JP3861456B2 - 角速度検出用振動子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車両制御、ナビゲーション、ビデオカメラの手振れ防止等に用いられる角速度検出用振動子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば特開平8−210860号公報に開示されているように、一対のアーム部とこれを連結する連結部により音叉形状に形成された圧電体からなる振動子を備え、この振動子をアーム部の配列方向である駆動軸方向に一定振動させつつ、角速度入力時に振動子が受けるコリオリ力を、駆動軸と直交する検出軸方向への振動子の振動の変化状態から検出する角速度センサが知られている。
【0003】
そして、この種の角速度センサにおいては、音叉形状に形成した圧電体の外壁面に駆動(励振)用或いは振動検出用の電極を形成するだけで振動子を作製できるため、従来より一般に使用されている、振動子を金属にて形成してその表面に圧電体を接合するタイプの角速度センサに比べて、部品点数が少なく、構造,延いては製造工程が簡易であるという、利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このように圧電体からなる振動子を用いて角速度を検出する場合、振動子を角速度検出用として機能させるには、圧電体に高電圧を印加して圧電的に活性化させる、分極処理という工程が必要である。
【0005】
そこで、従来では、交流電圧を受けて圧電体を駆動軸方向に振動(励振)させる駆動電極や、各アーム部の検出軸方向への振動を検出する検出電極等、角速度の検出に必要な全ての電極を圧電体に形成した後、その形成した電極間に高電圧を印加することにより、圧電体を分極処理するようにしていた。尚、圧電体への各電極の形成は、一般に、銀等の導電性金属を主成分とする金属ぺーストを、その電極形状に対応して圧電体に塗布し、焼き付ける、といった手順で行われる。
【0006】
しかしながら、上記のように音叉形状の圧電体からなる従来の振動子においては、圧電体において凹字状を呈する圧電体の表面に駆動電極や分極用電極を形成し、各アーム部の側面で且つ表面の分極用電極と対応する位置に検出電極を形成し、圧電体の裏面に各電極に対する共通電極を形成し、分極処理の際には、圧電体の表裏面に形成された電極間に分極用電圧を印加することにより、圧電体を表面から裏面又はその逆方向に分極させていた。
【0007】
この結果、従来の振動子においては、分極処理の際に、各アーム部の側面に形成された検出電極の影響を受けて、圧電体の配向方向を均一にすることができず、圧電体に内部応力が残って、経時的に圧電特性が変化してゆくという問題があった。そして、このように圧電体に内部応力が残ると、振動子の振動特性がばらつき、角速度を安定して検出できなくなるとか、圧電体の圧電特性の経時変化によって、角速度の検出特性も経時的に変化し、信頼性が低下する、といった問題が生じる。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、音叉形状若しくは複数の音叉を合成した形状の圧電体からなる角速度検出用振動子を製造するに当たって、圧電体の配向方向が均一で、常に安定した検出特性が得られる角速度検出用振動子を製造できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明方法では、互いに略平行に配置された少なくとも一対のアーム部と各アーム部を連結する連結部とにより音叉形状若しくは複数の音叉を合成した形状に形成された圧電体からなる角速度検出用振動子を製造するに当たって、まず、圧電体の表・裏面に、この表・裏面に配置すべき角速度検出用の電極を形成する(第1工程)。そして、この第1工程で圧電体の表・裏面に形成された電極間に、分極用の電圧を印加することにより、圧電体を表・裏面に略直交する方向に分極処理し(第2工程)、その後、圧電体の側面に、この側面に配置すべき角速度検出用の電極を形成する(第3工程)。
【0010】
このように、本発明では、各アーム部の側面に検出電極を形成する前に、圧電体の分極処理を行うことから、この分極処理の際に、検出電極の影響を受けることなく圧電体を分極させることができ、圧電体の配向方向を均一にすることができる。従って、本発明によれば、分極処理によって、圧電体に内部応力が残り、振動子の振動特性がばらついて、角速度の検出精度が低下するとか、或いは、圧電体の圧電特性の経時変化によって、角速度の検出特性も経時的に変化し、信頼性が低下する、といった問題を防止できる。よって、本発明によれば、角速度を高精度に検出でき、しかも、高い信頼性が得られる角速度センサを実現できることになる。
【0011】
次に請求項2に記載の発明方法は、請求項1に記載の製造方法を利用して、一対のアーム部とこれらを連結する連結部とにより音叉形状に形成された角速度検出用振動子を製造する方法であり、圧電体の表・裏面に電極を形成する第1工程では、圧電体の表面に駆動電極及び分極用電極を、圧電体の裏面に共通電極を、夫々形成する。そして、第2工程では、圧電体裏面の共通電極と、圧電体表面の各電極との間に、夫々分極用電圧を印加することにより、圧電体を分極処理し、圧電体の側面に電極を形成する第3工程では、分極処理後の圧電体の各アーム部の側面で且つ分極用電極との対応位置に検出電極を形成する。
【0012】
本発明方法により作製された音叉形状の振動子においては、例えば、裏面に形成された共通電極を基準電位に接地し、表面に形成された駆動電極に基準電位を中心に変化する交流電圧を印加すれば、駆動軸方向に振動させることができる。またこのように振動子を駆動軸方向に振動させた状態で、各アーム部に略平行な軸周りの角速度が入力されると、各アーム部が、その入力角速度に応じて検出軸方向に振動し、その振動は、各アーム部の側面に形成された検出電極と共通電極との間に流れる電流変化から検出できる。従って、検出電極を介してこの電流を検出することにより、上記軸周りの入力角速度を検出できる。
【0013】
そして、本発明方法においても、各アーム部の側面に検出電極を形成する前に圧電体の分極処理を行うことから、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
ここで、請求項2に記載の製造方法において、第1工程で圧電体の表面に電極を形成する際には、駆動電極及び分極用電極だけでなく、請求項3に記載のように、各アーム部の表面に、各アーム部の駆動軸方向の振動状態をモニタするモニタ電極を形成し、分極処理を行う第2工程では、このモニタ電極と共通電極との間にも分極用電圧を印加して、これら電極間も分極させるようにしてもよい。
