mm角のプレートを入れ、24時間後に菌数を測定した。この操作を3ケ月繰り返した。結果を表3に記す。
【表3】
Figure 0003862866
表3の結果から明らかな通り、参考では塗料化時の熱や圧力によって中空粒子の外壁が破壊されることがなく、長期にわたって高い効果が維持された。一方、参考では粒子の外壁が有機物であるため、塗料化時にすでに、温度や圧力の影響で破壊されて、作業場にかなりタイムの臭気が出ていた。従って、徐放効果が低下し薬剤の寿命が短くなった。
【0051】
<薬剤放出濃度試験>
次に、参考および参考の試験片をそれぞれ1.0kg/cmの力で1往復こすり、その後チモールの放出濃度測定した。結果を図5に記す。
【0052】
図5の結果から明らかな通り、参考の試験片はブランク(摩擦なし)と同等の結果であり、摩擦力に強いことがわかる。これに対して、参考では摩擦によってカプセルが破壊されたため、早期に成分が放出してしまい、寿命が短いことが予想された。この結果から、参考の塗料を冷蔵庫に塗布した場合、食品の出し入れなどの摩擦によって外壁が破壊されることがなく、徐放機能を維持でき、薬剤の寿命も長くなる。
【0053】
次に、本発明に用いられる無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子内に消臭機能のある薬剤、そして香り付加機能のある薬剤を充填してその効果を調べた。
【0054】
参考
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にお茶の抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片とした。
【0055】
参考
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にレモン抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片とした。
【0056】
<消臭性試験>
参考およびの試験片を、それぞれ漬け物臭であるメチルメルカプタン0.5ppb雰囲気の1000リットル容器に入れ、メチルメルカプタン濃度とレモンの香気成分であるリモネン濃度をガスクロマトグラフで調べた。結果を図6に記す。参考参考もほぼ同じ結果となった。
【0057】
図6の結果から明らかな通り、メチルメルカプタン濃度は徐々に低下する一方、リモネン濃度は徐々に増加し、ある程度の濃度で安定する。このように、消臭機能を有する薬剤を用いた場合は冷蔵庫内の臭気を低減する事が可能である。
【0058】
次に、本発明に用いられる無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子内に充填する薬剤の種類による効果の差を調べた。
【0059】
参考
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片とした。
【0060】
参考
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にユーカリ抽成分を充填したものでもPPに10%練り込み、試験片を作成した。
【0061】
<抗菌性試験>
参考および参考の試験片を用いて参考例1と同様にして、24時間後の抗菌性を調べた。結果を表4に記す。
【0062】
【表4】
Figure 0003862866
表4の結果から明らかな通り、一般に抗菌効果が高いと言われているユーカリよりも、タイム抽出成分の抗菌効果はかなり高いとわかる。また、表中の石炭酸係数は、上述した通り、消毒などによく使用される石炭酸の殺菌力を1とした場合の係数であり、数値が高い方が殺菌効果が高いことを示す。
【0063】
次に、本発明に用いられる無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子の外壁材の種類による効果の差を調べた。
【0064】
参考
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片を作成した。
【0065】
参考10
銀で多孔質壁中空粒子を作成し、粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片を作成した。
【0066】
<抗菌性試験>
参考および10の試験片に表面に大腸菌10個/mlを塗布したものを5枚作成し、菌数の経時変化を調べた。結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
Figure 0003862866
表5の結果から明らかな通り、多孔質壁を銀で構成した方が、抗菌効果が早く現れる。これは、抗菌成分が徐々にしみ出る前に、試験片面がすでに抗菌効果を有するためである。
【0068】
次に、本発明に用いられる無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子の外壁の孔径による効果の差を調べた。
【0069】
参考11
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片を作成した。
【0070】
参考12
孔径1μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片を作成した。
【0071】
参考13
孔径2.9μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、平板を成形して試験片を作成した。
【0072】
<薬剤放出濃度試験>
