JP3856659B2 - 薄肉ステンレス鋼円筒のしごき加工方法及び電子写真装置用定着部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状のステンレス鋼をしごき加工して、円筒部の肉厚が0.1mm以下の薄肉材を製造するためのしごき加工方法に関するものである。また、しごき加工によって製造された複写機の定着ロールなどの電子写真装置定着部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲料用のアルミ缶やスチール缶などの容器は、薄板素材を深絞り加工してカップ状素材に成形した後、しごき加工と呼ぶ円筒部の肉厚を減少する加工の組み合わせ(DI加工)により、円筒状に仕上げられている。アルミ缶では缶厚みの薄肉化による軽量化が試みられており、約100μmまでの薄肉缶が製造されている。
一方、オーステナイトステンレス鋼では通常、薄肉管を製造する方法として、引抜加工が適用されているが、加工硬化が大きく、工具との焼付き性が良くないので、肉厚で0.2mmが限界とされている。
【0003】
ステンレス鋼の薄肉円筒の製造を、アルミ缶のようにDI加工して製造する試みは、これまでほとんどなされていない。数少ない試みとして、特開平5−57361号公報には、オーステナイト系ステンレス鋼製素材の円筒部のしごき法が開示されている。
上記公報では、「1回目あるは2回目のしごきによる円筒部の板厚減少率を35%〜45%として行うことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼製素材の円筒部のしごき法」が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平5−57361号公報に開示の方法では、Journal of the JSTP vol.39,No448(1998-5)に示されるように、円筒部の肉厚が0.3mmまでが限界である。また、同方法では、径寸法ばらつきが20μm程度であるので、肉厚0.1mm以下の超薄肉円筒では寸法変動の割合が大きいので、寸法精度を要求される部材の製造方法としては適当でない。
つまり、特開平5−57361号公報に開示された試みでは、肉厚0.1mm以下の超薄肉円筒を寸法精度良く、加工できない。さらに径寸法変動が20μm程度と非常に大きいため、しごき加工時に径寸法変動の大きい部分で応力集中が起こり、その部分で切断あるいは、割れが発生してしまう。
【0005】
径寸法変動発生原因は、しごき加工時の不均一変形によるものであり、特開平5−57361号提案の板厚減少率35%〜45%の加工を行うと、0.1mm以下の超薄肉円筒の場合、かえって肉厚変動(偏肉)が大きくなり、寸法精度が悪くなってしまう。
偏肉の原因は、しごき加工時に円筒の周方向に発生する面内異方性に由来する変形の不均一である。面内異方性は加工中にステンレス鋼内部に加工集合組織が形成されることにより、45°ピッチで加工量の不均一が発生する現象である。
【0006】
変形が相対的に大きい方位では相対的に肉厚が薄くなり、それから45°ずれた位置では相対的に肉厚が薄くなる。
さらに、変形の不均一は、真円度にも影響を及ぼし、塑性ひずみが開放された状態(焼なまし熱処理後)では八角形に近い形状になってしまう。
特に肉厚0.05mm以下の超薄肉円筒を加工する場合、35%を越える強加工では、材料の強度よりもダイスとの摩擦力の方が大きくなるため、円筒底部で破断が起こる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、肉厚0.1mm以下の超薄肉円筒を得るための方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、次の加工法により寸法精度の高い超薄肉材を得られることを見出した。
すなわち、本発明は、円筒状のステンレス鋼をしごき加工して円筒部の肉厚が0.1mm以下の超薄肉材に成形加工する方法であって、ダイス角度が5.0〜9.5°の範囲であるダイスと、40℃における粘度が150〜600 mm 2 /sec の潤滑剤と、を用い加工速度を10〜1000 mm/sec の範囲で、および仕上げしごき加工率を10〜30%の範囲で成形加工することを特徴とする。
【0009】