【0014】
そして、このように作製された振動子によれば、角速度検出のために駆動電極に交流電圧を印加して振動子を振動させた際に、その振動状態をモニタ電極を介して検出でき、その検出結果に従い駆動電極に印加する交流電圧を制御することにより、振動子の駆動軸方向の振動状態を常に一定にさせて、角速度の検出精度を向上できることになる。
【0015】
また、請求項2に記載の製造方法において、第1工程で圧電体の表面に電極を形成する際には、請求項4に記載のように、上記各電極に加えて、各アーム部に検出信号取出用のパット電極を夫々形成し、各アーム部の側面に電極を形成する第3工程では、検出電極に加えて、検出電極とパット電極とを接続する引出電極を形成するようにしてもよい。
【0016】
そして、このように作製された振動子によれば、駆動電圧印加用の信号線や検出信号取出用の信号線、更に、モニタ電極を設けた場合にはモニタ信号取出用の信号線を、振動子の表面に形成した各電極に接続することができるようになり、その配線を簡単に行うことができると共に、各アーム部間で生じる振動のばらつきを抑えて、角速度を良好に検出することが可能になる。
【0017】
つまり、音叉形状の振動子の場合、各アーム部に接続される信号線の長さや形状等が各アーム部間でばらつくと、各アーム部間で振動特性がばらつき、音叉形状の振動子としての所望の振動特性が得られなくなる。そして、このように各アーム部間で振動特性がばらつくと、角速度が入力されていないときにも、各アーム部が検出軸方向に振動することになり、この不要振動は検出信号に含まれることから、角速度検出時には、検出信号から、この不要振動によって生じるオフセット分を除去する必要がある。またこの不要振動は、温度によっても変化することから、各速度検出時に、検出信号から、不要振動によって生じるオフセット分を確実に除去することは困難であり、検出信号には、オフセット温度ドリフトが含まれることになる。従って、このオフセット温度ドリフトを低減するには、各アーム部に対して、信号線を、ばらつきなく、対称に接続することが好ましいのであるが、各アーム部の側面に形成した検出電極に検出信号取出用の信号線を直接接続するようにしていると、この信号線を左右アーム部間でばらつきなく接続することは困難である。
【0018】
しかし、請求項4に記載の製造方法によれば、各アーム部の側面に形成した検出電極から検出信号を取り出すためのパッド電極を、振動子の表面側に形成するので、本製造方法により作製した振動子によれば、駆動電圧印加用,検出信号取出用,更にはモニタ信号取出用の各信号線を、振動子の表面側に形成した各電極に接続することができ、これら各信号線を各アーム部間でばらつきなく配置することも容易に行うことができる。尚、これら各信号線の接続は、ワイヤボンディングにて行うようにすれば、各アーム部に接続される各信号線の長さや形状のばらつきをなくすことができ、より安定した検出特性が得られることになる。
【0019】
また上記のように、各アーム部の表面に検出信号取出用のパット電極を形成する際には、請求項5に記載のように、各アーム部の表面において分極用電極よりもアーム部の先端側にパット電極を形成するようにしてもよく、請求項6に記載のように、各アーム部の表面において分極用電極よりも連結部側にパット電極を形成するようにしてもよい。
【0020】
そして、パット電極を分極用電極よりもアーム部の先端側に形成した場合には、駆動電極とパット電極との距離を大きくすることができるので、駆動電極側からパット電極側に侵入する電気ノイズを低減でき、検出信号のS/N(信号対雑音比)を向上することができる。
【0021】
また、逆に、パット電極を分極用電極よりも連結部側に形成した場合には、アーム部の駆動軸方向への振動の振幅が小さい箇所から検出信号を取り出すことができるので、パット電極をアーム部先端側に形成した場合に比べて、接続する信号線の強度が要求されず、信号線を細くすることができる。また、振動の振幅が小さい箇所から検出信号を取り出すことができるので、信号に起因するノイズを低減でき、検出信号のS/N(信号対雑音比)を向上することもできる。
【0022】
また次に、請求項2に記載の製造方法において、第1工程で圧電体の表面に電極を形成する際には、請求項7に記載のように、上記各電極に加えて、各アーム部に、共通電極を基準電位に接地するための接地用電極を夫々形成し、各アーム部の側面に電極を形成する第3工程では、検出電極(或いは検出電極と引出電極)に加えて、裏面の共通電極と表面の接地用電極とを接続する短絡用電極を形成ようにしてもよい。
【0023】
そして、このように振動子を製造した場合には、共通電極を基準電位に接地するための信号線を、振動子の表面に形成した接地用電極に接続することができ、表面にパット電極を設けた場合(請求項4)と同様、振動子の裏面の共通電極に対して、直接、接地用の信号線を接続する必要がないため、その配線を簡単に行うことができると共に、その信号線の接続により各アーム部間で生じる振動のばらつきを抑えることができる。そして特に、パット電極についても、振動子の表面に形成するようにすれば、振動子に接続される全ての信号線を、振動子の表面側から引き出すことが可能になり、振動子に信号線を接続することにより生じる各アーム部間での振動のばらつきをより確実に抑制することが可能になり、角速度を高精度に検出可能な振動子を実現できる。
【0024】
次に請求項8に記載の発明方法は、請求項1に記載の製造方法を利用して、互いに略平行に配置された4本のアーム部を連結部にて連結した櫛形形状の角速度検出用振動子を製造する方法であり、第1工程では、圧電体の表面に、駆動電極と、検出電極及び共通電極の少なくとも一方とを夫々形成し、圧電体の裏面には、共通電極及び検出電極の少なくとも一方を形成する。そして、第2工程では、第1工程で形成された圧電体表・裏面の各電極間に夫々分極用電圧を印加して、前記圧電体を分極処理し、第3工程では、圧電体の側面に共通電極及び検出電極の少なくとも一方を形成する。また、第1工程及び第3工程では、圧電体の表・裏面及び側面に上記各電極を夫々形成すると同時に、共通電極同士及び検出電極同士を夫々接続する接続用電極を形成する。
【0025】
本発明方法により作製された櫛形形状の振動子においては、上記音叉形状の振動子と同様、例えば、共通電極を基準電位に接地し、駆動電極に基準電位を中心に変化する交流電圧を印加すれば、駆動電極が形成されたアーム部をその配列方向である駆動軸方向に振動させることができる。また、このように振動子を駆動軸方向に振動させた状態で、各アーム部に略平行な軸周りの角速度が入力されると、駆動軸方向に振動しているアーム部は、その入力角速度に応じて各アーム部の配列方向とは略直交する検出軸方向にも振動し、他のアーム部も検出軸方向に振動する。そして、検出電極と共通電極との間には、これら各電極が形成されたアーム部の検出軸方向への振動に比例した電流が流れ、これら各電極間の電流を検出することにより、入力角速度を検出できる。
