JP3857225B2 - 半導体レーザ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、埋め込み型半導体レーザ及びその製造方法に関し、特に高次モード発振が抑制され、安定した横モード発振が得られる半導体レーザ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水平方向に屈折率差を有する導波路を形成し、注入電流による利得の変化よりも導波路の効果を大きくした構造の半導体レーザを屈折率導波路型レーザという。屈折率導波路型レーザは、高次モードがカットオフとなるように屈折率と導波路幅Wとを決定することで基本モードのみを伝播させることが可能であり、これにより比較的安定な横モード発振が得られる。
【0003】
屈折率導波路型レーザにおいては、発振しきい値電流密度は導波路の構造と注入電流ストライプ幅S(即ち、利得領域幅)とに関係し、この点から屈折率導波路型レーザの構造は2種類に分類される。
【0004】
屈折率導波路型レーザの第1の構造は、埋め込み型半導体レーザに代表される利得領域幅と導波路幅が一致(S=W)した構造である。図1に、従来の埋め込み型半導体レーザの一例を示す。
【0005】
n型InP基板10の上には、例えばi型(ノンドープ)InGaAsPからなる光ガイド層11、活性層12及び光ガイド層13が基板10側からこの順に積層されている。これらの光ガイド層11,13及び活性層12の幅方向の両側にはp型InPからなる埋め込み層14が形成されており、埋め込み層14の上にはn型InPからなる電流ブロック層15が形成されている。
【0006】
また、光ガイド層13及び電流ブロック層15の上にはp型InPからなるクラッド層16が形成されており、クラッド層16の上には、p型GaInAsPからなるコンタクト層17が形成されている。更に、コンタクト層17の上には、活性層12に対応する位置に開口部が設けられたSiO2 (酸化シリコン)からなるパッシベーション膜18が形成されている。そして、コンタクト層17及びパッシベーション膜18の上には正極側の電極19aが形成されており、n型InP基板10の下には負極側の電極19bが形成されている。
【0007】
図2は、上述した埋め込み型半導体レーザの断面と、キャリア密度分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界強度分布及び横1次モード電界強度分布とを対応させて示す図である。この図2に示すように、埋め込み型半導体レーザでは、導波路(活性層12及び光ガイド層11,13)の幅とキャリア密度分布、利得分布及び屈折率分布の幅とが同じになっている。
【0008】
このような埋め込み型半導体レーザは、発振しきい値電流が低く、低電流で駆動できて、比較的安定な横モード発振が可能であるなどの利点を有している。
【0009】
屈折率導波路型レーザの第2の構造は、リブ導波路型や内部ストライプ型と呼ばれる構造である。この種の半導体レーザでは利得領域幅が導波路幅よりも大きく(S>W)なっている。
【0010】
図3は従来の内部ストライプ型半導体レーザの一例を示す斜視図である。n型InP基板20の上には光ガイド層21、活性層22及び光ガイド層23が基板20側からこの順に積層されている。光ガイド層23の上には、導波路幅を規定するn型InPからなる電流ブロック層24が選択的に形成されている。
【0011】
光ガイド層23及び電流ブロック層24の上にはp型InPからなるクラッド層25が形成されており、クラッド層25の上にはp型GaInAsPからなるコンタクト層26が形成されている。また、コンタクト層26の上には、電流ブロック層24の開口部に対応する位置に開口部が設けられたSiO2 からなるパッシベーション膜27が形成されている。コンタクト層26及びパッシベーション膜27の上には正極側の電極29aが形成されており、n型InP基板20の下には負極側の電極29bが形成されている。
【0012】
図4は、上述した内部ストライプ型半導体レーザの導波路近傍の断面を、キャリア密度分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界強度分布及び横1次モード電界強度分布と対応させて示す図である。この図4に示すように、内部ストライプ型半導体レーザでは、導波路幅よりも利得領域幅のほうが大きくなっている。
【0013】
このような屈折率導波路型半導体レーザは、安定なレーザ光を出射可能であるため、高速長距離光伝送用信号光源、レーザビームプリンタ用光源及び光計測用光源として広く利用されている。
【0014】
ところで、利得領域幅と導波路幅とが一致(S=W)している埋め込み型半導体レーザにおいては、活性層を活性層よりも低屈折率のクラッド層で埋め込んでいる。この場合、安定した基本横モードでの発振を実現するためには、下記(1)式で決定される導波路幅W以下の活性層幅による導波路を形成し、カットオフ条件を満たす必要がある。
【0015】