本発明者らは、しごき加工により超薄肉材を得るためにはダイス角度としごき加工率の範囲が重要な要因であることを見出し、実験を行った結果、上記条件を得た。
つまり、ダイス角度が9.5°よりも大きくなると、薄肉円筒に過大なせん断力が作用し、破断してしまう。一方、ダイス角度が小さくなると、円筒胴部のダイスへの押し付け力が大きくなり、薄肉円筒の破断防止には有利になるが、ダイス角度が5.0°未満では薄肉円筒のダイス接触面積が大きすぎるので、焼付きが発生する。また、ポンチ表面に垂直な力が過剰に働き、ポンチと円筒の分離が難しくなる。さらにダイスの円周方向への弾性膨張が発生し、肉厚制御が困難となる。
【0010】
仕上げしごき加工率については、円筒部の肉厚が0.1mm以下の場合、ダイスとポンチの隙間が小さいことから、ステンレス鋼円筒の最終加工率が30%を越えると、ステンレス鋼の加工硬化の影響により、ダイスとポンチに円周方向の応力が過大に発生し、直径変形を及ぼすこと、さらにステンレス鋼の加工集合組織の発達により、不均一変形が起こりやすくなるため、加工率の上限は30%が適切である。また、円筒の肉厚が0.05mmで直径が60mmの場合、加工率が30%を越えると、成形時の最大荷重が円筒の破断加重を越えてしまうので、加工中に円筒が破断してしまう。
【0011】
加工率が10%未満の場合、表面粗さが高くなる。さらに、0.05mm程度の超薄肉管を製造する場合は非常に多段加工となり、生産性の面でも不利になる。
そして、粘度が150mm2/secより小さいと摩擦力が小さくなるので、変形荷重(=パンチ荷重と摩擦力の差)が低減できるため、薄肉円筒の成形には有利になるが、ダイスとステンレス鋼円筒の間の境界潤滑膜が破れて焼付きが発生し、円筒の切断が起こりやすくなる。逆に粘度が600mm2/secを越えると、薄肉であるため、円筒への潤滑剤の押込みが大きく表面の肌荒れが著しくなり、連続しごき加工が困難になる。
【0012】
また、加工速度が100mm/secを越えると円筒表面への潤滑剤の供給が不十分となり、焼付きが発生しやすくなる。一方、加工速度が10mm/sec未満では、加工時のダイスおよびポンチの振動の影響により、変形が不均一となり、円筒の軸方向の肉厚が不均一となる。
上記製造条件を組み合わせることにより、寸法精度が改善される。
そして、しごき加工法によって製造された肉厚が0.1mm以下のステンレス鋼円筒を電子写真装置用定着部材の基材として用いるのが好ましい。しごき加工によって得られた厚さ0.1mm以下のシームレスステンレス鋼管は、熱効率、強度、安定性において、電子写真装置用定着部材の基材として最適である。
【0013】
つまり、電子写真装置の定着装置では、記録紙上の未定着トナーを圧力と加熱により融着し、紙上に定着しているが、定着用部材を薄肉化すると、加熱に要する昇温時間を短くし、予備加熱などを無くすことによる省エネルギー対応が可能だからである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態及び実施例を説明する。
図1は、本発明の加工方法を実施するためのしごき加工装置1を示している。このしごき加工装置1は、基台2にダイス固定盤3が設けられており、ダイス固定盤3にはダイス5が装着されている(図1の斜線部分)。また、しごき加工装置1は、前記ダイス5のダイス孔5aに挿入されるマンドレル(ポンチ)6を備えており、ダイス5とポンチ6のすきまを素材(ステンレス鋼)の板厚より小さく設定して成形するように構成されている。
【0015】
なお、図2の拡大断面図に示すように、ダイス5の内面には、しごき成形部7が設けられている。
本発明の加工方法は、前記しごき加工装置1によって実施される。肉厚0.1mm以下の薄肉で肉厚変動が少なく、表面が平滑な円筒状ステンレス鋼の最適製造条件を検討するため行った試験を以下に実施例として示す。
【0016】
【実施例】
板厚0.3mmのSUS304ステンレス鋼板を用いて、3回の深絞りと4回のしごき加工により、0.05mmの超薄肉円筒の製造を試みた。
まず、SUSステンレス鋼板(焼鈍材)を直径145mmの円盤に打抜いた。一回当たりの深絞り比が1.3となるようにして、2段の深絞り加工により、直径60mm、長さ70mmの円筒に加工した(深絞り時のエッジ部に発生した耳は切断した。)
