JP3861986B2 - 医療看護業務のリスク管理方法及びリスク管理支援システム - Google Patents

医療看護業務のリスク管理方法及びリスク管理支援システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療現場における各種の医療事故を防止するために、過去にその医療現場で発生した医療看護業務上のインシデントの要因を分析すると共にその要因を解消すべく対応策を立案するための医療看護業務のリスク管理方法、及び、該リスク管理方法を実施するためのリスク管理支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野での情報公開が進展するに伴い、医療事故や事故にまで至らない医療ミスに対する一般の人の関心も高まっている。このような中で、過去に発生した医療や看護に関する事故の原因を子細に分析し、事故の発生を未然に防止するための各種対応策を立案するような、一種のリスク管理の試みが行われている。
【0003】
例えば、旧厚生省の1999年5月の報道発表資料「患者誤認事故防止方策に関する検討会報告書」には、医療過誤の原因及び対策に関する分析の事例として、4M−4Eマトリクスによる分析とSHELモデルによる分析とが記載されている。これら手法の概要は次の通りである。
【0004】
(1) 4M−4Eマトリクス法
4MとはMAN(人間)、MACHINE(物、機械)、MEDIA(環境)、MANAGEMENT(管理)という事故原因を分類するための4つの区分であり、一方、4EとはEDUCATION(教育)、ENGINEERING(技術)、ENFORCEMENT(強化)、EXAMPLE(模範)という事故対策を分類するための4つの区分である。これらをマトリクス状に配置することにより、4つの事故原因毎に4つの事故対策案を導出し、これを網羅的に整理しようとするものである。
【0005】
(2) SHELモデル法
システムの中心に人間(L:LIVEWARE)を配置し、その周囲にソフトウエア(S:SOFTWARE)、ハードウエア(H:HARDWARE)、環境(E:ENVIRONMENT)、及び人間(L:LIVEWARE)を配置したモデルを想定し、中心のL自体の問題と関連付けてL-S,L-H,L-E,L-Lの各インタフェースに問題がなかったか否かを分析し、その結果に基づいて対策案を導出するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の分析手法は、各医療事故や医療ミス毎の個別的な原因分析や再発防止策の立案などに関しては、既に発生した事故の事例研究を通じて看護業務の弱点に対応する改善策を立案することができるため、或る程度有用である。しかしながら、このような分析手法を導入して1つの医療看護業務の或る種類のインシデントに対する対策が採られた場合であっても、同一医療施設における他の看護業務でのインシデントの発生はあまり改善されないというケースが見受けられる。
【0007】
本願発明者は、上記従来の分析手法による分析の限界として、以下の2点に着目した。その一つは、総業務件数に占めるインシデント件数つまりインシデント発生率が不明なためリスクが算定できない、例えば件数の多い業務ではインシデント発生率が低くてもインシデント件数は多いが、件数が少なくともリスクの高い業務が存在するという点である。二つ目には、異なるインシデントを誘発する共通の潜在的要因としての各医療施設毎に特有の要因、換言すれば、その医療施設の気風(組織文化)や管理体制などに関する視点が欠如しているという点である。医療事故の発生を防止する、或いは完全に防止するまでには至らなくても発生確率を減少させるには、医療事故が発生する土壌や背景にまで踏み込んだ根本的な要因の解明が不可欠である。
【0008】
しかしながら、従来のリスク管理方法では、これらの点すなわち予測とそれに基づく改善、組織文化や管理体制の分析が充分には行えなかった。本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、医療現場で発生する医療看護業務に関する各種の事故を引き起こす根本的な要因を解明すると共にそれに対する有効な対応策を導出することにより、その医療施設での医療事故を未然に防止するために有用な医療看護業務のリスク管理方法、及び該リスク管理方法を実施するためのリスク管理支援システムを提供することにある。
【0009】
なお、通常「インシデント」はアクシデント(医療事故)に相対する言葉として使用されるが、本明細書中では、医療看護業務に関する何らかのミスや誤った業務行為であって、看護婦等からの報告であるインシデントレポートによって報告されるもののことを全てインシデントと呼ぶ。したがって、このインシデントは結果的に必ずしも患者に悪影響を及ぼす、すなわち医療事故に至ったものであるとは限らない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためにまず重要なことは、その医療現場で発生している医療看護業務上のインシデントの状況を正確に把握することである。そのために、本発明では、各看護業務分類項目毎に全業務件数の計数調査を行い、その医療現場で過去に発生した各種のインシデントがそれぞれ、看護業務を詳細に分類するために予め定めた看護業務分類項目のいずれに該当するのか分類し、各看護業務分類項目毎のインシデント件数を計数するとともに、それぞれのインシデント発生率を算出してこれを視覚的に確認できるようにしている。
【0011】
すなわち、第1発明は、各種医療施設における医療看護業務を遂行する上で発生する各種インシデントに関し、その発生原因を分析するとともに再発防止策の立案を補助するための医療看護業務のリスク管理方法であって、