W=λ/2/((neq⊥)2 −(nclad)2)1/2 …(1)
ここで、neq⊥は無限に平面を仮定した活性層の等価屈折率、ncladはクラッド層の等価屈折率、λは発振波長である。また、(1)式は、TM発振モード及びTE発振モードに共通である。
【0016】
上記(1)式からわかるように、neq⊥とncladとの差が大きい構造ほど、カットオフとなる導波路幅の値は小さくなる。発振波長が1.48μm帯の一般的なInP系埋め込み型半導体レーザでは、neq⊥が約3.2、ncladが約3.18であり、このとき導波路幅Wは約2.1μmとなる。
【0017】
しかしながら、埋め込み型半導体レーザにおいて狭幅の活性層を用いた場合、特にp型クラッド層の電気抵抗が増加し、その結果素子のシリーズ抵抗を増大させてしまう。このシリーズ抵抗の増加により、ジュール熱が大きくなるだけでなく、pn接合界面における印加電圧のマージンが低くなり、リーク電流を増大させてしまうという問題が発生する。一方、幅広の活性層を用いた場合、光出力が大きくなると基本モードの利得が減少し、高次モードの発振を誘発するという問題が生じる。
【0018】
内部ストライプ型半導体レーザでは、埋め込み型半導体レーザよりもストライプ幅が広い構造を採用することが可能である。しかし、内部ストライプ型半導体レーザでは、導波路から離れた領域にレーザ発振に寄与しない余分なキャリアが注入されるため、発振しきい値電流が高くなってしまう。また、内部ストライプ型半導体レーザでは、遠視野像の水平方向が垂直方向に比べ極めて狭く、従って楕円率(垂直方向の遠視野像/水平方向の遠視野像)が大きいため、光学的使用には適していない。
【0019】
このような内部ストライプ型半導体レーザの問題点を解消すべく、特開平5−299770号公報(特許文献1)には、ストライプ構造を水平方向の等価屈折率が相互に異なる3以上の領域に分けることが提案されている。
【0020】
図5は、この種のストライプ型半導体レーザの導波路近傍の断面を、キャリア分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界分布及び横1次モード電界分布と対応させて示す図である。この種の半導体レーザでは、例えば活性層31と光ガイド層33との間の光ガイド層32に、活性層31の中心軸に沿って溝32aを形成することによって、ストライプ構造を屈折率(等価屈折率)が相互に異なる3つの領域に分割し、実効的に狭い屈折率分布を得ている。このようにして、ストライプ構造の中央部の一部分のみ水平方向の等価屈折率を大きくすることができるため、基本導波モードの損失が小さくなり、幅広のストライプにおいても安定な基本横モード発振が可能となる。
【0021】
【特許文献1】
特開平5−299770号公報
【0022】
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、特開平5−299770号公報に記載された半導体レーザにおいては、発振しきい値電流が埋め込み型半導体レーザに比べて高く、また高注入領域での注入電流に対する直線性も劣るという問題点がある。
【0023】
以上から、本発明の目的は、発振しきい値電流が低く、高出力動作が可能であり、従来に比べて横モード発振がより一層安定する半導体レーザ及びその製造方法を提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、少なくとも表面が第1導電型半導体からなる基板と、前記基板上に形成された半導体からなるストライプ状の活性層と、前記活性層の長手方向に沿って前記活性層に形成された複数の溝と、前記活性層の幅方向の両側に形成された埋め込み層と、前記活性層の上に形成されて前記溝内を埋め込む第2導電型半導体からなるクラッド層とを有し、前記活性層の溝が前記活性層の幅方向の両側部にそれぞれ2本づつ以上形成され、且つ、それらの溝が、溝がないときに高次モードの電界強度が極大となる位置に配置されていることを特徴とする半導体レーザにより解決する。
【0025】
上記した課題は、少なくとも表面が第1導電型半導体からなる基板上に、前記基板よりも屈折率が高い半導体からなる活性層を形成する工程と、前記活性層に複数の溝を形成する工程と、前記活性層の溝内に、前記活性層よりも屈折率が低い第2導電型半導体を埋め込む工程と、前記活性層をストライプ状にパターニングする工程と、前記活性層を幅方向の両側から挟む埋め込み層を形成する工程と、前記埋め込み層及び前記活性層の上に、前記活性層よりも屈折率が低い第2導電型半導体からなるクラッド層を形成する工程とを有し、前記活性層の溝を前記活性層の幅方向の両側部にそれぞれ2本づつ以上、且つ、それらの溝が、溝がないときに高次モードの電界強度が極大となる位置に形成することを特徴とする半導体レーザの製造方法により解決する。
【0026】
本発明においては、活性層に溝が形成されており、溝内には活性層よりも屈折率が低い半導体が埋め込まれている。これにより、活性層の等価屈折率が小さくなり、溝がない場合に比べて、カットオフとなる導波路の幅が拡がる。従って、素子のシリーズ抵抗が小さくなり、ジュール熱やリーク電流が低減され、高次モード発振が抑制される。