次に、前記しごき加工装置1を用いて、第1段のしごき加工により、平均肉厚0.12mm、肉厚変動±0.02mmの円筒を得た。この時の加工率は60%、ダイス角は9°、潤滑剤の粘度は200mm2/sec、加工速度は50mm/secである。
【0017】
以下、得られた肉厚0.12mmの円筒を用いて、種々の条件で製造試験を行い、肉厚0.1mm以下の薄肉で肉厚変動が少なく、表面が平滑な円筒状オーステナイト系ステンレス鋼の最適製造条件を検討した。
表1に、しごき加工ダイスの角度(絞り角)a(図2参照)、加工率、潤滑剤の粘度、加工速度(ポンチの移動速度)をパラメータとして、しごき加工後の肉厚変動および表面粗さとの関係を示す。なお、ダイス角度aは、図2に示すように、円筒ステンレス鋼のダイスへの挿入方向に対するしごき成形部7の傾斜角度である。
【0018】
【表1】
【0019】
表1に示すように、ダイス角度aは、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、9.5、11.0、13.0°、加工率は5、10、15、20、25、30、35、40、45、55%、潤滑剤の粘度(40℃)は100、180、200、300、500、700mm2/sec、加工速度は5、15、100、200、800、1500mm/secとした。
加工後の製品品質として、全周、全長(300mm)にわたる肉厚変動、管軸方向の表面粗さ、破断、亀裂および焼付きの有無を測定した。
【0020】
まず、ダイス角度の影響を明らかにするために、加工率(25%)、潤滑剤粘度(200mm2/sec)、加工速度(100mm/sec)を一定にして、表のNO.1〜8の条件でしごき加工試験を行った。なお、表1のNo.1〜8のうち、No.1、2、7及び8は比較例であり、No.3〜6は実施例である。
ダイス角度3.0°(No.1)及び4.0°(No.2)では肉厚変動が大きく、表面粗さも比較的大きく、表面に焼付きが発生していた。ダイス角度が5.0°、6.0°、7.0°、9.5°(No.3〜6)ではいずれも肉厚変動は5μm以下で表面粗さも0.30μm未満の値となっていた。一方、ダイス角度が11.0°(No.7)、13.0°(No.8)では加工時に底部で破断し、円筒の製造はできなかった。
【0021】
【表2】
【0022】
表2及び図3はダイス角度と肉厚変動の関係を示しており、ここでは、ダイス角度として、表1に示す角度の他、2°、9°、10°も測定されている。図3は、表2の結果をグラフにしたものであり、ダイス角度が5°未満では肉厚変動が大きいのに対して、ダイス角度5°付近を境界として肉厚変動が低く安定していることがわかる。なお、ダイス角度10°以上では破断が生じた。
次に加工率の影響を調べた。なお、表1のNo.9〜16のうち、No.9、14,15,16及び17は比較例であり、No.10〜13は実施例である。
【0023】
加工率5%(No.9)では肉厚変動は低い値となったが、表面粗さは0.40μmと高い値となった。表面粗さは加工率が高くなるほど、低くなる傾向が認められた。一方、加工率が35%以上(No.14〜16)になると円筒底部で破断が起こり、製造できなかった。
次に潤滑剤の粘度の影響を調べた。なお、表1のNo.18〜22のうち、No.18及び22は比較例であり、No.19〜21は実施例である。潤滑剤粘度(mm2/sec)が100(No.18)では円筒胴部前面に焼付きが発生していた。粘度が180、300,500(No.19〜21)では焼付きは発生しなかったが、700(No.22)になるとオイルピットにより表面粗さが0.50μmを越える高い値となった。
【0024】
最後に加工速度の影響を調べた。なお、表1のNo.23〜27のうち、No23及び27は比較例であり、No.24〜26は実施例である。加工速度が5mm/sec(No.23)の低速では、肉厚変動が11μmと高い値になった。加工速度が1500mm/sec(No.27)の高速では、円筒底部が破断し、製造はできなかった。
以上の実施例によれば、肉厚変動が5μm以下となる。また、しごき加工により表面粗さが0.40μm未満の鏡面が得られる。したがって、しごき加工後の機械による仕上げ等は必ずしも必要とされない。この結果、優れた肉厚0.1mm以下の超薄肉円筒が得られる。そして、しごき加工により得られた円筒は、円筒として精度の良い基材となり、この基材により形成された電子写真装置用定着部材は、安定性、耐久性、定着性に優れたものとなる。
【0025】
