JP3859925B2 - 気体燃料エンジンの診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高圧気体を燃料とする気体燃料エンジンにおいて、燃料供給系に介装された遮断弁の機能異常を診断する診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、高圧気体(CNG:コンプレスド・ナチュラル・ガス=圧縮天然ガス)を燃料とする車両用の気体燃料エンジン(CNGエンジン)において、気体燃料タンク(気体燃料ボンベ)から気体燃料噴射弁に至る燃料供給系に電磁弁からなる遮断弁を介装し、この遮断弁をエンジン停止時に閉弁させたり、或いは、ガス漏れ発生時に閉弁させたりして、気体燃料の大気中への放出を防止するようにしていた(特開平9−317513号公報等参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の気体燃料エンジンでは、燃料供給系に介装される遮断弁が閉制御に対して実際に燃料供給系を遮断しているか否かを診断する機能がなく、例えば、遮断弁の開閉駆動制御系に断線・ショート等の異常が無いが、実際には弁体の開固着等によって閉制御しても遮断弁によって燃料供給系を遮断することができない機能異常の発生が検知されず、遮断弁の本来の機能を必要時に発揮させることができなくなる場合があった。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、気体燃料エンジンの燃料供給系に介装される遮断弁が、燃料供給系を必要時に遮断するという本来の機能を発揮し得る状態にあるか否かを診断できる気体燃料エンジンの診断装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明は、気体燃料エンジンの燃料供給系に設けられた遮断弁の下流側に気体燃料の圧力を検出する圧力センサを設け、エンジンの運転中に遮断弁を閉制御し、前記遮断弁を閉じてから所定の診断時間内で気体燃料圧力の降下代が閾値を超えたときに前記遮断弁の正常状態を判定し、前記所定の診断時間内での気体燃料圧力の降下代が前記閾値以下であったときに前記遮断弁の異常状態を判定すると共に、前記診断時間を、前記遮断弁を閉じてから前記遮断弁の下流側に残存する燃料が無くならないような時間に設定する構成とした。
【0006】
かかる構成によると、エンジンの運転中に遮断弁が閉じて気体燃料タンク(気体燃料ボンベ)からの燃料供給系への燃料補給が断たれると、遮断弁の下流側に残存する燃料がエンジンで消費されることで、遮断弁下流側の気体燃料圧力が低下するが、遮断弁が全閉にならずに燃料補給が継続される場合には、遮断弁下流側の気体燃料圧力の低下が鈍り、比較的高い圧力で推移することになるので、実際に遮断弁が全閉状態になっているか否かが、前記圧力降下の特性から診断できることになる。
そこで、遮断弁を閉じた時点の気体燃料圧力を基準としてその後の気体燃料圧力の降下代を求め、所定の診断時間内で閾値を超える圧力降下が発生したときには遮断弁が実際に閉じていると判定し、前記診断時間内での圧力降下代が閾値以下であったとき(閾値を超える圧力降下が発生するまでの時間が前記診断時間よりも長かったとき)には、閉制御に対して遮断弁が全閉になっていない(開固着している)ものと判定する。
ここで、遮断弁が正常で閉制御に対して実際に全閉になる場合、遮断弁の下流側に残存する燃料が全てエンジンで消費されると、エンジンに供給できる気体燃料がなくなってエンジンが停止してしまうので、燃料が無くなる前に診断を終了させて遮断弁を開状態に戻す。
【0010】
請求項記載の発明では、前記診断時間を、エンジンの最小燃料消費量状態での圧力降下を基準に設定する構成とした。かかる構成によると、エンジンにおける燃料消費量が少ないほど、遮断弁を閉じてからの圧力降下が遅くなるので、この圧力降下が最も遅い状態でも、遮断弁が正常であれば閾値を超える圧力降下が発生する時間を診断時間とする。
