JP3855562B2 - 弾性舗装材及び弾性舗装構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般道路等の舗装に用いられる弾性舗装材及び弾性舗装構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の弾性舗装用の舗装材としては、例えば特許第2789805号公報に示すように、自動車の廃棄タイヤ等のゴム製品を粉砕したゴムチップ等の弾性骨材に、ウレタン、エポキシ等のバインダーを混合し成形したものが知られている。この舗装材は、ゴム材を用いていることにより、通常のアスファルト舗装に比べて弾性があり、また、数10%の空隙率を有することにより、排水性(透水性)が得られると共に、かかる空隙によりタイヤから発生するエアーポンピング音を抑制すると共に、走行する車両から伝播する特定の周波数の音を吸収でき、さらにタイヤと路面との接触時の衝撃によって発生するタイヤ衝撃音やパターン加振音も低減できるため、交通騒音の大幅な低減が可能になる、といった優れた特性を備えている。
【0003】
ところで、上記弾性舗装材は、路面が乾燥しているときには、車両のタイヤ表面と路面との分子レベルの吸着力すなわち凝着力と、ゴムが変形した後に復元する際に起こるヒステリシス損失による摩擦力が働き、十分にすべり摩擦係数が大きくなるが、舗装材が降雨等により濡れた状態では、水膜の形成により凝着力がほとんどゼロになるため、ヒステリシス損失による摩擦力のみとなり、すべり摩擦係数は非常に小さくなる。さらに、降雨時に、舗装材内部の水がすべて排水されず、自動車走行時の荷重により、弾性路面がたわみ、タイヤの周りに水が浮き出てくるため、制動時のすべり摩擦係数が一層低下することになる。その為、降雨の際に自動車の制動時の制動距離が伸びるという問題がある。これに対し、排水性を改良するため舗装材の空隙率を大幅に高くすると、排水性弾性舗装材の剛性が低下し、走行時の安定感が損なわれることになる。
【0004】
従来のコンクリートやアスファルト舗装の場合、降雨等により路面に水膜が形成されたときは、自動車のタイヤに形成されたトレッドのエッジ効果により水膜を破って路面を露出させることにより、タイヤの路面に対する凝着力を回復させることができるが、上記弾性舗装材の場合は、ゴムチップを用いたものであるため、コンクリート等に比べて柔らかく、タイヤトレッドのエッジ効果が小さくなり水膜を破るには至らないのである。そのため、弾性舗装材では、降雨等によるウエット時のすべり摩擦係数を向上させると共にその排水性も高める必要がある。
【0005】
アスファルト舗装の場合、濡れた路面上でのすべり摩擦係数は、速度と共に低下する傾向にあり、時速70kmでは0.3程度であるが、さらに高い値が求められている。ゴムチップを用いた弾性舗装材は、20km/h以上で約0.25前後で一定になる傾向がある。ちなみに、日本道路協会が道路の維持修繕の目安として認定している目標値は、自動車専用道路が80km/hで0.25、交通量の多い一般道路が60km/hで0.25となっている。したがって、弾性舗装材においても、ウエット時におけるすべり摩擦係数を0.3以上にすることが必要になる。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決しようとするもので、濡れた路面上でのすべり摩擦係数が0.4以上でかつ排水性の良好な弾性舗装材及び弾性舗装構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するために、上記請求項1に係る発明の構成上の特徴は、弾性骨材とバインダーとが混合され、道路の路盤に敷設されて弾性舗装を形成する舗装材であって、表面硬度が異なる少なくとも2種類の領域が混在しており、少なくとも表面硬度が高い領域には、弾性骨材とバインダーに、さらに第3成分として、硬さがJIS A基準で90以上、平均粒径が0.01〜2.5mm、及び配合量が全配合量に対して5〜35重量%の3条件を満たしている硬質骨材が混合されており、表面硬度が互いに異なる領域における表面硬度の差が、アスカー(CS)硬度計の計測値で10ポイント以上であることにある。ここで、弾性骨材としては、天然ゴム,合成ゴム等のゴム材料の他に、熱可塑性エラストマー、発泡ポリウレタン等の弾性を有する合成樹脂材料が用いられるが、資源再利用の観点から廃タイヤより作製されるゴムチップが好適に利用される。また、バインダーについては、減衰係数tanδの極大値温度の少なくとも1つが10℃以上であるウレタン系が望ましいが、その他エポキシ系バインダー等特に限定しない。さらに、第3成分としては、無機材料として珪砂、砂、シリカ、ムライト、ガラス等、有機材料としてナイロン、ウレタン等の樹脂材料を用いることができる。
