JP3855765B2 - 直流ブラシレスモータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流ブラシレスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の装置として特開2000−217283に記載されているものがある。このモータの固定子はm個のティース部と各ティース部を半径方向外側で一体的に連結する円環状のコアバック部を有する板状部材を、ティース数mより小さいn個に分割した板状部材をコアバック部の周方向に沿ってコアバック全周分並べて積層して形成される。積層されたティース部には、ティース部を励磁するためのコイルが巻き回されて固定子が構成される。
【0003】
このモータの固定子では、製造工程において隣接するティース部の限られた空間内で機械によりコイルを巻き回すためコイルの巻きに乱れが生じる。その結果、巻かれたコイルの厚みが増加し、コイルの厚みのためにモータを薄く構成することは困難であった。コイルの厚みを減らす方法として、ティース部に直接コイルを巻き回す代わりに、ボビンを使用する手段がある。つまり、固定子とは別体の円筒状のボビンにコイルを整列巻きして、ティース部をボビン内周に挿通する状態で嵌合するものである。しかし、従来の固定子のティース部では、嵌合したボビンがティース部から脱落しないようにティース部に止め具を取り付ける等固定方法が煩雑であった。また、隣接するティース部間に隙間が生じる。モータ作動時にこの隙間近傍ではティース部と回転子間の吸引・反発作用が弱くなるため、モータのトルクにムラが生じる可能性があった。
【0004】
ところで、近年、モータにより駆動されるアクチュエータの小型化が求められてきた。これに伴い、モータも小型で薄型のものが開発されてきたが、回転子の周囲を囲み磁気回路を形成する固定子の形状と外寸、固定子を励磁するコイルの厚みにおいてさらなる改善が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
コギングトルクを低減した、薄型で細長い略直方体の直流ブラシレスモータを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した技術的課題を解決するために講じた第1の技術的手段は請求項1に示すように、略円柱状の永久磁石を備える回転子と、該回転子外周面と所定間隔を保ちつつ前記回転子外周面に沿って環状に前記回転子を囲む略円筒状の環状部と該環状部に一体に設けられ外側へ延びる棒状の複数の磁気の通路となる突設部及び、前記突設部の先端に一体的に連結され磁気の通路を繋ぐ1個以上の連結部からなる固定子と、通電により前記突設部を励磁するコイルとを備えた直流ブラシレスモータであって、前記環状部から分岐した複数の前記突設部は前記回転子径方向のうちの一方向に対して略平行になるよう配設され、前記一方向に対し垂直な平面による断面において、該断面内の直交する2方向の長さに関し前記突設部の前記環状部側端部の断面を前記連結部側端部の断面に較べて大きくすることで、前記環状部側端部の断面積を前記連結部側端部の断面積より大きくし、前記環状部側端部と前記連結部側端部の間で前記2方向の長さを徐変させることで、前記突設部はそれぞれ略円錐台形状若しくは略角錐形状の何れか一形状をなす部分を有し、前記連結部は前記突設部それぞれに対して前記連結部内部の磁気回路を変更する非磁性体からなる磁気回路変更部材を備え、前記コイルは前記突設部外周に嵌合された筒状のボビンに整列巻きされたコイルであることを特徴とする直流ブラシレスモータを構成したことである。
【0007】
上記の構成によれば、固定子の突設部外周に嵌合されたボビンに整列巻きされたコイルを電子整流回路等で所定時期に所定方向へ通電することで、通電されたコイルにより発生された磁界により突設部内に磁束が流れ、突設部が連結された環状部と回転子に設けられた永久磁石の間の吸引又は反発により、固定子の環状部内周に遊嵌された回転子は回転する。
【0008】