【0027】
また、溝を、溝がないときに高次モード(1次モードを含む)の電界強度が大きくなる位置に形成することにより、基本モードでは利得が大きく、高次モードでは利得が小さくなる。これにより、安定な横モード発振を得ることができる。
【0028】
更に、本発明は埋め込み型半導体レーザであるので、内部ストライプ型半導体レーザと異なり、導波路領域外部へのキャリアの散逸がない。従って、発振しきい値値電流が小さく、高出力動作が可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
図6(a)は本発明の第1の実施の形態の半導体レーザ(埋め込み型半導体レーザ)を示す斜視図、図6(b)は第1の実施の形態の半導体レーザの模式断面図である。
【0031】
n型InP基板50の上には、i型(ノンドープ)InGaAsPからなる光ガイド層51、活性層52及び光ガイド層53が基板50側からこの順に積層されている。光ガイド層53及び活性層52の幅方向の両縁部の近傍には、それぞれ光ガイド層53の上面から活性層52の厚さ方向の途中に至る溝53aが形成されている。この溝53aは、溝がないときに横1次モードの電界強度が極大となる部分(図2参照)に形成している。
【0032】
これらの光ガイド層51,53及び活性層52の幅方向の両側にはp型InPからなる埋め込み層54が形成されており、埋め込み層54の上にはn型InPからなる電流ブロック層55が形成されている。
【0033】
また、光ガイド層53及び電流ブロック層55の上にはp型InPからなるクラッド層56が形成されている。光ガイド層53及び活性層52に設けられた溝53a内にも、クラッド層56を構成するp型InPが埋め込まれている。なお、活性層52は、クラッド層56よりも禁制帯幅が小さい物質で形成されている。また、基板50及びクラッド層56は、活性層52及び光ガイド層51,53よりも屈折率が小さい物質により形成されており、これにより活性層52に発生した光を光ガイド層51、活性層52及び光ガイド層53内に閉じ込めることが可能になる。
【0034】
クラッド層56の上にはp型GaInAsPからなるコンタクト層57が形成されている。このコンタクト層57の上には、活性層52に対応する位置に開口部が設けられたSiO2 からなるパッシベーション膜58が形成されている。そして、コンタクト層57及びパッシベーション膜58の上には正極側の電極59aが形成されており、n型InP基板50の下には負極側の電極59bが形成されている。
【0035】
図7は、上述した第1の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの断面と、キャリア密度分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界強度分布及び横1次モード電界強度分布とを対応させて示す図である。この図7に示すように、本実施の形態の埋め込み型半導体レーザでは、溝53aを、溝がないときに導波路内で横1次モードの電界強度が極大となる部分に形成しているので、利得分布が基本導波モードで大きく、高次導波モードで小さくなる。また、溝53aを活性層52の屈折率よりも小さな屈折率を有する物質で埋め込んでいるので、図7に示すような屈折率分布が得られ、図1に示すような従来の埋め込み型半導体レーザに比べて導波路全体の等価屈折率が低下する。これにより、前述した(1)式からわかるように、カットオフとなる導波路(活性層)の幅も広がる。従って、素子のシリーズ抵抗が小さくなり、ジュール熱及びリーク電流が低減され、高次モード発振が抑制されて、安定な横モード発振を得ることができる。
【0036】
更に、本実施の形態は、利得領域幅と導波路幅とが一致(S=W)している埋め込み型半導体レーザであるので、内部ストライプ型半導体レーザで生じるような導波路領域外部へのキャリアの散逸が防止される。従って、発振しきい値電流が小さく、高出力動作が可能な半導体レーザを得ることができる。また、本実施の形態は、埋め込み型半導体レーザであるので、内部ストライプ型半導体レーザに比べて楕円率が優れ、光学的用途に適している。
【0037】
図8,図9は本実施の形態の半導体レーザの製造方法を工程順に示す断面図である。
【0038】
まず、図8(a)に示すように、Snドープ量が2×1018cm-3のn型InP基板50を用意する。そして、このn型InP基板50の上に、例えば有機金属気相成長法によって、組成波長が1.15μm、厚さが20nmのi型(ノンドープ)InGaAsPからなる光ガイド層51と、PL(フォトルミネッセンス)波長が1.46μm、厚さが20nmのi型InGaAsPからなる活性層52と、組成波長が1.15μm、厚さが20nmのi型InGaAsPからなる光ガイド層53とを順次形成する。その後、例えばスパッタ法により、光ガイド層53の上に厚さが0.1μmのSiO2 からなる誘電体膜60を形成する。