【0026】
そして、本発明方法においても、圧電体の側面に電極を形成する前に分極処理を行うことから、請求項1,2に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
尚、請求項8に記載の製造方法において、第1工程で圧電体の表面に電極を形成する際には、請求項9に記載のように、上記各電極に加えて、共通電極同士及び検出電極同士を夫々接続する各接続用電極に接続された共通電極接地用及び検出信号取出用のパット電極を形成してもよい。そして、このように振動子の表面にパット電極を形成すれば、請求項4に記載の発明と同様に、振動子からの信号線の引き出しを容易に行うことができ、しかも、各アーム部間で生じる振動のばらつきを抑えて、角速度を良好に検出することができるようになる。
【0027】
次に請求項10に記載の発明方法は、請求項1に記載の製造方法を利用して、互いに略平行に配置された一対のアーム部を二組有し、これら各組のアーム部を連結部にて連結したH字形状に形成された角速度検出用振動子を製造する方法であり、まず、第1工程では、二組のアーム部の内、一方の組のアーム部の表面に駆動電極を、他方の組のアーム部の表面に共通電極を、夫々形成し、更に、圧電体の裏面で且つ前記連結部から前記各アーム部表面の駆動電極及び共通電極との対応位置までの領域に共通電極を形成する。そして、第2工程では、圧電体裏面の共通電極と、圧電体表面の各電極との間に、夫々分極用電圧を印加して、圧電体を分極処理し、第3工程では、圧電体の側面に、圧電体の表・裏面に夫々形成された共通電極同士を接続する短絡用電極を形成すると共に、共通電極が表・裏面に形成された一対のアーム部の側面に、検出電極を形成する。
【0028】
本発明方法により作製されたH字形状の振動子においては、前述の音叉形状及び櫛形形状の振動子と同様、例えば、共通電極を基準電位に接地し、駆動電極に基準電位を中心に変化する交流電圧を印加すれば、駆動電極が形成された一方の組のアーム部を、その配列方向である駆動軸方向に振動させることができる。また、このように振動子を駆動軸方向に振動させた状態で、各アーム部に略平行な軸周りの角速度が入力されると、各アーム部は、その入力角速度に応じて各アーム部の配列方向とは略直交する検出軸方向にも振動する。そして、検出電極が形成された他方の組のアーム部側では、検出電極と共通電極との間に、検出軸方向の振動に比例した電流が流れる。このため、これら各電極間の電流を検出することにより、入力角速度を検出できる。
【0029】
そして、本発明方法においても、圧電体の側面に電極を形成する前に分極処理を行うことから、請求項1,2,8に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
尚、請求項10に記載の製造方法においては、請求項11に記載のように、第1工程では、圧電体の表面に、検出信号取出用のパット電極を形成し、第3工程では、圧電体の側面に、検出電極とパット電極とを接続する引出電極を形成するようにしてもよい。そしてこのように振動子の表面にパット電極を形成すれば、請求項4に記載の発明と同様に、振動子からの信号線の引き出しを容易に行うことができ、しかも、各アーム部間で生じる振動のばらつきを抑えて、角速度を良好に検出することができるようになる。
【0030】
また次に、請求項8〜請求項11に記載の製造方法により櫛形形状若しくはH字形状の振動子を製造する際には、請求項12に記載のように、第1工程では、駆動電極が形成される組の各アーム部の表面に、駆動軸方向の振動状態をモニタするモニタ電極を形成し、第2工程では、このモニタ電極と圧電体の裏面に形成された共通電極との間にも分極用電圧を印加して、これら各電極間の圧電体を分極処理するようにしてもよい。
【0031】
そして、このようにすれば、請求項3に記載の製造方法にて音叉形状の振動子を製造した場合と同様、角速度検出のために駆動電極に交流電圧を印加して振動子を振動させた際に、その振動状態をモニタ電極を介して検出することが可能になり、角速度の検出精度を向上できる。
【0032】
また次に、本発明の製造方法(請求項1〜12)にて角速度検出用振動子を製造する場合、第3工程で、圧電体分極処理後に、各アーム部の側面に検出電極をはじめとする上記各電極を形成する際には、請求項13に記載のように、少なくとも圧電体のキュリー温度よりも低い温度で、各電極を形成することが望ましい。これは、圧電体の分極処理後に、従来より一般に行われている金属ぺーストの焼き付けによって電極を形成するようにすると、その焼き付け時に、圧電体の温度がそのキュリー温度以上になって、分極処理による均一にされた圧電体の配向方向が乱れ、圧電体の圧電特性が低下するからである。つまり、本発明方法(請求項13)では、分極処理後の電極の形成を、キュリー温度よりも低い温度で行うことにより、圧電体の圧電特性を損なうことなく、振動子を作製できるようにしているのである。
【0033】
そして、このように、分極処理後の圧電体に対して、第3工程で圧電体のキュリー温度よりも低い温度で電極を形成するには、例えば、請求項14に記載のように、圧電体のキュリー温度よりも低い温度で硬化する低温硬化型の導電性樹脂を用いて、各アーム部の側面に電極を形成するようにするか、或いは、請求項15に記載のように、金属の蒸着法により各アーム部の側面に電極を形成するようにすればよい。
【0034】
尚、低温硬化型の導電性樹脂としては、例えば、圧電体のキュリー温度より充分低い温度(例えば150℃程度)で硬化する熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂)をバインダとして、金,銀,銅等からなる導電性金属の粉末を均一分散させた、所謂ポリマー型導電性ペーストを使用することができ、より具体的には、例えば、(株)アサヒ化学研究所製の銀導電性ペースト「LS−504」を利用できる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は実施例の角速度センサ全体の構成を表わす斜視図、図2は本実施例の振動子を前後,左右から見た状態を表す説明図である。
【0036】
