JP3860136B2 - 熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法 - Google Patents

熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱プレス成形に用いられるクッション材用ゴムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱プレスでプリント基板を成形する場合、プレス対象物を熱盤間に挟み込み一定の圧力と熱をかける方法が用いられる。このようなプレス成形は、プレス対象物の全面に均等な圧力と熱を加えるために、熱盤とプレス対象物との間に平板状のクッション材を介在させた状態で行なわれる。
【0003】
このようなクッション材として、従来、シリコーンゴムやフッ素ゴムが使用されていた。ところがシリコーンゴムは、ゴム中に含まれるシロキサンの低分子ガスやブリード物を発生し、プレス対象物であるプリント基板等を汚染するという問題があった。この汚染によって、たとえばプリント基板への印刷特性が悪化したり、プリント基板と補強板等の他部材との接着性が悪化したりする。これらの傾向は、クッション材の使用時間が長期化するに従って加速される。特に、プレス対象物が精密機器部品(たとえばハードディスク用のフレキシブルプリント基板やビルドアップ多層配線板等)の場合、このような汚染が重大な欠陥となっていた。また、シリコーンゴムは、機械的強度の点でも不十分であった。
【0004】
一方、フッ素ゴムを使用したクッション材の一例として、特公平7−12617号(特開平6−278153号)に開示されたものがある。この公報に開示されたクッション材の配合を後に記載する表1に比較例1,2として示す。
【0005】
上記公報に開示のクッション材は、フッ素ゴムを用いているため、クッション材の耐熱性が向上する。それに加え、クッション性、熱伝導性、耐久性等においても優れた特性を有する。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−278153号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記クッション材と、表面に凹凸のあるプレス対象物(たとえばFPC)とを、直接接触させるか、フィルム等を介してプレスした場合、クッション材の表面に凹凸が残りやすくなる。すなわち、上記クッション材の歪回復性が不十分であるという問題があった。
【0008】
また、熱プレスが接着剤の流動−固化を伴う場合、中でもフレキシブルプリント基板(FPC)の製造におけるベースフィルムと表面フィルムとの接着剤による貼り合わせに上記クッション材を用いた場合、プレス対象物であるFPC中にボイドが残りやすいという問題があった。
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。この発明の目的は、歪回復性および凹凸への追従性に優れ、プレス対象物中にボイドを発生させることがなく、さらには低分子ガスやブリード物を発生しない熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願の発明者らは、熱プレスのクッション材用ゴムの歪回復性を、熱プレスのプレス温度、プレス周期、プレス対象物内部の接着剤の流動挙動等との関係で研究し、温度条件を150℃〜250℃とし、周波数条件を1秒〜1×10 秒としたときの、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の値が0.04以下である場合に、ゴムが良好な歪回復性を示すことを知得した。
【0011】
本発明に係るゴムは、1つの局面では、温度条件を熱プレスのプレス温度とし、周波数条件を熱プレスの1プレスサイクルに相当する時間としたときの動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の値が、0.04以下のものである。なお、上記熱プレスのプレス温度とは、1プレスサイクル中の熱盤の最高温度のことを称する。
【0012】
このゴムを熱プレス用のクッション材として用いることにより、表面に凹凸のあるプレス対象物(たとえばFPC)を熱プレスした場合でも、クッション材の表面に凹凸が残ることを阻止できる。その結果、良好なクッション性を長期間維持することが可能となる。