【0039】
次に、図8(b)に示すように、誘電体膜60の上にフォトレジスト膜61を形成し、電子ビーム露光法によってフォトレジスト膜61の一部を選択的に露光する。その後、現像処理を施して、レジスト膜61に、幅が0.2μm、間隔が1.5μmの2本のストライプ状の開口部を形成する。そして、このストライプ状の開口部が設けられたレジスト膜61をマスクとし、ドライエッチング法によって誘電体膜60をエッチングして、誘電体膜60に光ガイド層53が露出する開口部60aを形成する。その後、図8(c)に示すように、レジスト膜61を除去する。
【0040】
次に、図9(a)に示すように、誘電体膜60をマスクとして、例えばドライエッチング法により光ガイド層53及び活性層52をエッチングして、溝53aを形成する。このエッチングは、活性層52を活性層52の上面から約15nmの深さまでエッチングしたところで終了する。これにより、活性層52に厚い領域と薄い領域とが形成され、基本モードで大きく、高次モードが抑制された利得分布が得られる。
【0041】
次に、バッファードフッ酸などを用いて誘電体膜60を除去する。その後、例えば有機金属気相成長法により、基板50の上側全面にZnドープ量が1×1018cm-3のp型InPを0.5μmの厚さに堆積してInP層を形成し、溝53a内にInPを埋め込む。このInP層は、クラッド層56の一部となる。
【0042】
次に、導波路となる部分を、幅が約3.5μmのメサ形に加工する。即ち、光ガイド層53の上方に、通常のフォトリソグラフィ工程を用いてストライプ状の誘電体膜(例えば、SiO2 膜)を形成する。そして、この誘電体膜をマスクとして光ガイド層53、活性層52及び光ガイド層51をエッチングし、更に基板50の表面をエッチングする。
【0043】
次に、図6(a)の斜視図及び図6(b)の断面図に示すように、メサ形導波路の両側に、例えばZnドープ量が5×1017cm-3のp型InPと、Siドープ量が2×1018cm-3のn型InPとからなる埋め込み層54及び電流ブロック層55を形成する。その後、基板50の上側全面にZnドープ量が1×1019cm-3のp型InPクラッド層56を形成する。このとき、溝53a内に埋め込まれたInPはクラッド層56と一体化してクラッド層56の一部となる。
【0044】
その後、クラッド層56の上に、組成波長が1.2μm、Znドープ量が1×1019cm-3のp型InGaAsPコンタクト層57を形成する。そして、コンタクト層57の上にSiO2 膜58を形成し、フォトリソグラフィ法によりSiO2 膜58を選択的にエッチングしてコンタクト層57を露出させる。
【0045】
次いで、SiO2 膜58及びコンタクト層57の上に、例えばTi/Pt/Auの3層構造の電極59aを形成し、基板50の下側に例えばAuGe/Auの2層構造の電極59bを形成する。その後、劈開によって基板50を分割し、共振器長が1000μmの素子を切り出す。これにより、本実施の形態の埋め込み型半導体レーザが完成する。
【0046】
(第2の実施の形態)
図10は本発明の第2の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。なお、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は導波路部分の構造が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施の形態と同様であるので、図10において図6と同一物には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略する。
【0047】
本実施の形態においては、活性層52の幅が3.5μmであり、活性層52の幅方向の両側縁部にそれぞれ深さ(活性層52の上面からの深さ)が15nmの溝53bが設けられている。これらの溝53bにより、活性層52の中心線から左右1μmの範囲では活性層52の厚さが20nmであり、それよりも外側の部分では活性層52の厚さが5nmとなっている。また、下側の光ブロック層51の幅は活性層52と同じ3.5μmであるが、上側の光ブロック層53の幅は溝53bのために2μmとなっている。
【0048】
本実施の形態においても、溝53bを、溝がないときに横1次モードの電界強度が最も大きい部分に形成しているので、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
本実施の形態の半導体レーザは、溝53bを形成するためのマスクのパターンが異なること以外は第1の実施の形態と同様の方法により形成することができる。
【0050】
(第3の実施の形態)
図11は本発明の第3の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。なお、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は導波路部分の構造が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施の形態と同様であるので、図11において図6と同一物には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略する。