図1に示す如く、本実施例の角速度センサは、左右一対のアーム部4,6と各アーム部4,6の一端を連結する連結部8とにより音叉形状に形成された振動子2を備える。振動子2のアーム部4,6及び連結部8は、夫々4角柱状になっており、振動子2は、これら各部を圧電体にて一体形成することにより作製される。尚、振動子2を構成する圧電体には、PZT等のセラミック圧電体や水晶等を用いることができるが、本実施例の振動子2には、分極方向を任意に設定可能で製造し易いPZTが使用されている。
【0037】
次に、図2(a)に示す如く、振動子2において凹字状を呈する一方の面(表面;以下X1面という)には、連結部8から各アーム部4,6にかけて一対の駆動電極12a,12bが形成され、これら各駆動電極12a,12bから各アーム部4.6の先端に至る部分には、モニタ電極14a,14b及び仮GND電極16a,16bと、分極用電極18a,18bとが順に形成され、更に各アーム部4,6の先端には、検出信号取出用のパット電極20a,20bが形成されている。
【0038】
そして、駆動電極12a及び12bは、連結部8を通って、各アーム部4,6が互いに対向する対向面側と、各アーム部4,6の左右の外側側面(以下Y1,Y2面という)側とに夫々形成され、モニタ電極14a及び14bは、各アーム部4,6の対向面側に夫々形成され、仮GND電極16a及び16bは、各アーム部4,6のY1,Y2面側に夫々形成され、分極用電極18a,18bは、各アーム部4,6のY1,Y2面側から対向面側に至る幅方向全体に夫々形成され、パット電極20a及び20bは、各アーム部4,6のY1,Y2面側に夫々形成されている。
【0039】
尚、各分極用電極18a,18bは、短絡用電極26a,26bを介して、仮GND電極16a,16bに夫々接続(短絡)されている。そして、これら各仮GND電極16a,16bは、請求項7に記載の接地用電極に相当する。
一方、各アーム部4,6のY1,Y2面側では、図2(b)及び(c)に夫々示す如く、分極用電極18a,18bと対応する位置に、検出電極22a,22bが夫々形成され、振動子2において凹字状を呈する他方の面(裏面;以下X2面という)には、図2(d)に示す如く、駆動電極12a,12b、モニタ電極14a,14b,及び検出電極18a,18bに対する共通電極となる仮GND電極24が形成されている。尚、検出電極22a,22bは、各アーム部4,6のY1,Y2面において、その中心よりX2面側に偏った位置に形成されている。
【0040】
そして、X2面側の仮GND電極24とX1面側の仮GND電極16a,16bとは、夫々、各アーム部4.6のY1,Y2面に形成された短絡用電極28a,28bを介して、互いに接続(短絡)されている。また、X1,X2面側のパット電極20a,20bとY1,Y2面側の検出電極22a,22bとは、夫々、Y1,Y2面に形成された検出信号引き出し用の引出電極30a,30bを介して、互いに接続(短絡)されている。
【0041】
次に、本実施例の振動子2は、図3(a)〜(c)に示す手順に沿って作製されている。
即ち、図3(a)に示すように、まず、音叉形状に形成された圧電体のX1面に上記各電極(駆動電極12a,12b、モニタ電極14a,14b,仮GND電極16a,16b、分極用電極18a,18b,パット電極20a,20b)を形成すると共に、圧電体のX2面に仮GND電極24を形成する(第1工程)。尚、この第1工程では、例えば、銀等の導電性金属を主成分とする金属ぺーストを、上記各電極の形状に合わせて圧電体に塗布(印刷)し、高温で焼き付ける、といった手順で、圧電体の表・裏面に各電極を形成(Ag焼付)する。
【0042】
このように第1工程で圧電体の表裏面に各電極を形成すると、今度は、図3(b)に示すように、X1面に形成した駆動電極12a,12b、モニタ電極14a,14b,仮GND電極16a,16b、分極用電極18a,18bと、これら各電極に対する共通電極としてX2面に形成した仮GND電極24との間に、圧電体分極用の直流電圧(分極電圧)を印加することにより、これら各電極間の圧電体を、所定方向(本実施例では、図1に矢印で示すようにX1面からX2面に至る方向)に分極させる、分極処理を行う(第2工程)。尚、この第2工程で分極処理を行う際には、圧電体の側面(Y1,Y2面)に検出電極等が形成されていないので、Y1,Y2面に形成された電極の影響を受けることなく圧電体を分極させることができ、圧電体の配向方向を均一にすることができる。
【0043】
そして、第2工程で圧電体の分極処理がなされると、今度は、図3(c)に示すように、圧電体の各アーム部4,6のY1,Y2面に、検出電極22a,22b、短絡用電極28a,28b、及び引出電極30a,30bを夫々形成する(第3工程)。尚、この第3工程で各アーム部4,6のY1,Y2面に電極を形成する際には、低温硬化型の導電性樹脂(例えば前述のポリマー型導電性ペースト)を、各電極の形状に合わせて、各アーム部4,6のY1,Y2面に塗布(印刷)し、圧電体のキュリー温度よりも充分低い所定温度(例えば、150℃程度)で焼き付ける、といった手順で、各電極を形成(低温焼付)する。
【0044】
次にこのように作製された振動子2は、連結部8側端面を、断面がエの字状に形成されたサポータ32の台座部32bに接着剤(例えばエポキシ系の接着剤)で接合し、更にサポータ32の本体側を、スペーサ34を介して、溶接又は接着等で板状のベース36の表面に固定することにより、ベース36に対して、X2面がベース36の表面と対向するように固定される。
【0045】
サポータ32は、スペーサ34を介してベース36に固定される本体側に対し、振動吸収用の首部32aを介して、振動子2を接合するための台座部32bを形成したものであり、例えば、42Nのような金属により、断面エの字状に一体形成されている。また、ベース36は、振動子2を角速度センサの筐体或は角速度の検出対象となる車体等に直接又は防振ゴムを介して固定するためのものである。そして、ベース36には、振動子2に形成された駆動電極12a,12b、モニタ電極14a,14b、仮GND電極16a,16b、及びパット電極20a,20bに対応した8個のターミナルT1〜T8が立設されている。
【0046】
各ターミナルT1〜T8は、上記各電極と図示しない検出回路との中継を行うためのものであり、各電極とターミナルT1〜T8とは、夫々、ワイヤW1〜W8を介して、ワイヤボンディングにより接続されている。尚、ベース36と各ターミナルT1〜T8とは電気的に絶縁されている。
【0047】
次に、本実施例の振動子2を用いて角速度を検出する際には、ターミナルT5,T6を図示しない信号線にて接地することにより、仮GND電極16a,16b、分極用電極18a,18b、仮GND電極24を、基準電位に接地する。そして、駆動電極12a,12bに接続されたターミナルT1,T2を介して、各駆動電極12a,12bに、位相差180度の交流の駆動信号を夫々入力する。