【0013】
上記プレス温度は、150℃〜300℃であり、1プレスサイクルに相当する時間は、1秒〜2×104 秒である。
【0014】
また、温度条件は、好ましくは、150℃〜250℃であり、周波数条件は、好ましくは、1秒〜1×103 秒である。
【0015】
この条件下において、比較的短いプレスサイクルで行なわれるフレキシブルプリント基板の製造におけるベースフィルムと表面フィルムとの貼り合わせが行なえる。よって、上記の条件下におけるtanδの値が0.04以下であるゴムをクッション材として使用することにより、フレキシブルプリント基板の製造における表面フィルムの貼り合わせ工程においてクッション材の優れた歪回復性を発揮させることができる。
【0016】
本発明に係るゴムは、他の局面では、熱プレスによる接着剤の流動−固化によってプレス対象物を積層一体化する際に使用されるクッション材用ゴムであって、温度条件を熱プレスのプレス温度とし、周波数条件を接着剤の流動開始から固化完了までの時間としたときの、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の値が0.04以下のものである。
【0017】
このゴムを熱プレス用のクッション材として用いることにより、接着剤の流動−固化によって積層一体化するプレス対象物(たとえばFPC)を熱プレスした場合、接着剤の流動時に生じる不均一な圧力を速やかに均一化することができる。その結果、ボイドの発生を効果的に防止できる。
【0018】
なお、ここで言う接着剤の概念には、流動−固化の状態変化を経て2層を接合するものの他、流動−固化の後にそれ自体が層を形成しているものも含まれる。これらは、熱可塑性材料または熱硬化性材料である。より具体的には、ホットメルト型の接着剤やプリプレグ等が挙げられる。
【0019】
一般的に、上記プレス温度は150℃〜300℃であり、接着剤の流動開始から固化完了までの時間は1秒〜2×103 秒の間である。
【0020】
上記ゴムのJISK6253によるデュロメータ硬さは、好ましくは、A75以下である。それにより、表2に示すようにデュロメータ硬さを従来例よりも小さくすることができ、凹凸への追従性を向上することができる。その結果、前述の優れた歪回復性との相乗作用によって、たとえば表面に凹凸のあるフレキシブルプリント基板に表面フィルムを貼り合わせる際に、表面フィルムとベースフィルムとの間にボイドが発生することを効果的に抑制できる。
【0021】
また、本発明に係るゴムは、好ましくは、フッ素ゴムを主成分とする。それにより、耐熱性が優れ、機械的強度が高く、かつ配合された材料のしみだしの少ないクッション材が得られる。
【0022】
上記ゴムは、好ましくは、ポリオール加硫系のフッ素ゴム成分、加硫剤、加硫促進剤および受酸剤を含むフッ素ゴム組成物である。そして、フッ素ゴム成分、加硫剤および加硫促進剤の合計は、好ましくは、フッ素ゴム組成物全体の80体積%以上である。
【0023】
上記のようにポリオール加硫系のフッ素ゴムを使用することにより、クッション材の圧縮永久歪みを小さくすることができ、クッション材の寿命が長くなる。特に、ポリオール加硫剤としてビスフェノールAFを用いた場合には、より効果的に耐熱性を向上させることができる。
【0024】
本発明に係るゴムは、他の局面では、ポリオール加硫系のフッ素ゴム成分、加硫剤、加硫促進剤および受酸剤を含むフッ素ゴム組成物である。そして、フッ素ゴム成分、加硫剤および加硫促進剤の合計が、フッ素ゴム組成物全体の80体積%以上である。
【0025】
本願の発明者らは、上記配合とすることにより、tanδの値が0.04以下であるゴムが得られることを知得した。かかるゴムを熱プレスのクッション材として用いることにより、前述のように歪回復性の優れたクッション材が得られる。
【0026】
本発明に係る熱プレス用クッション材は、1つの局面では、温度条件を150℃〜250℃とし、周波数条件を1秒〜1×10 としたときのtanδの値が0.04以下であるゴムを備える。
【0027】
それにより、熱プレスに繰返し使用したときでも極めて良好な歪回復性が得られ、良好なクッション性を長期間維持することができる。
【0028】
