JP3861480B2 - スラグの分析方法及び装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラグの分析方法及び装置に係わり、特に、鉄鋼精錬過程において、精錬容器内で生じるスラグを赤外分光法で直接分析する技術である。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼精錬等、金属精錬の実施に際しては、目標とする組成の金属を得るため、精錬容器内で生じるスラグに他の物質を添加して、スラグ・メタル間反応に必要なスラグ組成に調整することが行われる。そのため、精錬途上でスラグの分析を行い、得られた分析値に基づき精錬の進捗状況を適宜コントロールすることが好ましい。かかるスラグの分析には、多元素を同時に精度良く分析できるという理由により、通常、ガラスビードを試料とした蛍光X線分析法が用いられている。この方法は、精錬途上で採取したスラグを迅速に冷却、粉砕した後、その10倍程度の硼酸ナトリウム等の融剤を加えて融解し、均質なガラス状の試料(ガラスビード)を作製し、該試料を蛍光X線で分析するものである。この方法には、共存元素の影響が小さく、分析精度が高いという利点がある。しかし、試料作製のために、スラグの採取、冷却、粉砕、秤量、融解等、多種の作業が必要で、分析終了までに通常50分以上の時間を要すという問題がある。
【0003】
また、試料の作製をより簡便にするため、破砕したスラグを型に入れて加圧成形し、所謂ブリケットにすることもある。このブリケット状試料を用いれば、前記ガラスビードに比較して、秤量や融解の作業がないだけ、分析時間はいくらか短縮される。それでも、粉砕に用いる容器の汚染による分析精度の低下を防ぐための共洗い等の実施で、分析時間は少なくとも25〜30分を要する。
【0004】
さらに、上記ガラスビードやブリケットを試料に用いる方法を自動化システムとして組みあげたとしても、分析時間を20分以下にするのは困難であり、スラグの分析値を直ちに精錬作業に反映できないのが現状である。
【0005】
加えて、分析時間をさらに短縮するために、特開平10−170411号公報は、採取したスラグをそのまま試料として蛍光X線分析する方法を開示している。それは、精錬容器内の溶融スラグ層に大きな平坦面を有するサンプラを突っ込み、該平坦面にスラグを付着させ、スラグ層からサンプラを引き上げてから固化したスラグを剥し取り、該スラグのサンプラの平端面との接触面を蛍光X線で分析するものである。
【0006】
しかしながら、かかる方法も、サンプラの設置、サンプリング作業、冷却、剥離、蛍光X線分析等に少なくとも10分程度を要するので、精錬途上の溶鋼の所謂「キルド」処理、成分調製等を行なうために、分析を1分程度で終えることと言うような迅速性が要求され、精錬作業に対しては利用できない。また、この方法では、限られた量の試料しか得られず、さらに、そのごく一部を分析に供するので、分析値は必ずしもスラグ組成を代表することにならないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する問題点を解決し、鉄鋼など溶融金属の精錬工程において、スラグを正確、且つ迅速にオンラインで分析し、得られた分析値に基づき、精錬作業に対して指示を与えることが可能なスラグの分析方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため、試料をまったく作製しないで分析することに着眼して鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0009】
すなわち、本発明は、精錬容器内で高温状態にあるスラグから放出される赤外光を、直接に順次採光、分光し、得られた赤外発光スペクトル強度がピークを示す波長で該スラグが含有する元素の結合種を同定すると共に、該ピークの大きさでその結合種の濃度を定量することを特徴とするスラグの分析方法である。
【0010】
また、本発明は、前記赤外発光スペクトル強度のピークの大きさから、該ピークをはさんで隣接する複数波長の発光強度を測定して熱輻射に起因するバックグラウンド量を除去することを特徴とするスラグの分析方法である。
【0011】
