JP3861228B2 - 誘導電動機の制御方法および制御装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、可変電圧、可変周波数の交流電圧を出力して誘導電動機を可変速駆動するPWMインバータによる誘導電動機の制御方法および制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インバータにより誘導電動機を駆動する場合、電動機に印加する交流電圧の電圧と周波数の比(V/F)を一定にして可変駆動するV/F一定制御方式は、簡単な構成になるため、広く使用されている。しかしながら、このV/F一定制御方式は、電動機に加わる負荷が軽くなるにつれて余分な励磁電流が流れ、効率の良い運転ができなかったり、極低速度の範囲では有効トルクが十分確保できなかった。この点を解決するため、種々の方法が提案されている。例えば、一例として特開昭62−244297号公報に記載される技術は、有効電流と無効電流に分離し、有効成分からすべり周波数を算出して制御するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、電動機を加速するとき、電動機の電流が負荷トルクと対応しないため、低速時とか無負荷時に励磁電流が増加する。このような状態で電動機を加速しようとすると、過励磁になったり、効率が低下したり、加速できなかったりする。
また、電動機の回転数を検出しないセンサレス方式において、瞬時停電が発生し、電動機が一旦インバータから切り離され、回転数が定格速度より低くなったとき、電動機をインバータ装置に再投入すると、制御装置の速度指令と電動機の速度が一致しないため、過電流が発生し、制御装置がトリップして正常な運転ができなくなる。また、電動機が停止するまで待って起動すれば、時間が長くかかり、迅速な再起動ができなくなる。
【0004】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、電動機が低速時でも無負荷時でも過励磁にならず、効率よく、スムーズに加速できる誘導電動機の制御方法および制御装置を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、瞬時停電時に電動機を再起動するとき、指令する角速度を迅速に電動機が回転している角速度に一致させることにより、過電流の発生を防止し、その後、規定の加速角速度で電動機を加速し、定常運転に復帰できる誘導電動機の制御方法および制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、誘導電動機の定格周波数と、演算のためのサンプリング時間と、3相正弦波を作るテーブルのデータ数とに基づいて定格角速度をつくり、この定格角速度と加速時間あるいは減速時間とから、加速角速度あるいは減速角速度を演算し、前記サンプリング時間毎に加速角速度あるいは減速角速度を積算して過渡時角速度をつくり、
この過渡時角速度を定格角速度と比較し、過渡時角速度が定格角速度より小さい時は過渡時角速度を用いて前記電動機を加速し、過渡時角速度が定格角速度より大きくなった時は定格角速度を用いて定常運転に入るように前記電動機を制御し、また、過渡時角速度が定格角速度より大きい時は過渡時角速度を用いて前記電動機を減速し、過渡時角速度が定格角速度より小さくなった時は定格角速度を用いて定常運転に入るように前記電動機を制御し、
瞬時停電時の前記電動機の再投入に際して、前記電動機のトルク成分を検出し、トルク電流成分が同期投入設定電流より大きくなった時点から、トルク電流成分と同期投入許可電流の偏差が零になるように比例積分制御を行い、補正角速度をつくり、過渡時角速度から補正角速度を減算した値を角速度指令として、前記電動機に加える電圧と周波数を小さくする同期投入モードに入り、トルク電流成分が同期投入許可電流より小さくなった時、前記電動機を定格角速度まで上昇させる加速モードに移行し、
また、前記電動機のトルク電流成分が負になり、さらに負の同期投入設定電流より小さくなった回生モードのとき、過渡時角速度に補正角速度を加算した値を角速度指令として、前記電動機に加える電圧と周波数を大きくする。