a)各種の医療看護業務に関し、主としてその業務の行為形態に応じて複数に分類した看護業務分類項目を予め定めておき、
b)第1所定期間内に発生した医療看護業務を少なくとも前記看護業務分類項目に分類するとともに、第2所定期間内に発生したインシデントを少なくとも前記看護業務分類項目に分類し、
c)少なくとも前記各看護業務分類項目毎に業務件数及びインシデント件数を計数するとともに、それに基づいてインシデント発生率を算出し、
d)前記看護業務分類項目と該項目毎のインシデント件数、インシデント発生率を対応付けて提示する、
ことを特徴としている。
【0012】
ここで、第1所定期間と第2所定期間とは必ずしも同一期間でなくともよく、また、或る短い期間における調査結果に基づいて所定の長い期間の結果を推定するようにしてもよい。
【0013】
上記看護業務分類項目は、各種の医療看護業務を、例えば「患者の移動・移送」、「患者の確認」、「輸血・注射業務」などの比較的大まかな看護業務のカテゴリに区分するととともに、例えば「輸血・注射業務」を「輸血」、「静脈注射」、「抜き差しの点滴」、「持続点滴の管理」などといったより細かい看護業務のカテゴリに細分化したものとすることができる。また、最も大きな区分として、看護業務を、患者に直接的に関与する(例えば患者に看護行為を行う、話しをする、監視するなど)直接看護業務と、患者には直接関与しない(例えば医師より指示を受ける、看護婦同士で指示の申し送りをするなど)間接看護業務とに大別するとより便利である。
【0014】
また、好ましくは、上述したような看護業務分類項目毎に医療看護業務を分類するのみならず、インシデントの発生頻度を大きく左右すると予測される他の要因も考慮して細かく分類するとよい。具体的には、例えば年齢や症状などを考慮した患者の種別に相当する患者要因や、看護する側の人間の状態を考慮して、日勤、夜勤、深夜勤などの労働態様などを分類の要素として加え、患者要因毎及び労働態様毎に各医療看護業務を看護業務分類項目に分類することができる。もちろん、更に別の分類要因を加えてもよい。
【0015】
更にまた、上記課題を解決するために重要なことは、インシデントの発生した原因を的確に把握することである。特に医療施設の管理者が優先的に取り組むべき課題を明確にするためには、インシデントを起こした当事者個人に係る個別的な原因だけでなく、組織的な課題を明確化することが必要である。
【0016】
そこで、上記第1発明に係るリスク管理方法では、更に、
e)少なくとも、インシデントの原因になるエラー種別分類項目、該インシデントを引き起こす直接的な原因となる直接誘因分類項目、及び、該インシデントを引き起こす間接的な原因となる間接誘因分類項目を予め定めておき、
f)各インシデント毎に、前記エラー種別分類項目、直接誘因分類項目及び間接誘因分類項目から、当該インシデントに最も関連した又は寄与したと推測し得る項目をそれぞれ選んで抽出するとともに、該抽出されたエラー種別分類項目、直接誘因分類項目及び間接誘因分類項目を関連付けた連関鎖を作成して提示する、
ものとするとよい。
【0017】
更にまた、第1発明に係るリスク管理方法では、
g)前記看護業務分類項目毎に前記連関鎖の出現数を計算して、該看護業務分類項目に対する前記インシデント発生率をその出現数に応じて各連関鎖に配分し、 h)前記連関鎖毎に各看護業務分類項目において配分されたインシデント発生率を加算することにより連関鎖別のインシデント発生率を算出し、
i)該インシデント発生率の高い連関鎖に着目してインシデントを防止するための対応策を立案する、
ものとすることができる。
【0018】
上記エラー種別分類項目は、例えば「慣れに基づく行為に関するエラー」、「規則に基づく行為に関するエラー」、「医学的知識に基づく行為に関するエラー」、「高度な専門的判断に基づく行為に関するエラー」、「突発的な事故に起因するエラー」などの項目とすることができる。直接誘因分類項目は、例えば「環境施設要因」、「作業環境要因」、「作業要因」、「個人要因」などの比較的大きなカテゴリに区分するととともに、例えば「作業環境要因」であれば「多忙による業務の中断」、「救急」、「休日や時間外」などのより細かい具体的な要因に細分化したものとすることができる。また、間接誘因分類項目は、例えば「機関文化」、「医療情報管理上の問題」、「労務管理上の問題」などの比較的大きなカテゴリに区分するととともに、例えば「労務管理上の問題」であれば「労働管理上の問題」、「勤務体制上の問題」、「院内教育上の問題」、「新人職員研修制度上の問題」などのより細かい具体的な要因に細分化したものとすることができる。
【0019】
インシデント発生率の高い連関鎖は、逆に言えば、この連関鎖に関連した要因を解決することによってそれだけ全体のインシデント発生率を大きく減少することができるわけであるから、このような連関鎖に着目して優先的に問題を解決することによって、医療事故が発生する危険性を大幅に軽減することができる。
【0020】
更にまた、第1発明に係るリスク管理方法では、医療看護業務を前記看護業務分類項目に分類する際に、少なくとも患者要因毎に該看護業務分類項目に対応したインシデント発生率を算出して記憶しておき、この記憶データに基づいて、新規の患者に対するリスクを予測することもできる。
【0021】
また、第2発明は上記第1発明に係る医療看護業務のリスク管理方法を実施するためのリスク管理支援システムであり、各種医療施設における医療看護業務を遂行する上で発生する各種インシデントに関し、その発生原因を分析するとともに再発防止策の立案を補助するための医療看護業務のリスク管理支援システムであって、
a)各種の医療看護業務に関し、主としてその業務の行為形態に応じて複数に分類した看護業務分類項目を予め記憶させた第1記憶手段と、
b)第1所定期間内に発生した医療看護業務を少なくとも前記看護業務分類項目に分類可能な状態で入力するための第1入力手段と、