さらに、本発明は、精錬容器の上方空間に位置し、該精錬容器内で高温状態にあるスラグが放出する赤外光を採光する赤外線用光ファイバと、該光ファイバで搬送された赤外光を分光し、分光で得た赤外発光スペクトルを測定する分光装置と、該赤外発光スペクトル強度のピーク波長で元素の結合種を同定すると共に、該ピークの大きさを演算処理して該結合種の濃度を定める演算器とからなることを特徴とするスラグの分析装置である。
【0012】
加えて、本発明は、前記光ファイバに、該光ファイバの視野を広げるレンズ及び不活性ガスの吹き出し口と、該ファイバを高温度から保護する冷却ジャケットとを備えたことを特徴とするスラグの分析装置でもある。
【0013】
ここで、元素の結合種とは、元素の結合形態をいい、例えば、元素がSiの場合、Si−O,Si−Ca−O等である。
【0014】
本発明によれば、鉄鋼など溶融金属の精錬工程において、精錬容器内に保持したままで、スラグの組成を正確、且つ迅速にオン・ラインで分析できるようになる。その結果、得られた分析値に基づき、精錬作業に対して指示を与えることが可能となり、該精錬作業の管理が従来より容易になった。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明の重要ポイントは、精錬容器内で溶融状態にあるスラグから直接赤外光を採光することである。それを、本発明では、図4に示すように、製錬容器9の上方に新規な採光、集光系5を配置することでなしとげた。つまり、精錬容器9の上方数メートルに赤外用光ファイバ1(以下、単に光ファイバ)の先端を位置せしめ、溶融スラグの放出する赤外光を採光するようにしたのである。その際、光ファイバ1は、高温に曝されるので、その性能を維持するために、次のような冷却や種々の工夫を凝らした。
【0017】
まず、本発明では、図1に示すように、光ファイバ1を水冷ジャケット2に挿入し、該水冷ジャケット2内の循環水8で冷却するよう工夫している。この冷却は、光ファイバ1の外周面に銅等の熱伝導の良い金属を蒸着し、この蒸着膜を外部から冷却することによって行なっても良い。
【0018】
また、光ファイバ1の先端には、凸レンズ及び凹レンズからなる集光光学系4を設置し、より広い領域からの赤外光の採光を可能にしている。これは、分析値がスラグ10のより広い領域を代表する値となるために必要なことである。なお、凸レンズ及び凹レンズを組み込まなくても、光ファイバ自体の先端を広範囲集光機能を持つように加工しても良いし、光ファイバ自体を移動したり、複数設置しても良い。
【0019】
さらに、金属精錬においては、通常、一酸化炭素あるいは二酸化炭素等の赤外光を吸収するガスや、光を散乱させて測定するスペクトルの強度を低下させるダストが発生し、赤外光スペクトルの測定を妨害する。この妨害を除去するため、本発明では、光ファイバ1の先端部にAr等の不活性ガスを吹き付けるようにしている。具体的には、図1に示すようなガス吹き出し口12を設け、採光対象のスラグ表面までの雰囲気を不活性ガスとする。また、吹き出される不活性ガス13の一部を前記レンズの表面に向けることで、上記不活性ガス13やダストの集光光学系4への付着を防止することができる。
【0020】
次に、採光された赤外光は、同一の光ファイバ1でスペクトル強度の検出器を内蔵した分光装置に送られ、スラグ10が含有するすべての元素の結合種の赤外発光スペクトルの強度が測定される。具体的には、横軸に赤外発光スペクトルの波長を、縦軸にその強度を示すグラフが得られる。なお、高温物体からの赤外発光スペクトルは、温度依存性のある熱輻射によるバックグラウンドを含んでいるので(図2参照)、各元素の結合種濃度の定量に当っては、このバックグランドを除去する必要がある。本発明では、その除去方法として、スラグ10中に含まれる元素の結合種の赤外発光スペクトルのピークを含まない、複数の波長において発光強度を測定し、該測定値よりスラグ中の各元素の結合種の発光スペクトル波長におけるバックグラウンド強度を推定し、差し引くようにする。具体的には、図3に示すように、測定対象となる各元素の結合種の発光スペクトル波長(ピーク位置)の両端に隣接する波長において、発光スペクトルの強度を測定し、直線近似でバックグラウンド量を推定する。
【0021】