【0051】
本実施の形態においては、活性層52の中心線の両側にそれぞれ4本づつの溝65が左右対称に形成されている。これらの溝65は、いずれも幅が0.2μm、深さ(活性層52の上面からの深さ)が15nmであり、中心線から離れるほど溝65間の間隔が小さくなっている。例えば、中心線と中心線に最も近い第1番目の溝65との間隔が0.4μm、第1番目の溝65とその隣の第2の番目の溝65との間隔が0.4μm、第2番目の溝65とその隣の第3番目の溝65との間隔が0.2μm、第3番目の溝65と最も外側の第4番目の溝65との間隔が0.1μmに設定されている。
【0052】
本実施の形態においては、これらの溝65を、溝がないときに導波路内で高次導波モードの電界強度が大きくなる部分に形成している。これにより、利得分布が基本モードで大きく、高次導波モードで小さくなる。また、溝65を活性層52の屈折率よりも小さな屈折率を有する物質で埋め込んでいるので、図1に示すような従来の埋め込み型半導体レーザに比べて導波路全体の等価屈折率が低下する。これにより、カットオフとなる導波路の幅が広がり、素子のシリーズ抵抗が小さくなって、ジュール熱及びリーク電流が低減される。従って、高次モード発振がより一層抑制され、安定な横モード発振を得ることができる。
【0053】
更に、本実施の形態の半導体レーザは、第1の実施の形態と同様に、利得領域幅と導波路幅とが一致している埋め込み型半導体レーザであるので、内部ストライプ型半導体レーザで生じるような導波路領域外部へのキャリアの散逸が防止される。従って、発振しきい値電流が小さく、高出力動作が可能な半導体レーザを得ることができる。
【0054】
本実施の形態の半導体レーザは、溝65を形成するためのマスクのパターンが異なること以外は基本的に第1の実施の形態と同様の方法により形成することができる。
【0055】
(第4の実施の形態)
図12は本発明の第4の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。なお、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は導波路部分の構造が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施の形態と同様であるので、図12において図6と同一物には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略する。
【0056】
本実施の形態においては、活性層52の中心線の両側にそれぞれ3本づつの溝66が左右対称に形成されている。これらの溝66は、いずれも深さ(活性層52の上面からの深さ)が15nmであり、中心線から離れるほど溝66の幅が広くなっている。例えば、中心線に最も近い第1番目の溝66の幅は0.1μm、その隣の第2の番目の溝66の幅が0.2μm、最も外側の第3番目の溝66の幅が0.4μmに設定されている。また、第1番目の溝66と第2番目の溝66との間隔、及び第2番目の溝66と第3番目の溝66との間隔はいずれも0.2μmである。
【0057】
本実施の形態においても、溝66を、溝がないときに導波路内で高次モードの電界強度が大きい部分に形成しているので、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(第5の実施の形態)
図13は本発明の第5の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。なお、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は導波路部分の構造が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施の形態と同様であるので、図13において図6と同一物には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略する。
【0059】
本実施の形態においては、活性層52の中心線の両側にそれぞれ4本づつの溝67が左右対称に形成されている。これらの溝67は、いずれも幅が0.2μmであり、中心線から離れるほど溝67の深さ(活性層52の上面からの深さ)が深くなっている。例えば、中心線に最も近い第1番目の溝67の深さが3nm、その隣の第2の番目の溝67の深さが9nm、その隣の第3の番目の溝67の深さが12nm、最も外側の第4番目の溝67の深さが15nmに設定されている。また、第1番目の溝67と第2番目の溝67との間隔、第2番目の溝67と第3番目の溝67との間隔、及び第3番目の溝67と第4番目の溝67との間隔はいずれも0.2μmである。
【0060】