c)第2所定期間内に発生したインシデントを少なくとも前記看護業務分類項目に分類可能な状態で入力するための第2入力手段と、
d)前記第1及び第2入力手段により入力された情報に基づいて少なくとも前記各看護業務分類項目毎にインシデント発生率を算出する第1演算処理手段と、
e)前記看護業務分類項目と該項目毎のインシデント件数、インシデント発生率を対応付けて画面上に表示する表示手段と、
を備えることを特徴としている。
【0022】
また、この第2発明に係る医療看護業務のリスク管理支援システムは、上記構成に加えて、
f)少なくとも、インシデントの原因となるエラー種別分類項目、該インシデントを引き起こす直接的な原因となる直接誘因分類項目、及び、該インシデントを引き起こす間接的な原因となる間接誘因分類項目を予め記憶させた第2記憶手段と、
g)前記第2入力手段に含まれ、各インシデント毎に、前記エラー種別分類項目、直接誘因分類項目及び間接誘因分類項目から、当該インシデントに最も関連した又は寄与したと推測し得る項目をそれぞれ選択可能な状態で入力するための第3入力手段と、
h)該第3入力手段により入力された情報に基づいて、抽出されたエラー種別分類項目、直接誘因分類項目及び間接誘因分類項目を関連付けた連関鎖を作成するとともに、これを記憶する要因分析処理手段と、
を更に備えることを特徴としている。
【0023】
更にまた、上記構成に加えて、
i)前記看護業務分類項目毎に前記連関鎖の出現数を計算して、該看護業務分類項目に対する前記インシデント発生率をその出現数に応じて各連関鎖に配分するとともに、前記連関鎖毎に各看護業務分類項目において配分されたインシデント発生率を加算することにより、連関鎖別のインシデント発生率を算出する第2演算処理手段、
を備えた構成とすると尚一層好ましい。
【0024】
更になお、前記第1演算処理手段は、医療看護業務を前記看護業務分類項目に分類する際に、少なくとも患者要因毎に該看護業務分類項目毎に対応したインシデント発生率を算出して記憶しておき、この記憶データに基づいて、新規の患者に対するリスクを予測する構成としてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。先ず、本実施形態による医療看護業務のリスク管理方法を、図1の概念図に従って説明する。
【0026】
本実施形態のリスク管理方法は、大別して、リスク算定ステップS1、リスク分析ステップS2、及びリスク改善予測ステップS3という三段階のステップを有しており、リスク算定ステップS1のために与えられる情報が後述の各看護業務分類項目毎の全業務件数の計数調査結果であり、リスク分析ステップS2のために与えられる情報がインシデントレポートである。インシデントレポートは、医療看護業務上で発生したインシデントの発生日時、発生状況などを看護婦などが予め決められた様式に従って記載する報告書である。したがって、本発明によるリスク管理方法を的確に実施するには、インシデントレポートができる限り正確に及び怠ることなく提出される必要がある。
【0027】
上記各ステップについて次に説明する。
(A)リスク算定ステップS1
リスク算定ステップS1の主たる目的は、評価(分析)対象であるその医療施設(以下、単に「施設」という)で過去に発生した各種のインシデントを的確に分類するとともに統計的に処理することによって、その施設において医療事故に繋がる可能性の高いインシデントを把握することにある。そのために、所定期間内(例えば半年間、一年間など)にその施設内で発生したインシデントを複数の看護業務分類項目のいずれかに区分し、その看護業務分類項目毎にインシデント発生率を算出する。実際には長期間に亘る業務件数を集計することは時間的にも労力的にも困難であるため、例えば、各施設において予め日を定めて所定の期間(例えば平日三日間、休日一日間の合計四日間)に発生した業務件数を集計し、これから一年間に発生するであろう業務件数を推計するとよい。便宜上、このような推計を用いても最終的な結果に大きな差異は生じない。
【0028】
ここで、医療看護業務の件数(つまり手間)やその内容(具体的な看護行為の形態)が左右される要素として、患者要因と労働態様という二つの要素を考慮した分類を行う。労働態様とは看護にたずさわる者に関する要素であり、例えば、日勤、夜勤、深夜勤などの勤務シフト(時間帯)であるとか、更に平日勤務、休日勤務などの看護担当者の労働態様による分類を行うものとする。
【0029】
他方、患者要因は文字通り看護(治療)を受ける患者に関する要素である。特に評価対象の施設が比較的大型の総合病院である場合、患者の範囲が非常に広いことは容易に想像できる。当然、医療看護業務上のリスクも患者の種類に大きく依存している。そこで、様々な患者を次のような「患者要因」として分類する。すなわち、患者の分類項目は、(1)15〜64歳の成年患者、(2)65歳以上の高齢患者、(3)小児(15歳未満)、(4)意識障害を有する患者、(5)運動障害を有する患者、(6)手術後の患者、(7)救急患者、(8)難病或いは末期状態にある患者、(9)透析治療を受けている患者、(10)問題行動(例えば痴呆症による徘徊行為や精神障害など)のある患者、(11)1ヶ月以上の長期間入院している患者、(12)上記(1)〜(11)に分類できない患者、という12種類である。これは、患者の看護に要する手間、必要な看護業務の種類の相違、看護業務のリスクの相違などに応じて分類されたものである。もちろん、或る1人の患者が上記複数の患者要因を併せ持っていることも充分あり得るが、統計上の処理のために、最も適当である1つの要因を選択するものとする。好ましい選択方法の一つとしては、先ず上記患者要因(4)〜(10)の中に該当するものがあるか否かを判断し、該当しない場合には次に(11)に該当するか否かを判断し、これにも該当しなければ更に(1)〜(3)のいずれに該当するのかを判断する。なお、(12)は非常に特殊な場合であって、通常選択されることはない。
