JP3856383B2 - 抵抗溶接用電極ホルダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抵抗溶接(スポット溶接)の電極を保持するL型の電極ホルダの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、重ね合わせた二枚の被溶接部材を一対の電極で挟んで加圧通電することにより局部的に溶接するスポット溶接において、いわゆるL型ホルダと呼ばれる電極ホルダに電極を取付けることがあり、特に、電極の加圧方向の延長線上に障害物が存在するようなワークの溶接に便利であるが、このようなL型ホルダは、一つの素材から削り出し加工によって一体物として作製されるのが一般的である。
一方、上記のように削り出しにより一体物として作製する場合には、剛性が高いため、高い加圧力をかけることが出来るという利点を有するものの、素材の無駄になる部分が多く、しかも削り出し加工に手間がかかるという不具合があるため、例えば実用新案登録第3056331号のような技術も知られており、この技術では、L型ホルダを電極ホルダ本体と棒状保持部材に分割し、電極ホルダ本体に形成した連結用筒孔に棒状保持部材の先端を連結嵌合させて一体化するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の実用新案登録第3056331号の場合は、電極ホルダ本体の内部に、電極を冷却するための冷却通路を設けており、この冷却通路に前記連結用筒孔の位置が重なって棒状保持部材が冷却通路を塞ぐことのないよう、連結用筒孔の深さを浅くしているため、棒状保持部材と電極ホルダ本体の連結嵌合力が弱く、電極に高い加圧力をかけて溶接することが出来なかった。
【0004】
そこで本発明は、高い加圧力をかけて溶接することができ、しかも、削り出し加工のような手間と素材の無駄が生じないようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、アーム部材と軸部材が略L字型に接続される抵抗溶接用電極ホルダにおいて、前記アーム部材の先端部に電極保持用の保持孔を形成するとともに、基端側には少なくとも一部にテーパ部を有する嵌合孔を形成し、この嵌合孔に、前記軸部材先端のテーパ状の嵌合軸部を密着状に嵌合させて、前記電極保持孔に装着される電極に荷重が加わると嵌合軸部にモーメント荷重が作用するようにし、また、前記アーム部材の内部には、アーム部材の基端側端面から前記保持孔に向けて延出する冷却通路を、前記軸部材の嵌合軸部を貫通して形成し、前記嵌合軸部と嵌合孔のテーパ部同士が密着して水漏れが防止されるようにし、更に、前記軸部材を、圧入方向の反対側から捩じ込まれるネジ部材によってアーム部材に固定するようにした。
【0006】
このように軸部材とアーム部材に分割することにより、加工工数の削減や、材料の無駄防止を図ることが出来るが、この際、アーム部材の嵌合孔の少なくとも一部にテーパ部を設け、この嵌合孔に、軸部材先端のテーパ状の嵌合軸部を密着状に嵌合させ、しかも、嵌合軸部にも冷却通路を形成することにより嵌合孔を深くすることが出来るようになる。このため、アーム部材と軸部材の嵌合力を強力に高めることが出来、圧入嵌合部に高いモーメント荷重がかかっても、嵌合が外れるような不具合がない。
ここで、嵌合孔と嵌合軸部のテーパ部の角度としては、0.1〜10度程度の角度が好ましい。
【0007】
また、軸部材を、圧入方向の反対側から捩じ込まれるネジ部材によってアーム部材に固定することにより、軸部材に対して圧入側に向けて引張り力が作用するようになり、しっかりと固定出来る。
また、圧入嵌合部に対してモーメント荷重がかかる場合、圧入方向と直角方向からネジ止めすれば、ネジ部材に対して軸の直角方向に荷重がかかってネジが損傷しやすくなるが、圧入方向に沿ってネジ止めすれば、モーメント荷重がかかってもネジ軸と平行に荷重がかかるようになり、有効に支えることが出来る。
【0008】
また本発明では、前記アーム部材の嵌合孔として、入口側の所定長さ部分をストレート部とし、それより奥の部分をテーパ部とし、また、軸部材の嵌合軸部を、嵌合孔内に圧入するようにした。
【0009】
このように、入口側の所定長さ部分をストレート形状にし、それより奥の部分をテーパ形状にして圧入することにより、圧入嵌合部に大きなモーメント荷重がかかる場合でも、嵌合孔の入口付近の損傷を生じにくくすることが出来る。