【0048】
尚、駆動信号は、基準電位を中心に正負に変化する交流信号であり、その周波数は、左右アーム部4,6の配列方向である駆動軸(図1に示すY軸)方向への振動子2の共振周波数である。また、上記各電極を基準電位に接地する際には、ターミナルT5,T6をアース(グランド)に直接接地するようにしてもよく、ターミナルT5,T6に対して、例えば、2.5Vの一定電位に保持されるようにバイアスをかけておいてもよい。即ち、基準電位は、直接にしろ、間接的にしろ、接地された基準電位であればよい。
【0049】
そしてこのように駆動電極12a,12bに交流駆動信号を入力すると、X1面上の駆動電極12a,12bとX2面上の仮GND電極24との間に、夫々、位相が反転した交流電圧が印加されることになり、各アーム部4,6は、駆動軸(Y軸)方向に共振する。また、この駆動時には、ターミナルT3,T4を介してモニタ電極14a,14bからの出力(具体的には、モニタ電極14a,14bと仮GND電極24との間に流れる電流)をモニタし、各アーム部4,6のY軸方向への振幅が温度が変わっても一定となるように、駆動信号を制御する(自励制御発振)。
【0050】
そして、このように振動子2を自励制御発振させている際に、各アーム部4,6の中心位置にて各アーム部4,6に略平行なZ軸を中心とするZ軸回りの角速度Ωが入力されると、各アーム部4,6は、コリオリ力により、X1,X2面を貫くX軸方向(検出軸方向)に振動する。そして、このX軸方向の振動成分は、検出電極22a,22bと、仮GND電極24との間に流れる電流に比例する。そこで、これら各電極間の電流を、夫々、検出電極22a,22bに接続されたターミナルT7,T8を介して取り込み、電流−電圧変換回路にて電圧信号に変換し、更に、各電圧信号を差動増幅器を介して差動増幅することにより、各アーム部4,6の検知共振モードでの振動成分に対応した電圧信号を生成し、これをZ軸周りの角速度を表す検出信号として出力する。
【0051】
以上説明したように、本実施例では、音叉形状の振動子2を作製するに当たって、まず振動子本体である圧電体の表・裏面(X1,X2面)に電極を形成し、その表・裏面の電極間に分極電圧を印加することにより、圧電体を分極処理することから、圧電体を一定方向(本実施例ではX1面からX2面方向)に均一に分極させることができる。従って、本実施例によれば、分極処理によって、圧電体に内部応力が残り、振動子の振動特性がばらついて、角速度の検出精度が低下するとか、或いは、圧電体の圧電特性の経時変化によって、角速度の検出特性も経時的に変化し、信頼性が低下する、といった問題を防止できる。
【0052】
また、第1工程で圧電体のX1面に電極を形成する際には、駆動電極12a,12b、モニタ電極14a,14b、及び分極用電極18a,18bに加えて、分極用電極18a,18bとX2面の仮GND電極24を基準電位に接地するための仮GND電極16a,16b、分極用電極18a,18bと仮GND電極16a,16bとを接続する仮短絡用電極26a,26b、及び、Y1,Y2面の検出電極22a,22bから検出信号を取り出すためのパット電極20a,20bも同時に形成し、更に、分極処理後の第3工程で各アーム部4,6のY1,Y2面に低温硬化型導電性樹脂にて電極を形成する際には、検出電極22a,22bに加えて、この検出電極22a,22bとX1面のパット電極20a,20bとを接続する引出電極30a,30b、及び、X2面の仮GND電極24とX1面の仮GND電極16a,16bとを接続する短絡用電極28a,28bを同時に形成する。
【0053】
この結果、本実施例によれば、角速度検出のために振動子2に接続する信号線を、全て、振動子2の表面(X1面)に形成した電極から引き出すことが可能になる。また、特に本実施例では、信号線にワイヤボンディング用のワイヤW1〜W8を使用し、X1面の各電極と振動子2の周囲に配置したターミナルT1〜T8との間を、ワイヤボンディングにより接続するようにしている。このため、本実施例の振動子2によれば、信号線を、左右のアーム部4,6間で左右対称となるように配置することができ、信号線を接続することによって各アーム部4,6間で生じる振動のばらつきを抑制することができ、角速度の検出精度を向上できる。
【0054】
また更に、第3工程で、分極処理後の圧電体に対して、各アーム部4,6の側面(Y1,Y2面)に電極を形成する際には、圧電体のキュリー温度よりも充分低い温度で電極を形成可能な、低温硬化型の導電性樹脂を使用し、導電性樹脂の低温焼付によって、各電極を形成するようにしているので、分極処理後の電極形成によって、圧電体の圧電特性が損なわれるのも防止できる。
【0055】
尚、この分極処理後の電極形成には、低温硬化型の導電性樹脂を用いる方法以外に、金属の蒸着法を利用するようにしても、圧電体のキュリー温度よりも充分低い温度で電極を形成することができる。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例では、信号線を全て振動子2の表面から引き出せるように、各アーム部4,6の表面にパット電極20a,20bを備え、且つ、各アーム部4,6の側面(Y1,Y2面)に引出電極30a,30b及び短絡用電極28a,28bを備えた振動子を形成する場合について説明したが、本発明方法は、例えば、図4(a)に示すように、これら各電極を備えていない振動子を製造する場合であっても適用できる。
【0056】
また、上記実施例では、振動子の表面(X1面)で検出信号を取り出すために、各アーム部4,6の先端部分にパット電極20a,20bを形成したが、図4(b)に示すように、表面(X1面)からの検出信号取出用のパット電極40a,40bは、X1面において、分極用電極18a,18bよりも連結部8側の位置(図では、分極用電極18a,18bと、モニタ電極14a,14b及び仮GND電極16a,16bとの間の位置)に形成するようにしてもよい。
【0057】
尚、この場合、上記実施例と同様に、X1面の仮GND電極16a,16bに接続された信号線(ワイヤW5,W6)を介して、X1面の分極用電極18a,18bとX2面の仮GND電極24とを基準電位に接地できるようにするには、分極処理後の第3工程で、各アーム部4,6の側面(Y1,Y2面)に、検出電極22a,22a及び短絡用電極28a,28bを形成する際、分極用電極18a,18bと仮GND電極24とを接続(短絡)する短絡用電極44a,44bも同時に形成するようにすればよい。
【0058】