ここで、定常運転中に負荷等が大きくなった場合、前記電動機のトルク成分を検出し、トルク電流成分が同期投入設定電流より大きくなった時点から同期投入モードを選択し、トルク電流成分と同期投入許可電流の偏差が零になるように比例積分制御を行い、補正角速度をつくり、過渡時角速度から補正角速度を減算した値を角速度指令として、前記電動機に加える電圧と周波数を小さくし、前記電動機電流を減少させる同期投入モードに入る。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す。図1において、交流電源1に接続される整流器2は交流電圧を直流電圧に変換する。整流器2の直流出力側には平滑コンデンサ3が並列に接続される。PWMインバータ4は、並列コンデンサ4に接続され、直流電圧を可変電圧、可変周波数の3相交流電圧に変換する。誘導電動機5はPWMインバータ4の出力側に接続される。ここで、6は電動機の瞬時電流を検出する電流変流器(CT)、6−1、6−2、6−3はU相、V相、W相の電流を検出するCTである。7は電動機を制御する制御部、8は一定時間Ts毎に演算させるためのサンプリングタイマであり、制御部7の演算の間隔はTsに依存する。
【0007】
制御部7は、角速度指令部9、A/D変換器10、電流変換器11、すべり演算部12、加算器13、同期投入回路14、積算回路15、電圧指令部16、磁束電流指令部17、電動機定数回路18、ベクトル演算部19、正弦波発生部20およびPWM発生回路21からなる。
角速度指令部9は角速度指令ω1を出力する。A/D変換器10は電動機の交流電流iu,iv,iwをサンプリング毎にアナログ瞬時値をディジタル値Iu,Iv,Iwに変換する。電流変換器11は3相の相電流を2相のα−β軸に変換し、さらに、回転座標のd−q軸に変換する。その結果トルク電流成分Iqfと励磁電流成分Idfを出力する。すべり演算部12はトルク電流成分Iqfと励磁電流成分Idfからすべり角速度ωsを演算する。加算器13は角速度指令ω1とすべり角速度ωsを加算し、駆動角速度ωdrを得る。このため、電動機回転数はより指令値に精度良く一致する。同期投入回路14は、瞬時停電時再投入したとき、電動機電流と同期投入設定電流および同期投入許可電流から比例・積分制御を行い、補正角速度ωsuを出力する。補正角速度ωsuは、角速度指令部9に送られ、同期投入モードの演算を行う。また、同期投入回路14は、定常運転時にトルク電流成分Iqfが正の同期投入許可電流より大きくなった時、および負の同期投入許可電流より小さくなった時も前記同様、同期投入モードの演算を行う。積算回路15は駆動角速度ωdrをサンプリング毎に積算し、位相θを得る。電圧指令部16は駆動角速度ωdrに比例した電圧指令値V1を得る。磁束電流指令部17は電動機の励磁電流指令値Id*を出力する。電動機定数回路18は、電圧指令値V1と励磁電流指令値Id*と電動機トルク電流Iqfを入力し、電動機の1次換算推定抵抗値r1*、1次換算インダクタンスLσ、2次d軸磁束φ2d、、相互インダクタンスM、2次インダクタンスL2からトルク電圧成分V1q、励磁電圧成分V1dを得る。ベクトル演算部19は、トルク電圧成分V1q、励磁電圧成分V1dからベクトル演算し、電動機印加電圧の大きさVtとV1q、V1dの位相差δを得る。正弦波発生部20は電動機電圧の大きさVtと位相差δと位相θから電動機に印加する3相交流電圧Vu,Vv,Vwを得る。PWM発生回路21は、3相交流電圧Vu,Vv,Vwと三角波等の搬送波と比較し、PWMパルスTu,Tx,Tv,Ty,Tw,Tzを作る。このPWMパルスをインバータ4の半導体素子のゲートに印加し、所望の周波数および交流電圧を電動機に加えて駆動する。
【0008】
次に、本実施形態を詳細に説明する。