また、高温物体からの発光強度は、黒体の発光強度で近似でき、下記の(1)式で表される。
【0022】
ρ(ν、T)=(8πhν3/c3)[exp(hν/kT)−1](1)
ここで、cは光速、kはボルツマン定数、hはプランク定数、Tは絶対温度を示す。
【0023】
従って、スラグ10の各元素の結合種に起因する発光スペクトル強度のピークを含まない2つの波長で発光スペクトルの強度を測定すれば、その時の温度の発光強度を計算により推定することもでき、この強度をスラグ中の各結合種の発光スペクトル波長におけるスペクトル強度から差し引くことで、該結合種の真の発光スペクトル強度を求めることもできる。
【0024】
なお、実際にスラグ10の結合種を濃度で求めるには、上記した方法で各元素の結合種の真の発光スペクトル強度を求め、予め作成してある発光スペクトル強度と濃度との関係を示す検量線と対比することで行われる。この検量線は、周知のように、含有する結合種の濃度が既知のスラグ試料を溶融状態にして、上述の方法で真の発光強度を求めることで作成される。
【0025】
以上述べた本発明に係る分析方法によれば、分析対象の溶融スラグが一般に1000℃以上の高温であるので、採光が円滑にでき、十分な発光強度が得られる。また、分析に要する時間は、1秒程度と従来に比べて格段と短縮される。従って、得られた分析値を、精錬作業の管理にフィードバックすることが可能となる。
【0026】
【実施例】
図4に示した本発明に係る分析装置を用い、実際に転炉(精錬容器)内にある溶融スラグを分析した結果を表1に示す。なお、従来法としては、ガラスビードの試料を作製し、蛍光X線で分析する方法を採用した。その際、スラグ10中に存在する結合種の濃度を、酸化物濃度に換算している。なお、本発明に係る方法では、光ファイバ10を定位置に約30秒かけて設置し、10秒間にわたって連続して採光し、その積算した発光スペクトル強度から分析値を求め、さらにこの分析値の連続10回の平均値を示している。これは、スラグの結合種が位置によって異なるため、できるだけ広い領域から採光し、分析値の代表性を高めるためである。また、表1には、各結合種の発光スペクトルの波数も示してある。
【0027】
【表1】
【0028】
表1より、従来の分析方法に比して、飛躍的に分析時間は短縮され、精錬工程にスラグの分析値を迅速に提供できることが明らかである。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、精錬の途上で、スラグを偏析等の影響を受けずにリアルタイムで分析することが可能になる。その結果、鉄鋼等、金属の精錬反応の調整を、得られたスラグの分析結果を基にして行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る採光、集光系の一例を示す縦断面図である。
【図2】黒体の温度による赤外発光スペクトル強度の変化を示す図である。
【図3】スペクトルのバックグラウンド量の決定方法、つまり各元素の真の発光強度を求める方法を説明する図である。
【図4】本発明に係る分析装置の全体概念図を示す図である。
【符号の説明】
1 光ファイバ
2 冷却ジャケット
3 不活性ガス流通ジャケット
4 集光光学系(レンズ)
5 採光、集光系
6 分光装置
7 演算器(データの処理、搬送)
8 循環水
9 精錬容器
10 スラグ
11 溶融金属
12 ガス吹き出し口
13 不活性ガス
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラグの分析方法及び装置に係わり、特に、鉄鋼精錬過程において、精錬容器内で生じるスラグを赤外分光法で直接分析する技術である。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼精錬等、金属精錬の実施に際しては、目標とする組成の金属を得るため、精錬容器内で生じるスラグに他の物質を添加して、スラグ・メタル間反応に必要なスラグ組成に調整することが行われる。そのため、精錬途上でスラグの分析を行い、得られた分析値に基づき精錬の進捗状況を適宜コントロールすることが好ましい。かかるスラグの分析には、多元素を同時に精度良く分析できるという理由により、通常、ガラスビードを試料とした蛍光X線分析法が用いられている。この方法は、精錬途上で採取したスラグを迅速に冷却、粉砕した後、その10倍程度の硼酸ナトリウム等の融剤を加えて融解し、均質なガラス状の試料(ガラスビード)を作製し、該試料を蛍光X線で分析するものである。この方法には、共存元素の影響が小さく、分析精度が高いという利点がある。しかし、試料作製のために、スラグの採取、冷却、粉砕、秤量、融解等、多種の作業が必要で、分析終了までに通常50分以上の時間を要すという問題がある。
