JP3858468B2 - 開缶性に優れたイージーオープン缶蓋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、缶体の缶蓋に形成された開口部を破断して開缶する、飲料用缶や食缶の缶蓋に使用されるイージーオープン缶蓋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種飲料や食品を収容する缶の缶蓋として、缶蓋に形成された開口部を、指先等で缶蓋に取り付けられたタブを引き上げることにより破断し開缶するイージーオープン缶蓋が広く使用されている。イージーオープン缶蓋は、主として飲料缶蓋に使用されるパーシャルオープンタイプの缶蓋と、主として食缶に使用されるフルオープンタイプの缶蓋とに大別される。
【0003】
パーシャルオープンタイプの缶蓋は、プルトップ・タブ・タイプの缶蓋と、ステイオン・タブ・タイプの缶蓋とに大別される。図6は、プルトップ・タブ・タイプ缶蓋の一例を示す概略平面図である。図6に示すプルトップ・タブ・タイプの缶蓋の開口は、次のようにして行われる。即ち、鋼、アルミニウム合金等の金属板からなる缶蓋1の中央パネル部7の中心にリベット機構8により取り付けられているタブ3を指先等で引き上げることによって、中央パネル部7に開口用溝2が刻設されている破断開口部5を、てこの作用により、タブ3の作用端が押し下げる。その結果、開口用溝2は破断し、更にタブ3を引張ることによって、破断した開口片は缶蓋1から完全に切り離される。
【0004】
図7は、ステイオン・タブ・タイプの缶蓋の一例を示す概略平面図である。図7に示すステイオン・タブ・タイプ缶蓋の開口は、次のようにして行われる。即ち、鋼、アルミニウム合金等の金属板からなる缶蓋1の中央パネル部7の中心にリベット機構8により取り付けられているタブ3を指先等で引き上げることによって、中央パネル部7に開口用溝2が刻設されている破断開口部5を、てこの作用により、タブ3の作用端が押し下げる。その結果、開口用溝2は破断し、更に、タブ3の引起こし端を引き上げることによって破断を進行させ、その際に生じた破断開口片の一部を缶蓋1に連結させたまま缶内に押し込む。
【0005】
また、フルオープンタイプの缶蓋は、缶蓋の外周縁に沿って開口用溝が刻設されており、缶蓋外周縁近くのパネル部に取り付けられたタブを指先等で引き上げることによって、プルトップ・タブ・タイプの場合と同様に、開口片を缶蓋から切り離すようになっている。
【0006】
このようなイージーオープン缶蓋における開口用溝の形成は、従来、図8に示すように、所定の開口部輪郭が形成された刃先状突起を有する加工工具10を使用し、缶蓋の表面側から蓋板11の厚さの1/2以上の深さの開口用溝が形成されるような高い荷重でプレスにより押圧成形することによって行われており、これによって断面V字状の溝9が形成されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のイージーオープン缶蓋の開缶のためのタブの引き上げには相当の力を必要とし、子供や老人にとって開缶は容易ではない。
【0008】
刃先状突起を有する加工工具を押圧することにより開口用溝を形成する際における上述した問題の対策として、例えば、特公昭55−10454号公報、特公平3−71500号公報、特公平3−71501号公報等が提案されているが、上記何れの提案もタブ引き上げ力を十分に低減するまでには至っていない。
【0009】
更に、特公平3−5890号公報、特開昭62−235053号公報、特開平2−179329号公報等には、減厚加工や缶蓋内面側からの加工を組み合わせることによって、タブ引き上げ力を低減させる方法も提案されているが、上述した方法においても、タブ引上げ力を十分に低減するまでには至っていない。
【0010】
実公昭63−40439号公報には、指の挿入および指掛け挟持部の挟持を容易にするために、缶蓋の中央パネル部とタブの指掛け挟持部との間隙を広める目的で、指挿入用凹部をタブの指掛け挟持部の下方の中央パネル部に形成することが提案されており、また、実開平5−40133号公報には、タブの中心軸が破断開口部の中心軸からずれた開口不可位置から、タブの中心軸と破断開口部の中心軸とが一致する開口可能位置に回転移動可能な程度にタブをリベット留めし、タブが開口不可位置から開口可能位置に移動する間に、リベットとタブの指掛け挟持部の間に位置する中央パネル部に設けたテーパー状の突起によってタブの指掛け挟持部を浮き上がらせることにより、缶蓋の中央パネル部とタブの指掛け挟持部との間隙への指の挿入および指掛け挟持部への指掛かりを容易にすることが提案されている。