図2は、角速度指令部9の詳細ブロックを示す。9−1は電動機の定格周波数Fdefの設定部である。9−2は定格周波数の1周期の時間幅Tdefの設定部であり、1/Fdefで求まる。9−3は制御部7のサンプリング時間Tsの設定部である。9−4は1周期のサンプル回数Nsnpを演算する演算部であり、(数1)式により演算する。9−5は正弦波を発生させるための電気角360度を表現するテーブル数Ntbの演算部である。9−6は定格角速度ωdefの演算部であり、サンプル数Nsnpとテーブル数Ntbから(数2)式を用いて演算する。
【数1】
【数2】
9−7は電動機が定格周波数Fdefまで加速する加速時間Taまたは減速時間−Taの演算部である。9−8は定格周波数Fdefまで加速するサンプル回数Nsnaの演算部であり、サンプリング時間Tsと加速時間Taから(数3)式を用いて求める。9−9は加速角速度ωaおよび減速角速度−ωaの演算部であり、定格角速度ωdefとサンプル回数Nsnaから(数4)式により求める。
【数3】
【数4】
9−10は加速角速度積算器および減速角速度積算器であり、サンプリング時間毎に加速角速度ωaまたは減速角速度−ωaを積算する。すなわち、(数5)式を用いて過渡時角速度ωtrnを演算する。モード比較器9−11は加速モードか定常モードを判定し、角速度指令ω1を出力する。すなわち、ωtrn<ωdefの間は加速モードであり、(数6)式を使用し、ωtrn≧ωdefになれば、定常モードとなり、(数7)式を使用する。
【数5】
【数6】
【数7】
同期投入モード指令9−12、同期投入積算器9−13は後述する。
【0009】
図3は、図2の9−1から9−6において作られた定格角速度ωdefにより正弦波を発生する状態を示す。図3−1はサンプリング時間毎に定格角速度ωdefを積算して位相θを作る。積算された位相θは図3−2に示すように正弦波テーブル数Ntbに達したらクリアする。この動作を繰り返せば、図3−1のように位相θは鋸歯状波となる。図3−2のテーブルは電気角360度をNtb分割して正弦波データを入れておく。位相θはテーブルのアドレスに相当するので、サンプリング毎に図3−1の位相θが示す値からテーブルのアドレスを選択し、そこのデータを引き出せば、図3−3の正弦波(SINθ)が得られる。また、位相θに対し、90度に相当したアドレスを加算してデータを引けば、余弦データが得られ、余弦波(COSθ)が得られる。
【0010】
図4は、図2の9−7から9−11までのブロック図の動作を図示したものである。加速時間Ta(10秒間加速)、定格周波数Fdef(50Hz)までとしたとき、過渡時角速度ωtrnは、加速時間Ta間サンプリング時間Ts毎に加速角速度ωaを加算する様子がわかる。V1nはV/F一定制御におけるVに相当する電圧を表わす。
【0011】
図5は、加速度指令を演算するPAD図である。過渡時角速度ωtrnと定格角速度ωdefを比較し、ωtrn≧ωdefの条件を満たせば、定常モードとなり、条件を満たさなければ、加速モードとなる。定常モードの時は定格角速度ωdefを用い、(数7)式で角速度指令ω1を出力する。加速モードの時は(数5)式を用いて演算し、(数6)式で角速度指令ω1を出力する。
ここで、定常運転時に、加速角速度ωaを負の値にして加速積算器9−10によりマイナス加算し、過渡時角速度ωtrnを減少させ、角速度指令ω1を低下させると、電動機5を停止させることができる。
【0012】
また、図1の同期投入回路14において、同期投入モードの信号すなわち補正角速度ωsuを角速度指令部9に出力したとき、図2の同期投入モード9−12を駆動し、同期投入演算部9−13で(数8)式を用いて過渡時角速度ω trn の演算を行う。この時、角速度演算ω1は加速時に使用した(数6)式で演算するので、減少する。詳細は同期投入回路(図7)において説明する。
【数8】
ωtrn=ωtrn(n−1)−ωsu
【0013】
図1において、A/D変換器10は電動機交流のアナログ値の瞬時電流iu、iv、iwをサンプルホールドし、ディジタル値に変換する。変換されたディジタル値の3相電流を電流変換器11において(数9)式により2相のα−β軸に変換し、(数10)を用いて回転子座標であるd−q軸変換する。