また上記実施例では、第1工程で振動子2の表面(X1面)に形成される駆動電極12a,12bは、連結部8から左右の連結部4,6にかけて形成されるものとして説明したが、この駆動電極12a,12bは、図5(a)に示す如く、連結部8では接続せず、左右のアーム部4,6にのみ、各アーム部4,6の長手方向に沿って形成するようにしても良く、或いは、図5(b)に示す如く、連結部8側にのみ、連結部8の長手方向(つまり左右方向)に沿って形成するようにしてもよい。
【0059】
尚、振動子2を構成する圧電体は、連結部8にサポータ32が連結された形状に形成してもよい。
一方、上記実施例では、音叉形状の振動子2の製造方法について説明したが、本発明の製造方法は、互いに略平行に配置され一端が接続された一対のアーム部を有する振動子であれば適用でき、本発明を適用可能な振動子の形状は音叉形状に限定されるものではない。
【0060】
つまり、連結部と一対のアーム部にて形成される音叉を利用して角速度を検出する角速度センサとしては、図6及び図7に示すように、音叉を構成する2本のアーム部を二組備え、これら各アーム部103,104,105,106を略平行に配置して、その一端を共通の連結部102にて連結することにより、櫛形に形成した振動子100を用いるもの、或いは、図8に示すように、音叉を構成する2本のアーム部を二組備え、これら各組のアーム部203,204及び205,206を、夫々、連結部202の両側に配置して連結することにより、H字形に形成した振動子200を用いるものも考えられる。
【0061】
そして、これらの角速度センサにおいても、振動子100,200を上記実施例と同様の手順で製造するようにすれば、角速度の検出精度を向上できる。
以下、図6〜図8に示した振動子100,200の構成及びその製造方法について簡単に説明する。
【0062】
図6及び図7に示した角速度センサの振動子100は、アーム部103,104及び105,106の間隔が異なる二組の音叉を組み合わせた所謂4脚音叉であり、アーム部105,106の間隔が広い一方の音叉の間に、アーム部103,104の間隔が狭い音叉を配置して、各音叉の連結部を連結した形状(櫛形形状)をしている。そして、この振動子100の連結部102には、図1に示した振動子2と同様、断面がエの字状に形成されることにより中央にトーションビーム108を有するサポータ107が接着材等を用いて接合され、更に、サポータ107は、各アーム部103〜106を、ベース111から一定距離だけ離れた位置に略平行に配置にするために、スペーサ110を介して、ベース111上に溶接等で固定されている。
【0063】
尚、図6は、櫛形の振動子100を備えた角速度センサ全体の構成を表わす斜視図であり、図2はその振動子100を前後(X1面,X2面)・左右(Y1面,Y2面)から見た状態を表す説明図である。
振動子100は、例えば、PZTをダイシング等で機械加工することにより櫛形に形成されている。そして、この振動子100を構成する4本のアーム部103〜106の内、中央の音叉部を構成する一対のアーム部103,104には、振動子100を各アーム部103〜106の配列方向(Y軸方向)に振動させるための電極が形成され、外側の音叉部を構成する一対のアーム部105,106には、振動子100に加わった各アーム部103〜106の中心軸に略平行なZ軸周りの角速度Ωを検出するための電極が形成されている。
【0064】
即ち、図7に示すように、アーム部103,104には、そのX1面(ベース111とは反対側の表面)に、駆動電極112とモニタ電極113とが夫々形成され、X2面(ベース111との対向面である裏面)には、基準電位に接地するための仮GND電極120が形成されている。そして、各アーム部103,104に形成された駆動電極112及びモニタ電極113は、夫々、連結部102のX1面で互いに接続され、各アーム部103,104のX2面に形成された仮GND電極120は、連結部102のX2面で互いに接続されている。
【0065】
一方、アーム部105のX1面には、検出電極114が形成され、X2面には、検出電極122が形成され、振動子100の外側側面となるY1面には、仮GND電極125が形成されると共に、X1,X2面の検出電極114,122を互いに接続(短絡)する短絡用電極129が形成されている。また、アーム部106のX1面には、仮GND電極115が形成され、X2面には、仮GND電極121が形成され、振動子100の外側側面となるY2面には、検出電極124が形成されると共に、X1,X2面の仮GND電極115,121を互いに接続(短絡)する短絡用電極128が接続されている。
【0066】
次に、連結部102のX1面には、検出信号取出用のパット電極116が形成されており、このパット電極116には、引出電極118を介して、アーム部105のX1面に形成された検出電極114に接続されると共に、引出電極126を介して、アーム部106のY2面に形成された検出電極124に接続されている。また、連結部102のX1面には、仮GND電極接地用のパット電極117も形成されており、このパット電極117には、引出電極119を介して、アーム部106のX1面に形成された仮GND電極115が接続されている。そして、この仮GND電極115に接続されたアーム部106の仮GND電極121には、連結部102のX2面に形成された引出電極123及びアーム部105のY1面に形成された引出電極127を介して、アーム部105のY1面に形成された仮GND電極125及びアーム部103,104のX2面に形成された仮GND電極120が夫々接続されている。
【0067】
そして、図6に示すように、ベース111には、連結部102のX1面に形成された駆動電極112、モニタ電極113、パット電極116、及びパット電極117に対応した4個のターミナルT31〜T34が立設されており、これら各電極と各ターミナルT31〜T34とは、夫々、夫々、ワイヤW31〜W34をボンディングすることにより接続される。
【0068】
このように構成された角速度センサを用いて、角速度を検出する際には、駆動用のアーム部103,104に形成された駆動電極112と仮GND電極120との間に駆動信号(交流電圧)を印加することにより、これらアーム部103,104にて構成される内側の音叉部を左右の駆動軸方向(図に示すY軸方向)に共振させると共に、モニタ電極113からの出力が一定になるように、図示しない制御回路を用いて駆動信号を制御することにより、振動子100の内側の音叉部を自励発振させる。そして、このように振動子100を自励制御発振させているときに、振動子100の長手方向の中心軸(Z軸)を中心とする角速度Ωが入力されると、上記各アーム部103,104は、コリオリ力によって、X1,X2面を貫くX軸方向(検出軸方向)にも振動する。すると、外側の音叉部を構成する各アーム部105,106もX軸方向に振動し、検出電極114,122と仮GND電極125との間、及び、検出電極124と仮GND電極115,121との間には、X軸方向の振動に比例した電流が流れることから、これら各電極間の電流を電圧値に変換することにより、Z軸回りの角速度Ωを検出する。