本発明に係る熱プレス用クッション材は、他の局面では、熱プレスによる接着剤の流動−固化によってプレス対象物を積層一体化する際に使用されるクッション材であって、温度条件を熱プレスのプレス温度とし、周波数条件を接着剤の流動開始から固化完了までの時間としたときの、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の値が0.04以下であるゴムを備える。
【0029】
それにより、このクッション材を用いて、接着剤の流動−固化によって積層一体化するプレス対象物(たとえばFPC)を熱プレスした場合、接着剤の流動時に生じる不均一な圧力を速やかに均一化することができる。その結果、ボイドの発生を効果的に抑制できる。
【0030】
本発明に係る熱プレス用クッション材は、ポリオール加硫系のフッ素ゴム成分、加硫剤、加硫促進剤および受酸剤を含むフッ素ゴム組成物であり、フッ素ゴム成分、加硫剤および加硫促進剤の合計が、フッ素ゴム組成物全体の80体積%以上であるゴムを備えるのが好ましい
【0031】
熱プレス用クッション材が上記配合のゴムを備えることにより、歪回復性が向上する。
【0032】
上記ゴムの表面に、好ましくは、離型性処理が施される。また、上記ゴムからなる層を1層以上と、織布、不織布、紙、フィルム、箔、シートおよび板の中から選ばれた1種以上からなる1層以上とを積層一体化してもよい。上記織布、不織布、紙、フィルム、箔、シートおよび板は、好ましくは、合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム、金属およびセラミックスの中から選ばれた単独または複合材である。
【0033】
また、クッション材の少なくとも一方の表面層が、上記ゴムで構成されることが好ましい。より好ましくは、該ゴムの表面に、離型性処理が施される。
【0034】
本発明に係る熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法は、下記の各工程を備える。ポリオール加硫系のフッ素ゴムを主成分とする原料ゴム、加硫剤、加硫促進剤、受酸剤および可塑剤を混練して練り生地を作成する。該練り生地をシート状に加工して未加硫ゴムシートを作成する。未加硫ゴムシートを1次加硫して加硫ゴムシートとする。この加硫ゴムシートを可塑剤の沸点以上の温度で2次加硫することにより可塑剤を揮散させる。
【0035】
上記の2次加硫により、加硫の完結、余剰の加硫剤の分解、加硫時に発生したガスの放散および残留歪みの除去を行なうことができることに加え、歪回復性を向上させることができる。それに加え、上記2次加硫により可塑剤を揮散させることができるので、クッション材の使用時に可塑剤がしみだすのを防止することができる。
【0036】
上記2次加硫により、好ましくは、tanδの値を0.04以下とする。本発明に係るプリント基板の製造方法は、1つの局面では、プリント基板材料と、クッション材とを積層した状態で熱盤間に配置して加熱・加圧成形するプリント基板の製造方法であって、クッション材は、温度条件を150℃〜250℃とし、周波数条件を1秒〜1×10 秒としたときのtanδの値が0.04以下のゴムを含む。
【0037】
本発明に係るプリント基板の製造方法は、他の局面では、積層構造を持つプリント基板材料と、クッション材とを積層した状態で熱盤間に配置して、熱プレスによる接着剤の流動−固化によってプリント基板材料を積層一体化するプリント基板の製造方法であって、クッション材は、温度条件を熱プレスのプレス温度とし、周波数条件を接着剤の流動開始から固化完了までの時間としたときの、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の値が0.04以下のゴムを含む。
【0038】
本発明に係るプリント基板の製造方法は、さらに他の局面では、次のような配合のクッション材を用いる。クッション材は、ポリオール加硫系のフッ素ゴム成分、加硫剤、加硫促進剤および受酸剤を含むフッ素ゴム組成物を有し、フッ素ゴム成分、加硫剤および加硫促進剤の合計がフッ素ゴム組成物全体の80体積%以上である。
【0039】
上記プリント基板の製造方法によって、ボイドやしわが発生せず、平滑性に優れ、汚染されることもない、高品質なプリント基板を製造できる。
【0040】
上記プリント基板は、表面に凹凸パターンを有する。また、上記プリント基板は、たとえばフレキシブルプリント基板あるいはビルドアップ多層配線板である。
【0041】
本発明に係るゴムを備えたクッション材は、かかるプリント基板の熱プレスに際し有効である。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0043】