【0008】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、弾性舗装材に表面硬度が異なる2種類以上の領域が混在していることにより、車輪の触れる部分によって硬度が異なるため、車輪の通過によって路面に凹凸が生じ、かかる表面の凹凸に車輪が引っかかる状態となり、そのために路面のすべり摩擦係数が相対的に高められる。また、道路表面の凹凸に車輪が引っかかることにより、舗装材に含まれる水分を路盤側に向けて押し出すスクイーズ効果(押し出し効果)が得られて、舗装材に含まれた水分を路盤側に押出すことになり、舗装材に含まれる水分の路面への浮き出しを抑制できる。その結果、請求項1の発明によれば、ウエット時における弾性舗装のすべり摩擦係数を高めることができると共に、すべり摩擦係数の変曲点を高速度側にシフトでき、騒音吸収性及び排水性を確保しつつ、ウエット時での車両の制動を、乾燥した路面での車両の制動に近づけることができる。さらに、排水性が高められることにより、ウエット時での車両の走行安定性を確保できる。さらに、請求項1の発明においては、弾性骨材とバインダーに、さらに第3成分を加えることにより舗装材の硬度を容易に高めることができ、本発明の効果を確実に得ることができる。
【0009】
また、請求項1の発明においては、表面硬度が互いに異なる領域における表面硬度の差を、アスカー(CS)硬度計の計測値で10ポイント以上にすることにより、上記発明の効果を確実に得ることができる。表面硬度の差が10ポイント以上であることは、最大硬度と最小硬度の差が10ポイント以上であることである。
【0010】
また、上記請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記請求項1に記載の弾性舗装材において、表面硬度が互いに異なる領域の内の、表面硬度の高い領域の単一部分の表面積が、舗装材の表面積1m2当りで4〜4200cm2であり、かつ表面硬度の高い領域全体の表面積が舗装材の全表面積に対して30%以上であることにある。このように表面硬度の高い領域の表面積を規定することにより、請求項1に記載の発明の効果を確実に得ることができる。
【0011】
また、上記請求項3に係る発明の構成上の特徴は、前記請求項1又は請求項2に記載の弾性舗装材において、舗装材の路盤との接触面側に排水溝を設けたことにある。
【0012】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、舗装材の路盤との接触面側に排水溝を設けたことにより、降雨時等に、舗装材に吸収された水の排水が排水溝によって効率よく行なわれ、車両の走行時に舗装材からの水の浮き出しを一層効果的に抑えることができる。その結果、請求項1、請求項2の発明の効果に加えて、ウエット時の路面のすべり摩擦係数の低下をさらに抑えることができ、ハイドロプレーニング現象を抑えることができる。また、排水が円滑に行なわれることにより、舗装材の強度及び路盤との接着強度の低下を抑えることができる。
【0013】
また、上記請求項4に係る発明の構成上の特徴は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の舗装材を道路の路盤に敷設して形成された弾性舗装構造であって、舗装材と接触する路盤の舗装材との接触面に排水溝を設けたことにある。