【0011】
請求項記載の発明では、エンジンに対する気体燃料の供給が停止される状態での機能診断を禁止する構成とした。かかる構成によると、エンジンに対して気体燃料が供給されない状態(燃料カット状態)では、遮断弁の下流側に残存する燃料が消費されずに圧力が保持され、圧力変化に基づく診断が不能であるとして、機能診断を禁止する。
【0012】
請求項記載の発明では、診断時間内においてエンジンに対する気体燃料の供給停止状態の積算時間が所定時間以上になったときに診断を中止する構成とした。
【0013】
かかる構成によると、エンジンに対して気体燃料が供給されない状態(燃料カット状態)では、遮断弁の下流側に残存する燃料が消費されずに圧力が保持され、遮断弁が正常であっても閾値を超える圧力降下が発生するまでの時間が延びるので、燃料カット状態の積算時間(圧力保持される時間)が所定時間以上になると診断を中止する。
【0014】
請求項記載の発明では、診断時間内においてエンジンに対する気体燃料の供給が停止された時間だけ診断時間を延長とする構成とした。かかる構成によると、エンジンに対して気体燃料が供給されない状態(燃料カット状態)では、遮断弁の下流側に残存する燃料が消費されずに圧力が保持され、遮断弁が正常であっても閾値を超える圧力降下が発生するまでの時間が延びるので、この延びる時間分だけ診断時間を延長し、該延長した診断時間内で閾値を超える圧力降下が発生するか否かを判別させる。
【0015】
請求項記載の発明は、高圧気体を燃料とする気体燃料エンジンにおいて、燃料供給系に設けられた遮断弁の機能診断を行う診断装置であって、前記遮断弁の下流側に気体燃料の圧力を検出する圧力センサを設け、エンジンの運転中に前記遮断弁を閉制御し、該閉制御後に前記圧力センサで検出される気体燃料の圧力変化に基づいて、前記遮断弁の機能診断を行う一方、前記燃料供給系の途中に介装されたプレッシャレギュレータの上流側に前記遮断弁及び前記圧力センサを備えると共に、前記プレッシャレギュレータの下流側に、エンジンに供給される気体燃料の圧力を検出する供給圧力センサを設け、この供給圧力センサで検出される気体燃料の圧力が所定値以下となったときに、機能診断を中止し、遮断弁を開制御するよう構成した。
【0016】
かかる構成によると、エンジンに供給される気体燃料の圧力が所定値以下となったときには、そのまま遮断弁を閉制御状態に保持すると、エンジンに供給できる気体燃料が無くなってしまうものと判断し、診断を中止して遮断弁を開くことで、気体燃料タンク(気体燃料ボンベ)からの気体燃料の供給を可能にする。
【0017】
請求項記載の発明は、高圧気体を燃料とする気体燃料エンジンにおいて、燃料供給系に設けられた遮断弁の機能診断を行う診断装置であって、前記遮断弁の下流側に気体燃料の圧力を検出する圧力センサを設け、エンジンの運転中に前記遮断弁を閉制御し、該閉制御後に前記圧力センサで検出される気体燃料の圧力変化に基づいて、前記遮断弁の機能診断を行うと共に、前記燃料供給系の途中に介装されたプレッシャレギュレータの上流側に前記遮断弁及び前記圧力センサを備え、この圧力センサで検出される気体燃料の圧力に基づき燃料計における燃料残量表示を行わせる構成であって、前記機能診断中は、前記燃料計における燃料残量表示を機能診断開始直前の値に固定する構成とした。
【0018】
かかる構成によると、遮断弁の機能診断のために遮断弁を閉制御すると、遮断弁下流側に残存する気体燃料がエンジンに供給され、プレッシャレギュレータに供給される気体燃料の圧力が低下することになり、これに追従して燃料計に表示される残量が実際の残量とは無関係に低下することになるので、診断中は燃料残量に変化がないものとして、燃料残量の表示を機能診断開始直前の値に固定する。