表1は、本発明の実施例および比較例1,2(特公平7−12617号におけるサンプル1,2に対応)における配合割合を示す表である。
【0044】
【表1】
Figure 0003860136
【0045】
表1に示す配合割合で、各材料を混練してフッ素ゴム組成物を製造し、2本のロールを用いて実施例および比較例1,2の未加硫フッ素ゴムシートを作製した。その後、金型で170℃×30分のプレス加硫(1次加硫)を行ない、厚み2mmの加硫フッ素ゴムシートを作製した。実施例の加硫フッ素ゴムシートについては、さらにオーブンで230℃×24時間の2次加硫を行なった。この2次加硫は、可塑剤の沸点以上の温度で行なう。それにより、可塑剤を揮散させることができ、本発明に係るゴムシートを熱プレスのクッション材として使用した場合に、可塑剤のしみだしを阻止することができる。
【0046】
なお、積層構造のゴムシートを作成する場合には、未加硫のままでそれらを積層し、1次加硫で互いに接着する。また1次加硫は、160℃〜200℃,5分〜120分,1kg/cm2 〜20kg/cm2 の条件で行なえばよい。
【0047】
2次加硫は、前述したように可塑剤の沸点以上の温度で、かつプレスの使用温度以上の温度で行なうことが好ましい。2次加硫の温度が低すぎると2次加硫の効果が上がらず、高すぎるとゴムが劣化する。よって好適な2次加硫温度は、200℃〜260℃である。
【0048】
2次加硫時間は、1時間以上(好ましくは4〜30時間)である。時間が短いと2次加硫の効果が上がらず、長すぎても一定以上の効果を期待できない。逆にゴムが劣化する場合がある上、時間の浪費となる。
【0049】
2次加硫では、圧力はかけないようにする。また、2次加硫は、ゴムの少なくとも片面が通気性のある状態で行なうのが好ましい。それにより、可塑剤を効果的に揮散させることができる。
【0050】
通気性のある状態とは、表面に何も積層されていないか、あるいは織布、不織布、紙等の通気性素材が積層された状態のことである。
【0051】
上記ゴムシートの動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の値を、次の装置および測定方法により測定した。すなわち、粘弾性スペクトロメータ(岩本製作所(株)製:TYPE VES−FIII)を用い、強制振動非共振法(位相差法)により測定した。その結果を図1〜図4に示す。
【0052】
なお、図1にはtanδのマスターカーブ(150℃)の比較結果を示す。このマスターカーブは、公知の時間−温度換算則に基づいて周期1秒〜1×105 秒の範囲で作成した。
【0053】
図1に示すように、本発明に係るゴムシートのtanδの値が0.04以下であるのに対し、比較例1,2のtanδの値が0.04より大きくなっているのがわかる。このようにtanδの値を従来より小さくすることにより、歪回復性を従来よりも向上させることができる。かかる特性のゴムシートは、特に、表面に凹凸のある製品を熱プレスする際のクッション材として有効である。なお、tanδの値は、0に近い程好ましい。
【0054】
次に、図2〜図4を用いて、温度を150℃,200℃,250℃とした場合の実施例および比較例1,2のtanδの周期分散について説明する。なお、図2〜図4では、周期を1秒〜2×103 秒の範囲内としている。この周期は、プレス対象物内で接着剤が流動を開始してから固化を完了するまでの時間に基づいている。また、この周期範囲の熱プレスの典型例として、フレキシブルプリント基板の製造における表面フィルムの貼り合わせ工程を挙げることができる。
【0055】
図2に示すように、いずれの温度においても、実施例のゴムシートのtanδの値は0.04以下となっていることがわかる。それに対し、図3および図4に示すように、比較例のtanδの値は、いずれの温度においても0.04より大きくなっていることがわかる。
【0056】
このことから、本発明に係るゴムシートは、プレス対象物中の接着剤が流動を開始してから固化を完了するまでの時間(1秒〜2×103 秒)に相当する周期において、優れた弾性を示すといえる。このため、本発明に係るゴムシートを熱プレス用のクッション材に用いることにより、プレス対象物中の接着剤の流動時に生じる不均一な内部応力を速やかに均一化することができ、ボイドの発生を効果的に抑制することができる。