特に、ダイス角度を9.0°、加工率を20%、粘度:200mm2/secの潤滑剤を用いて、200mm/secの加工速度で、肉厚0.05mmの超薄肉円筒を製造することができた。この場合、得られた円筒の胴部の肉厚変動は5μm以下であり、極めて寸法精度に優れていた。さらに円筒の内外表面粗度はRaで0.18μmの超平滑な表面状態であることも明らかになった。
しごき加工により得られたオーステナイト系ステンレス超薄肉円筒は、その端部を切断することにより、複写機(電子写真装置)の定着ロール(定着部材)、あるいは短尺に切断することにより、駆動力伝達用のステンレスベルトへの応用ができる。
【0026】
さらに、本発明のしごき加工は、溶接管の薄肉化、寸法精度の改善方法としても適用が可能である。
しごき加工により得られた厚さ0.1mm以下のシームレス薄肉ステンレス円筒は、ベルト、チューブ、スリーブ状の電子写真装置用定着部材の基材として使用することができる。定着部材の基材として使用すると、上記円筒は熱効率、耐久性、安定性に優れていることから、電子写真装置用定着装置のセットアップタイムの短縮、高速機種での安定定着性能が可能となる。また、上記円筒をベルト状に使用することにより、装置の小型化も可能となる。
【0027】
電子写真装置用定着部材は、一対のローラで加熱と加圧を行うニップ部に記録紙を通過させることで、定着を行うものである。定着部材を製作するには、前記しごき可能により作成された厚さ0.1mm以下のシームレスステンレス鋼管を基材とし、基材の表面に離型層を設ける。この離型層は、耐熱離型層であり、基材の表面に適宜のプライマーを介して設けられている。
離型層としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、シリコンゴム、フッソゴムといった非粘着性、耐熱性を有する高分子化合物を使用できる。また、離型層としては、単層構造でもよいが、シリコンゴム層或いはフッソゴムからなる下層と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂或いはパーフルオロアルコキシ樹脂からなる表面層とからなる複層構造としてもよい。
【0028】
記録紙上の未定着トナー像を圧力と加熱により定着する電子写真装置用定着装置は、本発明の定着部材を一対のローラの片方のみ或いは両方に使用することで構成できる。また、定着部材をベルト状としてその一部で相対するローラでニップ部を形成し、定着装置をコンパクトにすることも可能である。
図4は、定着部材の加熱回転試験機を示している。次に、この回転試験機による定着部材の加熱回転試験の結果を説明する。
「実施例」
0.3mm厚のステンレス鋼板をプレス加工により、口径100mmφ、深さ200mmの円筒状に成型し、その後、その外面を50mmφに絞り角9°のダイスを用いて均一にしごき加工して外径50mmφ、長さ400mm、厚さ50μmのシームレスステンレス円筒を作成した。
【0029】
更にこのステンレス円筒外面をサンドブラストにより表面粗度Ra=2〜3μmに粗面化した。この表面に静電塗装によりPFA樹脂(MP−10)を塗装し、360°で焼成することでフッソ樹脂離型層を20μmの厚さに被膜して定着部材を構成した。
これにより得られた定着部材を図4の加熱ローラとして用い、加圧ローラ(加圧部材)と組み合わせ回転試験機にセットして加熱回転試験を行った。その結果が表3の実施例(ステンレスしごきチューブ)である。
「比較例1」
押出し成型により作成したポリイミドチューブ、外径50mmφ、長さ40mm、厚さ50μmの外表面にPFA樹脂(MP−10)を静電塗装により20μの厚さで塗装し、860℃で焼成してポリイミドチューブによる定着部材を得た。この定着部材を加熱ローラとして、実施例と同一の回転試験機で加熱回転試験を行った。その結果が、表3の比較例1(ポリイミドチューブ)である。
「比較例2」
外径50mmφ、長さ450mmの棒状のステンレス金型をニッケルメッキ槽にて3H通電し、50μmの厚さにNiメッキ層を設けた。このメッキ皮膜を円筒状のまま金型から抜き、両端部分を仕上げて長さ40mmの円筒に仕上げた。
【0030】
こうして得られたNiチューブの外面にPFA収縮チューブを被覆し、加熱により均一に収縮させることでPFA厚さ25μmのNiチューブによる定着部材を得た。