【0019】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、遮断弁が閉制御に対して実際に閉じた場合の圧力変化の特性を基準にして、実際の圧力変化の特性を判断して、遮断弁が閉制御に対して実際に閉じているか否かを高精度に診断できると共に、エンジンへの気体燃料の供給が不能になるまで機能診断が継続して行われることがなく、エンジン運転性への影響を回避できるという効果がある。
【0022】
請求項記載の発明によると、遮断弁が閉制御に対して実際に閉じた場合の圧力変化の特性を基準にして、実際の圧力変化の特性を判断して、遮断弁が閉制御に対して実際に閉じているか否かを高精度に診断できると共に、エンジンの燃料消費量が少ないために遮断弁を閉じてからの圧力降下が遅くても、これを遮断弁の異常によるものとして誤診断することを回避できるという効果がある。
【0023】
請求項記載の発明によると、エンジンへの気体燃料供給の停止によって、遮断弁を閉じても圧力降下が生じない状態で、遮断弁の機能異常が誤診断されることを回避できるという効果がある。
【0024】
請求項記載の発明によると、エンジンへの気体燃料供給の停止時間が長くなり、これに伴って閾値を超える圧力降下が生じるまでの時間が長くなっても、係る圧力降下の遅れに基づいて遮断弁の機能異常が誤診断されることを回避できるという効果がある。
【0025】
請求項記載の発明によると、エンジンへの気体燃料供給の停止によって閾値を超える圧力降下が生じるまでの時間が長くなることに対応して診断時間を長くするので、診断途中にエンジンへの気体燃料の供給が停止されても、精度良く診断を行わせることができるという効果がある。
【0026】
請求項記載の発明によると、エンジンに供給される気体燃料の圧力に基づいて、機能診断によってエンジンへの気体燃料の供給ができなくなる状態を予測し、未然に気体燃料タンク(気体燃料ボンベ)からの燃料供給を再開させることができ、機能診断がエンジンの運転性に影響することを防止できるという効果がある。
【0027】
請求項記載の発明によると、遮断弁の機能診断に伴ってプレッシャレギュレータに供給される気体燃料の圧力が低下しても、これが燃料残量の減少として表示されることがなく、誤った残量表示を防止できるという効果がある。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、高圧気体を燃料とする車両用気体燃料エンジン1のシステム構成図である。
【0029】
図に示すエンジン1において、気体燃料タンク(気体燃料ボンベ)2に充填された高圧の気体燃料(CNG:コンプレスド・ナチュラル・ガス=圧縮天然ガス)は、燃料配管3を介して各気筒毎に設けられる気体燃料噴射弁4に供給され、該気体燃料噴射弁4によってエンジン1の吸気マニホールド5内に噴射される。
【0030】
前記燃料配管3のエンジンルーム内に配設される部分には、気体燃料の圧力を減圧するプレッシャレギュレータ6が介装され、該プレッシャレギュレータ6の直前には電磁弁からなる第1の遮断弁7が介装される。
【0031】
また、気体燃料タンク2の直後に電磁弁からなる第2の遮断弁8が介装され、前記第1の遮断弁7と第2の遮断弁8との間の燃料配管3には、燃料配管3内の気体燃料の圧力を検出する第1の圧力センサ9、燃料配管3内の気体燃料の温度を検出する第1の温度センサ10が設けられている。
【0032】
更に、前記プレッシャレギュレータ6と気体燃料噴射弁4との間の燃料配管3には、燃料配管3内の気体燃料の圧力を検出する第2の圧力センサ11、燃料配管3内の気体燃料の温度を検出する第2の温度センサ12が設けられている。
【0033】
一方、エンジン1には、吸気ダクト13及び吸気マニホールド5を介して空気が吸引され、該空気と前記気体燃料噴射弁4から噴射された気体燃料が混合されてエンジン1のシリンダ14内に吸気バルブ15を介して吸引され、前記混合気は点火プラグ16による火花点火により着火燃焼する。
【0034】