図6は、(数9)、(数10)式の関係をベクトル図に示す。変換された励磁成分Idfとトルク成分Idqから(数11)式を用いて電動機5のすべり角速度ωsを求める。
【数9】
【数10】
【数11】
ただし、ksは電動機5の励磁リアクタンスLSと2次抵抗r2から求まる。
【0014】
角速度指令ω1は周波数指令であり、電動機5はω1よりすべりωsだけ遅い回転数で回転している。加算器13によりω1とωsを加算して駆動角速度ωdrを得る。このため、電動機5は角速度指令部9より指令された角速度ω1に近い回転数で駆動できる。駆動角速度ωdrは、(数12)式により表わされる。
【数12】
【0015】
図7は、同期投入回路14と角速度指令部9の詳細ブロックを示す。図8は、トルク電流成分Iqfと、同期投入設定電流値Ies、投入許可電流Ipeおよび定格電流Idefの関係図であり、トルク電流成分Iqfの+領域は力行モード、−領域は回生モードとなる。図9は、力行時のトルク電流の時間的経過をもとに同期投入動作を説明する動作説明図である。図10は、加速状態、定常状態、瞬時停電状態復帰等を説明するための時間に対する動作説明図である。図11は角速度設定に関する各要素の動作過程を説明したPAD図である。
【0016】
いま、瞬時停電等で電動機がインバータから切り離され、フリーラン状態で回転数が低下したと仮定する。この状態でインバータの角速度指令ω1として定格角速度ωdefを選択▲1▼させる。この時インバータの角速度指令ωdefと電動機5の回転している角速度が▲1▼と▲3▼のようにずれているので、電動機電流Iqfは大きな値となる。その様子を図9により説明する。
(1)電動機がインバータから切り離され、フリーラン状態で回転数が低下したとき、インバータの角速度指令ω1として定格角速度ωdefをセット▲1▼する。(2)図1の電流変換器11は、電動機電流を回転座標軸d−q軸に変換し、同期投入回路14ではこのトルク電流成分Iqfと励磁電流成分Idfを取り込む。図7において、q軸電流14−1でトルク電流成分Iqfを取り出し、同期投入設定電流Ies14−2とサンプリング時間毎に比較し、トルク電流成分Iqfが同期投入設定電流Iesより大きくなった時点で同期投入モード▲2▼に入る。
(3)同期投入処理部14−5は、後述する比例・積分制御を行い、同期投入処理を行って補正角速度ωsuを出力する。角速度指令部9の同期投入演算部9−13では補正角速度ωsuを受けて、(数8)式を使用し、過渡時角速度ωtrnの演算を行う。比較器9−11は(数6)式を使用して、角速度指令ω1を出力する。このとき角速度指令ω1は同期投入処理部14−5の比例・積分演算に従い、1次遅れの要素を含んで小さくなり、電動機5が回転している角速度に近づく。すなわち、図10の▲2▼に示すように角速度指令ω1は定格角速度ωdefから電動機5の回転子が回転している角速度に高いところから近づいていき、ほぼ一致すると電動機のトルク電流成分Iqfは減少する。比較器14−4はトルク電流成分Iqfと同期投入許可電流Ipeを比較し、トルク電流成分Iqfが同期投入許可電流Ipeより小さくなった時点▲3▼で加速モード▲4▼に切り替える。
(4)同期投入処理▲3▼を終了すると、補正角速度ωsuと同期投入積分項(後述する。)を零にする。この点は、図10に示すように、過渡時角速度ωtrnは定格角速度ωdefより小さくなっているので、角速度指令部9では加速モード▲4▼に入り、前述したように加速角速度ωaで加速する。
(5)そして、電動機5に与える過渡時角速度ωtrnが定格角速度ωdefまで上昇すると、定常モード▲5▼に入る。
【0017】
同期投入処理部14−5の同期投入処理を詳細に説明する。図7、図8、図9、図10を参照する。トルク電流成分Iqfが同期投入設定電流Iesより大きくなった時点からトルク電流成分Iqfと同期投入許可電流Ipeの偏差より比例・積分制御を行う。同期投入偏差εpeは(数13)式により求める。同期投入積分項Isynは(数14)式により求める。また、補正角速度ωsuは(数15)式により求める。
【数13】
【数14】
【数15】
