JP3862109B2 - タグ検出方法及び物品監視装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、商品等の物品に添付されたいわゆるタグを識別する装置に係り、特に、磁性剤からなるタグを識別することで物品の移動を検知し、商店等における商品等の盗難を発見するためのタグ検出方法及び物品監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の装置としては、例えば、特開平6−32416号公報に示されたように、所定の励磁信号が印加される送信コイルと、磁界を検出する受信コイルとを対向して設け、この2つのコイルの間を、磁性材を有してなるタグが移動する際に、送信コイルからの磁界によってこのタグに生じる磁束密度の変化を、受信コイルにより検出し、所定の条件の下で、タグからの磁界であると判定することで、タグの移動すなわち、タグが添付された商品等の移動と判断して、商店等における商品等の盗難防止が行えるようにしたものが公知・周知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような磁気を利用した装置においては、所定のタグ以外の磁性体の移動によっても、受信コイルにより信号が検出されるため、所定のタグから生じた磁界による信号と、それ以外の磁性体から生じた磁界による信号とを如何に識別するかが、誤識別の確率が低く、しかも、高い正確な検出確率を有する信頼性の高い装置を提供する上で重要な要素となる。特に、タグとして使用される磁性材の磁気特性に起因して、信号検出の際、他の特定の磁気、例えば、地磁気の影響を受けるような場合には、このような特定の磁気の影響を如何に利用して、真の信号を抽出するかが信頼性の高い装置を提供する上で重要となる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、誤識別の確率が低く、しかも、高い正確な検出確率を有する信頼性の高いタグ検出方法及び物品監視装置を提供するものである。
【0005】
本発明の他の目的は、地磁気の影響を利用して、本来の信号を確実に抽出することができるタグ検出方法及び物品監視装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明に係るタグ検出方法は、
所定以上の強度の交番磁界中に晒されることによって磁束密度の変化を生じる磁性部材の当該磁束密度の変化に起因する信号を検出用のコイルによって得、当該信号を所定値と比較することによって、前記磁性部材を有してなるタグの有無を検出するタグ検出方法であって、
前記交番磁界の半周期毎の前記検出用のコイルによって検出された信号を第1の所定回数加算した加算結果を得ることを第2の所定回数繰り返して、第2の所定回数に対応する個数の加算結果を得、
前記第2の所定回数に対応する個数の加算結果の2個ずつの差分を算出すると共に、これら算出された差分を加算して判定用の値とし、
前記判定用の値が所定値を越える場合、前記交番磁界中を前記タグが移動したと判定するようにしたものである。
【0007】
かかる方法は、特に、検出用のコイルによって検出された信号の半周期毎の加算を第1の所定回数繰り返して加算結果を得ることを、第2の所定回数繰り返して、第2の所定回数に対応する個数の加算結果を求め、これらの差分をとり、さらに、それらを加算することによって、交番磁界に対応して検出される信号、いわゆるキャリア成分を除去すると共に、所定の磁性材の磁束密度の変化に対応して検出される信号以外の余分な信号を除去して、真に判定の対象となる信号のみが抽出されるようにしたものであり、それによって、誤識別の確率が低く、しかも、高い正確な検出確率を有する信頼性の高いタグ検出方法が提供されることになるものである。
【0008】
請求項2記載の発明に係る物品監視装置は、
交番磁界を発生する磁界発生手段と、
前記交番磁界中に設けられ、前記交番磁界により磁束密度の変化を生ずる所定の磁性部材の当該磁束密度の変化に対応する信号を検出する信号検出手段と、
前記交番磁界の半周期に対応する周期毎の前記信号検出手段により検出された信号を第1の所定回数加算することを、第2の所定回数繰り返して、当該第2の所定回数に対応する個数の加算結果を算出する加算演算手段と、
前記加算演算手段により算出された所定個の加算結果の2個ずつの差分を算出すると共に、当該複数の差分結果を加算する差分積算手段と、
