JP3857239B2 - 弾み車の慣性抵抗軽減方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両,船舶,建設機械,農業機械などの内燃機関に利用されている弾み車に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関では、吸気,圧縮,燃焼,排気の4工程を行うピストンとシリンダーの1つ、または複数の組により得たエネルギーをクランク軸の回転として取り出し、各種機械の動力源として使用している。
前記4つの工程によって生じるクランク軸の回転は回転速度のムラが生じ易いため、この回転ムラを防止・軽減するために弾み車が用いられている。弾み車はクランク軸に直接取り付けられて、エンジンの回転ムラおよびエンジンの作動より回転する動力軸の回転ムラを防止・軽減している。そして、回転ムラを均すためには弾み車の慣性モーメントを大きくすることが必要である。しかし、慣性モーメントを大きくとると、エンジンの加速に伴う慣性抵抗が大きくなり、動力が無駄に使われるというジレンマがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
自動車などのエンジンでは、クランク軸に取り付けた弾み車の重量を小さくするために、その回転中心近くを薄く、周辺部を厚くするような工夫もされてきたが、回転速度の変動に伴う弾み車の慣性抵抗を減らす工夫は見られない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、クランク軸の回転速度が急加速した時にエンジンの作動により回転する軸とこれに取り付けた弾み車の回転状況を変えて、クランク軸の回転速度の急な加速すなわちエンジン出力の急な増大に伴う弾み車の慣性抵抗を低減してエネルギーロスを少なくすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の慣性抵抗軽減方法では、エンジンからの動力で回転する軸と該軸に取り付けた弾み車との間に連結器を設け、回転速度の急加速時と、それ以外の時とで軸と弾み車との連結状態を変えている。連結器には、トルクメータを併用した電磁クラッチが使用される。
該慣性抵抗軽減方法では、回転数計を備えエンジンからの動力で回転する軸に電磁クラッチのロータを固定し、前記軸に嵌挿した弾み車に前記電磁クラッチのアーマチュアを固定し、前記電磁クラッチ及び前記弾み車よりもエンジン側及び反対側それぞれの位置で前記軸にトルクメータを取り付けた回転動力伝達機構において、エンジン側トルクメータと反対側トルクメータで検出したトルク値の差と軸の回転速度との積が一定値に達するまでは前記電磁クラッチを介して前記弾み車が前記軸に連結され、一定値以上になったとき前記弾み車と前記電磁クラッチとの連結が解除されることを特徴とする。
なお、本発明で、“エンジンの作動により回転する軸”と称した回転軸は、エンジンの作動で発生した動力で回転される軸の総称であり、回転動力を取り出したままのクランク軸そのものの他、このクランク軸にギアなどの変速機構を介して連結され回転速度が変えられた回転軸をも含むものである。
【0005】
【作用】
慣性モーメントを大きくした弾み車をクランク軸に直接設けると、エンジンの急加速時に弾み車の回転も急加速され、慣性抵抗が大きくなって動力が無駄に使われると共にエンジン自身にも負荷を与えることになる。そこで、本発明者等は、弾み車を、エンジンの定常な時および緩やかな加速時にエンジン作動により回転する軸の回転に連動して回転させ、エンジンの急加速時にはエンジンの作動により回転する軸の回転に連動させずに空転させることにより、弾み車の慣性抵抗を軽減させることを見いだした。
すなわち、エンジンの作動により回転する軸と弾み車との間に、エンジンの定常な作動時および緩やかな加速時にはエンジンの作動により回転する軸と弾み車を連結させ、エンジンの急加速時にはエンジンの作動により回転する軸と弾み車の連結を解除する連結器を使用することにより、弾み車の慣性抵抗を軽減できることを見いだした。
【0006】
【実施の態様】
エンジンの作動により回転する軸と弾み車との間の連結器の設置状況を、実施例をもって説明する。
【0007】
実施例1 電磁クラッチの使用(1)
エンジンの作動により回転する軸であるクランク軸に電磁クラッチを連結する場合について説明する。なお、低速回転において弾み車本来の機能を発揮させると共に無負荷時の空ふかしを避けるようにする。