ここで、Isynは同期投入積分項、Isy(n-1)は1サンプリング前の同期投入積分項、Kipeは同期投入積分定数、Kppeは同期投入比例定数である。
【0018】
積算回路15は、駆動角速度ωdrを(数16)式のように積算することにより、位相θを求める。図3に示したように、電気角で360度分の正弦波のデータをNtbのテーブルに分割して格納する。この時、位相θはサンプリング毎にωdrを積算していき、θの値がテーブル数Ntbになったとき、θを零にクリアすれば、図3に示すような鋸歯状が得られる。また、位相θは、正弦波テーブルのアドレスに当たり、サンプリング毎に求めた位相θでテーブルを引けば、0から360度までの正弦波を連続して得ることができる。
【数16】
ここで、ωdrnは(数12)式に示した駆動角速度ωdrの積算値と等しい。ωdr(n−1)は前回の駆動角速度ωdrの積算値である。
電圧指令部16は、(数17)式を用いて駆動角速度ωdrに比例した値を得る。
【数17】
ここで、Kvは比例定数である。
【0019】
図11は、角速度指令部9における加速度演算、定常演算、同期投入演算を行うためのPAD図である。
まず、(1)、(2)、(3)、(4)は定常モードと加速モードおよび同期投入モードの判定を行う。すなわち、同期投入フラグIESFLGの値の”1”をチェックし(1)、”1”が有る時は何もせずに(5)に飛ぶ。無いときは過渡時角速度ωtrnと定格角速度ωrefの大きさの比較を行い(2)、過渡時角速度ωtrnが大きくなると、定常モードを実施し(3)、過渡時角速度ωtrnが小さい間は加速モードを行う(4)。
次に、(5)、(6)は同期投入モードに入るかどうかを判定する。トルク電流成分Iqfと同期投入電流Iesの大きさの判定を行う(5)。トルク電流成分Iqfが大きくなったときはYESで同期投入フラグIESFLGを”1”にしフラグを立てる(6)。NOのときは何もせず(7)に飛ぶ
続いて、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)は同期投入モードの処理を行う。再度、同期投入フラグIESFLGの値の”1”が有るかどうかチェックし(7)、有ればYESで(8)に飛び、同期投入終了判定を行い、無いときは何も行わず(12)に飛ぶ。(8)でトルク電流成分Iqfと同期投入許可電流Ipeを比較し、トルク電流成分Iqfの方が小さくなれば、(9)に飛び、同期投入フラグIESFLGに”0”をかき、クリアする。さらに、補正角速度ωsuと同期投入積分項を零クリアし、同期投入を終了して、(12)に飛ぶ。トルク電流成分Iqfが同期投入許可電流Ipeより大きいときは、(10)に飛び、同期投入モードを実施する。すなわち、(数13)式で同期投入偏差εpeと、(数14)式で同期投入積分項Isynと、(数15)式で補正角速度ωsuを求める。さらに、(11)では(数8)式を用いて過渡時角速度演算ωtrnを行う。
最後に、(12)と(13)は位相と電圧補正の演算を行う。そして、終了する。
【0020】
17は磁束電流指令部であり、電動機5に相当した励磁電流を予め設定しておく。18は電動機定数回路であり、r1*は1次換算抵抗値、Lσは1次換算インダクタンス、L2は2次インダクタンス、Mは相互インダクタンス、φ2dは2次磁束である。これらの定数と磁束電流Id*、駆動角速度ωdr、電動機のトルク成分Iqfより、(数18)、(数19)式を用いて電圧トルク成分V1qと電圧励磁成分V1dを求める。
【数18】
【数19】
19はベクトル演算部であり、V1qとV1dから絶対値と位相角δを(数20)、(数21)式により求める。
【数20】
【数21】
20は正弦波発生部である。電圧の大きさは(数20)式により求めたVt、位相は(数16)式により求めた位相θと(数21)式により求めたδを加算したθdを使う。電動機5に印加する相電圧は、(数23)、(数24)、(数25)に表わす。
【数22】
【数23】
【数24】
【数25】