一般的な直流ブラシレスモータでは、突設部に直接コイルを機械巻きするため、隣接する突設部の回転子側の先端部間に隙間が形成されている。この隙間部分では突設部と回転子の吸引・反発作用が急激に弱くなるため、モータのトルクのムラ、いわゆるコギングトルクが発生する。本発明の直流ブラシレスモータの固定子は回転子に磁束を流す部分を一体に繋がった環状部としたことで上述の隙間に起因するコギングトルクなくすことができる。また、環状部に磁束を送る突設部の断面形状を環状部に繋がる部分で大きく取っているため、突設部から環状部へ磁束は流れ込み易く、また、環状部から突設部への磁束を集め易くしている。また、回転子と固定子間の磁束の流れは立体的・空間的な拡がりを持つものであるが、本発明における突設部は断面形状を直交する2方向に変化させることで突設部を環状部側端部において3次元的に拡げて磁束の流れの拡がりに固定子の形状を合わせることが可能になり、環状部及び突設部の磁気抵抗を減少させることができる。一方、突設部を連結部側端部において3次元的に絞った形状にしたことにより連結部に流す磁束を効果的に整流することができる。以上のように固定子の形状を3次元的に変化させることで、モータ内の限られた空間内でより効果的に磁束を流すことができる固定子を構成することができる。
【0009】
以上の固定子を回転子径方向のうちの一方向において縮小した形状にすることで、薄型の一方向に長く前記一方向に垂直な方向には短い、横長のモータ(以下、横長のモータ)を構成することが可能になる。
【0010】
しかし、上記固定子の形状の変更に伴い、前記一方向とは異なる方向に延びていた突設部の長さに差が生じる。即ち、隣接する突設部の長さが違ってくる。長い突設部は短い突設部と較べて磁気抵抗が大きくなるため、突設部を介して回転子、環状部及び連結部を通る磁束に差が生じ、コギングトルクが生じる可能性があった。この突設部間の磁気抵抗の差を解消するためには、本発明における直流ブラシレスモータの固定子では連結部は複数の突設部を連結し、回転子、環状部及び突設部を通って流れる磁束の流路、いわゆる磁気回路を内部に幾つも通している。この連結部内に磁気回路変更部材を配設することにより、複数の突設部のそれぞれを通ってくる磁束に対して連結部内で異なる磁気回路を割り振る。即ち、磁気抵抗の大きい長い突設部を通ってきた磁束には流れやすい磁気回路を、磁気抵抗の小さい短い突設部を通って来た磁束には流れにくい磁気回路を割り当てることで、突設部の長短による磁気抵抗の差を解消している。
【0011】
これにより、突設部の形状の設定に自由度を持たせることができ、直流ブラシレスモータ全体の形状の変更が容易になる。
【0012】
また、固定子を励磁するコイルを線積率の高いボビンに整列巻きしたコイルとしたことで、コイルの巻き数を減らさず固定子外周のコイルの厚みを抑えることができる。また、固定子へのコイルの配設は、環状部及び突設部と連結部を別体としておけば、予めコイルを巻きまわしたボビンを突設部に嵌合後、突設部と連結部を連結するだけででき、さらに本発明の直流ブラシレスモータの固定子の突設部は平行に配設されていることからボビンを一方向から突設部に嵌合できるため、生産性の高い直流ブラシレスモータを構成することができる。
【0013】
さらに、このモータを備えるアクチュエータは、モータが薄型であることから、アクチュエータ全体のモータ厚み方向の寸法を抑えることができるのは勿論、横長の形状を生かして減速ギヤ等の内部の部品を従来の円筒型のモータを備えた場合とは異なる配置とすることができ、これによりアクチュエータ自体をより小型にすることが可能になる。
【0014】
より好ましくは請求項2に示すように、前記磁気回路変更部材は前記連結部内部に挿入された非磁性体からなる板状部材であることを特徴とする、請求項1に記載の直流ブラシレスモータを構成したことである。
【0015】
上記の構成によれば、磁束を通しにくい非磁性体の板状部材を連結部の所定の位置に配設することで、連結部内を通る磁気回路の分岐、偏向、制限等をすることができる。
【0016】
さらに、請求項3に示すように、前記ボビンは前記突設部外周面に沿う略円錐台状若しくは略角錐台形状のうち何れか一形状の筒状の非磁性体からなり、前記ボビンは前記略円錐台形状又は前記略角錐台形状の中心軸に交わる平面から構成されるフランジ部を両端部に備え、前記フランジ部は互いに同じ形状で且つ同じ大きさであることを特徴とする、請求項1に記載の直流ブラシレスモータとするとよい。
【0017】
上記の構成によれば、略円錐台状若しくは略角錐台形状のボビンの外径が小さい部分と大きい部分があり、外径の小さい部分ではコイルの巻き数を減らして巻き回されたコイルの厚み又は高さを抑え、外径の大きい部分では巻き数を増やすようにコイルを巻く。両端に備えたフランジ部により、ボビン全体にわたって両端のフランジ高までコイルを巻き回す。
【0018】