【0011】
上記缶蓋によれば、指挿入用凹部またはテーパー状の突起が形成されていることにより、それらが形成されていないものと比較して、缶蓋の中央パネル部とタブの指掛け挟持部との間隙への指の挿入、および、指掛け挟持部への指掛かりは容易になるが、開缶時の引き上げ力は変わらないために、開缶力の低減までには至っていない。
【0012】
従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、開缶力を安定して低減化し、子供や老人でも容易に開缶することができる、開缶性の優れたイージーオープン缶蓋を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述した問題を解決し、開缶性に優れ、しかも衝撃破壊の生ずることがないイージーオープン缶蓋を開発すべく鋭意研究を重ねた。
【0014】
従来、開缶時における開口用溝の破断は、せん断変形によって生ずると考えられており、そのような考えに基づいて開口用溝の形状を設計していた。しかしながら、本発明者等による研究の結果、開口用溝の破断は、せん断変形によって生ずるのではなく、主として引張り変形によって生ずることが明らかになり、従って、開缶力を低減させるためには、開口用溝の最薄部の板厚および強度を小さくすることが効果的であることがわかった。
【0015】
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、請求項1に記載の発明は、缶蓋の表面または裏面に開口用溝が形成され、前記開口用溝を破断して開缶するイージーオープン缶蓋において、板厚がt0(mm)、均一伸びの40%〜90% の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) である金属板からなり、前記開口用溝の断面は、円弧状に形成され、その半径は、 0.025mm 超〜 1.0mm であり、前記開口用溝の最薄部の前記金属板の板厚t (mm) は、下記(1)式および(2)式、
2.5 ≦P≦5.0 ------(1)
P= t×TS×{exp(n)/(nn)}×〔2/√3 ×|In{1+(t−t0)/t0|〕n ------(2)
を満足することに特徴を有するものである。
【0016】
請求項2に記載の発明は、缶蓋の両面に開口用溝が形成され、前記開口用溝を破断して開缶するイージーオープン缶蓋において、板厚がt0(mm)、均一伸びの40%〜90% の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) である金属板からなり、前記開口用溝の断面は、円弧状に形成され、その半径は、 0.025mm 超〜 1.0mm であり、前記開口用溝の最薄部の前記金属板の板厚t (mm) は、下記(1)式および(2)式、
2.5 ≦P≦5.0 ------(1)
P= t×TS×{exp(n)/(nn)}×〔2/√3 ×|In{1+(t−t0)/t0|〕n ------(2)
を満足することに特徴を有するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、この発明のイージーオープン缶蓋を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、請求項1に記載の、この発明のイージーオープン缶蓋の第1実施態様を示す、缶蓋に形成された開口用溝部分の断面図である。この実施態様においては、図1に示すように、厚さt0 の缶蓋1の表面1a側に、半径(R)が 0.025mm超〜1.0 mmの曲面型である金型を、裏面側に平型を用いて、その最薄部2aの板厚がtであり、底断面が曲面形状の開口用溝2を、上記金型を押圧成形することにより形成する。このとき、缶蓋1をなす金属板の均一伸びの40%〜90%の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) であり、tは2.5 ≦P≦5.0