【0057】
次に、表2を用いて、実施例と比較例とのJISK6253によるデュロメータ硬さの比較を行なう。
【0058】
【表2】
Figure 0003860136
【0059】
表2に示すように、実施例のゴムシートのデュロメータ硬さが、比較例1,2のそれよりも小さいのがわかる。このように、デュロメータ硬さを小さくすることにより、凹凸への追従性を向上させることができる。それに加え、図2〜図4に示したような優れた歪回復性との相乗効果によって、凹凸のある製品を熱プレスした際に、ボイドが発生することを効果的に抑制することができる。
【0060】
なお、デュロメータ硬さは、表2の結果より、A75以下であれば少なくとも比較例の場合より凹凸への追従性を向上させることができるものと考えられる。好ましくは、デュロメータ硬さは、A70以下であり、さらに好ましくは、A65以下である。ただし、デュロメータ硬さはA10以上である必要がある。
【0061】
本発明に係るゴムの形態は、中実体の他に発泡体であってもよい。次に、表1に示す実施例の配合についてより詳しく説明する。まず、主成分であるフッ素ゴムについては、ポリアミン加硫系、ポリオール加硫系および有機過酸化物加硫系のいずれを用いてもよい。このようにフッ素ゴムを主成分とすることにより、耐熱性が良好でありかつ強度が大きくなることに加え、配合された材料のしみだしも少なくすることができる。
【0062】
特に、ポリオール加硫系のフッ素ゴムを使用した場合には、圧縮永久歪みを小さくすることができ、ゴムの寿命が長くなる。ポリオール加硫剤としては、下記の化学式1の(a)〜(d)の4種類を挙げることができる。この中で、(a)のビスフェノールAFが最も耐熱性に優れている。
【0063】
【化1】
Figure 0003860136
【0064】
表1に示すように、フッ素ゴム、加硫剤および加硫促進剤の合計が、フッ素ゴム組成物全体に対し80体積%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記合計が、85体積%以上である。このような配合とすることにより、tanδの値を低減することができ、歪回復性の優れたゴムが得られた。
【0065】
次に、加硫促進剤について説明する。加硫促進剤としては、構造式R4 + - で示される有機フォスフォニウム塩、R4 + - で示される第4級アンモニウム塩などが好ましい。
【0066】
可塑剤については、低沸点のもの、たとえば熱プレスを行なう場合にはプレスの使用温度以下の沸点を有するものを使用することが好ましい。可塑剤の使用量は、ゴム100重量部に対して0.5〜5(好ましくは1〜2)重量部である。0.5重量部より少な過ぎると加工性を改善する効果が小さくなり、多すぎると可塑剤を揮散させた後のゴムの寸法安定性が悪くなる。
【0067】
可塑剤としては、ジ−n−オクチル・フタレート、ジイソオクチル・フタレート、ジイソノニル・フタレート、ジメチル・イソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシル・アジペート、ジ(n−オクチル,n−デシル)アジペート、ベンジルオクチル・アジペート、ジブチルジグリコール・アジペート、ジ−n−アルキル・アジペート、ジ−n−アルキル(C6,8,10)アジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ−n−ヘキシル・アゼレート、ジ−2−エチルヘキシル・ドデカネジオエート、ジメチル・マレート、ジエチル・マレート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、トリエチル・シトレート、トリ−n−ブチル・シトレート、アセチル・トリエチル・シトレート、モノメチル・イタコネート、ジメチル・イタコネート、ブチル・オレート、メチル・アセチル・リシノレート、n−ブチル・ステアレート等を挙げることができる。
【0068】
上述のような本発明に係るゴムを熱プレス用クッション材として使用する場合には、ゴムの表面に離型性処理が施されることが好ましい。離型性処理としては、ゴムの特性を損なわないものが好ましい。具体的には、合成樹脂フィルムをゴムの表面に張りつけたもの、ゴムの表面を均一に粗面化したもの、紫外線または電子線照射を施したものなどが挙げられる。
【0069】