21はPWM演算回路であり、正弦波発生部20において演算した値Vu,Vv,Vwと三角波と比較してPWMパルスを作る。すなわち、3相インバータの半導体素子のU相の上アームTu、下アームTxと、V相の上アームTv、下アームTyと、W相の上アームTw、下アームTzにPWMパルスを供給して所定の周波数、電圧を作り、誘導電動機5を駆動する。
【0021】
以上、本実施形態は、電動機の定格周波数Fdef、演算のためのサンプリング時間Ts、3相正弦波を作るテーブルのデータ数Ntbから定格角速度ωdefをつくり、また、この定格角速度ω defと要望される加速時間Taから加速角速度ωaを演算し、サンプリング時間毎に加速角速度ωaを積算して過渡時角速度ωtrnをつくり、定格角速度ωdefと過渡角速度ωtrnを比較し、過渡時角速度ωtrnが定格角速度ωdefより小さい時は過渡時角速度ωtrnを用いて電動機5を加速し、過渡時角速度ωtrnが定格角速度ωdefより大きくなった時は定格角速度ωdefを用いて定常運転に入るように電動機5を制御する。
ここで、本実施形態は、図4、図7において加速角速度ωaを負の符号−ωaで考えると、減速モードまで拡張して実施できる。
このようにして、本実施形態では、電動機の定格周波数Fdef、演算のためのサンプリング時間Ts、正弦波テーブル数Ntb、加速時間Ta、減速時間−Taを適宜に設定して、定格角速度ωdef、加速角速度ωa及び減速角速度−ωaを演算し、また、加速角速度ωa及び減速角速度−ωaから過渡時角速度ωtrnをつくるので、電動機5の加速レート、減速レートを自由に設定することが可能となり、
電動機の低速時及び無負荷時でも、過励磁にならず、効率よく、スムーズに電動機を加減速することができる。
【0022】
また、本実施形態は、瞬時停電時の再投入に関して、電動機のトルク成分Iqfを検出し、トルク電流成分Iqfが同期投入設定電流Iesより大きくなった時点から同期投入モードに入れ、トルク電流成分Iqfと同期投入許可電流Ipeの偏差が零になるように比例積分制御を行い、補正角速度ωsuをつくり、過渡時角速度の値を減算することにより、電動機に加える電圧と周波数を小さくする。すなわち、同期投入処理部14−5の比例・積分定数に従い、1次遅れ効果で角速度指令ω1を減少させ、素早く角速度指令ω1を電動機の回転子が回転している角速度に近づけ、指令角速度が電動機の回転子の回転している角速度に近づくと、トルク電流成分Iqfが同期投入許可電流Ipeより小さくなり、その点で電動機を定格角速度ωdefまで上昇させる加速モードに移行する。
このようにして、本実施形態では、瞬時停電時に電動機を再起動するとき、制御装置が指令する角速度を迅速に電動機が回転している角速度に一致させるので、スムーズに同期投入が可能となり、過電流を防止することができる。その後、規定の加速角速度で電動機を加速し、定常運転に復帰させる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態として、瞬時停電等で電動機5がインバータから切り離され、フリーラン状態で回転数が低下したと仮定して説明したが、定常運転中に負荷等が大きくなった場合も同様に、本実施形態を適用することができる。すなわち、図7、図8、図9において、定常運転中に負荷等が大きくなって電動機のトルク電流成分Iqfが同期投入設定電流Iesより大きくなったとき、図11の(5)で同期投入フラグを立てて実施すれば、角速度が低下し、電動機5に印加する電圧と周波数を低下させて電流を減少させ、過電流防止を行うことができる。
【0024】
また、本発明は、回生モードにも適用することができる。図12は、角速度指令部9が回生時に定常モード、加速モード、同期投入モードを選択するためのPAD図であり、図7、図8、図9において、電動機5のトルク電流成分Iqfが負になり、さらに同期投入設定電流−Iesより小さくなったときは、図12の(5)で同期投入フラグを立てて、(7)、(8)、(9)、(10)において補正角速度ωsuの値を求め、(11)において補正角速度ωsuの値を過渡時角速度ωtrnに加算すれば、角速度は上昇し、回生モードの状態となる。
なお、図11においてトルク電流成分Iqf、投入設定電流Ies、同期投入許可電流Ipeを符号付で演算すれば、図11の方式をそのまま回生モードまで拡張して実施することができる。