燃焼排気は、排気バルブ17,排気マニホールド18,排気ダクト19を介して大気中に放出される。前記排気マニホールド18の直下には、第1触媒20が介装され、更に、車両の床下部分に第2触媒21が介装され、これらの触媒20,21で排気が浄化されるようになっている。また、前記第2触媒21の下流側には、マフラー22が設けられている。
【0035】
前記吸気ダクト13には、スロットルバルブ23が介装され、該スロットルバルブ23によってエンジン1の吸入空気量が調整される。また、前記スロットルバルブ23をバイパスするバイパス吸気管24が設けられ、該バイパス吸気管24に介装される電磁弁からなる補助空気量制御弁25により、アイドル時の空気量が調整される。そして、エンジン1の吸入空気量は、スロットルバルブ23上流側に設けられたエアフローメータ26で検出される。
【0036】
前記吸気マニホールド5には、シリンダ内にスワールを発生させるためのスワールコントロールバルブ27が介装され、該スワールコントロールバルブ27は、ダイヤフラム式のアクチュエータ28で開閉駆動される。3方弁29は、スロットルバルブ23下流側の吸入負圧と、スロットルバルブ23上流側の大気圧とを入力し、前記アクチュエータ28に供給される圧力を制御する。
【0037】
また、吸気マニホールド5に排気の一部を還流させるための排気還流管30が、第1触媒20上流側の排気マニホールド18と、スワールコントロールバルブ27上流側の吸気マニホールド5とを連通させるように設けれ、該排気還流管30の途中には、排気還流量を制御する電磁弁からなる排気還流制御弁31が介装される。
【0038】
マイクロコンピュータを含んで構成されるコントロールユニット32は、各種信号を入力し、これらの信号に基づいて前記気体燃料噴射弁4,遮断弁7,遮断弁8,点火プラグ16,補助空気量制御弁25,3方弁29,排気還流制御弁31を制御する。
【0039】
前記コントロールユニット32に入力される各種信号には、イグニッションスイッチ(図示省略)のオン・オフ信号の他、前記圧力センサ9,温度センサ10,圧力センサ11,温度センサ12,エアフローメータ26からの検出信号が含まれ、更に、前記第1触媒20の上流側で排気空燃比を検出する第1空燃比センサ33、前記第1触媒20の下流側で排気空燃比を検出する第2空燃比センサ34からの検出信号も入力される。
【0040】
通常のエンジン運転状態(イグニッションスイッチのON状態)では、前記コントロールユニット32が、前記遮断弁7,遮断弁8を共に開制御し、各気筒の吸気行程にタイミングを合わせた気体燃料噴射弁4の開閉制御によりエンジン1に気体燃料を供給すると共に、点火時期制御,スワール制御,アイドル空気量制御,排気還流量制御等を行う。また、エンジンの運転を停止させる場合(イグニッションスイッチのOFF状態)には、前記気体燃料噴射弁4,遮断弁7,遮断弁8を共に閉制御して、エンジン1に対する気体燃料の供給を停止させる。
【0041】
更に、コントロールユニット32は、エンジンの運転中に、前記遮断弁8が燃料配管3を遮断する機能を正常に発揮するか否か、換言すれば、前記遮断弁8が開固着しているか否かを診断する機能診断を行うようになっている。
【0042】
図2,3に示すフローチャートは、前記機能診断の詳細を示すものであり、ステップS1では、イグニッションスイッチ(IGSW)がON状態であるか否かを判別する。
【0043】
イグニッションスイッチがOFF状態であるときには、エンジンの停止状態であって気体燃料の消費がなく、後述する機能診断が行えないので、ステップS7へ進み、診断不許可とする。
【0044】
一方、イグニッションスイッチがON状態であれば、ステップS2へ進む。
ステップS2では、スタートスイッチをONにしてからエンジンが始動されるまでに要した始動時間が予め記憶された基準時間t1以下であったか否かを判別する。
【0045】
始動時間が基準時間t1を超えた場合には、診断対象とする遮断弁8の開固着故障以外の故障・劣化が発生している可能性があり、機能診断の精度が確保できないものと判断し、ステップS7へ進み、診断不許可とする。