すなわち、本発明等の実験により、嵌合孔のすべてをテーパ状にすると、圧入嵌合部に大きなモーメント荷重が加わった場合に、入口付近にクラック等が生じることがあったが、入口付近にストレート部を設けると、クラック等の発生が抑制されることが判明した。このため、嵌合孔の入口部分に所定長さのストレート部を設ける。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る電極ホルダが適用される抵抗溶接機の全体図、図2は本電極ホルダの側面図、図3は同平面図、図4は同後面図である。
【0011】
本発明に係る抵抗溶接用電極ホルダは、重ね合わせた被溶接部材を一対の電極で挟み付けて加圧通電することにより、居部的に溶接するような抵抗溶接において、電極を保持するL型の電極ホルダを効率的に加工できるようにし、また素材に無駄が生じないようにするとともに、高い加圧力をかけて溶接するできるようにされている。
まず、本発明の抵抗溶接用電極ホルダを説明する前に、本抵抗溶接用電極ホルダが適用される抵抗溶接機の概要について図1に基づき説明する。
この抵抗溶接機1は、本体2の上部アーム3にホーン4を介して取り付けられるストレートホルダ5と、下部アーム6にホーン7を介して取り付けられるL型ホルダ8を備えており、前記ストレートホルダ5には、上部電極10が取付けられるとともに、前記L型ホルダ8には、下部電極11が取付けられている。
【0012】
そして、重ね合わせられた不図示の被溶接部材が上部電極10と下部電極11の間に挿入されて位置決めされると、例えば上部電極10が昇降手段により降下して、被溶接部材を上部電極10と下部電極11で挟み付けて加圧し、通電してスポット溶接を行う。
【0013】
以上のような抵抗溶接機1において、本電極ホルダは下部電極11を保持するL型ホルダ8として適用されており、以下、その構造の細部について、図2乃至図4に基づき説明する。
【0014】
L型ホルダ8は、図2乃至図4に示すように、アーム部材12と軸部材13に分割されており、アーム部材12と軸部材13を接続することにより、L型形状になるようにしている。
そして本実施例の場合、アーム部材12の材料を黄銅(真鍮)とし、軸部材13の材料をクロム銅(CrCu)としている。
これは、溶接時に、上下の電極10、11で高圧をかけた場合、軸部材13に大きなモーメント荷重が作用するため、これを有効に支えることが出来るよう、軸部材13について強度の高い材質にしたものである。
【0015】
前記アーム部材12には、先端側上部に、下部電極11を嵌合せしめることの出来るテーパ状の電極保持孔14が形成されるとともに、基端側下面には、軸部材13を嵌合せしめることの出来る嵌合孔15が形成され、この嵌合孔15形成部分のアーム部材12の厚みは若干厚肉にされるとともに、アーム部材12の内部には、基端側端面から電極保持孔14に向けて冷却通路16が形成されている。そして、この冷却通路16の基端側開口端部には、冷却用接続部材24を接続するためのテーパ状ネジ孔17が形成され、また、前記嵌合孔15の上部には、嵌合孔15内に向けて開口するネジ穴18が形成されている。
【0016】
そして、前記嵌合孔15は、基端側の所定長さ部分sが直線的なストレート部とされ、それより奥の部分がテーパ部tとされ、本実施例では、嵌合孔15全体の深さ39mmに対し、ストレート部sの長さを5mm程度にしている。
また、前記テーパ部tのテーパ角度は、モールステーパ♯3の2°52′32″にしている。
【0017】
前記軸部材13には、先端部にテーパ状の嵌合軸部20が形成されており、この嵌合軸部20のテーパ角は、前記嵌合孔15のテーパ部tのテーパ角とほぼ同一にされるとともに、前記嵌合孔15にこの嵌合軸部20を密着状に嵌合させることが出来るようにされている。
また、この嵌合軸部20には、軸中心を直交方向に貫く冷却通路21が形成されており、冷却通路21の位相を合わせて嵌合軸部20を嵌合孔15内に圧入すると、アーム部材12の冷却通路16と、嵌合軸部20の冷却通路21が一直線に並んで連通するとともに、その周囲が密着して水漏れが生じないようにされている。
また、軸部材13の頂面には、ネジ孔22が形成されている。
【0018】
以上のようなアーム部材12と軸部材13は、嵌合軸部20を嵌合孔15に通常の状態で嵌合させた後、例えば0.1〜5mm程度分圧入され、その後、アーム部材12のネジ孔18から皿ネジ23を捩じ込むことにより、皿ネジ23の先端部を軸部材13の頂面のネジ孔22に捩じ込んで固定するようにしている。
このため、軸部材13には、圧入方向に向けて引張り込まれるような力が作用し、しっかりと固定される。