【0030】
更にまた、評価対象の医療施設で過去に発生したインシデントの発生状況を詳細に把握するために、様々な医療看護業務を大分類と小分類のカテゴリに分けるとともに、その各看護業務を、患者と直接的に関与する直接看護業務と患者とは直接関与しない付帯的な看護業務である間接看護業務とに分類するようにしている。図3中のBに列記されている項目は、輸液業務に関連した看護業務分類項目の一例である。具体的に言えば、直接看護業務としては、「安全」、「自立の援助」、「患者移動・移送」、「診察・治療の介助」、「輸血・注射業務」、「患者の確認」などの看護業務大分類項目があり、間接看護業務としては、「指示受け・報告」、「看護婦間の報告」、「薬剤業務・管理」、「準備、後片づけ」などの看護業務大分類項目がある。更に、例えば項目「輸血・注射業務」には、「輸血」、「静脈注射」、「抜き差しの点検」、「持続点滴の管理」、「IVH(Intravenous hyperalimentation:経中心静脈栄養法)の開始」、「IVHの管理」、「ポンプ輸液の管理」、「皮下注射」、「筋肉注射」等の看護業務小分類項目が規定されている。
【0031】
例えば図3に示すように、評価対象の医療施設で業務件数調査日に計数した医療看護業務を上記看護業務小分類項目のいずれかに区分し、その項目毎に年間業務件数を推算する。この際に、上述したような労働態様毎、及び患者要因毎に分類を行った上で業務件数を計数・推算すると、よりきめの細かいリスク管理が可能となる。また、同じく1年間に発生したインシデントも上記看護業務小分類項目のいずれかに区分し、労働態様毎、及び患者要因毎に、看護業務小分類項目に対応したインシデント件数を推算する。更に、インシデント件数を上記の年間業務件数で除して各項目毎にインシデント発生率を算出する。その結果、図3に示すような表を作成することができる。また、最も標準的である患者要因(1)、つまり15〜64歳の成年患者、及び日勤の労働態様を基準としたときの各インシデント発生率をインシデントオッズとして算出することにより、患者要因や労働態様の相違によるインシデント発生の頻度の相違を容易に求めることができる。
【0032】
単にインシデント件数のみに着目していると、インシデント件数の少ない看護業務については見逃される傾向にあるが、上述したように子細に区分した患者要因及び労働態様毎に、各看護業務分類項目に対応するインシデント発生率を算出することによって、その施設においてインシデントの発生する確率の高い看護業務を的確に把握し、改善すべき看護業務を抽出するのに有用である。
【0033】
(B)リスク分析ステップS2
リスク分析ステップS2の主たる目的は、その医療施設で発生したインシデントについて看護婦などから報告されたインシデントレポートに基づいて、如何なるレベル(行為や思考の段階)で発生したインシデントであるのかというインシデントの要因種別(エラー種別)と、そのインシデントの発生原因とを明確化することにある。特に、インシデントの発生原因に関して、そのインシデント発生に関する個別的な事情やインシデントを起こした人間の個別的な特性要因にのみ着目するのではなく、そのインシデントを発生した潜在的な要因として、その施設が持つ機関文化(ここでは各医療施設が有する特有の雰囲気などの組織文化のことをいう)などに着目している。そのために、ここでは各インシデントを次の三つの観点からそれぞれ分類する。
・インシデントの要因種別(エラー種別)
・エラーの直接的な誘因(直接誘因)
・エラーの間接的な誘因(間接誘因)
【0034】
図4はインシデントの要因種別(エラー種別)分類項目を示す図である。エラー種別は、主として人間のどのようなレベル(行為や思考の段階など)でのエラーであるのか区分するものであって、「(1)慣れに基づく行為に関するエラー」、「(2)規則に基づく行為に関するエラー」、「(3)医学的知識に基づく行為に関するエラー」、「(4)高度な専門的判断に基づく行為に関するエラー」、「(5)突発的な事故に起因するエラー」という5種類のカテゴリを規定している。
【0035】
図5及び図6は直接誘因分類項目を示す図である。直接誘因は、そのエラーを惹起するに至った直接的な原因について、「(1)環境施設要因」、「(2)作業環境要因」、「(3)作業要因」、「(4)個人要因」、「(5)チーム要因」、「(6)機器要因」及び「(7)安全防護」の7種類の大分類項目を規定している。更に、各大分類項目に対して小分類項目を設け、例えば項目「(2)作業環境要因」では、「(1)多忙による業務の中断」、「(2)救急」、「(3)休日や時間外」、「(4)思いがけない或いは紛らわしい出来事の発生」及び「(5)時間的切迫感」という5種類の小分類項目を規定している。
【0036】
図8は間接誘因分類項目を示す図である。間接誘因は、主として、表面上は現れないものの、そのエラーを惹起するに至った背景的な原因であり、ここでは、「(1)国レベルの文化上の問題」、「(2)機関文化上の問題」、「(3)専門家文化上の問題」、「(4)医療情報管理上の問題」、「(5)管理上の問題」、「(6)労務管理上の問題」、「(7)事故対策上の問題」の7種類の大分類項目を規定している。更に小分類として、「(1)国レベルの文化上の問題」については「(1)国の医療水準」及び「(2)看護教育」の2種類、「(2)機関文化上の問題」については「(1)医療行為の標準化」、「(2)医療行為の簡略化」、「(3)安全な業務遂行への配慮」、「(4)患者安全への配慮」、「(5)責任体制」、「(6)規則の遵守」、「(7)探索の推進」、「(8)医療ミスの共有化」及び「(9)患者教育」の9種類、「(3)専門家文化上の問題」については「(1)専門職種間の交流の存在」、「(2)同僚による能力の評価」及び「(3)モラルの高さ」の3種類、「(4)医療管理情報上の問題」については「(1)一元的情報管理」及び「(2)業務情報管理」の2種類、「(5)管理上の問題」については「(1)安全管理」、「(2)薬剤管理」、「(3)機器管理」、「(4)適切な機器の導入」、「(5)識別方法の導入」、「(6)病院環境」及び「(7)医療機関の産業衛生」の7種類、「(6)労務管理上の問題」については「(1)労働管理」、「(2)勤務体制」、「(3)院内教育」及び「(4)新人職員研修制度」の4種類が規定されている。この間接誘因は、従来から行われている各種の原因分析では全く或いは殆ど考慮されていなかったものであり、本リスク管理方法におけるリスク分析で最も重要なものである。