【0046】
始動時間が基準時間t1以下であれば、ステップS3へ進み、始動から予め記憶された基準時間t2以上経過しているか否かを判別する。
始動からの経過時間が基準時間t2よりも短いときには、エンジンが不安定であるものと推定し、ステップS7へ進み、診断不許可とする。
【0047】
始動からの経過時間が基準時間t2以上になっているときには、ステップS4へ進み、圧力センサ9で検出される気体燃料の圧力Vcpが、予め記憶された基準圧力V1以上であるか否かを判別する。
【0048】
前記圧力センサ9で検出される気体燃料圧力Vcpは、気体燃料タンク2内の気体燃料の残量に対応するから、上記ステップS4の判別は、気体燃料タンク2内の気体燃料の残量が基準量以上あるか否かを判別することになる。
【0049】
圧力センサ9で検出される気体燃料の圧力Vcpが基準圧力V1よりも小さく、気体燃料タンク2内の気体燃料の残量が基準量よりも少ないと判断されるときには、後述する気体燃料の圧力変化に基づく診断精度が悪化するので、ステップS7へ進み、診断不許可とする。
【0050】
圧力センサ9で検出される気体燃料の圧力Vcpが基準圧力V1以上であれば、ステップS5へ進み、各センサ(圧力センサ9,11及び温度センサ10,12)、及び、デバイス(遮断弁8,9)において、断線の発生が診断されていないかを判別する。
【0051】
各センサ・デバイスのいずれか1つにでも断線が発生しているときには、これらを用いた機能診断が行えないので、ステップS7へ進み、診断不許可とする。
各センサ・デバイスのいずれにも断線が発生していないときには、ステップS6へ進んで、遮断弁8の機能診断許可を設定する。
【0052】
ステップS6で、機能診断許可の設定がなされると、ステップS8へ進み、遮断弁8を閉制御する。これにより、気体燃料タンク2からの燃料補給が断たれる一方、遮断弁7及び気体燃料噴射弁4は開状態を保持するのでエンジンへの燃料供給は継続され、遮断弁8の下流側に残存する気体燃料量の減少に伴って圧力センサ9で検出される気体燃料圧力が減少することになる(図4参照)。
【0053】
ステップS9では、車両のメータパネルに設置される燃料計(図示省略)の残量表示を、遮断弁8が閉制御される直前の値に固定する設定を行う。
本実施形態においては、圧力センサ9で検出される気体燃料圧力が燃料残量に対応するので、圧力センサ9の検出結果に基づいて前記燃料計の残量表示を行わせる構成としてある。従って、診断のために気体燃料タンク2からの燃料補給が断たれることで、圧力センサ9で検出される気体燃料圧力が減少すると、実際の残量とは異なる値を燃料計が表示することになってしまう。そこで、診断中は診断開始前の値に残量表示を固定し、診断によって実際とは大きく異なる残量表示がなされることを防止する。
【0054】
次のステップS10では、診断時間Tsの設定を行う(図4参照)。
前記診断時間Tsは、前記遮断弁8を閉制御して、圧力センサ9で検出される気体燃料圧力をモニタする期間を示すものである。後述するように、遮断弁8を閉制御する直前に圧力センサ9で検出された気体燃料圧力と、遮断弁8を閉制御した後に圧力センサ9で検出された気体燃料圧力との差圧(圧力降下代)が、診断時間Ts内で基準値ΔVを超えるか否かに基づいて、遮断弁8による燃料配管3の遮断機能が正常に発揮され得る状態であるか否かが診断される。
【0055】
前記圧力降下は、前述のように、気体燃料タンク2からの燃料補給が断たれた状態で、エンジン1が燃料を消費することで発生するから、エンジンの燃料消費量が少ない時には、圧力降下の速度が遅くなる。そこで、アイドル時等の最小燃料消費量のときでも診断時間Ts内で基準値ΔVを超える圧力降下が発生するように、最小燃料消費量のときの圧力降下を基準に、前記診断時間Tsを設定してある。
【0056】