【0003】
また、試料の作製をより簡便にするため、破砕したスラグを型に入れて加圧成形し、所謂ブリケットにすることもある。このブリケット状試料を用いれば、前記ガラスビードに比較して、秤量や融解の作業がないだけ、分析時間はいくらか短縮される。それでも、粉砕に用いる容器の汚染による分析精度の低下を防ぐための共洗い等の実施で、分析時間は少なくとも25〜30分を要する。
【0004】
さらに、上記ガラスビードやブリケットを試料に用いる方法を自動化システムとして組みあげたとしても、分析時間を20分以下にするのは困難であり、スラグの分析値を直ちに精錬作業に反映できないのが現状である。
【0005】
加えて、分析時間をさらに短縮するために、特開平10−170411号公報は、採取したスラグをそのまま試料として蛍光X線分析する方法を開示している。それは、精錬容器内の溶融スラグ層に大きな平坦面を有するサンプラを突っ込み、該平坦面にスラグを付着させ、スラグ層からサンプラを引き上げてから固化したスラグを剥し取り、該スラグのサンプラの平端面との接触面を蛍光X線で分析するものである。
【0006】
しかしながら、かかる方法も、サンプラの設置、サンプリング作業、冷却、剥離、蛍光X線分析等に少なくとも10分程度を要するので、精錬途上の溶鋼の所謂「キルド」処理、成分調製等を行なうために、分析を1分程度で終えることと言うような迅速性が要求され、精錬作業に対しては利用できない。また、この方法では、限られた量の試料しか得られず、さらに、そのごく一部を分析に供するので、分析値は必ずしもスラグ組成を代表することにならないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する問題点を解決し、鉄鋼など溶融金属の精錬工程において、スラグを正確、且つ迅速にオンラインで分析し、得られた分析値に基づき、精錬作業に対して指示を与えることが可能なスラグの分析方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため、試料をまったく作製しないで分析することに着眼して鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0009】
すなわち、本発明は、精錬容器内で高温状態にあるスラグから放出される赤外光を、直接に順次採光、分光し、得られた赤外発光スペクトル強度がピークを示す波長で該スラグが含有する元素の結合種を同定すると共に、該ピークの大きさでその結合種の濃度を定量することを特徴とするスラグの分析方法である。
【0010】
また、本発明は、前記赤外発光スペクトル強度のピークの大きさから、該ピークをはさんで隣接する複数波長の発光強度を測定して熱輻射に起因するバックグラウンド量を除去することを特徴とするスラグの分析方法である。
【0011】
さらに、本発明は、精錬容器の上方空間に位置し、該精錬容器内で高温状態にあるスラグが放出する赤外光を採光する赤外線用光ファイバと、該光ファイバで搬送された赤外光を分光し、分光で得た赤外発光スペクトルを測定する分光装置と、該赤外発光スペクトル強度のピーク波長で元素の結合種を同定すると共に、該ピークの大きさを演算処理して該結合種の濃度を定める演算器とからなることを特徴とするスラグの分析装置である。
【0012】
加えて、本発明は、前記光ファイバに、該光ファイバの視野を広げるレンズ及び不活性ガスの吹き出し口と、該ファイバを高温度から保護する冷却ジャケットとを備えたことを特徴とするスラグの分析装置でもある。
【0013】
ここで、元素の結合種とは、元素の結合形態をいい、例えば、元素がSiの場合、Si−O,Si−Ca−O等である。
【0014】