合成樹脂フィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂、およびポリイミド樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0070】
合成樹脂フィルムの厚みは、200μm以下であることが好ましい。より好ましくは、合成樹脂フィルムの厚みは、10μm〜50μmである。
【0071】
合成樹脂フィルムは、ゴムと接着する接着面に予めコロナ放電や酸等による処理が施されることが好ましい。それにより、合成樹脂フィルムとゴムとの接着性が良好となり、特に接着剤を使用しなくてもゴムの1次加硫時に合成樹脂フィルムとゴムとを接着することができる。接着剤を使用しないことにより、クッション材の表面にゴムの弾性を生かすことができ、凹凸への追従性が良好なクッション材が得られる。
【0072】
ゴムと接着する接着面に予め接着剤を塗布した合成樹脂フィルムを使用してもよい。この場合、ゴムを2次加硫した後に合成樹脂フィルムを接着することが可能となる。それにより、合成樹脂フィルムを貼り合わせてない状態でゴムを2次加硫できるため、2次加硫の効率が向上する。
【0073】
ゴムの表面を均一に粗面化する場合の手段としては、均一な凹凸面を有する金型、金属板、織布等の転写材から転写する方法が挙げられる。また、その他の物理的処理、化学的処理などによって行なってもよい。ゴムの表面を粗面化する場合、表面粗さは、JISB0601に定義される算術平均粗さ(Ra)で5μm〜100μmとするのが好ましい。
【0074】
熱プレス用クッション材としては、上述のゴムからなる層を1層以上と、織布、不織布、紙、フィルム、箔、シートおよび板の中から選ばれた1種以上からなる1層以上の層とを組合わせて積層一体化してもよい。上記織布、不織布、紙、フィルム、箔、シートおよび板は、好ましくは、合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム、金属およびセラミックスの中から選ばれた単独または複合材である。
【0075】
図6に、クッション材3の具体的な構造例を示す。図6(a)に示すように、フッ素ゴム7単体でクッション材3として使用してもよいが、図6(b)〜(l)に示すように、フッ素ゴム7と、ガラスクロス8、フッ素樹脂フィルム9、芳香族ポリアミド不織布10、ガラスクロスの両面にフッ素ゴムをコーティングしさらにその表面にポリイミド樹脂をコーティングした表層材11、芳香族ポリアミドクロス12、ガラスクロスにフッ素樹脂をコーティングした層13、ポリイミドフィルム14あるいはアルミニウム板15とを積層一体化してもよい。
上記フッ素ゴム7の厚みは、たとえば0.5mmである。また、フッ素樹脂フィルム9の厚みは、たとえば25μmである。
【0076】
プレス対象物が表面に凹凸パターンを有する場合を考慮して、上記積層体の少なくとも一方の表面層は、好ましくは、ゴムで構成される。表面ゴム層の厚みは、たとえば0.1mm〜3.0mmである。より好ましくは、表面ゴム層の厚みは、0.3mm〜1.0mmである。表面ゴム層の厚みが小さ過ぎると、均一なシート状に成形するのが難しくなる。また、表面ゴム層の厚みが大き過ぎると、プレスの圧力によるゴムの変形量が大きくなるため、ゴムの破壊が生じやすくなって耐久性が低くなる。よって、表面ゴム層の厚みを上述の範囲とすることにより、均一なシート状に成形しやすくかつ耐久性の高い表面ゴム層が得られる。
【0077】
上記表面ゴム層を設けた場合には、この表面ゴム層の表面に前述の離型性処理を施すことが好ましい。図6におけるフッ素樹脂フィルム9は、離型性処理の一例である。
【0078】
次に、図5を用いて、本発明に係るゴムを熱プレス用クッション材として用いた場合の熱プレス方法の一例について説明する。
【0079】
図5に示すように、熱盤6,6′間にステンレス製の当て板4,4′、クッション材3,3′、離型フィルム5、フレキシブルプリント基板1およびカバーレイフィルム2を配置し、フレキシブルプリント基板1およびカバーレイフィルム2(プリント基板材料)を加熱・加圧成形する。
【0080】