また、圧力センサ9には製造ばらつきや経時劣化があり、実際の圧力変化に対して検出値には誤差を生じるので、前記最小燃料消費量のときに圧力検出値の最大誤差を見込んでも、正常・異常を的確に判断できるように基準値ΔVを設定し、正常時であれば前記基準値ΔVを確実に上回るような診断時間Tsを設定してある。
【0057】
更に、診断時間Tsを長くし、それに見合った比較的大きな基準値ΔVを設定すれば、それだけ検出誤差等の影響を回避でき、診断精度は向上するものの、診断時間Ts内では遮断弁8を閉じて気体燃料タンク2からの燃料補給を断つので、診断時間Tsが長すぎると、遮断弁8の下流側に残存していた気体燃料を使い果たし、エンジン1に供給できる気体燃料が無くなってエンジンが停止してしまう。従って、前記診断時間Tsの最大を、遮断弁8の下流側に残存する気体燃料が全てエンジン1で消費される時間内に制限してある。
【0058】
このように、最小燃料消費量のときでかつ検出誤差があっても、診断時間Ts内で基準値ΔVを超える圧力降下が生じ、かつ、残存燃料がなくならないような診断時間Tsを予め設定して記憶させてあり、ステップS8では、係る記憶値(固定値)の読み出しを行う。
【0059】
尚、上記条件を満たす診断時間Tsを一律に設定できないときには、診断を行う運転条件を限定し、例えば燃料消費量(エンジン負荷)が所定範囲内のときに限って診断を行わせる構成としても良い。
【0060】
また、遮断弁8の下流側に残存する気体燃料の量は、遮断弁8からプレッシャレギュレータ6までの燃料配管容積とその間における気体燃料圧力、更に、プレッシャレギュレータ6から気体燃料噴射弁4までの燃料配管容積とその間における気体燃料圧力から求められ、前記プレッシャレギュレータ6から気体燃料噴射弁4までの燃料配管における圧力は、診断開始時にはプレッシャレギュレータ6の調整圧になっているから、圧力センサ9で検出される気体燃料圧力から遮断弁8の下流側に残存する気体燃料量が推定されることになる。
【0061】
そこで、診断開始時に圧力センサ9で検出された気体燃料圧力に応じて診断時間Ts(及び基準値ΔV)を異なる値に設定しても良い。更に、同じ残存量でも燃料消費量によって残存燃料が無くなる時間が変化するので、診断開始時に圧力センサ9で検出された気体燃料圧力に応じて診断時間Ts(及び基準値ΔV)を異なる値に設定しつつ、診断を行わせる運転条件を限定するか、又は、診断開始時に圧力センサ9で検出された気体燃料圧力及び運転条件に応じて診断時間Ts(及び基準値ΔV)を異なる値に設定させることも可能である。
【0062】
更に、遮断弁8を閉制御してから圧力センサ9で検出される気体燃料圧力の降下速度をモニタし、該降下速度からエンジン運転に最低必要な燃料圧力に到達するタイミングを推定し、該推定結果から診断時間Ts(及び基準値ΔV)を変更することも可能である。
【0063】
ステップS11では、圧力センサ9で検出された気体燃料圧力Vcpを読み込み、ステップS12では、温度センサ10で検出された気体燃料の温度Vctを読み込む。
【0064】
そして、ステップS13では、前記気体燃料圧力Vcpを温度Vctに応じて補正して、標準温度状態での気体燃料圧力Vcpに変換する。
ステップS14では、診断時間Ts内における燃料カット積算時間tfcが基準時間t3以下であるか否かを判別する。
【0065】
前記燃料カットとは、気体燃料噴射弁4を閉じてエンジンへの気体燃料の供給を停止させることを示し、例えば減速時などに行われるようになっている。この燃料カット時には、エンジン1の燃料消費が停止し、圧力降下も停止するので、燃料カットの時間が長くなると、診断時間Ts内で所期の圧力降下が得られなくなり、遮断弁8の機能異常を誤診断することになってしまう。
【0066】
そこで、診断時間Ts内において燃料カットが行われた時間を積算し、この積算時間tfcが基準時間t3を超えたときには、誤診断の可能性があると判断して、ステップS16へ進んで診断を中止し、遮断弁8を開制御する。
【0067】
一方、積算時間tfcが基準時間t3以下であれば、診断可能と判断し、ステップS15へ進む。