本実施の形態においても、溝67を、溝がないときに導波路内に発生する高次モードの電界強度に応じて形成しているので、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(第6の実施の形態)
図14は本発明の第6の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。なお、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は導波路部分の構造が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施の形態と同様であるので、図14において図6と同一物には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略する。
【0062】
本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、光ガイド層52及び活性層52の幅方向に両側縁部の近傍に、それぞれ光ガイド層52の上面から活性層52の厚さ方向の途中に至る溝53cが形成されている。但し、本実施の形態においては、第1の実施の形態と異なり、活性層52が、量子井戸層71aと障壁層71bとを交互に積層して形成されている。障壁層71bは、組成波長が1.2μm、厚さが10nmのi型InGaAsPからなり、量子井戸層71aはPL波長が1.46μm、厚さが5.1nm、圧縮歪みが0.8%のi型InGaAsPからなる。また、障壁層71bの層数は6、量子井戸層71aの層数は5である。
【0063】
このように、本発明は、量子井戸構造を有する半導体レーザに適用することもできる。
【0064】
なお、上述した第1〜第6の実施の形態においては、いずれも基板50がInPからなり、光ガイド層51,53及び活性層52がInGaAsPからなるものとしたが、基板、光ガイド層及び活性層等の組成は上記第1〜第6の実施の形態に例示したものに限定されるものでない。
【0065】
(付記1)少なくとも表面が第1導電型半導体からなる基板と、前記基板上に形成された半導体からなるストライプ状の活性層と、前記活性層の長手方向に沿って前記活性層に形成された複数の溝と、前記活性層の幅方向の両側に形成された埋め込み層と、前記活性層の上に形成されて前記溝内を埋め込む第2導電型半導体からなるクラッド層とを有することを特徴とする半導体レーザ。
【0066】
(付記2)前記活性層の溝が、溝がないときに横一次電界強度が極大となる位置に設けられていることを特徴とする付記1に記載の半導体レーザ。
【0067】
(付記3)前記複数の溝の間隔が、前記活性層の幅方向の中心から離れるほど広いことを特徴とする付記1に記載の半導体レーザ。
【0068】
(付記4)前記複数の溝の幅が、前記活性層の幅方向の中心から離れるほど広いことを特徴とする付記1に記載の半導体レーザ。
【0069】
(付記5)前記複数本の溝の深さが、前記活性層の幅方向の中心から離れるほど深いことを特徴とする付記1に記載の半導体レーザ。
【0070】
(付記6)前記基板と前記活性層との間に形成された第1の光ガイド層と、前記活性層と前記クラッド層との間に形成された第2の光ガイド層とを有し、前記溝が前記第2の光ガイド層の上側の面から前記活性層の厚さ方向の途中まで形成されていることを特徴とする付記1に記載の半導体レーザ。
【0071】
(付記7)前記活性層に量子井戸が設けられていることを特徴とする付記1に記載の半導体レーザ。
【0072】
(付記8)少なくとも表面が第1導電型半導体からなる基板上に、前記基板よりも屈折率が高い半導体からなる活性層を形成する工程と、前記活性層に複数の溝を形成する工程と、前記活性層の溝内に、前記活性層よりも屈折率が低い第2導電型半導体を埋め込む工程と、前記活性層をストライプ状にパターニングする工程と、前記活性層を幅方向の両側から挟む埋め込み層を形成する工程と、前記埋め込み層及び前記活性層の上に、前記活性層よりも屈折率が低い第2導電型半導体からなるクラッド層を形成する工程とを有することを特徴とする半導体レーザの製造方法。
【0073】
(付記9)前記活性層に埋め込む半導体と、前記クラッド層を形成する半導体とが同じ組成であることを特徴とする付記8に記載の半導体レーザの製造方法。
【0074】