またこの際、軸部材13の頂面と、嵌合孔15の最深部との間には、余裕があって、若干のクリアランスが形成されるようにしている。
【0019】
そして、アーム部材12の基端部から冷却通路16内にポリテトラフルオロエチレン(商標名テフロン)チューブ25を挿入して冷却用接続部材24を接続し、電極保持孔14に下部電極11を装着すれば組み付けが完了する。
【0020】
そして、前述のように下部電極11と上部電極10により被溶接部材を挟み込んで加圧し通電することにより溶接を行うとともに、冷却用接続部材24の供給口側24xから冷却水を供給し、チューブ25内を通して下部電極11内を冷却した後、冷却済みの冷却水をチューブ25と冷却通路16の隙間を通して、冷却用接続部材24の排出口24yから排出する。
【0021】
そして、以上のような要領で溶接する時に、下部電極11と上部電極10により被溶接部材に高い加圧力をかけて、圧入嵌合部に高いモーメント荷重がかかる場合でも、アーム部材12と軸部材13の結合は確実に維持され、実験では、650kgの加圧力でも異常がなかった。
【0022】
また、前記のように、アーム部材12の嵌合孔15のストレート部sを無くして、すべてテーパ部tにした場合、加圧力が高くなると、嵌合孔15の開口部付近にクラック等が発生して破損が生じやすかったが、ストレート部sを形成することにより、このような不具合が防止された。
【0023】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えばアーム部材12と軸部材13の材質等は任意であり、例えばアルミニウムや、純銅や、ベリリウム銅や、その他の銅合金や非鉄金属等が適用可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る抵抗溶接用電極ホルダは、アーム部材と軸部材が略L字型に接続される抵抗溶接用電極ホルダにおいて、アーム部材の基端側に、少なくとも一部にテーパ部を有する嵌合孔を形成し、この嵌合孔に軸部材先端のテーパ状の嵌合軸部を密着状に嵌合させ、また、アーム部材の基端側端面から延出する冷却通路を、軸部材の嵌合軸部を貫通して形成するようにしたため、嵌合孔を深くすることが出来て、アーム部材と軸部材の嵌合力を強力に高めることが出来る。また、分割することにより、加工工数の削減や、材料の無駄防止を図ることも出来た。
【0025】
また、軸部材を、圧入方向の反対側から捩じ込まれるネジ部材によってアーム部材に固定すれば、しっかりと固定出来、しかも高いモーメント荷重がかかっても安定した状態で支えることが出来る。
この際、アーム部材の嵌合孔として、入口側の所定長さ部分をストレート部とし、それより奥の部分をテーパ部とすれば、嵌合部に高いモーメント荷重がかかっても破損等が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電極ホルダが適用される抵抗溶接機の全体図
【図2】本電極ホルダの側面図
【図3】同平面図
【図4】同後面図
【符号の説明】
1…抵抗溶接機、8…L型ホルダ、11…下部電極、12…アーム部材、13…軸部材、14…電極保持孔、15…嵌合孔、16…冷却通路、20…嵌合軸部、21…冷却通路、23…皿ネジ、s…ストレート部、t…テーパ部。

Claims (2)

  1. アーム部材と軸部材が略L字型に接続される抵抗溶接用電極ホルダであって、前記アーム部材の先端部には電極保持用の保持孔が形成されるとともに、基端側には少なくとも一部にテーパ部を有する嵌合孔が形成され、この嵌合孔に、前記軸部材先端のテーパ状の嵌合軸部が密着状に嵌合して、前記電極保持孔に装着される電極に荷重が加わると嵌合軸部にモーメント荷重が作用するようにされ、また、前記アーム部材の内部には、アーム部材の基端側端面から前記保持孔に向けて延出する冷却通路が、前記軸部材の嵌合軸部を貫通して形成され、前記嵌合軸部と嵌合孔のテーパ部同士が密着して水漏れを防止するようにされ、更に、前記軸部材は、圧入方向の反対側から捩じ込まれるネジ部材によってアーム部材に固定されることを特徴とする抵抗溶接用電極ホルダ。
  2. 前記アーム部材の嵌合孔は、入口側の所定長さ部分がストレート部であり、それより奥の部分がテーパ部にされ、また、前記軸部材の嵌合軸部は、前記嵌合孔内に圧入されることを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接用電極ホルダ。
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