参考1112および13の試験片を1000リットル容器に入れ、タイムの主成分であるチモール濃度の経時変化を調べた。結果を図7に示す。試験片のサイズは100mm角とした。
【0073】
図7の結果から明らかな通り、参考13では短時間でかなり濃度が高くなり、容器内の臭気が強く不快であった。また、図の傾きから予想される速度で成分を放出すると仮定すると、寿命がかなり短くなると予想される。これに対し、参考11および12では成分の放出速度が遅く、長寿命化が可能となる。また、密閉容器内におよそ3時間放置したが、不快と感じる濃度にはならなかった。以上の結果から、孔径は1μm以下が適すると判断した。
【0074】
次に、本発明に用いられる無機成分からなる多孔質壁中空粒子をペレット化する際の粒子径のサイズによる流動性の違いを調べた。
【0075】
参考14
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに2%練り込み、ペレット化した。
【0076】
参考15
孔径0.2μm、粒子径10μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに2%練り込み、ペレット化した。
【0077】
参考16
孔径0.2μm、粒子径15μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに2%練り込み、ペレット化した。
【0078】
また、ブランクとして無添加のPPでもペレット化した。
【0079】
<流動性試験>
参考14、15および16の試験片のメルトインデックス(MI)値をASTMD−1238に従い測定した。結果を表6に示す。
【0080】
【表6】
Figure 0003862866
続いて、以上の材料で冷気吹き出し口部品を成形した。その結果、無添加のものと参考14および15では問題無かったが、参考16では樹脂が流れず、桟の部分が形成されなかった。
【0081】
以上の結果より、MI値は50g/10分が望ましく、冷蔵庫のPP材に添加するには、粒子径10μm以下が成形性が良いことがわかった。
【0082】
次に、本発明に用いられる薬剤を充填した無機成分からなる多孔質壁中空粒子の部材への練り込み添加量による効果の差を調べた。
【0083】
参考17
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに10%練り込み、ペレット化した。
【0084】
参考18
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに20%練り込み、ペレット化した。
【0085】
参考19
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに30%練り込み、ペレット化した。
【0086】
参考20
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものをPPに40%練り込み、ペレット化した。
【0087】
参考1720のMIを測定した。結果を表7に示す。
【0088】
【表7】
Figure 0003862866
続いて、以上の材料で冷気吹き出し口部品を成形した。その結果、添加量40%のものは樹脂の流動性が悪く、桟の部分が形成されなかった。この結果から、冷蔵庫のPP材に添加するには、添加量30%以下だと成形性が良いことがわかった。
【0089】
次に、本発明に用いられる薬剤を充填した無機成分からなる多孔質壁中空粒子の塗料へ添加する際の粒子径による効果の差を調べた。
【0090】
参考21
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものを参考と同様にして塗料を作成した。続いてPP材で作成したプレートに塗布して試料を作成した。
【0091】
参考22
孔径0.2μm、粒子径5μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものを参考と同様にして塗料を作成した。続いてPP材で作成したプレートに塗布して試料を作成した。
【0092】
参考23
孔径0.2μm、粒子径10μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものを参考と同様にして塗料を作成した。続いてPP材で作成したプレートに塗布して試料を作成した。
【0093】
<碁盤目試験>
参考2123の試料を、JISK5400に従い碁盤目テープ法試験を実施した。結果を表8に示す。
【0094】
【表8】
Figure 0003862866
表8の結果から明らかな通り、10μmの粒子を添加したものは、膜密着性が低下し剥離しやすかった。よって塗料化するには粒子径5μm以下が適し、中でも3μmのものが優れていることがわかった。
【0095】
次に、本発明に用いられる薬剤を充填した無機成分からなる多孔質壁中空粒子の塗料への添加量による効果の差を調べた。
【0096】
参考24
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものを20%添加し、参考と同様にして塗料を作成した。続いてPP材で作成したプレートに塗布した。
【0097】
参考25
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものを30%添加し、参考と同様にして塗料を作成した。続いてPP材で作成したプレートに塗布した。
【0098】
参考26
