JP3858075B2 - 蛍光変換膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光変換膜に関し、さらに詳しくは、発光体から発する近紫外領域ないし可視領域の光を効率よく異なる可視光に蛍光変換することができ、かつ高精細なパターニングが可能で、発光型のマルチカラー又はフルカラーディスプレイ,表示パネル,バックライトなど、民生用や工業用の表示機器に好適に用いられる蛍光変換膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子ディスプレイデバイスは、一般にman−machine−interfaceといわれるように、各種装置(machine)からの各種情報を視覚を通して人間(man)に伝達する電子デバイスであって、人間と装置とを結ぶ重要な橋渡し的役割(interface)を担っている。
この電子デバイスには、発光形と受光形とがあり、発光形としては、例えばCRT(陰極線管),PDP(プラズマディスプレイ),ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ),VFD(蛍光表示管),LED(発光ダイオード)などが挙げられる。一方、受光形としては、例えばLCD(液晶ディスプレイ),ECD(エレクトロケミカルディスプレイ),EPID(電気泳動ディスプレイ),SPD(分散粒子配向形ディスプレイ),TBD(着色粒子回転形ディスプレイ),PLZT(透明強誘電性PLZT〔(Pb,La)(Zr,Ti)O3 〕セラミックスディスプレイ)などが挙げられる。
【0003】
ここで電子ディスプレイデバイスのフルカラー化の方法としては、多色(例えば赤,青,緑の三原色)の発光部分を平面的に分離配置して、それぞれ発光させる方法や、バックライトの白色光をカラーフィルタで多色に分解させる方法が知られている。また、発光体の発光を平面的に分離配置した蛍光体に吸収させ、それぞれの蛍光体から多色の蛍光を発光させる方法も知られている。
ここで、蛍光体を用いて、ある発光体から多色の蛍光を発光させる方法については、CRT,PDP,VFDに応用されている。しかしながら、この場合、発光体の発光が電子線や遠紫外線であるなど、エネルギー的に高いことが必要である。したがって、LEDやELDのように、発光体からの発光が近紫外線ないし可視光のようにエネルギー的に低い場合には、CRT,PDP,VFDで用いられる無機の蛍光体〔通常、希土類オキシハライドなどを母体とし、この母体を不活性化剤で不活性化したものが用いられる(例えばY2 3 :Euなど)〕は励起されず、蛍光は発しない。
【0004】
したがって、このような近紫外線ないし可視光のような低いエネルギー線に対して蛍光を発するものとしては、レーザー色素のような有機系の蛍光色素が用いられる。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する)を用いた多色発光素子として、有機EL素子に対し、蛍光色素を含む蛍光体(以下、蛍光変換膜という)を積層又は並列に配置したものが提案されている(特開平3−152897号公報)。
このような蛍光色素を含む蛍光変換膜を高精細にパターニングすれば、発光体の近紫外線ないし可視光のような低いエネルギー線を用いてもフルカラーの発光形ディスプレイが構築できる。
そこで、蛍光変換膜のパターニングの方法としては、無機蛍光体の場合と同様に、蛍光色素を液状のレジスト(感光性ポリマー)中に分散させ、これをスピンコート法などで製膜したのち、フォトリソグラフィー法でパターニングする方法(特開平5−198921号公報,特開平5−258860号公報)が容易に類推される。
【0005】
しかしながら、蛍光色素は、周囲の環境に影響を受けやすく、例えば溶媒や樹脂などの媒体の種類などによっては、その蛍光波長が変化したり、消光を起こすことがよく知られている。特に、液状のレジスト中に蛍光色素を分散させた場合、レジスト中に光開始剤(重合開始剤)や反応性多官能モノマーが存在するため、フォトリソグラフィープロセスにおける露光工程や熱処理(ポストベーク)工程において、該光開始剤や反応性多官能モノマーから発生するラジカル種やイオン種によって、蛍光色素が脱色したり、消光することがしばしば起こるという問題が生じる。
また、液状のレジスト中に蛍光色素を溶解させると、露光工程において、紫外線が蛍光色素に吸収され、レジストが感光せず、蛍光変換膜がパターニングできないことがある。
したがって、近紫外線ないし可視光を発する発光体からの発光を効率よく多色化することができ、かつ高精細なパターニングが可能な蛍光変換膜の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような要望にこたえ、発光体であるEL,LED,VFD,PDPなどの素子から発する近紫外領域ないし可視領域の光を効率よく異なる可視光に蛍光変換することができ、かつ高精細なパターニングが可能なEL,LED,VFD,PDPなどの素子用蛍光変換膜を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の好ましい機能を有する蛍光変換膜を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して異なる可視光を発する蛍光色素や蛍光顔料と、特定の塩基性のバインダー樹脂とからなる蛍光変換膜により、その目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、(A)EL,LED,VFD又はPDPの素子から発する近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して異なる可視光を発光する塩基性の蛍光色素及び塩基性の蛍光顔料の中から選ばれた少なくとも一種と、(B)酸性水溶液に可溶な塩基性のバインダー樹脂からなるEL,LED,VFD又はPDPの素子用蛍光変換膜を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の蛍光変換膜は、(A)蛍光色素や蛍光顔料と(B)塩基性のバインダー樹脂からなるものであって、該(A)成分の蛍光色素や蛍光顔料としては、発光体が発する近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して、異なる可視光を発するものが用いられる。
このような機能を有する蛍光色素は、近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して励起されやすい化学構造及び電子状態を有している。
一般に、π電子を有する不飽和化合物に蛍光性を有するものが集中しており、また、鎖状化合物よりも環状化合物の方が蛍光性が高いことが知られている。特に、芳香族炭化水素は蛍光性が高く、芳香環の数が多くなるほど蛍光性が高くなる。さらに、色素分子が捻じれた場合には、π電子の共役が途切れるため蛍光性が弱く、一方、平面構造をとって共役系を伸ばした場合の方が蛍光性は高く、蛍光変換効率が高くなる。
このように、蛍光色素は、π電子リッチな構造に加えて、アミノ基などの置換基を有するものが多く、一般に電子供与性で、かつ塩基性である。
【0009】