前記差分積算手段により算出された値と所定値とを比較し、前記算出された値が所定値を越える場合に、前記交番磁界中を前記所定の磁性部材が移動したと判定する判定手段と、
前記判定手段により前記交番磁界中を前記所定の磁性部材が移動したと判定された場合に所定の報知動作を行う報知手段と、を具備してなるものである。
【0009】
かかる構成は、請求項1記載のタグ検出方法を実行するための装置として好適なものであり、特に、加算演算手段によって、信号検出手段により検出された信号の半周期毎の加算を第1の所定回数繰り返して加算結果を得ることが、第2の所定回数繰り返されて、第2の所定回数に対応する個数の加算結果が求められ、差分積算手段によって、加算演算手段から得られた複数の加算結果の差分が求められ、さらに、それらの加算が行われて、請求項1記載のタグ検出方法の場合と同様に交番磁界に対応して検出される信号、いわゆるキャリア成分を除去すると共に、所定の磁性材の磁束密度の変化に対応して検出される信号以外の余分な信号を除去して、真に判定の対象となる信号のみが抽出されることとなり、それによって、誤識別の確率が低く、しかも、高い正確な検出確率を有する信頼性の高い物品監視装置が提供されるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図9を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0011】
最初に、図1を参照しつつこの発明の実施の形態における物品監視装置(以下「本装置」という)の構成について説明する。
【0012】
本装置は、磁界を発生するための励磁部1と、タグ5からの磁界の発生を検知するための検知部2と、本装置の動作制御や後述するような検出信号のデータ処理等を行う制御部3と、検知部2によりタグ5の移動が検出された際に、所定の報知動作を行う報知部4とに大別されてなるものである。
【0013】
励磁部1には励磁コイル6が、検知部2には検知コイル7がそれぞれ接続されており、励磁コイル6により生じた磁界によって、この励磁コイル6の近傍を後述するようなタグ5が通過することで検知コイル7に生ずるパルス信号が、励磁コイル6による磁界と共に検知コイル7により検出されるようになっている。
【0014】
すなわち、励磁コイル6と検知コイル7とは、所定の間隔、例えば人が充分通行できる程度の間隔を隔てて、例えば、商店等の出入口に対向するように配置されるもので、励磁コイル6は、励磁部1により励磁されて所定の磁界を発生するようになっている。
【0015】
一方、検知コイル7は、励磁コイル6により生じた磁界と共に、励磁コイル6と検知コイル7との間を、タグ5が通過した際、このタグ5によって生ずるパルス信号を検出するためのもので、検知部2は、この検知コイル7と交差した磁界によって生ずる信号を増幅すると共に、後述するような信号処理に必要な信号レベル等へ変換して制御部3へ入力するようになっている。
【0016】
この検知コイル7は、互いに逆相巻きされた一対のコイルが直列接続されて構成されたものとなっている。これは、後述するように、励磁磁界の歪み、すなわち、所定のパルス信号のみを検出し、励磁磁界の変化に対応する成分を除去するためである。
【0017】
ここで、タグ5の構造について説明すれば、このタグ5は、例えば、紙やビニール樹脂等を用いてなる板状またはフィルム状に形成されたラベル本体5aと、このラベル本体5aの一方の面に固着された磁性部材としてのワイヤ5bとから構成されてなるもので、商品等の物品の適宜な面上に、接着剤等の接着手段によりラベル本体5aを固着して用いられるものである。ここで、ラベル本体5aは、例えば、図2に示されたように商品のバーコードが印刷されたいわゆるバーコードラベルを兼ねるようにすれば、ワイヤ5bを商品等の物品へ貼着するためにいわゆるバーコードラベルと別個に設ける必要がなくなり好適である。
【0018】
ワイヤ5bは、交番磁界が印加された際のいわゆるBH曲線としては、図3において実線で示されたような特性を有するものが好適である。すなわち、この発明の実施の形態におけるワイヤ5bは、図3において二点鎖線により表された一般金属の保持力と比較して小さな保持力を有するものであり、また、地磁気の影響を受けて正負の保持力の差が大となっており、いわゆるヒステリシスループは、BHの座標軸に対して非対称なものとなっている。換言すれば、磁束密度Bが飽和する際の負の磁界の強さ(図3において「a」として表された量)と、磁束密度Bが飽和する際の正の磁界の強さ(図3において「b」として表された量)との差が大きなものとなっている。