(付記10)前記基板と前記活性層との間及び前記活性層と前記クラッド層との間にそれぞれ前記クラッド層よりも屈折率が大きい半導体からなる光ブロック層を形成することを特徴とする付記8に記載の半導体レーザの製造方法。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の半導体レーザによれば、活性層に溝が形成されており、溝内には活性層よりも屈折率が低い半導体が埋め込まれているので、活性層の等価屈折率が小さくなり、溝がない場合に比べてカットオフとなる導波路の幅が拡がる。これにより、素子のシリーズ抵抗が小さくなり、ジュール熱及びリーク電流が低減され、高次モード発振が抑制される。また、溝を、溝がないときに高次モードの電界強度が大きくなる位置に形成することにより、基本モードの利得が大きく、高次モードの利得が小さくなり、安定な横モード発振を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来の埋め込み型半導体レーザの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、同じくその埋め込み型半導体レーザの断面と、キャリア密度分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界強度分布及び横1次モード電界強度分布とを対応させて示す図である。
【図3】図3は、従来の内部ストライプ型半導体レーザの一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、同じくその内部ストライプ型半導体レーザの導波路近傍の断面を、キャリア密度分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界強度分布及び横1次モード電界強度分布と対応させて示す図である。
【図5】図5は、従来の他のストライプ型半導体レーザの導波路近傍の断面を、キャリア分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界分布及び横1次モード電界分布と対応させて示す図である。
【図6】図6(a)は本発明の第1の実施の形態の半導体レーザ(埋め込み型半導体レーザ)を示す斜視図、図6(b)は第1の実施の形態の半導体レーザの模式断面図である。
【図7】図7は、第1の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの断面と、キャリア密度分布、利得分布、屈折率分布、基本モード電界強度分布及び横1次モード電界強度分布とを対応させて示す図である。
【図8】図8は、第1の実施の形態の半導体レーザの製造方法を工程順に示す断面図(その1)である。
【図9】図9は、第1の実施の形態の半導体レーザの製造方法を工程順に示す断面図(その2)である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。
【図13】図13は、本発明の第5の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。
【図14】図14は、本発明の第6の実施の形態の埋め込み型半導体レーザの導波路部分を示す模式断面図である。
【符号の説明】
10,20,50…基板、
11,13,21,23,33,51,53…光ガイド層、
12,22,31,52…活性層、
14,54…埋め込み層、
15,24,55…電流ブロック層、
16,25,56…クラッド層、
17,26,57…コンタクト層、
18,27,58…パッシベーション膜、
19a,19b,29a,29b,59a,59b…電極、
32…光ガイド層、
53a,53b,53c,65,66,67…溝、
60…誘電体膜、
61…フォトレジスト膜、
71a…量子井戸層、
63b,71b…障壁層。
Claims (3)
- 少なくとも表面が第1導電型半導体からなる基板と、
前記基板上に形成された半導体からなるストライプ状の活性層と、
前記活性層の長手方向に沿って前記活性層に形成された複数の溝と、
前記活性層の幅方向の両側に形成された埋め込み層と、
前記活性層の上に形成されて前記溝内を埋め込む第2導電型半導体からなるクラッド層とを有し、
前記活性層の溝が前記活性層の幅方向の両側部にそれぞれ2本づつ以上形成され、且つ、それらの溝が、溝がないときに高次モードの電界強度が極大となる位置に配置されていることを特徴とする半導体レーザ。 - 前記基板と前記活性層との間に形成された第1の光ガイド層と、前記活性層と前記クラッド層との間に形成された第2の光ガイド層とを有し、前記溝が前記第2の光ガイド層の上側の面から前記活性層の厚さ方向の途中まで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ。
- 少なくとも表面が第1導電型半導体からなる基板上に、前記基板よりも屈折率が高い半導体からなる活性層を形成する工程と、
前記活性層に複数の溝を形成する工程と、
前記活性層の溝内に、前記活性層よりも屈折率が低い第2導電型半導体を埋め込む工程と、
前記活性層をストライプ状にパターニングする工程と、
前記活性層を幅方向の両側から挟む埋め込み層を形成する工程と、
前記埋め込み層及び前記活性層の上に、前記活性層よりも屈折率が低い第2導電型半導体からなるクラッド層を形成する工程とを有し、
前記活性層の溝を前記活性層の幅方向の両側部にそれぞれ2本づつ以上、且つ、それらの溝が、溝がないときに高次モードの電界強度が極大となる位置に形成することを特徴とする半導体レーザの製造方法。
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