このように、突設部の形状に沿った形状の上述のボビンを採用することで、コイルの巻き数を増やすことができ、コイルの発生する磁束は巻き数に比例して増加するため、トルクの大きい直流ブラシレスモータを構成することができる
さらに、請求項4に示すように、前記環状部及び突設部は磁性体を含む粉体を型成形した粉体成形部材であることを特徴とする、請求項1に記載の直流ブラシレスモータとするとよい。
【0019】
上記の構成によれば、成形型の設計により環状部及び突設部を3次元的に起伏する形状とすることが容易であり、また環状部及び突設部を製造する工程時間を短縮することができる。
【0020】
さらに、請求項5に示すように、前記連結部は磁性体を含む粉体を型成形した粉体成形部材であることを特徴とする、請求項1乃至2項のうち何れか1項に記載の直流ブラシレスモータとするとよい。
【0021】
上記の構成によれば、成形型の設計により、非磁性体からなる板状部材が嵌合される孔等を有する形状とすることが容易であり、連結部を製造する工程時間を短縮することができる。また、一例として、非磁性体からなる板状部材を成形型内に予め挿入しておいて粉体成形する、いわゆるインサート成形も可能になり、これによりさらに工程時間を短縮することができる。また、突設部先端を連結部に嵌合する構成とした場合、連結部側での嵌め合い寸法の調整が容易になり、連結部、引いては直流ブラシレスモータの生産性が向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態であるモータの構成を添付した図1乃至4に基づいて以下に説明する。
【0023】
図1及び2に示すように、本発明の実施形態である直流ブラシレスモータは主に、モータ出力軸12に同軸的に配設された略円筒状の磁性体(鉄製)の回転子1と、回転子1の外周面外側に所定隙間を保ちつつ取り囲むように配置された磁性体(鉄製)の固定子2と、固定子2を励磁するコイルである角線3が整列巻きされた非磁性体(樹脂製)のボビン4a乃至4fから構成される。さらに、図1に示すように上記モータは回転子1及び固定子2の下方側に非磁性体(アルミ製)のモータカバー5を、回転子の下方側に鉄製の回転子支持軸6を備える。
【0024】
回転子1は、略円筒形状の鉄製の中実部材である回転子本体11と、上底部に図1上下方向に延びるモータ出力軸12を備える。回転子本体11の外周部には円筒状の永久磁石15が嵌合されている。下底部には円環状のベアリング13が嵌合され、ベアリング13の内周部には支持軸6が嵌合されている。支持軸6はモータカバー5を厚さ方向に形成された貫通孔16に圧入嵌合されている。以上の構成により回転子1はベアリング13を介して、支持軸6及びモータカバー5に回転可能に支持されている。
【0025】
回転子1の外周外側には、図1及び2に示すように固定子2の略円筒状の環状部21所定隙間を取って回転子1を取り囲むように配置されている。環状部21の外周部からは周方向に略等間隔に突設部22、23、24、25、26及び27が一体的に結合している。突設部22乃至27の環状部21との前記結合部から先端の部分は図2(a)には図示しない回転子1径方向のうちの一方向(図2(a)の左右方向)に平行になるように、突設部22、23、25及び26は曲がった形状をなして配設されている。突設部22乃至27はそれぞれ環状部21側に広がる略円錐状、正確には不等辺八角錐台形状の部分28、29、30、31、32及び33を有している。これらの部分の外形及び寸法は略同じである。この不等辺八角錐台形状の部分28、29、30、31、32及び33の外径を絞った側のそれぞれの先端部には略円筒状の挿通部34、35、36、37、38及び39が一体的に形成されている。また、環状部21と突設部22との結合部と環状部21と突設部23との結合部の間で且つ環状部21外周部近傍には板状部分40が設けられている。この板状部分には貫通孔41が形成されている。同様に、環状部21と突設部25との結合部と環状部21と突設部26との結合部の間で且つ環状部21外周部近傍には板状部分42が設けられ、板状部分42には貫通孔43が形成されている。以上説明した環状部21、突設部22乃至27及びこれらに含まれる不等辺八角錐台形状の部分28乃至33、挿通部34乃至39は磁性体である磁性鉄粉とバインダである樹脂との混合粉体を型成形後に加熱して得られる。
【0026】