【0019】
さらに、このワイヤ5bの飽和磁束密度に達する際の磁界の強さ(図3におけるa,b)は、地磁気の強さ(図3参照)と比較すると、地磁気の強さが無視できない程度の大きさとなっており、本発明の実施の形態においては、地磁気の影響を利用して誤認識が生じないように後述するような信号処理を行っている。
【0020】
ちなみに、一般金属においては、飽和磁束密度に達する際の磁界の強さは、図3において、c,dとして表された量であり、ワイヤ5bのそれに比して充分に大きなものであり、c,dの比は略1に近いものである。
【0021】
上述のようなBH特性を有するものが、図3において符号イで示されたような飽和磁束密度を生ずるに充分な程度の交番磁界中に晒されると、いわゆる大バルクハウゼン効果により、パルス性の新たな磁界を生じ、これが検知コイル7によってパルス信号と検出されることは周知の通りであるが、励磁磁界の変化に対するそのパルス信号の発生タイミングは、一般金属と、ワイヤ5bとでは異なるものである。
【0022】
すなわち、一般金属の場合には、図4(a)に示されたように、検知コイル7に生ずる励磁磁界の変化に対応した信号(キャリア)の半周期毎に対称な位置(図4(a)において丸印が付された箇所参照)にパルス信号が生ずるのに対して、ワイヤ5bの場合には、同図(b)に示されたように、キャリアの半週期毎にパルス信号が生ずることには変わりがないが、その発生位置は、対称な位置ではなく(図4(b)の丸印が付された箇所参照)、しかも、そのレベルも異なるものとなる。
【0023】
したがって、一般金属により生ずるパルス信号については、半周期毎の加算を行うと相殺されて零となるが、ワイヤ5bにより生ずる信号については、同様に半周期毎の加算を行った場合であっても零となることはなく、本発明の実施の形態においては、後述するように、この半周期毎の加算結果を用いて励磁コイル6と検知コイル7との間をワイヤ5bが通過したか否かが判断されるようにしている。
【0024】
励磁部1は、ディジタル・アナログ変換器(図1においては「D/A」と表記)10と、ローパスフィルタ(図1においては「LPF」と表記)11と、励磁用増幅器(図1においては「AMP」と表記)12とを具備して構成されたものとなっている。
【0025】
ディジタル・アナログ変換器(以下「D/A変換器」という)10は、制御部(図1においては「DSP」と表記)3から出力されたディジタルSIN波をアナログのSIN波に変換するためのものである。このSIN波は、励磁コイル6に印加するためのものであり、制御部3において、公知・周知のSIN波発生プログラムの実行によって、ディジタルSIN波信号が発生されるようになっている。このSIN波の周波数は、特定の値に限定されるものではないが、この発明の実施の形態においては、約1KHz付近に設定されている。
【0026】
ローパスフィルタ11は、D/A変換器10から出力されたアナログSIN信号に含まれている不要な高周波成分を除去し、所定の周波数以下の信号を得るためのもので公知・周知の構成を有するものである。
【0027】
励磁用増幅器12は、タグ5の検出に充分な磁界が励磁コイル6によって発生されるようローパスフィルタ11を介して入力されたSIN波信号を電力増幅して励磁コイル6へ出力するためのものである。この発明の実施の形態においては、幅100cm×高さ120cmの励磁コイル6に対して、励磁用増幅器12は、約100W程度の出力信号を印加するように構成されている。
【0028】
一方、検知部2は、差動増幅器(図1においては「DEF」と表記)13と、ノッチフィルタ(図1においては「NOTCH」と表記)14と、バンドパスフイルタ(図1においては「BPF」と表記)15と、レベル調整用増幅器(図1においては「AMP」と表記)16と、アナログ・ディジタル変換器(図1においては「A/D」と表記)17とを具備して構成されたものとなっている。
【0029】
差動増幅器13は、検知コイル7により検出された信号を、後段の回路における不要信号の除去に充分な程度に差動増幅して出力するもので、公知・周知の回路構成を具備してなるものである。