このような蛍光色素の具体例としては、発光体が発する紫外光ないし紫色光を吸収して、青色発光に変換するものとして、例えば1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン(Bis−MSB);トランス−4,4’−ジフェニルスチルベン(DPS)などのスチルベン系色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(クマリン4)などのクマリン系色素などが、また青色又は青緑色光を緑色光に変換するものとして、例えば2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153);3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6);3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7);3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11,ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などが、青色ないし緑色光を橙色ないし赤色光に変換するものとして、例えば4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)などのシアニン系色素、1−エチル−2−〔4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジウム−パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、ローダミンB,ローダミン6G,ローダミン3B,ローダミン101,ローダミン110,ベーシックバイオレット11,ベーシックレッド2などのローダミン系色素、あるいはオキサジン系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料,酸性染料,塩基性染料,分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
【0010】
なお、これらの蛍光色素は、ポリメタクリル酸エステル,ポリ塩化ビニル,塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂,アルキッド樹脂,芳香族スルホンアミド樹脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂,ベンゾグアナミン樹脂及びこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して蛍光顔料としたものであってもよい。また、これらの蛍光色素や蛍光顔料は単独で用いてもよく、必要に応じ二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、上記蛍光色素や蛍光顔料と共存する(B)成分のバインダー樹脂としては、該蛍光色素や蛍光顔料の蛍光性を低下させない、すなわち消光や脱色させないものが好ましい。
塩基性樹脂は、一般にπ電子リッチで電子供与性であり、塩基性である蛍光色素に対して、相互作用を及ぼしにくい。したがって、蛍光色素の蛍光性を低下させないので蛍光変換効率は高い。
【0011】
一方、遊離のカルボキシル基やスルホン酸基などの酸基を有する酸性樹脂は、蛍光色素に酸塩基相互作用を及ぼし、蛍光性を低下させ(つまり消光させ)、蛍光変換効率を低下させる。
また、フォトレジストなどの感光性樹脂や熱硬化性樹脂のような反応性を有する樹脂は、感光(露光)時又は熱硬化時にラジカル種やイオン種を発生させ、蛍光色素に対して相互作用を及ぼし、蛍光性を失なわせ、消光又は脱色させるので、蛍光変換効率を低下させる(特開平7−268010号公報)。
さらに、電子吸引性基を有する電子受容性の樹脂も、蛍光色素の電子状態を歪め、蛍光性を低下させるので、蛍光変換効率を低下させる。
【0012】
このように、塩基性樹脂は、蛍光色素や蛍光顔料のバインダー樹脂として、高い変換効率を達成するが、本発明においては、さらに、酸性水溶液に可溶なものとした塩基性樹脂が用いられる。酸性水溶液に可溶であれば、蛍光色素や蛍光顔料を適量分散させた蛍光変換膜は、酸性水溶液によるエッチング処理が可能となり、蛍光変換膜を高精細にパターニングすることが可能となる。
このような塩基性樹脂としては、特に制限はなく、様々なものが挙げられるが、例えば樹脂中の炭素原子に結合した1級から3級のアミノ基を有する樹脂(含窒素複素環式樹脂も含む)を好ましく挙げることができる。このような樹脂は、酸性水溶液処理により、酸性水溶液の水素イオンがアミノ基に配位して、4級アンモニウムイオンを形成して水溶性となり、その結果、酸性水溶液に可溶な樹脂となる。
このような酸性水溶液に可溶な塩基性樹脂としては、例えば、一般式(I)
【0013】
【化5】
Figure 0003858075
(式中、X1
【0014】
【化6】
Figure 0003858075
で表される基を示し、R1 は水素原子又はメチル基、mは0〜4の整数を示す。)
で表される単量体及び一般式(II)
【0015】
【化7】
Figure 0003858075
(式中、X2
【0016】
【化8】
Figure 0003858075
【0017】
で表される基を示し、R2 及びR3 は、それぞれ水素原子,メチル基,エチル基又はイソプロピル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R4 は水素原子又はメチル基、n及びkは、それぞれ0〜4の整数を示す。)
で表される単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体の重合体、又はこの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。
上記一般式(I),(II)で表される単量体の例としては、主に
【0018】
【化9】
Figure 0003858075
【0019】
【化10】
Figure 0003858075
【0020】
【化11】
Figure 0003858075
【0021】
で表される化合物などが挙げられる。
これらの単量体は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、重合体の化学的安定性及び重合体の製造しやすさなどの点から、特に(1),(2)及び(13)で示される化合物が好適である。
一方、これらの単量体と共重合させる他のエチレン性不飽和単量体としては特に制限はなく、様々なものが挙げられるが、例えばスチレン,α−メチルスチレン,酢酸ビニル,ビニルクロリド,メチルビニルエーテル,N−ビニル−2−ピロリドン,アクリルアミド,メタクリルアミド,アクリロニトリル,メタクリロニトリル、さらには、一般式(III)
【0022】
【化12】
Figure 0003858075
【0023】
(式中、R5 は水素原子又はメチル基、R6 は炭素数1〜6のアルキル基,シクロヘキシルエチル基,シクロヘキシル基,ベンジル基,N,N−ジメチルアミノエチル基,2−ヒドロキシエチル基又は3−ヒドロキシプロピル基を示す。)
で表される化合物などの中性又は塩基性の単量体を好ましく挙げることができる。
これらのエチレン性不飽和単量体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、共重合体の化学的安定性及び共重合体の製造の容易さなどの点から、スチレン,アクリル酸及びメタクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルが特に好適である。
バインダーの塩基性樹脂として、共重合体を用いる場合は、一般式(I)及び/又は一般式(II)で表される単量体由来の単位の含有量は、得られる蛍光変換膜の酸性水溶液によるエッチング処理が容易である点から、20モル%以上が好ましく、特に40モル%以上が好適である。
【0024】
この塩基性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、各種状況に応じて選定すればよいが、通常1000〜1000000の範囲で選ばれる。このMwが1000未満では蛍光変換膜の結晶性が高まり、膜の強度が充分でない(脆くなる)おそれがあり、また1000000を超えると溶剤に溶けにくくなり、蛍光変換膜を作製する際の溶剤の選択が困難となる上、蛍光変換膜の酸性水溶液に対する溶解性が低下して、酸性水溶液によるエッチング性が低下する傾向がみられる。蛍光変換膜の強度,酸性水溶液によるエッチング性及び溶剤への溶解性などの面から、該塩基性樹脂の重量平均分子量は、特に10000〜100000の範囲が好適である。