【0069】
そして、このような櫛形形状の振動子100においても、音叉形状の振動子2と同様の手順、即ち、振動子100を構成する圧電体の表・裏面(X1,X2面)に上記各電極を形成し(第1工程)、次に、この表・裏面の電極間に圧電体分極用の直流電圧(分極電圧)を印加して、圧電体を所定方向(例えばX1面からX2面に至る方向)に分極させ(第2工程)、その後、圧電体の側面(Y1,Y2面)に上記各電極を形成する(第3工程)、といった手順で製造することができ、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0070】
次に図8に示した角速度センサの振動子200は、同一形状の音叉を、各音叉のアーム部203,204及び205,206が互いに逆方向を向くように、各音叉の連結部202にて連結したH字形形状をしている。
この振動子200は、PZTをダイシング等で機械加工することによりH字形に形成されており、一方の音叉部を構成する一対のアーム部203,204には、振動子200をアーム部203,204の配置方向(Y軸方向)に振動させるための電極が形成され、他方の音叉部を構成する一対のアーム部205,206には、振動子200に加わった各アーム部203〜206の中心軸に略平行なz軸周りの角速度を検出するための電極が形成されている。
【0071】
即ち、アーム部203,204のX1面(振動子200においてH字形を呈する一方の面)には、駆動電極207及びモニタ電極208が形成されている。そして各アーム部203,204の駆動電極207及びモニタ電極208は、夫々、連結部202で連結されている。また、アーム部205,206のX1面には、夫々、仮GND電極210,211が形成され、Y1,Y2面(各アーム部205,206における振動子200の外側側面)には、夫々、検出電極212,213が形成されている。
【0072】
また、振動子200のX2面(振動子200においてH字形を呈する一方の面)には、アーム部203,204から連結部202を通ってアーム部205,206に至る略全域に仮GND電極209が形成されており、アーム部205,206のX1面に形成された仮GND電極210,211は、各アーム部205,206のY1面及びY2面に形成された短絡用電極218,219を介して、X1面の仮GND電極209に接続されている。また、連結部202のX1面には、検出信号取出用のパット電極214,215が形成され、各アーム部205,206のY1,Y2面に形成された検出電極212,213は、引出電極216,217を介して、各パット電極214,215に夫々接続されている。
【0073】
このように構成された振動子200を用いて角速度を検出する際には、例えば、連結部202のX2面をサポータを介してベース上に固定すると同時に、X2面の仮GND電極209を基準電位に接地する。そして、アーム部203,204に形成された駆動電極207と仮GND電極209との間に駆動信号(交流電圧)を印加することにより、これらアーム部103,104にて構成される音叉部を左右の駆動軸方向(図に示すY軸方向)に共振させると共に、モニタ電極208からの出力が一定になるように、図示しない制御回路を用いて駆動信号を制御することにより、振動子200の内側の音叉部を自励発振させる。
【0074】
また、このように振動子200を自励制御発振させているときに、Z軸周りの角速度Ωが入力されると、各アーム部203,204は、コリオリ力によって、X1,X2面を貫くX軸方向(図示せず)にも振動する。すると、他方の音叉部を構成する各アーム部205,206もX軸方向に振動するため、検出電極212と仮GND電極209,210との間、及び、検出電極213と仮GND電極209,211との間には、X軸方向の振動に比例した電流が流れる。そこで、この電流をパット電極214,215を介して取り出し、電圧値に変換することにより、Z軸回りの角速度Ωを検出する。
【0075】
そして、このようなH字形状の振動子200においても、音叉形状或いは櫛形形状の振動子2,100と同様の手順で製造することができ、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
尚、本発明において、同一のアーム部に形成される駆動電極と検出電極とは、アーム部において直交な面でなくても、略直交な関係の面に設けられればよい。即ち、アーム部の駆動軸方向に対して垂直方向に加わる角速度を検出電極にて検出できる位置に、駆動電極と検出電極が配置されればよい。
【0076】
そのため、各々のアーム部の表・裏面は、必ずしも各アーム部の配列方向に平行である必要もなく、略平行であればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の角速度センサの構成を表す斜視図である。
【図2】 図1に示した振動子に形成された電極を表す説明図である。
【図3】 図1に示した振動子の製造方法を説明する説明図である。
【図4】 図1に示した振動子に対して、検出電極に接続されるパット電極を削除・変更した振動子の構成例を説明する説明図である。
【図5】 図1に示した振動子に対して駆動電極の形状を変えた振動子の構成例を説明する説明図である。
【図6】 二組の音叉部を有する櫛形形状の振動子を備えた角速度センサの構成を表す説明図である。
【図7】 図7に示した櫛形形状の振動子に形成された電極を表す説明図である。
【図8】 二組の音叉部を有するH字形形状の振動子の構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
2,100,200…振動子、4,6,103〜106,203〜206…アーム部、8,102,202…連結部、12a,12b,112,207…駆動電極、14a,14b,113,208…モニタ電極、16a,16b…仮GND電極(接地用電極)、18a,18b…分極用電極、20a,20b,116,117,214,215…パット電極、22a,22b,114,122,124,212,213…検出電極、24,115,120,121,125,209,210,211…仮GND電極(共通電極)、26a,26b,28a,28b,128,129,218,219…短絡用電極 30a,30b,118,119,123,126,127,216,217…引出電極、32,107…サポータ 34,110…スペーサ、36,111…ベース、T1〜T8,T31〜T34…ターミナル,W1〜W8,W31〜W34…ワイヤ。