【0014】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、路盤の舗装材との接触面側に排水溝を設けたことにより、降雨時等に、舗装材に吸収された水の排水が路盤に設けた排水溝によって効率よく行なわれ、車両の走行時に舗装材からの水の浮き出しを一層効果的に抑えることができる。その結果、請求項1から請求項3の発明の効果に加えて、ウエット時の路面のすべり摩擦係数の低下を抑えることができ、ハイドロプレーニング現象を抑えることができる。また、排水が円滑に行なわれることにより、舗装材の強度及び路盤との接着強度の低下を抑えることができる。
【0015】
また、上記請求項5に係る発明の構成上の特徴は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の舗装材を道路の路盤に敷設して形成された弾性舗装構造であって、路盤が排水性を有することにある。
【0016】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、舗装材が敷設された路盤が排水性を有する例えば発泡コンクリート等により形成されていることにより、降雨時等に、舗装材に吸収された水が路盤によって効率よく吸収処理されるため、車両の走行時に舗装材からの水の浮き出しを一層効果的に抑えることができる。その結果、請求項1から請求項3の発明の効果に加えて、ウエット時の路面のすべり摩擦係数の低下を抑えることができ、ハイドロプレーニング現象を抑えることができる。また、排水が円滑に行なわれることにより、舗装材の強度及び路盤との接着強度の低下を抑えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明すると、図1及び図2は、一実施形態である自動車走行用の道路の路盤に敷設される弾性舗装材(以下、舗装材と記す)をそれぞれ斜視図及び平面図により示し、図4及び図5はその舗装材を敷設した弾性舗装をそれぞれ平面図及び断面図により示したものである。
【0018】
舗装材10は、厚さ20〜50mmの平板であり、弾性骨材であるゴムチップ(紡錘状タイプ、メッシュタイプ、ザラメタイプ等がある)と、ウレタン系バインダーとを含んでおり、さらに後述する高硬度領域12には第3成分材料として珪砂を含んでいる。舗装材10は、図2に示すように、本体領域11の一部に本体領域11より表面硬度が高い高硬度領域12を複数個設けている。
【0019】
各高硬度領域12は略長方形であり、その表面硬度は、本体領域11の表面硬度に対してアスカー(CS)硬度計の計測値で10ポイント以上高くなっている。各高硬度領域12の表面積は4〜4200cm2/m2の範囲にあり、かつ複数の高硬度領域12全体の表面積は、舗装材10の全表面積に対して30%以上を占めている。なお、高硬度領域12の形状については、長方形に限るものではなく、三角形等の多角形、円、長円等任意の形状にすることができる。また、単位形状の舗装材10に対して高硬度領域12の個数についても任意であり、例えば図3に示すように、舗装材10に対して長方形の高硬度領域12を2個設けることもできる。
【0020】
上記珪砂は、硬さがJIS A基準で90以上、平均粒径が0.01〜2.5mm、及び配合量が全配合量に対して5〜35重量%の3条件を満たしている。なお、珪砂の代わりに、その他無機材料として砂、シリカ、ムライト、ガラス等、有機材料としてナイロン、ウレタン等の樹脂材料を用いてもよい。バインダーについては、その減衰係数tanδの極大値温度の少なくとも1つが10℃以上であるウレタン系が望ましいが、その他エポキシ系バインダー等特に限定しない。ただし、舗装材に含めた第3成分については、必要に応じて省くこともその他の成分を加えることもできる。
【0021】
さらに、舗装材10の後述する路盤22との接触面側(裏面側)には、図1に示すように、厚さ方向に断面略半円形に凹んだ排水溝13が、舗装材の長手方向(路盤に敷設したときの車両の進行方向に相当する)に対して略45°程度に傾斜して両幅間に形成されている。すなわち、排水溝13は、図4に示すように、走行する車両の両輪が同時に通過しないように配置されており、水の排出がスムーズに行なえるようになっている。なお、排水溝の形状については、上記形状に限らず、水の排出がスムーズに行なえるような形状であれば良く、また排水溝の幅についても、均一幅ではなく連続的に幅が変化するものであっても良い。また、必要に応じて排水溝を省くこともできる。