クランク軸21に電磁クラッチ23のロータ26を固定し、弾み車22にアーマチュア27を固定する。この場合には2つのトルクメータ24および25を併用する。すなわち、エンジン側から見て、弾み車・電磁クラッチよりも手前(図1では右側)に1つと、弾み車・電磁クラッチよりも後方(図1では左側)に1つ、併せて2つのトルクメータをクランク軸21に取り付ける。そしてこれら2つのトルクメータ24,25により常時両方のトルクを検知しておく。また、クランク軸上に回転速度計を設置して常時回転速度を検知しておく。さらに、負荷の有無の信号を検知しておく。
負荷状態で回転速度がアイドリング回転速度以上であり、クランク軸21の回転が急加速状態になって、弾み車・電磁クラッチよりも手前に取り付けられたトルクメータ24の検出値が後方に取り付けられたトルクメータ25の検出値に比べて予め定めた値以上に大きくなった時点で、その検出信号に基づいて電磁クラッチ23の作動を解除するように構成する。
エンジンの作動を開始してエンジンが回転を始めた時は、無負荷状態のためクランク軸と弾み車は連結した状態となる。
【0008】
エンジンの定常作動時あるいはわずかな加速時には、弾み車・電磁クラッチよりも手前に取り付けられたトルクメータ24の検出値と後方に取り付けられたトルクメータ25の検出値は大きな差を示さないので、電磁クラッチ23は作動したままであり弾み車22はクランク軸21と同じ速さで回転する。すなわち、クランク軸と弾み車は連結状態にある。これは、回転速度や負荷の有無に無関係である。
負荷状態で回転速度がアイドリング回転速度以上の時にエンジンを急に加速し、クランク軸21の回転が急加速状態になると、弾み車・電磁クラッチよりも手前に取り付けられたトルクメータ24の検出値が、後方に取り付けられたトルクメータ25の検出値を一定値以上上回った時点で、その検出信号に基づいて電磁クラッチ23の作動を解除する。すると、トルクメータ25の検出値が直ちに増大し、両方のトルクメータの検出値の差が一定の値以下になるため電磁クラッチ23が作動する。弾み車22の回転速度がクランク軸21の回転速度に比べてまだかなり低速であれば両方のトルクメータの検出値の差がまだ大きい状態であり、電磁クラッチ23はその作動を解除する。
このように、負荷状態で回転速度がアイドリング回転速度以上の時にエンジン回転を加速すると、電磁クラッチ23は作動と作動の解除を繰り返し、弾み車22の回転を徐々に加速することになり、弾み車22の慣性抵抗を大きくすることはない。
【0009】
エンジンの減速、すなわちクランク軸21の回転が減速することに対しては、電磁クラッチを作動させたままクランク軸21と弾み車22は常に連結した状態とする。
以上に説明したように、クランク軸21に弾み車22より手前と後方に1対のトルクメータ24,25を設けると共に電磁クラッチ23を介して弾み車22を取り付け、また、該軸上に回転速度計を取りつけ、回転速度がアイドリング回転速度以下または無負荷、または2つのトルクメータが検出したトルク値の差が一定値未満のとき電磁クラッチ23を作動させてクランク軸21と弾み車22を連結して一体とし、回転速度がアイドリング回転速度以上かつ負荷状態において、上記差が一定値以上になったとき電磁クラッチ23の作動を解除してクランク軸21と弾み車22の連結を解除するようにしているので、クランク軸21の回転速度の急増によっても弾み車22の慣性抵抗が大きくなることはない。
【0010】
なお、本発明で使用する電磁クラッチ23は、コイル28、フィールド29、クランク軸に固定したロータ26、摩擦板30,弾み車22に取り付けたアーマチュア27からなる通常のもので十分である。31,32はアーマチュア27を弾み車22に取り付けるための板バネとリベットであり、33はロータ26をクランク軸に固定するキー、34は軸受けである。
【0011】
実施例2 電磁クラッチの使用(2)(トルク差と回転数の両方で制御する場合)
上記例と同様、エンジンの作動により回転する軸であるクランク軸に電磁クラッチを連結する場合について説明する。
クランク軸に電磁クラッチのロータを固定し、弾み車にアーマチュアを固定する。この場合には回転速度計と1対のトルクメータを併用する。すなわち、エンジン側から見て、弾み車・電磁クラッチよりも手前(図1では右側)に1つと弾み車・電磁クラッチよりも後方(図1では左側)に1つ合わせて2つのトルクメータ、と回転速度計をクランク軸に取り付ける。そしてこれら回転速度計と2つのトルクメータの両方により常時回転速度と両方のトルクを検知しておく。また、負荷の状態を常時検知しておく。