【0025】
また、本発明は、図1のベクトル演算部19と正弦波発生部20において(数26)、(数27)式を用いれば、(数20)、(数21)式で使用したように平方根の演算と逆正接の演算をしなくてすみ、演算速度の向上と、正接の90度付近の精度を簡単に向上させることができる。
【数26】
【数27】
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電動機の定格周波数、演算のためのサンプリング時間、正弦波テーブル数、加速時間、減速時間を適宜に設定して、定格角速度、加速角速度及び減速角速度を演算し、また、加速角速度及び減速角速度から過渡時角速度をつくることによって、電動機の加速レート、減速レートを自由に設定でき、電動機の低速時及び無負荷時でも、過励磁にならず、効率よく、スムーズに電動機を加減速することが可能になる。
また、瞬時停電時に電動機を再起動するとき、制御装置が指令する角速度を迅速に電動機が回転している角速度に一致させるので、スムーズに同期投入が可能となり、過電流を防止することができ、その後、電動機を加速し、定常運転に復帰させることができる。
また、電動機の定常運転時に、トルク電流成分が同期投入設定電流より大きくなった時点から同期投入モードに入り、同期投入回路と角速度指令部によって電動機の周波数と電圧を低下させ、電動機電流を減少させ、これは、電流リミッタの役割をはたし、過電流を防止し、インバータ装置のトリップを防止することができる。
また、同期投入回路と角速度指令部において、電動機のトルク電流成分の符号が負の場合は回生モードとなり、角速度指令を上昇させて電流を抑制すること、すなわち、過渡時角速度に補正角速度を加えて電動機の周波数と電圧を上げることによって、回生モードにおける過電流を防止し、インバータ装置のトリップを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す誘導電動機の制御構成図
【図2】本発明の特徴部を示す図1の角速度指令部の詳細図
【図3】本発明の定格角速度と正弦波発生原理の説明図
【図4】本発明の定格角速度まで加速するための加速角速度との関係図
【図5】本発明の定常モードと加速モードの決定方法のPAD図
【図6】電動機の3相交流電流とトルク電流と励磁電流の関係を示す電流ベクトル図
【図7】本発明の同期投入時の同期投入回路と角速度指令部との動作経路を示す構成図
【図8】本発明におけるトルク電流成分と同期投入設定電流、同期投入許可電流および定格電流の関係図
【図9】本発明の同期投入時の状態説明図
【図10】本発明の同期投入時における過渡時角速度の状態説明図
【図11】本発明の角速度指令部が定常モード、加速モード、同期投入モードを選択するためのPAD図
【図12】本発明の角速度指令部が回生時に定常モード、加速モード、同期投入モードを選択するためのPAD図
【符号の説明】
4 インバータ
5 誘導電動機
7 誘導電動機の制御部
8 サンプリングタイマ
9 角速度指令部
9−1 電動機定格周波数設定部
9−2 定格1周期時間設定部
9−3 サンプリング時間設定部
9−4 1周期サンプル数演算部
9−5 正弦波テーブル数
9−6 定格角速度演算部
9−7 加速時間設定部
9−8 加速サンプル回数演算部
9−9 加速角速度および減速角速度演算部
9−10 加速減速演算器
9−11 モード比較器
9−12 同期投入モード指令部
9−13 同期投入積算器
11 電流変換器
12 すべり演算部
13 加算器
14 同期投入回路
15 積算回路
16 電圧指令部
17 磁束電流指令部
18 電動機定数回路
19 ベクトル演算部
20 正弦波発生部
21 PWM演算回路
Claims (3)
- 可変電圧、可変周波数の交流電圧を出力するPWMインバータによって誘導電動機を駆動する誘導電動機の制御方法であって、
前記電動機の定格周波数と、演算のためのサンプリング時間と、3相正弦波を作るテーブルのデータ数とに基づいて定格角速度をつくり、この定格角速度と加速時間あるいは減速時間とから、加速角速度あるいは減速角速度を演算し、前記サンプリング時間毎に加速角速度あるいは減速角速度を積算して過渡時角速度をつくり、