【0030】
ノッチフィルタ14は、差動増幅された検知コイル7により検知された信号に含まれるキャリア成分を除去するためのもので、いわゆるノッチ周波数は、キャリア周波数(この発明の実施の形態においては約1KHz)に設定されており、タグ5により生ずるパルス信号の成分のみが出力されるようになっている。
【0031】
バンドパスフィルタ15は、公知・周知の構成を有してなるもので、ノッチフィルタ14を介して得られた信号からさらに、不要な高周波及び低周波成分を除去するためのものである。
【0032】
レベル調整用増幅器16は、この後段側のアナログ・ディジタル変換器(以下「A/D変換器」という)17へ、バンドパスフィルタ15から得られた信号を入力するために必要なレベルに増幅して出力するための公知・周知の構成を有してなる増幅器である。
【0033】
A/D変換器17は、レベル調整用増幅器16のアナログ出力信号を、制御部3における信号処理に必要なディジタル信号として制御部3へ入力するため、アナログ・ディジタル変換を施す周知・公知の構成を有するものである。
【0034】
制御部3は、検知部2から入力された信号に対して後述するような信号処理を施して励磁コイル6と検知コイル7との間におけるタグ5の通過を判定し、必要に応じて報知部4による報知を行う一方、後述するようにして励磁部1を介して励磁コイル6の励磁を行うようになっているもので、この発明の実施の形態においては、公知・周知のDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成されたものとなっている。
【0035】
報知部(図1においては「ALA」と表記)4は、制御部3によりタグ5の通過が検出された際に、制御部3からの信号に応じて報知動作を行うもので、例えば、警報ブザー(図示せず)を鳴動させたり、いわゆる音声合成IC(図示せず)を駆動して所定のメッセージをスピーカ(図示せず)から流すように構成されたもの等が好適である。
【0036】
次に、図5乃至図9を参照しつつ制御部3によって行われる本装置の制御動作について説明することとする。
【0037】
最初に、図5を参照しつつ図6及び図7に示されたメインフローチャートと図8に示されたサブルーチンフローチャートとの関係について説明する。
【0038】
メインフローチャートは、検知部2から入力された信号に対して施す信号処理の手順が規定されたものであり、この信号処理は本装置の動作中連続的に繰り返されるようになっているものである(図5参照)。また、このメインフローチャートの処理中には、励磁部1による励磁コイル6の励磁や検出信号の入力等の処理のためのサブルーチン処理であるタイマールーチンを所定時間間隔で呼び出すようになっており、その際、すなわち、いわゆる割り込みが生じた際には、メインルーチンからタイマールーチンへ飛び、タイマールーチンでの処理が終了すると、再び割り込みが生じた時点におけるメインルーチンの箇所へ戻り、メインルーチンの処理が再開されるような関係となっているものである(図5参照)。
【0039】
次に、図6乃至図9を参照しつつ本装置によるタグ5の移動検出動作について説明する。
【0040】
制御部3によりメインルーチンの処理が開始されると、最初に各種変数の初期設定及び検知部2より入力されたデータや後述する差分結果等が一時的に記憶される制御部3内のバッファ(図示せず)の初期設定がなされることとなる(図6のステップ10参照)。次いで、後述するフラグAが零に初期設定される(図6のステップ20参照)。
【0041】
ここで、次のステップ30の処理を行う前に、タイマールーチン処理を実行するための割り込みが生ずると、制御はここでタイマールーチンへ一旦移ることとなる。すなわち、図8のタイマーフローチャートで示されたタイマールーチン処理が開始されることとなる。
【0042】
タイマールーチンが開始されると、最初に制御部3から励磁コイル6の励磁波としてのディジタルSIN波信号が出力され、励磁部1を介して励磁コイル6にアナログSIN波状の励磁電流が通電されることとなる(図8のステップ200参照)。次いで、フラグAが「1」に設定されているか否かが判定される(図8のステップ210参照)。
【0043】
先のメインフローチャートでのステップ20の直後に、このタイマールーチンが実行された場合には、フラグA=0であるので、このステップ210での判定はNOとなり、タイマールーチンは励磁波の出力だけで終了し、再びメインルーチンへ戻ることとなる。