【0025】
本発明においては、該塩基性樹脂として、酸性水溶液に可溶なものが用いられるが、このような樹脂としては、室温ないし80℃程度の温度において、酸性水溶液に溶解(溶解度0.1重量%以上)するものであればよい。ここで、酸性水溶液としては、例えば塩酸,臭化水素酸,硝酸,硫酸,炭酸などの無機酸(鉱酸)の水溶液、ギ酸,酢酸,プロピオン酸,シュウ酸などの有機酸の水溶液、あるいはこれらの酸を二種以上含む混合酸の水溶液が挙げられるが、通常は塩酸水溶液及び酢酸水溶液が用いられる。また、濃度としては、水素イオン濃度(pH)として7.0未満か、あるいは0.01〜50重量%程度の濃度のものが用いられる。さらに、この酸性水溶液には、蛍光変換膜への濡れ性を向上させるために、所望により界面活性剤を加えてもよい。
【0026】
本発明の蛍光変換膜の作製方法については特に制限はなく、例えば適当な溶剤中に、(A)成分の蛍光色素や蛍光顔料と(B)成分のバインダー樹脂とを溶解又は分散して溶液を調製し、スピンコート,ロールコート,バーコート,キャスティング,ディッピングなどの方法で製膜したのち、オーブンなどで乾燥することにより、蛍光変換膜を作製することができる。この際、蛍光色素は、バインダー樹脂1kg当たり、0.0001〜1モルの割合で用いるのが好ましい。この量が0.0001モル未満では発光体から発光する光を充分に吸収させるために蛍光変換膜の厚さを100μm以上にする必要があり、高精細なパターニング(エッチング)が困難となる。一方、1モルを超えると蛍光色素の濃度が高すぎて、色素間の会合が著しくなり、濃度消光が生じるおそれがある。発光体から発光する光の吸収性及び色素間の会合防止性などの面から、この蛍光色素は、バインダー樹脂1kg当たり、0.001〜0.1モルの割合で用いるのが特に好ましい。また、蛍光色素を樹脂中に含有させた蛍光顔料においては、蛍光色素の量が、蛍光顔料中の樹脂1kg当たり、上記の割合になるようにした蛍光顔料、あるいは蛍光色素の量が、蛍光顔料中の樹脂に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%になるようにした蛍光顔料を用いるのがよい。蛍光色素の量が、モル比率の場合と同じ理由で、0.1重量%未満では高精細なパターニングが困難となる場合があり、また10重量%を超えると濃度消光が生じるおそれがある。
このような蛍光顔料を用いた場合には、蛍光顔料とバインダー樹脂の重量割合を1:20〜4:1とすることが好ましく、また、1:10〜3:7とすることがより好ましい。1:20より蛍光顔料の割合が少なくなると、発光体から発光する光を充分に吸収させるために、蛍光変換膜の厚さを100μm以上にする必要があり、4:1より蛍光顔料の割合が多くなると、酸性水溶液に可溶なバインダー樹脂成分が少なくなるので、結果的には、いずれの場合も、蛍光変換膜を高精細にパターニング(エッチング)することが困難となる。
【0027】
さらに、蛍光変換膜の作製の際に用いられる溶剤としては、蛍光色素及びバインダー樹脂、さらには蛍光顔料中の樹脂を溶解又は分散しうるものであればよく、特に制限はない。このような溶剤としては、例えばジクロロメタン;1,2−ジクロロエタン;クロロホルム;アセトン;シクロヘキサノン;トルエン;ベンゼン;キシレン;N,N−ジメチルホルムアミド;N−メチルピロリドン;1,2−ジメトキシエタン;1,2−ジエトキシエタン;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ);エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ);エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(エチルセロソルブアセテート)などを用いることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
なお、溶剤の量は、蛍光変換膜の作製方法に応じて、適宜加え、適度な粘度又は固形分濃度調整を行う。また、蛍光顔料を分散させる場合には、適当な分散剤,界面活性剤を加えればよい。
【0028】
この蛍光変換膜をパターニングするには、該蛍光変換膜の上に、通常のフォトレジストを積層し、フォトレジストのパターニング後に、下層の蛍光変換膜が酸性水溶液に可溶であるので、該酸性水溶液でエッチング処理し、次いでレジストを剥離することによって、高精細に蛍光変換膜をパターニングすることができる。エッチング処理において用いられる酸性水溶液としては、前述の酸性水溶液の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。このような酸性水溶液は、発火性がなく、取扱いが簡易で、かつエッチング処理後、水でリンスすることによって、適度なエッチングができるようにコントロールすることができる。
このようなパターニング法においては、フォトレジスト層と蛍光変換膜とが層分離しているため、フォトレジスト層から発生するラジカル種又はイオン種によって、蛍光変換膜中の蛍光色素が脱色したり消光したりすることはない。
【0029】
本発明における発光体としては、近紫外領域ないし可視領域の光を発するものであればよく、特に制限されず、例えばEL,LED,VFD,PDPなどの各素子を挙げることができるが、これらの素子の中で効率よく近紫外領域から青色又は青緑色、さらには緑色の発光が可能な有機EL素子が好適である。
発光体の種類が異なっても、平面的に分離配置をしたある一色の発光体と位置合わせをして所望の色の蛍光を発光できる蛍光変換膜を配置すれば、有機EL素子と同様に多色発光は可能である。
この有機EL素子は、基本的には一対の電極の間に発光層を挾持し、必要に応じ正孔注入層や電子注入層を介在させた構造を有している。具体的には、
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
などの構造がある。
【0030】
上記発光層は(1)電界印加時に、陽極又は正孔注入層により正孔を注入することができ、かつ陰極又は電子注入層より電子を注入することができる注入機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、(3)電子と正孔の再結合の場を発光層内部に提供し、これを発光につなげる発光機能などを有している。ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送機能に大小があってもよいが、どちらか一方の電荷を移動させる機能を有するものが好ましい。この発光層に用いられる発光材料の種類については特に制限はなく、従来有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料は主に有機化合物であり、具体的には所望の色調により、次の化合物が挙げられる。
【0031】
まず、紫外領域ないし紫色領域の発光を得る場合には、パラ−ポリフェニレン系のものが好ましい。このパラ−ポリフェニレン系化合物のフェニル基又はフェニレン基には、アルコキシ基,水酸基,スルホニル基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基,アミノ基,ジメチルアミノ基,ジフェニルアミノ基などの置換基が1個又は2個以上導入されていてもよい。このようなパラ−ポリフェニレン系化合物の例としては、p−クォーターフェニル(PQP);3,5,3'''',5''''−テトラ−t−ブチル−p−クインクフェニル(TBQ);3,5,3''''' ,5''''' −テトラ−t−ブチル−p−セキシフェニル(TBS)などが挙げられる。
【0032】