本発明によれば、鉄鋼など溶融金属の精錬工程において、精錬容器内に保持したままで、スラグの組成を正確、且つ迅速にオン・ラインで分析できるようになる。その結果、得られた分析値に基づき、精錬作業に対して指示を与えることが可能となり、該精錬作業の管理が従来より容易になった。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明の重要ポイントは、精錬容器内で溶融状態にあるスラグから直接赤外光を採光することである。それを、本発明では、図4に示すように、製錬容器9の上方に新規な採光、集光系5を配置することでなしとげた。つまり、精錬容器9の上方数メートルに赤外用光ファイバ1(以下、単に光ファイバ)の先端を位置せしめ、溶融スラグの放出する赤外光を採光するようにしたのである。その際、光ファイバ1は、高温に曝されるので、その性能を維持するために、次のような冷却や種々の工夫を凝らした。
【0017】
まず、本発明では、図1に示すように、光ファイバ1を水冷ジャケット2に挿入し、該水冷ジャケット2内の循環水8で冷却するよう工夫している。この冷却は、光ファイバ1の外周面に銅等の熱伝導の良い金属を蒸着し、この蒸着膜を外部から冷却することによって行なっても良い。
【0018】
また、光ファイバ1の先端には、凸レンズ及び凹レンズからなる集光光学系4を設置し、より広い領域からの赤外光の採光を可能にしている。これは、分析値がスラグ10のより広い領域を代表する値となるために必要なことである。なお、凸レンズ及び凹レンズを組み込まなくても、光ファイバ自体の先端を広範囲集光機能を持つように加工しても良いし、光ファイバ自体を移動したり、複数設置しても良い。
【0019】
さらに、金属精錬においては、通常、一酸化炭素あるいは二酸化炭素等の赤外光を吸収するガスや、光を散乱させて測定するスペクトルの強度を低下させるダストが発生し、赤外光スペクトルの測定を妨害する。この妨害を除去するため、本発明では、光ファイバ1の先端部にAr等の不活性ガスを吹き付けるようにしている。具体的には、図1に示すようなガス吹き出し口12を設け、採光対象のスラグ表面までの雰囲気を不活性ガスとする。また、吹き出される不活性ガス13の一部を前記レンズの表面に向けることで、上記不活性ガス13やダストの集光光学系4への付着を防止することができる。
【0020】
次に、採光された赤外光は、同一の光ファイバ1でスペクトル強度の検出器を内蔵した分光装置に送られ、スラグ10が含有するすべての元素の結合種の赤外発光スペクトルの強度が測定される。具体的には、横軸に赤外発光スペクトルの波長を、縦軸にその強度を示すグラフが得られる。なお、高温物体からの赤外発光スペクトルは、温度依存性のある熱輻射によるバックグラウンドを含んでいるので(図2参照)、各元素の結合種濃度の定量に当っては、このバックグランドを除去する必要がある。本発明では、その除去方法として、スラグ10中に含まれる元素の結合種の赤外発光スペクトルのピークを含まない、複数の波長において発光強度を測定し、該測定値よりスラグ中の各元素の結合種の発光スペクトル波長におけるバックグラウンド強度を推定し、差し引くようにする。具体的には、図3に示すように、測定対象となる各元素の結合種の発光スペクトル波長(ピーク位置)の両端に隣接する波長において、発光スペクトルの強度を測定し、直線近似でバックグラウンド量を推定する。
【0021】
また、高温物体からの発光強度は、黒体の発光強度で近似でき、下記の(1)式で表される。
【0022】
ρ(ν、T)=(8πhν3/c3)[exp(hν/kT)−1](1)
ここで、cは光速、kはボルツマン定数、hはプランク定数、Tは絶対温度を示す。
【0023】
従って、スラグ10の各元素の結合種に起因する発光スペクトル強度のピークを含まない2つの波長で発光スペクトルの強度を測定すれば、その時の温度の発光強度を計算により推定することもでき、この強度をスラグ中の各結合種の発光スペクトル波長におけるスペクトル強度から差し引くことで、該結合種の真の発光スペクトル強度を求めることもできる。
【0024】
なお、実際にスラグ10の結合種を濃度で求めるには、上記した方法で各元素の結合種の真の発光スペクトル強度を求め、予め作成してある発光スペクトル強度と濃度との関係を示す検量線と対比することで行われる。この検量線は、周知のように、含有する結合種の濃度が既知のスラグ試料を溶融状態にして、上述の方法で真の発光強度を求めることで作成される。