【0044】
メインルーチンにおいては、ステップ30から処理が再開されることとなり、励磁波出力がこの時点で零を過ぎたか否かの判定が行われ(図6のステップ30参照)、零を過ぎたと判定されるまでこの判定処理が繰り返される一方、零を過ぎたと判定された場合(YESの場合)には、フラグAが「1」に設定されることとなる(図6のステップ40参照)。なお、ステップ30において、励磁波出力が零を過ぎたか否かを判定するのは、後述するようにこの発明の実施の形態における信号処理においては、励磁波が零となったときを基準として検知部2による検出信号の処理タイミングを設定しているためである。
【0045】
ここで、ステップ40へ進む直前に再び割り込みが生じた場合には、前述したと同様にして、タイマールーチン処理へ移り、ステップ210の判定が再び行われることになるが(図8参照)、フラグAが未だ「1」に設定されていない状態である場合には、フラグA=1ではないと判定され、再びメインルーチンへ戻ることとなる。
【0046】
そして、ステップ40においてフラグAが「1」に設定された直後に再び割り込みが生ずると、タイマールーチン処理は、再びステップ210の判定が行われるが、この場合には、フラグA=1であるために、検出信号入力処理が終了したと判断されるまで行われることとなる(図8のステップ220,230参照)。すなわち、検知コイル7に生じた信号が検知部2における増幅、いわゆるフィルタリングを施されたのち、制御部3の所定の領域に一時的に記憶されることとなる。そして、後述する信号処理に必要な検知信号が入力されたと判定されると(図8のステップ230において「YES」の場合)、フラグAが「0」にいわゆるリセットされることとなる(図8のステップ240参照)。
【0047】
続いて、フラグAが「1」か否かが判定されることとなる(図6のステップ50参照)。この場合、先のタイマールーチンにおいて、フラグAは「0」に設定されている(図8のステップ240参照)ため、ステップ50においてはNOと判定され、次に述べるような加算処理がなされることとなる(図6のステップ60参照)。
【0048】
ここで、ステップ60へ進む直前に割り込みが生じたとすると、タイマールーチンが再び実行されることとなる(図8参照)。ここで、制御の状態が、仮に、メインルーチンの処理が初回、換言すればステップ110を経てステップ30へ戻り一連の処理が繰り返されるループ処理に未だ至っていない状態であるとすれば、タイマールーチンへ移行した時点において、フラグA=0であるので、メインルーチンへ戻ることとなる。
【0049】
そして、メインルーチンにおいては、ステップ60の加算処理がなされることとなるが、このステップ60の処理を説明する前に、本装置における検出信号の処理の基本的な考え方を図9を参照しつつ説明することとする。
【0050】
まず、検出信号は、励磁コイル6へ励磁波出力タイミングと略一致して検出されるもので、本装置においては半周期毎の検出信号を加算することとし、この半周期分の検出信号の加算を32回(第1の所定回数)繰り返し、この32回の加算の繰り返しを1回分の加算結果として、さらに、この加算結果を8回(第2の所定回数)求めるようにしている。
【0051】
図9は、この処理の概念を模式的に示したもので、32回の半周期の加算結果An(n=0〜7)が8個求められることが表されている。
【0052】
このようにして求められた8個の加算結果を、本装置においては、後述するように2個ずつ差分をとり、その差分を加算したものをタグ5の移動が生じたか否かを判定する対象としている。
【0053】
このような処理を行うことによって、検知信号に含まれる励磁波信号そのもの、換言すればいわゆるキャリア成分を略完全に相殺することができ、さらに、他の不要な信号(例えば、ランダムな雑音等)を除去して、タグ5の移動によって生ずる本来の信号のみが得られるようになっている。
【0054】
図6のステップ60における加算処理は、上述したAn(n=0〜7)を求めるための処理であり、8個のAn(n=0〜7)か算出されるようになっている。
【0055】