この定着部材を加熱ローラとして、実施例と同一の回転試験機で加熱回転試験を行った。その結果が、表3の比較例2(Niチューブ)である。
「比較例3」
外径50mmφ、長さ450mmのステンレス金型に内径50mmφ、長さ150mm、厚さ0.2のステンレスシームレス鋼管を均一に挿入し、金型センターを軸として旋盤に取り付け、1000rpmのスピードで回転させた。回転させた状態でステンレス鋼管外面に、超硬合金で作成したベアリング状の押し付けローラを押し当てて長さ方向に均一なスピードで連続的に移動させることで鋼管を薄肉化し、シームレスステンレスチューブを作成した。金型から抜き、両端の仕上げを行う事で、肉厚50μm、内径50mmφ、長さ400mmのシームレスステンレスチューブを得た。
【0031】
この外表面をサンドブラストして粗面化したのち、静電塗装によりPFA樹脂を20μmに被覆し、360℃で焼成することで定着部材を得た。
この定着部材を加熱ローラとして、実施例と同一の回転試験機で加熱回転試験を行った。その結果が、表3の比較例3(スピニングチューブ)である。
【0032】
【表3】
【0033】
表3の試験方法は、次の通りである。
まず、図4に示すように、加熱回転試験機は、軸心が互いに平行に配置されて互いに接する加圧ローラ10と加熱ローラ11とを有している。加圧ローラ10は、アルミ芯金12の外周面にシリコンゴム13を被覆して構成されている。加熱ローラ11は、内部に加熱装置として面状ヒータ15を備えるとともに、温度検出装置としてサーミスタ16を備えている。また、ヒータ15は押えバネ17によって、サーミスタ16は押え板バネ18によって加熱ローラの内周面に押さえ付けられている。
【0034】
加熱ローラ11は、実施例、比較例1〜3の方法で作成したチューブが使用される。加熱ローラ11を加熱する面状ヒータ15は400Wであり、加熱ローラ内周面に接触しているサーミスタ16によって190℃に設定制御した。また、加熱ローラ11と加圧ローラ11との間で10kg/cm2の加圧力が働くようヒータ押し付け用バネを設定した。
この状態で加圧ローラ11を200rpmで回転させ、加熱ローラ10もこの加圧ローラ回転に連動し回転する構造である。この装置で加熱ローラを連続回転させ、下記に示す評価基準でそれぞれの比較を行ったものである。
【0035】
耐久性:チューブ(加熱ローラ)に変形、割れ、等異常が発生するまでの時間を確認した。
◎:400H以上、○:300〜400H、△:200〜300H
耐熱性:100Hの回転試験を行ったチューブについて、初期引張強度との変化を確認した。
◎:変化なし、 ○:10〜20%低下、 △:20%以上低下
昇温性:室温25℃の状態から、チューブ表面を190℃まで昇温させるために要した時間を測定した。
【0036】
◎:3秒以下、 ○:3〜5秒、 △:5〜7秒
表3の結果より、実施例のステンレスしごきチューブが定着部材として優れていることが確認された。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、肉厚が0.1mm以下で、肉厚変動及び表面粗さRaが小さいステンレス超薄肉円筒の製造が可能となる。
このステンレス超薄肉円筒は、電子写真装置用定着部材の基材として適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 しごき加工機の正面図である。
【図2】 ダイスの断面図である。
【図3】 ダイス角度と肉厚変動の関係を示すグラフである。
【図4】 加熱回転試験機の構成概念図である。
【符号の説明】
1 しごき加工装置
5 ダイス
Claims (2)
- 円筒状のステンレス鋼をしごき加工して円筒部の肉厚が0.1mm以下の超薄肉材に成形加工する方法であって、
ダイス角度が5.0〜9.5°の範囲であるダイスと、
40℃における粘度が150〜600 mm 2 /sec の潤滑剤と、を用い
加工速度を10〜1000 mm/sec の範囲で、および仕上げしごき加工率を10〜30%の範囲で成形加工する
ことを特徴とする薄肉ステンレス鋼円筒のしごき加工法。 - 請求項1に記載のしごき加工法によって製造された肉厚が0.1mm以下のステンレス鋼円筒を基材として用いた
ことを特徴とする電子写真装置用定着部材。
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