この過渡時角速度を定格角速度と比較し、過渡時角速度が定格角速度より小さい時は過渡時角速度を用いて前記電動機を加速し、過渡時角速度が定格角速度より大きくなった時は定格角速度を用いて定常運転に入るように前記電動機を制御し、また、過渡時角速度が定格角速度より大きい時は過渡時角速度を用いて前記電動機を減速し、過渡時角速度が定格角速度より小さくなった時は定格角速度を用いて定常運転に入るように前記電動機を制御し、
瞬時停電時の前記電動機の再投入に際して、前記電動機のトルク成分を検出し、トルク電流成分が同期投入設定電流より大きくなった時点から、トルク電流成分と同期投入許可電流の偏差が零になるように比例積分制御を行い、補正角速度をつくり、過渡時角速度から補正角速度を減算した値を角速度指令として、前記電動機に加える電圧と周波数を小さくする同期投入モードに入り、トルク電流成分が同期投入許可電流より小さくなった時、前記電動機を定格角速度まで上昇させる加速モードに移行し、
また、前記電動機のトルク電流成分が負になり、さらに負の同期投入設定電流より小さくなった回生モードのとき、過渡時角速度に補正角速度を加算した値を角速度指令として、前記電動機に加える電圧と周波数を大きくすることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項1において、定常運転中に負荷等が大きくなった場合、前記電動機のトルク成分を検出し、トルク電流成分が同期投入設定電流より大きくなった時点から、トルク電流成分と同期投入許可電流との偏差が零になるように比例積分制御を行い、補正角速度をつくり、過渡時角速度から補正角速度を減算した値を角速度指令として、前記電動機に加える電圧と周波数を小さくし、前記電動機電流を減少させる同期投入モードに入ることを特徴とする誘導電動機の制御方法。
- 誘導電動機を可変電圧、可変周波数の交流電圧によって制御する誘導電動機の制御装置であって、
該制御装置が直流を可変電圧、可変周波数の交流に変換する電力変換部と、該電力変換部を制御する制御部とを備え、
該制御部は、前記電動機の定格周波数と、サンプリング時間と、正弦波テーブル数と、前記電動機が定格回転数まで加速する加速時間とから、定格角速度と加速角速度とを演算し、または、前記電動機の定格周波数と、サンプリング時間と、正弦波テーブル数と、前記電動機が定格回転数まで減速する減速時間とから、定格角速度と減速角速度とを演算する演算部と、
加速角速度あるいは減速角速度をサンプリングして積算し、過渡時角速度を出力する加速角速度積算器あるいは減速角速度積算器と、
定格角速度と過渡時角速度を比較し、過渡時角速度が定格角速度より小さい時は過渡時角速度を角速度指令として出力し、過渡時角速度が定格角速度より大きくなった時は定格角速度を角速度指令として出力するモード比較器とを有し、
さらに、前記制御部が、前記電動機の交流3相電流から電動機回転子の回転座標のトルク電流成分および励磁電流成分に変換する電流変換器と、同期投入設定 電流値および同期投入許可電流値とトルク電流成分の大きさを比較して同期投入処理を行い、補正角速度を出力する同期投入回路と、過渡時角速度から補正角速度を減算した値を出力する同期投入積算器とを有し、
定格角速度、前記加速角速度積算器あるいは前記減速角速度積算器が出力する過渡時角速度、または、前記同期投入積算器が出力する過渡時角速度を選択して角速度指令を出力し、
前記同期投入回路は、トルク電流成分が同期投入設定電流より大きくなった時、または、負のトルク電流成分が負の同期投入設定電流より小さくなった時に、同期投入モードを選択し、トルク電流成分と同期投入許可電流との偏差、または、
負のトルク電流成分と負の同期投入許可電流との偏差が零になるように比例積分制御を行い、補正角速度を演算することを特徴とする誘導電動機の制御装置。
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