このステップ60の処理が終了した時点で再び割り込みが生ずると、タイマールーチンへ移行する。ここで、制御の状態が、仮に、メインルーチンの処理が初回、換言すればステップ110を経てステップ30へ戻り一連の処理が繰り返されるループ処理に未だ至っていない状態であるとすれば、タイマールーチンへ移行した時点において、未だフラグA=0であるので、この場合も前回同様に、メインルーチンへ戻ることとなる。
【0056】
そして、ステップ70において、上述の差分の算出が行われる。すなわち、32個の半周期の加算結果が得られる毎に、その一つ前の32個の半周期の加算結果との差分が演算される。具体的には、(A1−A0),(A2−A1),(A3−A2),(A4−A3),(A5−A4),(A6−A5),(A7−A6)として7個の差分が算出されることとなる。
【0057】
ステップ70が実行された直後に、再び割り込みが生ずると、再びタイマールーチンが実行されることとなる(図8参照)。ここで、制御の状態が、仮に、メインルーチンの処理が初回、換言すればステップ110を経てステップ30へ戻り一連の処理が繰り返されるループ処理に未だ至っていない状態であるとすれば、タイマールーチンへ移行した時点において、やはり、フラグA=0であるので、この場合もメインルーチンへ戻ることとなる。
【0058】
メインルーチンにおいては、差分結果の加算が行われることとなる(図6のステップ80参照)。すなわち、上述のステップ70において、差分結果が算出される度毎に、前回の差分結果と加算されてゆき、最終的には、(A1−A0)+(A2−A1)+(A3−A2)+(A4−A3)+(A5−A4)+(A6−A5)+(A7−A6)が算出されるようになっている。
【0059】
このステップ80の処理直後に、再び割り込みが生ずると、メインルーチン処理が中断されて、タイマールーチンが実行されることとなる(図8参照)。ここで、制御の状態が、仮に、メインルーチンの処理が初回、換言すればステップ110を経てステップ30へ戻り一連の処理が繰り返されるループ処理に未だ至っていない状態であるとすれば、タイマールーチンへ移行した時点において、未だフラグA=0であるので、この場合も前回同様に、メインルーチンへ戻ることとなる。
【0060】
そして、メインルーチンにおいては、制御部3のバッファに記憶された差分結果が所定値と比較され、所定値を越えるものであるか否かが判定され(図7のステップ90参照)、差分結果が所定値を未だ越えないと判定された場合(NOの場合)には、バッファの初期化がなされて再びステップ30から処理が繰り返されることとなる。
【0061】
一方、差分結果が所定値を越えたと判定された場合には、制御部3から報知部4へ対して制御信号が出力されて報知部4による報知がなされることとなる(図7のステップ100参照)。すなわち、タグ5が励磁コイル6と検知コイル7の間を移動したとして、例えば、報知部4によりブザー(図示せず)が鳴動されることとなる。そして、報知動作の後は、ステップ110へ進むこととなる。
【0062】
なお、上述した制御部3の制御動作における割り込み処理は、各ステップ30〜80の処理中にも生ずるものである。
【0063】
ここで、本装置によるタグ5の検出動作について、概括的に説明することとする。
【0064】
励磁コイル6には、所定の周波数のSIN波が励磁波信号として印加されており、検知コイル7には、この励磁コイル6によって生ずる磁界との交差により誘導電圧が誘起されると共に、励磁コイル6と検知コイル7との間をタグ5が通過すると、励磁コイル6による磁界によってタグ5のワイヤ5bに磁束密度の変化が生ずる。
【0065】
このワイヤ5bにおける磁束密度の変化によって、検知コイル7にパルス信号が誘起され、検知部2を介して制御部3に入力される。
【0066】
制御部3においては、検出信号の32回の半周期の加算を行ったものを8回算出し(図6のステップ60参照)、さらに、2個ずつの差分を算出し(図6のステップ70参照)、その差分同士を加算したものを判定用のデータとして得る(図6のステップ80参照)。このような処理により、いわゆる励磁波信号に対応するキャリア成分の除去がなされ、ワイヤ5bによる本来の信号のみが得られることとなる。そして、所定値と比較され(図7のステップ90参照)、所定値以上であると判定された場合に、タグ5が励磁コイル6と検知コイル7との間を通過したとして報知部4により、例えば、警報ブザー等が鳴動されるようになっている。
【0067】