孔径0.2μm、粒子径3μmの炭酸カルシウムからなる多孔質壁中空粒子内にタイム抽出成分を充填したものを50%添加し、参考と同様にして塗料を作成した。続いてPP材で作成したプレートに塗布した。
【0099】
<密着性評価試験>
参考2426の密着性を評価した。結果を表9に示す。
【0100】
【表9】
Figure 0003862866
表9の結果から明らかな通り、添加量40%のものは、密着性が低下し剥離しやすかった。よって塗料化するには添加量30%以下が適し、特に20%以下のものが優れていることがわかった。
【0101】
[実施例
次に、参考例1で作成した冷気吹き出し口部品を用いて完成した冷蔵庫の扉の開閉に関わる風量制御について説明する。
【0102】
この冷蔵庫を扉を解放せずに庫内空気を採取できるように改良し、24時間後の庫内のチモール濃度を測定した。ついで扉を5分間解放し、再び閉じた直後から庫内のチモール濃度を連続で測定した。結果を図8に示す。
【0103】
扉を開ける前の庫内濃度は0.8ppbであったが、5分間扉をあけておくと極めて0に近くなる。一般に、薬剤の放出濃度が多孔質中空粒子近傍雰囲気と平衡に達すると放出速度が遅くなる。そして、多孔質中空粒子近傍雰囲気濃度が低下すると再度放出速度が増す。
【0104】
本発明の冷蔵庫においては、扉開閉時には冷気の吹き出し風量が通常に比べて3割程度増加する。扉解放後に扉を閉めると、扉開放前より吹き出し風量が増し、薬剤成分は庫内を循環するため、この周りの濃度は薄くなる。その結果、薬剤の放出量が増し、短時間で元の濃度に戻る。今回は、約7分で元の濃度にもどり、平衡に達した。
【0105】
また、このように、扉解放後に風量が増すことは、庫内温度を短時間で低温にすることにも繋がり、好ましいことである。尚、風量増加に伴う消費電力の増加はごく僅かである。
【0106】
[実施例
実施例の冷蔵庫を実際に使用して、定期的に庫内のモチール濃度を測定した。半年経過後冷気拭きだし口部品を交換した。結果を表10に示す。
【0107】
【表10】
Figure 0003862866
このように、半年使用すると庫内の濃度が低下する。その結果、薬剤の効果も低下すると予想される。しかし、本発明のように冷気吹き出し口部品を新品と交換すると、再び試験開始直後の濃度レベルに戻る。このように、交換可能であれば、いつまでもその性能を維持出来る上に、交換部品代としての利益をみこむことが出来る。
【0108】
【発明の効果】
本発明の冷蔵装置によれば、抗菌性および/または消臭性の薬剤を内包させた無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を冷蔵装置の部材に練り込む、または塗布することによって、部材や食品についた細菌やカビに対して優れた抗菌性を得ることができる。薬剤を内包した中空粒子を部材に練り込んだり塗布すればよいため、薬剤を別の容器に入れる必要がなく庫内を広く使用することができる。また、この中空粒子には、無機成分からなる多孔質壁があるために、薬剤が直接食品に触れる恐れがないばかりか、薬剤が徐放されるため寿命が長い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる中心に薬剤を充填された無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子の拡大断面図。
【図2】本発明に関わる冷蔵装置。
【図3】本発明に関わる冷蔵装置の冷気吹き出し口部品。
【図4】薬剤放出濃度変化を示すグラフ。
【図5】薬剤放出濃度変化を示すグラフ。
【図6】消臭性を示すグラフ。
【図7】薬剤放出濃度変化を示すグラフ。
【図8】扉開閉時の薬剤放出濃度変化を示すグラフ。
【図9】従来の薬剤内包マイクロカプセルの拡大断面図。
【符号の説明】
1…中空粒子
2…多孔質壁
3…揮発性薬剤
4…マイクロカプセル
5…ゼラチン
6…冷蔵庫内
7…循環空気用ダクトカバー
8…吹き出し口部品

Claims (9)

  1. 無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を冷気吹き出し口付近に設けた冷蔵装置であって、前記中空粒子内には揮発性の薬剤が充填されており、かつ、前記無機成分からなる多孔質壁が銀化合物で形成されていることを特徴とする冷蔵装置。
  2. 無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を冷気吹き出し口付近に設けた冷蔵装置であって、前記中空粒子内には揮発性の薬剤が充填されており、かつ、前記中空粒子が冷蔵装置の部材に練り込まれていることを特徴とする冷蔵装置。
  3. 前記中空粒子の内部壁面孔径が1μm以下であることを特徴とする請求項記載の冷蔵装置。
  4. 前記中空粒子の外径が10μm以下であることを特徴とする請求項記載の冷蔵装置。
  5. 前記中空粒子の部材練り込み量が30%以下であることを特徴とする請求項記載の冷蔵装置。
  6. 無機成分からなる多孔質壁から形成された中空粒子を冷気吹き出し口付近に設けた冷蔵装置であって、前記中空粒子内には揮発性の薬剤が充填されており、かつ、前記中空粒子が冷蔵装置の部材に塗布されていることを特徴とする冷蔵装置。
  7. 前記中空粒子の外径が5μm以下であることを特徴とする請求項記載の冷蔵装置。
  8. 前記中空粒子の塗料添加量が50%以下であることを特徴とする請求項記載の冷蔵装置。
  9. 前記中空粒子を練り込み、または塗布した冷蔵装置部材が着脱可能であることを特徴とする請求項または記載の冷蔵装置。
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