【0037】
本リスク管理方法では、或るインシデントに関して、上述したエラー種別、直接誘因及び間接誘因から最大の原因となったと推測し得る要因(それがなければインシデントが生じなかったと考えられるもの)をそれぞれ抽出し、それらを組み合わせた「連関鎖」を定義する。図4〜図7に示すように各分類項目には番号が付与されており、連関鎖はその番号を記述した連関鎖数字列で表す。なお、連関鎖数字列を求める場合、ここでは特に間接誘因に着目した分析を実行するために、エラー種別及び直接誘因については上位1個の数字のみ、つまり大分類項目に付与されている番号のみを抽出することとし、合計で4個の数字列として表記する。
【0038】
或るインシデントに関する連関鎖数字列の導出方法について、例を挙げて説明する。
【0039】
〔事例1(図8参照)〕
手術後の患者に対して抗生剤の点滴を続行する旨の口頭指示を看護婦が医師より受け、看護婦はカーデックスに挟んであった点滴箋に従って薬剤A及びBを点滴した。後になって、手術前に行った皮内反応(アレルギ反応)の検査は薬剤C及びDに対するもののみであって、薬剤A及びBに対する皮内反応は実施していなかったことが判明した。
【0040】
このような事例において、本来、指示は全て口頭指示ではなく書面に記載された指示を受けるという規則に反する行為であることから、エラー種別としては「(2)規則に基づく行為に関するエラー」という項目を抽出する。また、看護婦が指示は書面で受けるという基本的で容易な作業を怠ったために確認作業ができなかったことから、直接誘因としては「(3)作業要因」の「(3)看護業務の複雑性として看護業務が容易」という項目を抽出する。間接要因としては、指示は書面で受けるという規則が遵守されていなかったことから、「(2)機関文化上の問題」の「(6)規則の遵守」という項目を抽出する。したがって、本事例における連関鎖数字列の一例は[2326]となる。
【0041】
〔事例2(図9参照)〕
2人の看護婦が一組で相互に作業の確認(つまりダブルチェック)を行うことが規定されている病院において、新人の看護婦が手術前の点滴作業を行おうとした際に、ペアの相手である看護婦がその場に居合わせなかったため、そのままにしていた結果、点滴を行うのを忘れてしまって患者は手術を受けるに至った。
【0042】
このような事例において、エラー種別としては「(1)慣れに基づく行為に関するエラー」という項目を抽出する。また、看護婦が新人であったために予め決められたペアである看護婦以外でその場に居合わせた看護婦に確認の依頼が行えなかったものと判断できることから、直接誘因としては「(4)個人要因」の「(4)新人」という項目を抽出する。更に、例えば新人看護婦には必ず他の看護婦が帯同するといった、上記状況下で新人看護婦をフォローする態勢が整えられていなかったことに原因があると判断できるから、間接誘因としては「(6)労務管理上の問題」の「(4)新人職員研修」という項目を抽出する。したがって、本事例における連関鎖数字列の一例は[1464]となる。
【0043】
このような各要因の判断は、通常、例えば各医療施設又はそれよりも上位の機関に設置されたリスク管理委員会などにより行われる。もちろん、このような連関鎖数字列を決める作業は人間の判断を伴うため、殆ど同一のインシデントであっても、常に同一の連関鎖が選択されるとは限らない。また、複数の要因が関連している場合(実際上はこのような場合が多い)、選択される連関鎖は複数になることもある。
【0044】
例えば或る病院で過去の所定期間(半年間、1年間など)に発生したインシデントの分析とその改善策の策定を行いたい場合には、その所定期間に発生したインシデントに関するインシデントレポートを基に、その全てのインシデントの連関鎖数字列を上述のようにして決定する。
【0045】
(3)リスク改善予測ステップS3
このリスク改善予測ステップS3の主な目的は、上記のようにして求めた各看護業務分類項目毎のインシデント発生率の算出結果、及び各インシデントに対する連関鎖数字列の抽出結果を基にして、その評価対象の医療施設において医療事故を防止するのに最も有効な、そして優先的に実施すべきである問題点を明らかにして、その対応策を立案するのを補助する点にある。そのために、図10に示すように、各看護業務の看護業務小分類項目(図3に記載のもの)毎に、トータルの業務件数及びインシデント件数を計算するとともに、その看護業務小分類項目に関連付けられた連関鎖数字列を抽出し、その連関鎖数字列の出現数をそれぞれ計算する。更に、その看護業務小分類項目に対するインシデント発生率(例えば図3に記載のもの)を連関鎖数字列の数に応じて配分することによって、各連関鎖数字列毎に出現率を求める。
【0046】
上記結果は各看護業務小分類項目毎の連関鎖数字列の出現率であるが、更に、看護業務の内容とは無関係な連関鎖数字列毎の出現率を求めることができる。すなわち、図11に示すように、各連関鎖数字列毎にその出現数を積算し、看護業務分類小項目毎のその連関鎖数字列の出現率を加算する。そして、その加算出現率Pの対数LogPを計算する。ここで、加算出現率Pの高い連関鎖数字列が示す間接誘因は、看護業務の内容に関係なく、その施設が有している潜在的且つ根本的な問題であると考えられる。