弾み車の慣性抵抗によるエネルギー消費速度(仕事率)を見積もる。仕事率は、力と速度の積である。また、弾み車とクランク軸との間の動力伝達または弾み車の慣性抵抗の伝達は、弾み車内に挿入したリベット32を介して行なわれる。したがって、前記の力は弾み車の慣性抵抗に関与する上記トルク差を弾み車のリベット挿入位置を通る同心円の半径で除したもので評価される。また、上記の速度は回転速度に上記同心円の半径を掛けたもので評価される。したがって、弾み車の慣性抵抗によるエネルギー消費速度(仕事率)は、前記のトルク差と回転速度の積で評価される。エネルギー消費の面からはこれを小さく抑えればよい。すなわち、これが大きくなったときクランク軸と弾み車の連結を解除すれば弾み車の慣性抵抗によるエネルギーロスを抑えられる。
負荷状態でかつ回転速度がアイドリング回転速度以上の時、クランク軸の回転速度と2つのトルクメータの検出値の差の積が一定以上になった時点で、それらの検出信号に基づいて電磁クラッチを解除するように構成する。
【0012】
エンジンの作動を開始してエンジンが回転をはじめた時、このときはふつう無負荷状態であるから弾み車とクランク軸は連結の状態にある。
【0013】
エンジンの定常作動時あるいはわずかな加速時には、弾み車・電磁クラッチよりも手前に取り付けられたトルクメータの検出値と後方に取り付けられたトルクメータの検出値は大きな差を示さないので、電磁クラッチは作動したままで弾み車は連結状態でクランク軸と同じ速度で回転する。この場合、回転速度、負荷の有無に無関係に連結状態である。
エンジンを急に加速し、クランク軸の回転が急加速状態になると、弾み車・電磁クラッチの前後に設置した2つのトルクメータの検出値の差とクランクシャフトの回転速度の積、負荷の有無、そして回転速度とアイドリング回転速度の大小関係に応じて弾み車とクランクシャフトの連結状態が変わる。
無負荷状態またはエンジン回転速度がアイドリング回転速度より小さい場合、弾み車・クランク軸は連結状態となる。
負荷状態でしかもエンジン回転速度がアイドリング回転速度より大きい場合、弾み車・電磁クラッチより手前のトルクメータの検出値と後方のトルクメータの検出値の差とクランク軸の回転速度の積が一定値を超えたとき、弾み車・クランクシャフトは連結を解除する。すると、弾み車・電磁クラッチの後方に取り付けたトルクメータの検出値が直ちに増大し、両方のトルクメータの検出値の差が直ちに減少し、前記トルク差とクランク軸の回転速度の積が所定の値以下となるため、電磁クラッチが作動して弾み車とクランクシャフトが連結状態になる。弾み車の回転速度がクランク軸の回転速度に比べてまだかなり低速であれば両方のトルクメータの差がまだ大きい状態であり、トルク差と回転速度の積が所定の値より大きいと、電磁クラッチは弾み車・クランクシャフトの連結を解除する。
このように、エンジンの加速時には、電磁クラッチは作動と作動解除を繰り返し、弾み車の回転速度を徐々に加速することになり、弾み車の慣性抵抗を大きくすることがない。しかも、アイドリング回転速度より低い回転速度の時あるいは無負荷時には弾み車とクランク軸は連結状態にあるため、低速回転域における回転の平滑化という弾み車の本来の機能を具備すると共に無負荷時の空ふかしを避けることができる。
【0014】
エンジンの減速、すなわちクランク軸の回転が減速することに対しては、実施例1と同様に、電磁クラッチを作動させたままでクランク軸と弾み車は常に連結した状態とする。
以上に説明したように、クランク軸上に、回転速度メータ、そして弾み車より手前と後方に1対のトルクメータを設けるとともに電磁クラッチを介して弾み車を取り付け、エンジン回転速度がアイドリング回転速度より小さい時、または無負荷時、または2つのトルクメータの検出値の差とクランク軸の回転速度の積が所定の値より小さい時に電磁クラッチを作動させてクランク軸と弾み車を連結し、回転速度がアイドリング回転速度以上でかつ負荷状態でかつ、前記トルク差とクランク軸の回転速度の積が設定値以上になった時に電磁クラッチの作動を解除してクランク軸と弾み車の連結を解除するようにしているので、クランク軸の回転速度の急増によっても弾み車の慣性抵抗を過大にすることがなく、しかも弾み車本来の機能を保持する。
【0015】