図2(a)に示すように突設部22乃至27の不等辺八角錐台形状の部分28、29、30、31、32及び33の外周にそれぞれボビン4a、4b、4c、4d、4e及び4fが嵌合される。(図2(a)では見易さのためボビン4a乃至4eは図示していない)図2(a)及び図2(b)に示すように、ボビン4a乃至4fのそれぞれの筒状部44は不等辺八角錐台形状の部分28乃至33の外形に沿ったテーパ形状の径方向に潰れた円筒形状をなしている。筒状部44の両端には、不等辺八角錐台形状部分に嵌められた状態で環状部21側にフランジ部45、挿通部側にフランジ部46が一体に形成されている。フランジ部45、46は略同じ形状と寸法を有し、筒状部44の軸方向に垂直な板状部分である。ボビン4a乃至4fの長さは不等辺八角錐台形状の部分28乃至33の前記一方向(図2(a)左右方向)の長さと略同じである。また、ボビン4a乃至4fの内周部47の内径は不等辺八角錐台形状の部分28乃至33の外径より若干大きく設定され、ボビンが突設部にスムーズに嵌合され且つ、ボビンが突設部上でがたつくことがないようになっている。以上述べた筒状部44及びフランジ部45、46から構成されるボビン4a乃至4fは絶縁体である樹脂の一体成形品である。
【0027】
図1及び2に示すように、ボビン4a乃至4fのフランジ45、46間の筒状部44外周には断面形状が正方形である角線3(角線コイル)整列巻きされている。角線3を整列巻きしたボビン4は、通常の円断面のコイルを巻いた場合に比較して線積率が高く、巻き数の割に巻きまわしたコイルの厚みが抑えられているため、ボビン4a乃至4fの径方向のコイルの高さ、即ちコイルの厚みは比較的小さくなっている。
【0028】
突設部22乃至27に角線3を巻き回したボビン4a乃至4fを嵌合後、環状部21及びこれと一体に形成された突設部22乃至27を連結部48(図1,2),49(図1)に嵌合する。連結部48には嵌合孔50、51及び52が形成されている。嵌合孔50乃至52の内径は、これらに嵌合される突設部22、27、26との間にがたつきがないように設定されている。また、嵌合孔50、51及び52の周縁には突設部22、27及び26が連結部48に連結された時、連結部48の突設部22、27及び26と対向する面と突設部22、27及び26の外周面とが滑らかに繋がるようにR形状を有した台状の周縁部53、54及び56が形成されている。突設部22、27及び26が連結部48に形状的に滑らかに繋がることで、突設部及び連結部の間の磁気抵抗が低減される構成となっている。
【0029】
さらに、連結部48は内部には非磁性体である銅板56、57が配設されている。銅板56、57は前記一方向(図2(a)左右方向)において連結部48を貫通する長さとなっている。また、前記一方向に垂直な連結部48長手方向においては銅板56、57は嵌合孔50,52より若干内側までの長さとなっており、長手方向に平行に配設されている。連結部48も磁性体である磁性鉄粉とバインダである樹脂との混合粉体を型成形後に加熱して得られる。連結部48に予め嵌合孔を形成しておいて銅板56、57を挿入してもよいが、成形型内に銅板56、57を挿入しておいて粉体成形する、いわゆるインサート成形で成形してもよい。
【0030】
連結部49に関しては連結部48と同じ構成であるため構成の説明については省略する。
【0031】
以上述べた部材を全て組み上げた状態を図5(但し、減速ギヤ等(後出)は除く)に、その断面を図1に示す。
【0032】
次に本発明の実施の形態である直流ブラシレスモータの固定子2の作用を添付した図3乃至4に基づいて以下に説明する。
【0033】
固定子2の突設部22乃至27の外周に嵌合されたボビン4a乃至4fに整列巻きされた角線3を図示しない電子整流回路等によって所定時期に所定方向へ通電することで、通電された角線3が発生する磁界により突設部22乃至27内にそれぞれ所定の磁束が流れ、突設部22乃至27が連結された環状部21と回転子1に設けられた永久磁石の間の吸引又は反発により、固定子2の環状部21内周に遊嵌された回転子1は回転する。
【0034】
以下に、本発明特有の作用を説明する。
【0035】
図3(a)は作動中の本実施形態である直流ブラシレスモータにおける、ある時点の磁気回路の概略を示す。前記時点で、回転子1及び回転子1外周部に配設された永久磁石が図3(a)に示す位置にあり、図示しない電子整流回路等によってボビン4a乃至4fに巻き回された角線3はそれぞれ所定方向に通電され、環状部21の突設部22、23、24、25、26及び27との結合部近傍がそれぞれS極、S極、N極、S極、S極、及びN極になっているとする。(この状態で、環状部21の突設部24、及び27との結合部近傍が回転子1の永久磁石と強い反発及び吸引作用をして回転子1を図3(a)に示す反時計周り方向への回転トルクを発生させている。)