【0047】
そこで、図12に示すように、連関鎖数字列毎に出現数の加算値(加算出現数)と加算出現率の対数値LogPとの対応関係をグラフ上にプロットして示す。これにより、その連関鎖数字列が全体でどのような位置付けにあるのかが視覚的に明らかになる。例えばこの例では、連関鎖〔1112〕は、これに関係するインシデントの発生率及び件数が共に多いことがわかるから、逆に言えば、何らかの対策を施すことによってインシデントの発生率及び件数を共に大きく減少させることができるものである。これに対し、連関鎖〔2422〕は、関係するインシデントの発生率は高いものの件数は比較的少ない。また、連関鎖〔3523〕は、関係するインシデントの発生率及び件数が共に比較的少ないことがわかる。したがって、医療事故を効果的に防止するには、対策を施す優先順序として、連関鎖〔1112〕、〔2422〕、〔3523〕とするとよいことがわかる。
【0048】
こうして解決すべき問題点が明確になった後、その対応策を検討する際には図13に一部を示すようなリスク対策テーブルを参考にすることができる。このリスク対策テーブルには、各間接誘因毎に対策として考えられる情報が格納されている。例えば連関鎖数字列〔XX23〕(但しXXは任意)である場合、間接誘因は「機関文化上の問題」で「安全な業務遂行への配慮」が不足しているという問題点が抽出され、この対策として、図13のリスク対策テーブルを参照すると次のような対策例が得られる。
(1)同一薬剤の一日当たりの投薬回数を減らす
(2)薬物療法について単一の記録システムを作成する
(3)薬物療法に使用する機器の種類を制限する
(4)真に必要な薬剤・点滴であるかどうかをチェックをする
(5)現場の有害事象に直ちに対応できる手順を用意する
こうした対策例を参照して、その施設で実施すべき或いは改善すべき対応策を立案することができる。もちろん、必ずしもリスク対策テーブルに記載されている対策例に縛られるものではなく、上述したようなリスク分析結果を参考にしてその施設に応じた対応策をとることができることは言うまでもない。
【0049】
また、リスク改善の対策を講じた場合にどの程度事故が減少するのかというリスク改善予測を次のようにして行うことができる。すなわち、業務件数がMi件であるような或る直接看護業務における現時点でのインシデント発生率Piを将来的に確率Pi’に減少させたとき、事故の減少率は、
Mi×(Pi−Pi’)
である。したがって、全ての直接看護業務について対策を行った後の事故の減少率は、
Σ{Mi×(Pi−Pi’)}/ΣMiPi
である。
【0050】
更に、一回目の調査で得られた、患者要因及び労働態様毎のインシデント発生率の算出結果などを利用することにより、それ以降、その施設に入院する患者に対してのインシデント発生率を予測することが可能である。例えば、今年の調査結果から、患者要因(4)〈意識障害を有する患者〉に対する深夜勤の看護におけるインシデント発生率が求まる。具体的には、この患者要因におけるインシデント発生率は看護業務Aにおいて患者要因(1)〈15〜64歳の成年患者〉の10倍、看護業務Bにおいては3倍である、といった結果が得られる。そこで、次に患者要因(4)である患者が入院したときに、どのような労働態様の下でどのような看護業務を行ったときに、どの程度の確率でインシデントが発生する可能性があるのかを即座に予測することができる。また、その患者が一日のうちでその看護業務を受ける回数(件数)も推算することができるので、入院期間中のリスクも予測することができる。
【0051】
このようにして、本実施形態によるリスク管理方法によれば、各医療施設で過去に発生したインシデントを分析し、看護業務分類項目毎のインシデント発生率を算出するとともに、インシデントの発生する要因を機関文化などの潜在的要因にまで踏み込んで明確化することができるので、その施設の機関文化や管理体制などに問題点がある場合にでも具体的で効果的な対応策を策定することができ、ひいては医療事故を防止するのに非常に有用である。
【0052】
次に、上述したリスク管理方法を実施するためのリスク管理支援システムの一実施例について説明する。図2は本実施例のリスク管理支援システムの構成図である。
本リスク管理支援システム1は、周知のパーソナルコンピュータに所定のリスク管理支援ソフトウエアを搭載しており、そのソフトウエアを実行しつつ必要な事項を入力情報として与えることによって上述したような機能を具現化する。すなわち、このリスク管理支援システム1は、図2に示すように、各種の演算処理及び制御処理を実行するCPU21,ROM22,RAM23などを備えるパーソナルコンピュータ(以下「PC」と略す)20と、これに接続されたシート読取り装置25と、ディスプレイなどの表示装置26と、記憶装置30などから構成されている。シート読取り装置25は後述するような所定形式で情報が記入されたマークシートを読み取るためのものである。記憶装置30にはこのシステムの運用に必要な各種のデータベースとして、看護業務分類情報31、患者要因分類情報32、労働態様分類情報33、エラー種別分類情報34、直接誘因分類情報35、間接誘因分類情報36、リスク対策テーブル37などが予め格納されている。また、演算処理の過程で算出されたインシデント発生率などの演算結果を格納しておくための演算結果データ記憶部38も設けられている。
【0053】