【0022】
つぎに、上記舗装材10の製造方法について説明する。まず、ゴムチップ、バインダー及び珪砂を攪拌機にて混合し、例えば空隙率40%になるように計量し、まず混合物を金型に投入してプレスすることによって高硬度領域12を構成する多数の四角形領域を圧縮して形成する。さらに、珪砂を除いた混合物を高硬度領域12の形成された金型に投入し、金型を熱プレスにて150℃、20分間加熱処理することにより舗装材として硬化形成される。ただし、成形条件(成形方法、温度及び時間)についてはこれに限るものではない。
【0023】
以上のように形成された舗装材10は、図5に示すように、地面21上に敷設されたコンクリートあるいはアスファルトの路盤22に、エポキシ系接着剤あるいはウレタン系接着剤23を用いて接着固定することにより敷設され、弾性舗装構造が形成される。ただし、敷設方法や使用される接着剤については特に限定するものではない。
【0024】
この舗装材10は、本体領域11の一部に本体領域11より表面硬度が高い高硬度領域12を複数個設けていることにより、車輪の触れる部分によって硬度が異なる。そのため、車輪が舗装材に触れたとき、表面硬度の低い部分が高い部分に比べて凹んだ状態となり、車輪が表面の凹凸に引っかかる状態となる。その結果、路面のすべり摩擦係数が相対的に高められることになる。また、道路表面の凹凸に車輪が引っかかることにより、降雨等のウエット時において、車輪が舗装材10に含まれる水分を路盤側に向けて押し出すスクイーズ効果(押し出し効果)が得られて、舗装材10に含まれた水分を路盤22側に押出すことにより、舗装材10に含まれる水分の路面への浮き出しを抑制できる。その結果、ウエット時における弾性舗装のすべり摩擦係数を高めることができると共に、すべり摩擦係数の変曲点を高速度側にずらせ、騒音吸収性及び排水性を確保しつつ、ウエット時での車両の制動距離を、乾燥した路面での車両の制動距離に近づけることができる。さらに、排水性が高められることにより、ウエット時での車両の走行安定性を確保できる。
【0025】
つぎに、上記実施形態に係る具体的実施例について説明する。
実施例として、実施例1〜実施例11の11種類の試験品を用意した。各実施例の内容については、下記表1,2に示す通りである。
(1)第3成分として珪砂を使用した場合についてはいずれの実施例も硬度の高い領域12にのみ含まれており、硬さ(JIS−A)は95である。実施例4のみが硬さ(JIS−A)が90である。平均粒径は、実施例5が0.01mm、実施例6が2mmとなっており、その他は0.3mmである。さらに、第3成分の配合量は舗装材の全配合量に対して、実施例7で5wt%、実施例8,9で30wt%、その他は20wt%である。各実施例はいずれも、第3成分についての上記望ましい3条件を満たしている。
(2)バインダーについてはそのtanδの極大値温度が、実施例9の柔らかい部分(本体領域)、及び実施例10、11については100℃であり、その他の実施例については−40℃である。
(3)舗装材の構造としては、高硬度領域12の個々の面積は、実施例3の200cm2を除いて、4cm2になっている。また、高硬度領域12の全体に対する面積比率は、実施例1が30%であり、その他は50%である。また、排水溝(ドレーン)については、実施例11にのみ設けられている。
(4)舗装材の硬度は、実施例3以外は、高硬度領域12の硬度が75(CS硬度)、硬度の低い本体領域11の硬度が65(CS硬度)で両者の硬度差が10である。実施例3のみが、高硬度領域12の硬度が76(CS硬度)、本体領域11の硬度が65(CS硬度)で両者の硬度差が11になっている。なお、硬度の測定は、アスカー(CS)硬度計を用いて測定したものであるが、同程度の硬さの差がわかれば、測定法は特に限定するものではない。