次に、青色ないし緑色の発光を得るには、例えばベンゾチアゾール系,ベンゾイミダゾール系,ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物を挙げることができる。また、芳香族ジメチリディン系化合物(欧州特許第388768号明細書,特開平3−231970号公報に開示のもの)も好ましく用いることができる。この芳香族ジメチリディン系化合物の例としては、1,4−フェニレンジメチリディン;4,4’−ビフェニレンジメチリディン;2,5−キシリレンジメチリディン;2,6−ナフチレンジメチリディン;1,4−p−テレフェニレンジメチリディン;4,4’−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル(DTBPVBi);4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)など及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0033】
さらに、特開平5−258862号公報などに記載されている一般式(IV)
(R−Q)2−Al−O−L ・・・(IV)
(式中、Lはベンゼン環を含む炭素数6〜24の炭化水素基、O−Lはフェノラート配位子、Qは置換8−キノリノラート配位子を示し、Rはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個を上回り結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を示す。)
で表される化合物も挙げることができる。この化合物の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(以下、PC−7),ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)(以下、PC−17)などが挙げられる。
【0034】
その他、高効率の青色と緑色の混合発光を得るために、ホストである上記発光材料にドーパントを加えたもの(特開平6−9953号公報など)を挙げることができる。該ドーパントとしては、例えば青色領域ないし緑色領域の蛍光色素、具体的にはクマリン系あるいは上記のホストとして用いられるものと同様な蛍光色素などが挙げられる。特に、ホストとして芳香族ジメチリディン化合物の発光材料、好ましくはDPVBiと、ドーパントとしてジフェニルアミノスチリルアリーレン骨格を有するもの、好ましくは1,4−ビス〔4−〔N,N−ジフェニルアミノ)スチリル〕ベンゼン(DPAVB)との組合せを好ましく挙げることができる。
上記材料を用いて発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法,スピンコート法,キャスト法,LB法などの公知の方法により薄膜化することにより形成することができるが、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、該化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と凝集構造,高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0035】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
このEL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属,合金,電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属,CuI,インジウムチンオキシド(ITO),SnO2 ,ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。該陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm,好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0036】
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する),合金,電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム,ナトリウム−カリウム合金,マグネシウム,リチウム,マグネシウム/銅混合物,マグネシウム/銀混合物,マグネシウム/アルミニウム混合物,マグネシウム/インジウム混合物,アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2 3 )混合物,インジウム,リチウム/アルミニウム混合物,希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物,マグネシウム/アルミニウム混合物,マグネシウム/インジウム混合物,アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2 3 )混合物,リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。該陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm,好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光効率が向上し好都合である。
【0037】
次に、必要に応じて設けられる正孔注入層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、そのうえ、発光層に陰極又は電子注入層より注入された電子は、発光層と正孔注入層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。
この正孔注入層の材料(以下、正孔注入材料という)については、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0038】
上記正孔注入材料は、正孔の注入、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物,無機物のいずれであってもよい。
この正孔注入材料としては、例えばトリアゾール誘導体,オキサジアゾール誘導体,イミダゾール誘導体,ポリアリールアルカン誘導体,ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体,フェニレンジアミン誘導体,アリールアミン誘導体,アミノ置換カルコン誘導体,オキサゾール誘導体,スチリルアントラセン誘導体,フルオレノン誘導体,ヒドラゾン誘導体,スチルベン誘導体,シラザン誘導体,アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
正孔注入材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物,芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0039】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4''−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0040】
また、発光層の材料として示した前述の芳香族ジメチリディン系化合物、p型−Si,p型−SiCなどの無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
この正孔注入層は、上記正孔注入材料を、例えば真空蒸着法,スピンコート法,キャスト法,LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔注入層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。この正孔注入層は、上記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