看護業務分類情報31、患者要因分類情報32、労働態様分類情報33、エラー種別分類情報34、直接誘因分類情報35、及び間接誘因分類情報36は、それぞれ上述した看護業務大分類項目及び小分類項目、患者要因分類項目、労働態様分類項目、エラー種別分類項目、直接誘因分類項目、間接誘因分類項目に相当する情報で、各種の医療施設で共通に利用することを考慮して、広範囲な調査によって収集された情報を基に予め整理されたものである。
【0054】
リスク管理支援ソフトウエアの実行が開始されると、上述したリスク算定ステップS1、リスク分析ステップS2、リスク改善予測ステップS3に相当する処理を順次行うか、或いは、その一部を選択的に行うことになる。
【0055】
例えばオペレータは、予め定められたリスク算定業務件数調査日に、それまでに集められていた看護業務レポート2をPC20に読み込ませることにより業務件数計数処理を行う。看護業務レポート2はマークシート形式で記入されるものであって、例えば図14、図15に示すような形式とすることができる。例えば図14に示す例は、各看護婦が或る調査日一日における各直接看護業務項目の件数を各患者毎に記入するものである。ここで、勤務帯が労働態様に相当する。図15に示す例は、各看護婦が或る調査日一日における間接看護業務項目の件数を記入するものである。間接看護業務は各患者に対応したものではないので患者を特定する分類は設けられていない。また、上記看護業務レポート2とは別に、各患者の患者要因を入力するために、図16に示すように、同じくマークシート形式で記入される患者フェースシート3が利用される。この患者フェースシート3と看護業務レポート2との記載内容をシート読取り装置25で読み込むことにより、PC20においては図14に示した患者番号と患者要因とが対応付けられ、患者要因毎の看護業務の計数が可能となる。
【0056】
全ての看護業務レポート2及び患者フェースシート3に記入されているデータを読み込んだ後、PC20は所定の計数処理を実行し、その結果、患者要因毎及び労働態様毎の、各業務分類項目に対応した業務件数が算出され、演算結果データ記憶部38に格納される。
【0057】
一方、インシデントの発生毎に看護婦が記入するインシデントレポート4も図17に一例を示すように基本的にはマークシート形式になっており、疾患名欄や具体的記述欄を除き、別途定められている記入要領に従って各欄に所望記述内容を数字として記入するように規定されている。こうしたインシデントレポート4をシート読取り装置25から読み込ませると、PC20では上述したようなインシデント発生率などの算出処理が実行される。すなわち、看護業務分類情報31から読み出されたデータに基づいて図3に示すような表のフォームが作成されて表示装置26の画面上に表示され、演算結果データ記憶部38に格納されていた業務件数データと、上記インシデントレポート4から読み込まれたデータとに基づいて患者要因毎及び労働態様毎のインシデント発生率やインシデントオッズなどが自動的に計算されて、上記表中に表示されるようになっている。こうした表を構成するデータも演算結果データ記憶部38に保存される。
【0058】
また、上述した各看護業務小分類項目毎のインシデント発生率に関するデータと、インシデントに対する連関鎖数字列を定めたデータとが保存された状態で、集計処理が指示されると、PC20は、各インシデントに対応する連関鎖数字列を抽出し、その連関鎖数字列毎の出現数を計算する。更に、その看護業務小分類項目に対するインシデント発生率を連関鎖数字列の数に応じて配分することによって、各連関鎖数字列の出現率を求める。このような処理の結果は、図10に示すような表形式で表示装置26の画面上に表示される。
【0059】
次いで、看護業務小分類項目とは無関係に連関鎖数字列毎の出現率を計算し、その結果を図11に示すような表形式で表示装置26の画面上に表示する。更にまた、図12に示すように、連関鎖数字列毎に出現数の加算値と加算出現率の対数値LogPとの対応関係をグラフ上にプロットして描出する。これにより、オペレータは、その連関鎖数字列が全体でどのような位置付けにあるのかを視覚的に知ることができる。更にまた、その連関鎖数字列に応じてリスク対策テーブル36から対応する情報が読み出され、対策例として表示装置26の画面上に表示される。これにより、インシデントを低減させるために必要な対策案の策定を補助することができる。
【0060】
また、上述した通り、演算結果データ記憶部38にはそれ以前の調査によって収集・算出されたインシデント発生率などのデータが蓄積されているから、例えば、新しい入院患者があった場合に、その患者の患者要因をPC20に入力し所定の操作を行うことによって、その患者に対するインシデント発生率を始めとするリスクを予測することができる。
【0061】
なお、上述したようにマークシートを利用したインシデントレポートを作成し、これをシート読取り装置25から読み込ませる以外に、各看護婦がインシデントレポートに対応するデータをPC20に直接入力するような構成としてもよい。すなわち、オペレータがキーボードから所定の操作を行うと、エラー種別分類情報34、直接誘因分類情報35、及び間接誘因分類情報36から読み出されたデータに基づいて、図18に示すようなインシデント分類項目入力設定画面が表示装置26の画面上に表示される。この入力設定画面では、上記三分類項目がそれぞれ上下スクロール及びクリック操作等により選択可能となっており、オペレータはこの画面に沿って上記リスク管理委員会などの決定に従い各分類項目を選択してクリック操作或いは直接数値を入力するなどの操作を行えば、個別のインシデント毎に連関鎖数字列を決めることができる。
【0062】
なお、上述したような主として表計算である演算処理を実行する際には、周知の表計算ソフトウエア(例えばマイクロソフト社のMicrosoft Excelなど)を利用してもよい。
【0063】
このようにして上記記載のリスク管理支援システムを使用すれば、上述したような医療施設において発生するインシデントを低減するためのリスク管理方法を容易に実施することができる。