(5)舗装材のばね定数は、実施例3及び4以外は、高硬度領域12のばね定数が75(kgf/mm)、硬度の低い本体領域11のばね定数が50(kgf/mm)で両者の差が25(kgf/mm)である。実施例3では、高硬度領域12のばね定数が74(kgf/mm)、本体領域11の硬度が50(kgf/mm)で両者の差が24(kgf/mm)、実施例4では、高硬度領域12のばね定数が73(kgf/mm)、本体領域11の硬度が50(kgf/mm)で両者の差が23(kgf/mm)になっている。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
また、比較のため、硬度が均一な1種類の舗装材からなる比較例1〜比較例7の7種類の比較品を用意した。各比較例の内容については、下記表3に示す通りである。
(1)第3成分である珪砂については、比較例1及び7には含まれておらず、珪砂の硬さ(JIS−A)は比較例2で85であり、その他は95である。平均粒径は、比較例2,5,6が0.3mm、比較例3が0.01mm未満、比較例4が2.6mmである。さらに、珪砂の配合量は舗装材の全配合量に対して、比較例2,3,4で20wt%、比較例5で3wt%、比較例6で35wt%である。
(2)バインダーについては減衰定数tanδの極大値温度が、比較例7のみ5℃であり、比較例1から6については−40℃である。
(3)排水溝(ドレーン)はいずれも設けられていない。
【0029】
【表3】
【0030】
上記各実施例及び比較例について、ウエット時のすべり摩擦係数及びその変曲点、及びドライ時のすべり摩擦係数及びウエット時とドライ時のすべり摩擦係数の差について測定した。すべり摩擦係数の測定については、50cm×50cm×30mm厚さの平板状試験片(成形後、常温で3日以上放置したもの)を用い、DFテスター(有限会社サニー工研製)を用い、水を試料表面に流しながら、80km/h以下の領域で測定するASTM E1911−98に準拠して行った。
また、上記各実施例について、硬い部分(高硬度領域12)と柔かい部分(本体領域11)のばね定数を測定し、その差を求めた。ばね定数Eの測定については、100mmφ×30mmの測定用サンプル(面積S)を作製し、これに荷重Pを加えて、そのときの変形量tを測定することにより、関係式t=P/[T×(E/S)]を用いて算出した。
さらに、上記各実施例及び比較例について、材料の攪拌時の分散状態の良否の程度を示す加工性を目視評価した。表1,2,3において、○印は、珪砂のかたまりやバインダーのにごりのない分散状態が良好であることを示し、×印は、珪砂のかたまりやバインダーのにごりが有るような分散状態が悪いことを示すものである。これらの測定結果については、上記表1,2及び表3に示す。
【0031】
上記実施例については、表1,2から明らかなように、いずれもウエット時のすべり摩擦係数が0.4以上の高い値になっており、特に実施例8,9,10,11については0.48以上の良好な結果になっている。その理由としては、バインダーの減衰係数tanδの極大値温度が100℃で他の実施例に比べて高い値であることによるものである。また、すべり摩擦係数の変曲点についても、20km/hより高い値になっており、特に実施例8,9,10,11については30km/h程度の高い値になっており、概ねすべり摩擦係数に対応した結果になっている。図6に、実施例11と比較例1について、そのすべり摩擦係数の速度特性結果について示す。また、加工性についても、各実施例共良好な結果となっている。さらに、ばね定数についても、各実施例共に、硬い部分で73〜75(kgf/mm)、柔かい部分で50(kgf/mm)となっており、いずれも適正なばね定数の範囲である30〜200(kgf/mm)内にあり、舗装材への車輪の沈み込みを少なくでき、車両の操縦安定性を良好に維持できる結果になっている。
【0032】
これに対して、比較例では、第3成分を含まない比較例1,7、硬度の低い比較例2、平均粒径の大きい比較例4及び含有量の少ない比較例5については、ウエット時のすべり摩擦係数の値が0.4より低くなっている。また、比較例3,6についてはすべり摩擦係数及び変曲点については良好であるが、第3成分を加えることにより加工性が悪くなるという問題がある。
【0033】