但しP=t×TS×{exp(n)/(nn)}×〔2/√3×|In{1+(t−t0)/t0}|〕nを満たすように形成する。
【0019】
図2は、請求項2に記載の、この発明のイージーオープン缶蓋の第2実施態様を示す、缶蓋に形成した開口用溝部分の断面図である。この実施態様においては、図2に示すように、厚さt0の缶蓋1の表面1aおよび裏面1bに、各々半径(R)が0.025mm 超〜1.0mm の曲面型である金型を用いて、その最薄部2aの板厚がtであり、底断面が曲面形状の開口用溝2、2を、上記金型を押圧成形することにより形成する。このとき缶蓋1をなす金属板の均一伸びの40%〜90%の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) であり、tは2.5≦P≦5.0
但しP=t×TS×{exp(n)/(nn)}×〔2/√3×|In{1+(t−t0)/t0}|〕nを満たすように形成する。
【0020】
缶蓋1の表面1aまたは表面1aおよび裏面1bに、上述した半径(R)の、曲面形状の開口用溝2または2、2を形成することによって、子供や老人でも容易に開缶することができる程度にまで開缶力が安定して低減化し、しかも、衝撃破壊の発生が防止される。
【0021】
缶蓋1の表面または表面および裏面に開口用溝を形成するときの、開口用溝2を形成するための金型の半径(R)が0.025mm以下では、金型の加工精度が低下し、且つ、成形作業によって生ずる金型の摩耗が激しく、安定した形状の開口用溝を得るためには金型を短期間で交換せねばならず、不経済であるという問題が生ずる。
【0022】
一方、上記金型の半径(R)が1.0mmを超えると、缶蓋1における薄肉部の面積が大きくなるために、開口部の破断位置が不安定になって開口形状が悪化する上、破断部の一部が垂れ下がる「だれ」が大きくなる問題が生じ、また、限られたスペースの缶蓋パネル上に1.0mmを超える幅の開口用溝を形成することは実用上困難である。
【0023】
また、開口用溝2の最薄部2aの板厚tは、缶蓋1をなす金属板の均一伸びの40%〜90%の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) であるとき、2.5 ≦P≦5.0
但しP= t×TS×{exp(n)/( nn ) }×〔2/√3 ×|In{1 +(t-t0)/t0 }|〕n
を満たすように形成される。開口用溝2は、上述した形状の金型を缶蓋1をなす金属板に押圧成形することにより得られるが、このような成形を施すと、加工により得られた最薄部2aでは加工硬化が生じ、強度が増大する。加工硬化の程度は、金属板の元の板厚t0と加工後の板厚tとの比によって異なり、tが小さいほど最薄部の強度は大きくなる。最薄部2aの相当応力をσ、相当ひずみをεとすると、
σ=K×εn (式3)
と表される。缶蓋1に用いられる金属板の均一伸びの40%〜90%の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) であるとき、
TS=K×nn /exp(n) より、K=TS×{exp(n)/( nn ) } (式4)
開口用溝形成加工による板厚方向のひずみεtsは、
εts=In{1 +(t-t0)/t0 } (式5)
開口用溝最薄部相当ひずみεは、平面ひずみと仮定して、
ε=2/√3 ×|In{1 +(t-t0)/t0 }| (式6)
式(3)、(4)および(6)から、最薄部2aの相当応力σは、
σ=TS×{exp(n)/( nn ) }×〔2/√3 ×|In{1 +(t-t0)/t0 }|〕n (式7)
開口用溝の最薄部2aを主として引張り変形により破断させる際の引張り破断力Pは、P=σ×t (式8)
で表されるから、
P= t×TS×{exp(n)/( nn ) }×〔2/√3 ×|In{1 +(t-t0)/t0 }|〕n (式2)
したがって、Pは小さい方が開缶力を低減化でき、その効果はPが5.0 以下のときに安定して得られる。Pが5.0 を超えると、大きな開缶力が必要となり、問題が生ずる。また、Pが2.5 未満では、成形された缶蓋が取り付けられた缶体を落としたり、缶体が外部から衝撃等を受けたときに、その開口部が破断する危険性がある。