上記ステップS14では、燃料カット積算時間tfcが基準時間t3以下であるか否かを判別させる構成としたが、このような処理に代えて、診断時間Ts内で燃料カットが行われたときに直ちに診断を中止させる構成とすることができる。
【0068】
また、燃料カット積算時間tfcだけ診断時間Tsを延長させる構成とすることもできる。燃料カット中は圧力降下が停止し、所期の圧力降下代が得られるタイミングが燃料カットした時間だけ遅くなるから、診断時間Tsを燃料カットされていた時間だけ延長すれば、該延長した診断時間Ts内で所期の圧力降下が発生することになる。このように、燃料カット積算時間tfcだけ診断時間Tsを延長させる構成であれば、診断時間Ts内で燃料カットが行われても診断を行わせることができ、診断機会を確保できる。
【0069】
ステップS15では、圧力センサ11(供給圧力センサ)で検出される気体燃料圧力Vgpが基準圧力V2以下であるか否かを判別する。前記基準圧力V2は、エンジンに対する気体燃料の供給が可能な最低圧であり、この基準圧力V2以下に気体燃料の圧力が低下すると、エンジン1に気体燃料を供給できなくなって、エンジン1が停止してしまう。
【0070】
そこで、診断時間Ts内で圧力センサ11(供給圧力センサ)で検出される気体燃料圧力Vgpが基準圧力V2以下になったときには、ステップS16へ進んで診断を直ちに中止し、遮断弁8を開制御して、気体燃料タンク2からの燃料補給が再開されるようにする。
【0071】
一方、ステップS15で気体燃料圧力Vgpが基準圧力V2を超えていると判断されるときには、エンジンを運転させつつ診断を継続できるので、ステップS17へ進む。
【0072】
ステップS17では、遮断弁8を閉制御した直前に圧力センサ9で検出された気体燃料圧力Vcpと、最新の検出値Vcpとの偏差として、診断開始後の気体燃料圧力の降下代ΔVcpを算出し、該降下代ΔVcpが基準値ΔVを超えたか否かを判別する。
【0073】
降下代ΔVcpが基準値ΔVを超えた場合には、遮断弁8が燃料配管3を遮断する機能が正常に働いていると判断し、ステップS18へ進んで、遮断弁8の機能が正常であると判定する。
【0074】
一方、ステップS17で降下代ΔVcpが基準値ΔV以下であると判断されると、ステップS19へ進んで、遮断弁8をステップS8で閉制御してから診断時間Ts以上に経過したか否かを判別する。
【0075】
遮断弁8を閉制御してから診断時間Tsが既に経過している場合には、遮断弁8を閉制御したにも関わらず、実際には遮断弁8が開固着していて、燃料配管3が遮断されず、気体燃料タンク2からの燃料補給が継続されたため、所期の圧力降下が発生しなかったものと判断し、ステップS20へ進んで、遮断弁8の機能が異常であると判定する。
【0076】
前記機能異常の判定結果に基づき、警報装置(警告灯など)によって燃料供給系(遮断弁8)に異常が発生したことが運転者に警告されると共に、異常の診断結果を、バックアップRAMに格納し、外部(診断テスター等)から要求があった場合に、診断情報を出力できるようにする。
【0077】
尚、本実施形態における気体燃料エンジン1は、気体燃料のみを用いる構成としたが、気体燃料と液体燃料とを選択的に用いる構成のエンジンであっても良い。
【0078】
また、本実施形態では、気体燃料タンク2の直後に遮断弁8を備えると共に、プレッシャレギュレータ6の直前に遮断弁7を備える構成としたが、遮断弁7が備えない構成であっても、同様にして遮断弁8の診断を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における気体燃料エンジンのシステム構成図。
【図2】実施の形態における遮断弁の機能診断処理を示すフローチャート。
【図3】実施の形態における遮断弁の機能診断処理を示すフローチャート。
【図4】上記機能診断処理の実行時における圧力変化の特性を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1…エンジン