なお、上記実施形態においては舗装材10の路盤22との接触面側(裏面側)には、厚さ方向に略断面略半円形に凹んだ排水溝13を設けているが、これに代えて、図7に示すように、路盤22の上記舗装材10との接触面側に排水溝24を設けることができる。これにより、舗装材10に排水溝13を設けたと同様に、降雨時等のウエット時に、舗装材10に吸収された水の排水が路盤22に設けた排水溝24によって効率よく行なわれ、車両の走行時に舗装材からの水の浮き出しを抑えることができる。その結果、ウエット時の路面のすべり摩擦係数の低下を抑えることができ、ハイドロプレーニング現象を抑えることができる。また、排水が円滑に行なわれることにより、舗装材10の強度及び路盤22との接着強度の低下を抑えることができる。なお、路盤に設けた排水溝24と、舗装材10に設けた排水溝13を組合せて実施することもできる。
【0034】
また、舗装材10が敷設される道路の路盤自体に排水性のある発泡コンクリート等の材質を用いることもできる。これによっても上記舗装材10による効果に加えて、ウエット時の路面のすべり摩擦係数の低下をさらに抑えることができ、ハイドロプレーニング現象を抑えることができる。また、排水が円滑に行なわれることにより、舗装材10の強度及び路盤22との接着強度の低下を抑えることができる。なお、この路盤に上記排水溝24を設けることもでき、さらには舗装材10に設けた排水溝13を組合せて実施することもできる。
【0035】
なお、上記実施形態では、弾性骨材としてゴムチップのみを用いているが、ゴムチップの他に、熱可塑性エラストマー、発泡ポリウレタン等の弾性を有する合成樹脂材料を加えることもできる。
また、舗装材の用途については、道路用のみに限らず、遊歩道や競技場のフイールド等に使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である自動車道路に敷設される舗装材を概略的に示す斜視図である。
【図2】同舗装材を概略的に示す平面図である。
【図3】舗装材の他の例を概略的に示す平面図である。
【図4】同舗装材を敷設した自動車道路を概略的に示す平面図である。
【図5】同舗装材を敷設した自動車道路を概略的に示す断面図である。
【図6】実施例11と比較例1について、そのウエット時のすべり摩擦係数の速度特性について示すグラフである。
【図7】他の実施形態である自動車道路を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
10…舗装材、11…本体領域、12…高硬度領域、13…排水溝、21…地面、22…路盤、24…排水溝。
Claims (5)
- 弾性骨材とバインダーとが混合され、道路の路盤に敷設されて弾性舗装を形成する舗装材であって、表面硬度が異なる少なくとも2種類の領域が混在しており、少なくとも前記表面硬度が高い領域には、前記弾性骨材とバインダーに、さらに第3成分として、硬さがJIS A基準で90以上、平均粒径が0.01〜2.5mm、及び配合量が全配合量に対して5〜35重量%の3条件を満たしている硬質骨材が混合されており、前記表面硬度が互いに異なる領域における表面硬度の差が、アスカー(CS)硬度計の計測値で10ポイント以上であることを特徴とする弾性舗装材。
- 前記表面硬度が互いに異なる領域の内の、表面硬度の高い領域の単一部分の表面積が、舗装材の表面積1m 2 当りで4〜4200cm 2 であり、かつ該表面硬度の高い領域全体の表面積が舗装材の全表面積に対して30%以上であることを特徴とする前記請求項1に記載の弾性舗装材。
- 前記舗装材の前記路盤との接触面側に排水溝を設けたことを特徴とする前記請求項1又は請求項2に記載の弾性舗装材。
- 前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の弾性舗装材を道路の路盤に敷設して形成された弾性舗装構造であって、該舗装材と接触する前記路盤の該舗装材との接触面に排水溝を設けたことを特徴とする弾性舗装構造。
- 前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の弾性舗装材を道路の路盤に敷設して形成された弾性舗装構造であって、該路盤が排水性を有することを特徴とする弾性舗装構造。
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