【0024】
従って、缶蓋の表裏面の何れかまたは表面および裏面に開口用溝を形成するには、板厚がt0 (mm)、
均一伸びの40% 〜90% の領域における加工硬化指数がn、
引張り強度がTS(kgf/mm2) である金属板を素材とし、
上下何れか一方の金型が先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型で、
他方の金型が平型からなる一対の金型、または、上下の金型が何れも先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型である一対の金型を使用し、加工最薄部の板厚がt(mm)となるように押圧成形を施すことにより、開口用溝を形成し、且つ、
2.5 ≦P≦5.0
但しP= t×TS×{exp(n)/( nn ) }×〔2/√3 ×|In{1 +(t-t0)/t0 }|〕n
を満たすことが必要である。
【0025】
上述した缶蓋において用いられる金属板は、アルミニウム合金板や鋼板、あるいは、その他の金属板の何れでも良く、目的に応じて選択することができる。イージーオープン缶蓋には、通常開口用のタブが取り付けられているが、取り付け方法としてリベット機構が用いられている場合には、リベット成形性の観点から、金属板の均一伸びの40%〜90%の領域における加工硬化指数nが0.15以上であることが望ましい。また、耐食性を確保する必要があるときは、金属板の表裏面の何れかあるいは両面に、種々のメッキや化成処理を施したり、塗装やラミネートによって形成される樹脂皮膜を有することもできる。
【0026】
上述した缶蓋は、図6に示すプルトップ・タブ・タイプ缶蓋、図7に示すステイオン・タブ・タイプ缶蓋、あるいはフルオープン・タイプ缶蓋の何れにも適用することができる。
【0027】
また、図3(a)に示すように、タブ3を缶蓋1にタブ留め4を中心として回転可能に、タブ留め4の位置を缶蓋1の中心から破断開口部5の反対側に所定長さずらして取り付け、且つ、タブ3のタブ留め4からタブ指掛け挟持部までの長さを従来よりも長くすることによって作用点における発生力を大となし、図3(b)に示すように、タブ3を開口可能位置に回転させたときに、タブ3の引き起こし側端部を、缶蓋外周よりも外側に位置するようにした缶蓋に、この発明の方法により開口用溝を形成すれば、開缶力を一段と低下させることができる。
【0028】
【実施例】
次に、この発明を実施例により比較例と対比しながら更に説明する。
〔実施例1〕
板厚0.17〜0.30mm、引張り強さTS:29〜56kgf/mm2 、均一伸びの40% 〜90% の領域における加工硬化指数n:0.10〜0.20の薄鋼板の両面に、クロメート処理によって100〜120mg/m2 の量の金属クロム層と、その上層の金属クロム換算で14〜18mg/m2 の量のクロム水和酸化物層とからなるクロメート皮膜が形成されたティンフリースチールを調製した。
【0029】
このように両面にクロメート皮膜を有するティンフリースチールを缶蓋パネルとし、この缶蓋パネルに対して、両方の金型が先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型、または、一方の金型が先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型で、他方の金型が平型からなる一対の金型を使用し、最薄部の鋼板厚tを、Pが2.5 〜5.0 の範囲内となるように、潤滑材を使用しまたは使用することなく押圧加工を施して、表1 に示す、本発明の範囲内の製造方法によって得られたステイオン・タブ・タイプのイージーオープン缶蓋(以下、「本発明例」という)No. 1 、4 、6 、8 、11、13、15を調製した。
【0030】
【表1】
【0031】
〔実施例2〕
板厚t0 :0.18〜0.30mm、引張り強さTS:29〜50kgf/mm2 、均一伸びの40% 〜90% の領域における加工硬化指数n:0.12〜0.20の薄鋼板の両面に、電気錫メッキを施して0.8〜2.8g/m2の量の錫層を形成し、前記錫メッキ層の上に、クロメート処理によって9〜12mg/m2 の量の金属クロム層と、その上層の金属クロム換算で8〜10mg/m2 の量のクロム水和酸化物層とからなるクロメート皮膜が形成された電気錫メッキ鋼板を調製した。