Claims (15)
- 互いに略平行に配置された少なくとも一対のアーム部と各アーム部を連結する連結部とにより形成された圧電体からなり、前記アーム部の配列方向に略平行な表・裏面、及び、該表・裏面に略直交する側面に、少なくとも、外部から交流電圧を受けて前記各アーム部を各アーム部の配列方向である駆動軸方向に励振する駆動電極、及び、各アーム部において前記駆動軸とは直交する検出軸方向に生じる振動を検出する検出電極、を含む角速度検出用の電極が形成された角速度検出用振動子の製造方法であって、
前記圧電体の表・裏面に、該表・裏面に配置すべき角速度検出用の電極を形成する第1工程と、
該第1工程で前記圧電体の表・裏面に形成された電極間に、分極用の電圧を印加して、前記圧電体を前記表・裏面に略直交する方向に分極処理する第2工程と、
該分極処理後の圧電体の前記側面に、該側面に配置すべき角速度検出用の電極を形成する第3工程と、
からなることを特徴とする角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記圧電体は、一対のアーム部と各アーム部の一端を連結する連結部とにより音叉形状に形成されており、
前記第1工程では、前記圧電体の表面に前記駆動電極及び分極用電極を、裏面に共通電極を、夫々形成し、
前記第2工程では、前記圧電体裏面の共通電極と、前記圧電体表面の各電極との間に、夫々分極用電圧を印加して、前記圧電体を分極処理し、
前記第3工程では、該分極処理後の圧電体の各アーム部の側面で且つ前記分極用電極との対応位置に、前記検出電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記第1工程では、前記各アーム部の表面に、前記各アーム部の前記駆動軸方向の振動状態をモニタするモニタ電極を形成し、
前記第2工程では、該モニタ電極と前記共通電極との間にも分極用電圧を印加して、該電極間の圧電体を分極処理することを特徴とする請求項2に記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記第1工程では、前記各アーム部の表面に検出信号取出用のパット電極を形成し、
前記第3工程では、前記各アーム部の側面に、前記検出電極と前記パット電極とを接続する引出電極を形成することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記第1工程では、前記各アーム部の表面で且つ前記分極用電極よりもアーム部の先端側に、前記パット電極を形成することを特徴とする請求項4に記載の角速度検出用振動子の製造方法。
- 前記第1工程では、前記各アーム部の表面で且つ前記分極用電極よりも前記連結部側に、前記パット電極を形成することを特徴とする請求項4に記載の角速度検出用振動子の製造方法。
- 前記第1工程では、前記各アーム部の表面に、前記共通電極を基準電位に接地するための接地用電極を形成し、
前記第3工程では、前記各アーム部の側面に、前記共通電極と前記接地用電極とを接続する短絡用電極を形成することを特徴とする請求項2〜請求項6いずれか記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記圧電体は、互いに略平行に配置された4本のアーム部を前記連結部にて連結した櫛形に形成されており、
前記第1工程では、表面に、駆動電極と、検出電極及び共通電極の少なくとも一方とを、夫々形成すると共に、裏面に、共通電極及び検出電極の少なくとも一方を形成し、
前記第2工程では、前記第1工程で形成された圧電体表・裏面の各電極間に夫々分極用電圧を印加して、前記圧電体を分極処理し、
前記第3工程では、側面に共通電極及び検出電極の少なくとも一方を形成し、
更に、前記第1工程及び第3工程では、前記圧電体の表・裏面及び側面に夫々前記各電極を形成すると同時に、前記共通電極同士及び検出電極同士を夫々接続する接続用電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記第1工程では、前記圧電体の表面に、前記共通電極同士及び検出電極同士を夫々接続する各接続用電極に接続された共通電極接地用及び検出信号取出用のパット電極を形成することを特徴とする請求項8に記載の角速度検出用振動子の製造方法。
- 前記圧電体は、互いに略平行に配置された一対のアーム部を二組有し、該各組のアーム部を前記連結部にて連結したH字形状に形成されており、
前記第1工程では、二組のアーム部の内、一方の組のアーム部の表面に前記駆動電極を、他方の組のアーム部の表面に共通電極を、夫々形成すると共に、前記圧電体の裏面で且つ前記連結部から前記各アーム部表面の駆動電極及び共通電極との対応位置までの領域に共通電極を形成し、
前記第2工程では、前記圧電体裏面の共通電極と、前記圧電体表面の各電極との間に、夫々分極用電圧を印加して、前記圧電体を分極処理し、
前記第3工程では、前記圧電体の側面に、前記表・裏面に夫々形成された共通電極同士を接続する短絡用電極を形成すると共に、前記共通電極が表・裏面に形成された一対のアーム部の側面に、前記検出電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記第1工程では、前記圧電体の表面に、検出信号取出用のパット電極を形成し、
前記第3工程では、前記圧電体の側面に、前記検出電極と前記パット電極とを接続する引出電極を形成することを特徴とする請求項10に記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記第1工程では、前記駆動電極が形成される組の各アーム部の表面に、前記駆動軸方向の振動状態をモニタするモニタ電極を形成し、
前記第2工程では、該モニタ電極と前記裏面の共通電極との間にも分極用電圧を印加して、該電極間の圧電体を分極処理することを特徴とする請求項8〜請求項11にいずれか記載の角速度検出用振動子の製造方法。 - 前記第3工程では、少なくとも前記圧電体のキュリー温度よりも低い温度で、前記圧電体の側面に電極を形成することを特徴とする請求項1〜請求項12いずれか記載の角速度検出用振動子の製造方法。
- 前記第3工程では、前記圧電体のキュリー温度よりも低い温度で硬化する低温硬化型の導電性樹脂を用いて、前記圧電体の側面に電極を形成することを特徴とする請求項13に記載の角速度検出用振動子の製造方法。
- 前記第3工程では、金属の蒸着法により前記圧電体の側面に電極を形成することを特徴とする請求項13に記載の角速度検出用振動子の製造方法。
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