なお、上述した発明の実施の形態における、加算処理(図6のステップ60参照)の加算回数は、あくまでも一例であり、上述した回数に限定される必要はないもので、励磁信号の大きさ、励磁コイル6と検知コイル7との距離等に応じて、ある程度実験的に設定されるものである。
【0068】
上述の説明において、磁界発生手段は、励磁部1、励磁コイル6及び制御部3により、信号検出手段は、検知部2及び制御部3により、加算演算手段は、制御部3による図6のステップ60の実行により、差分積算手段は、制御部3による図6のステップ70,80の実行により、判定手段は、制御部3による図7のステップ90の実行により、報知手段は、報知部4及び制御部3により、それぞれ実現されたものとなっている。
【0069】
【発明の効果】
以上、述べたように、本発明によれば、所定の磁性部材の磁気特性に起因して生ずる信号のみを確実に抽出できるようにしたので、誤識別の確率が低く、しかも、高い正確な検出確率を有する信頼性の高いタグ検出方法及び物品監視装置が提供される。
【0070】
また、検出信号について半周期毎の加算処理を行うことで、半周期毎に非対称にパルスが発生するタグと、対称にパルスが発生する一般金属とを区別し、より高い信頼性の向上に寄与することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における物品監視装置の構成例を示す構成図。
【図2】 本発明の実施の形態におけるタグの一例を示す正面図。
【図3】 図2に示されたタグに固着されるワイヤ及び一般金属のBH曲線。
【図4】 図1に示された物品監視装置による検出信号のタイミングを説明する説明図であり、図4(a)は一般金属の場合の検出信号のタイミングを、図4(b)はワイヤの場合の検出信号のタイミングを、それぞれ説明する説明図。
【図5】 本発明の実施の形態におけるメインルーチンとサブルーチンとの関係を概念的に説明する概念図。
【図6】 図1に示された物品監視装置の制御部によって実行されるメインルーチンの手順の一部を示すメインルーチンフローチャート。
【図7】 図1に示された物品監視装置の制御部によって実行されるメインルーチンの手順の一部を示すメインルーチンフローチャート。
【図8】 図1に示された物品監視装置の制御部によって実行されるサブルーチンの手順の一部を示すサブルーチンフローチャート。
【図9】 本発明の実施の形態における検出信号の加算処理の内容を概念的に説明する概念図。
【符号の説明】
1 励磁部
2 検知部
3 制御部
4 報知部
5 タグ
5b ワイヤ
6 励磁コイル
7 検知コイル
Claims (2)
- 所定以上の強度の交番磁界中に晒されることによって磁束密度の変化を生じる磁性部材の当該磁束密度の変化に起因する信号を検出用のコイルによって得、当該信号を所定値と比較することによって、前記磁性部材を有してなるタグの有無を検出するタグ検出方法であって、
前記交番磁界の半周期毎の前記検出用のコイルによって検出された信号を第1の所定回数加算した加算結果を得ることを第2の所定回数繰り返して、第2の所定回数に対応する個数の加算結果を得、
前記第2の所定回数に対応する個数の加算結果の2個ずつの差分を算出すると共に、これら算出された差分を加算して判定用の値とし、
前記判定用の値が所定値を越える場合、前記交番磁界中を前記タグが移動したと判定することを特徴とするタグ検出方法。 - 交番磁界を発生する磁界発生手段と、
前記交番磁界中に設けられ、前記交番磁界により磁束密度の変化を生ずる所定の磁性部材の当該磁束密度の変化に対応する信号を検出する信号検出手段と、
前記交番磁界の半周期に対応する周期毎の前記信号検出手段により検出された信号を第1の所定回数加算することを、第2の所定回数繰り返して、当該第2の所定回数に対応する個数の加算結果を算出する加算演算手段と、
前記加算演算手段により算出された所定個の加算結果の2個ずつの差分を算出すると共に、当該複数の差分結果を加算する差分積算手段と、
前記差分積算手段により算出された値と所定値とを比較し、前記算出された値が所定値を越える場合に、前記交番磁界中を前記所定の磁性部材が移動したと判定する判定手段と、
前記判定手段により前記交番磁界中を前記所定の磁性部材が移動したと判定された場合に所定の報知動作を行う報知手段と、
を具備してなることを特徴とする物品監視装置。
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