【0032】
このように両面にメッキ層を有する電気錫メッキ鋼板を缶蓋パネルとし、この缶蓋パネルに対して、両方の金型が先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型、または、一方の金型が先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型で、他方の金型が平型からなる一対の金型を使用し、最薄部の鋼板厚tを、Pが2.5 〜5.0 の範囲内となるように、潤滑材を使用しまたは使用することなく押圧加工を施して、表1 に示す、本発明の範囲内の製造方法によって得られたステイオン・タブ・タイプのイージーオープン缶蓋(以下、「本発明例」という)No. 3 、5 、9 、10、12、14を調製した。
【0033】
〔実施例3〕
板厚t0 :0.20〜0.30mm、引張り強さTS:29〜35kgf/mm2 、均一伸びの40% 〜90% の領域における加工硬化指数n:0.17〜0.23のアルミニウム合金板を缶蓋パネルとし、この缶蓋パネルに対して、両方の金型が先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型、または、一方の金型が先端半径0.025mm 超〜1.0mm の曲面型で、他方の金型が平型からなる一対の金型を使用し、最薄部のアルミニウム合金板厚tを、Pが2.5 〜5.0 の範囲内となるように、潤滑材を使用しまたは使用することなく押圧加工を施して、表1 に示す、本発明の範囲内の製造方法によって得られたステイオン・タブ・タイプのイージーオープン缶蓋(以下、「本発明例」という)No. 2 、7 を調製した。
【0034】
〔比較例1〕
板厚t0 :0.20〜0.30mm、引張り強さTS:29〜51kgf/mm2 、均一伸びの40% 〜90% の領域における加工硬化指数n:0.11〜0.20の薄鋼板の両面に、上述した実施例1と同様にクロメート処理を施したティンフリースチールを調製し、このように両面にクロメート皮膜を有するティンフリースチールを缶蓋パネルとし、この缶蓋パネルに対して、実施例1と同様の金型を使用し、最薄部の鋼板厚tを、Pが本発明の範囲外となるように、潤滑材を使用しまたは使用することなく押圧加工を施して、表1 に示す、本発明の範囲外の製造方法によって得られたステイオン・タブ・タイプのイージーオープン缶蓋(以下、「比較例」という)No. 16、19、21、24、27、29を調製した。
【0035】
〔比較例2〕
板厚t0 :0.20〜0.30mm、引張り強さTS:30〜56kgf/mm2 、均一伸びの40% 〜90% の領域における加工硬化指数n:0.11〜0.21の薄鋼板の両面に、上述した実施例2と同様に電気錫メッキおよびクロメート処理を施した電気錫メッキ鋼板を調製し、このように両面にメッキ層を有する電気錫メッキ鋼板を缶蓋パネルとし、この缶蓋パネルに対して、実施例2と同様の金型を使用し、最薄部の鋼板厚tを、Pが本発明の範囲外となるように、潤滑材を使用しまたは使用することなく押圧加工を施して、表1 に示す、本発明の範囲外の製造方法によって得られたステイオン・タブ・タイプのイージーオープン缶蓋(以下、「比較例」という)No. 18、20、22、23、25、28、30、31を調製した。
【0036】
〔比較例3〕
板厚t0 :0.30mm、引張り強さTS:29〜35kgf/mm2 、均一伸びの40% 〜90% の領域における加工硬化指数n:0.17〜0.20のアルミニウム合金板を缶蓋パネルとし、この缶蓋パネルに対して実施例3と同様の金型を使用し、最薄部のアルミニウム合金板厚tを、Pが本発明の範囲外となるように、潤滑材を使用しまたは使用することなく押圧加工を施して、表1 に示す、本発明の範囲外の製造方法によって得られたステイオン・タブ・タイプのイージーオープン缶蓋(以下、「比較例」という)No. 17、26を調製した。
【0037】