さらに、必要に応じて用いられる電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0041】
この電子注入層に用いられる材料(以下、電子注入材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体,ジフェニルキノン誘導体,チオピランジオキシド誘導体,ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物,カルボジイミド,フレオレニリデンメタン誘導体,アントラキノジメタン及びアントロン誘導体,オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。
また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物は、該公報では発光層を形成する材料として開示されているが、本発明者らが検討の結果、電子注入材料として用いうることが分かった。
さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子注入材料として用いることができる。
【0042】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq),トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム,トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム,トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム,トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム,ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn,Mg,Cu,Ca,Sn,Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子注入材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子注入材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子注入材料として用いることができるし、正孔注入層と同様に、n型−Si,n型−SiCなどの無機半導体も電子注入材料として用いることができる。
【0043】
この電子注入層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法,スピンコート法,キャスト法,LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。電子注入層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。
この電子注入層は、これらの電子注入材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
次に、該有機EL素子を作製する好適な例を説明する。例として、前記の陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極からなるEL素子の作製法について説明すると、まず適当な基板上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層,発光層,電子注入層の材料からなる薄膜を形成させる。
【0044】
この薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法,キャスト法,蒸着法などがあるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなどの点から、真空蒸着法が好ましい。この薄膜化に、この蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類,分子堆積膜の目的とする結晶構造,会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃,真空度10-6〜10-3Pa,蒸着速度0.01〜50nm/秒,基板温度−50〜300℃,膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0045】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望のEL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極,電子注入層,発光層,正孔注入層,陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られたEL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+,陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+,陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0046】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
製造例1 発光体としての有機EL素子の作製
25mm×75mm×1.1mmのガラス基板(コーニング7059)上全面に、スパッタリングにより、厚さ120nmのITO膜を形成したのち、ノボラック樹脂/キノンジアジド系のポジ型レジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製、HPR204)をスピンコートして積層し、80℃で乾燥後、ガラス基板内15mm×50mm面積の領域にITOベタパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源としたコンタクト露光を行った。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理したのち、130℃でベーク後、臭化水素酸水溶液で露出したITO膜をエッチング処理し、最後にポジ型レジストを剥離して、EL素子の陽極となるITOパターンを得た。
【0047】
次に、この基板をイソプロピルアルコール洗浄、次いでUV洗浄後、蒸着装置(日本真空技術社製)の基板ホルダーに固定した。それぞれのモリブデン製の抵抗加熱ボートに、正孔注入材料として、4,4’,4''−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)及び4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、発光材料として4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、電子注入材料としてトリス(8ーキノリノール)アルミニウム(Alq)をそれぞれ仕込み、さらに陰極の第二金属として銀ワイヤーをタングステン製フィラメントに、陰極の電子注入性金属としてマグネシウムリボンをモリブデン製ボートに装着した。
【0048】