【0064】
なお、上記実施形態は本発明の単に一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正を加えたものも本発明の請求の範囲に包含されることは明らかである。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、第1発明に係る医療看護業務のリスク管理方法によれば、各看護業務分類項目毎にインシデントの発生件数を把握することができるのみならず、インシデント発生率として把握することができるので、どのような看護業務でインシデントが発生する恐れが高いのかを的確に認識することができる。また、インシデント発生の潜在的要因として評価対象の医療施設特有の問題、管理体制や組織文化などにまで踏み込んでその原因を明確化することができるので、その施設のマネージメントなどに問題がある場合にはその問題を解決するための的確な対応策を立案することができる。更に、患者要因や労働態様に対応したインシデント発生率とインシデントの起こり易い看護業務とを予測できるので、医療事故の防止に非常に有用である。
【0066】
また、第2発明に係るリスク管理の支援システムを用いれば、上記リスク管理方法に関して必要な一連の処理を迅速に且つスムーズに実施することができ、更に、異なる医療施設において同一の基準で容易にリスク管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるリスク管理方法の概念図。
【図2】 本実施形態によるリスク管理方法を実施するためのリスク管理支援システムの基本構成図。
【図3】 看護業務分類情報の一例を示す図。
【図4】 エラー種別分類情報の一例を示す図。
【図5】 インシデントの直接誘因分類情報の一例を示す図。
【図6】 インシデントの直接誘因分類情報の一例を示す図。
【図7】 インシデントの間接誘因分類情報の一例を示す図。
【図8】 或るインシデントに対する連関鎖の選択の一例を示す図。
【図9】 或るインシデントに対する連関鎖の選択の一例を示す図。
【図10】 リスク分析の一例を示す図。
【図11】 リスク分析の一例を示す図。
【図12】 リスク分析の一例を示す図。
【図13】 リスク対策テーブルの一例を示す図。
【図14】 マークシート形式の看護業務レポートの一例を示す図。
【図15】 マークシート形式の看護業務レポートの一例を示す図。
【図16】 マークシート形式の患者フェースシートの一例を示す図。
【図17】 マークシート形式のインシデントレポートの一例を示す図。
【図18】 インシデントレポートに対応するインシデント分類項目入力設定画面の一例を示す図。
【符号の説明】
1…リスク管理支援システム
2…看護業務レポート
3…患者フェースシート
4…インシデントレポート
20…パーソナルコンピュータ(PC)
21…CPU
22…ROM
23…RAM
25…シート読取り装置
26…出力装置
30…記憶装置
31…看護業務分類情報
32…患者要因分類情報
33…労働態様分類情報
34…エラー種別分類情報
35…直接誘因分類情報
36…間接誘因分類情報
37…リスク対策テーブル
38…演算結果データ記憶部

Claims (1)

  1. 各種医療施設における医療看護業務を遂行する上で発生する各種インシデントに関し、その発生原因を分析するとともに再発防止策の立案を補助するための医療看護業務のリスク管理支援システムであって、
    a)各種の医療看護業務に関し、主としてその業務の行為形態に応じて複数に分類した看護業務分類項目を予め記憶させた第1記憶手段と、
    b)第1所定期間内に発生した医療看護業務を少なくとも前記第1記憶手段から読み出した前記看護業務分類項目に分類可能な状態で入力するための第1入力手段と、
    c)第2所定期間内に発生したインシデントを少なくとも前記第1記憶手段から読み出した前記看護業務分類項目に分類可能な状態で入力するための第2入力手段と、
    d)前記第1及び第2入力手段により入力された情報に基づいて、少なくとも前記各看護業務分類項目毎に上記インシデントの件数を上記医療看護業務の件数で除すことによりインシデント発生率を算出する第1演算処理手段と、
    e)前記看護業務分類項目と該項目毎のインシデント件数、インシデント発生率を対応付けて画面上に表示する表示手段と、
    f)少なくとも、インシデントの原因となるエラー種別分類項目、該インシデントを引き起こす直接的な原因となる直接誘因分類項目、及び、該インシデントを引き起こす間接的な原因となる間接誘因分類項目を予め記憶させた第2記憶手段と、
    g)前記第2入力手段に含まれ、各インシデント毎に、前記第2記憶手段から読み出した前記エラー種別分類項目、直接誘因分類項目及び間接誘因分類項目から、当該インシデントに最も関連した又は寄与したと推測し得る項目をそれぞれ選択可能な状態で入力することにより各項目が関連づけられた連関鎖を作成するための第3入力手段と、
    h)前記看護業務分類項目毎に、該看護業務分類項目に関連付けられた連関鎖を抽出し、該連関鎖の出現数を計算して、該看護業務分類項目に対する前記インシデント発生率をその出現数に応じて各連関鎖に配分するとともに、前記連関鎖毎に各看護業務分類項目において配分されたインシデント発生率を加算することにより、連関鎖別のインシデント発生率を算出する第2演算処理手段と、
    i)前記連関鎖の出現数の加算値と、前記連関鎖別のインシデント発生率の対数値との対応関係をグラフ上にプロットして画面上に表示するグラフ表示手段と、
    を備えることを特徴とする医療看護業務のリスク管理支援システム。
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