上述した本発明例および比較例の缶蓋に関して、開缶性および衝撃破壊の有無を、下記によって評価し、その結果を表1に併せて示した。
開缶性は、ポップ値(缶蓋のタブを一定の力で引張ったときに、缶蓋開口部が開き始める最初の力をいう)を測定し、市販の6種類のアウミニウム合金製イージーオープン缶蓋のポップ値の最大値(2.4kg)以下のものを○、それ以外を×とした。また衝撃破壊は、図4に示すように、缶6を高さ1mの位置からコンクリート床面上に、缶蓋1を下方に向けた斜めの姿勢で落下させ、缶蓋1に図5に矢印で示す方向に衝撃力が付加されたときの衝撃破壊の有無によって評価し、衝撃破壊を生じなかったものを○、衝撃破壊を生じたものを×とした。
【0038】
表1から明らかなように、開口用溝の最薄部の板厚tが、Pが2.5 未満になるように成形された比較例No. 16〜24は、衝撃破壊が発生した。また、開口用溝の最薄部の板厚tが、Pが5.0 を超える範囲になるように成形された比較例No. 25〜31は、開缶性が劣っていた。
【0039】
これに対して、本発明例であるNo. 1〜15は、いずれも開缶性に優れ、且つ、衝撃破壊を発生しなかった。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、開缶力を安定して低減化し、子供や老人でも容易に開缶することができる、開缶性の優れたイージーオープン缶蓋が得られる、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によって得られる缶蓋の第1実施態様を示す、缶蓋に形成された開口用溝部分の断面図である。
【図2】 本発明によって得られる缶蓋の第2実施態様を示す、缶蓋に形成された開口用溝部分の断面図である。
【図3】 本発明によって得られる開口用溝を有するイージーオープン缶蓋の一例を示す平面図である。
【図4】衝撃試験方法を示す説明図である。
【図5】缶蓋に対する衝撃力の付加位置を示す説明図である。
【図6】プルトップ・タブ・タイプの缶蓋の一例を示す概略平面図である。
【図7】ステイオン・タブ・タイプの缶蓋の一例を示す概略平面図である。
【図8】イージーオープン缶蓋における開口用溝の従来の形成方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 缶蓋
2 開口用溝
3 タブ
4 タブ留め
5 破断開口部
6 缶
7 中央パネル部
8 リベット機構
9 V字状溝
10 加工工具
11 蓋板
Claims (2)
- 缶蓋の表面または裏面に開口用溝が形成され、前記開口用溝を破断して開缶するイージーオープン缶蓋において、
板厚がt0(mm)、均一伸びの40%〜90% の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) である金属板からなり、前記開口用溝の断面は、円弧状に形成され、その半径は、 0.025mm 超〜 1.0mm であり、前記開口用溝の最薄部の前記金属板の板厚t (mm) は、下記(1)式および(2)式、
2.5 ≦P≦5.0 ------(1)
P= t×TS×{exp(n)/(nn)}×〔2/√3 ×|In{1+(t−t0)/t0|〕n ------(2)
を満足することを特徴とする、開缶性に優れたイージーオープン缶蓋。 - 缶蓋の両面に開口用溝が形成され、前記開口用溝を破断して開缶するイージーオープン缶蓋において、
板厚がt0(mm)、均一伸びの40%〜90% の領域における加工硬化指数がn、引張り強度がTS(kgf/mm2) である金属板からなり、前記開口用溝の断面は、円弧状に形成され、その半径は、 0.025mm 超〜 1.0mm であり、前記開口用溝の最薄部の前記金属板の板厚t (mm) は、下記(1)式および(2)式、
2.5 ≦P≦5.0 ------(1)
P= t×TS×{exp(n)/(nn)}×〔2/√3 ×|In{1+(t−t0)/t0|〕n ------(2)
を満足することを特徴とする、開缶性に優れたイージーオープン缶蓋。
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1998
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