その後、真空槽を5×10-7torrまで減圧にしたのち、以下の順序で正孔注入層から陰極まで途中で真空を破らず一回の真空引きで、順次積層していった。まず、正孔注入層としては、MTDATAを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒,膜厚60nm及びNPDを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒,膜厚20nm、発光層としては、DPVBiを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒,膜厚50nm、電子注入層としては、Alqを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒,膜厚20nmで蒸着し、さらに陰極としては、ITO陽極パターンと交差するようにガラス基板内15mm×50mm面積領域にマスクを介して、マグネシウムと銀を、それぞれ蒸着速度1.3〜1.4nm/秒及び0.1nm/秒で同時蒸着し、膜厚を200nmとした。
このようにして、有機EL素子を作製し、その陽極と陰極に直流12Vの電圧を印加したところ、陽極と陰極の交差部分が発光した。発光輝度は、色彩色差計(ミノルタ製CS100)にて200cd/m2 、CIE色度座標はx=0.14,y=0.20であり、青色の発光であることを確認した。
【0049】
実施例1
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)40,000のポリ(2−ビニルピリジン)を、蛍光色素として、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)を用いた。
上記バインダー樹脂3g及びこのバインダー樹脂1kg当たり0.03モルになるような量のクマリン6をエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚18.0μmの蛍光変換膜が得られた。
【0050】
次に、この膜上にポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、2重量%酢酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して200cd/m2 (変換効率100%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.26,y=0.68であり、黄味がかった緑色(イエロイシュグリーン)の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、高効率で発光体の青色から黄味がかった緑色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0051】
実施例2
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)40,000のポリ(2−ビニルピリジン)を、蛍光顔料として、ベンゾグアナミン樹脂に対して2重量%のソルベントイエロー116及び6重量%のソルベントイエロー44を予め練り込んで顔料化したナフタルイミド系蛍光顔料を用いた。
上記バインダー樹脂1.5g及び蛍光顔料1.5gをエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚20.7μmの蛍光変換膜が得られた。
【0052】
次に、この膜上にポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、20重量%酢酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して205cd/m2 (変換効率103%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.19,y=0.58であり、緑色の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、高効率で発光体の青色から緑色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0053】
実施例3
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)50,000のポリ(4−ビニルピリジン)を、蛍光色素として、クマリン6を用いた。
上記バインダー樹脂3g及びこのバインダー樹脂1kg当たり0.03モルになるような量のクマリン6をエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚17.5μmの蛍光変換膜が得られた。
【0054】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、2重量%酢酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して200cd/m2 (変換効率100%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.26,y=0.68であり、黄味がかった緑色(イエロイシュグリーン)の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、高効率で発光体の青色から黄味がかった緑色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0055】
実施例4
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)60,000のポリ(p−N,N−ジメチルアミノメチルスチレン)を、蛍光色素として、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)を用いた。
上記バインダー樹脂3g及びこのバインダー樹脂1kg当たり0.03モルになるような量のクマリン7をエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚18.5μmの蛍光変換膜が得られた。
【0056】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、1重量%塩酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して194cd/m2 (変換効率97%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.25,y=0.58であり、緑色の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、発光体の青色から緑色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0057】
実施例5
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)110,000の2−ビニルピリジン−スチレン共重合体(2−ビニルピリジン単位:スチレン単位モル比=70:30)を、蛍光色素としてクマリン6を用いた。
上記バインダー樹脂3g及びこのバインダー樹脂1kg当たり0.03モルになるような量のクマリン6をエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚17.0μmの蛍光変換膜が得られた。
【0058】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、15重量%酢酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して205cd/m2 (変換効率103%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.26,y=0.68であり、黄味がかった緑色(イエロイシュグリーン)の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、高効率で発光体の青色から黄味がかった緑色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0059】