【0025】
以上述べた本発明に係る分析方法によれば、分析対象の溶融スラグが一般に1000℃以上の高温であるので、採光が円滑にでき、十分な発光強度が得られる。また、分析に要する時間は、1秒程度と従来に比べて格段と短縮される。従って、得られた分析値を、精錬作業の管理にフィードバックすることが可能となる。
【0026】
【実施例】
図4に示した本発明に係る分析装置を用い、実際に転炉(精錬容器)内にある溶融スラグを分析した結果を表1に示す。なお、従来法としては、ガラスビードの試料を作製し、蛍光X線で分析する方法を採用した。その際、スラグ10中に存在する結合種の濃度を、酸化物濃度に換算している。なお、本発明に係る方法では、光ファイバ10を定位置に約30秒かけて設置し、10秒間にわたって連続して採光し、その積算した発光スペクトル強度から分析値を求め、さらにこの分析値の連続10回の平均値を示している。これは、スラグの結合種が位置によって異なるため、できるだけ広い領域から採光し、分析値の代表性を高めるためである。また、表1には、各結合種の発光スペクトルの波数も示してある。
【0027】
【表1】
【0028】
表1より、従来の分析方法に比して、飛躍的に分析時間は短縮され、精錬工程にスラグの分析値を迅速に提供できることが明らかである。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、精錬の途上で、スラグを偏析等の影響を受けずにリアルタイムで分析することが可能になる。その結果、鉄鋼等、金属の精錬反応の調整を、得られたスラグの分析結果を基にして行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る採光、集光系の一例を示す縦断面図である。
【図2】黒体の温度による赤外発光スペクトル強度の変化を示す図である。
【図3】スペクトルのバックグラウンド量の決定方法、つまり各元素の真の発光強度を求める方法を説明する図である。
【図4】本発明に係る分析装置の全体概念図を示す図である。
【符号の説明】
1 光ファイバ
2 冷却ジャケット
3 不活性ガス流通ジャケット
4 集光光学系(レンズ)
5 採光、集光系
6 分光装置
7 演算器(データの処理、搬送)
8 循環水
9 精錬容器
10 スラグ
11 溶融金属
12 ガス吹き出し口
13 不活性ガス
Claims (4)
- 精錬容器内で高温状態にあるスラグから放出される赤外光を、直接に順次採光、分光し、得られた赤外発光スペクトル強度がピークを示す波長で該スラグが含有する元素の結合種を同定すると共に、該ピークの大きさでその結合種の濃度を定量することを特徴とするスラグの分析方法。
- 前記赤外発光スペクトル強度のピークの大きさから、該ピークをはさんで隣接する複数波長の発光強度を測定して熱輻射に起因するバック・グラウンド量を除去することを特徴とする請求項1記載のスラグの分析方法。
- 精錬容器の上方空間に位置し、該精錬容器内で高温状態にあるスラグが放出する赤外光を採光する赤外線用光ファイバと、該光ファイバで搬送された赤外光を分光することにより赤外発光スペクトルを測定する分光装置と、該赤外発光スペクトル強度のピーク波長で元素の結合種を同定すると共に、該ピークの大きさを演算処理して該結合種の濃度を定める演算器とからなることを特徴とするスラグの分析装置。
- 前記光ファイバに、該光ファイバの視野を広げるレンズ及び不活性ガスの吹き出し口と、該ファイバを高温度から保護する冷却ジャケットとを備えたことを特徴とする請求項3記載のスラグの分析装置。
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JP32172998A JP3861480B2 (ja) | 1998-11-12 | 1998-11-12 | スラグの分析方法及び装置 |
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JP2000146950A JP2000146950A (ja) | 2000-05-26 |
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