この時、回転子1の永久磁石のN極はS極となっている突設部22に吸引され、図3(a)に示すように永久磁石のN極からの大部分の磁束は突設部22へ流れる。突設部22に流れ込んだ磁束は磁性体である突設部22を通り抜け連結部48内部を通り突設部26を通って永久磁石のS極に流れる磁気回路を形成する。
【0036】
ところで、図4(a)に示す別の時点では、回転子1及び回転子1外周部に配設された永久磁石が図4(a)に示す位置にあり、図示しない電子整流回路等によって環状部21の突設部22、23、24、25、26及び27との結合部近傍がそれぞれS極、N極、N極、S極、N極、及びN極になっているとする。(この状態で、環状部21の突設部22、及び25との結合部近傍が回転子1の永久磁石と強い反発及び吸引作用をして回転子1を図3(a)に示す反時計周り方向への回転トルクを発生させている。)
この時、回転子1の永久磁石のN極はS極となっている突設部27に吸引され、図4(a)に示すように永久磁石のN極からの大部分の磁束は突設部27へ流れる。突設部27に流れ込んだ磁束は突設部27を通り抜け連結部48内部を通り突設部26を通って永久磁石のS極に流れる磁気回路を形成する。
【0037】
図3(a)と図4(a)を比較することで容易に分かるように、本発明における直流ブラシレスモータでは固定子2の突設部を回転子1の軸に対して対称な形状とせず、固定子2の突設部を回転子1の径方向のうち一方向(図3(a)、4の左右方向)に平行に配向させたため、その結果長くなった突設部22、23、25及び26間では磁束は流れにくく、そうでない突設部24及び27を通り隣接する突設部への磁束は逆に流れやすくなる傾向が生じる。この磁束の流れの差(磁気抵抗の差)を解消するため、連結部48内部に配設された銅板56、57が以下の作用する。
【0038】
磁束が流れ易い、例えば短い方の突設部27から隣接する突設部26への磁気回路については、図4(b)に示す連結部48側面図に示すように銅板56、57の間のみに制限し意図的に磁気抵抗を増すようにしている。
【0039】
これとは逆に磁束が流れにくい、例えば長い突設部22から26への磁気回路の場合は、図3(b)に示す連結部48側面図に示すように銅板56、57の間及び両外側に磁気回路ができるようにして磁気抵抗を図4(b)の場合に対して相対的に低下させている。この連結部48内部の銅板56、57による磁気抵抗の調整により、突設部の長短による磁束の流れのばらつきが解消される。
【0040】
以上述べた連結部の作用により、突設部22乃至27の長短の差による磁気抵抗の差が解消されたことで、直流ブラシレスモータの性能を低下させることなく、固定子2の突設部22乃至27を回転子1の軸に対して対称な形状とせず、固定子2の突設部を回転子1の径方向のうち一方向に平行に配向させることができ、固定子2全体を前記一方向に長い形状とすることができる。
【0041】
この固定子2の形状の変更により、本発明における直流ブラシレスモータは薄型で細長い略直方体形状にできる。図5にアクチュエータに本発明における直流ブラシレスモータを使用する場合における減速ギヤ等との配置関係の一例を示す。
【0042】
通常、回転子1と一体に設けられている、直流ブラシレスモータの出力軸12と減速ギヤ58を噛み合わせて、出力軸59から減速した回転を出力する場合、減速ギヤ58の出力軸59は直流ブラシレスモータの出力軸12と同じ方向(図5では上方向)となる。本発明における直流ブラシレスモータは薄型であるため、この配置でも直流ブラシレスモータ及び減速ギヤ58等全体の高さを抑えることはできる。
【0043】
しかし、本発明の直流ブラシレスモータは薄型で細長い略直方体形状であるため、図5に示すように、減速ギヤ58の出力軸59を直流ブラシレスモータの幅の狭い方向に位置する側面に近接させて配置でき、回転子1の出力軸12と減速ギヤ58の出力軸59を逆方向に配設することもできる。これにより、直流ブラシレスモータ及び減速ギヤ58等全体の高さをさらに低く抑えることが可能になる。
【0044】
この本発明の直流ブラシレスモータ特有の配置もアクチュエータ全体に小型化に効果がある。
【0045】