実施例6
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)80,000の4−ビニルピリジン−ブチルメタクリレート共重合体(4−ビニルピリジン単位:ブチルメタクリレート単位モル比=50:50)を、蛍光色素としてクマリン6を用いた。
上記バインダー樹脂3g及びこのバインダー樹脂1kg当たり0.03モルになるような量のクマリン6をエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚16.5μmの蛍光変換膜が得られた。
【0060】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、20重量%酢酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して204cd/m2 (変換効率102%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.26,y=0.68であり、黄味がかった緑色(イエロイシュグリーン)の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、高効率で発光体の青色から黄味がかった緑色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0061】
実施例7
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)60,000のp−N,N−ジメチルアミノメチルスチレン−スチレン共重合体(p−N,N−ジメチルアミノメチルスチレン単位:スチレン単位モル比=70:30)を、蛍光色素としてクマリン6を用いた。
上記バインダー樹脂3g及びこのバインダー樹脂1kg当たり0.03モルになるような量のクマリン6をエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚18.0μmの蛍光変換膜が得られた。
【0062】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、2重量%塩酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して200cd/m2 (変換効率100%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.26,y=0.68であり、黄味がかった緑色(イエロイシュグリーン)の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、高効率で発光体の青色から黄味がかった緑色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0063】
実施例8
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)40,000のポリ(2−ビニルピリジン)を、蛍光色素として4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)を用いた。
上記バインダー樹脂3g及びこのバインダー樹脂1kg当たり0.03モルになるような量のDCMをエチルセロソルブアセテート10gに溶解して溶液を調製した。この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚18.5μmの蛍光変換膜が得られた。
【0064】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、2重量%酢酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して40cd/m2 (変換効率20%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.55,y=0.40であり、オレンジ色の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、発光体の青色からオレンジ色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0065】
実施例9
塩基性のバインダー樹脂として、重量平均分子量(Mw)60,000のポリ(p−N,N−ジメチルアミノメチルスチレン)を、蛍光色素としてローダミン6GとローダミンB及びDCMを用いた。
ローダミン6GとローダミンBの量が、バインダー樹脂1kg当たり、それぞれ0.005モルになるように、またDCMの量がバインダー樹脂1kg当たり、0.03モルになるように、ローダミン6G,ローダミンB,DCM及び上記バインダー樹脂3gをエチルセロソルブ10gに溶解して溶液を調製した。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚23.2μmの蛍光変換膜が得られた。
【0066】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされた。次に、1重量%塩酸水溶液で露出した蛍光変換膜をエッチング処理し、水洗後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液で残ったポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して20cd/m2 (変換効率10%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.58,y=0.32であり、赤色の発光が出ていることを観測した。
すなわち、本発明の蛍光変換膜により、発光体の青色から赤色に変換可能であった。また、蛍光変換膜を300μmピッチの高精細にパターニングできた。
【0067】
実施例10〜22
第1表に示す種類の塩基性バインダー樹脂及び蛍光色素又は蛍光顔料を用い、実施例1〜9と同様にして実施した。結果を第1表に示す。なお、実施例1〜9の条件及び結果も第1表に併記した。
比較例1(フォトレジストをバインダーとした場合)
蛍光色素のクマリン6を、光硬化型フォトレジスト(日本合成ゴム社製JNPC06,固形分38重量%)中に、フォトレジスト固形分1kg当たり0.03モルになるように溶解させた。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚15.0μmの蛍光変換膜(レジスト膜)が得られた。
次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、300mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源としてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理したところ、パターニングができず、すべての膜が溶解してしまった。
【0068】
そこで、露光エネルギーを10倍、すなわち3000mJ/cm2 で露光を試みたが、やはりパターニング不能であった。これは、紫外光が蛍光色素に吸収されるので、フォトレジストが感光しなかったためである。
なお、参考として現像処理せずに180℃オーブンでポストベークしたところ、消光した蛍光変換膜が得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜を重ねてみると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して120cd/m2 (変換効率60%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.32,y=0.66であり、黄味がかった緑色(イエロイシュグリーン)の発光が出ていることを観測した。