この場合に、クッション材3,3′として本発明に係るゴムを用いることにより、前述のように、クッション材3,3′の歪回復性および凹凸追従性を向上することができる。それにより、クッション材3,3′の良好なクッション性を長期間維持できるとともに、フレキシブルプリント基板1におけるボイドの発生をも効果的に抑制できる。また、プレス時のガスの発生、分解分子の揮散およびブリード等をも回避でき、フレキシブルプリント基板1やその周辺機器の汚染等を防止できる。さらに、フッ素ゴムを主成分とするゴムを用いることにより、耐熱性に優れかつ高強度なクッション材3,3′が得られる。それにより、クッション材3,3′の耐久性をも向上させることができる。
【0081】
なお、本発明に係るゴムを使用したクッション材3,3′は、上記のフレキシブルプリント基板1以外にビルドアップ多層配線板やその他のプリント基板、さらにはすべての熱プレスにおいて広く使用可能である。
【0082】
以上のようにこの発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のtanδの値と、比較例1,2のtanδの値とを併記したグラフである。
【図2】本発明の実施例のtanδの周期分散を示すグラフである。
【図3】比較例1のtanδの周期分散を示すグラフである。
【図4】比較例2のtanδの周期分散を示すグラフである。
【図5】本発明に係るクッション材を用いた熱プレス方法の一例を示す図である。
【図6】(a)〜(l)は、クッション材の具体的な構造例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 フレキシブルプリント基板、2 カバーレイフィルム、3,3′ クッション材、4,4′ 当て板、6,6′ 熱盤、7 フッ素ゴム、8 ガラスクロス、9 フッ素樹脂フィルム、10 芳香族ポリアミド不織布、11 表層材、12 芳香族ポリアミドクロス、13 ガラスクロスにフッ素樹脂コーティングした層、14 ポリイミドフィルム、15 アルミニウム板。

Claims (7)

  1. ポリオール加硫系のフッ素ゴムを主成分とする原料ゴムと、加硫剤、加硫促進剤、受酸剤および可塑剤を混練して練り生地を作成する工程と、
    前記練り生地をシート状に加工して未加硫ゴムシートを作成する工程と、
    前記未加硫ゴムシートを1次加硫して加硫ゴムシートとする工程と、
    前記加硫ゴムシートを前記可塑剤の沸点以上の温度で2次加硫することにより前記可塑剤を揮散させる工程と、
    を備えた、熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法。
  2. 前記ゴムは、温度条件を150℃〜250℃とし、時間に換算した周波数条件を1秒〜1×10秒とする動的粘弾性測定条件下における損失正接(tanδ)の値0.04以下である、請求項1に記載の熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法。
  3. 前記ゴムは、ポリオール加硫系のフッ素ゴム成分、加硫剤、加硫促進剤および受酸剤を含むフッ素ゴム組成物であり、
    前記フッ素ゴム成分、加硫剤および加硫促進剤の合計が、前記フッ素ゴム組成物全体の80体積%以上である、請求項1または2に記載の熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法。
  4. 前記ゴムの表面に、離型性処理が施された、請求項1〜3のいずれかに記載の熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法。
  5. 前記ゴムからなる層を1層以上と、織布、不織布、紙、フィルム、箔、シートおよび板の中から選ばれた1種以上からなる1層以上とを積層一体化した、請求項1〜4のいずれかに記載の熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法。
  6. 前記織布、不織布、紙、フィルム、箔、シートおよび板は、合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム、金属およびセラミックスの中から選ばれた単独または複合材である、請求項5に記載の熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法。
  7. 前記熱プレス用クッション材の少なくとも一方の表面層が、前記ゴムで構成される、請求項1〜6のいずれかに記載の熱プレスのクッション材用ゴムの製造方法。
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