また、図1、2及び5に示すように、この直流ブラシレスモータの幅の狭い方向に位置する側面に近接して一体に設けられた板状部分40に形成された貫通孔41に挿通する図示しないボルトより、直流ブラシレスモータはモータカバー5に固定される。貫通孔42についても同様である。モータの回転中心に近い位置で固定子2をモータカバー5に固定できるため、回転子1と固定子2の環状部21の同軸度を容易に確保することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては連結部48内部の磁気抵抗の調整を銅板で行ったが、銅板に限らず他の非磁性体、例えば樹脂、空気(連結部48に貫通孔を設ける)等であってもよい。
【0047】
また、非磁性体からなる板状部材の数、形状、連結部48内部での固定方法等は上記実施形態に限定されるものではない。さらに、本発明における、固定子内の磁気回路を変更する部材は必ずしも板状部材である必要はなく、例えば棒状、管状、球状等固定子特に連結部の形状に合わせて様々な形状を取り得る。
【0048】
従って、固定子が回転子の軸に対して軸対称でない形状を有し、これによって固定子内を流れる磁束を調整するために固定子内部に非磁性体の部材を備えるものは全て本発明の範疇に属する。
【0049】
【発明の効果】
本発明により、コギングトルクを低減した、薄型で細長い略直方体の直流ブラシレスモータを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である直流ブラシレスモータの断面を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である直流ブラシレスモータの固定子2及びボビン4fの概略を示す斜視図である。
【図3】直流ブラシレスモータの固定子2内の磁気回路を示す概略図である。
【図4】直流ブラシレスモータの固定子2内の磁気回路を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態である直流ブラシレスモータと減速ギヤの配置例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 回転子
2 固定子
3 角線
5,6 銅板
4a〜4f ボビン
21 環状部
22〜27 突設部
48、49 連結部

Claims (5)

  1. 略円柱状の永久磁石を備える回転子と、
    該回転子外周面と所定間隔を保ちつつ前記回転子外周面に沿って環状に前記回転子を囲む略円筒状の環状部と該環状部に一体に設けられ外側へ延びる棒状の複数の磁気の通路となる突設部及び、前記突設部の先端に一体的に連結され磁気の通路を繋ぐ1個以上の連結部からなる固定子と、
    通電により前記突設部を励磁するコイルとを備えた直流ブラシレスモータであって、
    前記環状部から分岐した複数の前記突設部は前記回転子径方向のうちの一方向に対して略平行になるよう配設され、前記一方向に対し垂直な平面による断面において、該断面内の直交する2方向の長さに関し前記突設部の前記環状部側端部の断面を前記連結部側端部の断面に較べて大きくすることで、前記環状部側端部の断面積を前記連結部側端部の断面積より大きくし、前記環状部側端部と前記連結部側端部の間で前記2方向の長さを徐変させることで、前記突設部はそれぞれ略円錐台形状若しくは略角錐形状の何れか一形状をなす部分を有し、
    前記連結部は前記突設部それぞれに対して前記連結部内部の磁気回路を変更する非磁性体からなる磁気回路変更部材を備え、
    前記コイルは前記突設部外周に嵌合された筒状のボビンに整列巻きされたコイルであることを特徴とする直流ブラシレスモータ。
  2. 前記磁気回路変更部材は前記連結部内部に挿入された非磁性体からなる板状部材であることを特徴とする、請求項1に記載の直流ブラシレスモータ。
  3. 前記ボビンは前記突設部外周面に沿う略円錐台状若しくは略角錐台形状のうち何れか一形状の筒状の非磁性体からなり、前記ボビンは前記略円錐台形状又は前記略角錐台形状の中心軸に交わる平面から構成されるフランジ部を両端部に備え、前記フランジ部は互いに同じ形状で且つ同じ大きさであることを特徴とする、請求項1に記載の直流ブラシレスモータ。
  4. 前記環状部及び突設部は磁性体を含む粉体を型成形した粉体成形部材であることを特徴とする、請求項1に記載の直流ブラシレスモータ。
  5. 前記連結部は磁性体を含む粉体を型成形した粉体成形部材であることを特徴とする、請求項1乃至2項のうち何れか1項に記載の直流ブラシレスモータ。
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