すなわち、フォトレジスト中に蛍光色素を溶解させた蛍光変換膜は、発光体の青色を黄味がかった緑色に変換したが、実施例1に比べて変換効率は低く、また蛍光変換膜のパターニングは不可能であった。
なお、変換効率が低いのは、ポストベーク処理により、フォトレジスト膜中から熱ラジカルが発生し、有機蛍光色素に作用して消光をもたらしたと考えられる。
【0069】
比較例2(酸性樹脂をバインダーとした場合−1)
バインダー樹脂として、酸性樹脂のポリアクリル酸(Mw30,000)を、蛍光色素としてクマリン6を用いた。
ポリアクリル酸3g及びこのポリアクリル酸1kg当たり0.03モルになるような量のクマリン6をエチルセロソルブ10gに溶解して溶液を調製した。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚17.0μmの蛍光変換膜が得られた。
【0070】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされるのと同時に蛍光変換膜もエッチングされた。さらに、アセトンにてポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して106cd/m2 (変換効率53%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.38,y=0.58であり、黄緑色(イエローグリーン)の発光が出ていることを観測した。
すなわち、この蛍光変換膜は、発光体の青色を黄緑色に変換し、またパターニングも可能であったが、変換効率は実施例1よりも低かった。
なお、変換効率が低いのは、ポリアクリル酸中に多量に存在する遊離のカルボン酸基が蛍光色素に作用して消光をもたらしたと考えられる。
【0071】
比較例3(酸性樹脂をバインダーとした場合−2)
バインダー樹脂として、酸性樹脂のポリアクリル酸(Mw30,000)を、蛍光色素としてローダミン6G,ローダミンB及びDCMを用いた。
ローダミン6GとローダミンBの量が、ポリアクリル酸1kg当たり、それぞれ0.005モルになるように、またDCMの量がポリアクリル酸1kg当たり、0.03モルになるように、ローダミン6G,ローダミンB,DCM及びポリアクリル酸3gをエチルセロソルブ10gに溶解して溶液を調製した。
この溶液を、25mm×50mm×1.1mmの青板ガラス基板(ジオマテック社製)上にスピンコートして、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚21.5μmの蛍光変換膜が得られた。
【0072】
次に、この膜上に、ポジ型フォトレジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製HPR204)をスピンコートし、80℃オーブンで乾燥することにより、膜厚2.0μmのレジスト膜が得られた。次いで、このレジスト膜を、250μmライン,50μmギャップのストライプパターンが得られるマスクを介して、100mJ/cm2 で高圧水銀灯を光源とする露光機にてコンタクト露光し、さらに2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像処理すると、レジスト膜がパターニングされるのと同時に、蛍光変換膜もエッチングされた。さらに、アセトンにてポジレジスト膜を剥離することにより、高精細の蛍光変換膜パターンが得られた。
ここで、製造例1で作製した発光体の有機EL素子とこの蛍光変換膜パターンを重ねると、蛍光変換膜から発光する輝度は、色彩色差計により、有機EL素子の輝度200cd/m2 に対して2cd/m2 (変換効率1%)が得られ、CIE色度座標は、x=0.55,y=0.32であり、赤色の発光がわずかに出ていることを観測した。
【0073】
すなわち、この蛍光変換膜は、発光体の青色を赤色に変換し、またパターニングも可能であったが、変換効率は実施例9に比べてかなり低かった。
なお、変換効率が低いのは、酸性樹脂のポリアクリル酸中に多量に存在する遊離のカルボン酸基が蛍光色素に作用して消光をもたらしたと考えられる。
なお、上記比較例1〜3についても、その条件及び結果を第1表に併記した。
【0074】
【表1】
Figure 0003858075
【0075】
【表2】
Figure 0003858075
【0076】
【表3】
Figure 0003858075
【0077】
【表4】
Figure 0003858075
【0078】
【表5】
Figure 0003858075
【0079】
【表6】
Figure 0003858075
【0080】
〔注〕
(1)蛍光色素又は蛍光顔料の項目における( )内のモル/kgは、バインダー樹脂1kg当たりの蛍光色素のモル数である。
(2)実施例2,実施例18における蛍光顔料は、ベンゾグアナミン樹脂に対し、ソルベントイエロー116を2重量%及びソルベントイエロー44を6重量%の割合で練り込んだものである。
【0081】
【表7】
Figure 0003858075
【0082】
【表8】
Figure 0003858075
【0083】
【発明の効果】
本発明の蛍光変換膜は、発光体から発する近紫外領域ないし可視領域の光を、効率よく異なる可視光に変換することができ、かつ高精細なパターニングが可能であって、例えば発光型のマルチカラー又はフルカラーディスプレイ,表示パネル,バックライトなど、民生用や工業用の表示機器に好適に用いられる。

Claims (6)

  1. (A)EL,LED,VFD又はPDPの素子から発する近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して異なる可視光を発光する塩基性の蛍光色素及び塩基性の蛍光顔料の中から選ばれた少なくとも一種と、(B)酸性水溶液に可溶な塩基性のバインダー樹脂からなるEL,LED,VFD又はPDPの素子用蛍光変換膜。
  2. (B)成分のバインダー樹脂が、一般式(I)
    Figure 0003858075
    (式中、X1
    Figure 0003858075
    で表される基を示し、R1 は水素原子又はメチル基、mは0〜4の整数を示す。)
    で表される単量体及び一般式(II)
    Figure 0003858075
    (式中、X2
    Figure 0003858075
    で表される基を示し、R2 及びR3 は、それぞれ水素原子,メチル基,エチル基又はイソプロピル基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、R4 は水素原子又はメチル基、n及びkは、それぞれ0〜4の整数を示す。)
    で表される単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体の重合体、又はこの単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である請求項1記載の蛍光変換膜。
  3. 一般式(I)で表される単量体が、ビニルピリジンである請求項2記載の蛍光変換膜。
  4. 一般式(II)で表される単量体が、N,N−ジメチルアミノメチルスチレンである請求項2記載の蛍光変換膜。
  5. 蛍光変換膜のパターニングに際し、酸性水溶液でエッチング処理が可能である請求項1記載の蛍光変換膜。
  6. (A)有機エレクトロルミネッセンス素子から発する近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して異なる可視光を発光する塩基性の蛍光色素及び塩基性の蛍光顔料の中から選ばれた少なくとも一種と、(B)酸性水溶液に可溶な塩基性のバインダー樹脂からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用蛍光変換膜。
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