2…気体燃料タンク
3…燃料配管
4…気体燃料噴射弁
5…吸気マニホールド
6…プレッシャレギュレータ
7,8…遮断弁
9,11…圧力センサ
10,12…温度センサ
32…コントロールユニット

Claims (7)

  1. 高圧気体を燃料とする気体燃料エンジンにおいて、燃料供給系に設けられた遮断弁の機能診断を行う診断装置であって、
    前記遮断弁の下流側に気体燃料の圧力を検出する圧力センサを設け、エンジンの運転中に前記遮断弁を閉制御し、前記遮断弁を閉じてから所定の診断時間内で気体燃料圧力の降下代が閾値を超えたときに前記遮断弁の正常状態を判定し、前記所定の診断時間内での気体燃料圧力の降下代が前記閾値以下であったときに前記遮断弁の異常状態を判定すると共に、前記診断時間を、前記遮断弁を閉じてから前記遮断弁の下流側に残存する燃料が無くならないような時間に設定することを特徴とする気体燃料エンジンの診断装置。
  2. 高圧気体を燃料とする気体燃料エンジンにおいて、燃料供給系に設けられた遮断弁の機能診断を行う診断装置であって、
    前記遮断弁の下流側に気体燃料の圧力を検出する圧力センサを設け、エンジンの運転中に前記遮断弁を閉制御し、前記遮断弁を閉じてから所定の診断時間内で気体燃料圧力の降下代が閾値を超えたときに前記遮断弁の正常状態を判定し、前記所定の診断時間内での気体燃料圧力の降下代が前記閾値以下であったときに前記遮断弁の異常状態を判定すると共に、前記診断時間を、エンジンの最小燃料消費量状態での圧力降下を基準に設定することを特徴とする気体燃料エンジンの診断装置。
  3. 前記エンジンに対する気体燃料の供給が停止される状態での前記機能診断を禁止することを特徴とする請求項1又は2記載の気体燃料エンジンの診断装置。
  4. 前記診断時間内においてエンジンに対する気体燃料の供給停止状態の積算時間が所定時間以上になったときに診断を中止することを特徴とする請求項1又は2記載の気体燃料エンジンの診断装置。
  5. 前記診断時間内においてエンジンに対する気体燃料の供給が停止された時間だけ、前記診断時間を延長とすることを特徴とする請求項1又は2記載の気体燃料エンジンの診断装置。
  6. 高圧気体を燃料とする気体燃料エンジンにおいて、燃料供給系に設けられた遮断弁の機能診断を行う診断装置であって、
    前記遮断弁の下流側に気体燃料の圧力を検出する圧力センサを設け、エンジンの運転中に前記遮断弁を閉制御し、該閉制御後に前記圧力センサで検出される気体燃料の圧力変化に基づいて、前記遮断弁の機能診断を行う一方、
    前記燃料供給系の途中に介装されたプレッシャレギュレータの上流側に前記遮断弁及び前記圧力センサを備えると共に、前記プレッシャレギュレータの下流側に、エンジンに供給される気体燃料の圧力を検出する供給圧力センサを設け、該供給圧力センサで検出される気体燃料の圧力が所定値以下となったときに、前記機能診断を中止し、前記遮断弁を開制御するよう構成したことを特徴とする気体燃料エンジンの診断装置。
  7. 高圧気体を燃料とする気体燃料エンジンにおいて、燃料供給系に設けられた遮断弁の機能診断を行う診断装置であって、
    前記遮断弁の下流側に気体燃料の圧力を検出する圧力センサを設け、エンジンの運転中に前記遮断弁を閉制御し、該閉制御後に前記圧力センサで検出される気体燃料の圧力変化に基づいて、前記遮断弁の機能診断を行うと共に、
    前記燃料供給系の途中に介装されたプレッシャレギュレータの上流側に前記遮断弁及び前記圧力センサを備え、前記圧力センサで検出される気体燃料の圧力に基づき燃料計における燃料残量表示を行わせる構成であって、前記機能診断中は、前記燃料計における燃料残量表示を機能診断開始直前の値に固定することを特徴とする気体燃料エンジンの診断装置。
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