以上では、弾み車・電磁クラッチを用いてエンジンの急加速に伴う、クランク軸に取り付けた弾み車の慣性抵抗を軽減する技術の基本的な構成について説明した。しかしながら、これが正常に作動するためには、電磁クラッチを取り付けた軸の回転数が電磁クラッチの仕様の範囲内にあることが満足されなければならない。このため、ギアなどの変速機構を用いてクランク軸とは別の回転軸に適度な回転数を与え、この新たな弾み車・電磁クラッチを取り付けることも有効である。
【0016】
図3に基づいて上記の取り付け態様を説明する。
(a)は、クランク軸とは別の回転軸に弾み車と電磁クラッチを動力伝達経路に対して直列に配置したものであり、(b)はクランク軸とは別の回転軸に弾み車と電磁クラッチを動力伝達経路に対して並列に配置したものである。
すなわち(a)の系統の直列の連結態様にあっては、クランク軸101を、変速ギア105を介して別の回転軸である出力軸102に連結し、エンジンの回転数から適切な回転数に変化させて伝えている。この出力軸102に、弾み車103と電磁クラッチ104が取り付けられており、前記で説明したと全く同様の作用により、エンジンの急加速に伴う弾み車103の慣性抵抗を低減している。またこの弾み車の慣性が有効に使われ、出力軸102は回転ムラなく回転される。
【0017】
(b)の系統の並列の連結態様にあっては、クランク軸101を、変速ギア105を介して別の回転軸である連動回転軸106に連結し、エンジンの回転数すなわちクランク軸の回転数から適切な回転数に変化させて連動回転軸106を回転させている。この連動回転軸106に、弾み車103と電磁クラッチ104が取り付けられており、前記で説明したと全く同様の作用により、エンジンの急加速に伴う弾み車103の慣性抵抗を低減している。そして、連動回転軸106のムラのない回転はクランク軸101に連動され、クランク軸すなわち出力軸は回転ムラなく回転される。
なお、この並列的な連結状態の場合、トルクメータは、クランク軸(出力軸)の変速ギアの前後に配置する。
上記の連結系統のいずれを採用するかは、エンジンの出力、必要とする動力や、ラチェット機構、電磁クラッチの仕様等に応じて適宜決めればよい。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明方法によれば、例えば弾み車を用いた自動車用のエンジンにあって、急加速時における弾み車の慣性抵抗を軽減できるので、エンジンの出力を上げるとその出力の上昇が車体の加速に有効に伝達できるという効果を発揮する。
自動車以外でも、建設機械などの操作にあっても、必要とされるエンジン出力の変更操作時に弾み車の慣性抵抗を軽減することが可能になるので、弾み車を直接クランク軸に取り付けた場合と比較して出力変更操作に対する反応がより迅速になり、また、少ないスロットル操作で大きな出力が得られるので燃費向上に資することにもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 クランク軸上、弾み車の前後に1対のトルクメータを取り付けるとともに、クランク軸と弾み車の間に、トルクメータの検出値に基づいて作動する電磁クラッチを使用した例を説明する図
【図2】 トルク差と回転速度による連結制御の図
【図3】 連結器をクランク軸に直接取り付けず、エンジンにより回転する軸に取り付ける態様を説明する図であり、エンジンにより回転する軸に、(a)は弾み車と電磁クラッチを動力伝達経路に対して直列に配置した場合で、(b)は弾み車と電磁クラッチを動力伝達経路に対して並列に配置した場合を示す
【符号の説明】
21:クランク軸 22:弾み車 23:電磁クラッチ 24,25:トルクメータ 26:ロータ 27:アーマチュア 28:コイル 29:フィールド 30:摩擦板 31:板バネ 32:リベット 33:キー 34:軸受け 101:クランク軸 102:出力軸 103:弾み車 104:電磁クラッチ 105:変速ギア 106:連動回転軸
Claims (1)
- 回転数計を備えエンジンからの動力で回転する軸に電磁クラッチのロータを固定し、前記軸に嵌挿した弾み車に前記電磁クラッチのアーマチュアを固定し、前記電磁クラッチ及び前記弾み車よりもエンジン側及び反対側それぞれの位置で前記軸にトルクメータを取り付けた回転動力伝達機構において、エンジン側トルクメータと反対側トルクメータで検出したトルク値の差と軸の回転速度との積が一定値に達するまでは前記電磁クラッチを介して前記弾み車が前記軸に連結し、一定値以上になったとき前記弾み車と前記電磁クラッチとの連結が解除することを特徴とする弾み車の慣性抵抗軽減方法。
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